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特開2022-190891液体吐出装置、液体吐出方法、成形装置及び物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190891
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】液体吐出装置、液体吐出方法、成形装置及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20221220BHJP
   B05C 9/12 20060101ALI20221220BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20221220BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20221220BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20221220BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20221220BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B05C9/12
B05C11/10
B05C11/00
B05C5/00 101
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099401
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】近藤 陽介
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
5F146
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC91
4D075AC93
4D075AC94
4D075BB06Z
4D075BB08Z
4D075BB26Z
4D075BB42Z
4D075BB50Z
4D075BB66Z
4D075BB85Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DB14
4D075DC21
4D075DC24
4D075EA19
4D075EA21
4D075EA33
4F041AA02
4F041AA06
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F042AA06
4F042AB00
4F042BA04
4F042BA08
4F042BA12
4F042BA19
4F042DB17
4F042DB41
4F042DF09
4F042DH09
4F042ED03
5F146AA31
5F146JA01
(57)【要約】
【課題】 所望の位置に液滴を着弾させることができる構成を提供することを目的としている。
【解決手段】 被吐出物を保持する保持部と液体を吐出する複数のノズルを有する吐出部とを相対的に移動させながら、吐出部から複数の吐出条件で液体を吐出し、吐出する工程で吐出された液滴の位置を取得し、取得された液滴の位置に基づいて、複数のノズルそれぞれの吐出速度を調整する。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吐出物を保持する保持部と、
液体を吐出する複数のノズルを有する吐出部と、
被吐出物の上に吐出された液滴の位置を取得する位置取得部と、
前記吐出部の吐出条件を調整する制御部と、を有する液体吐出装置であって、
前記制御部は、前記吐出部から液体を吐出する際に、移動手段により前記保持部と前記吐出部とを相対的に移動させながら、複数の吐出条件で前記吐出部から吐出された液滴の位置を前記位置取得部で取得した結果に基づいて、前記複数のノズルそれぞれの吐出速度を調整することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記複数の吐出条件とは、前記吐出部から吐出する液滴の吐出速度と、前記移動手段による前記保持部と前記吐出部との相対的な移動速度とを含むことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数のノズルそれぞれから吐出される液滴の被吐出物に着弾するまでの飛翔距離及び吐出信号が出されてから吐出するまでにかかる遅延時間を、複数の吐出条件で前記吐出部から吐出された液滴の位置を前記位置取得部で取得した結果に基づいて予め求めておき、
当該飛翔距離及び前記遅延時間と、前記位置取得部で取得された各ノズルの液滴の位置とに基づいて、所望の着弾位置となるように前記複数のノズルそれぞれの吐出速度を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数のノズルそれぞれから吐出される液滴の被吐出物に着弾するまでの飛翔距離を、前記吐出部から互いに異なる2種類の吐出速度で被吐出物に吐出された液滴の着弾位置に基づいて算出することを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数のノズルそれぞれの遅延時間を、前記移動手段に互いに異なる2種類の移動速度で前記吐出部から被吐出物に吐出させた液滴の着弾位置に基づいて算出することを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記被吐出物は、基板であり、
