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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022026232
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】レセプタクル及びコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/11 20060101AFI20220203BHJP
   H01R 13/04 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
H01R13/11 302A
H01R13/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020129597
(22)【出願日】2020-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】田島 康裕
(57)【要約】
【課題】挿抜作業に伴う摺動接触による接点摩耗を抑制しつつ、複数の挿抜方向に対応するためのレセプタクルの技術を提供すること。
【解決手段】レセプタクル10は、第1挿抜方向D1に沿ってプラグ90のオス端子94が挿抜される第1方向開口13と、第2挿抜方向D2に沿ってオス端子94が挿抜される第2方向開口14と、第1方向開口13又は第2方向開口14から挿入されたオス端子94と接触するメス端子30と、を備える。メス端子30は、第1挿抜方向D1に延設された腕部を対向配置した腕部ペアを、第2挿抜方向に複数組配置して有する。腕部ペアは、組毎に、第2方向開口から挿入されたオス端子94と接触する接触位置を、第1挿抜方向D1において異なる位置に有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1挿抜方向に沿ってプラグのオス端子が挿抜される第1方向開口と、
前記第1挿抜方向と異なる第2挿抜方向に沿って前記オス端子が挿抜される第2方向開口と、
前記第1方向開口又は前記第2方向開口から挿入された前記オス端子と接触するメス端子と、
を備え、
前記メス端子は、前記第1挿抜方向に延設された腕部を対向配置した腕部ペアを、前記第2挿抜方向に複数組配置して有し、
前記腕部ペアは、組毎に、前記第2方向開口から挿入された前記オス端子と接触する接触位置を、前記第1挿抜方向において異なる位置に有する、
レセプタクル。
【請求項2】
前記接触位置は、前記腕部の先端近傍部にあり、
前記腕部ペアは、組毎に、前記第1挿抜方向の長さが異なる、
請求項1に記載のレセプタクル。
【請求項3】
前記接触位置は、対向する前記腕部の両方に、対向する突起状に設けられている、
請求項1又は2に記載のレセプタクル。
【請求項4】
前記腕部ペアは、
対向する前記腕部の前記第1方向開口に近い側の端部に、前記第1方向開口に向けて対向距離を拡開する第1傾斜部と、
対向する前記腕部の前記第2方向開口に近い側の端部に、前記第2方向開口に向けて対向距離を拡開する第2傾斜部と、
を有する、
請求項1~3の何れか一項に記載のレセプタクル。
【請求項5】
前記第2傾斜部は、前記腕部の接触位置から前記第2方向開口に向けて延設されている、
請求項4に記載のレセプタクル。
【請求項6】
前記接触位置と、前記第1傾斜部と、前記第2傾斜部とは、連続する屈曲形状で構成されている、
請求項4又は5に記載のレセプタクル。
【請求項7】
前記第1方向開口と、前記第2方向開口とは、連続するL字状の開口で構成されている、
請求項1~6の何れか一項に記載のレセプタクル。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載のレセプタクルと、
前記第1方向開口又は前記第2方向開口に挿入する前記オス端子を備えるプラグと、
からなるコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レセプタクル及びコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
