(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028625
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】タイロッド装備型のハウジング、およびタイロッド装備型のハウジングの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60T 13/74 20060101AFI20220208BHJP
B60T 13/565 20060101ALI20220208BHJP
B60T 11/18 20060101ALI20220208BHJP
F16B 37/00 20060101ALI20220208BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20220208BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
B60T13/74 D
B60T13/565
B60T11/18
F16B37/00 D
F16B37/00 E
F16B37/00 Z
F16J15/06 L
F16J15/10 K
F16J15/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021123206
(22)【出願日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】10 2020 209 754.2
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】アプト,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ナーゲル,ヴィリ
(72)【発明者】
【氏名】パヌンツィオ,ジャンマリア
(57)【要約】 (修正有)
【課題】タイロッド装備型のハウジング、および液圧装置に関して、タイロッド装備型のハウジングの製造方法、および、液圧装置の表面および/または内部にタイロッド装備型のハウジングを組み付ける方法を提供する。
【解決手段】ハウジングが有するタイロッド(46)は、ブッシュ(50)の内側中空スペース(52)を通って突き出し、ブッシュ(50)の内側中空スペースはナット(48)の方を向く側で、ハウジング部分(40)から離れる方を向くナット(48)の少なくとも1つの部分区域(48c)を介してブッシュ(50)がスライド可能であるように構成されて、少なくともナット(48)の部分区域(48c)がブッシュ(50)の内側中空スペースに突入するようになっている。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイロッド装備型のハウジングであって、
ハウジング部分(40)が内部容積(42)を少なくとも部分的に取り囲むように成形された前記ハウジング部分(40)と、
前記内部容積(42)に突入し、前記ハウジング部分(40)に形成された開口部(44)を通って前記ハウジング部分(40)から突き出すタイロッド(46)と、
前記内部容積(42)に突入する前記タイロッド(46)の内側区域(46a)にねじ固定されて、ナット(48)の接触面(48a)が、または前記タイロッド(46)の上で前記ナット(48)と前記ハウジング部分(40)との間に配置されるワッシャ(80)が、前記ハウジング部分(40)と接触するようになっている前記ナット(48)と、
前記ハウジング部分(40)から離れる方を向く前記ナット(48)の側に前記タイロッド(46)の前記内側区域(46a)の上でスライド可能に配置されたブッシュ(50)と、を有し、前記タイロッド(46)は前記ブッシュ(50)の内側中空スペース(52)を通って突き出す、タイロッド装備型のハウジングにおいて、
前記ブッシュ(50)の前記内側中空スペース(52)は前記ナット(48)の方を向く側で、前記ハウジング部分(40)から離れる方を向く前記ナット(48)の少なくとも1つの部分区域(48c)を介して前記ブッシュ(50)がスライド可能であるように構成されて、少なくとも前記ナット(48)の前記部分区域(48c)が前記ブッシュ(50)の前記内側中空スペース(52)に突入するようになっていることを特徴とする、タイロッド装備型のハウジング。
【請求項2】
前記タイロッド装備型のハウジングは前記タイロッド(46)の上に配置された環状のシール部材(54)を有し、前記タイロッド(46)の外側区域(46b)が前記ハウジング部分(40)から突き出す前記開口部(44)が少なくとも前記環状のシール部材(54)によって液密に封止され、前記環状のシール部材(54)は前記タイロッド(46)の前記外側区域(46b)に配置される、請求項1に記載のタイロッド装備型のハウジング。
