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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022189625
(43)【公開日】2022-12-22
(54)【発明の名称】排水処理方法及び排水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20060101AFI20221215BHJP
   C02F 3/02 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C02F3/12 N
C02F3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021098298
(22)【出願日】2021-06-11
(71)【出願人】
【識別番号】507156978
【氏名又は名称】安永エアポンプ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510266815
【氏名又は名称】安永クリーンテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000139687
【氏名又は名称】株式会社安永
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日浦 直人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 成一
【テーマコード(参考)】
4D003
4D028
【Fターム(参考)】
4D003AA01
4D003AB01
4D003CA01
4D003CA07
4D003EA30
4D028AB00
4D028BB02
4D028BC18
4D028BC24
4D028BC28
4D028BD06
4D028BD12
4D028BD16
4D028CC02
4D028CC05
(57)【要約】
【課題】各処理工程の負荷を安定させて、放流水の水質を安定させる。
【解決手段】第1分離槽12内で、排水を有機固形物と第1廃液とに分離し、分離された有機固形物を含む汚泥を、活性汚泥法により可溶化して、第2廃液を生成し、第2廃液を第1分離槽12に還流して、第1廃液と第2廃液とが混合した混合廃液を生成し、混合廃液を、第1分離槽12とは別の好気ろ床槽14に移送して、好気性微生物を利用した生物膜処理により処理する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機固形物を含む排水を浄化して放流するための排水処理方法であって、
分離槽内で、前記排水を前記有機固形物と第1廃液とに分離する第1分離工程と、
前記第1分離工程で分離された有機固形物を含む汚泥を、活性汚泥法により可溶化して、第2廃液を生成する可溶化工程と、
前記第2廃液を前記分離槽に還流して、前記第1廃液と前記第2廃液とが混合した混合廃液を生成する混合工程と、
前記混合工程で生成された混合廃液を、前記分離槽とは別の槽に移送して、好気性微生物を利用した生物膜処理により処理する好気処理工程と、
を含むことを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排水処理方法において、
前記好気処理工程により処理された処理水に残留する残留有機物を、該処理水から分離する第2分離工程を更に含み、
前記可溶化工程は、前記第1分離工程で分離された有機固形物と前記残留有機物とを含む汚泥を可溶化する工程であることを特徴とする排水処理方法。
【請求項3】
有機固形物を含む排水を浄化して放流するための排水処理システムであって、
前記排水を前記有機固形物と第1廃液とに分離する第1分離槽と、
前記第1分離槽で分離された有機固形物を含む汚泥を、活性汚泥法により可溶化して、第2廃液を生成する可溶化槽と、
前記可溶化槽内の前記第2廃液を前記分離槽に還流させる廃液還流部と、
前記第1分離槽内で生成された前記第1廃液と前記第2廃液との混合廃液を、好気性微生物を利用した生物膜処理により処理する好気処理槽と、
前記第1分離槽から前記好気処理槽に、前記混合廃液を移送させる移送部と、を備えることを特徴とする排水処理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の排水処理システムにおいて、
前記好気処理槽で処理された処理水に残留する残留有機物を、該処理水から分離する第2分離槽と、
前記残留有機物を前記第1分離槽に還流する有機物還流部と、を更に備え、
前記可溶化槽では、前記第1分離槽で分離された有機固形物と前記残留有機物とを含む汚泥が可溶化されることを特徴とする排水処理システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の排水処理システムにおいて、
前記廃液還流部は、前記可溶化槽で生成された第2廃液の上澄み液のみを前記第1分離槽に還流させるように構成されており、
