(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022025010
(43)【公開日】2022-02-09
(54)【発明の名称】テトラカルボン酸二無水物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 493/10 20060101AFI20220202BHJP
C07D 495/20 20060101ALI20220202BHJP
C07D 491/20 20060101ALI20220202BHJP
C08G 73/10 20060101ALN20220202BHJP
【FI】
C07D493/10 A
C07D495/20 CSP
C07D491/20
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106513
(22)【出願日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0085873
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0056240
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】イ ソ ユン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョン チャン
【テーマコード(参考)】
4C050
4C071
4J043
【Fターム(参考)】
4C050AA04
4C050AA08
4C050BB07
4C050CC16
4C050DD07
4C050EE01
4C050FF01
4C050GG03
4C050HH01
4C071AA04
4C071AA08
4C071BB01
4C071BB02
4C071BB08
4C071CC12
4C071CC21
4C071EE05
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4C071FF15
4C071GG01
4C071GG03
4C071HH01
4C071HH02
4C071HH05
4C071HH08
4C071HH28
4C071JJ01
4C071LL03
4J043PA02
4J043PA19
4J043PB08
4J043PB15
4J043PC035
4J043PC036
4J043PC065
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA05
4J043RA35
4J043SA06
4J043SB01
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA121
4J043UA232
4J043UA432
4J043UB061
4J043UB401
4J043XA02
4J043XA04
4J043XA16
4J043XB27
4J043ZB50
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い透明性および耐熱性を有し、高い熱処理においても基板のストレスが上昇しないため、熱的寸法安定性に優れたポリイミドフィルムを提供するために好適な新規テトラカルボン酸二無水物、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】下記構造式で表されるテトラカルボン酸二無水物。
ここで、Q
1は、単結合等であり;R
1およびR
2は、互いに独立して、ハロゲン等であるか、または互いに隣接した置換基と結合して環を形成してもよく;nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、前記R
1およびR
2は、それぞれ同一であるかまたは異なってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物。
[化学式1]
【化1】
前記化学式1中、
Q
1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO
2-、-CH
2-、またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素、またはC1-C10のアルキルであり;
R
1およびR
2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリール、またはこれらの組み合わせであるか、または互いに隣接した置換基と結合して環を形成してもよく;
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、前記R
1およびR
2は、それぞれ同一であるかまたは異なってもよい。
【請求項2】
下記化学式2で表される化合物である、請求項1に記載のテトラカルボン酸二無水物。
[化学式2]
【化2】
前記化学式2中、
R
1、R
2、n、およびmは、請求項1の化学式1における定義と同様である。
【請求項3】
下記化学式3~化学式5で表される化合物から選択される、請求項1に記載のテトラカルボン酸二無水物。
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
[化学式5]
【化5】
前記化学式3~化学式5中、
R
1、R
2、R’、n、およびmは、請求項1の化学式1における定義と同様である。
【請求項4】
前記化学式1の前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリール、C1-C10のハロアルキル、またはC1-C10のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数である、請求項1に記載のテトラカルボン酸二無水物。
【請求項5】
前記化学式1の前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C4のアルキル、C1-C4のアルコキシ、C6-C18のアリール、C1-C4のハロアルキル、またはC1-C4のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数である、請求項1に記載のテトラカルボン酸二無水物。
【請求項6】
前記化学式1の前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1-C4のアルキル、C1-C4のアルコキシ、C6-C12のアリール、C1-C4のハロアルキル、またはC1-C4のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数であって、0≦n+m≦2である、請求項1に記載のテトラカルボン酸二無水物。
【請求項7】
下記構造から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項1に記載のテトラカルボン酸二無水物。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【請求項8】
下記化学式Aで表される化合物を脱水剤の存在下で脱水閉環反応させるステップを含む、下記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物の製造方法。
[化学式A]
【化11】
[化学式1]
【化12】
前記化学式Aおよび化学式1中、
Q
1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO
2-、-CH
2-、またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素、またはC1-C10のアルキルであり;
R
1およびR
2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリール、またはこれらの組み合わせであるか、または互いに隣接した置換基と結合して環を形成してもよく;
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、前記R
1およびR
2は、それぞれ同一であるかまたは異なってもよい。
【請求項9】
前記脱水剤は、
酸無水物である、請求項8に記載のテトラカルボン酸二無水物の製造方法。
【請求項10】
請求項1から7の何れか一項に記載のテトラカルボン酸二無水物を含む組成物。
【請求項11】
有機溶媒をさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
総重量を基準に、
前記テトラカルボン酸二無水物を1~30重量%で含む、請求項11に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
テトラカルボン酸二無水物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高度の耐熱性を有し、また、軽くてフレキシブルな素材としてポリイミドが着眼されている。このようなポリイミド分野において、優れた熱的寸法安定性を有する樹脂として、芳香族ポリイミドが注目されている。化学構造が剛直で直鎖状の芳香族ポリイミドからなる成形体であるポリイミドフィルムは、フレキシブルプリント配線基板のベースフィルムや半導体の層間絶縁膜などの高い熱的寸法安定性(低い線熱膨張係数)が求められる分野で広く用いられている。しかし、低い線熱膨張係数を有する芳香族ポリイミドは、分子内共役および分子内・分子間の電荷移動の相互作用により強く着色されるため、光学用途に適用するには困難である。また、ポリイミドは、分子間力が非常に強いため、加工性に欠けるという短所を有する。