【請求項3】
前記環状のシール部材(54)は環状の成形シール材、Oリング(54)、および/または環状に硬化された接着剤である、請求項2に記載のタイロッド装備型のハウジング。
【請求項4】
前記ナット(48)の内穴(48b)の中心を通って延びる中心長軸(48d)を定義可能であり、前記ハウジング部分(40)と接触する前記ナット(48)の前記接触面(48a)は前記ナット(48)の前記内穴(48b)の前記中心長軸(48d)に対して垂直に向く第1の最小の外径(D1)を有し、この最小の外径は、前記ブッシュ(50)の前記内側中空スペース(52)に挿入可能な前記ナット(48)の前記部分区域(48c)の、前記ナット(48)の前記内穴(48b)の前記中心長軸(48d)に対して垂直に向く第2の最大の外径(D2)よりも大きい、請求項1から3のいずれか1項に記載のタイロッド装備型のハウジング。
【請求項5】
前記ナット(48)は付属の前記タイロッド(46)にクランプ固定される、請求項1から4のいずれか1項に記載のタイロッド装備型のハウジング。
【請求項6】
前記ナット(48)は3つの径方向の圧入部によって付属の前記タイロッド(46)にクランプ固定され、隣接する2つの径方向の前記圧入部はそれぞれ120°の角度だけ互いにオフセットされる、請求項5に記載のタイロッド装備型のハウジング。
【請求項7】
前記ナット(48)の外側表面は亜鉛からなる、請求項1から6のいずれか1項に記載のタイロッド装備型のハウジング。
【請求項8】
液圧装置(58)において、
前記タイロッド装備型のハウジングの前記タイロッド(46)の外側区域(46b)が前記液圧装置(58)のフランジ(62)にある穴(60)を通って突き出すように前記液圧装置(58)の表面および/または内部に組み付けられている、請求項1から7のいずれか1項に記載のタイロッド装備型のハウジングを有している液圧装置。
【請求項9】
前記液圧装置(58)はマスタブレーキシリンダ(58)、プランジャ装置、または液圧ブレーキシステムである、請求項8に記載の液圧装置(58)。
【請求項10】
タイロッド装備型のハウジングの製造方法において、次の各ステップを有し、
内部容積(42)を少なくとも部分的に取り囲むハウジング部分(40)にタイロッド(46)が配置されて、前記タイロッド(46)が前記内部容積(42)に突入し、前記ハウジング部分(40)に形成された開口部(44)を通って前記ハウジング部分(40)から突き出すようにされ(S1)、
前記内部容積(42)に突入している前記タイロッド(46)の内側区域(46a)にナット(48)がねじ固定されて、前記ナット(48)の接触面(48a)が、または前記タイロッド(46)の上で前記ナット(48)と前記ハウジング部分(40)との間に配置されるワッシャ(80)が、前記ハウジング部分(40)と接触するようにされ(S2)、
前記ハウジング部分(40)から離れる方を向く前記ナット(48)の側で前記タイロッド(46)の前記内側区域(46a)にスライド可能なブッシュ(50)が配置されて、前記タイロッド(46)が前記ブッシュ(50)の内側中空スペース(52)を通って突き出し、前記ハウジング部分(40)から離れる方を向く前記ナット(48)の少なくとも1つの部分区域(48c)を介して前記ブッシュ(50)がスライド可能であるようにして、少なくとも前記ナット(48)の前記部分区域(48c)が前記ブッシュ(50)の前記内側中空スペース(52)に突入するようにされる(S3)製造方法。
【請求項11】
液圧装置(58)の表面および/または内部にタイロッド装備型のハウジングを組み付ける方法において、前記タイロッド装備型のハウジングは請求項1から7のいずれか1項の構成要件を有し、または請求項10に記載の製造方法に従って製造され、次のステップを有し、
前記タイロッド装備型のハウジングが前記液圧装置(58)の表面および/または内部に組み付けられて、前記ハウジング部分(40)から突き出している前記タイロッド装備型のハウジングの前記タイロッド(46)の前記外側区域(46b)が前記液圧装置(58)のフランジ(62)にある穴(60)を通して突き出すようにされる(S4)方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイロッド装備型のハウジング、および液圧装置に関する。同様に本発明は、タイロッド装備型のハウジングの製造方法、および、液圧装置の表面および/または内部にタイロッド装備型のハウジングを組み付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、出願人に内部的な従来技術として知られている従来式のカバーの模式図を示している。