前記移送部は、前記混合廃液の上澄み液のみを前記好気処理槽に移送させるように構成されていることを特徴とする排水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、排水処理方法及び排水処理システムに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活の利便性向上の観点から、集合住宅において、台所に設置したディスポーザで有機固形物(生ゴミなど)を破砕し、粉砕した有機固形物を水と共に排水として流出させるシステムが導入されている。有機固形物を含む排水は、処理装置に流入されて、該処理装置により浄化処理されて公共下水道等に放流される。
【0003】
例えば、特許文献1では、被処理水が導かれ、曝気と曝気停止とを繰り返して、活性汚泥により生物処理する間欠曝気槽と、間欠曝気槽内の生物処理水と活性汚泥とからなる汚泥含有水を膜ろ過する膜分離槽と、膜分離槽から間欠曝気槽に、膜分離槽内の汚泥含有水の一部を返送させる返送手段とを備えた、間欠曝気膜分離活性汚泥法により排水を処理する装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、排水に含まれる有機固形物を分離する第1分離部と、当該第1分離部で分離された有機固形物を好気性微生物によって可溶化、分解する好気可溶化部と、当該第1分離部で分離された上澄み水と好気可溶化部からの処理水とを好気性微生物によって処理する好気処理部とを備える有機廃棄物処理システムが開示されている。
【0005】
特許文献2では、好気可溶化部で処理した処理水が間欠的に好気処理部に移送されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-172247号公報
【特許文献2】特開2001-259569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、最終的な放流水の水質を安定させるためには、各処理部の負荷を出来る限り小さくして、各処理部における処理を安定させる必要がある。前記特許文献1のような構成では、処理前の汚水の全てが可溶化部(間欠曝気槽)に導入されるため、可溶化部の負荷が比較的大きくなる。また、前記特許文献2では、2つの処理部から異なる排水がそれぞれ好気処理部に投入されるため、好気処理部に投入される排水の水質が安定しにくい。特に、可溶化部からは、排水が間欠的に好気処理部に移送されるため、好気可溶化部から排水が投入されるタイミングで水質が悪化するようになり、好気処理部の負荷が不安定になる。各処理部の負荷が不安定になると、放流水の水質維持のために好気処理部のメンテナンス頻度を多くする必要が生じる。尚、この明細書において、「水質が安定」とは、水質が略一定の状態であることを意味し、水質が良い場合であっても、水質が悪い場合であっても、その水質が略一定であれば、「水質が安定」という。
【0008】
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするとこは、各処理工程の負荷を安定させて、放流水の水質を安定させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、有機固形物を含む排水を浄化して放流するための排水処理方法を対象として、分離槽内で、前記排水を前記有機固形物と第1廃液とに分離する第1分離工程と、前記第1分離工程で分離された有機固形物を含む汚泥を、活性汚泥法により可溶化して、第2廃液を生成する可溶化工程と、前記第2廃液を前記分離槽に還流して、前記第1廃液と前記第2廃液とが混合した混合廃液を生成する混合工程と、前記混合工程で生成された混合廃液を、前記分離槽とは別の槽に移送して、好気性微生物を利用した生物膜処理により処理する好気処理工程と、を含む、という構成とした。
【0010】
この構成によると、排水を一旦分離槽で有機固形物と第1廃液とに分離し、可溶化工程では有機固形物を含む汚泥のみを可溶化させるため、可溶化工程の負荷を出来る限り小さくすることができる。また、排水から有機固形物を除いて生成された第1廃液と、有機固形物が可溶化されて生成された第2廃液とが、同一の分離槽で混合される。このため、分離槽内の混合廃液は水質が平均化される。そして、この混合廃液を好気性微生物により処理するため、好気処理の負荷が安定した状態となる。したがって、放流水の水質を安定させることができる。
【0011】
前記排水処理方法において、前記好気処理工程により処理された処理水に残留する残留有機物を、該処理水から分離する第2分離工程を更に含み、前記可溶化工程は、前記第1分離工程で分離された有機固形物と前記残留有機物とを含む汚泥を可溶化する工程である、という構成でもよい。
【0012】
この構成によると、好気処理の後、残留有機物を分離することで、放流水の水質を更に安定させることができる。
【0013】