前記吐出部から吐出される液体は、硬化性樹脂であることを特徴とする
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液体吐出装置と、
部材を保持する部材保持部とを有し、
前記制御部は、基板に液滴が吐出された後に、当該液滴を介して前記部材と前記基板とを接触させて前記硬化性樹脂の硬化処理を行うように制御することを成形装置。
【請求項8】
請求項7に記載の成形装置を用いて、前記硬化性樹脂の成形処理を行う工程と、
前記成形処理を行う工程で処理された基板を加工することにより物品を製造する工程と、
を有する物品の製造方法。
【請求項9】
被吐出物を保持する保持部と液体を吐出する複数のノズルを有する吐出部とを相対的に移動させながら、吐出部から複数の吐出条件で液体を吐出する工程、
前記吐出する工程で吐出された液滴の位置を取得する工程と、
前記取得された液滴の位置に基づいて、前記複数のノズルそれぞれの吐出速度を調整する工程と、
ことを特徴とする液体吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、液体吐出方法、成形装置及び物品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMSなどの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィー技術に加えて、基板上に数ナノメートルオーダーの微細なパターン(構造体)を形成することができるインプリント技術が注目されている。インプリント技術は、基板上に未硬化のインプリント材を供給し、かかるインプリント材とモールド(型)とを接触させて、モールドに形成された微細な凹凸パターンに対応するインプリント材のパターンを基板上に形成する微細加工技術である。
【0003】
このようなインプリント材の基板上への供給には、ノズル(吐出口)から液滴状のインプリント材を、インクジェット方式を用いて供給する吐出装置を用いることができるが、ノズルから吐出される吐出物の吐出速度や吐出量などに高い精度が求められる。また、基板などの被吐出物に対して液滴を着弾させるべき位置(着弾目標位置)からずれが生じると、インプリント処理により形成されるパターンが所望の形状にならない可能性がある。
【0004】
そのため、液滴の着弾位置が目標位置からずれている場合には、ノズルに含まれる吐出エネルギー発生素子(圧電素子)に入力する駆動波形のタイミングを補正することで補正を行うことが必要になる。特許文献1には、各ノズルに入力する駆動波形を補正することで、吐出条件を変更できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-107826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、液滴を吐出する際に用いられる吐出装置のノズルは、取り付け誤差や個々のノズル形状により、液滴が設計時に想定している所望の方向や所望のタイミングで飛翔しない場合もあり、実際に液滴の挙動が予測と異なることが生じうる。すなわち、単にノズルに応じた駆動波形で電圧を印加したとしても、所望のタイミングや所望の方向に吐出されない可能性がある。そのような場合には、単に設計値通りに着弾位置がずれるように駆動タイミングを遅延させるなどして駆動波形を補正したとしても、所望の着弾位置に補正できないことが考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、所望の位置に液滴を着弾させることができる構成を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の液体吐出装置は、 被吐出物を保持する保持部と、
液体を吐出する複数のノズルを有する吐出部と、被吐出物の上に吐出された液滴の位置を取得する位置取得部と、前記吐出部の吐出条件を調整する制御部と、を有する液体吐出装置であって、前記制御部は、前記吐出部から液体を吐出する際に、移動手段により前記保持部と前記吐出部とを相対的に移動させながら、複数の吐出条件で前記吐出部から吐出された液滴の位置を前記位置取得部で取得した結果に基づいて、前記複数のノズルそれぞれの吐出速度を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所望の位置に液滴を着弾さえることができる構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明にかかるインプリント装置の構成を示す概略図である。
図2】インプリント装置におけるインプリント処理及び物品の製造方法を説明するための図である。
図3】(a)吐出部をノズル面から見た図である。(b)乃至(d)ノズルから液滴が吐出される過程を示した概念図である。
図4】ノズルに印加する駆動信号の波形とノズル内の流体の表面位置を示す図である。
図5】吐出部からの吐出される液滴の状態を説明する図である。
図6】飛翔距離Lを求める際の流れを説明するためのフローチャートである。
図7】着弾液滴502が、座標中心である目標着弾位置からずれている様子を示している。
図8】遅延時間Tdを求める際の流れを説明するためのフローチャートである。