【0003】
一方、フレキシブルデバイスは、搬送基板上にポリイミド前駆体組成物を塗布した後に硬化してフィルムを成膜し、薄膜トランジスタ(TFT)および有機膜蒸着などの後続工程を通じてデバイスを完成させた後、搬送基板から完成したデバイスを脱着させる方法により製造される。このように高温工程を伴うフレキシブルデバイスは、高温での耐熱性が求められる。特に、低温ポリシリコン(Low Temperature Poly Silicon;LTPS)を用いた薄膜トランジスタ工程を用いる場合、工程温度が500℃に近接し得るため、搬送基板上に成膜されるポリイミドフィルムは、高温工程中にも加水分解による熱分解が起こらず高耐熱性を満たさなければならない。また、貯蔵安定性だけでなく、加工後の透明性も確保されなければならない。
【0004】
そこで、フレキシブルデバイスの製造のためには、高耐熱性を満たすと共に加水分解が防止され、優れた耐化学性および貯蔵安定性を示すことができ、光学的・機械的特性を向上させることができる、新しいポリイミドの開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様は、耐熱性に優れ、透明性および低い線熱膨張係数を満たすポリイミドフィルムを提供するための、新規なテトラカルボン酸二無水物およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る新規なテトラカルボン酸二無水物は、下記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物であってもよい。
【0007】
【0008】
[前記化学式1中、
Q1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-S-、-SO2-、-NR’-、-CH2-、またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素、またはC1-C10のアルキルであり;
R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリール、またはこれらの組み合わせであるか、または互いに隣接した置換基と結合して環を形成してもよく;
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、前記R1およびR2は、それぞれ同一であるかまたは異なってもよい。]
【0009】
前記テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式2で表される化合物であってもよい。
【0010】
【0011】
[前記化学式2中、
R1、R2、n、およびmは、請求項1の化学式1における定義と同様である。]
【0012】
前記テトラカルボン酸二無水物は、下記化学式3~化学式5で表される化合物から選択されてもよい。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
[前記化学式3~化学式5中、
R1、R2、R’、n、およびmは、前記化学式1における定義と同様である。]
【0017】
前記テトラカルボン酸二無水物において、前記化学式1の前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリール、C1-C10のハロアルキル、またはC1-C10のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数であってもよい。
【0018】
前記テトラカルボン酸二無水物において、前記化学式1の前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C4のアルキル、C1-C4のアルコキシ、C6-C18のアリール、C1-C4のハロアルキル、またはC1-C4のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数であってもよい。
【0019】
前記テトラカルボン酸二無水物において、前記化学式1の前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1-C4のアルキル、C1-C4のアルコキシ、C6-C12のアリール、C1-C4のハロアルキル、またはC1-C4のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数であって、0≦n+m≦2であってもよい。
【0020】
前記テトラカルボン酸二無水物は、下記構造から選択される少なくとも1つまたは2つ以上であってもよい。
【0021】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0022】
また、本発明の他の態様に係る前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物の製造方法は、具体的に、下記化学式Aで表される化合物を脱水剤の存在下で脱水閉環反応させるステップを含んでもよい。
【0023】
【0024】
[前記化学式A中、
Q1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-S-、-SO2-、-NR’-、-CH2-、またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素、またはC1-C10のアルキルであり;
R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリール、またはこれらの組み合わせであるか、または互いに隣接した置換基と結合して環を形成してもよく;
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、前記R1およびR2は、それぞれ同一であるかまたは異なってもよい。]
【0025】
前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物の製造方法において、前記脱水剤は、酸無水物であってもよい。
【0026】
また、本発明のまた他の態様に係る組成物は、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物を含んでもよい。
前記組成物は、有機溶媒をさらに含んでもよい。
前記組成物は、総重量を基準に、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物を1~30重量%で含んでもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様に係る新規なテトラカルボン酸二無水物を通じて製造されたポリイミドフィルムは、高い透明性および耐熱性を有し、高い熱処理にも基板のストレスが上昇しないため、熱的寸法安定性に優れる。特に、本発明の一態様に係るテトラカルボン酸二無水物は、剛直な化学構造を形成することができ、これは、ポリイミド主鎖の直線性を高めることができる。このような構造的特徴により、さらに低い線熱膨張係数を満たすことができる。
【0028】
また、本発明の一態様に係るテトラカルボン酸二無水物は、光学的異方性の減少により、分子内および分子間の相互作用を減少させることができる。よって、光学的に非常に優れ、全光線に対する均一な透過率を実現することができる。
【0029】
本発明の一態様によると、熱的寸法安定性に優れた無色透明なポリイミドフィルムを提供することができる。また、本発明の一態様に係るポリイミドフィルムは、耐熱性は勿論、機械的強度および柔軟性などに優れる。そこで、素子用基板、フレキシブルディスプレイ用基板、光学フィルム、IC(integrated circuit)パッケージ、電着フィルム(adhesive film)、多層FPC(flexible printed circuit)、テープ、タッチパネル、光ディスク用保護フィルムなどのような多様な分野に有用に用いられることができる。
【0030】
具体的に、本発明に係るポリイミドフィルムは、i)熱膨張係数(CTE)が100~450℃で50ppm/℃以下を満たしてもよく、ii)ASTM E313に準じたYIが15以下、ASTM D1003に準じたヘイズ(haze)が2以下、およびASTM D1746に準じた380~780nm区間での全光線透過率が80%以上であってもよく、iii)ASTM D882に準じたモジュラスが8.0以下、および伸び率が15%以上であってもよく、これらの特性を同時に満たしてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の態様に対して特に定義しない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する当業者により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本発明における説明で用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであり、本発明を制限する意図ではない。
【0032】
本明細書で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。
また、本明細書において特に言及なしに用いられた単位は、重量を基準とし、一例として、%または比の単位は、重量%または重量比を意味し、重量%は、特に定義しない限り、全体組成物のうち何れか1つの成分が組成物内で占める重量%を意味する。
【0033】
