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特開2022-27525660MPa級の高耐食性耐候性鋼及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022027525
(43)【公開日】2022-02-10
(54)【発明の名称】660MPa級の高耐食性耐候性鋼及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20220203BHJP
   C22C 38/42 20060101ALI20220203BHJP
   C21D 8/02 20060101ALI20220203BHJP
   C21C 1/02 20060101ALI20220203BHJP
   C21C 5/30 20060101ALI20220203BHJP
   C21C 7/00 20060101ALI20220203BHJP
   C21C 7/10 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C22C38/00 301F
C22C38/42
C21D8/02 A
C21C1/02 101
C21C5/30 Z
C21C7/00 F
C21C7/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021116872
(22)【出願日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】202010743976.3
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519023846
【氏名又は名称】攀▲鋼▼集▲団▼研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】崔▲凱▼禹
(72)【発明者】
【氏名】李正▲榮▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ジン▼▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】汪▲創▼▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲開▼▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】姚永国
【テーマコード(参考)】
4K013
4K014
4K032
4K070
【Fターム(参考)】
4K013BA02
4K013BA08
4K013CD02
4K013CE01
4K014AA02
4K032AA01
4K032AA04
4K032AA05
4K032AA12
4K032AA14
4K032AA16
4K032AA23
4K032AA27
4K032AA29
4K032AA32
4K032BA01
4K032CA03
4K032CA05
4K032CC03
4K032CC04
4K032CE01
4K032CE02
4K070AB03
4K070AB05
4K070AC02
4K070AC23
4K070BB03
4K070BC11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】660MPa級の高耐食性耐候性鋼とその製造方法を提供する。
【解決手段】高耐食性耐候性鋼は、以下の化学成分:C≦0.12%、Si:2.20~3.00%、Mn≦1.50%、P:0.060~0.150%、S≦0.015%、Cr:2.90~3.70%、Ni:0.10~0.40%、Cu:0.20~0.60%、Als≧0.010%、並びに残部Fe及び不可避不純物を含有する。また、製造工程は、溶銑脱硫→転炉製錬→LF→RH→LF→スラブ連続鋳造→熱間圧延→ラミナー冷却→コイル化の工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学組成:C≦0.12重量%、Si:2.20~3.00重量%、Mn≦1.50重量%、P:0.060~0.150重量%、S≦0.015重量%、Cr:2.90~3.70重量%、Ni:0.10~0.40重量%、Cu:0.20~0.60重量%、Als≧0.010重量%、残部Fe及び不可避不純物を含有することを特徴とする、660MPa級の高耐食性耐候性鋼。