【0003】
図1に部分的に掲げるカバー10は、タイロッド14が中に突入する内部容積12を少なくとも部分的に取り囲んでいる。これに加えてタイロッド14は、カバー10に形成された開口部16を通ってカバー10から突き出している。タイロッド14の内側区域14aは内部容積12に存在し、それに対してタイロッド14の外側区域14bはカバー10の外面に突き出ている。
【0004】
カバー10に形成された開口部16は、少なくともタイロッド14の内側区域14aに配置されるOリング18によって液密に封止される。Oリング18は、タイロッド14の内側区域14aのねじ山14cにねじ固定されるナット20の内穴の内部にある。ナット20の内穴に押し込まれたOリング18は、カバー10とOリング18との接触によって、および同じくタイロッド14とOリング18との接触によって、さらにはナット20とOリング18との接触によっても、液密に封止されるように圧着される。さらにナット20は、その内穴の中心を通って延びる中心長軸に沿って比較的長い寸法を有しており、それは、矢印22によって図示しているナット20の領域をタイロッド14の上で圧着できるようにするためである。しかし
図1のカバー10では、中心長軸に沿った比較的長いナット20の寸法が、タイロッド14の内側区域14aの上にスライド可能に配置される(図示しない)ブッシュのストロークを制限する。
【0005】
図1に模式的に示す従来式のカバー10は、フランジ24に形成された穴26を通ってタイロッド14の外側区域14bが突き出すように、(部分的にのみ図示する)液圧装置のフランジ24に取り付けられる。タイロッド14の外側区域14bのねじ山14dにねじ固定される別のナット28により、カバー10がフランジ24に対して押圧される。別のナット28は、その内穴の中心を通って延びる中心長軸に沿って、ナット20よりも明らかに短い寸法を有しているとはいえ、矢印30によって模式的に図示するように、別のナット28もまたタイロッド14の上に圧着され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、請求項1の構成要件を有するタイロッド装備型のハウジング、請求項8の構成要件を有する液圧装置、請求項10の構成要件を有するタイロッド装備型のハウジングの製造方法、および、請求項11の構成要件を有する液圧装置の表面および/または内部にタイロッド装備型のハウジングを組み付ける方法を提供する。
【0007】
本発明は、それぞれのタイロッド装備型のハウジングのハウジング部分から離れる方を向いているナットの側でスライド可能に配置されるそれぞれのブッシュの最大限可能なストロークを維持したうえで、従来技術と比較して削減された全長を有するタイロッド装備型のハウジングを提供する。同様に本発明は、全長を維持したうえで、従来技術と比較して増大したそれぞれのブッシュの最大限可能なストロークを有するタイロッド装備型のハウジングを提供する。さらに本発明は、本発明によるそれぞれのタイロッド装備型のハウジングの内部容積の確実な封止に貢献する。あとで詳しく説明するとおり、本発明によるタイロッド装備型のハウジングは、液圧装置の耐用寿命中にタイロッド装備型のハウジングの望ましくない位置変化や緩みを心配しなくてよいように/ほぼ心配しなくてよいように、液圧装置の表面および/または内部に確実に組み付けることもできる。
【0008】
好ましい実施形態では、タイロッド装備型のハウジングはタイロッドの上に配置された環状のシール部材を有し、タイロッドの外側区域がハウジング部分から突き出す開口部は少なくとも環状のシール部材によって液密に封止され、環状のシール部材はタイロッドの外側区域に配置される。このような種類の環状のシール部材の位置決めは、スライド可能なブッシュの最大限可能なストロークを維持したうえで、それぞれのタイロッド装備型のハウジングの全長のいっそうの削減に貢献するだけでなく、タイロッド装備型のハウジングの耐用寿命中に環状のシール部材が損傷するリスクも著しく低減する。
【0009】
たとえば環状のシール部材は、環状の成形シール材、Oリング、および/または環状に硬化された接着剤であってよい。このようにして、低コストに製造可能なコンポーネントを環状のシール部材として利用することができる。
【0010】
