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特開2022-21366サブガスケットの製造方法及び製造システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022021366
(43)【公開日】2022-02-03
(54)【発明の名称】サブガスケットの製造方法及び製造システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0284 20160101AFI20220127BHJP
   B29C 48/00 20190101ALI20220127BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20220127BHJP
   B29B 17/00 20060101ALI20220127BHJP
【FI】
H01M8/0284
B29C48/00 ZAB
H01M8/10 101
B29B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020124847
(22)【出願日】2020-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】高椋 庄吾
【テーマコード(参考)】
4F207
4F401
5H126
【Fターム(参考)】
4F207AA50
4F207AG01
4F207AH33
4F207KA01
4F207KA17
4F207KW45
4F401AA28
4F401AC20
4F401AD07
4F401BA09
4F401BB09
4F401CA14
4F401CA78
5H126AA13
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD05
5H126GG18
5H126JJ05
(57)【要約】
【課題】サブガスケットの製造コストの削減。
【解決手段】燃料電池(10)用サブガスケット(5)の製造方法であって、前記サブガスケット(5)の製造システム(W1)が、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を用いて前記サブガスケット(5)を形成するステップを含み、前記樹脂組成物は、前記サブガスケット(5)の形成に初めて使用される新規原料(M1)と、前記サブガスケット(5)の廃棄物から製造されたリサイクル原料(M21,M22)と、を含む。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池(10)用サブガスケット(5)の製造方法であって、
前記サブガスケット(5)の製造システム(W1)が、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を用いて前記サブガスケット(5)を形成するステップを含み、
前記樹脂組成物は、前記サブガスケット(5)の形成に初めて使用される新規原料(M1)と、前記サブガスケット(5)の廃棄物から製造されたリサイクル原料(M21,M22)と、を含む
サブガスケット(5)の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂組成物中における前記リサイクル原料(M21,M22)の配合割合は、25質量%以下である
請求項1に記載のサブガスケット(5)の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂組成物は、前記リサイクル原料(M21,M22)として、第1リサイクル原料(M21)、第2リサイクル原料(M22)又はその両方を含み、
前記第1リサイクル原料(M21)は、前記燃料電池(10)において使用される前に回収された前記サブガスケット(5)の廃棄物から製造され、
前記第2リサイクル原料(M22)は、前記燃料電池(10)において使用された後に回収された前記サブガスケット(5)の廃棄物から製造され、
前記樹脂組成物中における前記第2リサイクル原料(M22)の配合割合は、25質量%以下である
請求項2に記載のサブガスケット(5)の製造方法。
【請求項4】
前記リサイクル原料(M21,M22)は、前記サブガスケット(5)の廃棄物から製造されたペレットであり、
前記ペレットを製造するプロセスにおいて回収されたペレットの廃棄物が、前記サブガスケット(5)の廃棄物として前記ペレットの製造に用いられる
請求項1~3のいずれか一項に記載のサブガスケット(5)の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を用いて燃料電池(10)用サブガスケット(5)を製造する製造システム(W1)であって、
前記樹脂組成物中の各原料の配合を制御する制御装置(65)を備え、