また、本明細書で用いられる数値範囲は、下限値と上限値とその範囲内での全ての値、定義される範囲の形態と幅において論理的に誘導される増分、この中で限定された全ての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限の全ての可能な組み合わせを含む。本発明の明細書において、特に定義しない限り、実験誤差または値の四捨五入により生じる可能性のある数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0034】
本明細書の用語、「含む」とは、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する開放型記載であってもよい。
【0035】
本明細書の用語、「誘導された」とは、化合物の官能基のうち少なくとも何れか1つが変形されたことを意味し、具体的に、化合物の反応基および/または離脱基が反応に応じて変形または離脱した形態を含んでもよい。また、互いに異なる化合物から誘導された構造が互いに同一であると、何れか1つの化合物から誘導された構造は、他の何れか1つの化合物から誘導されて同一の構造を有する場合も含んでもよい。
【0036】
本明細書の用語、「ポリイミド前駆体溶液」は、ポリイミドを製造するための組成物を意味し、具体的に、ポリイミド前駆体は、アミド酸(amic acid)モイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し、ポリアミド酸と等価の意味を有してもよい。また、前記ポリイミド前駆体溶液は、ポリアミドイミドを製造するための組成物として用いられてもよい。
【0037】
本明細書の用語、「ポリイミドフィルム」は、ポリアミド前駆体溶液から誘導されたポリイミドの成形体であり、ポリイミドと等価の意味を有してもよい。
【0038】
本明細書の用語、「ハロゲン」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)原子を意味する。
本明細書の用語、「アルキル」は、1つの水素除去により脂肪族炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、直鎖状または分岐状の形態をいずれも含む。
【0039】
本明細書の用語、「アルコキシ」は、*-O-アルキルで表され、前記アルキルは、上述した定義と同様である。
本明細書の用語、「ハロアルキル」および「ハロアルコキシ」は、前記アルキルまたはアルコキシにおいて、1つの水素がハロゲンで置換されたものを意味する。
【0040】
本明細書の用語、「アリール」は、1つの水素除去により芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、単一または融合環系を含み、複数のアリールが単結合で連結されている形態まで含む。
【0041】
本発明者らは、優れた熱的寸法安定性を有するポリイミドに対する研究を深めた結果、テトラカルボン酸二無水物の母核骨格にさらに剛直な直鎖状構造を導入すると共にフルオレンを含むことにより、顕著に向上した熱的寸法安定性を満たせることは勿論、透明度を増加できることを見出した。すなわち、本発明者らは、このような構造的特徴を有するテトラカルボン酸二無水物から誘導されたポリイミドが、低い線熱膨張係数を満たすことは勿論、優れた透明性および耐熱性を有するということを確認して、本発明を提案する。
【0042】
以下、本発明の一態様についてより詳細に説明する。
具体的に、本発明の一態様に係る新規なテトラカルボン酸二無水物は、下記化学式1で表されてもよい。
【0043】
【0044】
[前記化学式1中、
Q1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO2-、-CH2-、またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素、またはC1-C10のアルキルであり;
R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリール、またはこれらの組み合わせであるか、または互いに隣接した置換基と結合して環を形成してもよく;
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、前記R1およびR2は、それぞれ同一であるかまたは異なってもよい。]
【0045】
上述した構造を満たすことにより、本発明の一態様に係るテトラカルボン酸二無水物は、優れた熱的寸法安定性を満たすことができる。すなわち、耐熱性に優れる。また、分子間パッキング密度(packing density)を広げて、透明性を増加させ、黄色度が減少したポリイミドフィルムを提供することができる。しかし、前記化学式1中、前記Q1が酸素原子である場合、分子内に屈曲が発生し、それより誘導されたポリイミドは、剛直な構造的特性が低下する。そこで、このような構造的特性(Q1が酸素原子)を含むポリイミドは、熱的寸法安定性が低い。
【0046】
本発明の一態様に係るテトラカルボン酸二無水物は、下記化学式2~化学式5で表される化合物から選択されてもよい。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
[前記化学式2~化学式5中、
R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリール、またはこれらの組み合わせであるか、または互いに隣接した置換基と結合して環を形成してもよく;
R’は、水素、またはC1-C10のアルキルであり;
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、前記R1およびR2は、それぞれ同一であるかまたは異なってもよい。]
【0052】
一例として、前記化学式2で表される化合物のように、スピロビフルオレン(spirobifluorene)から誘導された母核骨格を有するテトラカルボン酸二無水物は、さらに向上した耐熱性により、加工性にも優れる。
【0053】
一例として、前記化学式3~化学式5で表される化合物は、さらに向上した黄色度(YI)および380~780nm区間での全光線透過率にさらに優れており、低い熱膨張係数および高い透明性を兼ね備えたポリイミドフィルムを提供することができる。
【0054】
本発明の一態様に係るテトラカルボン酸二無水物において、前記化学式1の前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリール、C1-C10のハロアルキル、またはC1-C10のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数であってもよい。
【0055】
一例として、前記化学式2~化学式5の前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリール、C1-C10のハロアルキル、またはC1-C10のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数であってもよい。
【0056】
本発明の一態様に係るテトラカルボン酸二無水物において、前記化学式1の前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C4のアルキル、C1-C4のアルコキシ、C6-C18のアリール、C1-C4のハロアルキル、またはC1-C4のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数であってもよい。
【0057】
一例として、前記化学式2~化学式5の前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C4のアルキル、C1-C4のアルコキシ、C6-C18のアリール、C1-C4のハロアルキル、またはC1-C4のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数であってもよい。
【0058】
本発明の一態様に係るテトラカルボン酸二無水物において、前記化学式1の前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1-C4のアルキル、C1-C4のアルコキシ、C6-C12のアリール、C1-C4のハロアルキル、またはC1-C4のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数であって、0≦n+m≦2であってもよい。
【0059】
一例として、前記化学式2~化学式5の前記R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1-C4のアルキル、C1-C4のアルコキシ、C6-C12のアリール、C1-C4のハロアルキル、またはC1-C4のハロアルコキシであり、前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数であって、0≦n+m≦2であってもよい。
【0060】
一例として、前記化学式5の前記R’は、水素、またはC1-C4のアルキルであってもよい。
一例として、前記R1およびR2から選択される1つは、フルオレン環の2位、7位、または両方ともに置換されてもよい。具体的に、前記R1およびR2から選択される1つの置換基は、下記化学式1-1の表示位置に置換されてもよい。この場合、機械的強度および柔軟性にさらに効果的である。
【0061】
【0062】
[前記化学式1-1中、
Q1は、単結合、-NR’-、-S-、または-SO2-であり、前記R’は、水素、またはC1-C4のアルキルであり;