【請求項2】
以下の化学組成:C:0.06~0.08重量%、Si:2.60~2.80重量%、Mn:0.85~1.00重量%、P:0.080~0.120重量%、S≦0.007重量%、Cr:3.30~3.50重量%、Ni:0.20~0.30重量%、Cu:0.28~0.38重量%、Als:0.015~0.050重量%、残部Fe及び不可避不純物を含有することを特徴とする、請求項1に記載の660MPa級の高耐食性耐候性鋼。
【請求項3】
前記660MPa級の高耐食性耐候性鋼の耐大気腐食性指標Iが14.10~15.51であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の660MPa級の高耐食性耐候性鋼。
【請求項4】
前記660MPa級の高耐食性耐候性鋼は、660~740MPaの降伏強度、940~1040MPaの引張強度、18%以上の伸びA、及び-40℃で27J以上の衝撃値を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の660MPa級の高耐食性耐候性鋼。
【請求項5】
溶銑脱硫→転炉製錬→LF→RH→LF→スラブ連続鋳造→熱間圧延→ラミナー冷却→コイル化の工程を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の660MPa級の高耐食性耐候性鋼の製造方法。
【請求項6】
前記660MPa級の高耐食性耐候性鋼は、建築、橋梁建設又は車両製造の分野で使用され、高温多湿領域への曝露が可能であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の660MPa級の高耐食性耐候性鋼の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄冶金の技術分野に属し、特に660MPa級の高耐食性耐候性鋼及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材腐食が国家経済及び国家防衛建設に及ぼす損害は、一般的かつ深刻な問題である。鋼材腐食による経済的損失は、統計によると、一部の先進国ではGDPの2%~4%を占める。大気腐食は鉄骨構造の腐食の主な形態であり、全腐食損失のおよそ半分を占める。従って、大気腐食は耐候性鋼の研究開発にとって非常に重要である。
【0003】
耐大気腐食性鋼としても知られる耐候性鋼は、大気中で良好な耐食性を有する低合金鋼である。国内及び海外での多数の研究に基づいて、大気への長期間の曝露後、高密度で十分に付着した酸化生成物の層が耐候性鋼の表面に生成されて、外部腐食性物質から鋼マトリックスを隔離し、それによって耐候性鋼の耐食性を大幅に改善すると考えられる。
【0004】
中国では、耐候性鋼は主に圧延材及び容器に使用されている。米国及び日本などの先進国では、耐候性鋼は、鉄骨構造の建築物及び公共施設でより広く使用されている。米国では、耐候性鋼の大きな用途は橋梁を構築することであり、露出鋼の使用は拡大しており、500を超える建築物が露出耐候性鋼で作られている。日本では、1965年以来、露出耐候性鋼は建物の屋根、ブラインド、鋼製リブ及び外装パネルランプなどの外装部品に使用されてきた。市場の要求を満たすためには、耐食性の良好な耐候性鋼を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、660MPa級の高耐食性耐候性鋼を提供することである。
【0006】
上記の技術的課題を解決するために本発明で使用される技術的解決策は、以下の化学組成:C≦0.12重量%、Si:2.20~3.00重量%、Mn≦1.50重量%、P:0.060~0.150重量%、S≦0.015重量%、Cr:2.90~3.70重量%、Ni:0.10~0.40重量%、Cu:0.20~0.60重量%、Als≧0.010重量%、残部Fe及び不可避不純物を含有する660MPa級の高耐食性耐候性鋼を提供することである。
【0007】