図9】吐出位置の補正の過程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて詳細に説明する。図1は物品の製造装置としてのインプリント装置(成形装置)の全体構成を概略的に示す正面図である。
【0012】
インプリント装置101では、主に次のようなインプリント処理(成形処理)が実施される。まず、被吐出物である基板111の表面(図中、上面)に、インプリント材として未硬化の樹脂114の液滴(液状の流体)を吐出する。次いで、基板111の表面に吐出された未硬化の樹脂114に、凹凸形状を有するパターンが形成されたモールドを押し当てる。その後、樹脂114が硬化した状態でモールドを樹脂から離間(離型)させる。以上の工程からなるインプリント処理によって、モールドのパターンに倣った3次元形状のパターンを有する物品が得られる。
【0013】
このようなインプリント処理は、ナノメートルオーダーの極めて微細なパターンを有する物品の形成が可能であり、半導体デバイスの製造などに好適に用いられている。なお、本実施形態では、一例としてパターンが形成された樹脂114を光の照射によって硬化させる光硬化法を採用したインプリント装置を示している。しかし、他の技術を用いたインプリント装置、例えば熱によって樹脂を硬化させる熱硬化法を用いたインプリント装置にも本発明は適用可能である。
【0014】
インプリント装置101は、光照射部102、モールド107(部材)を保持するモールド保持機構103(部材保持部)、基板ステージ104、吐出部105、取得手段122、制御部106、および筺体123などを備える。また、図示の装置では、基板111に吐出された樹脂114に照射する紫外線108の光軸108aと平行にZ軸が設定され、Z軸と直交する平面内に、互いに直交するX軸およびY軸が設定されている。
【0015】
筺体123は、後述の基板ステージ104を保持するベース定盤124、モールド保持機構103および光照射部102を保持するブリッジ定盤125、およびブリッジ定盤125を支持する支柱126を備える。支柱126はベース定盤124に立設されている。
【0016】
基板ステージ104(保持部)は、インプリント処理を行う樹脂114が付与される基板111を保持しつつ、X軸およびY軸によって規定される平面(XY平面)に沿って基板111を移動させる移動機構としての機能を有する。この基板ステージ104によって基板111をXY平面に沿って移動させることにより、基板111と吐出部105とのXY平面における位置合わせ、および基板111の表面に吐出された樹脂114とモールド107とのXY平面における位置合わせを行う。
【0017】
基板ステージ104は、基板111を真空吸着により保持する基板チャック119と、基板チャック119を機械的手段により保持しつつ、XY平面内で移動する基板ステージ筐体120とを有する。さらに、基板ステージ104には、基板チャック119の表面とその上方に位置するモールド107とのXY平面における相対位置を定める際に利用するステージ基準マーク121が設けられている。
【0018】
基板ステージ筐体120は、基板チャック119を移動させるためのアクチュエータが設けられている。アクチュエータとしては、例えばX軸方向およびY軸方向へと移動させるリニアモータを採用し得る。また、基板ステージ筐体120を、X軸方向およびY軸方向における粗動駆動系や微動駆動系などの複数の駆動系によって構成してもよい。さらに、基板チャック119の位置をZ軸方向に補正のための駆動系や、基板チャック119の位置をθ方向に補正する機能、または基板チャック119の傾きを補正するためのチルト機能などを有する構成を基板ステージ筐体120に設けてもよい。
【0019】
基板111は、例えば、単結晶シリコン基板やSOI(Silicon On Insulator)基板であり、この表面には、前述のモールド107に形成されたパターン部107aにより成形される硬化性の樹脂114が後述の吐出部105から吐出される。硬化性の樹脂114には、モールド107のパターンへの充填時に流動性を有し、インプリント処理後に形状を保持するように固体であることが求められる。このため、樹脂114には、光硬化性の樹脂材料、熱硬化性の樹脂材料、熱可塑性の樹脂材料などが用いられる。特に、光硬化性の樹脂材料は、硬化プロセスで温度変化を必要とせず、モールド107や基板111、インプリント装置の各部材の熱膨張及び収縮による基板上に形成されるパターンの位置及び形状の変化が少ないため、半導体デバイスなどの製造に適している。そのため、本実施形態では、硬化性の樹脂114として、紫外線を照射することによって硬化する光硬化性樹脂114を例に説明を行う。
【0020】
光照射部102は、ブリッジ定盤125に保持されており、インプリント処理の際に、モールド107に対して所定の波長の光、例えば紫外線108を照射する。この光照射部102は、光源109と、この光源109から照射された紫外線108を、基板111上に吐出された樹脂114に対して適切な方向および位置に補正するための光学素子110とから構成される。なお、本実施形態では光硬化法を採用するために光照射部102を設置しているが、例えば熱硬化法を採用する場合には、光照射部102に代えて、熱硬化型樹脂を硬化させるための熱源部を設置すればよい。
【0021】