ここに開示された技術の他の態様は、有機固形物を含む排水を浄化して放流するための排水処理システムと対象として、前記排水を前記有機固形物と第1廃液とに分離する第1分離槽と、前記第1分離槽で分離された有機固形物を含む汚泥を、活性汚泥法により可溶化して、第2廃液を生成する可溶化槽と、前記可溶化槽内の前記第2廃液を前記分離槽に還流させる廃液還流部と、前記第1分離槽内で生成された前記第1廃液と前記第2廃液との混合廃液を、好気性微生物を利用した生物膜処理により処理する好気処理槽と、前記第1分離槽から前記好気処理槽に、前記混合廃液を移送させる移送部と、を備える、という構成とした。
【0014】
この構成でも、排水を、一旦、第1分離槽で有機固形物と第1廃液とに分離し、可溶化槽では有機固形物を含む汚泥のみを可溶化させるため、可溶化槽の負荷を出来る限り小さくすることができる。また、第1分離槽内で生成される、第1廃液と第2廃液との混合廃液は、水質が平均化される。そして、混合廃液を好気性微生物により処理するため、好気処理槽の負荷が安定した状態となる。これにより、放流水の水質を安定させることができる。
【0015】
前記排水処理システムにおいて、前記好気処理槽で処理された処理水に残留する残留有機物を、該処理水から分離する第2分離槽と、前記残留有機物を前記第1分離槽に還流する有機物還流部と、を更に備え、前記可溶化槽では、前記第1分離槽で分離された有機固形物と前記残留有機物とを含む汚泥が可溶化される、という構成でもよい。
【0016】
この構成によると、好気処理の後、残留有機物を分離することで、放流水の水質を更に安定させることができる。また、第2分離槽に残留有機物が滞留しにくくなるため、メンテナンスを簡易化することができる。
【0017】
前記排水処理システムにおいて、前記廃液還流部は、前記可溶化槽で生成された第2廃液の上澄み液のみを前記第1分離槽に還流させるように構成されており、前記移送部は、前記混合廃液の上澄み液のみを前記好気処理槽に移送させるように構成されている、という構成でもよい。
【0018】
この構成によると、移送部は、廃液還流部から第2廃液が還流された際のオーバーフロー分だけを好気処理槽に移送させる構成とすることができるようになる。これにより、第2廃液の還流のタイミングと好気処理槽への混合廃液の移送のタイミングとを同期させることができる。この結果、好気処理槽に移送する混合廃液の水質をより安定化させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、各処理工程の負荷を安定させて、放流水の水質を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、例示的な実施形態に係る排水処理システムを集合住宅に適用した場合の図である。
図2図2は、排水処理システムの概略図である。
図3図3は、比較例に係る排水処理システムの概略図である。
図4図4は、本実施形態にかかる排水処理システムにより排水処理した場合の生物化学的酸素要求量(BOD)を示すグラフである。
図5図5は、本実施形態にかかる排水処理システムにより排水処理した場合の浮遊物質量(SS)を示すグラフである。
図6図6は、本実施形態にかかる排水処理システムにより排水処理した場合のノルマルヘキサン抽出物質量(n-HEX)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る排水処理システム1を集合住宅2に適用した場合を示す。この排水処理システム1は、集合住宅2の各部屋の台所からの排水を処理するためのシステムである。各部屋の台所の排水溝には、ディスポーザ3(図2参照)が設けられている。ディスポーザ3は、調理などにより発生する野菜は魚介などからなる生ゴミを粉砕する。ディスポーザ3により粉砕された生ゴミ(以下、有機固形物という)は、水道から供給される水と共に排水として排出される。排水は、排水管4を通って、排水処理システム1に流入する。排水処理システム1は、集合住宅2の近くの地下に配置されており、有機固形物を含む排水を浄化して、下水として放出する。
【0023】
図2に、本実施形態に係る排水処理システム1を概略的に示す。図2に示すように、ディスポーザ3から排水管4を通った排水は、無機物分離槽11に導入される。台所からの排水には、アルミホイルの破片や金属たわしの破片などが混入していることがある。無機物分離槽11は、このような排水中に含まれる無機物を分離する。無機物分離槽11では、無機物を沈殿させることにより除去する。
【0024】
無機物が除去された排水は、第1移送部21を通って、第1分離槽12に導入される。第1分離槽12は、排水から有機固形物を分離する。第1分離槽12では、可溶化していない有機固形物を沈殿させることにより分離する。この第1分離槽12により、排水は、第1廃液と有機固形物を含む汚泥とに分離される。第1分離槽12は、有機固形物を収集しやすいように底部に傾斜部12aを有する。尚、詳しくは後述するが、この汚泥には、後述の第2分離槽15で分離される残留有機物も含まれている。
【0025】