R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ニトロ、シアノ、C1-C4のアルキル、C1-C4のアルコキシ、C6-C12のアリール、C1-C4のハロアルキル、またはC1-C4のハロアルコキシであり;
前記nおよびmは、互いに独立して、0~2から選択される整数であって、0≦n+m≦2であってもよい。]
【0063】
一例として、前記化学式1-1の前記R1またはR2は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素から選択されるハロゲン;メチル、エチル、プロピル、およびブチルから選択されるアルキル;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、およびブトキシから選択されるアルコキシ;およびフェニル、およびナフチルから選択されるアリールから選択されてもよい。
【0064】
本発明の一態様に係るテトラカルボン酸二無水物は、下記構造から選択される少なくとも1つまたは2つ以上を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0065】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
[前記構造において、Phは、フェニルである。]
【0066】
また、本発明の他の一態様は、上述したテトラカルボン酸二無水物の製造方法であってもよい。
具体的に、本発明の一態様に係るテトラカルボン酸二無水物の製造方法は、下記化学式Aで表される化合物を脱水剤の存在下で脱水閉環反応させるステップを含んでもよい。
【0067】
【0068】
[前記化学式A中、
Q1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO2-、-CH2-、またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素、またはC1-C10のアルキルであり;
R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリール、またはこれらの組み合わせであるか、または互いに隣接した置換基と結合して環を形成してもよく;
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、前記R1およびR2は、それぞれ同一であるかまたは異なってもよい。]
【0069】
一例として、前記脱水剤は、酸無水物であってもよい。
一例として、前記酸無水物は、酢酸無水物(acetic anhydride)、フタル酸無水物(phthalic anhydride)、およびマレイン酸無水物(maleic anhydride)などから選択されてもよく、具体的には、酢酸無水物を含んでもよい。
【0070】
一例として、前記脱水剤は、ピリジン、イソキノリン、およびトリエチルアミンなどから選択される1つまたは2つ以上をさらに含んでもよい。
一例として、前記脱水剤は、前記化学式Aで表される化合物1モルに対して2~10モルで投入されてもよい。
一例として、前記ステップは、60~130℃で2~12時間行われてもよい。
【0071】
本発明の一態様に係るテトラカルボン酸二無水物の製造方法は、下記反応式1に示す通りであるが、通常の有機合成方法を通じて多様に変形できることはいうまでもない。
【0072】
【0073】
また、本発明の他の一態様は、上述したテトラカルボン酸二無水物の用途であり、その具体的な態様は後述する。
本発明の第1態様は、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物を含む組成物であってもよい。
【0074】
本発明の第2態様は、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物に由来したポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体溶液であってもよい。具体的に、前記ポリイミド前駆体は、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを含む重合成分の反応により得られたポリアミド酸であってもよい。
【0075】
本発明の第3態様は、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物に由来したポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体溶液であり、公知のテトラカルボン酸二無水物をさらに含むポリアミド酸であってもよい。
本発明の第4態様は、上述した第1態様~第3態様に有機溶媒をさらに含んでもよい。
【0076】
具体的に、上述した第1態様~第4態様の組成物または溶液は、ポリイミドフィルムを提供するための用途として用いられてもよい。また、上述した第1態様~第4態様の組成物または溶液は、ポリアミドイミドフィルムを製造するための用途として用いられてもよい。
【0077】
上述したように、本発明の一態様によると、高い透明性および耐熱性を実現することができ、高い熱処理にも基板のストレスが上昇しないため、熱的寸法安定性に優れたポリイミドフィルムを提供することができる。特に、本発明の一態様によると、公知のテトラカルボン酸二無水物を含まなくても、低い線熱膨張係数を有するポリイミドフィルムを提供することができる。また、公知のテトラカルボン酸二無水物をさらに含む場合よりさらに低くなった線熱膨張係数を有するポリイミドフィルムを提供することができる。
【0078】
本発明の一態様に係る組成物またはポリイミド前駆体溶液は、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類;、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、カルビトールなどのアルコール類;N,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)、N,N-ジエチルプロピオンアミド(DEPA)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド(DEF)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N,N-ジメチルメトキシアセトアミドなどのアミド類;などから選択される1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
【0079】
一例として、前記有機溶媒は、前記アミド類から選択される1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
一例として、前記有機溶媒は、沸点が300℃以下であってもよい。一例として、前記有機溶媒は、N,N-ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)、N-エチルピロリドン(NEP)、N,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)、N,N-ジエチルプロピオンアミド(DEPA)、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0080】
本発明の一態様に係るポリイミド前駆体溶液は、芳香族ジアミンを含んでもよい。具体的に、本発明の一態様に係る芳香族ジアミンは、下記化学式6で表される単位を含んでもよい。
【0081】
【0082】
[前記化学式6中、
R3は、水素、C1-C10のアルキル、またはC1-C10のフルオロアルキルであり;
pは、1または2の整数である。]
【0083】
一例として、前記芳香族ジアミンは、直鎖状の芳香族ジアミンであってもよく、具体的には、下記化学式6-1および化学式6-2で表される化合物から選択されてもよい。この際、前記芳香族ジアミンは、1つまたは2つ以上の混合物として使用できることはいうまでもない。
【0084】
【0085】
【0086】
[前記化学式6-1および化学式6-2中、
R3は、互いに独立して、水素、C1-C10のアルキル、またはC1-C10のフルオロアルキルである。]
【0087】
一例として、前記芳香族ジアミンは、フルオロアルキルを含むフルオロ系芳香族ジアミンであってもよい。
一例として、前記芳香族ジアミンは、前記化学式6-1または化学式6-2で表される化合物であり、前記R3は、互いに独立して、C1-C7のフルオロアルキルであってもよい。
【0088】
一例として、前記芳香族ジアミンは、前記化学式6-1または化学式6-2で表される化合物であり、前記R3は、互いに独立して、C1-C3のフルオロアルキルであってもよい。
【0089】
本発明の一態様に係るポリイミド前駆体溶液は、さらに向上した耐熱性により優れた加工性を与えるための面で、前記化学式2で表される化合物のようにスピロビフルオレン(spirobifluorene)から誘導された母核骨格を有するテトラカルボン酸二無水物を含んでもよい。
【0090】
本発明の一態様に係るポリイミド前駆体溶液は、さらに向上した黄色度(YI)および380~780nm区間での優れた全光線透過率を実現するための面で、前記化学式3~化学式5で表される化合物から選択される1つ以上のテトラカルボン酸二無水物を含んでもよい。
【0091】
本発明の一態様に係るポリイミド前駆体溶液は、さらに向上した機械的強度および柔軟性を実現するための面で、前記化学式1-1の前記R1またはR2がC1-C4のアルキルであるテトラカルボン酸二無水物を含んでもよい。