ナットの内穴の中心を通って延びる中心長軸を定義可能であるのが好ましく、ハウジング部分と接触するナットの接触面はナットの内穴の中心長軸に対して垂直に向く第1の最小の外径を有し、この最小の外径は、ブッシュの内側中空スペースに挿入可能なナットの部分区域の、ナットの内穴の中心長軸に対して垂直に向く第2の最大の外径よりも大きい。このように接触面は、ハウジング部分のために十分に広い支持面を提供する。特に、タイロッドの中心長軸に対して垂直に向く、ナットの接触面の第1の最小の外径を比較的自由に選択可能である。
【0011】
ナットは付属のタイロッドにクランプ固定されるのが好ましい。環状のシール部材がタイロッドの外側区域に配置されたときに、同じタイロッドにねじ固定されているナットと接触しないので、ナットがその内穴を通って中心に延びる中心長軸に沿って比較的小さい寸法を有するように構成されている場合でさえ、ナットをクランプ固定するときに環状のシール部材の損傷を心配しなくてよい。
【0012】
たとえば、ナットは3つの径方向の圧入部によって付属のタイロッドにクランプ固定されていてよく、隣接する2つの径方向の圧入部はそれぞれ120°の角度だけ互いにオフセットされる。このことは、付属のタイロッドでのナットの確実な保持を保証する。
【0013】
タイロッド装備型のハウジングの別の好ましい実施形態では、ナットの外側表面は亜鉛からなる。ただし、本発明によるタイロッド装備型のハウジングでは、タイロッドの外側区域に取り付けられる環状のシール部材が、ハウジング部分の外部にある液体とナットとのいかなる接触も防止するので、亜鉛としての比較的強い耐液体性の保護層でナットをコーティングする従来のような必要性はない。
【0014】
上に説明した利点は、タイロッド装備型のハウジングのタイロッドの外側区域が液圧装置のフランジにある穴を通って突き出すように液圧装置の表面および/または内部に組み付けられている、このような種類のタイロッド装備型のハウジングを有する液圧装置においてももたらされる。
【0015】
液圧装置は、たとえばマスタブレーキシリンダ、プランジャ装置、または液圧ブレーキシステムであってよい。このように、本発明は多方面で適用可能である。しかしながら指摘しておくと、ここに挙げた液圧装置の例は完結したものと解釈されるべきではない。
【0016】
上に説明した利点は、タイロッド装備型のハウジングの対応する製造方法を実施したときにも保証され、この製造方法は、上に説明したタイロッド装備型のハウジングの実施形態に即して発展形とすることができる。
【0017】
さらに、液圧装置の表面および/または内部にタイロッド装備型のハウジングを組み付ける相応の方法の実施も、上に説明した液圧装置の利点をもたらし、この方法も、上に説明した液圧装置の実施形態に即して発展形とすることができる。
【0018】
次に、本発明のその他の構成要件や利点について図面を参照しながら説明する。図面は次のものを示す:
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2a】タイロッド装備型のハウジングの第1の実施形態を示す模式的な部分図である。
【
図2b】タイロッド装備型のハウジングの第1の実施形態を示す模式的な部分図である。
【
図2c】タイロッド装備型のハウジングの第1の実施形態を示す模式的な部分図である。
【
図2d】タイロッド装備型のハウジングの第1の実施形態を示す模式的な部分図である。
【
図2e】タイロッド装備型のハウジングの第1の実施形態を示す模式的な部分図である。
【
図2f】タイロッド装備型のハウジングの第1の実施形態を示す模式的な部分図である。
【
図2g】タイロッド装備型のハウジングの第1の実施形態を示す模式的な部分図である。
【
図3】タイロッド装備型のハウジングの第2の実施形態を示す模式的な部分図である。
【
図4】タイロッド装備型のハウジングの製造方法の実施形態を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図2aから2gは、タイロッド装備型のハウジングの第1の実施形態の模式的な部分図を示している。
【0021】
図2aに模式的に部分的に図示するタイロッド装備型のハウジングは、ハウジング部分40が内部容積42を少なくとも部分的に取り囲むように成形されたハウジング部分40を有している。ハウジング部分40は、たとえばカバーであってよい。しかしながら指摘しておくと、以下に説明するタイロッド装備型のハウジングの構成可能性は、ハウジング部分40の特定の形状にも特別な材料にも限定されるものではない。
【0022】