第1分離槽12の汚泥と第1廃液の一部は、第2移送部22を通って、好気可溶化槽13に導入される。好気可溶化槽13では、活性汚泥法により汚泥を可溶化する。図2では図示を省略しているが、好気可溶化槽13には、曝気を行うためのブロアが設けられている。このブロアは、間欠的に酸素を供給するように構成されている。第1分離槽12からの汚泥の移送は、ブロアが停止している時に行われる。第1分離槽12からの汚泥の移送は、汚泥に含まれる好気性微生物の能力に応じて、一日に数回のペースで行われる。尚、第1分離槽12から導入される汚泥は、第2分離槽15で分離される残留有機物を含む汚泥である。つまり、好気可溶化槽13では、第1分離槽12で分離された有機固形物と前記残留有機物とを含む汚泥を可溶化している。
【0026】
好気可溶化槽13は、汚泥中の有機物を可溶化して液化させることで、第2廃液を生成する。この第2廃液は、廃液還流部23を通って、第1分離槽12に還流される。廃液還流部23は、第2廃液の上澄み液を第1分離槽12に還流させるように構成されている。好気可溶化槽13から第1分離槽12への第2廃液の還流は、間欠的に、詳しくはブロアの停止中に行われる。より具体的には、第1分離槽12からの好気可溶化槽13に汚泥が移送された際に第2廃液の水位が上昇する。この水位が上昇した分だけ(つまりオーバーフロー分だけ)が第1分離槽12に第2廃液が還流されるようになっている。
【0027】
好気可溶化槽13には、活性汚泥処理後の余剰汚泥が蓄積される。この余剰汚泥は、所定のタイミング(例えば、月に1回)で好気可溶化槽13から引き抜かれる。
【0028】
好気可溶化槽13から第2廃液が還流されることで、第1分離槽12には、第1廃液と第2廃液とからなる混合廃液が生成される。混合廃液の水質は、第1廃液の水質と第2廃液の水質とを平均化したような水質になる。この混合廃液の上澄み液は、第3移送部24を介して、好気ろ床槽14に導入される。第1分離槽12から好気ろ床槽14への混合廃液の導入は、第2廃液が第1分離槽12に還流するタイミングで行われる。第1分離槽12から好気ろ床槽14への混合廃液の導入方法は、種々の方法を採用することができる。例えば、第2廃液が第1分離槽12に導入されることで水位が上がるため、水位が上昇した分だけ(つまりオーバーフロー分だけ)が好気ろ床槽14に導入されるように構成することができる。混合廃液のオーバーフロー分のみを好気ろ床槽14に導入するようにしておけば、好気可溶化槽13から第2廃液が還流されるタイミングと、第1分離槽12から好気ろ床槽14への混合廃液が移送されるタイミングとを同期させることができる。これにより、好気ろ床槽14には常に混合廃液が導入されるようになるため、好気ろ床槽14に導入される廃液の水質を安定化させることができる。
【0029】
好気ろ床槽14では、混合廃液を、好気性微生物を利用した生物膜処理により処理する。好気ろ床槽14には、好気性微生物を保持する担体14aが設けられている。担体14aは、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリウレタンなどで構成されており、その表面に好気性微生物が付着している。図2には示していないが、好気ろ床槽14にも好気性微生物に酸素を供給するためのブロアが設けられている。
【0030】
好気ろ床槽14で生物膜処理された処理水は、第2分離槽15に導入される。第2分離槽15では、処理水中の残留有機物を沈殿させて分離する。第2分離槽15は、残留有機物を収集しやすいように底部に傾斜部15aを有する。分離された残留有機物を含む汚泥は、有機物還流部25を介して、第1分離槽12に還流される。残留有機物が分離された処理水は、放流水として下水に放流される。
【0031】
ここで、放流水の水質を良好な状態で安定させるためには、各処理槽、特に、好気性微生物を利用した処理を行う好気可溶化槽13及び好気ろ床槽14の負荷を安定させることが求められる。これに対して、本実施形態では、第1分離槽12で排水を、一旦、有機固形物と第1廃液とに分離して、有機固形物及び第1廃液の一部のみからなる汚泥のみを好気可溶化槽13で可溶化させるため、好気可溶化槽13の負荷を出来る限り軽減することができる。また、本実施形態では、好気可溶化槽13で生成された第2廃液が第1分離槽12に還流されることで、第1廃液と第2廃液とが第1分離槽12で混合される。このため、第1分離槽12内の混合廃液は水質が平均化されて安定した状態となる。この混合廃液を好気性微生物により処理するため、好気ろ床槽14の負荷が安定した状態となる。したがって、放流水の水質を安定させることができる。
【0032】
特に、本実施形態では、第2廃液が第1分離槽12に還流されたタイミングで、第1分離槽12から好気ろ床槽14に混合廃液が移送されるため、好気ろ床槽14に導入される混合廃液の水質を安定化させることができる。これにより、放流水の水質をより安定させることができる。
【0033】
