(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022020696
(43)【公開日】2022-02-01
(54)【発明の名称】脂質組成のマイクロバブル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 49/22 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
A61K49/22
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021174298
(22)【出願日】2021-10-26
(62)【分割の表示】P 2018559676の分割
【原出願日】2017-02-01
(31)【優先権主張番号】62/289,588
(32)【優先日】2016-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518269625
【氏名又は名称】トラスト バイオソニックス インク
【氏名又は名称原語表記】TRUST BIOSONICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110003018
【氏名又は名称】特許業務法人IPアドバンス
(72)【発明者】
【氏名】ワン チュン-シン
(72)【発明者】
【氏名】ティング チェンユー
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085HH09
4C085JJ03
4C085KB20
4C085KB21
4C085KB39
4C085KB41
4C085KB60
4C085KB93
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱安定性及び長期間のin vivo安定性に優れており、超音波造影剤として長期の有効時間が期待できるマイクロバブルの懸濁液を提供する。
【解決手段】PPC又はDPPG等、遷移温度が約41度である第1脂質と、DSPC又はDSPG等、遷移温度が約55度である第2脂質と、DSPE-PEG2000、DSPE-PEG3000又はDSPE-PEG5000等のPEG化DSPEとを含む脂質混合物と、生体適合性がある気体とを備え、第1脂質は、脂質混合物の全体量に対し、約40~63重量%である、生理的に許容可能な脂質担体に気体が充填されたマイクロバブルを含有する懸濁液とする。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)遷移温度が摂氏41度である第1脂質と、遷移温度が摂氏55度である第2脂質と、PEG化1,2ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(以下、PEG化DSPEと呼ぶ。)と、を含む脂質混合物と、
(b)生体適合性がある気体と、を備え、
前記第1脂質は、前記脂質混合物の全体量に対し、40~63重量%の範囲で含まれ、
前記PEG化DSPEは、前記脂質混合物の全体量に対し、約10~15重量%である、
生理的に許容可能な脂質担体に気体が充填されたマイクロバブルを含む懸濁液。
【請求項2】
前記第1脂質は1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(以下、DPPCと呼ぶ。)又は1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1'-rac-グリセロール)(以下、DPPGと呼ぶ。)である、請求項1に記載の懸濁液。
【請求項3】
前記第1脂質は、前記脂質混合物の全体量に対し50~63重量%の範囲で含まれる、請求項1に記載の懸濁液。
【請求項4】
前記第1脂質は、前記脂質混合物の全体量に対し40~60重量%の範囲で含まれる、請求項1に記載の懸濁液。
【請求項5】
前記第2脂質は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(以下、DSPCと呼ぶ。)又は1,2-ジオクタデカノリル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1'-rac-グリセロール)(以下、DSPGと呼ぶ。)である、請求項1に記載の懸濁液。
【請求項6】
前記PEG化DSPEは、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](以下、DSPE-PEG2000と呼ぶ。)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-3000](以下、DSPE-PEG3000と呼ぶ。)又は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-5000](以下、DSPE-PEG5000と呼ぶ。)である、請求項1に記載の懸濁液。
【請求項7】
さらに、前記懸濁液は1~20%のグリセロールを含有する、請求項1に記載の懸濁液。
【請求項8】
前記気体はパーフルオロカーボン、SF6、Ar及びN2の群から選択される、請求項1に記載の懸濁液。
【請求項9】
請求項1に係る気体が充填された、マイクロバブルを含有する懸濁液を保存するシールバイアル。
【請求項10】
前記気体はパーフルオロカーボン、SF6、Ar及びN2の群から選択される、請求項10に記載のシールバイアル。
【請求項11】
前記第1脂質はDPPC又はDPPGである、請求項9に記載のシールバイアル。
【請求項12】
前記第2脂質はDSPC又はDSPGである、請求項9に記載のシールバイアル。
【請求項13】
前記PEG化DSPEは、DSPE-PEG2000、DSPE-PEG3000又はDSPE-PEG5000である、請求項9に記載のシールバイアル。
【請求項14】
さらに、前記懸濁液は1~20%のグリセロールを含有する、請求項9に記載のシールバイアル。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