プラグとレセプタクルからなるコネクタ構造がよく知られている。プラグとレセプタクルには、それぞれ導電性の端子を備えている。ユーザがコネクタの接続作業をする場合、プラグのオス端子がレセプタクルのメス端子に摺動接触しながら挿入されて電気的に接続される。ユーザがレセプタクルからプラグを抜く場合、オス端子がメス端子から摺動接触しながら引き抜かれて電気的な接続が解除される。
【0003】
コネクタの用途によっては挿抜を繰り返すことが前提となるため、そうした用途向けのコネクタの端子には、繰り返される摺動接触に起因する接点の摩耗を防止する工夫が盛り込まれている。例えば、特許文献1、特許文献2には摩耗を防止するためのプラグに係る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-18596号公報
【特許文献2】特開2000-164271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コネクタによっては、想定される電流や接続維持の堅牢性の観点から、1つの端子で複数の電気的接点を有するように求められる場合がある。また、通常、コネクタの挿抜方向は1つであるが、製造コストの低減と部品共通化の観点から1つのコネクタで複数の挿抜方向に対応させたいという要望がある。また、より大きな電流に対応したコネクタを実現するために、レセプタクルのメス端子を複数の対向ペア端子として配置した場合、複数並んだ対向ペア端子が重なる方向からプラグを挿抜する場合、プラグのオス端子と各対向ペア端子との接触位置が同一の軌跡を取るので、プラグオス端子の同一箇所の摩耗が激しくなって、耐久性に課題が生じていた。
【0006】
本発明の目的の一例は、複数並んだ対向ペア端子が重なる方向からプラグを挿抜する場合の摺動接触によるプラグオス端子の接点摩耗を抑制してプラグオス端子の耐久性を向上させることにある。そして、複数の挿抜方向に対応する大電流にも対応できるレセプタクルを提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、第1挿抜方向に沿ってプラグのオス端子が挿抜される第1方向開口と、前記第1挿抜方向と異なる第2挿抜方向に沿って前記オス端子が挿抜される第2方向開口と、前記第1方向開口又は前記第2方向開口から挿入された前記オス端子と接触するメス端子と、を備え、前記メス端子は、前記第1挿抜方向に延設された腕部を対向配置した腕部ペアを、前記第2挿抜方向に複数組配置して有し、前記腕部ペアは、組毎に、前記第2方向開口から挿入された前記オス端子と接触する接触位置を、前記第1挿抜方向において異なる位置に有する、レセプタクルである。
【0008】
この態様によれば、第1方向開口と第2方向開口という複数の開口を有し、互いに異なる第1挿抜方向および第2挿抜方向それぞれからのオス端子の挿抜を受け入れ可能なレセプタクルを実現できる。また、当該レセプタクルは、メス端子の腕部ペアそれぞれにオス端子と接触する接触位置を有しているため、複数の接触位置で電気的な接続を実現することができる。これら複数の接触位置は、第1挿抜方向において異なる位置にある。よって、第2挿抜方向からの挿抜にともなう摺動接触する位置が異なるので、複数の摺動接触位置が重なる場合に比べて接触摩耗を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のレセプタクル及びプラグの斜視図。
図2】本実施形態のレセプタクルのメス端子と、本実施形態のプラグのオス端子の斜視図。
図3】本実施形態のメス端子の上面図。
図4】本実施形態のメス端子の左側面図。
図5】本実施形態のメス端子の背面図。
図6】他の実施形態のメス端子の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態の例を説明するが、本発明を適用可能な形態は以下の実施形態に限定されない。
【0011】
図1は、本実施形態のレセプタクル10と、当該レセプタクル10に対して第1挿抜方向D1と第2挿抜方向D2のどちらからでも挿抜できる本実施形態のプラグ90と、を示す斜視図である。なお、第1挿抜方向D1に沿って挿抜する場合のプラグ90(90a)と、第2挿抜方向D2に沿って挿抜する場合のプラグ90(90b)と、の2つのプラグ90を図示しているが、実際の運用に当たっては、1つのプラグ90を何れかの挿抜方向から挿抜して使用することになる。
【0012】