【0092】
本発明の一態様に係るポリイミド前駆体溶液は、重合成分として、下記化学式7および化学式8で表される化合物から選択される公知のテトラカルボン酸二無水物をさらに含んでもよい。
【0093】
【0094】
【0095】
[前記化学式8中、
Q2およびQ3は、単結合、-O-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO2-、フェニレン、またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素、またはC1-C10のアルキルである。]
【0096】
本発明の一態様に係るポリイミド前駆体溶液は、上述したように、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを重合成分として含んでもよい。具体的に、前記重合成分は、前記ジアミン1モルを基準に0.9~1.1範囲の前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物を含んでもよい。
【0097】
また、本発明の一態様に係るポリイミド前駆体溶液が上記のような公知のテトラカルボン酸二無水物をさらに含む場合、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物および公知のテトラカルボン酸二無水物の総含量と前記ジアミンの含量に対するモル比は1:0.99~0.99:1、具体的には1:0.98~0.98:1であってもよい。
【0098】
また、本発明の一態様に係るポリイミド前駆体溶液が上記のような公知のテトラカルボン酸二無水物をさらに含む場合、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物および公知のテトラカルボン酸二無水物の総含量を基準に、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物は10~99モル%で含まれてもよい。または10~90モル%、または15~80モル%、または20~50モル%、または20~30モル%で含まれてもよい。
【0099】
具体的に、本発明の一態様に係るポリイミド前駆体溶液は、上述した重合成分の重合生成物である、下記化学式aで表される繰り返し単位を含むポリイミド前駆体、すなわち、ポリアミド酸を含んでもよい。
【0100】
【0101】
[前記化学式a中、
Q1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO2-、-CH2-、またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素、またはC1-C10のアルキルであり;
RaおよびRbは、互いに独立して、水素、またはC1-C10のアルキルであり;
R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリール、またはこれらの組み合わせであるか、または互いに隣接した置換基と結合して環を形成してもよく;
R3は、水素、C1-C10のアルキル、またはC1-C10のフルオロアルキルであり;
pは、1または2の整数であり;
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、前記R1およびR2は、それぞれ同一であるかまたは異なってもよい。]
【0102】
一例として、本発明の一態様に係るポリイミド前駆体溶液は、総重量を基準に、前記化学式aで表される繰り返し単位を含むポリイミド前駆体を含む固形分の含量が10~40重量%、または10~30重量%、または10~20重量%、または10~13重量%であってもよい。ここで、前記固形分は前記ポリアミド酸であってもよく、残量は有機溶媒であってもよい。
【0103】
一例として、本発明の一態様に係るポリイミド前駆体溶液の粘度は2,000~10,000cpsを満たしてもよい。前記粘度は、具体的には8,000cps以下、より具体的には7,000cps以下を満たしてもよい。このような粘度範囲を満たす場合、ポリイミドフィルムの加工時、脱泡の効率性にさらに優れ、工程上の利点を提供することができる。そこで、さらに均一な表面を実現することができる。この際、前記粘度は、ブルックフィールド(Brookfield RVDV-III)粘度計スピンドル(Spindle)No.52を用いて、常温(25℃)で試料を載せ、Torque値が80%となった時点で2分間安定化作業を経て測定した値を意味する。
【0104】
本発明の一態様に係るポリイミド前駆体溶液は、上述した重合成分を重合して前記化学式aで表される繰り返し単位を含むポリアミド酸を製造した後、イミド化してもよい。一例として、前記イミド化は、化学イミド化または熱イミド化方法を通じて行われてもよい。
【0105】
本発明に係るイミド化は、熱イミド化方法を通じてもよい。このような方法を通じて、高温で熱によりイミド化する場合、フィルム全体に均一な機械的な物性を与えることができる。具体的に、本発明に係るポリイミドフィルムは、上述したポリイミド前駆体溶液を基板に塗布およびコーティングした後に熱処理するステップを含む製造方法により製造されてもよい。
【0106】
一例として、前記熱処理は、500℃以下で行われてもよい。
一例として、前記熱処理は、100℃以下で行われる第1熱処理ステップと、100℃超過300℃以下で行われる第2熱処理ステップと、300℃超過500℃以下で行われる第3熱処理ステップと、を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0107】
一例として、前記基板は、ガラス基板、金属基板、またはプラスチック基板などが特に制限されずに用いられてもよい。この中でも、ポリイミド前駆体溶液に対するイミド化および硬化工程中に熱および化学的安定性に優れ、別の離型剤の処理がなくても、硬化後に形成されたポリイミドフィルムに対して損傷なしに容易に分離可能なガラス基板であってもよい。
【0108】
一例として、前記塗布およびコーティングのための方法は、特に限定されるものではないが、一例として、スピンコート法、浸漬法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコート法、メニスカスコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビーズコート法、エアナイフコート法、リバースロールコート法、ブレードコート法、キャスティングコート法、およびグラビアコート法などから選択される何れか1つ以上の方法を用いてもよい。
【0109】
一例として、前記熱処理するステップ後、乾燥するステップおよび基板上から分離するステップなどをさらに含んでもよい。
一例として、前記化学式aで表される繰り返し単位を含むポリアミド酸の分子量は、特に限定されるものではないが、一例として、重量平均分子量が20,000~150,000g/molの範囲にする場合、さらに優れた物性を得ることができる。
【0110】
また、本発明の一態様に係るポリイミド前駆体溶液は、レベリング剤、難燃剤、接着力向上剤、無機粒子、酸化防止剤、紫外線防止剤、および可塑剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0111】
具体的に、本発明の一態様に係るポリイミド前駆体溶液から製造されたポリイミドフィルム、すなわち、ポリイミドは、下記化学式bで表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0112】
【0113】
[前記化学式b中、
Q1は、単結合、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NH-、-NR’-、-S-、-SO2-、-CH2-、またはこれらの組み合わせであり、前記R’は、水素、またはC1-C10のアルキルであり;
R1およびR2は、互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシ、チオール、ニトロ、シアノ、C1-C10のアルキル、C1-C10のアルコキシ、C6-C20のアリール、またはこれらの組み合わせであるか、または互いに隣接した置換基と結合して環を形成してもよく;
R3は、水素、C1-C10のアルキル、またはC1-C10のフルオロアルキルであり;
pは、1または2の整数であり;
nおよびmは、互いに独立して、0~4から選択される整数であり、前記nおよびmが2以上の整数である場合、前記R1およびR2は、それぞれ同一であるかまたは異なってもよい。]
【0114】
また、本発明の一態様に係るポリイミドフィルムは、下記化学式cまたは化学式dで表される繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0115】
【0116】
【0117】
[前記化学式cおよび化学式d中、
R3は、水素、C1-C10のアルキル、またはC1-C10のフルオロアルキルであり;
pは、1または2の整数である。]
【0118】
上述したように、本発明の一態様によると、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物に由来した繰り返し単位を含むことにより、光学性、耐熱性、機械的強度、および柔軟性が同時に優れたポリイミドフィルムを提供することができる。そこで、素子用基板、ディスプレイ用カバー基板、光学フィルム、IC(integrated circuit)パッケージ、電着フィルム、多層FRC(flexible printed circuit)、テープ、タッチパネル、光ディスク用保護フィルムなどのような多様な分野に用いられることができる。