好ましくは、660MPa級の高耐食性耐候性鋼は、以下の化学組成:C:0.06~0.08重量%、Si:2.60~2.80重量%、Mn:0.85~1.00重量%、P:0.080~0.120重量%、S≦0.007重量%、Cr:3.30~3.50重量%、Ni:0.20~0.30重量%、Cu:0.28~0.38重量%、Als:0.015~0.050重量%、残部Fe及び不可避不純物を含有する。
【0008】
更に、660MPa級の高耐食性耐候性鋼の耐大気腐食性指標Iは14.10~15.51である。
【0009】
更に、660MPa級の高耐食性耐候性鋼は、660~740MPaの降伏強度、940~1040MPaの引張強度、18%以上の伸びA、及び-40℃で27J以上の衝撃値を有する。
【0010】
本発明はまた、660MPa級の高耐食性耐候性鋼の製造方法であって、
溶銑脱硫→転炉製錬→LF→RH→LF→スラブ連続鋳造→熱間圧延→ラミナー冷却→コイル化の工程を含む方法を提供する。
【0011】
本発明はまた、建築、橋梁建設又は車両製造の分野における660MPa級の高耐食性耐候性鋼の使用を提供し、高耐食性耐候性鋼は高温多湿領域への曝露が可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果は以下の通りである。
【0013】
本発明は、660~740MPaの降伏強度、940~1040MPaの引張強度、18%以上の伸びA、-40℃で27J以上の衝撃値、6.0の2倍である14.10~15.51の耐大気腐食性指標I、及びQ355Bに対して20%以下の腐食速度を有する、660MPa級の高耐食性耐候性鋼の新規な組成を提供する。本発明の660MPa級の高耐食性耐候性鋼は、良好な耐大気腐食性、将来の保守コストの低減、長い製品寿命、サイクル全体にわたるコスト削減、並びに環境汚染及び腐食破壊事故のリスクの低減に加えて、高温多湿領域への曝露が可能であり、従って建築、橋梁建設又は車両製造の分野で広く使用され、広範に応用できる可能性を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、以下の化学組成:C≦0.12重量%、Si:2.20~3.00重量%、Mn≦1.50重量%、P:0.060~0.150重量%、S≦0.015重量%、Cr:2.90~3.70重量%、Ni:0.10~0.40重量%、Cu:0.20~0.60重量%、Als≧0.010重量%、残部Fe及び不可避不純物を含有する、660MPa級の高耐食性耐候性鋼を提供する。
【0015】
好ましくは、660MPa級の高耐食性耐候性鋼は、以下の化学組成:C:0.06~0.08重量%、Si:2.60~2.80重量%、Mn:0.85~1.00重量%、P:0.080~0.120重量%、S≦0.007重量%、Cr:3.30~3.50重量%、Ni:0.20~0.30重量%、Cu:0.28~0.38重量%、Als:0.015~0.050重量%、残部Fe及び不可避不純物を含有する。
【0016】
Cは鋼中の有効な強化元素であり、炭素含有量を増加させることで鋼の強度を改善することができる。しかしながら、炭素の過剰な含有は、以下の結果をもたらし得る:多くの粗大で脆い炭化物粒子が鋼中に生成されて、鋼の可塑性及び靭性を低下させる;偏析帯が鋼板の中心に生成されて、その曲げ性能及び成形性を低下させる;溶接炭素当量が増加して、溶接加工に悪影響を及ぼす。従って、本発明の設計によれば、Cは0.12%以下であり、好ましくは0.06~0.08%である。
【0017】
Mnは、強い固溶強化効果によって鋼の相変態温度を大幅に低下させ、その微細構造を微細化することができる。Mnは重要な強化及び強靱化元素である。しかしながら、過剰なMnの添加は、連続鋳造プロセス中にスラブクラックを引き起こし、鋼の溶接性能の低下をもたらす可能性がある。従って、本発明の設計によれば、Mnは1.50%以下であり、好ましくは0.85~1.00%である。
【0018】
Sは硫化物介在物を形成し、鋼の性能を低下させる可能性がある;同時に、腐食中に孔食が伝播し、腐食性能に悪影響を及ぼす可能性がある。従って、本発明の設計によれば、Sは0.015%以下であり、好ましくは0.007%以下である。
【0019】
Alは、脱酸素剤として鋼に添加される。しかしながら、Alの含有量が過剰であると、窒素酸化物がオーステナイト粒界に析出しやすく、スラブクラックが発生することがある。従って、本発明の設計によれば、Alsは0.010%以上であり、好ましくは0.015~0.050%である。