図2は、本実施形態のレセプタクル10のメス端子30と、本実施形態のプラグ90のオス端子94と、を示す斜視図である。なお、第1挿抜方向D1に沿って挿抜する場合のオス端子94(94a)と、第2挿抜方向D2に沿って挿抜する場合のオス端子94(94b)と、の2つのオス端子94を図示しているが、実際の運用に当たっては、1つのオス端子94を、何れかの挿抜方向から挿抜することになる。
【0013】
先ず、プラグ90の構成について説明する。
図1に示すように、プラグ90は非導電性のハウジング91と、ハウジング91より延設されたボルト孔部92と、ガイド突起93と、ガイド突起93と同じ方向に向いて突設されているオス端子94と、を有する。
【0014】
図2に示すようにオス端子94は、2つの平坦部95と、2つの平坦部95の突設側端を突設方向に凸の湾曲面で連結する挿入端部96とを有する。オス端子94は、例えば導電性の1枚の金属板を曲げて作成される。そして、挿入端部96と逆側の逆端部94t(図1参照)は、ハウジング91を突き抜けて露出している。
【0015】
プラグ90は、ボルト孔部92を使って、ケーブル端部や制御基板にハウジング91が固定されると、ハウジング91を突き抜けているオス端子94の逆端部94tが被固定側の電気回路(例えば、端子)に接触して、オス端子94へ通じる電気回路が形成される。
【0016】
次にレセプタクル10の構成について説明する。
図1に示すように、レセプタクル10は、非導電材でできた中空箱型のハウジング11と、ハウジング11の背面下部に延設されたボルト挿通部12と、ハウジング11の上面の右側の位置に貫通して形成された第1ガイド孔13と、ハウジング11の前面の右側の位置に貫通して形成された第2ガイド孔14と、ハウジング11の上面に上向きに開けられた第1方向開口21と、ハウジング11の前面に前向きに開けられた第2方向開口22と、第1方向開口21及び第2方向開口22と連続するハウジング11の内部空間に取り付けられたメス端子30と、を有する。
【0017】
ボルト挿通部12は、レセプタクル10を固定するためのボルトやネジを挿通するために使用される。
【0018】
第1ガイド孔13は、プラグ90のハウジング91より突設されたガイド突起93を挿入し第1挿抜方向D1へガイドすることで、プラグ90をレセプタクル10に差し込む位置と方向を合わせ、オス端子94の第1方向開口21への挿入をスムーズに促す。第2ガイド孔14は、プラグ90のガイド突起93を挿入し第2挿抜方向D2へガイドすることで、プラグ90をレセプタクル10に差し込む位置と方向を合わせ、オス端子94の第2方向開口22への挿入をスムーズに促す。
【0019】
第1方向開口21の前側と、第2方向開口22の上側とは連通している。言い換えると、第1方向開口21と第2方向開口22とは、連続するL字状の開口で構成されている。
【0020】
第1方向開口21は、第1挿抜方向D1(レセプタクル10の上下方向)に沿ってプラグ90のオス端子94が挿抜される開口であり、オス端子94を第1挿抜方向D1から受け入れ可能な開口形状を有する。
第2方向開口22は、第1挿抜方向D1に交差する第2挿抜方向D2(第1挿抜方向に直交する方向;レセプタクル10の前後方向)に沿ってオス端子94が挿抜される開口であり、オス端子94を第2挿抜方向D2から受け入れ可能な開口形状を有する。
【0021】
図3は、メス端子30の上面図である。図4は、メス端子30の左側面図である。図5は、メス端子30の背面図である。図2図5に示すように、メス端子30は、第1方向開口21又は第2方向開口22から挿入されたオス端子94と接触して電気回路を形成するための電導性の金属材料を板金加工して構成される部品である。
【0022】
具体的には、メス端子30は、基部31と、基部31より延設された係合片32と、第1挿抜方向D1に向けて基部31より延設された4つの腕部33(第1腕部33a、第2腕部33b、第3腕部33c、第4腕部33d)と、を有する。
【0023】
基部31は、前後方向に長い平坦状であり、係合片32によってハウジング11と係合して固定される。
【0024】
腕部33a~33dの第1挿抜方向D1(上下方向)における長さは、第1腕部33aと第2腕部33bは同じ第1の長さを有し、第3腕部33cと第4腕部33dは、第1の長さよりも長い同じ第2の長さを有する。
【0025】
第1腕部33aは、基部31の左側部から上方に向けて延設され、第2腕部33bは、基部31の右側部から上方に向けて延設されている。これらの腕部は、基部31を挟んで対向配置されており、第1腕部ペア34aを形成する。