タイロッド装備型のハウジングは、内部容積42の中へ突入し、ハウジング部分40に形成された開口部44を通ってハウジング部分40から突き出すタイロッド46も含んでいる。タイロッド46とは、特にTie-Rodであると理解することができる。タイロッド46の内側区域46aが内部容積42の中に突入し、それに対して、タイロッド46の外側区域46bはハウジング部分40の外面に突き出している。
【0023】
タイロッド装備型のハウジングのナット48が、内部容積42に突入するタイロッド46の内側区域46aにねじ固定されており、ナット48の接触面48aが、またはナット48とハウジング部分40との間でタイロッド46の上に配置されるワッシャが、ハウジング部分40と接触するようになっている。
図2aから2gの例では、ナット48の接触面48aがハウジング部分40に接触する。ナット48は、
図2bから2dにそれぞれ異なる側から拡大して示されている。スクリューナットやNutも、ナット48であると理解することができる。ナット48は、タイロッド46の内側区域46aに形成された、たとえばM10ねじ山などのねじ山46cにねじ固定されるのが好ましい。そのために、ねじ山46cに適合する雌ねじが、ナット48を通って延びる内穴48bの少なくとも1つの部分内面に形成されていてよい。特に円筒状の内穴48bを、ナット48の内穴48bとして理解することができる。
【0024】
ブッシュ50が、ハウジング部分40から離れる方を向いているナット48の側に、タイロッド46の内側区域46aの上でスライド可能に配置されており、タイロッド46はブッシュ50の内側中空スペース52を通って突き出す。ブッシュ50は、
図2eから2gにそれぞれ異なる側から拡大して図示されている。摺動ブッシュ、滑り軸受ブッシュ、またはブッシングなどもブッシュ50であると理解することができる。ブッシュ50は、たとえば特に熱可塑性樹脂などのプラスチックでできていてよい。ブッシュ50に特別に好ましく適した材料は、たとえばポリオキシメチレン(POM)である。
【0025】
図2eから2gにおいて明らかなとおり、ブッシュ50の内側中空スペース52はナット48の方を向く側で、ハウジング部分40から離れる方を向くナット48の少なくとも1つの部分区域48cを介してブッシュ50がスライド可能であるように構成されており、少なくともナット48の部分区域48cがブッシュ50の内側中空スペース52に突入するようになっている。このように、少なくともハウジング部分40から離れる方を向くナット48の部分区域48cを、ブッシュ50の内側中空スペース52へ挿入可能である。ブッシュ50の内側中空スペース52へナット48の少なくとも1つの部分区域48cを挿入可能であるとは、内側中空スペース52の中へ突入するナット48の少なくとも部分区域48cが、タイロッド46の中心長軸56に対して垂直に向く、内側中空スペース52の中へ突入する部分区域48cと交差する横断面で見て、ブッシュ50によって二次元で取り囲まれ/包囲されることであると理解される。
【0026】
ナット48の少なくとも1つの部分区域48cを内側中空スペース52へ挿入可能であるようになっている、前の段落で説明したブッシュ50の内側中空スペース52の好ましい構成は、ブッシュ50の最大限可能なストロークを維持したうえで、タイロッド装備型のハウジングの全長/設計スペース長の削減を可能にする。従来技術と比較したときのタイロッド装備型のハウジングの全長の削減は、タイロッド装備型のハウジングを、ないしはタイロッド装備型のハウジングを有するように構成された液圧装置を、特に車両/自動車の表面および/または内部に組み付けることを容易にする。その別案として、タイロッド装備型のハウジングの全長を維持したうえで、ブッシュ50の最大限可能なストロークを向上させるために、ブッシュ50の内側中空スペース52の好ましい構成を利用することもできる。
【0027】
ナット48のほうを向いているブッシュ50の側には、少なくともハウジング部分40から離れる方を向くナット48の部分区域48cを内側中空スペース52の拡張部52aへ挿入可能であるように、内側中空スペース52の拡張部52aが構成されるのが好ましい。中空スペース52の拡張部52aは、少なくともナット48の部分区域48cが中に入ることができる内側中空スペース52のキャビティと呼ぶこともできる。内側中空スペース52の拡張部52aは、円筒外套状の内側表面を有するように構成されていてよい。内側中空スペース52の拡張部52aの円筒外套状の内面の最小の内径Φは、その中へ少なくともナット48の部分区域48aが入るのを可能にするのに十分に広くなっていてよい。たとえば、内側中空スペース52の拡張部52aの円筒外套状の内面の最小の内径Φは、少なくとも18mmであり得る。