前記配合の制御によって調製された樹脂組成物は、前記サブガスケット(5)の形成に初めて使用される新規原料(M1)と、前記サブガスケット(5)の廃棄物から製造されたリサイクル原料(M21,M22)と、を含む
サブガスケット(5)の製造システム(W1)。
【請求項6】
前記制御装置(65)は、前記樹脂組成物中における前記リサイクル原料(M21,M22)の配合割合を25質量%以下に制御する
請求項5に記載のサブガスケット(5)の製造システム(W1)。
【請求項7】
前記リサイクル原料(M21,M22)を製造するリサイクルシステム(W2)を備え、
前記リサイクルシステム(W2)は、
前記燃料電池(10)において使用される前に回収された前記サブガスケット(5)の廃棄物から、第1リサイクル原料(M21)を製造し、
前記燃料電池(10)において使用された後に回収された前記サブガスケット(5)の廃棄物から、第2リサイクル原料(M22)を製造し、
前記制御装置(65)は、前記樹脂組成物中における前記第2リサイクル原料(M22)の配合割合を25質量%以下に制御する
請求項6に記載のサブガスケット(5)の製造システム(W1)。
【請求項8】
前記リサイクルシステム(W2)は、
前記サブガスケット(5)の廃棄物から前記リサイクル原料(M21,M22)のペレットを製造し、
前記ペレットを製造するプロセスにおいて回収されたペレットの廃棄物を、前記サブガスケット(5)の廃棄物として前記ペレットの製造に用いる
請求項7に記載のサブガスケット(5)の製造システム(W1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用サブガスケットの製造方法及び製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料ガスの化学反応によって発電する膜電極接合体が1対のセパレータに挟まれた構造を有する。膜電極接合体には、支持体としてサブガスケットが取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
サブガスケットは、一般にフレーム状の樹脂フィルムである。例えば、サブガスケットは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PN)等の熱可塑性樹脂をフィルム成形した後、所定形状にカットすることにより、製造される(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-142407号公報
【特許文献2】特開2013-159094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サブガスケットの製造プロセスにおいては、フレーム状にカットされたときに不要なフィルム部分が排出される。また、シワ、破れ等の欠陥が生じたフィルムが排出されることがある。これら廃棄物を回収し、リサイクルすることができれば、原料のロスを減らすことができる。
【0006】
本発明は、サブガスケットの製造コストの削減を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、燃料電池(10)用サブガスケット(5)の製造方法であって、前記サブガスケット(5)の製造システム(W1)が、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を用いて前記サブガスケット(5)を形成するステップを含む。前記樹脂組成物は、前記サブガスケット(5)の形成に初めて使用される新規原料(M1)と、前記サブガスケット(5)の廃棄物から製造されたリサイクル原料(M21,M22)と、を含む。
【0008】
本発明の他の一態様は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を用いて燃料電池(10)用サブガスケット(5)を製造する製造システム(W1)であって、前記樹脂組成物中の各原料の配合を制御する制御装置(65)を備る。前記配合の制御によって調製された樹脂組成物は、前記サブガスケット(5)の形成に初めて使用される新規原料(M1)と、前記サブガスケット(5)の廃棄物から製造されたリサイクル原料(M21,M22)と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、サブガスケットの製造コストの削減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】サブガスケットが用いられた燃料電池の構成例を示す断面図である。
図2】本実施形態の製造システムの構成を示す模式図である。
図3】リサイクル回数とフィルムの物性との関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のサブガスケットの製造方法及び製造システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。以下に説明する構成は、本発明の一例(代表例)であり、この構成に限定されない。