従来の超音波エコーに超音波造影剤を使用することにより、コントラストが向上した超音波を入手することができる。商用的に入手できる造影剤は、静脈投与することによって体循環に送達する、気体が充填されたマイクロバブルである。現在、様々なマイクロバブル造影剤が入手可能である。マイクロバブルは、シェルの構造、気体コアの構造、ターゲットとなるか否かによって異なる。シェル又は気体コアの組成に関わらず、マイクロバブルのサイズはおおよそ均一である。マイクロバブルのサイズは、直径1~5マイクロメーターである。このようなマイクロバブルをベースとした超音波造影剤は、血流でよく循環し、超音波画像において向上したエコーを提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明の観点は、生理的に許容可能な脂質担体に気体で充填されたマイクロバブルを含有する懸濁液に関する。懸濁液は、(a)遷移温度が約41度である第1脂質と、DSPC又はDSPG等、遷移温度が約55度である第2脂質と、PEG化DSPEと、を含む脂質混合物と、(b)生体適合性がある気体と、を備える。この第1脂質は、脂質混合物の全体量に対し、約40~63重量%の範囲で含まれる。
【0003】
本発明の観点はシールバイアルに関する。シールバイアルは、(a)遷移温度が約41度である第1脂質と、DSPC又はDSPG等、遷移温度が約55度である第2脂質と、PEG化DSPEと、を含む脂質混合物と、(b)生体適合性がある気体と、を備え、前記第1脂質は、前記脂質混合物の全体量に対し、約40~63重量%の範囲で含まれる。
【0004】
本発明の観点は、気体が充填されたマイクロバブルを含有する懸濁液又は懸濁液を保存するシールバイアルを用意する方法に関する。
【0005】
<参照による組み込み>
本明細書で言及されるすべての出版物、特許及び特許出願は、各々の出版物、特許、または、特許出願が、特異的にかつ個別に参照することによって組み込まれると意図されるのと同じ程度まで、参照によって本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の新規な特徴は、とりわけ添付の特許請求の範囲で説明される。本発明の特徴および利点は、本発明の原則が用いられる実施形態を説明する以下の詳細な説明と、以下の添付図面とを引用することによってより良く理解されるであろう。
【
図1A】異なるDPPC比で製造した、サンプル1a~8aのマイクロバブル濃度を表す。
【
図1B】異なるDPPC比で製造した、サンプル1a~8aのマイクロバブルの平均径を表す。
【
図2A】異なるDPPG比で製造した、サンプル1b~8bのマイクロバブル濃度を表す。
【
図2B】異なるDPPG比で製造した、サンプル1b~8bのマイクロバブルの平均径を表す。
【
図3】DPPC、DSPC及びDSPE-PEG-2000の脂質混合物によって調製された、サンプル1a~8aで生成したマイクロバブル画像の強度の時間変化を示す。
【
図4A】DPPC、DSPC及びDSPE-PEG2000の脂質混合物によって用意された、サンプル1a~8aの時間-蓄積強度曲線を示す。
【
図4B】サンプル1aの相対的蓄積強度値を100%とした場合における、DPPC、DSPC及びDSPE-PEG2000の脂質混合物によって用意された、サンプル1a~8aの相対的蓄積強度の結果である。
【
図5】DPPG、DSPC及びDSPE-PEG-2000の脂質混合物によって用意されたサンプル3a、6a、3c、6cで生成した、マイクロバブル画像の強度の時間変化を示す。
【
図6A】DPPG、DSPC及びDSPE-PEG2000脂質混合物によって用意されたサンプル1bから8bの時間-蓄積強度曲線を示す。
【
図6B】サンプル1bの相対蓄積強度値を100%とした場合における、DPPG、DSPC及びDSPE-PEG-2000の脂質混合物によって用意された、サンプル1b~8bの相対蓄積強度の結果を示す。
【
図7A】サンプル1a、3a、6a、3c、6cで生成されたマイクロバブルの濃度を示す。
【
図7B】サンプル1a、3b、6b、3d、6dで生成されたマイクロバブルの濃度を示す。
【
図8A】サンプル3a、6a、3c、6cで生成したマイクロバブルの時間-強度の変化を示す画像である。
【
図8B】サンプル3b、6b、3d、6dで生成したマイクロバブルの時間-強度の変化を示す画像である。
【
図8C】サンプル3a、6a、3c、6cで生成された時間-蓄積強度曲線の結果を示す。
【
図8D】サンプル3b、6b、3d、6dで生成された時間-蓄積強度曲線の結果を示す。
【
図8E】サンプル1aの相対蓄積強度値を100%とした場合における、サンプル1a、3a、6a、3c、6cで生成された相対蓄積強度の結果を示す。
【
図8F】サンプル1aの相対蓄積強度値を100%とした場合における、サンプル1a、3b、6b、3d、6dで生成された相対蓄積強度の結果を示す。
【
図9A】サンプル1a、3a、6a、3c、6cで生成したマイクロバブルの濃度を示す。
【
図9B】サンプル3a、6a、3c、6cで生成したマイクロバブル画像の強度の時間変化を示す。
【
図9C】サンプル3a、6a、3e、6eの時間-蓄積強度曲線を示す。
【
図9D】サンプル1aの相対蓄積強度値を100%とした場合における、サンプル1a、3a、6a、3e、6eの相対的蓄積強度を示す。
【
図10A】サンプル1a、6a、6e、PEG40S_2及びPEG40S_3におけるマイクロバブルの濃度を示す。
【
図10B】サンプル1a、6a、6e、PEG40S_2及びPEG40S_3で生成したマイクロバブルの画像強度の時間変化を示す。
【
図10C】サンプル6a、6e、PEG40S_2及びPEG40S_3におけるマイクロバブルの時間-蓄積強度曲線を示す。
【
図10D】サンプル1aの相対蓄積強度値を100%とした場合における、サンプル1a、6a、6e、PEG40S_2及びPEG40S_3におけるマイクロバブルの時間-蓄積強度曲線を示す。
【
図11A】サンプル1a、3a、5a、3f、5fにおけるマイクロバブルの濃度を示す。
【
図11B】サンプル3a、5a、3f、5fで生成したマイクロバブル画像の強度の時間変化を示す。
【