【0028】
図2eから2gに見られるとおり、ブッシュ50は、ブッシュ50に薄板部品53をクランプ固定するために、ばね部材50aとラグ50bとを有するように構成されている。しかしながら、ブッシュ50の設計は比較的自由に選択可能である。
【0029】
図2aから2gに部分的に模式的に示しているタイロッド装備型のハウジングは、さらに、タイロッド46の上に配置された環状のシール部材54を有している。タイロッド46の外側区域46bがハウジング部分40から外に突き出す開口部44が、少なくとも環状のシール部材54によって液密に封止される。
図2aから2gのタイロッド装備型のハウジングのさらに別の利点は、環状のシール部材54がタイロッド46の外側区域46bに配置されることにある。したがって環状のシール部材54の配置は、上に説明した従来技術と比較したとき、環状のシール部材54が内部容積42からハウジング部分40の外面へと移動していると言い換えることもできる。
【0030】
従来技術とは相違する、タイロッド46の外側区域46bへの環状のシール部材54の配置は、ブッシュ50の最大限可能なストロークを維持したうえで、タイロッド装備型のハウジングの全長のいっそうの削減を可能にする。特に、環状のシール部材54の「シール部材全長」を、このようにしてタイロッド装備型のハウジングの全長のもとで節減することができる。以下の説明を参照すると明らかになるように、ハウジング部分40の外面には、通常、環状のシール部材54にとって十分な設計スペースが存在しており、タイロッド装備型のハウジングに環状のシール部材54を装備することが、タイロッド装備型のハウジングの全長に(実質的に)影響を及ぼすことがないように、この設計スペースに環状のシール部材54を統合可能である。
【0031】
内部容積42からハウジング部分40の外面へと環状のシール部材54を移動させるさらに別の利点は、外面に位置している開口部44の縁部の液密な封止にある。このことは、ハウジング部分40の外面から開口部44を通っての内部容積42への液体の浸透/侵入のいっそう効率的な防止に寄与し、そのようにして、内部容積42の内部に配置されているタイロッド装備型のハウジングのすべてのコンポーネントの腐食防止を改善する。
【0032】
図2aから2gのタイロッド装備型のハウジングでは、単なる例示として、環状のシール部材54はOリング54である。Oリング54の材料としては、たとえばエラストマーが使用されていてよい。それに伴ってOリング54について、引き続き低コストな標準部品が使用されていてよい。しかしながら別案として、環状のシール部材54としてOリング54に代えて別の環状の成形シール材や、環状に硬化した接着剤が適用されていてもよい。環状に硬化した接着剤として、たとえばシリコンまたはアクリルが使用されていてよい。接着剤の析出のために、自動ディスペンサー装置のディスペンサーニードルを、それぞれのタイロッド46の中心長軸56の周りの円軌道上で動かすことができる。任意選択として、タイロッド46に押し付けられるプラスチックリングによって接着剤を的確に分散させ、引き続いて環状に硬化させることもできる。
【0033】
内部容積42からハウジング部分40の外面への環状のシール部材54の移動によってもたらされる腐食防止に基づき、ナット48の外側表面は、特にナット48の外側表面全体は、問題なく亜鉛でできていてよい。タイロッド46の外側区域46bに配置される環状のシール部材54が、外面に位置している開口部44の縁部の湿潤を(通常は)すでに防止するので、内部容積42に侵入/浸透する液体によるナット48の湿潤を心配する必要がない。このように、比較的高価なナット48の亜鉛・ニッケルコーティングをする従来からの必要性がなくなる。
【0034】
さらに、内部容積42からハウジング部分40の外面へと環状のシール部材54を移動させれば、ナット48の内穴48bの内部に環状のシール部材54を統合する従来からの必要性がなくなる。したがってナット48は、その内穴48bを中心で通るように向く中心長軸48dに沿って比較的短い全寸法を有するように構成されていてよい。中心長軸48dに沿ったナット48の全寸法は、たとえば7mm以下であってよい。
【0035】