【0020】
本発明において、鋼中のSi、P、Cu、Cr及びNiの含有量は、耐候性鋼の耐大気腐食性を改善する目的で、元素C、Mn、S及びAlの含有量が決定された後に、耐候性構造用鋼(Weathering Structural Steels)(GB/T4171-2008)に対する付属書D「低合金鋼の耐大気腐食性評価ガイド(Guide to Evaluate the Atmospheric Corrosion Resistance of Low Alloy Steels)」の耐大気腐食性指標I=26.01(%Cu)+3.88(%Ni)+1.20(%Cr)+1.49(%Si)+17.28(%P)-7.29(%Cu)(%Ni)-9.10(%Ni)(%P)-33.39(%Cu)の計算式に従って決定される。
【0021】
鋼へのCuの添加は、顕著な耐食性を有する緻密で良好に接着したアモルファス酸化物(ヒドロカルビルオキシド)保護層の鋼表面への形成を促進する。更に、Cu及びSによって生成される不溶性硫化物は、鋼の耐食性に対するSの有害な影響を打ち消す。しかし、Cuの含有量が過剰な場合、Cuの融点がビレットの加熱温度よりも低いため、析出したCuが液相状態のオーステナイト粒界に集合し、析出したCuの一定量が加熱時や熱間圧延時にクラックを生じさせる可能性がある。耐大気腐食性指標Iの計算式によれば、Cu含有量が少なすぎる場合や多すぎる場合には、耐大気腐食性指標Iの計算値が小さくなる。従って、本発明の設計によれば、Cuは0.20~0.60%であり、好ましくは0.28~0.38%である。
【0022】
鋼へのNiの添加は、鋼の耐食性を著しく改善する;一方、元素Ni及びCuは、Niを含有するCuリッチ相を形成し、このCuリッチ相は、外側酸化物層内に固体状態で残って、マトリックス中のCuの濃化及び液体Cuリッチ相の形成機会を減少させることで、高温脆性欠陥の発生を回避する。そのため、鋼中のNi/Cu含有量は、一般に1/2以上に制御される。しかしながら、Niの過剰含有は、酸化物スケールの付着を増加させ、鋼にプレスされる際に熱間圧延欠陥が表面に形成される。更に、Niは貴金属であり、Niの過剰含有は鋼合金のコストを著しく増加させる。従って、本発明の設計によれば、Niは0.10~0.40%であり、好ましくは0.20~0.30%である。
【0023】
Pは、鋼の耐大気腐食性を効果的に改善することができる。鋼中のPとCuとの併用は良好な組成効果を示し得るが、Pの過剰含有は鋼の可塑性及び低温靭性を著しく低下させる。従って、本発明の設計によれば、Pは0.060~0.150%であり、好ましくは0.080~0.120%である。
【0024】
Crは、鋼の不動態化能の向上に顕著な効果を有し、鋼の表面に緻密な不動態化膜又は防錆層を形成するのに役立つ。錆層中のCrの濃化は、錆層の腐食媒体に対する選択的伝達特性を効果的に改善することができる。しかしながら、Crの含有量が過剰になると、製造コストが上昇する。従って、本発明の設計によれば、Crは2.90~3.70%であり、好ましくは3.30~3.50%である。
【0025】
Siは鋼への高い固溶度を有し、これは錆層組織を微細化し、鋼の全体的な腐食速度を低下させるのに役立つ。Siの含有量が多すぎると、圧延時のデスケーリングが困難となり、溶接性能の低下にもつながる。従って、本発明の設計によれば、Siは2.20~3.00%であり、好ましくは2.60~2.80%である。
【0026】
好ましい組成に基づいて、660MPa級の高耐食性耐候性鋼の耐大気腐食性指標Iは、6.0の2倍の14.10~15.51に達することができ、従って製品の優れた耐大気腐食性を達成する。
【0027】
本発明によれば、Q355Bの腐食速度に対する、660MPa級の高耐食性耐候性鋼の腐食速度は、20%以下である。
【0028】
本発明によれば、660MPa級の高耐食性耐候性鋼は、660~740MPaの降伏強度、940~1040MPaの引張強度、18%以上の伸びA、及び-40℃で27J以上の衝撃値を有する。
【0029】
本発明はまた、660MPa級の高耐食性耐候性鋼の製造方法であって、
溶銑脱硫→転炉製錬→LF→RH→LF→スラブ連続鋳造→熱間圧延→ラミナー冷却→コイル化の工程を含む方法を提供する。