【0119】
本発明の一態様に係るポリイミドフィルム、すなわち、ポリイミドの重量平均分子量は10,000~200,000g/mol、または20,000~100,000g/mol、または30,000~100,000g/molであってもよい。また、本発明に係るポリイミドの分子量分布(Mw/Mn)は1.1~2.5の範囲を満たしてもよい。上述したポリイミドの重量平均分子量および分子量分布を満たす場合、光学性、耐熱性、機械的強度、および柔軟性などのポリイミドフィルムの特性に有利である。
本発明の一態様に係るポリイミドフィルムの厚さは5~15μmであってもよい。
【0120】
本発明の一態様に係るポリイミドフィルムは、温度変化に応じた耐熱特性に優れる。具体的に、前記ポリイミドフィルムは、上述した厚さ範囲で100℃~450℃の温度範囲で5℃/minの昇温速度で1次昇温工程を行った後、400℃~100℃の温度範囲で4℃/minの冷却速度で冷却される際の熱膨張変化の様相をTMA(TA社製のQ400)で測定した結果、50ppm/℃以下を満たしてもよい。具体的に、前記熱膨張係数(CTE)は45ppm/℃以下を満たしてもよく、より具体的には-15~45ppm/℃の範囲を満たしてもよい。
【0121】
本発明の一態様に係るポリイミドフィルムは、上述した厚さ範囲で、ASTM D1003に準じたヘイズ(haze)が2以下を満たしてもよく、具体的には1以下、より具体的には0.5以下、最も具体的には0.01~0.3の範囲を満たしてもよい。このようなヘイズ値を満たすことにより、透明性が改善されたポリイミドフィルムを提供することができる。
【0122】
また、本発明の一態様に係るポリイミドフィルムは、優れた光透過率および黄色度を有することにより、顕著に改善された透明度および光学特性を示すことができる。具体的に、前記ポリイミドフィルムは、ASTM E313に準じたYIが15以下であり、ASTM D1746に準じた380~780nm区間での全光線透過率が80%以上であってもよく、より具体的には、YIが13以下であり、全光線透過率が85%以上であってもよく、最も具体的には、YIが11以下であり、全光線透過率が87%~99%の範囲であってもよい。
【0123】
本発明の一態様に係るポリイミドフィルムは、上述した厚さ範囲で、ASTM D882に準じたモジュラスが5.0以上であり、伸び率が15%以上であってもよい。具体的に、前記ポリイミドフィルムは、モジュラスが5.5以上であり、伸び率が15%以上であってもよく、より具体的には、モジュラスが6.0以上であり、伸び率が15%以上であってもよい。このような特性を満たす場合、ポリイミドフィルムの剛性に優れ、さらに十分な柔軟性を確保することができるため、外部衝撃からフレキシブルな特性を有することができる。
本発明の一態様に係るポリイミドフィルムは、上述した物性を全て同時に満たしてもよいが、これに限定されるものではない。
【0124】
本発明の一態様に係るポリイミドフィルムは、前記化学式1で表されるテトラカルボン酸二無水物に由来する剛直な構造により、優れた光学性、耐熱性、機械的強度、および柔軟性を同時に満たすことができる。特に、高熱工程時に発生し得る熱収縮挙動に対して優れた耐熱性を示すだけでなく、優れた無色透明な光学性を示すことができるため、素子用基板、ディスプレイ用基板、光学フィルム(optical film)、IC(integrated circuit)パッケージ、電着フィルム(adhesive film)、多層FRC(flexible printed circuit)、テープ、タッチパネル、光ディスク用保護フィルムなどのような多様な分野に用いられることができる。
【0125】
本発明の一態様に係るポリイミドフィルムは、2つ以上の層で積層された形態で用いられてもよい。
また、本発明の他の一態様は、上述したポリイミドフィルムまたはこれらが積層された形態の積層体をフレキシブル基板として含む光電素子およびフレキシブルディスプレイであってもよい。
【0126】
一例として、前記光電素子としては、光学部品、スイッチ、および光変調器などが挙げられ、同時に微細パターン形成特性が求められる高耐熱性の基板素材に好適である。
【0127】
一例として、前記フレキシブルディスプレイは、液晶表示装置(liquid crystal display device、LCD)、有機発光ダイオード(organic light emitting diode、OLED)などが挙げられ、特に高温工程を必要とするLTPS(low temperature polysilicon)工程を用いるOLEDデバイスに好適であるが、これらに限定されるものではない。
【0128】
以下、本発明の具体的な実施例および比較例を通じて本発明について説明する。下記の実施例は本発明の技術思想を説明するためのものであり、これらに限定されないことは当業者に明らかである。
【0129】
(評価方法)
1.線熱膨張係数(CTE)およびガラス転移温度(Tg)
TMA(TA instrument社製、Discovery 450)を用いて、TMA-methodにより線熱膨張係数を測定した。試片の大きさは5mm×20mm、荷重は0.02Nとし、昇温速度は5℃/minとした。CTE値は、100℃~450℃の温度範囲の昇温区間において測定した。
Tg値は、100℃~450℃の昇温区間においてTMAグラフ変曲点で測定した。
【0130】
2.ヘイズ
ASTM D1003の規格に準じて、厚さ50μmのポリイミドフィルムを基準として分光光度計(Nippon Denshoku社製、COH-400)を用いて測定した。単位は%である。
【0131】
3.黄色度(YI)
ASTM E313の規格に準じて、厚さ10μmのポリイミドフィルムを基準として色度計(HunterLab社製、ColorQuest XE)を用いて測定した。
【0132】
4.全光線透過率
ASTM D1746の規格に準じて、厚さ10μmのポリイミドフィルムに対して、分光光度計(SHIMADZU社製、MPC-3100)を用いて、380~780nmの波長領域全体において測定された全光線透過率を測定した。単位は%である。
【0133】
5.モジュラスおよび伸び率
ASTM D882に準じて、厚さ10μm、長さ40mm、および幅5mmのポリイミドフィルムを25℃で10mm/minで引っ張る条件で、Instron社製のUTM 3365を用いて測定した。モジュラス単位はGPa、伸び率単位は%である。
【0134】
6.厚さ
0.5TガラスにPAAをコーティングした後、硬化した基板をKLA社製のフィルム厚さ測定機(Alpha step D500)を用いて測定した。単位はμmである。
【0135】
7.粘度
ブルックフィールド(Brookfield RVDV-III)粘度計スピンドル(Spindle)No.52を用いて、常温(25℃)で試料を載せ、Torque値が80%となった時点で2分間放置後に安定化させて測定した値を意味する。単位はcpsである。
【0136】
8.C.R.test(chemical resistance test)
ポリイミドフィルムの硬化条件:multi-step(80℃/30min、220℃/30min、および450℃/60min)
○:フィルム変形なし、△:部分的にフィルム変形の発生、X:フィルム変形の発生と評価した。
【0137】
9.重量平均分子量
0.05M LiBrを含有するDMAc溶離液にフィルムを溶解して測定した。GPCはWaters GPC system、Waters 1515 isocratic HPLC Pump、Waters 2414 Reflective Index detectorを用い、ColumnはOlexis、Polypore、およびmixed Dカラムを連結し、標準物質としてポリメチルメタクリレート(PMMA STD)を用い、35℃、1mL/minのflow rateで分析した。
【0138】
【0139】
ステップ1.物質A
窒素環境で、3,4-ジメチルフェニルボロン酸(3,4-Dimethylphenylboronic Acid、7.95g、53.0mmol)、1,2-ジブロモ-4,5-ジメチルベンゼン(1,2-diBromo-4,5-dimethylbenzene、14g、53.0mmol)、トリフェニルホスフィン(triphenylphosphine、0.42g、1.59mmol)、およびK2CO3(21.9g、159mmol)をガスが除去された水100mlおよびテトラヒドロフラン(THF)70mlの混合溶液に添加した。温度を80℃に昇温し、Pd(PPh3)4(0.61g、0.53mmol)を添加した後、30時間撹拌した。温度を常温に下げ、減圧蒸留により有機溶媒を除去した後、ジクロロメタン(DCM)100mlおよび水50mlを添加して、有機層を水洗いした後、無水MgSO4を用いて水分を除去した。MgSO4フィルタ後に溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィで物質を分離して、収率75%として物質Aを得た。
【0140】
HRMS(EI、m/z):[M+]calculated for C16H13Br、288.05;found、269.16
1H-NMR(ppm、CDCl3):7.44(1H、s)、7.15-7.20(3H、m)、7.10(1H、s)、2.33(6H、s)、2.29(3H、s)、2.25(3H、s)。
【0141】
【0142】
ステップ2.物質B
