(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022028811
(43)【公開日】2022-02-16
(54)【発明の名称】1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)とフッ化水素(HF)との共沸性又は共沸混合物様組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 17/20 20060101AFI20220208BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20220208BHJP
C07C 19/08 20060101ALI20220208BHJP
【FI】
C07C17/20
C07C21/18
C07C19/08
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021186792
(22)【出願日】2021-11-17
(62)【分割の表示】P 2019511447の分割
【原出願日】2017-08-15
(31)【優先権主張番号】15/252,544
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・シー・メルケル
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン・エイ・ポクロフスキー
(72)【発明者】
【氏名】シュエ・サン・トゥン
(72)【発明者】
【氏名】ハイヨウ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・ジェイ・ハルス
(72)【発明者】
【氏名】ハン・ティー・ファム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】少なくとも、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)の一つである有機化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】1~99重量%の1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)と、1~99重量%のフッ化水素(HF)と、から本質的になる、共沸性又は共沸混合物様組成物を提供することと、前記1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)の少なくとも一部を、フッ素化剤と反応させて、少なくとも1つのフッ素化有機化合物を生成することと、を含む、有機化合物をフッ素化するための方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)
と、フッ化水素(HF)と、から本質的になる、共沸性又は共沸混合物様組成物。
【請求項2】
前記組成物が、前記フッ化水素(HF)と1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロ
プ-1-エン(HCFO-1232zd)とを組み合わせた重量に基づいて、約1~約9
9重量%のフッ化水素(HF)と、約1~約99重量%の1,3-ジクロロ-3,3-ジ
フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)と、から本質的になる、請求項1
に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、前記フッ化水素(HF)と1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロ
プ-1-エン(HCFO-1232zd)とを組み合わせた重量に基づいて、約2~約9
9重量%のフッ化水素(HF)と、約1~約98重量%の1,3-ジクロロ-3,3-ジ
フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)と、から本質的になる、請求項1
に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、前記フッ化水素(HF)と1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロ
プ-1-エン(HCFO-1232zd)とを組み合わせた重量に基づいて、約2~約8
0重量%のフッ化水素(HF)と、約20~約98重量%の1,3-ジクロロ-3,3-
ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)と、から本質的になる、請求項
1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、約7psia±1psiaの圧力で約-10℃±0.5℃の沸点を有す
る、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記フッ化水素(HF)と1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(
HCFO-1232zd)とを組み合わせた重量に基づいて、約1~約99重量%のフッ
化水素(HF)と、約1~約99重量%の1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ
-1-エン(HCFO-1232zd)と、から本質的になる、ブレンドを形成すること
を含む、共沸性又は共沸混合物様組成物を形成する方法。
【請求項7】
前記形成する工程が、前記フッ化水素(HF)と1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオ
ロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)とを組み合わせた重量に基づいて、約2
~約99重量%のフッ化水素(HF)と、約1~約98重量%の1,3-ジクロロ-3,
3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)と、から本質的になる、ブ
レンドを形成することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記形成する工程が、前記フッ化水素(HF)と1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオ
ロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)とを組み合わせた重量に基づいて、約2
~約80重量%のフッ化水素(HF)と、約20~約98重量%の1,3-ジクロロ-3
,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)と、から本質的になる、
ブレンドを形成することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、約7psia±1psiaの圧力で約-10℃±0.5℃の沸点を有す
る、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)
と、フッ化水素(HF)と、から本質的になる、共沸性又は共沸混合物様組成物を提供す
ることと、
蒸気相の前記1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1
232zd)の少なくとも一部を、フッ素化剤と反応させて、少なくとも1つのフッ素化
有機化合物を生成することと、を含む、有機化合物をフッ素化するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-12
32zd)とフッ化水素(HF)との共沸性又は共沸混合物様組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロフルオロカーボン(CFC)系の化学物質は、とりわけ、冷媒、エアロゾル噴射
