(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022022511
(43)【公開日】2022-02-07
(54)【発明の名称】通気口構造並びに該通気口構造を採用した建物換気システム及び加湿器
(51)【国際特許分類】
F24F 7/003 20210101AFI20220131BHJP
F24F 7/04 20060101ALI20220131BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20220131BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20220131BHJP
F24F 6/04 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
F24F7/00 B
F24F7/04 B
A61L9/01 B
B01J20/26 D
F24F6/04
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109249
(22)【出願日】2020-06-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】510111951
【氏名又は名称】株式会社洋館家本店
(71)【出願人】
【識別番号】517359392
【氏名又は名称】有限会社ライフアップ
(71)【出願人】
【識別番号】520231005
【氏名又は名称】合同会社S-KAI
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】福田 功
【テーマコード(参考)】
3L055
3L058
4C180
4G066
【Fターム(参考)】
3L055AA07
3L055BA02
3L055DA11
3L058BB04
3L058BC07
4C180AA02
4C180AA07
4C180CA04
4C180CC04
4C180EA07X
4C180EA21X
4C180EA39X
4C180HH05
4G066AC17B
4G066BA03
4G066BA28
4G066CA43
4G066DA03
(57)【要約】
【課題】抗菌作用を発揮し得る通気口構造と、該通気口構造を採用した建物換気システム並びに加湿器を提供する。
【解決手段】抗菌作用を奏する通気口構造であって、所定長さ・幅・厚さを有する銅板の長手方向端辺部同士を接合することで筒形状を成し、あるいは、長手方向における一端辺から他端辺にかけて旋回するにつれ中心から遠ざかる渦巻き状を成す銅環部材が成形されると共に、該銅環部材を通気口に装着させた構成となっている。かかる構成を採ることで、空気が通気口を通過する際に銅環部材に接触し、銅イオンを担持した状態で通気口から送気されることとなって、該送気先にて空気による抗菌作用が発揮される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌作用を奏する通気口構造であって、
所定長さ・幅・厚さを有する銅板の長手方向端辺部同士を接合することで筒形状を成す銅環部材が成形されると共に、該銅環部材を通気口に装着させて成り、
空気が通気口を通過する際に銅環部材に接触することで、銅イオンを担持した状態で通気口から送気されることとなって、該送気先にて空気による抗菌作用が発揮されることを特徴とする通気口構造。
【請求項2】
前記銅環部材の中空内に、該銅環部材より縮径して成る一乃至複数の第二銅環部材が備えられて成ることを特徴とする請求項1に記載の通気口構造。
【請求項3】
抗菌作用を奏する通気口構造であって、
所定長さ・幅・厚さを有する銅板の長手方向における一端辺から他端辺にかけて旋回するにつれ中心から遠ざかる渦巻き状を成す銅環部材が成形されると共に、該銅環部材を通気口に装着させて成り、
空気が通気口を通過する際に銅環部材に接触することで、銅イオンを担持した状態で通気口から送気されることとなって、該送気先にて空気による抗菌作用が発揮されることを特徴とする通気口構造。
【請求項4】
前記銅環部材の内周面における所定領域に、珪藻土被膜が備えられて成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の通気口構造。
【請求項5】
前記銅環部材の内周面所定箇所に、吸水ポリマーを不織布で被覆して成る吸水材が装備されて成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の通気口構造。
【請求項6】
前記請求項1乃至5のいずれかに記載の通気口構造が、建物における給気口に装備されて成ること特徴とする建物換気システム。