同じタイロッド46に配置されている環状のシール部材54にナット48が接触しないので、環状のシール部材54がナット48の雌ねじおよび/またはねじ山46cと接触し、そのようにして破損することを心配する必要もない。このように、環状のシール部材54の位置に、および環状のシール部材54のすぐ周囲に、ナット48の雌ねじとねじ山46cとがいずれも存在/隣接しないことを保証するための従来からの先行技術のコストもなくなる。選択的に、ナット48が付属のタイロッド46にクランプ固定されていてもよく、このことはナット48の保持を改善する(ナット48がクランプされるとき、それぞれのナット48が接触するねじ山46cが径方向に押し込まれ/変形して、それによってナット48がそのタイロッド46から意図せず外れないように固定する)。たとえば、
図2cおよび2dに矢印48eで図示するように、ナット48が径方向への複数の押込み部によって付属のタイロッド46にクランプ固定されていてよい。ナット48が3つの径方向の押込み部によってタイロッド46にクランプ固定される場合、2つの隣接する径方向の押込み部がそれぞれ120°の角度だけ互いにオフセットされるのが好ましい。別案として、ナット48がそのタイロッド46から意図せず外れるのを防ぐために、タイロッド46のねじ山46cとナット48の雌ねじに軸方向で互いに応力をかけることもできる。ナット48が締めつけられることによる、または、ねじ山46cとナット48の雌ねじに互いに軸方向に応力がかかることよる、環状のシール部材54の損傷は、同じタイロッド46の上に配置される環状のシール部材54に対してナット48が接触しないので心配する必要がない。
【0036】
さらに、
図2aから2gの例では、ハウジング部分40と接触するナット48の接触面48aは、その内穴48bの中心長軸48dに対して垂直に向く第1の最小の外径D1を有しており、この外径は、ブッシュ50の内側中空スペース52に挿入可能なナット48の部分区域48cの、内穴48bの中心長軸48dに対して垂直に向く第2の最大の外径D2よりも大きい。このように接触面48aは、ハウジング部分40の支持のために十分な支持面を提供する。ブッシュ50の内側中空スペース52に挿入可能なナット48の部分区域48cの第2の最大の外径D2は、たとえば18mm以下であってよい。
【0037】
特に、
図2bから2dに拡大して図示しているナット48は、形状接合部48fと、形状接合部48fに隣接する円筒部48gとを含んでおり、形状接合部48fと円筒部48gは互いに一体的に構成されている。形状接合部48fは、内穴48bの中心長軸48dに対して垂直に向く第1の最小の外径D1を有するように構成されており、それに対して円筒部48gは、内穴48bの中心長軸48dに対して垂直に向く第2の最大の外径D2を有する。形状接合部48fは、ねじ山46cにナット48をねじ固定するのに利用されるねじ締め工具のためのインターフェース/接触部としての役目を果たす。形状接合部48fの面はたとえば六角として成形されていてよい。形状接合部48fの平坦部間のサイズは19mm以上であってよい。ブッシュ50の内側中空スペース52に挿入可能なナット48の部分区域48cは、形状接合部48fから離れる方を向く円筒部48gの「端部区域」と言い換えることができる。
【0038】
図2aでは、図の見やすさを良くするために、タイロッド装備型のハウジングの1つのタイロッド46だけが、そのナット48およびブッシュ50とともに示されている。しかし当然ながら、タイロッド装備型のハウジングが複数のタイロッド46を有するように構成されていてもよく、これらすべてがそのナット48により、それぞれのタイロッド46の上に配置されたブッシュ50がスライド可能であるようにハウジング部分42の開口部44に取り付けられる。すべてのタイロッド46において、それぞれのナット48と、同じタイロッド46の上に配置されるブッシュ50とは、同じタイロッド46の上に配置されているナット48の、少なくともハウジング部分40から離れる方を向く部分区域48cを介して、ブッシュ50がスライド可能であるように構成されていてよい。
【0039】
図2aから2gに模式的に示すタイロッド装備型のハウジングは、タイロッド装備型のハウジングのタイロッド46の外側区域46bが液圧装置58のフランジ62にある穴60を通って突き出すように、(部分的にのみ示す)液圧装置58の表面および/または内部に組付られる。このような種類のフランジ62は、通常、好ましい強度を確保するために比較的大きい最小厚みを有するように構成されるので、フランジ62/その穴60は環状のシール部材54の統合のための十分な設計スペースを提供する。フランジ62に形成された穴60の中への環状のシール部材54の配置は、タイロッド装備型のハウジングの全長に対して環状のシール部材54が(実質的に)影響を及ぼさないことを追加的に保証する。
【0040】