【0030】
660MPa級の高耐食性耐候性鋼の上記製造方法では、各工程のパラメータは表1に従って制御される。
【0031】
【0032】
660MPa級の高耐食性耐候性鋼の製造方法では、製錬プロセスにおいて大量の合金が添加されるために、温度が大きく低下し、合金浸炭及び加熱浸炭が生じる;同時に、大きな温度低下は、フェロクロムの不十分な溶融効果及び、RHプロセスにおける挿入管の深刻な接着を引き起こす可能性がある。従って、一般的な方法である「転炉製錬→LF→RH→スラブ連続鋳造」では、この鋼級の生産ニーズを満たすことができない。
【0033】
ダブルLFプロセスは、660MPa級の高耐食性耐候性鋼の製錬プロセスとして使用される。LFプロセスの追加は、生産コストの増加が不可避であるにもかかわらず、温度、炭素及び合金を(挿入管の接着による合金損失現象を伴わずに)効果的に使用できる点並びに、硫黄精錬を効率的に制御できる点でより有利であり、生産リスクを大幅に低減する。各プロセスで採用する主な技術的手段及び制御目標を表に示す。LFプロセスに1回目に装入されるフェロクロムは、組成の下限に応じて0.15%減少され、LFに1回目に装入される他の合金元素は、低含有量及び酸化性に起因して、構成されない。これらの合金元素は、RH脱炭及び脱酸素後に最初に構成され、LFに2回目に装入された後に微調整される。
【0034】
660MPa級の高耐食性耐候性鋼の熱間圧延及び層冷却プロセスでは、鋳造ビレットは、熱間供給及び熱間装入されるか、又は直ちに積層されてゆっくりと冷却され、1240~1280℃の排出温度で24時間以内に炉に供給される。粗圧延の全長をデスケーリングする;仕上げ圧延の初期圧延温度は1020℃以下であり、最終圧延温度は810~850℃である。複数のミルスタンド間の冷却水は完全に閉じており、疎冷却はラミナー冷却とされ、巻取り温度は580~620℃である。
【0035】
合金含有量が高い鋼の場合、ビレットは、長期間の積層後及び低い炉温度でエッジクラック欠陥を生じやすいため、ビレットは熱間供給及び熱間装入されるか、又は直ちに積層されてゆっくりと冷却され、24時間以内に炉に装入される。
【0036】
ケイ素含有量が高い鋼は、炉内での長時間の加熱中に、酸化鉄スキン層とマトリックスとの間で融点1173℃を有するファヤライト(FeSiO)に変わる可能性がある。ケイ素を含有する鋼のスケーリングの困難さを解消又は緩和する効果的な方法は、粗デスケーリング中のスラブの表面温度がFeSiOの融点よりも高くなるように排出温度を上昇させ、FeO/FeSiOのアンカーが液相状態で形成されないようにして、その排除を容易にすることである。複数のミルスタンド間の冷却水を完全に閉じて圧延速度を低下させ、冷却速度を低下させる;同時に、疎冷却はラミナー冷却とされ、冷却速度を低下させる。高Cr鋼の高い焼入性のために、冷却速度が高い場合は、製品の靭性及び可塑性に悪影響を及ぼすマルテンサイト組織が現れやすい。
【0037】
本発明の具体的な実施形態を、実施例及び比較例を参照して更に説明する。
【0038】
実施例及び比較例
660MPa級の高耐食性耐候性鋼を、それぞれ従来の製錬プロセス並びに制御された圧延及び冷却プロセスによって製造し、鉄道耐候性鋼のサイクル浸透及び腐食試験方法(Test Method for Cycle Infiltration and Corrosion of Railway Weather-resistance Steel)(TB/T2375)に従って、Q355Bに対する腐食速度を試験した。本発明の660MPa級の高耐食性耐候性鋼及び比較例1の通常耐候性鋼Q450NQR1及び比較例2の低合金高強度鋼Q355Bの具体的な組成及び耐大気腐食性を表2に示す。
【0039】
【0040】
実施例及び比較例から、660MPa級の高耐食性耐候性鋼の耐大気腐食性指標Iは、6.0の2倍であり、通常の耐候性鋼及び低合金高強度鋼の耐大気腐食性指標Iよりもはるかに大きく、優れた耐大気腐食性を示すことが分かる。高耐食性耐候性鋼は、高温多湿領域への曝露が可能であり、これにより、コーティング及び錆除去コスト、腐食破壊事故及び環境汚染が低減され、建物、橋梁、車両及び他の分野に適用することができ、応用の良好な見通しが示される。
【外国語明細書】