【0026】
第3腕部33cと第4腕部33dは、第1腕部33a及び第2腕部33bよりも第2挿抜方向D2(前後方向)の後方位置に設けられている。第3腕部33cは、基部31の左側部から延設され、第4腕部33dは、基部31の右側部から延設されている。これら腕部33c、33dは基部31を挟んで対向配置されており、第2腕部ペア34bを形成する。
【0027】
第1腕部ペア34aが前方側、第2腕部ペア34bが後方側となるように、複数の腕部ペアが、第2挿抜方向D2に沿って配置されている。第1腕部ペア34aと第2腕部ペア34bは、組毎(ペア毎)に、点Pを、第1挿抜方向D1(上下方向)において点Pは異なる位置にある。なお、点Pは理解し易いように便宜的に黒丸の点状で図面に示しているが、オス端子94の平坦部95との接触位置は点Pを含む腕部33a~33dの前後方向の幅全体の線である。なお、接触位置は線接触に限らず点接触や面接触でもよい。
【0028】
点Pは、それぞれの腕部33a~33dの上方先端近傍部にあり、各腕部ペア34a、34bの左右方向の間が最も狭くなっている位置を示している。
【0029】
具体的には、腕部ペア34a,34bは、対向する腕部33a~33dの第1方向開口21に近い側の端部に、第1方向開口21に向けてメス端子30の左右方向における腕部33aと腕部33bとの距離及び腕部33cと腕部33dとの距離を拡開する第1傾斜部35を有し、対向する腕部33a~33dの第2方向開口22に近い側の端部に、第2方向開口22に向けてメス端子30の左右方向における腕部33aと腕部33bとの距離及び腕部33cと腕部33dとの距離を拡開する第2傾斜部36を有する。
【0030】
第2傾斜部36は、腕部33a~33dの点Pから第2方向開口22に向けて延設されており、第2傾斜部36の面は、点Pまで連続的に連なっている。
各腕部33a~33dにおける点Pと、第1傾斜部35と、第2傾斜部36とは、連続する屈曲形状で構成されており、板金加工により成形される。
【0031】
点Pは、対向する腕部33a~33dの第1傾斜部35の対向距離(左右方向距離W3(図3参照))が最も小さくなる部位であり、且つ、対向する第2傾斜部36にとっても対向距離(左右方向距離W3)が最も小さくなる部位にあたる。なお、点Pの左右方向距離W3は、プラグ90の左右方向幅W9(図2参照)よりも小さく設定されている。
【0032】
<プラグ90を第1挿抜方向D1から挿入する動作>
プラグ90をレセプタクル10に接続するために、プラグ90を第1挿抜方向D1からレセプタクル10に近づけて、ガイド突起93を第1ガイド孔13に挿入すると、第1ガイド孔13は、オス端子94の挿入端部96を第1方向開口21から腕部ペア34bを構成する腕部33cと33dとの間に挿入させ、その後に挿入端部96を腕部ペア34aを構成する腕部33aと33bとの間に挿入させるようにプラグ90の挿入姿勢を保持しながらD1の方向に案内する
この時、オス端子94の左右方向幅W9(図2参照)は、点P間の左右方向距離W3(図3参照)よりも大きいので、挿入端部96が腕部ペア34bを構成する腕部33cと33dとの間に挿入されると、オス端子94は腕部33c及び33dの第1傾斜部35に当接し、腕部33c及び33dを左右方向に押し広げながら挿入が進行する。その後、挿入端部96が腕部ペア34aを構成する腕部33aと33bとの間に挿入されて、オス端子94は腕部33a及び33bの第1傾斜部35に当接し、腕部33a及び33bを左右方向に押し広げながら挿入が進行する。
【0033】
この挿入過程では、オス端子94がメス端子30の4本の腕部33a~33dのそれぞれの第1傾斜部35に接触し、その後各腕部33a~33dの点Pを含む腕部33a~33dの前後方向の幅全体の線に接触する。そして、接触位置は4本の各腕部33a~33dの前後方向の幅全体の線となるので、挿入時の摺動接触に伴うオス端子94(平坦部95)の摩耗は抑制される。
【0034】
また、図4に示すように、第1腕部ペア34a(第1腕部33a,第2腕部33b)とオス端子94との接触位置は、前後方向における第1位置Laを含む第1腕部33a及び第2腕部33bの幅全体で第1挿抜方向D1と平行に遷移する。第2腕部ペア34b(第3腕部33c、第4腕部33d)とオス端子94との接触位置は、前後方向における第2位置Lbを含む第3腕部33c及び第4腕部33dの幅全体で第1挿抜方向D1と平行に遷移する。