フランジ62は、タイロッド46の外側区域46bにねじ固定される装置ナット64によって、ハウジング部分40に対して押圧されていてよい。装置ナット64をねじ固定するために、たとえば特にM8ねじ山などの別のねじ山46dがタイロッド46の外側区域46bに形成されていてよい。ハウジング部分40とフランジ62は、特に、初期応力のもとで互いにクランプされていてよい。
【0041】
図2aから2gの例では、液圧装置58は一例としてマスタブレーキシリンダ58であるが、そのうちロッドピストン66と復帰ばね68だけが
図2aに示されている。マスタブレーキシリンダ58に電気機械式のブレーキブースタ70が前置されており、
図2aには、電気機械式のブレーキブースタ70の出力ロッド72、リアクションディスク74、入力ロッド76、およびバルブボディ78(Valve Body)だけが部分的に示されている。ただし、
図2aに示すマスタブレーキシリンダ58および電気機械式のブレーキブースタ70の各コンポーネントは、例示としてのみ解釈されるべきものである。別案として、液圧装置58はたとえばプランジャ装置や液圧ブレーキシステムであってもよい。
【0042】
図3は、タイロッド装備型のハウジングの第2の実施形態の模式的な部分図を示している。
【0043】
図3のタイロッド装備型のハウジングでは、ナット48の全体が形状接合部48fとして構成されている。ナット48は、たとえばM10ナット48であってよい。ナット48は、タイロッド46の上でナット48とハウジング部分40との間に配置されるワッシャ80がハウジング部分40と接触するように、内部容積42へ突入するタイロッド46の内側区域46aにねじ固定されている。ただし
図3では、ナット48とワッシャ80だけがタイロッド装備型のハウジングのコンポーネントとして示されている。
【0044】
図3のタイロッド装備型のハウジングにおいても、ブッシュ50の内側中空スペース52がナット48の方を向く側に構成されていて、ハウジング部分40から離れる方を向いているナット48の少なくとも1つの部分区域48cを介してブッシュ50がスライド可能であり、少なくともナット48の部分区域48cがブッシュ50の内側中空スペース52に突入するようになっている。
図3のタイロッド装備型のハウジングのその他の特性と構成要件に関しては、
図2aから2gについての説明が参照される。
【0045】
図4は、タイロッド装備型のハウジングの製造方法の実施形態を説明するためのフローチャートを示している。
【0046】
ここで説明する製造方法の方法ステップS1で、内部容積を少なくとも部分的に取り囲むハウジング部分にタイロッドが配置されて、タイロッドが内部容積に突入し、ハウジング部分に形成された開口部を通ってハウジング部分から突き出すようにされる。次の方法ステップS2で、内部容積に突入しているタイロッドの内側区域にナットがねじ固定されて、ナットの接触面が、またはタイロッドの上でナットとハウジング部分との間に配置されるワッシャが、ハウジング部分と接触するようにされる。さらに方法ステップS3として、ハウジング部分から離れる方を向くナットの側でタイロッドの内側区域にスライド可能なブッシュが配置されて、タイロッドがブッシュの内側中空スペースを通って突き出し、ハウジング部分から離れる方を向くナットの少なくとも1つの部分区域を介してブッシュがスライド可能であるようにして、少なくともナットの部分区域がブッシュの内側中空スペースに突入するようにされる。方法ステップS1からS3は、任意の時間的順序で実行することができる。
【0047】
ここで説明している製造方法も上に説明した利点をもたらす。さらに、ここで説明している製造方法の実施にあたっても、上に説明したタイロッド装備型のハウジングの他の構成要件も構成することができる。
【0048】
発展例として、方法ステップS1からS3によって製造されたタイロッド装備型のハウジングを液圧装置の表面および/または内部に組み付けるために、さらに任意選択の方法ステップS4を実行することができる。方法ステップS4として、タイロッド装備型のハウジングが液圧装置の表面および/または内部に組み付けられて、ハウジング部分から突き出しているタイロッド装備型のハウジングのタイロッドの外側区域が、液圧装置のフランジにある穴を通して突き出すようにされる。
【符号の説明】
【0049】
40 ハウジング部分
42 内部容積
44 開口部
46 タイロッド
46a 内側区域
46b 外側区域
48 ナット
48a 接触面
48b 内穴
48c 部分区域
48d 中心長軸
50 ブッシュ
52 内側中空スペース
54 シール部材
58 液圧装置
60 穴
62 フランジ
80 ワッシャ
D1 最小の外径
D2 最大の外径
【外国語明細書】