【請求項7】
前記請求項1乃至5のいずれかに記載の通気口構造が、加湿器における吹出口に装備されて成ること特徴とする加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の給気口や加湿器の吹出口など通気口の構造に関し、詳しくは、通過したエアが抗菌作用を発揮し得る通気口構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
古来、我が国の木造住宅は、隙間だらけの家が多かった。しかしながら、近年になり、省エネ基準の改定も伴って気密化工法へと仕様が変化し、現在の住宅は気密性を備えるものとなっている。具体的な気密性能は、C値=2.0平方cm/平方m以下となっており、室内の気密が高まったため、結露の発生やシックハウス症候群等を防止する観点から、計画換気を行うことが必要不可欠となっている。また近年は、PM2.5(微小粒子状物質)などによる大気汚染、カビやダニ、花粉といったアレルゲン対策など、室内の空気環境にも注目が集まっており、住まい全体の通風など計画的な換気は、そこに住む人・家族の健康の観点からも重要になってきている。
【0003】
我が国では、住宅の高気密化に伴い、窓を開けなくても換気装置等を使用して強制的に室内空気の入れ替えを行うシステムの設置が義務付けられている。この換気システムの方式には大きく三種存するが、高気密住宅では、いわゆる「第三種換気システム(方式)」といわれるものが一般的に採用されている。この第三種換気システムとは、換気扇等で室内の空気を機械的・強制的に室外へ排気し、その差圧で給気口から室外の空気を自然に取り入れる方式であり、一時間当たり建物全体の空気を半分以上室外の新鮮な空気と入れ替えられる方式となっている。かかる第三種換気システムは、排気が機械換気のため湿気が壁内に侵入しにくく、また、高気密住宅では低コストで計画換気が可能であることから、広く採用される方式となっている。
【0004】
しかしながら、大気中には、車からの排気ガスに代表される大気汚染物質や、花粉などのアレルゲン物質、その他各種ウイルスや雑菌等も混在しており、それらが含まれる屋外の空気をそのまま室内に入れることに抵抗を感じる人も少なくない。一方、住宅の給気口の構造として、フィルター等を介在させることで大気汚染物質や花粉等は取り除けても、各種ウイルスや雑菌まで完全に取り除くことは不可能といえる。そこで、ウイルスや雑菌等を給気口から室内へ流入させない、あるいは、仮にウイルスや雑菌等が給気口から流入したとしても、その数量を減少させ得る技術が求められるところであった。
【0005】
上記の様な問題を解決すべく、先行技術について調査したところ、住宅換気に関する下記特許文献を確認し得たものの、上記問題点に有効な解決手段を備える技術提案は皆無であった。
【0006】
本出願人は、住宅の換気システムにおける室外の空気を給気口から取り入れるに際し、ウイルスや雑菌等が流入するおそれが存するという問題に着目し、給気口を通過した空気中のウイルスや雑菌等の数量を減少することができないものかとの着想のもと、抗菌作用を奏する通気口構造を開発し、本発明にかかる「通気口構造並びに該通気口構造を採用した建物換気システム及び加湿器」の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-172951号公報
【特許文献2】特公平1-18339号公報
【特許文献3】特開昭60-86339号公報
【特許文献4】登録実用新案第3203157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、抗菌作用を発揮し得る通気口構造と、該通気口構造を採用した建物換気システム並びに加湿器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、抗菌作用を奏する通気口構造であって、所定長さ・幅・厚さを有する銅板の長手方向端辺部同士を接合することで筒形状を成す銅環部材が成形されると共に、該銅環部材を通気口に装着させて成る手段を採る。
【0010】
また、本発明は、前記銅環部材の中空内に、該銅環部材より縮径して成る一乃至複数の第二銅環部材が備えられて成る手段を採る。
【0011】
さらに、本発明は、前記銅環部材の構造として、所定長さ・幅・厚さを有する銅板の長手方向における一端辺から他端辺にかけて旋回するにつれ中心から遠ざかる渦巻き状を成す銅環部材が成形される手段を採り得る。
【0012】
またさらに、本発明は、前記銅環部材の内周面における所定領域に、珪藻土被膜が備えられて成る手段を採る。
【0013】
さらにまた、本発明は、前記銅環部材の内周面所定箇所に、吸水ポリマーを不織布で被覆して成る吸水材が装備されて成る手段を採る。