【0012】
(燃料電池)
まず、サブガスケットが用いられる燃料電池について説明する。
図1は、固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)である燃料電池10の構成を示す。
【0013】
燃料電池10は、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)3と、サブガスケット5と、MEA3の両側に配置された1対のセパレータ4と、を備える。この1対のセパレータ4により挟まれたMEA3をセルという。燃料電池10は、複数のセルのスタックであってもよい。MEA3は、電解質膜1と、電解質膜1の両側に1対の電極2と、を備える。
【0014】
電解質膜1は、イオン伝導性の高分子電解質の膜である。電解質膜1に使用できる高分子電解質としては、例えばナフィオン(登録商標)、アクイヴィオン(登録商標)等のパーフルオロスルホン酸ポリマー;スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(SPEEK)、スルホン化ポリイミド等の芳香族系ポリマー;ポリビニルスルホン酸、ポリビニルリン酸等の脂肪族系ポリマー等が挙げられる。
【0015】
1対の電極2のうち、一方の電極2はアノードであり、燃料極とも呼ばれる。他方の電極2はカソードであり、空気極とも呼ばれる。燃料ガスとして、アノードには水素ガスが供給され、カソードには酸素ガスを含む空気が供給される。
【0016】
アノードでは、水素ガス(H)から電子(e)とプロトン(H)を生成する反応が生じる。電子は、図示しない外部回路を経由してカソードへ移動する。この電子の移動により外部回路では電流が発生する。プロトンは電解質膜1を経由してカソードへ移動する。
【0017】
カソードでは、外部回路から移動してきた電子により、酸素ガス(O)から酸素イオン(O )が生成される。酸素イオンは、電解質膜1から移動してきたプロトン(2H)と結合して、水(HO)になる。
【0018】
電極2は、触媒層21を備える。本実施形態の電極2は、燃料ガスの拡散性向上のため、ガス拡散層22を備える。ガス拡散層22は、触媒層21のセパレータ4側に配置される。
【0019】
触媒層21は、触媒によって水素ガス及び酸素ガスの反応を促進する。触媒層21は、触媒と、触媒を担持する担体及びこれらを被覆するアイオノマーを含む。
触媒としては、例えば白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)等の金属、これら金属の混合物、合金等が挙げられる。なかでも、触媒活性、一酸化炭素に対する耐被毒性、耐熱性等の観点から、白金、白金を含む混合物、合金等が好ましい。
【0020】
担体としてはメソポーラスカーボン、Ptブラック等の細孔を有する導電性の多孔性金属化合物が挙げられる。分散性が良好で表面積が大きく、触媒の担持量が多い場合でも高温での粒子成長が少ない観点からは、メソポーラスカーボンが好ましい。
アイオノマーとしては、電解質膜1と同様のイオン伝導性の高分子電解質を使用することができる。
【0021】
ガス拡散層22は、燃料電池10に供給された燃料ガスを触媒層21の全面に均一に拡散させることができる。
ガス拡散層22は、MEA3の最表層としてガス拡散層用シートを配置することで形成できる。ガス拡散層用シートとしては、例えば導電性、ガス透過性及びガス拡散性を有するカーボン繊維等の多孔性繊維シートの他、発泡金属、エキスパンドメタル等の金属製のシート材等が挙げられる。
【0022】
セパレータ4はバイポーラプレートとも呼ばれる。セパレータ4は、凹凸構造を有する。この凹凸構造は、チタン、チタン合金、又はステンレス鋼等の金属基板をプレス成形することによって形成され得る。凹凸構造は、カーボンを含む組成物をモールド成形することによっても形成され得る。
【0023】
セパレータ4の凹部4aは、セパレータ4とMEA3との間に流体の流路を形成する。流路は、燃料ガスの供給路であるだけでなく、発電時に化学反応により生成された水の排出路でもある。燃料電池100の冷却に冷却水が使用される場合、流路は冷却水の通路としても使用される。
【0024】
(サブガスケット)
サブガスケット5は、電解質膜1に取り付けられる。例えば、サブガスケット5は、MEA3の外周縁を囲むフレーム体であり、MEA3の支持体として機能する。また、サブガスケット5は、外周縁部においてセパレータ4と当接することにより、燃料電池10内部を封止する。
【0025】
サブガスケット5の材料としては、導電性が低い樹脂を用いることができる。加工性の観点からは、熱可塑性樹脂が好ましい。サブガスケット5は、必要に応じて添加剤を含有することができる。
【0026】
熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ガラス入りポリプロピレン(PP-G)等のポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリスチレン(PS)、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
(サブガスケットの製造方法)
図2は、上記サブガスケット5の製造システムW1の構成を示す。
図2に示すように、製造システムW1は、計量器61、押出機62、延伸装置63、加工装置64及び制御装置65を備える。
【0028】
製造システムW1では、計量器61によって熱可塑性樹脂等のサブガスケット5の各種原料が計量される。計量された各原料は、図示しないホッパーに投入され、混合されて、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物が調製される。樹脂組成物は、ホッパーから押出機62へ供給される。
【0029】
押出機62により樹脂組成物は溶融混練され、Tダイを介してシート状に押し出され、フィルムが形成される。フィルムは図示しない冷却ロール等によって冷却された後、延伸装置63へ搬送される。延伸装置63において、フィルムは少なくとも1軸方向に延伸される。なお、延伸は必要に応じて行えばよい。
【0030】
次いで、フィルムは加工装置64においてカットされる。例えば、ロール・トゥ・ロール方式により搬送される長尺のフィルムが一定間隔で矩形状にカットされ、サブガスケット5の開口部が形成される。さらにフィルムは開口部の周囲において開口部より大きい所定サイズの矩形状にカットされる。これにより、中央部に開口部が設けられたサブガスケット5が形成される。
【0031】
上記サブガスケット5を用いて、燃料電池10が製造される。
まず、電解質膜1上に触媒層21形成用のインクがコートされ、触媒層21が積層された電解質膜1(CCM:Catalyst Coated Membrane)が形成される。このCCMがサブガスケット5の中央の開口部に配置され、サブガスケット5の開口部の縁とCCMの外縁とが熱圧着されるか、又は接着剤等によって接着される。次いで、CCMの両面にガス拡散層22及びセパレータ4がこの順に配置され、燃料電池10が製造される。
【0032】
製造システムW1は、サブガスケット5の原料として、新規原料M1のみを使用することもできるが、リサイクル原料M21及びM22を併用することもできる。リサイクル原料M21及びM22の使用により、原料のロスを減らし、製造コストを削減することができる。
【0033】
新規原料M1は、サブガスケット5の製造に初めて使用される単一種類の原料である。リサイクル原料M21及びM22は、サブガスケット5の廃棄物から製造される。すなわち、リサイクル原料M21及びM22は、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物であり、複数種類の原料の混合物であり得る。
【0034】
リサイクル原料M21は、燃料電池10において使用される前に回収されたサブガスケット5の廃棄物v1から製造される第1リサイクル原料である。例えば、上記サブガスケット5の製造プロセスにおいて、シワや破れ等の欠陥が生じたフィルム、又は温度条件が不安定な状態で製造されたフィルム等の品質が一定条件を満たさないフィルムが、廃棄物v1として排出される。加工装置64においてカットされたフィルムの不要部分も廃棄物v1として排出される。また、燃料電池10の製造時に破れ等の欠陥が生じたサブガスケット5が廃棄物v1として排出される。このような廃棄物v1は回収されて、リサイクル原料M21として再生される。
【0035】
リサイクル原料M22は、燃料電池10において使用された後に回収されたサブガスケット5の廃棄物v2から製造される第2リサイクル原料である。例えば、サブガスケット5が組み込まれた燃料電池10が使用により劣化し、廃棄されると、この燃料電池10からサブガスケット5が回収され、リサイクル原料M22として再生される。
【0036】
フィルムの廃棄物v1から得られるリサイクル原料M21だけでなく、燃料電池10の廃棄物v2から得られるリサイクル原料M22を使用することにより、リサイクル原料M21のみを使用する場合に比べて製造コストをより削減できる。
【0037】
製造システムW1において、制御装置65が各原料を計量する計量器61を制御することにより、新規原料M1と、リサイクル原料M21、リサイクル原料M22又はその両方とを含む樹脂組成物が調製される。
【0038】
(リサイクル原料の配合割合)
製造システムW1において、サブガスケット5の製造に用いる樹脂組成物のうち、リサイクル原料M21及びM22の配合割合は50質量%以下が好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