図11C】サンプル3a、5a、3f、5fにおけるマイクロバブルの時間-蓄積強度曲線の結果を示す。
【
図11D】サンプル1aの相対蓄積強度値を100%とした場合における、サンプル1a、3a、5a、3f、5fの相対蓄積強度の結果を示す。
【発明の詳細な説明】
【0007】
出願人は思いがけないことに、熱安定性及び長期間のin vivo安定性に優れており、超音波造影剤として長期の有効時間を気体できる、マイクロバブルを生成する方法を発見した。
【0008】
従来技術より、画像化技術では比較的少ないマイクロバブル、例えば注入あたりの106~108のマイクロバブル必要とされることが知られている。現在、購入可能なマイクロバブルは直径が大きく、血流において安定しないことから、目的の組織において短時間で十分な量を蓄積することが困難である。
【0009】
本願発明では、生理的に許容可能な液体担体に含まれた、濃度が高くかつ安定性に優れた、気体で充填されたマイクロバブルの懸濁液を発見した。
【0010】
特に本発明は、生理的に許容可能な脂質担体に気体が充填されたマイクロバブルを含有する懸濁液に関する。懸濁液は(a)DPPC又はDPPG等、遷移温度が約41度である第1脂質と、DSPC又はDSPG等、遷移温度が約55度である第2脂質と、DSPE-PEG2000、DSPE-PEG3000又はDSPE-PEG5000等のPEG化DSPEと、を含む脂質混合物と、(b)生体適合性がある気体と、を備える。第1脂質は、前記脂質混合物の全体量に対し、約40~63重量%である。一実施形態において、第1脂質はDPPC又はDPPGである。一実施形態において、第1脂質は、脂質混合物の全体量に対し、50~63重量%の範囲、40~60重量%の範囲、40~50重量%の範囲又は40~50重量%の範囲で含まれる。一実施形態において、第1脂質はDPPCである。一実施形態において、第1脂質はDPPGである。一実施形態において、第2脂質はDSPC又はDSPGである。一実施形態において、第2脂質はDSPCである。一実施形態において、第2脂質はDSPGである。一実施形態において、PEG化DSPEは、DSPE-PEG2000、DSPE-PEG3000又はDSPE-PEG5000である。一実施形態において、PEG化DSPEは、DSPE-PEG2000である。一実施形態において、PEG化DSPEは全体量に対して約10~15重量%の範囲で含まれる。一実施形態において、PEG化DSPEは全体量に対して約12.5重量%の範囲で含まれる。一実施形態において、懸濁液はシールバイアルに保存されている。一実施形態において、本発明は懸濁液又は懸濁液が保存されたシールバイアルを製造する方法に関する。一実施形態において、前記懸濁液又は懸濁液が保存されたシールバイアルは、1~20%のグリセロールが含まれる。一実施形態において、前記懸濁液又は懸濁液が保存されたシールバイアルは、5%のグリセロールが含まれる。一実施形態において、前記気体はパーフルオロカーボン、SF6、AR及びN2の群から選択される。一実施形態において、前記パーフルオロカーボンは、C3F8、C4F10、又はC5F12である。 一実施形態は、気体が充填されたマイクロバブルの懸濁液に関する。懸濁液は、遷移温度が摂氏約41度の第1のリン脂質(DPPC又はDPPG)、DSPC又はDSPGである第2のリン脂質、及びDSPE-PEG2000、DSPE-PEG3000又はDSPE-PEG5000等であるPEG化DSPEを含む脂質混合物と、(b)生体適合性がある気体と、を備え、前記第1脂質は、前記脂質混合物の全体量に対し、約40~63重量%の範囲で含まれる。一実施形態において、懸濁液はシールバイアルに保存されている。一実施形態において、本発明は懸濁液又は懸濁液が保存されたシールバイアルを製造する方法に関する。
【0011】
一実施形態は気体が充填されたマイクロバブルの懸濁液に関する。懸濁液は、(a)DPPC又はDPPGである第1のリン脂質と、遷移温度が摂氏約55度である第2のリン脂質(DSPC又はDSPG等)と、及びDSPE-PEG2000、DSPE-PEG3000又はDSPE-PEG5000等であるPEG化DSPEを含む脂質混合物と、(b)生体適合性がある気体と、を備え、前記第1脂質は、前記脂質混合物の全体量に対し、約40~63重量%で含まれる。一実施形態において、懸濁液はシールバイアルに保存されている。一実施形態において、本発明は懸濁液又は懸濁液が保存されたシールバイアルを製造する方法に関する。
【0012】
一実施形態は気体が充填されたマイクロバブルの懸濁液に関する。懸濁液は(a)DPPC又はDPPGを備える第1のリン脂質と、DSPC又はDSPGである第2のリン脂質と、及びDSPE-PEG2000、DSPE-PEG3000又はDSPE-PEG5000等であるPEG化DSPEを含む脂質混合物と、(b)生体適合性がある気体と、を備える。第1脂質は、前記脂質混合物の全体量に対し、約40~63重量%で含まれる。一実施形態において、懸濁液はシールバイアルに保存されている。一実施形態において、本発明は懸濁液又は懸濁液が保存されたシールバイアルを製造する方法に関する。
【0013】
一実施形態は、気体が充填されたマイクロバブルの懸濁液に関する。懸濁液は(a)遷移温度が約41度である、第1のリン脂質(DPPC又はDPPG等)と、DSPC又はDSPGである第2のリン脂質と、DSPE-PEG2000(DSPE-PEG2000は、DSPE-PEG3000又はDSPE-PEG5000と置換可能である)を含む脂質混合物と、(b)生体適合性がある気体と、を備える。第1脂質は、前記脂質混合物の全体量に対し、約40~63重量%の範囲で含まれる。一実施形態において、懸濁液はシールバイアルに保存されている。一実施形態において、本発明は懸濁液又は懸濁液が保存されたシールバイアルを製造する方法に関する。
【0014】
一実施形態は、気体が充填されたマイクロバブル懸濁液に関し(a)DPPC又はDPPGと、DSPC又はDPPGと、DSPE-PEG2000、DSPE-PEG3000及びDSPE-PEG5000から選択された、PEG化されたDSPEを備える液体混合物と、(b)生体適合性がある気体と、を備える。DPPC又はDPPGの比は脂質混合物内において40重量%~63重量%の範囲で含まれる。一実施形態は、懸濁液はシールバイアル内に保存されている。一実施形態は、前記懸濁液又はシールバイアルに保存される懸濁液の製造方法に関する。