【0014】
そしてまた、本発明は、前記通気口構造を装備した建物換気システムであって、建物における給気口に該通気口構造が装備されて成る手段を採る。
【0015】
そしてさらに、本発明は、前記通気口構造を装備した加湿器であって、該加湿器における吹出口に通気口構造が装備されて成る手段を採る。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる通気口構造によれば、空気が通気口を通過する際に銅環部材に接触することで、銅イオンを担持した状態で通気口から送気されることとなるため、該送気先にて空気による抗菌作用が発揮される、といった優れた効果を奏する。
【0017】
また、本発明にかかる建物換気システムによれば、建物の給気口に前記通気口構造が採用されているため、建物における計画換気を行うに際し、抗菌作用を発揮し得る空気が強制的に室内に取り込まれることとなって、外気中のウイルスや雑菌等がそのまま室内に流入したとしても、その数量を室内にて減少させることが可能となり、清潔で健康的な住空間を創出することができる、といった従来にない優れた効果を奏する。
【0018】
さらに、本発明にかかる加湿器によれば、加湿器の吹出口に前記通気口構造が採用されているため、室内加湿を行うに際し、抗菌作用を発揮し得る加湿空気が強制的に室内に送気されることとなって、室内に常在するウイルスや雑菌等の数量を減少させることが可能となり、清潔で健康的な住空間を創出することができる、といった従来にない優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明にかかる通気口構造における銅環部材の構成態様を示す概略説明図である。
【
図2】本発明にかかる通気口構造の装着態様を示す概略説明図である。
【
図3】本発明にかかる通気口構造における銅環部材の他の構成態様を示す概略説明図である。
【
図4】本発明にかかる通気口構造を給気口に装備した建物換気システムの実施形態を示す概略説明図である。
【
図5】本発明にかかる通気口構造を吹出口に装備した加湿器の実施形態を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明にかかる通気口構造10は、所定長さ・幅・厚さを有する銅板から銅環部材12を成形し、該銅環部材12を通気口30に装着させて成る手段を採用したことを最大の特徴とする。そして、本発明にかかる建物換気システムは、給気口34に前記通気口構造10を装備したこと、また、本発明にかかる加湿器40は、吹出口42に前記通気口構造10を装備したことを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかる通気口構造10並びに該通気口構造10を採用した建物換気システム及び加湿器40の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0021】
尚、本発明にかかる通気口構造10並びに該通気口構造10を採用した建物換気システム及び加湿器40は、以下に述べる実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる構造や材質、仕様、寸法等の範囲内で、適宜変更することができる。
【実施例0022】
図1は、本発明にかかる通気口構造10における銅環部材12の構成態様を示す正面視の概略説明図である。また
図2は、本発明にかかる通気口構造10の装着態様を示す側断面図である。該通気口構造10は、所定長さ・幅・厚さを有する銅板から成る銅環部材12を通気口30に装着させることで構成されるものである。
【0023】
銅環部材12は、所定長さ・幅・厚さを有する銅板から形成される。該銅板の長さ・幅・厚さについては、特に限定はなく、最終的に装着される通気口30の径や奥行幅等に応じて適宜決定されるものである。例えば、通気口30の径が80mmの場合で銅環部材12を該通気口30に嵌合させる場合には、該銅環部材12の径は最大で80mm未満であることを要し、その径に鑑みて銅板の長さが決定される。また、通気口30の奥行幅が40mmの場合で銅環部材12を該通気口30に嵌合させる場合には、該銅環部材12の幅は最大で40mm未満であることを要するため、その幅に鑑みて銅板の幅も決定される。
【0024】
銅環部材12は、銅板から形成されることから、その素材は銅材である。金属には、種類によって抗菌作用を有することが古くから知られている。かかる抗菌作用を有する金属として、銅や銀、金、鉛、白金、ニッケル、アルミニウムなどが存在し、中でも銅には強い抗菌性・抗ウイルス性と優れた耐食性、作用持続性、人体・環境に対する安全性を有することから、硬貨や食器に利用されたり、抗菌繊維製品などに取り入れられるなど、広く一般的に利用されている。