リサイクル原料M21及びM22の使用量が多いほど、製造コストの削減が可能である。しかし、リサイクル原料M21及びM22は、新規原料M1と比べて熱履歴が異なる。溶融混錬時にせん断され、延伸されることによって、原料中の熱可塑性樹脂の分子量分布が異なることもある。このような違いにより、新規原料M1のみを使用したフィルムに比べて、リサイクル原料M21及びM22を併用したフィルムの物性はばらつきやすく、品質管理が難しくなる傾向がある。
【0040】
図3は、一例としてポリフタルアミドフィルムの引張強度K(MPa)とリサイクル回数nとの関係を示す。
図3に示すように、リサイクル回数nが増えるほど、フィルムの引張強度Kが低下する。
【0041】
なお、図3において、n=0のときの引張強度Kは、ポリフタルアミドの新規材料M1のみを用いて製造された100質量%のポリフタルアミドからなるフィルムの引張強度である。n=1のときの引張強度Kは、n=1のときのフィルムの廃棄物から製造されたリサイクル原料M21を25質量%、新規材料M1を75質量%配合して製造されたフィルムの引張強度である。n=2以降、同様にしてリサイクル回数nがn-1のときのフィルムの廃棄物からリサイクル原料M21が製造され、25質量%のリサイクル原料M21が新規原料M1と併用されて製造されたフィルムの引張強度Kが測定される。
【0042】
サブガスケット5においても、同様に物性のばらつきが生じる傾向がある。しかし、リサイクル原料M21及びM22の配合割合が50質量%以下であれば、物性が安定した新規原料M1が過半数を占めるため、サブガスケット5の一定の品質を維持することができる。さらに、配合割合が25質量%以下であれば、より高品質を維持しやすい。
【0043】
なかでも、樹脂組成物におけるリサイクル原料M22の配合割合が25質量%以下であることが好ましい。リサイクル原料M22はさらに燃料電池10での使用履歴があり、発電時に高温下に置かれた熱履歴を有する。また、リサイクル原料M22は、水、水素ガス又は酸素ガスの存在下に置かれるため、使用履歴がないリサイクル原料M21に比べて劣化しやすい。よって、配合割合を25質量%以下とすることにより、サブガスケット5の一定の品質をより維持しやすくなる。高品質を維持する観点からは、上記リサイクル原料M22の配合割合は、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0044】
制御装置65は、上記配合割合となるように新規原料M1、リサイクル原料M21及びM22の投入量を計算する。制御装置65は、計量器61を制御し、各原料を計算した投入量で計量させて、樹脂組成物を調製させる。
【0045】
制御装置65としては、CPU(Central Processing Unit)、マイクロコンピュータ等の制御部、ハードディスク等の記憶部、操作部、表示部、及び通信部等を備えたコンピュータを使用できる。
【0046】
新規原料M1の投入量は、リサイクル原料M21及びM22中の各原料の配合割合に応じて計算される。廃棄物v1及びv2が、製造システムW1において製造されたサブガスケット5である場合は、リサイクル原料M21及びM22中の各原料の配合割合は、サブガスケット5の組成と同じである。
【0047】
廃棄物v1及びv2が、組成が不明のサブガスケット5である場合、リサイクル原料M21及びM22の組成を赤外分光装置等により分析することにより、リサイクル原料M21及びM22の各原料の配合割合を特定すればよい。
【0048】
95質量%のPENと5質量%の添加剤からなる樹脂組成物を用いて製造されるサブガスケット5の場合の計算例を説明する。樹脂組成物中の配合割合が30質量%となるようにリサイクル原料M21を使用して100質量部の樹脂組成物を調製する場合、制御装置65は下記のように投入量を計算する。なお、リサイクル原料M21の組成はサブガスケット5と同じであり、PENの配合割合は95質量%、添加剤の配合割合は5質量%である。
リサイクル原料M21の投入量:30質量部
PENの新規原料M1の投入量:57質量部
添加剤の新規原料M1の投入量: 3質量部
【0049】
上記のように添加剤を含有するリサイクル原料M21及びM22も、含有しないリサイクル原料M21及びM22と同様に使用可能である。添加剤の効果はリサイクルを繰り返すことによって小さくなることがあるため、添加剤を含有するよりは含有しないリサイクル原料M21及びM22を使用することが好ましい。
【0050】
(リサイクルシステム)
製造システムW1は、廃棄物v1及びv2からリサイクル原料M21及びM22を製造するリサイクルシステムW2を備えてもよい。リサイクルシステムW2は、押出機71及びペレタイザー72を備える。
【0051】
リサイクルシステムW2では、燃料電池10において使用される前に排出されたサブガスケット5の廃棄物v1が回収される。廃棄物v1は、上述したようにサブガスケット5の製造プロセスか、燃料電池10に組み込む際に排出された不要なサブガスケット5である。
【0052】
回収された廃棄物v1は、チップ状に粉砕された後、押出機71により溶融混練されてストランド状に押し出される。ストランドはペレタイザー72によってカットされて、リサイクル原料M21のペレットが製造される。