モールド107は、例えば、外周形状が矩形であり、基板111に吐出された樹脂114に回路パターンなどの凹凸パターンを転写するための3次元形状を有するパターン部107aを含む。また、モールド107は、石英など紫外線108を透過させることが可能な材料で形成されている。さらに、モールド107は、紫外線108が照射される面に、モールド107の変形を容易とするために形状を凹型にしたキャビティ107bを有する形状としてもよい。このキャビティ107bは、円形の平面形状を有し、深さは、モールド107の大きさや材質により適宜設定される。
【0022】
モールド保持機構103は、真空吸着力や静電力によりモールド107を引き付けて保持するモールドチャック115と、モールドチャック115をZ軸方向に移動させるモールド駆動機構116とを有する。モールド駆動機構116は、基板111上の樹脂114に対するモールド107の押し付けまたは離間(離型)を選択的に行うように、モールド107を保持するモールドチャック115をZ軸方向に移動させる。このモールド駆動機構116に採用可能なアクチュエータとしては、例えばリニアモータまたはエアシリンダなどがある。また、モールド107の高精度な位置決めを可能とするために、モールド駆動機構116を、粗動駆動系や微動駆動系などの複数の駆動系から構成してもよい。さらに、Z軸方向だけでなく、X軸方向やY軸方向、またはZ軸周りの回転であるθ方向の位置補正機能や、モールド107の傾きを補正するためのチルト機能などを有する構成を採用してもよい。なお、基板111上に吐出された樹脂114に対するモールド107の押し付けおよび離間動作は、上述のようにモールドチャック115をZ軸方向に移動させることで実現してもよいが、基板ステージ104をZ軸方向に移動させることで実現してもよい。あるいはまた、基板ステージ104とその双方を相対的に移動させてもよい。
【0023】
モールドチャック115およびモールド駆動機構116は、光照射部102の光源109から発せられた紫外線108が光学素子110を経て基板111に照射されるように、中心部に開口領域117が形成されている。
【0024】
また、前述のモールド保持機構103内に形成された開口領域117に、密閉した空間112を形成する光透過部材113を設置し、圧力補正装置により空間112内の圧力を制御するように構成することも可能である。この構成では、例えばモールド107を基板111に吐出された樹脂114へと押し付ける際に、圧力補正装置によって空間112内の圧力を外部空間の圧力より高める。空間112内の圧力を高めることにより、パターン部107aは、基板111に向かって凸形に撓み、樹脂114に対してパターン部107aの中心部から接触する。これにより、パターン部107aと樹脂114との間に気体(空気)が閉じ込められるのを抑えることができ、パターン部107aの凹凸部に樹脂114を隅々まで充填させることができる。
【0025】
吐出部105は、未硬化状態の樹脂114を滴状に吐出して基板111上に付与する複数のノズルを有する。本発明においてノズルとは、インクが存在する領域を形成する部分と、領域内のインクを開口部(吐出口)から吐出させる吐出エネルギーを発生させる吐出エネルギー発生素子とを含む。本実施形態では、吐出エネルギー発生素子として、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する圧電素子の圧電効果を利用して樹脂114をノズルから吐出させる方式を採用している。すなわち、後述する制御部106が所定の波形を有する駆動信号を生成し、その駆動信号に応じた電圧が印加されることによって圧電素子が吐出に適した形状に変形するように制御される。複数のノズルは、それぞれが制御部106によって独立に制御される。
【0026】
吐出部105から吐出される樹脂114は、紫外線108を受光することにより硬化する性質を有する光硬化性樹脂114であり、半導体デバイス製造工程などの各種条件により、その材料は適宜選択される。また、吐出部105の吐出ノズルから滴状に吐出される樹脂114(以下、液滴ともいう)114の量も、基板111上に形成される樹脂114の所望の厚さや、形成されるパターンの密度などにより適宜決定される。この吐出部105とモールド駆動機構116と制御部106とにより、液体吐出装置が構成されている。
【0027】
取得手段122は、代表的な計測器としてアライメント計測器127と観察用計測器128とを備える。アライメント計測器127は、基板111上に形成されたアライメントマークと、モールド107に形成されたアライメントマークとのX軸方向およびY軸方向への位置ずれを計測する。観察用計測器128は、例えばCCDカメラなどの撮像装置により構成され、基板111上に吐出された樹脂114により形成されるパターンを画像情報として取得し、取得した画像を画像処理することによって吐出位置を計測する手段として用いることができる。なお、アライメント計測器127と別に観察用計測器128を設けずに、アライメント計測器127を吐出位置計測手段として用いてもよい。
【0028】
制御部(制御手段)106は、インプリント装置101の各構成要素の動作および補正などを制御し得る。制御部106は、例えば、CPU、ROM、およびRAMなどを含むコンピュータなどで構成され、CPUによって種々の演算処理が行われる。制御部106は、インプリント装置101の各構成要素に回線を介して接続され、ROMに格納されたプログラムなどに従って各構成要素の制御を実行する。例えば、制御部106は、取得手段122の計測情報を基に、モールド保持機構103および基板ステージ104および吐出部105の動作を制御する。なお、制御部106は、インプリント装置101の他の部分と一体で構成してもよいし、インプリント装置101の他の部分とは別体で構成してもよい。また、1台のコンピュータではなく複数台のコンピュータ、およびASICなどを含む構成としてもよい。