【0035】
第1腕部ペア34aに係る接触位置と第2腕部ペア34bに係る接触位置とは前後方向にずれているため、オス端子94側の接触位置が異なる。これにより、オス端子94を第1挿抜方向D1から挿入する場合の摺動接触位置は、第1腕部ペア34aと第2腕部ペア34bとで異なる軌跡をとるため、摺動接触による端子の摩耗を抑制することができる。
【0036】
<プラグ90を第2挿抜方向D2から挿入する動作>
プラグ90を第2挿抜方向D2からレセプタクル10に近づけて、ガイド突起93を第2ガイド孔14に挿入すると、第2ガイド孔14は、オス端子94の挿入端部96を第2方向開口22から腕部ペア34aを構成する腕部33aと33bとの間に挿入させ、その後に挿入端部96を腕部ペア34bを構成する腕部33cと33dとの間に挿入させるようにプラグ90の挿入姿勢を保持しながらD2の方向に案内する。
この時、オス端子94の左右方向幅W9(図2参照)は、点P間の左右方向距離W3(図3参照)よりも大きいので、オス端子94の挿入端部96が第1腕部ペア34a(第1腕部33a,第2腕部33b)の第2傾斜部36に当接し、そこから第1腕部ペア34aを左右方向に押し広げながらオス端子94の平坦部95が第2傾斜部36及び点Pを含む接触位置に当接し、その後、オス端子94は第2腕部ペア34b(第1腕部33c,第2腕部33d)の第2傾斜部36に当接し、そこから第2腕部ペア34bを左右方向に押し広げてオス端子94の平坦部95が第2傾斜部36及び点Pを含む接触位置に当接し、挿入が進行する。
【0037】
この挿入過程では、第2傾斜部36は点Pの前方側に延設されており、第2傾斜部36の面がスムーズに点Pを含む接触位置に繋がっているので、第2傾斜部36から段差や継ぎ目なしに接触位置が遷移するので、段差や継ぎ目による衝突摩耗が生じることはない。
【0038】
また、オス端子94とメス端子30の接触位置の遷移は、図4および図5に示すように、第1腕部ペア34a(第1腕部33a,第2腕部33b)とオス端子94との接触位置は、上下方向における第3位置Lcにおいて第2挿抜方向D2と平行に遷移する。第2腕部ペア34b(第3腕部33c、第4腕部33d)とオス端子94との接触位置は、上下方向における第4位置Ldにおいて第2挿抜方向D2と平行に遷移する。
【0039】
第1腕部ペア34aに係る接触位置と第2腕部ペア34bに係る接触位置とは上下方向にずれており、オス端子94側の接触位置が異なる。オス端子94を第2挿抜方向D2から挿入する場合は、摺動接触位置が、第1腕部ペア34aと第2腕部ペア34bとで異なる位置で、摺動接触するため、オス端子94(平坦95)の摩耗を抑制することができる。
【0040】
<他の実施の形態>
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は上記形態に限定されるものではなく適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0041】
例えば、上記実施形態では、4つの腕部33a~33dからなる2組の腕部ペア34a~34bを例示したが、腕部33を6つとした3組の腕部ペア34を構成することも可能である。
【0042】
また、上記実施形態では、挿抜方向を第1挿抜方向D1と第2挿抜方向D2の2方向として例示したが、挿抜方向を3方向とすることもできる。具体的には、レセプタクル10の後方に開口する第3方向開口を追加し、第3方向開口の上端は第1方向開口21(図1参照)の後端に連なるようにする。そして、腕部33には、第2傾斜部36と同様の構成を、第3方向開口に向けて追加すればよい。
【0043】
また、上記実施形態では、第1傾斜部35と第2傾斜部36とをそれぞれ別の延設・湾曲部として形成する例を示したが、これらを一体的に形成する構成も可能である。例えば、図6に示すメス端子30Bのように、腕部33の上端近傍部に、腕部ペア34の対向方向へ突設する略半球状の凸部38を作成する。この凸部38の対向面端部が点Pを含む接触位置となる。この凸部38の第1挿抜方向D1側の斜面が第1傾斜部35として機能し、第2挿抜方向D2側の斜面が第2傾斜部36として機能する。
【0044】
また、上記実施形態では、レセプタクルという呼称を用いて例示したが、レセプタクルという呼称は便宜上の呼称に過ぎない。ジャックなどの別の呼称の形態も同じ実施形態である。