【0015】
一実施形態は、遷移温度(Tm)が摂氏41度である第1脂質には、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1'-rac-グリセロール)(DPPG)等が適しており、特に本開示の脂質混合物内において、40重量%~63重量%で含まれる。一実施形態では、開示された脂質混合物において、50重量%~63重量%の範囲、40重量%~60重量%の範囲、または40重量%~50重量%の範囲で含まれる。
【0016】
本願発明においては、DPPCは脂質混合物において40重量%~63重量%の範囲で含まれることにより、安定性に優れた高濃度のマイクロバブルを供給することができる。一実施形態において、DPPCは50重量%~60重量%の範囲で含まれる。
【0017】
同様に、DPPCを荷電した脂質DPPGに置き換えることにより、安定性が優れた高濃度のマイクロバブルを供給できる。一実施形態では、開示された脂質混合物において、DPPGは40重量%~63重量%の範囲で含まれる。一実施形態では、DPPGは40重量%~60重量%の範囲、40重量%~50重量%の範囲、または50重量%~60重量%の範囲で含まれる。
【0018】
本発明の慣行において、想定以上の結果を与える安定性に優れた高濃度のマイクロバブル懸濁液には、脂質混合物として、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、IUPAC名[(2R)-2-3-ジ(オクタデカノキシ)プロピル]2-(トリメチルアザニウミル)エチルホスフェート又は1,2-ジオクタデカノリル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1'-rac-グリセロール)(DSPG)が使用される。DSPC及びDSPGの遷移温度(Tm)は摂氏55度を持つことから、同様の性質及び遷移温度を持つ脂質は同一または同様の結果をもたらすことが期待できる。
【0019】
これまで開示されてきた内容(例えばUS2009/0263330号公報を参照)とは異なり、ポリマー変性脂質の含有量(例えば開示された脂質混合物においてDSPE-PEG2000が12.5w/wで含まれる)は、マイクロバブルの量に悪影響を及ぼさないことが発見された。驚くべきことに、10~15%w/wのDSPE-PEG2000及び遷移温度が低い脂質の好ましい組成物(例えばDPPC及びDPPG)と遷移温度が高い脂質(例えばDSPC又はDSPG)とを混合することにより、想定以上に安定したマイクロバブルを生成できる。
【0020】
従前より、ポリマー変異、特にポリエチレングリコール(PEG)結合脂質が知られている。ここで開示されているPEG脂質は、ポリエチレングリコール(PEG)結合脂質を意味し、例えば、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG2000)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-3000](DSPE-PEG3000)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-5000](DSPE-PEG5000)等をいう。
【0021】
DSPE-PEG3000及びDSPE-PEG5000は、全てDSPE-PEG2000の機能と同様に反応するため、PEG化DSPEは、場合によっては想定以上の結果が2つのPEG化脂質にも及ぶことがある。実施例4は、DSPE-PEG2000が、DSPE-PEG5000の代わりに使用された場合における、想定外の結果を示す。一実施形態では、脂質混合物における、DSPE-PEG2000、DSPE-PEG3000又はDSPE-PEG5000等のPEG化DSPEの比は、約10~15重量%の間である。一実施形態では、脂質混合物における、DSPE-PEG2000、DSPE-PEG3000又はDSPE-PEG5000等のPEG化DSPEの比は、約12.5重量%である。
【0022】
マイクロバブルに適した気体は、例えば、気体、O2、N2、H2、CO2、N2O、SF6、希ガス、炭化水素ガス、パーフルオロカーボン、その他フッ素ガス、並びにはこれらの組み合わせが含まれる。
【0023】
一実施形態において、シールバイアスに保存される懸濁液に使用される気体は、C3F8、C4F10、C4F12又はSF6、Ar又はN2等のパーフルオロカーボンガスの群から選択される。
【0024】
一実施形態では、開示されているシールバイアル又は懸濁液は、さらに1~20%のグリセロールを含む。一実施形態では、シールバイアル又は懸濁液は、5%のグリセロールを含む。マイクロバブル生成の分野において知られている方法に従って、追加のグリセロールが使用される。
【0025】
適した脂質担体は、水、典型的には無菌のパイロジェンフリー水(中間の親水性製品への汚染をなるべく防止するため)、食塩水(注入する最終製品が低張性ではないため有利にバランスできる)、塩又は砂糖、糖アルコール、グリコール又は他の非イオンポリオール物質(例えばグルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール)など等張化剤を1つ以上含む水溶液が挙げられる。
【0026】
一実施形態においては更に、グリセロールは、ポリエチレングリコール、ペプチド、アルブミン、アミノ酸、糖アルコール、ブタン-1-3-ジオール、プロパン-1,2-3-トリオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1-3-ジオール、プロパン-1-オール、エタン-1,2-ジオール、エタノール、メタノール、ジメチルスルホオキシド、またはこれらの組み合わせと置き換えられる。
【0027】
他の賦形剤が使用される場合には、ラクトース、スターチ(例えばコーンスターチ)、変性コーンスターチ、マンニトール、ソルビトール、ウッドセルロース、結晶セルロース、これらの組み合わせなどが含まれる。