【0025】
金属とりわけ銅が何故抗菌作用を有するのかについては、諸説あって未だ正解が明らかではないが、細菌やカビの細胞基質に存在するタンパク質中の-SH基と金属イオン(銅イオン)が固く結びつき、細胞の呼吸を阻害することにより殺菌するという説が有力である。すなわち、金属イオンには、酸素やタンパク質と結合することで、微生物の細胞壁や細胞膜を破壊する働きがあり、それにより細胞を死滅させて不活性化するといわれている。また、金属イオン(銅イオン)の触媒作用によって、空気や水の一部を活性酸素化し、その作用で微生物中の有機物を分解するともいわれている。さらに、最近の研究では、銅には、インフルエンザウイルスやノロウイルスなど、各種ウイルスを不活化する効果が認められている。本願では、「抗菌作用」との文言を、かかる抗ウイルス作用を含めた概念として使用する。
【0026】
銅環部材12は、銅板を所定形状に成形することで構成されている。すなわち、
図1(a)に示す様に、銅板の長手方向端辺部同士を接合することで、筒形状を成す様に形成される。かかる構成を採ることで、筒形状を成す銅環部材12に形成される中空箇所は、空気A1が通過する通気路18として機能し、通過する空気A1が銅板に接することで、空気A1中の水分(湿気)と反応して銅イオンが発生し、該銅イオンを担持した状態で空気A1が送気されることとなる。
尚、「銅環部材12」との文言について、後述する第二銅環部材14と区別する意味で用いられるほか、該第二銅環部材14を含めた全体を指し示す意味で使用される場合もある。
【0027】
かかる銅環部材12の構造として、
図1(b)乃至(d)に示す様に、上記銅環部材12の中空内に、第二銅環部材14が備えられて形成されて成る態様も採用できる。該第二銅環部材14は、上記銅環部材12より縮径して成るもので、所定長さ・幅・厚さを有する銅板の長手方向端辺部同士を接合することで、筒形状を成す様に形成されて成るものである。
【0028】
図1(b)は、銅環部材12と第二銅環部材14とが同心円状に備えられるもので、銅環部材12の中空にて第二銅環部材14を吊持し得る吊持構造16を備えて形成される。かかる第二銅環部材14は、図示の様な一つに限らず、複数備える態様、二重三重の環状構造とすることも可能である。
【0029】
図1(c)は、銅環部材12と第二銅環部材14とが偏心状に備えられるもので、銅環部材12の内周面所定箇所と第二銅環部材14の外周面所定箇所とが部分的に接した構造を有して形成される。かかる第二銅環部材14は、図示の様な一つに限らず、複数備える態様、二重三重の環状構造とすることも可能である。
【0030】
図1(d)は、銅環部材12の中空内に複数の第二銅環部材14が並列して備えられるもので、銅環部材12の内周面所定箇所と第二銅環部材14の外周面所定箇所、並びに、隣接する第二銅環部材14の外周面所定箇所同士が部分的に接した構造を有して形成される。このとき、銅環部材12の中空内に備えられる第二銅環部材14の数については、特に限定はない。
【0031】
このように、銅環部材12の中空内に一乃至複数の第二銅環部材14を備えることで、銅板と空気A1との接触面積が増加することとなるため、通過する空気A1における銅イオンの担持量・担持効率が向上し得ることとなる。尚、銅環部材12並びに第二銅環部材14の形状については、筒形状であれば特に限定はなく、図示の様な円筒形状のほか、多角筒形状や楕円筒形状であってもよい。
【0032】
さらに、銅環部材12の構造として、
図1(e)に示す様に、銅板の長手方向における一端辺から他端辺にかけて旋回するにつれ中心から遠ざかる渦巻き状を成す様に形成される態様も可能である。かかる構成態様を採用することで、上記した銅環部材12の中空内に一乃至複数の第二銅環部材14を備えるのと同様、銅板と空気A1との接触面積が増加することとなるため、通過する空気A1における銅イオンの担持量・担持効率が向上し得ることとなる。
【0033】
上記各種構造から成る銅環部材12は、通気口30に装着されることで、本発明にかかる通気口構造10が構成される。尚、装着の対象となる通気口30について、空気A1が通過可能な構造を備えていれば用途や構造を限定するものではなく、例えば建物壁面に設けられる給気口34や加湿空気A2を送気し得る加湿器40の吹出口42などが、銅環部材12の装着対象となる。
【0034】
銅環部材12の通気口30への装着態様については、特に限定するものではないが、例えば
図2(a)に示す様に、通気口30の内部に銅環部材12を嵌合することで装着する態様が考え得る。かかる態様により、通気口構造10全体が通気口30内に収容され、嵩張ることなく構成することができる。