【0045】
上述した実施形態およびその変形例を含め、本明細書の開示は、次のように概括することができる。
【0046】
本開示の態様は、第1挿抜方向に沿ってプラグのオス端子が挿抜される第1方向開口と、前記第1挿抜方向と異なる第2挿抜方向に沿って前記オス端子が挿抜される第2方向開口と、前記第1方向開口又は前記第2方向開口から挿入された前記オス端子と接触するメス端子と、を備え、前記メス端子は、前記第1挿抜方向に延設された腕部を対向配置した腕部ペアを、前記第2挿抜方向に複数組配置して有し、前記腕部ペアは、組毎に、前記第2方向開口から挿入された前記オス端子と接触する接触位置を、前記第1挿抜方向において異なる位置に有する、レセプタクルである。
【0047】
本開示の態様によれば、第1方向開口と第2方向開口という複数の開口を有し、互いに異なる第1挿抜方向および第2挿抜方向それぞれからのオス端子の挿抜を受け入れ可能なレセプタクルを実現できる。また、当該レセプタクルは、メス端子の腕部ペアそれぞれにオス端子と接触する接触位置を有しているため、複数の接触位置で電気的な接続を実現することができる。これら複数の接触位置は、第1挿抜方向において異なる位置にある。よって、第2挿抜方向からの挿抜にともない摺動接触する位置が異なるので、複数の摺動接触位置が重なる場合に比べて接触摩耗を抑制できる。
【0048】
前記接触位置は、前記腕部の先端近傍部にあり、前記腕部ペアは、組毎に、前記第1挿抜方向の長さが異なってもよい。
【0049】
これにより、第2挿抜方向からの挿抜における接触位置を容易に異なる位置に設けることができる。よって、第2挿抜方向での挿抜において複数の接点の摺動接触に係る接触摩耗を抑制できる。
【0050】
前記接触位置は、対向する前記腕部の両方に、対向する突起状に設けられてもよい。
【0051】
これにより、複数の接触位置がオス端子を挟んで対向する位置関係をなすので、オス端子を挟持し電気的接続を強く保つ効果が得られる。
【0052】
前記腕部ペアは、対向する前記腕部の前記第1方向開口に近い側の端部に、前記第1方向開口に向けて対向距離を拡開する第1傾斜部と、対向する前記腕部の前記第2方向開口に近い側の端部に、前記第2方向開口に向けて対向距離を拡開する第2傾斜部と、を有してもよい。
【0053】
これにより、プラグのオス端子が挿入される際に各腕部の開口に近い側の端部がオス端子に接触して破損したり、端面接触によるオス端子の摩耗を軽減することができる。
【0054】
前記第2傾斜部は、前記腕部の接触位置から前記第2方向開口に向けて延設されていてもよい。
【0055】
これにより、オス端子とメス端子との接触位置を、第2傾斜部から接触位置へ滑らかに導き、第2傾斜部から接触位置への接触位置が途切れる構成よりも、摺動接触による摩耗を低減できる。加えて、接触位置の第2方向開口側に第2傾斜部と連続的な形状として形成することで、接触位置周りの形状を強化しつつ、第2傾斜部の形成が、第2傾斜部を腕部の主体部分(基部から第1挿抜方向に延設されて、挿入時に弾性変形してオス端子を受け入れ、接点間でオス端子を挟持するための弾性力を確保する部分)の弾性に影響を与えないように構成できる。
【0056】
前記接触位置と、前記第1傾斜部と、前記第2傾斜部とは、連続する屈曲形状で構成されていてもよい。
【0057】
これにより、両傾斜部を板金加工で作成することができる。加えて、傾斜部間に継ぎ目が無いことで、スムーズなオス端子の挿入を実現できるとともに、継ぎ目がある場合に生じる接触摩耗が生じない。
【0058】
前記第1方向開口と、前記第2方向開口とは、連続するL字状の開口で構成されていてもよい。
【0059】
これにより、差し込み可能なプラグに要求される形状的条件が緩和され、多くの種類のプラグの受け入れが可能になり得る。つまり、当該レセプタクルの汎用性が向上する。
【符号の説明】
【0060】
10…レセプタクル
13…第1ガイド孔
14…第2ガイド孔
21…第1方向開口
22…第2方向開口
30…メス端子
33a~33d…腕部
34a~34b…腕部ペア
35…第1傾斜部
36…第2傾斜部
90…プラグ
94…オス端子
D1…第1挿抜方向
D2…第2挿抜方向
La…第1位置
Lb…第2位置
Lc…第3位置
Ld…第4位置
P…点(接触位置に含まれる点)
図1
図2
図3
図4
図5
図6