【0028】
バインダーが使用される場合、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、これらの部分ケン化物などが含まれ、これらは単独または組み合わせて使用可能である。
【0029】
崩壊薬が使用される場合は、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルボキシデンプンナトリウム、カルシウムカルメロース、デンプングリコール酸ナトリウム、コリドンCL、コーンスターチ、部分α化デンプン、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン(例えばクロスポビドンXL-10)、これらの組み合わせ等が含まれる。
【0030】
潤滑剤が使用される場合、例えばマグネシウムステアレート、ステアリン酸、パルミチン酸、カルシウムステアレート、タルク、これらの組み合わせ等が含まれる。
【0031】
本開示の化合式、組成物又は原料に関して使用される用語「許容可能な」とは、治療される検体の一般的な健康に長期間の悪影響を与えないものをいう。
【0032】
本開示で使用される用語「担体」とは、化合物を細胞又は組織への浸透を促進する、比較的に毒性が低い化合物又は作用剤をいう。
【0033】
用語「希釈液」は、送達前に化合物を希釈するために使用する化合物をいう。希釈液は安定した環境を与えるため、化合物を安定させるために使用することもできる。バッファ溶液(pH制御又は管理を与えることもできる)で溶解された塩は、希釈液として使用することができ、これにはホスフェートでバッファされた食塩水が含まれるが、これに限定されない。
【0034】
用語「対象」又は「患者」は哺乳類を包含する。哺乳類の例は、これに限定されないが、全ての哺乳網、すなわちヒト、チンパンジー及び他のサル人類及びサルなどの猿人類、牛、馬、羊、山羊、豚などの家畜、ウサギ、犬、猫などの身近な動物、齧歯動物、マウス、ねずみ、ギニーピッグ、等が複じゃれた、実験用動物でもある。一実施形態において、哺乳類はヒトである。
【0035】
一実施形態において、液体状の懸濁液には、1つまたは複数のポリマーが含まれる。ポリマーには、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系水溶性ポリマー、又はクロスリンクされたカルボキシ含有ポリマー等の非水溶性ポリマーが含まれる。所定の医薬組成物には、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボマー(アクリル酸重合体)、ポリ(メチルメチアクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリカルボフィルアクリリン酸/ブチルアクリレートコポリマー、アルギン酸ナトリウム及びデキストラン等から選択される、粘膜付着性のポリマーが含まれる。
【0036】
これらの多様な実施形態又はオプションは、様々な、又は全ての組み合わせで使用できる。
以下の説明は、本発明を説明するものであり、本発明の内容を限定するものではない。
【実施例0037】
<実施例1.DSPCを基礎とした脂質混合物によるマイクロバブルの生成>
設計:気体が充填されたマイクロバブルを含有する懸濁液に使用する脂質混合物の全体的な遷移温度(Tm)を低くするために、Tmが摂氏約41度の脂質(例えばDPPC又はDPPG等)と、Tmが摂氏約55度の脂質(例えばDSPC又はDSPG等)とを一緒に使用した。
【0038】
手順1:気体を充填する前における脂質混合物の準備
表1及び表2に示されるサンプル番号の組成物に従い、各バイアルに、第1脂質(例えばDPPC又はDPPG)、第2脂質(例えばDSPC又はDSPG)及びPEG化脂質(DSPE-PEG2000)の脂質混合物を、クロロフォルム及びメタノールなどの適した有機溶媒に溶解する。有機溶媒が取り除かれた後、均一な脂質混合物のフィルムが形成される。生成された脂質混合物に対し、PBS(例えば5%グリセロールPBS)等の食塩水を含むグリセロールを1~20%の範囲で添加する。必要であれば水溶性脂質混合物を加熱し、均一なリポソーム溶液を生成する。0.8mLのリポソーム溶液を2mLグラスバイアルに分配するバイアル毎の脂質混合物の濃度は、4mg/mLで固定される。
【0039】
手順2:気体の充填
手順1で準備したバイアルを、C3F8、C4F10、C4F12又はSF6、Ar又はN2等のパーフルオロカーボンガスを含有する密閉チャンバで密封する。代替として、バイアルを所望の気体で密封前にパージしても良い。気体が充填されたバイアルは室温または冷蔵室で保管され、使用時にバブルが発生する状態で置かれる。
【0040】
手順3:使用前または試験前に、バイアルを撹拌機に配置し、マイクロバブル溶液が形成されるまで、リポソーム溶液を室温で攪拌する。
【表1】
メモ:DSPE-PEG2000の重量比(%)は12.5%で固定されており、モル比は各組成において3.6~3.9%である。
【表2】
メモ:DSPE-PEG2000の重量比(%)は12.5%で固定されており、モル比は各組成において3.6~3.9%である。
【0041】
<実施例2>
実施例の調製方法によって調製されたマイクロバブルの測定
各バイアルで調製されたマイクロバブルをマルチサイザーで測定し、マイクロバブルの平均径及び濃度を特定した。
結果は、表3及び表4、
図1及び
図2で表す。
【表3】
【表4】
【0042】
図1A及び
図1Bは、サンプル番号1a~8aに含まれるマイクロバブルの濃度及び平均径を表す。
図2A及び
図2Bは、サンプル番号1b~8bに含まれるマイクロバブルの濃度及び平均径を表す。
【0043】
形成されたマイクロバブルの濃度及び平均径に基づき、DSPC(Tm=摂氏55度)及びDSPE-PEG2000と共に、40%~62.5%(w/w)のDPPC(Tm=摂氏41度、電荷が中性の脂質)を含むサンプルは、よりよい結果を与えることが明確に示される。
【0044】