また、銅環部材12に通気口30内に収容するのでなく、
図2(b)に示す様に、通気口30の内外いずれかの開口部32に、別途収容ケースC等に収容した状態で装着する態様も可能である。かかる態様により、銅環部材12を通気口30の内径に合わせる必要がなく、銅環部材12自体の設計の自由度が増す構成となる。
【0035】
以上で構成される本発明にかかる通気口構造10は、空気A1が通気口30を通過する際に銅環部材12に接触することとなるため、該空気A1が銅イオンを担持した状態で通気口30から送気されることとなって、該送気先にて空気A1による抗菌作用が発揮され、清潔で健康的な空間創出に資することとなる。
【0036】
尚、経時的使用による銅環部材12の腐食すなわち銅材の腐食も想定し得るが、銅は水と反応することで、当初その表面に亜酸化銅の被膜ができ、さらに経時的に空気A1に触れることで、より安定的な酸化銅へと変化した被膜が形成されることとなるため、腐食の心配はほとんどない
銅の抗菌作用については既述したとおりであるが、かかる抗菌作用は銅イオンの作用によるものである。この銅イオンは、銅材が水分と反応して溶出・発生するもので、空気A1が銅環部材12を通過する際に、空気中の水分が銅材と反応して銅イオンが発生し、空気A1に担持されることとなる。しかしながら、空気A1の湿度は変化するもので、乾燥時など、安定して多くの銅イオンを発生させることが難しい場面も想定し得る。そこで、銅環部材12に珪藻土被膜20や吸水材22を備えることで、銅材に対し積極的に水分を付与して、多くの銅イオンを安定的に発生させることができる。
先ず、珪藻土被膜20の場合について説明する。珪藻土被膜20の素材は、珪藻土である。該珪藻土は、藻類の一種である珪藻の殻の化石による堆積物であり、二酸化ケイ素が主成分である。構造として多孔質性を有しているため、調湿性能や脱臭性能、耐火性能に優れており、古来から耐火耐熱材の原料や壁の塗り材として使用されてきたものである。
珪藻土は、自ら固まることができない性質から、銅環部材12に被膜として備える際には、珪藻土に所定の固化材を混ぜ合せた上で、銅環部材12の表面に塗布されることとなる。
珪藻土被膜20は、銅環部材12の内周面における所定領域に備えられる。図面では、銅環部材12の内周面全体を珪藻土被膜20で被覆した場合について示しているが、面全体を被覆する態様でなく、珪藻土被膜20を部分的・断続的に備える態様であってもよい。
次に、吸水材22の場合について説明する。該吸水材22は、不織布で形成された中空部を有する袋状シート材の内部に吸水ポリマーが内包されて構成されている。吸水ポリマーは、正式には高吸水性高分子といわれ、特に高い水分保持性能を有する様に設計された高分子製品である。本発明で使用する吸水ポリマーは、湿度に感応して吸湿と放湿を繰り返す呼吸性を有することが好ましく、故に素材としてポリアクリル酸ナトリウムをはじめ、ポリアクリル酸塩系のものを使用することが好適である。
吸水ポリマーは、一般的な形状として、顆粒状やゲル状を成している。そこで、かかる形状の吸水ポリマーを内包させるための被覆材として、透水性・透湿性に優れた不織布が用いられる。すなわち、本発明にかかる吸水材22は、顆粒状やゲル状を成す吸水ポリマーが不織布で被覆されて形成されている。該吸水材22の形状について、特に限定はないが、銅環部材12への装着容易性から、シート状とすることが好ましい。
吸水材22は、銅環部材12の内周面所定箇所に装備される。具体的な装備方法について特に限定はなく、貼着や接着など、常法の装着態様による。図面では、銅環部材12の内周面下方部位に装着した場合について示しているが、側方部位や上方部位などに装着する態様であってもよい。また、装着に際し、予め吸水ポリマーを吸水状態にしておくことも考え得る。
以上で構成される本発明にかかる通気口構造10は、空気A1が通気口30を通過する際に、珪藻土被膜20や吸水材22により銅イオンを安定的に発生し得る銅環部材12に接触することとなるため、該空気A1が銅イオンを確実に担持した状態で通気口30から送気されることとなって、該送気先にて空気A1による抗菌作用が安定して発揮され、清潔で健康的な空間創出の向上に資することとなる。
尚、上記説明及び図面では、珪藻土被膜20と吸水材22とを夫々個別に採用した場合について説明及び図示しているが、珪藻土被膜20と吸水材22とを同時に併用して構成させることも可能である。
また、一の銅環部材12にのみ珪藻土被膜20や吸水材22を備える態様について説明及び図示しているが、第二銅環部材14を含め複数の銅環部材12を備えて構成されている場合には、選択的に幾つかの銅環部材12あるいは全ての銅環部材12に対し、珪藻土被膜20や吸水材22を備える態様も可能である。