【0053】
リサイクル原料M21のペレットの製造プロセスでは、温度条件が不安定な状態で製造されたペレットや、ヤケが生じたペレット等が排出されることがある。このように排出されたペレットも、サブガスケット5の廃棄物v1であり、再生利用可能である。ペレットの廃棄物v1は回収されて、フィルムの廃棄物v1とともに押出機71に投入される。
【0054】
一方、廃棄された使用済みの燃料電池10からサブガスケット5が取り出され、廃棄物v2として回収される。廃棄物v2も、廃棄物v1と同様にチップ状に粉砕され、押出機71によって溶融混練された後、ストランド状に押し出される。ストランドはペレタイザー72によってカットされ、リサイクル原料M22のペレットが製造される。
【0055】
リサイクル原料M22のペレットの製造プロセスにおいても、温度条件が不安定な状態で製造されたペレットや、ヤケが生じたペレット等が排出されることがある。排出されたペレットは、サブガスケット5の廃棄物v2として回収され、フィルムの廃棄物v2とともに押出機71に再投入される。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、サブガスケット5の廃棄物v1及びv2を、サブガスケット5の製造にリサイクルすることができる。原料のロス及び廃棄物v1及びv2の処理に要するコストを減らすことができ、製造コストの削減が可能である。燃料電池10に使用される前に回収されたサブガスケット5の廃棄物v1だけでなく、燃料電池10に使用された後に回収されたサブガスケットの廃棄物v2も、サブガスケット5の製造にリサイクルするため、廃棄物v1のみをリサイクルする場合に比べて、製造コストをより減らすことが可能である。
【0057】
また、サブガスケット5を製造する樹脂組成物中のリサイクル原料M21及びM22の配合割合が25%以下に制御される。未使用の新規原料M1が過半数を占めるため、サブガスケット5の一定の品質を保持することができ、品質管理が容易である。
【0058】
リサイクル原料M21及びM22の配合割合を増やすほど、製造コストを減らすことができるが、サブガスケット5の物性がばらつきやすく、品質管理が難しい。しかし、本実施形態においては、リサイクル原料M21及びM22の配合量を特定の割合に制限することにより、製造コストの削減と品質管理の両立が可能である。原料として、ポリオレフィン樹脂等の汎用樹脂に比べて機能的で高価なPEN又はPET等が用いられた場合には、高機能な品質を維持しつつ、製造コストの削減効果が大きいため、特に有用である。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0060】
上記製造システムW1では、サブガスケット5のフィルムを形成する成形装置の例として、押出機62及び延伸装置63を挙げた。しかし、フィルム成形方法は押出成形に限らず、カレンダー成形、又はインフレーション成形等の他のフィルム成形方法を採用する成形装置であってもよい。
【0061】
またサブガスケット5の製造プロセスにおいて上流で排出された廃棄物は、下流で排出される廃棄物よりも熱履歴や延伸などによる変化が少ない。よって、排出される工程ごとに廃棄物v1を分けてリサイクル原料M21を製造し、上流の廃棄物v1から製造されたリサイクル原料M21の配合割合を、下流の廃棄物v1から製造されたリサイクル原料M21よりも増やしてもよい。これにより、製造コストを削減しつつ、一定の品質保持がより容易になる。
【0062】
例えば、下記のようにリサイクル原料M21が、リサイクル原料M211とリサイクル原料M212とに分けて製造されてもよい。リサイクル原料M211は、延伸工程までの間に排出されたフィルムの廃棄物v1から製造される。リサイクル原料M212は、延伸工程より後に排出されたフィルムの廃棄物v1から製造される。
【表1】
【実施例0063】
PENの新規原料M1を75質量%、リサイクル原料M21及びM22との配合割合を25質量%に制御し、PEN製のサブガスケット(a)を製造した。新規原料M1のみを用いて製造されたサブガスケット(b)と、サブガスケット(a)との引張弾性率、又は引張強度等の物性の差はほぼなく、同等の品質であった。
【0064】
サブガスケット(a)の新規原料M1の配合割合を段階的に減らし、その分だけリサイクル原料M21及びM22の配合割合を増やして、サブガスケットを製造したところ、リサイクル原料M21及びM22の配合割合が多くなるほど、サブガスケット(b)と比べて物性のばらつきが大きくなった。
【符号の説明】
【0065】
10・・・燃料電池、3・・・MEA、1・・・電解質膜、2・・・電極、4・・・セパレータ、5・・・サブガスケット、W1・・・サブガスケットの製造システム、61・・・計量器、62・・・押出機、64・・・加工装置、W2・・・リサイクルシステム、71・・・押出機、72・・・ペレタイザー

図1
図2
図3