形成されたマイクロバブルの濃度及び平均径に基づき、同様に、DSPC(Tm=摂氏55度)及びDSPE-PEG2000と共に、40%~62.5%(w/w)のDPPG(Tm=摂氏41度、荷電した脂質)を含むサンプルは、よりよい結果を与える。
【0045】
データによって、遷移温度が低い(Tm=摂氏41度)第1脂質(荷電されている、又は荷電されていない)が40%~62.5%(w/w)、DSPCである第2脂質、DSPE-PEG2000が12.5%(w/w)である場合、マイクロバブルの平均径が小さいにも関わらず、高濃度のサンプルを供給する。
【0046】
<実施例3:調製したマイクロバブルの安定性評価>
各バイアルで調製されたマイクロバブルは、人間に使用する際の温度である摂氏37度以下での安定性について、試験を行った。食塩水でマイクロバブルを8000倍に希釈し、摂氏37度においてファントムで配置された。試験中、温度は管理された。各サンプルの強度を記録するために、臨床用の超音波診断装置である、Philips CX-50を使用し、超音波造形画像状態における、結果物のマイクロバブル溶液画像を撮影した。取得した画像を処理するためには、Matlab社のソフトウェアを使用し、各ピクセルの色彩レベル及び任意の単位によってコントラスト強度を計算した。
【0047】
図3は各サンプル1a~8aにおける、マイクロバブルの強度と時間変化の画像である。各サンプル(1a~8a)の超音波画像のコントラスト強度を計算し、蓄積することにより、各サンプル間のエコー性能を比較した。
【0048】
本発明は、超音波イメージングにおいて使用する頑丈な気泡を持つ造影剤を供給することを目的としている。これには2つの見地、すなわち、超音波イメージングにおけるコントラストの向上及び気泡の持続性(有効な気泡の半減期のイメージング)を考慮する必要がある。臨床試験においては、長期間のエコー向上性及び持続性が求められる。例えば、局所的な肝病変を診断するためには、10分よりも長い半減期が推奨される。すなわち、本発明では蓄積方法を使用し、当初のコントラスト強度を使用せず、各形成における全体のエコー性能を表す。
【0049】
まずは、各サンプルにおける各超音波画像のコントラスト強度を数値化し、時間とともに蓄積する。毎分のコントラスト強度が蓄積される。時間間隔は50分で設定する。コントラスト向上性及び持続性が高い気泡は、最後の時点(すなわち50分)において高い蓄積強度を持つ。
【0050】
図4Aは、試験の開始から50分間に蓄積したコントラスト強度の数値に基づく(表5を参照)、時間-蓄積強度の曲線を示す。
【表5】
【0051】
図4Bは、サンプル1aの蓄積強度値を100%に通常化した場合における、サンプル1aから8aまでの相対的な蓄積強度の比較結果を示す。
【0052】
図4Bの結果は、脂質混合物におけるDPPCの範囲が40重量%~62.5重量%であるサンプル3a、4a、5a、6aは、サンプル1a、2a、7a、8aと比較して、著しい違いがあることを示す。
【0053】
安定性試験の結果は、DSPC(Tm=摂氏55度)及びDSPE-PEG2000と共に40%~62.5%(w/w)の範囲でDPPCを使用(Tm=摂氏41度)することにより、撮像目的においては有用な安定したマイクロバブルが供給できることを示す。DPPC、DSPC及びDSPE-PEG2000の脂質混合物によって用意されたマイクロバブルの遷移温度(Tm)は、摂氏45~49.5度の間で推移する。試験の結果は、DSPC及びDSPE-PEG-2000と共に40%~60%(w/w)の範囲でDPPCを使用することにより、撮像目的において更に安定したマイクロバブルが供給できることを示す。DPPC、DSPC及びDSPE-PEG-2000の脂質混合物によって用意されたマイクロバブルの望ましい遷移温度(Tm)は、摂氏46.6~49.5度の間で推移する。
【0054】
図5は、サンプル1bから8bにおいて、マイクロバブルの強度の時間変化を示す画像である。DPPG、DSPC及びDSPE-PEG2000脂質混合物によって用意された処方に基づき、各サンプル(サンプル1bから8b)の超音波画像のコントラスト強度を計算及び蓄積し、サンプル間のエコー性能を比較した。
【0055】
図6Aは、試験開始から50分間に蓄積したコントラスト強度の数値に基づき(表6を参照)、サンプル1b~8bの時間-蓄積強度曲線を表す。
【表6】
【0056】
図6Bは、サンプル1bの蓄積強度値を100%に通常化した場合における、サンプル1bから8bの相対的な蓄積強度の比較結果を示す。
【0057】
DPPGを全体量のうちの40%~62.5%の範囲で含有した、サンプル3b、4b、5b及び6bは、サンプル1b、2b、7b及び8bと比較して著しい違い及び改善があることが判明した。
【0058】
同様に、DSPC(Tm=摂氏55度)及びDSPE-PEG-2000と共に使用された、DPPGの範囲が40%~62.5%(w/w)のDPPG(Tm=摂氏41度、荷電した脂質)のサンプルは、形成されたマイクロバブルの濃度及び平均径に基づき、よりよい結果を与えることを示した。この発見に基づき、DPPG、DSPC及びDSPE-PEG2000の脂質混合物によって準備されたマイクロバブルの遷移温度(Tm)は、摂氏45~49.5度の間で推移する。一実施形態では、DSPG及びDSPE-PEG2000と共に、62.5%(w/w)のDPPGを使用することにより、撮像目的においてさらに安定したマイクロバブルを供給する。
【0059】
要約すると、このデータは、DSPC(Tm=摂氏55度)等の遷移温度が高い脂質及び約12.5%(w/w)のDSPE-PEG2000と、40%~62.5%(w/w)の、荷電された又はされていない、遷移温度が低い脂質は、人体に使用される場合に安定性が高い(例えば摂氏37度)マイクロバブルを供給することを示す。
【0060】
<実施例4:PEG化DSPEを含有する製剤によって生成されたマイクロバブルの安定性評価>
実施例3で示す通り、各バイアルで調製されたマイクロバブルについて、人間に使用する場合の温度である摂氏37度における安定性を試験した。本試験の目的は、脂質混合物で使用されるDSPE-PEG3000又はDSPE-PEG5000等、同様のPEG化DSPEが、同様の結果を与えるかを確認することである。