図4図6は、本実施形態に係る排水処理システム1により排水処理を行った際の水質を示す。図4図6では、比較例として、図3に示す構成の排水処理システムで排水処理を行った場合も合わせて示している。
【0034】
図3に示すように、比較例に係る排水処理システムの構成は、第1分離槽12が無く、無機物が分離された後の排水の全てが好気可溶化槽に導入されるようになっている。そして、好気可溶化槽で可溶化された後の排水は、汚泥と共に汚泥貯留槽に溜められ、汚泥貯留槽の上澄み液が好気ろ床槽に導入されるようになっている。
【0035】
図4では、生物化学的酸素要求量(BOD:Biochemical Oxygen Demand)を比較している。図4(a)は本実施形態における排水処理システムの結果であり、図4(b)は比較例に係る排水処理システムの結果である。図4(a)(b)ともに、初期排水の数値を100として、変化率を計測している。
【0036】
図5では、浮遊物質量(SS:Suspended Solids)を比較している。図5(a)は本実施形態における排水処理システムの結果であり、図5(b)は比較例に係る排水処理システムの結果である。図5(a)(b)ともに、初期排水の数値を100として、変化率を計測している。
【0037】
図6では、ノルマルヘキサン抽出物質量(n-HEX)を比較している。図6(a)は本実施形態における排水処理システムの結果であり、図6(b)は比較例に係る排水処理システムの結果である。図6(a)(b)ともに、初期排水の数値を100として、変化率を計測している。
【0038】
図4図6に示すように、生物化学的酸素要求量、浮遊物質量、及びノルマルヘキサン抽出物質量のいずれにおいても、本実施形態のものは、好気ろ床槽前の値が安定しており、その後の放流水における値も低い数値で安定していることが分かる。これは、好気ろ床槽前の水質(つまり、混合廃液の水質)が安定しており、好気ろ床槽の負荷が抑制されているためである。一方で、比較例においては、3週目及び4週目において、好気ろ路床槽前の廃液における各値が、1週目及び2週目と比較して悪化していることが分かる。これは、汚泥貯留槽における汚泥の貯留量が限界に近くなり、汚泥貯留槽に流入した廃液が、ほぼそのまま好気ろ床槽に導入されたためである。また、比較例では、放流水における各値が全体的に本実施形態よりも悪い結果となっている。
【0039】
したがって、本実施形態では、好気ろ床槽14に導入される混合廃液の水質が安定して、好気ろ床槽14の負荷が安定するため、放流水の水質が良い状態で安定する。
【0040】
また、本実施形態では、第2分離槽15で分離された残留有機物を、第1分離槽12に還流する有機物還流部25を備え、好気可溶化槽13では、第1分離槽12で分離された有機固形物と残留有機物とを含む汚泥が可溶化される。これにより、好気処理の後、残留有機物が分離されるため、放流水の水質を更に安定させることができる。また、第2分離槽15に残留有機物を含む汚泥が滞留しにくくなるため、メンテナンスを簡易化することができる。
【0041】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0042】
例えば、前述の実施形態では、好気可溶化槽13から第1分離槽12への第2廃液の還流は、第1分離槽12から好気可溶化槽13への汚泥の移送に伴って生じる、好気可溶化槽13における第2廃液のオーバーフロー分のみが還流されるようになっていた。これに限らず、シーケンス処理などにより、ブロアの停止中にのみ、好気可溶化槽13から第1分離槽12に混合廃液が導入されるようにしてもよい。この場合、好気可溶化槽13におけるオーバーフロー分よりも多い量の第2廃液が第1分離槽12に還流されてもよい。また、第1分離槽12から好気ろ床槽14への混合廃液の移送は、好気可溶化槽13から第1分離槽12への第2廃液の還流に伴って生じる、第1分離槽12における混合廃液のオーバーフロー分のみが還流されるようになっていた。これに限らず、シーケンス処理などにより、第2廃液が第1分離槽12に還流されるときにのみ、第1分離槽12から好気ろ床槽14に混合廃液が導入されるようにしてもよい。この場合、第1分離槽12におけるオーバーフロー分よりも多い量の混合廃液が好気ろ床槽14に移送されてもよい。
【0043】
また、前述の実施形態では、集合住宅に対して排水処理システム1を適用する場合について説明したが、これはディスポーザが配設された個別住宅に対して、排水処理システム1を導入することを排除しない。
【0044】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
ここに開示された技術は、有機固形物を含む排水を浄化して放流する際に、放流水の水質を安定させるために有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 排水処理システム
12 第1分離槽
13 好気可溶化槽
14 好気ろ床槽(好気処理槽)
15 第2分離槽
23 廃液還流部
24 第3移送部
25 有機物還流部
図1
図2
図3
図4
図5
図6