窒素環境で、物質A(5.65g、19.5mmol)を無水テトラヒドロフラン(THF)80mlに溶かし、n-ブチルリチウム(n-Butyl lithium、9.37ml of a solution 2.5M in Hexane、23.4mmol)を-78℃で1時間徐々に添加した。この溶液に無水CO2を4時間吹き込み、60mlの水を添加して反応を終了した後、減圧蒸留により有機溶媒を除去した。水100mlおよびDCM 50mlを添加して、水層をDCMで洗浄し、水層に0.1N HCl溶液を添加してpH 4にした後、析出された有機物をエーテルで抽出した。無水MgSO4を用いて水分を除去し、フィルタ後に溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィで物質を分離して、収率65%として物質Bを得た。
【0143】
HRMS(EI、m/z):[M+]calculated for C17H18O2、254.13;found、255.32
1H-NMR(ppm、CDCl3):7.75(1H、s)、7.12-7.15(3H、m)、7.07(1H、s)、2.34(s、6H)、2.31(6H、s)。
【0144】
【0145】
ステップ3.物質C
窒素環境で、物質B(4.73g、18.6mmol)をMeSO3H 50gに溶かし、50℃で18時間撹拌した。反応物を0℃の水500mlに注いだ後、生成された固体をフィルタし、メタノール(MeOH)を用いて再結晶して、物質Cを収率85%として得た。
【0146】
HRMS(EI、m/z):[M+]calculated for C17H16O、236.12;found、237.25
1H-NMR(ppm、CDCl3):7.24(2H、s)、2.33(6H、s)、2.28(6H、s)。
【0147】
【0148】
ステップ4.物質D
窒素環境で、2-ブロモ-1,1’-ビフェニル(2-Bromo-1,1’-biphenyl、4.0g、17.16mmol)を無水テトラヒドロフラン(THF)80mlに溶かし、n-ブチルリチウム(7.5ml of a solution 2.5M in Hexane、18.7mmol)を-78℃で10分間徐々に添加した。1時間撹拌した後、物質C(3.69g、15.6mmol)を反応物に添加した後、常温に温度を上げながら12時間撹拌した。水80mlを添加した後に減圧して溶媒を除去し、ジクロロメタン(DCM)100mlを添加して有機物を抽出した。無水MgSO4を用いて水分を除去しフィルタして溶媒を除去した後、0℃の酢酸50mlに物質を添加した。35wt% HCl 1mlの添加後、4時間加熱還流した後に常温で1時間撹拌した。反応物を氷水200mlに注いだ後、生成された固体をフィルタし、メタノール(MeOH)を用いて析出撹拌して、物質Dを収率87%として得た。
【0149】
HRMS(EI、m/z):[M+]calculated for C29H24、372.19;found、373.05
1H-NMR(ppm、CDCl3):7.84-7.91(4H、m)、7.59(2H、s)、6.73-6.80(4H、m)、6.49(2H、s)、2.35(6H、s)、2.11(6H、s)。
【0150】
【0151】
ステップ5.物質E
物質D(3.95g、10.6mmol)をピリジン(Py)50mlおよび水50mlの混合溶媒に溶かし、水100mlに溶かしたKMnO4(33.5g、212mmol)を4時間徐々に添加した。6時間加熱還流した後にフィルタして固体物質を除去した後、常温に温度を下げた後に減圧して溶媒を除去した。水層に0.1N HCl溶液を添加してpH 4にした後、析出された固体物質をフィルタおよび乾燥して、収率80%として物質Eを得た。
【0152】
HRMS(EI、m/z):[M+]calculated for C29H16O8、492.08;found、493.00
1H-NMR(ppm、D2O):7.97(8H、s)、7.91(4H、s)。
【0153】
【0154】
ステップ6.物質F
窒素環境で、物質E(3.80g、7.72mmol)を無水酢酸(Acetic anhydride、100ml)に溶かし、6時間加熱還流した後に常温に温度を下げた。生成された固体をフィルタし、無水酢酸を用いて洗浄した後、物質Fを収率90%として得た。
【0155】
HRMS(EI、m/z):[M+]calculated for C29H12O6、456.06;found、457.11
【0156】
【0157】
ステップ1.物質G
物質A(5.0g、17.47mmol)を無水テトラヒドロフラン(THF)100mlに溶かし、温度を-78℃に下げた後、n-ブチルリチウム(n-Butyl lithium、7.6ml of a solution 2.5M in Hexane、18.8mmol)を10分間徐々に添加した。1時間撹拌した後、9H-チオキサンテン-9-オン(9H-Thioxanthen-9-one、3.375g、15.9mmol)を反応物に添加した後、常温に温度を上げながら12時間撹拌した。水100mlを添加した後に減圧して溶媒を除去し、ジクロロメタン(DCM)100mlを添加して有機物を抽出した。無水MgSO4を用いて水分を除去しフィルタして溶媒を除去した後、0℃の酢酸50mlに物質を添加した。35wt% HCl 1mlの添加後、4時間加熱還流した後に常温で1時間撹拌した。反応物を0℃の水200mlに注いだ後、生成された固体をフィルタし、MeOHを用いて析出撹拌して、物質Gを収率88%として得た。
【0158】
HRMS(EI、m/z):[M+]calculated for C29H24S、404.16;found、405.15
【0159】
【0160】
ステップ2.物質H
物質G(4.6g、10.88mmol)を酢酸(Acetic acid)100mlに溶かし、30wt% H2O2 9mlを30分間徐々に添加した。100℃に昇温して8時間撹拌した後、常温に温度を下げた。生成された固体物質をフィルタし、さらに酢酸20mlおよびヘプタン(Heptane)20mlを用いて洗浄した後に乾燥して、物質Hを収率89%として得た。
【0161】
HRMS(EI、m/z):[M+]calculated for C29H24S、404.16;found、405.15
【0162】
【0163】
ステップ3.物質I
物質H(4.0g、9.89mmol)をピリジン(Py)50mlおよび水50mlの混合溶媒に溶かし、水100mlに溶かしたKMnO4(31.6g、200mmol)を4時間徐々に添加した。6時間加熱還流した後にフィルタして固体物質を除去した後、常温に温度を下げた後に減圧して溶媒を除去した。水層に0.1N HCl溶液を添加してpH 4にした後、析出された固体物質をフィルタし乾燥して、収率85%として物質Iを得た。
【0164】
HRMS(EI、m/z):[M+]calculated for C29H16O10S、556.05;found、557.04
【0165】
【0166】
ステップ4.物質J
窒素環境で、物質I(3.6g、6.47mmol)を無水酢酸(Acetic anhydride、80ml)に溶かし、6時間加熱還流した後に常温に温度を下げた。生成された固体をフィルタし、無水酢酸を用いて洗浄し乾燥した後、物質Jを収率90%として得た。
【0167】
HRMS(EI、m/z):[M+]calculated for C29H12O6、556.05;found、557.03
【0168】
【0169】
ステップ1.物質K
窒素環境で、2-ブロモ-4’-t-ブチル-1,1’-ビフェニル(2-Bromo-4’-tert-butyl-1,1’-biphenyl、5.0g、17.29mmol)を無水テトラヒドロフラン(THF)80mlに溶かし、温度を-78℃に下げた後、n-ブチルリチウム(7.6ml of a solution 2.5M in Hexane、18.8mmol)を10分間徐々に添加した。1時間撹拌した後、物質C(3.73g、15.8mmol)を反応物に添加した後、常温に温度を上げながら12時間撹拌した。水80mlを添加した後に減圧して溶媒を除去し、ジクロロメタン(DCM)100mlを添加して有機物を抽出した。無水MgSO4を用いて水分を除去しフィルタして溶媒を除去した後、0℃の酢酸50mlに物質を添加した。35wt% HCl 1mlの添加後、4時間加熱還流した後に常温で1時間撹拌した。反応物を0℃の水200mlに注いだ後、生成された固体をフィルタし、メタノール(MeOH)を用いて析出撹拌して、物質Kを収率85%として得た。
【0170】
HRMS(EI、m/z):[M+]calculated for C33H32、428.25;found、428.20
【0171】
【0172】
ステップ2.物質L
物質K(3.95g、9.22mmol)をピリジン(Py)50mlおよび水50mlの混合溶媒に溶かし、水100mlに溶かしたKMnO4(31.0g、190mmol)を4時間徐々に添加した。6時間加熱還流した後にフィルタして固体物質を除去した後、常温に温度を下げた後に減圧して溶媒を除去した。水層に0.1N HCl溶液を添加してpH 4にした後、析出された固体物質をフィルタし乾燥して、収率81%として物質Lを得た。
【0173】
HRMS(EI、m/z):[M+]calculated for C33H24O8、548.15;found、548.12
【0174】
【0175】
ステップ3.物質M
窒素環境で、物質L(3.00g、5.47mmol)を無水酢酸(80ml)に溶かし、6時間加熱還流した後に常温に温度を下げた。生成された固体をフィルタし、無水酢酸を用いて洗浄した後、物質Mを収率90%として得た。
【0176】