【0029】
さらにインプリント装置101は、モールド107を装置外部からモールド保持機構103へと搬送する不図示のモールド搬送機構と、基板111を装置外部から基板ステージ104へと搬送する不図示の基板搬送機構とを備える。このモールド搬送機構および基板搬送機構の動作は、制御部106によって制御される。
【0030】
(インプリント処理)
次に、図2を参照しながら、インプリント装置101によって基板にパターンを形成し、該パターンが形成された基板を処理し、該処理が行われた基板から物品を製造する物品製造方法について説明する。
【0031】
まず図2(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、被加工材2zの表面にインプリント材3zを吐出する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。このとき制御部106は、基板搬送機構を制御して基板ステージ104上の基板チャック119に基板111を載置および固定させた後、基板チャック119を吐出部105の塗布位置へと移動させる。次に、制御部106は、吐出部105および基板ステージ104を制御し、基板111に対して樹脂114の液滴を吐出する吐出工程(塗布工程)を実行させる。
【0032】
吐出工程において、制御部106は、吐出部105に設けられた複数のノズルそれぞれの吐出傾向に応じて生成された波形の駆動信号を、各ノズルに設けられる圧電素子に印加する。その結果、各ノズルからは均一な吐出状態で滴状の樹脂114が吐出される。なお、ノズルの吐出傾向とは、ノズルに設けられている吐出エネルギー発生素子に印加される駆動信号の波形を決定する波形情報としてのパラメータの変化に対する吐出量および吐出速度の変化の度合いを指す。
【0033】
また、吐出動作に伴って制御部106は基板チャック119をXY平面に沿ってノズルの配列方向と交差する方向(典型的には直交方向)へと移動させる。これにより、基板111の所定の被処理領域であるパターン形成領域に樹脂114が付与される。
【0034】
次に、図2(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。すなわち、制御部106は、樹脂114が付与された基板111上のパターン形成領域がモールド107に形成されたパターン部107aの直下に位置するように基板チャック119を移動させる。
【0035】
次に、図2(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。すなわち、制御部106は押し付け工程として、モールド駆動機構116を駆動させ、基板111上の樹脂114にモールド107を押し付ける。この押し付け工程により、樹脂114はパターン部107aの凹凸部に密接する。この状態で、制御部106は、硬化処理工程として光照射部102を駆動する。光照射部102から発せられた紫外線108は、光学素子110および光透過部材113を経てモールド107の上面に照射される。モールド107に照射された紫外線は、光透過性のモールド107を透過して樹脂114に照射される。これにより樹脂114は硬化する。
【0036】
次に、図2(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。すなわち、制御部106は、モールド駆動機構116を駆動させてモールドチャックを上昇させ、モールド107を樹脂114から引き離す離間工程を実施する。これにより、基板111上のパターン形成領域の表面には、パターン部107aの凹凸部に倣った3次元形状の樹脂114のパターンが成形される。
【0037】
次に、図2(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図2(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0038】
そして物品の製造方法には、基板に供給(塗布)されたインプリント材に上記のインプリント装置(インプリント方法)を用いてパターンを形成する工程と、かかる工程でパターンを形成された基板を加工する工程も含まれる。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。
【0039】
(液滴吐出動作)
次に、図3および図4を参照して、ノズル201から樹脂の液滴203が吐出される過程を、ノズルに含まれる圧電素子(吐出エネルギー発生素子)に印加される駆動信号220およびノズル内の液状の樹脂114の液面位置と共に説明する。
【0040】
図3(a)に吐出部105の複数のノズルをノズル面側から見た図を示す。吐出部105のノズル面には樹脂114の液滴を吐出するためのx方向に1~約数列、y方向に約数千個の数um~数十um程度のノズル201が構成される。液滴吐出時には、ノズル面と基板111とのギャップは、位置精度を維持するために数百um~1mm程度に調整される。
【0041】
図3(b)、(c)、(d)は吐出部105に設けられた複数のノズルの中の1つノズル201のXZ断面を示している。同図(b)はノズル201の圧電素子が駆動される前の状態を、同図(c)は圧電素子の駆動によりノズル201内に樹脂114が引込まれた状態を、図3(d)は圧電素子の駆動によってノズル201から液滴203が吐出された直後の状態をそれぞれ示している。なお、図中、X、Y、Zの方向は図1に準じている。また、ノズル201内の樹脂114と外気との界面は液面202として示し、吐出した樹脂114は液滴203として示している。