本試験においては、DSPE-PEG5000を使用した。
【0061】
脂質混合物は、表7及び表8に基づき調製された。
【表7】
【表8】
【0062】
各バイアルで調製したマイクロバブルをマルチサイザーで評価し、マイクロバブルの平均径及び濃度を特定する。結果は、表9及び表10で表す。
【表9】
【表10】
【0063】
表9で示される通り、サンプル3a及びサンプル3cのマイクロバブルの濃度及び平均径は類似しかつ比較可能であり、また、サンプル6a及びサンプル6cのマイクロバブルの濃度及び平均径は類似しかつ比較可能である。特に
図7Aで示す通り、マイクロバブルのサンプル1a、3a、6a、3c、6cの濃度を比較した場合、サンプル3a、6a、3c、6cの濃度はサンプル1aよりも高い。
【0064】
表10で示される通り、サンプル3b及びサンプル3dのマイクロバブルの濃度及び平均径は類似しかつ比較可能であり、また、サンプル6b及びサンプル6dのマイクロバブルの濃度及び平均径は類似しかつ比較可能である。特に
図7Bで示される通り、サンプル1a、3b、6b、3d、6dのマイクロバブルの濃度を比較した場合、サンプル3b、6b、3d、6dのマイクロバブルの濃度はサンプル1aよりも高い。
【0065】
次に、超音波コントラスト画像条件において、結果物であるマイクロバブル溶液サンプル1a、3a、6a、3c、6cの画像を毎分撮影し、各サンプルの強度を記録した。
図8Aは、撮影された画像を示す。
図8Bは、マイクロバブル溶液サンプル3b、6b、3d、6dの画像を示す。
【0066】
マイクロバブル溶液サンプル3a、6a、3b、6b、3c、6c、3d、6dの超音波画像のコントラスト強度を計算し、蓄積することにより、各サンプル間のエコー性能を比較した。
図8C及び
図8Dは、試験開始から50分間で蓄積したコントラスト強度の数値に基づく(表11及び表12を参照)、時間-蓄積強度の曲線を示す。
【表11】
【表12】
【0067】
図8Eは、サンプル1aの蓄積強度値を100%に通常化した場合における、サンプル1a、3a、6a、3c、6cの相対的な蓄積強度の結果を示し、ここで、サンプル3a、6a、3c、6cのグループは、サンプル1aよりも優れた相対的蓄積強度を与えることを示す。この結果は、サンプル3a、6a(DSPE-PEG2000を含有するDPPC)は、高い安定性プロファイルを与えるという点においては、サンプル3c、6c(DSPE-PEG5000を含有するDPPC)と比較して顕著な差がないことを示す。
【0068】
図8Fは、サンプル1aの蓄積強度値を100%に通常化した場合における、サンプル1a、3b、6b、3d、6dの相対的な蓄積強度の結果を示し、ここで、サンプル1a、3b、6b、3d、6dのグループは、サンプル1aよりも優れた相対的な蓄積強度を与えることを示す。この結果は、サンプル3b、6b(DSPE-PEG2000を含有するDPPG)は、高い安定性プロファイルを与えるという点においては、サンプル3d、6d(DSPE-PEG5000を含有するDPPG)と比較して顕著な差がないことを示す。
【0069】
従って、DSPE-PEG2000を使用した結果の利点は、DSPE-PEG3000及びDSPE-PEG5000を使用した場合にも及ぶことが明確となる。
【0070】
<実施例5:DSPC又はDSPGを含有する調製物におけるマイクロバブルの安定性の比較>
実施例3で示す通り、各バイアルで調製されたマイクロバブルについて、人間に使用する場合の温度である摂氏37度における安定性を試験した。ここで、同じ条件でマイクロバブルを調製するにあたり、脂質混合物に、同じTmを有する第2脂質DSPGを使用した。この試験は、実施例1~4に示された結果を、同じまたは同様のTmを有する、異なる第2脂質に拡張することができるかを評価することを目的とする。
【0071】
表13に示された組成物に基づき脂質混合物を調合し、第1脂質DPPCとDSPE-2000を使用した。
【表13】
【0072】
マルチサイザーを使用し、各バイアルで形成されたマイクロバブルの平均径及び濃度を評価した。結果は表14に示す。
【表14】
表14で示される通り、サンプル3a及びサンプル3eのマイクロバブルの濃度及び平均径は類似しかつ比較可能であり、また、サンプル6a及びサンプル6eのマイクロバブルの濃度及び平均径は類似しかつ比較可能である。特に
図9Aで示される通り、サンプル1a、3a、6a、3e、6eのマイクロバブルの濃度を比較した場合、サンプル3a、6a、3e、6eのマイクロバブル濃度はサンプル1aよりも高い。
【0073】
次に、超音波コントラスト画像条件において、結果物であるマイクロバブル溶液サンプル1a、3a、6a、3e、6eの画像を毎分撮影し、各サンプルの強度を記録した。
図9Bは、撮影した画像を示す。
【0074】
マイクロバブル溶液サンプル3a、6a、3e、6eのコントラスト強度をそれぞれ計算し、蓄積することにより、各サンプル間のエコー性能を比較した。
図9Cは、試験開始から50分間で蓄積したコントラスト強度の数値に基づく(表15を参照)、時間-蓄積強度の曲線を示す。
【表15】
【0075】
図9Dは、サンプル1aの蓄積強度値を100%に通常化した場合における、サンプル1a、3a、6a、3e、6eの相対的な蓄積強度の結果を示し、ここで、サンプル3a、6a、3e、6eのグループは、サンプル1aよりも優れた相対的蓄積強度を与えることを示す。この結果は、サンプル3a、6a(DPPCを含む)のグループは、サンプル3e、6e(DSPGを含む)のグループと比較して顕著な差がないことを示す。
【0076】
従って、DSPCを使用した結果の利点は、DSPGを使用した場合にも及ぶことが明確となる。
【0077】
<実施例6:本発明の組成と、異なるPEG化脂質を使用した既知の処方との安定性の比較>
処方例(例えば、サンプル6a及び6e)について、米国特許公開第2014/0328767号に開示された既知の組成と比較し、安定性試験を行った。選択した処方及び実施例の処方は、全て脂質混合物の遷移温度(Tm)が摂氏45度である。試験される各サンプルの準備方法は、実施例1と同様の条件で行われる。各サンプルの組成物は、表16で示す。