HRMS(EI、m/z):[M+]calculated for C33H20O6、512.13;found、513.12
【0177】
(製造例1)
TFMB(0.999)/実施例1(1.0)、単位:モル比
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)176gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビフェニルジアミン(TFMB)14.03gを溶解させた。これに新規なモノマー1(実施例1、物質F)20gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しつつ撹拌した。その後、固形分濃度を13重量%になるようにDMPAを添加して、ポリイミド前駆体溶液1を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液1の粘度は4,500cpであった。
【0178】
(製造例2)
TFMB(0.999)/実施例1(0.2)/PMDA(0.8)、単位:モル比
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)175gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビフェニルジアミン(TFMB)18.33gを溶解させた。これに新規なモノマー1(実施例1、物質F)5.22gおよびピロメリト酸二無水物(PMDA)10gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しつつ撹拌した。その後、ポリイミド前駆体溶液の固形分濃度を13重量%になるようにDMPAを添加して、ポリイミド前駆体溶液2を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液2の粘度は5,200cpであった。
【0179】
(製造例3)
TFMB(0.999)/実施例2(1.0)、単位:モル比
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)169gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビフェニルジアミン(TFMB)12.29gを溶解させた。これに新規なモノマー2(実施例2、物質J)20gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しつつ撹拌した。その後、固形分濃度を13重量%になるようにDMPAを添加して、ポリイミド前駆体溶液3を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液3の粘度は4,200cpであった。
【0180】
(製造例4)
TFMB(0.999)/実施例3(1.0)、単位:モル比
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)170gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビフェニルジアミン(TFMB)12.48gを溶解させた。これに新規なモノマー3(実施例3、物質M)20gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しつつ撹拌した。その後、固形分濃度を13重量%になるようにDMPAを添加して、ポリイミド前駆体溶液4を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液4の粘度は4,300cpであった。
【0181】
(製造例5)
TFMB(0.999)/実施例2(0.2)/PMDA(0.8)、単位:モル比
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)180gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビフェニルジアミン(TFMB)18.33gを溶解させた。これに新規なモノマー2(実施例2、物質J)5.96gおよびピロメリト酸二無水物(PMDA)10gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しつつ撹拌した。その後、固形分濃度を13重量%になるようにDMPAを添加して、ポリイミド前駆体溶液5を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液5の粘度は5,200cpであった。
【0182】
(製造例6)
TFMB(0.999)/実施例3(0.2)/PMDA(0.8)、単位:モル比
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)179gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビフェニルジアミン(TFMB)18.33gを溶解させた。これに新規なモノマー3(実施例3、物質M)5.87gおよびピロメリト酸二無水物(PMDA)10gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しつつ撹拌した。その後、固形分濃度を13重量%になるようにDMPAを添加して、ポリイミド前駆体溶液6を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液6の粘度は5,200cpであった。
【0183】
(比較製造例1)
TFMB(0.999)/BPAF(1.0)、単位:モル比
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)173gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビフェニルジアミン(TFMB)13.96gを溶解させた。これに9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(BPAF)20gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しつつ撹拌した。その後、固形分濃度を13重量%になるようにDMPAを添加して、ポリイミド前駆体溶液Aを製造した。前記ポリイミド前駆体溶液Aの粘度は4,200cpであった。
【0184】
(比較製造例2)
TFMB(0.999)/BPAF(0.2)/PMDA(0.8)、単位:モル比
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)176gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビフェニルジアミン(TFMB)18.33gを溶解させた。これに9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(BPAF)5.25gおよびピロメリト酸二無水物(PMDA)10gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しつつ撹拌した。その後、固形分濃度を13重量%になるようにDMPAを添加して、ポリイミド前駆体溶液Bを製造した。前記ポリイミド前駆体溶液Bの粘度は4,600cpであった。
【0185】
(ポリイミドフィルムの製造)
前記製造例1~製造例6および比較製造例1~比較製造例2のポリイミド前駆体溶液それぞれをガラス基板にスピンコーティングした。ポリイミド前駆体溶液が塗布されたガラス基板をオーブンに入れ、4℃/minの速度で加熱し、80℃で30分、220℃で30分、および450℃で1時間を維持して硬化工程を行った。硬化工程の完了後、ガラス基板を水に浸して、ガラス基板上に形成されたフィルムを剥ぎ取り、オーブンで100℃で乾燥して、ポリイミドフィルムを製造した。
【0186】
前記方法により製造されたポリイミドフィルムの物性は、前記評価方法を通じて測定し、下記表1に示した。
【0187】
【0188】
前記表1に示したように、本発明に係るテトラカルボン酸二無水物に由来したポリイミドフィルムである製造例1、3、4の場合、熱膨張係数が35~43ppm/℃であり、ヘイズが0.1~0.2であり、黄色度(YI)が7.2~7.5であり、全光線透過率が88~90%であり、モジュラスが6.1~6.8であり、伸び率が15~27%であって、各項目別の特性は類似したレベルに測定された。
【0189】
また、PMDA(ピロメリト酸二無水物)に由来した繰り返し単位をさらに含むポリイミドフィルムである製造例2、5、6の場合、熱膨張係数が6.5~8.3ppm/℃であり、ヘイズが0.1であり、黄色度(YI)が7.4~10.8であり、全光線透過率が87~88%であり、モジュラスが7.1~7.5であり、伸び率が23~29%であって、各項目別の特性は類似したレベルに測定された。
このような効果は、比較製造例1または比較製造例2に比べて、顕著に向上した耐熱性、光学性、および機械的特性である。
【0190】
以上、特定の事項と限定された実施例により本発明を説明したが、これは、本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0191】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定されて決まってはならず、後述の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、何れも本発明の思想の範囲に属するといえる。