【0042】
図4(a)は吐出部105に設けられた圧電素子に印加される駆動信号220の波形を示している。ここで横軸は時間を、縦軸は電圧をそれぞれ示している。本実施形態における駆動信号220の波形は、最も基本的な波形である台形波をなしている。この台形波の駆動信号220は、ノズル201内の樹脂114を液滴203として吐出させるべく圧電素子に印加される電圧信号であり、次の5成分から構成されている。すなわち、駆動信号220は、引き成分204、第1の待機成分205、押し成分206、電圧値を開始の値に戻す第2の待機成分207、戻し成分207の5成分から構成されている。
【0043】
駆動信号220の各成分は、T0からT5までの時間を5分割した時間領域に対応している。T0からT1までの時間領域に対応する電圧波形が引き成分204、T1からT2までの時間領域に対応する電圧波形が第1の待機成分205、T2からT3までの時間領域に対応する電圧波形が押し成分206となっている。さらに、T3からT4までの時間領域に対応する電圧波形が第2の待機成分207、T4からT5までの時間領域に対応する電圧波形が戻し成分208となっている。なお、T5からT6の時間領域は、液滴203がノズル201から吐出された後、ノズル201内の樹脂114の液面202が図3(b)に示す初期状態における位置(図4(b)における基準位置209)に戻るまでの時間を示している。なお、厳密には圧電素子に電圧を印加する時間に遅れて液面202は動くが、本実施形態ではその遅れ成分を省略して説明を行う。
【0044】
図4(b)はノズル201内の液面位置を示す図であり、液面202のZ方向の位置を示している。液面202はノズル201に含まれる圧電素子が駆動される前の初期状態において、基準位置209の位置にある。そして、圧電素子が駆動されると、一旦、+Z方向に引き込まれて引き込み位置210に達し、その後、-Z方向の押し出し位置211まで押し出される。この押し出し位置211に至るまでの間に液滴203が形成される。従って、実際の液面の位置は図4(b)に示す位置よりも-Z方向側にある。しかし説明を簡略化するために、図4(b)では、液滴203が形成される位置を示さずに液面202の代表的な位置を示している。そのため厳密には圧電素子に電圧を印加する時間に遅れて液面202は動く。
【0045】
複数のノズル201は、前述のとおりそれぞれが制御部106によって独立に制御されるが、その際に、制御部106は、付図示のメモリなどの記憶部に記憶保持された複数の互いに異なる駆動信号の波形を参照する。このような複数の駆動信号の波形はそれぞれ番号が付与され記憶部に記憶されている。すなわち、制御部106は、ノズル201ごとに、複数の互いに異なる駆動信号の波形のうち、所望の吐出条件(吐出タイミング・吐出速度・吐出量等)となる駆動信号を特定し、樹脂の液滴が所望位置に吐出されるように制御をおこなう。
【0046】
(着弾位置の調整について)
次に、吐出部105から吐出される樹脂の液滴の着弾位置の調整について説明する。液滴を吐出する際に用いられる吐出装置のノズルは、取り付け誤差や個々のノズル形状により、液滴が設計時に想定している所望の方向に飛翔していない場合もあり、実際に液滴が飛翔する飛距離が想定している距離と異なることが生じうる。また、ノズルごとに、駆動信号(吐出命令)に応じて駆動電圧が印加され始めてから吐出されるまでに生じるタイムラグ(吐出遅延時間)にばらつきがある可能性もある。そのような場合には、単に設計値通りに着弾位置がずれるように駆動タイミングを遅延させるなどして補正したとしても、所望の着弾位置に補正できないことが考えられる。
【0047】
まず、図5を用いて、ノズル201に対して駆動電圧が印加されてから、ノズル201から樹脂の液滴203が吐出され基板111に着弾するまでに生じる着弾位置シフトXの関係を説明する。インプリント装置101では基板111と吐出部105とは、基板ステージ104の移動に伴い、吐出処理の際に相対移動しているため、着弾位置シフトXは次の式により表される。
=T*Vws+L/V*(Vws-V*sinθ) ・・・式(8-1)
ここで、
[mm] :着弾位置シフト
[s] : 吐出遅延時間、吐出命令から実際に吐出開始されるまでの時間
[mm/s] :吐出速度801
L[mm] :液滴の飛翔距離802
θ[rad] :吐出角度803
ws[mm/s] : 基板ステージ移動速度804
【0048】
さらに、基板ステージ104に対するノズルのX方向取り付け残差によるずれX[mm]も考慮すると、基板111上の液滴の着弾位置のずれ量Xは
X=X+X
=T*Vws+L/V*(Vws-V*sinθ)+X ・・・式(8-2)
【0049】
なお、吐出角度803は微小角度であるため最終的に以下の式で表すことができる。
【0050】
【数1】
【0051】
上記式(8-3)からも、各ノズルから吐出される液滴の厳密に着弾位置を補正すためには、実際の液滴の飛翔距離Lと、実際の吐出命令から実際に吐出開始されるまでのタイムラグ(遅延時間T)をあらかじめ把握することが必要なことがわかる。すなわち、実際の飛翔距離Lと、駆動信号(吐出命令)に応じて駆動電圧が印加され始めてから実際に吐出されるまでのタイムラグ(吐出遅延時間T)をノズルごとに測定する。そして、その結果をもとに駆動条件を制御することができれば、ノズルごとに着弾位置の補正を厳密に行うことができる。