【表16】
【0078】
マルチサイザーを使用し、各バイアルで形成されたマイクロバブルの平均径及び濃度を評価した。結果は表17に示す。
図10Aは、サンプル1a、6a、6e、PEG40S_2、PEG40S_3によって生成されたマイクロバブルの濃度を示す。
【表17】
【0079】
表17で示される通り、DSPE-PEG2000を使用した場合における、サンプル6a及び6eで調製されたマイクロバブルの濃度は、PEG40S_2、PEG40S_3によって調製されたマイクロバブルの濃度と比較して高い。
【0080】
サンプル6a及び6eの濃度は、PEG40S_2、PEG40S_3の濃度よりも高いことが明確に示されており、これらの3つのサンプルのマイクロバブルの平均径は、1.2~1.5μmである。これらのサンプルの全体の遷移温度Tmが摂氏45度であるにも関わらず、本発明による組成(例えばサンプル6a及び6e)は、濃度が2~3倍高い。比率が同様である、異なるPEG化脂質(例えばDSPE-PEG2000)は、多くのマイクロバブルを生成するために重要な役割を持つ。
【0081】
これらの3つのサンプルには、実施例3で示された安定性試験と同様の試験を行った。次に、超音波コントラスト画像条件において、結果物であるマイクロバブル溶液サンプル6a、6e、PEG40S_2、PEG40S_3の画像を毎分撮影し、各サンプルの強度を記録した。
図10Bは、撮影された画像を示す。
【0082】
サンプル6a、6e、PEG40S_2、PEG40S_3の超音波画像を撮像してコントラスト強度をそれぞれ計算し、蓄積することにより、各サンプル間のエコー性能を比較した。
図10Cは、試験開始から50分間で蓄積したコントラスト強度の数値に基づく(表18を参照)、時間-蓄積強度の曲線を示す。
【表18】
【0083】
図10Dは、サンプル1aの蓄積強度値を100%に通常化した場合における、サンプル1a、6a、6e、PEG40S_2、PEG40S_3の相対的な蓄積強度の結果を示す。
【0084】
サンプル6a及び6eは、PEG40S_2、PEG40S_3のサンプルと比較し、安定性が高いことが明確に示される。遷移温度が摂氏45度であるにも関わらず、特定の調製物は既知の調製物と比較して特徴的かつ想定以上の安定性を与える。本開示で示された、濃度が高くかつ安定性に優れた、想定以上かつ優れた安定性が高いマイクロバブルは、人間に広く使用できる。
【0085】
<実施例7:遷移温度が低い第1脂質の直接比較の調査>
安定性が高いマイクロバブルを調製できる可能性がある脂質を調査するにあたり、脂質混合物にTm値が低い脂質(例えば15:0PC(1,2-ジペンタデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホクロリン、Tm=摂氏35度)を使用し、マイクロバブルを調製し、遷移温度が41度である第1脂質を含有するマイクロバブルと比較した。15:0PCは、炭素数が16であるDPPC又はDPPGとは異なり、炭素数が15である短い炭素鎖を持つ、DPPC及びDPPG(Tm=摂氏41度)と類似する化学構造を持つ、合成リン脂質である。
【0086】
表19に記載された組成に従って脂質混合物を用意し、第1脂質としてDPPC又は15:0PC、第2脂質としてDSPCを使用し、並びにDSPE-PEG2000を使用した。
【表19】
【0087】
マルチサイザーを使用し、各バイアルで形成されたマイクロバブルの平均径及び濃度を特定した。結果は表20に示す。
【表20】
【0088】
表20で示す通り、サンプル3f及び5fのマイクロバブルの濃度は、3a及び3bの濃度と比較して著しい違いがあることを示した。特に
図11Aで示される通り、サンプル1a、3a、3f、5fのマイクロバブルの濃度を比較した場合において、サンプル1a、3aの濃度は、濃度がサンプル1aよりも低いサンプル3f及び5fの濃度よりも高い。濃度が低いということは、15:0PCを含有するサンプル、例えばサンプル3f及び5fは、条件下において活性しなかったことを示す。この結果は、サンプル3f及び5fによる調製は、安定性プロファイルが高い気泡を生成するには適していないことを示す。本試験における全ての調製に対し、さらに超音波画像試験が行われた。
【0089】
次に、超音波コントラスト画像条件において、結果物であるマイクロバブル溶液サンプル3a、5a、3f、5fの画像を毎分撮影し、各サンプルの強度を記録した。
図11Bは、撮影した画像を示す。
【0090】
サンプル3a、5a、3f、5fの超音波画像を撮像してコントラスト強度をそれぞれ計算し、蓄積することにより、各サンプル間のエコー性能を比較した。
図10Cは、試験開始から50分間で蓄積したコントラスト強度の数値に基づく(表21を参照)、時間-蓄積強度の曲線を示す。
【表21】
【0091】
図11Dは、サンプル1aの蓄積強度値を100%に通常化した場合における、サンプル3a、5a、3f、5fの相対的な蓄積強度の結果を示す。サンプル3f及び5fは、サンプル3a及び5aと隣り合わせで比較した。この結果は、遷移温度が摂氏41度である第1脂質を含むサンプルは、遷移温度が摂氏35度である15:0PCを使用したサンプルと比較して、2.44倍から11.62倍の改善があることを示す。この結果によって、遷移温度が摂氏41度である第1脂質(例えばDPPC及びDPPG)は、持続性が長い安定したマイクロバブルを供給する想定外の利点があることが確認された。遷移温度Tmが低い第1脂質は、脂質混合物の温度Tmを下げるが、結果を改善するわけではない。
【0092】
本明細書には本発明の実施形態を例示しているが、これらの実施例は一態様として提供されていることは、当業者にとっては明らかである。様々な変形例、変更及び代替は、本発明の範囲を逸脱することなく、当業者にとって自明の範囲において発生し得る。本発明を実施するにあたり、実施形態に対する様々な変形を適用し得る。本発明の単純な変形乃至変更はいずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲により明確になるであろう。