【0052】
以下、このような駆動条件の決定に必要となる飛翔距離Lの取得方法、遅延時間Tの取得方法について説明する。
【0053】
[飛翔距離Lの取得について]
図6及び図7を用いて飛翔距離Lの取得方法を説明する。図6は、事前に飛翔距離Lを求める際の流れを説明するためのフローチャートである。
【0054】
図6のフローチャートに示す処理は、制御部106が、インプリント装置101の各構成要素を制御することにより実現される。
【0055】
ステップS601では、制御部106は、基板ステージ104を所定速度で吐出部105に対して相対移動させながら、各ノズル201から第1の吐出速度Vj1で液滴が吐出されるように制御する。
【0056】
ステップS602では、制御部106は、基板ステージ104をS601と同じ所定速度で吐出部105に対して相対移動させながら、各ノズル201から第1の吐出速度Vj1と異なる第2の吐出速度Vj2で液滴が吐出されるように制御する。なお、第1の吐出速度Vj1と第2の吐出速度Vj2は吐出部105をインプリント装置101に搭載する前に、吐出速度調整装置で事前に吐出速度調整を行っておくことが好ましい。
【0057】
ステップS603では、制御部106は、観察用計測器128に第1の吐出速度Vj1でノズル201から吐出された液滴の着弾位置ずれ量XVj1を計測させる。各ノズル201から複数回の吐出を行った場合は、各ノズルの着弾位置ずれ量の平均を求めこれをXVj1とする。ここで観察用計測器128を用いて基板上に吐出された液滴の計測方法の詳細について図7を参照して説明する。図7は、着弾液滴502が、座標中心である目標着弾位置ずれている様子を示している。すなわち観察用計測器128が位置取得部として機能し、このように撮像視野501内の着弾液滴502の撮像視野501中心からの距離である撮像視野内着弾位置503を計測する。そして、制御部106が算出部(不図示)に撮像視野内着弾位置503と着弾液滴502を計測した際の基板ステージ104の位置より、基板ステージ104の位置基準での液滴の着弾位置を求め、各液滴の着弾位置からのずれ量を算出する。
【0058】
ステップS604では、制御部106は、観察用計測器128に第2の吐出速度Vj2でノズル201から吐出された液滴の着弾位置ずれ量XVj2を計測させる。各ノズル201から複数回の吐出を行った場合は、各ノズルの着弾位置ずれ量の平均を求めこれをXVj2とする。
【0059】
ステップS605では、制御部106は、ステップS603の計測結果である着弾位置ずれ量XVj1と、ステップS604の計測結果である着弾位置ずれ量XVj2と、式(8-3)より各ノズル201の飛翔距離802を算出する。
【0060】
まず、式(8-3)とステップS603の計測結果である着弾位置ずれ量XVj1、および式(8-3)とステップS604の計測結果である着弾位置ずれ量XVj2より以下の式(9-1)が得られる。
【0061】
【数2】
【0062】
この2つの式より、飛翔距離Lが以下のように求まる。
【0063】
【数3】
【0064】
[遅延時間Tの取得について]
次に、図8を用いて遅延時間Tの取得方法について説明する。図8は、事前に遅延時間Tを求める際の流れを説明するためのフローチャートである。図8のフローチャートに示す処理は、制御部106が、インプリント装置101の各構成要素を制御することにより実現される。
【0065】
ステップS801では、制御部106は、基板ステージ104を第1の基板ステージ移動速度Vws1で吐出部105に対して相対移動させながら、各ノズル201から所定の吐出速度で液滴が吐出されるように制御する。
【0066】
ステップS802では、制御部106は、基板ステージ104を第1の基板ステージ移動速度Vws1と異なる第2の基板ステージ移動速度Vws2で吐出部105に対して相対移動させる。そして各ノズル201からS801と同じ所定の吐出速度で液滴が吐出されるように制御する。
【0067】
ステップS803では、制御部106は、観察用計測器128に第1の基板ステージ移動速度Vws1でノズル201から吐出された液滴の着弾位置ずれ量XVws1を計測させる。各ノズル201から複数回の吐出を行った場合は、各ノズルの着弾位置ずれ量の平均を求めこれをXVws1とする。
【0068】
ステップS804では、制御部106は、観察用計測器128に第2の基板ステージ移動速度Vws2でノズル201から吐出された液滴の着弾位置ずれ量XVws2を計測させる。各ノズル201から複数回の吐出を行った場合は、各ノズルの着弾位置の平均を求めこれをVws2とする。
【0069】
ステップS805では、制御部106は、ステップS803の計測結果である着弾位置ずれ量XVws1と、ステップS804の計測結果である着弾位置ずれ量XVws2と、式(8-3)より各ノズル201の飛翔距離802を算出する。
【0070】
まず、式(8-3)とステップS803の計測結果である着弾位置ずれ量XVws1、および式(8-3)とステップS804の計測結果である着弾位置ずれ量XVws2より以下の式(10-1)が得られる。
【0071】
【数4】
【0072】
式(10-1)より、吐出遅延時間Tが以下のように求まる。なお、飛翔距離Lは式(9-2)により既知である。
【0073】
【数5】
【0074】
基板ステージ104に対する吐出部105の取り付け精度により生じる着弾位置のずれ量(取り付けシフト成分)Xである-Lθ+Xは式(10-1)より、以下のように求めることができる。
【0075】
【数6】
【0076】
[mm] :ノズルのX方向取り付け残差によるずれ
Lθ[mm] :吐出部105の精度に起因する着弾位置のずれ量
【0077】
すなわち、飛翔距離L、吐出遅延時間Tdを、上記取得方法を用いることであらかじめ取得できていると、吐出部105起因の着弾位置ずれ量を求めることができる。
【0078】
次に、基板上の着弾位置の補正について説明する。
【0079】
基板上の着弾位置は、上述の通り、吐出部105取り付け起因による着弾位置のずれ量と、吐出命令がだされてから実際に吐出されるまでのタイムラグの影響により、
X=T*Vws+X …式(10-4)
と表すことができる。すなわち、基板上の位置が+Xずれている場合には、(T*Vws+X)/Vws[s]吐出信号の入力タイミングを補正すればよい。
【0080】
また、着弾位置を駆動波形すなわち、吐出速度により補正する際には、着弾位置補正量ΔXから吐出速度補正量ΔVを求める。吐出速度補正量ΔVから吐出駆動波形の生成する方法の詳細は特開2019-107826に開示される。吐出速度補正量ΔVと着弾位置補正量ΔXの関係は以下の式で与えられる。
【0081】
【数7】
【0082】
すなわち、着弾位置ずれを補正する場合には、複数のノズルに対して入力する吐出信号の入力タイミングを補正することで一括して位置づれ補正する方法と、個々のノズルに対して行うことができる吐出速度を補正する方法の2種類を用いて調整することができる。
【0083】
図9を用いて具体的な補正方法の例を述べる。本例では基板ステージ104を+Xから-Xへ移動1102しながら、3つのノズルから目標着弾位置1103へ着弾させることを目的とする。
【0084】
まず制御部106は、図9(a)に示すように、吐出遅延時間Tおよび吐出部105の取り付け精度により生じる着弾位置のずれ量(取り付けシフト成分)Xを補正しない状態で、吐出命令を行う。つまり吐出命令位置1101に基板ステージ104が到達したタイミングで吐出部105に吐出命令を行う。これによりノズルaから吐出された液滴は、ずれ量ΔX11の着弾位置1104、ノズルbはずれ量ΔX21の着弾位置1105、ノズルcはずれ量ΔX31の着弾位置1106に着弾することになる。そして制御部106は、この着弾位置を観察用計測器128に計測させることで取得する。
【0085】
次に、制御部106は、それぞれの取得された位置ずれ量をもとに、吐出命令のタイミング補正や吐出速度の補正値の算出を行う。
【0086】
最も着弾が+X方向にずれているノズルcを補正するために、ノズルcの吐出命令を出す基板ステージ104の位置を-Xへ補正する。すなわち、(Td3*Vws+Xd3)/Vws吐出命令のタイミングを変更する。この際にノズルcの吐出速度の変更は行わない。その結果、図9(b)に示すように、ノズルaはずれ量ΔX12の着弾位置1108、ノズルbはずれ量ΔX22の着弾位置1109、ノズルcは目標着弾位置1110へ着弾することが予想される。
【0087】
次に、式(11-1)を用い、ノズルaは、着弾位置をΔX21(=ΔX11-ΔX13)ずらすために、吐出命令を出すタイミングをノズルcと同等に補正したうえでΔVj12だけ遅延する吐出となるように吐出速度ΔVj12を変更する。また、ノズルbは、吐出命令を出すタイミングをノズルcと同等に補正したうえで着弾位置をΔX22(=ΔX11-ΔX13)ずらすために、吐出速度ΔVj13を変更する。
【0088】
すなわち、制御部106は、着弾位置の計測結果に応じて、あらかじめ算出されたT,Lを用いてそれぞれのノズルからの吐出速度を決定(調整)し吐出動作が行われるように制御する。その結果、図9(c)に示すように、ノズルa、b、cすべてを目標着弾位置1111へ着弾させることができる。
【0089】
なお、図9(a)に示すノズルcの着弾位置1106ずれ量ΔX31、すなわち最も着弾位置がずれている液滴のずれ量が、吐出速度で補正できる範囲内である場合には、吐出命令のタイミングを変更するのではなく、吐出速度を変更して調整してもよい。具体的には、ノズルからの吐出速度は、5.0m/s~7.0m/sの範囲で調整が可能であることから、最もずれている液滴のずれ量が当該速度の範囲内で補正できるずれ量であれば、吐出速度を変更して調整すればよい。
【0090】
また、ノズルcの位置に合わせて吐出命令を出すタイミングをずらしたのちに、再度吐出動作を行ってその位置を計測し、その計測結果に合わせて吐出速度の変更を行ってもよい。
【0091】
このように、本実施形態ではあらかじめ実際の飛翔距離Lと、駆動信号(吐出命令)に応じて駆動電圧が印加され始めてから実際に吐出されるまでのタイムラグ(吐出遅延時間Td)をノズルごとに測定し、その結果をもとにノズルごとの駆動条件を制御している。すなわちノズルごとに吐出速度を制御しており、これにより着弾位置の補正をノズルごとに厳密に行うことができる。
【0092】
なお本発明は、パターンを有しない部材(平坦化部材)を硬化性組成物に接触させた状態で硬化させることにより、基板上に硬化性組成物の硬化物による平坦化層を設ける平坦化装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0093】
101 インプリント装置
105 吐出部
106 制御部
128 観察用計測器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9