剤、発泡剤、及び溶媒としてを含む種々の異なる用途において、工業で広く使用されてい
る。しかしながら、ある特定のCFCは、地球オゾン層を破壊する疑いがある。したがっ
て、CFCの代替物として、より環境に優しい代用品が導入されてきた。例えば、1,1
,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)は、泡沫発泡剤及び溶媒
などのある特定の工業用途に好ましい物理的特性を有するものとして認識されており、し
たがって、これらの用途に以前使用されていたCFCの良好な代用品であるとみなされて
いる。残念ながら、工業用途におけるHFC-245faを含むある特定のヒドロフルオ
ロカーボンの使用は、現在、地球温暖化の一因であると考えられている。したがって、よ
り環境に優しいヒドロフルオロカーボンの代用物が現在求められている。
【0003】
HCFO-1233zd又は単に1233zdとしても知られている化合物1-クロロ
-3,3,3-トリフルオロプロペンは、発泡剤及び溶媒としての使用を含むいくつかの
用途において、HFC-245faを代替するための候補である。1233zdは、Z異
性体及びE異性体を有する。これら2つの異性体間の物理的特性の違いにより、高純度1
233zd(E)、高純度1233zd(Z)、又はその2つの異性体のある特定の混合
物は、冷媒、噴射剤、発泡剤、溶媒としての特定の用途、又は他の用途に好適であり得る
。
【0004】
米国特許第5,763,706号及び同第6,844,475,号にそれぞれ記載され
ているように、当該技術分野において周知である245fa及び1233zdの両方の生
成において、1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-12
32zd)は、出発物質、又は中間体(例えば、より少ないフッ素化クロロカーボンで開
始する場合、例えば、HCC-240fa、1,1,3,3-テトラクロロプロペン、1
,3,3,3-テトラクロロプロペン、及び/又は1,1,3,3-テトラクロロ-1-
フルオロプロパン)のいずれかであることができる。1233zdの生成方法もまた、米
国特許第9,045,386号及び同第9,000,240号に開示されている。
【0005】
1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)
の新たな組成物、分離及び精製方法、並びに使用が望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-12
32zd)とフッ化水素(HF)とから本質的になる不均質な共沸性又は共沸混合物様組
成物を提供する。
【0007】
別の実施形態では、組成物は、1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エ
ン(HCFO-1232zd)とフッ化水素(HF)とからなり得る。
【0008】
更なる実施形態では、組成物は、フッ化水素(HF)と1,3-ジクロロ-3,3-ジ
フルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)とを組み合わせた重量に基づいて
、約1~約99重量%のフッ化水素(HF)と、約1~約99重量%の1,3-ジクロロ
-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)とから本質的になり
得る。あるいは、組成物は、フッ化水素(HF)と1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオ
ロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)とを組み合わせた重量に基づいて、約2
~約99重量%のフッ化水素(HF)と、約1~約98重量%の1,3-ジクロロ-3,
3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)とから本質的になり得る。
また更に、組成物は、フッ化水素(HF)と1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロ
プ-1-エン(HCFO-1232zd)とを組み合わせた重量に基づいて、約2~約8
0重量%のフッ化水素(HF)と、約20~約98重量%の1,3-ジクロロ-3,3-
ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)とから本質的になり得る。組成
物は、約7psia±1psiaの圧力で約-10℃±0.5℃の沸点を有し得る。
【0009】
その別の形態では、本発明は、フッ化水素(HF)と1,3-ジクロロ-3,3-ジフ
ルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)とを組み合わせた重量に基づいて、
約1~約99重量%のフッ化水素(HF)と、約1~約99重量%の1,3-ジクロロ-
3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)とから本質的になるブ
レンドを形成することを含む、共沸性又は共沸混合物様組成物を形成する方法を提供する
。組成物は、1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-12
32zd)とフッ化水素(HF)とからなり得る。
【0010】
前述の方法では、形成する工程は、フッ化水素(HF)と1,3-ジクロロ-3,3-
ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)とを組み合わせた重量に基づい
て、約2~約99重量%のフッ化水素(HF)と、約1~約98重量%の1,3-ジクロ
ロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)とから本質的にな
るブレンドを形成することを含み得る。あるいは、形成する工程は、フッ化水素(HF)
と1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)
とを組み合わせた重量に基づいて、約2~約80重量%のフッ化水素(HF)と、約20
~約98重量%の1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-
1232zd)とから本質的になるブレンドを形成することを含み得る。組成物は、約7
psia±1psiaの圧力で約-10℃±0.5℃の沸点を有し得る。
【0011】
その更なる形態では、本発明は、1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-
エン(HCFO-1232zd)とフッ化水素(HF)とから本質的になる共沸性又は共
沸混合物様組成物を提供する工程と、蒸気相の当該1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオ
ロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)の少なくとも一部を、フッ素化剤と反応
させて、少なくとも1つのフッ素化有機化合物を生成する工程とを含む、有機化合物をフ
ッ素化するための方法を提供する。反応工程では、蒸気相の当該1,3-ジクロロ-3,
3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)の少なくとも一部を、フッ
素化剤と反応させて、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-12
33zd)、1,1,1,3,3,-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、
及び/又は1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)を生成す
ることを更に含み得る。
【0012】
本発明が、本発明の任意の特定の態様及び/又は実施形態に関して本明細書に記載の特
性のうちのいずれかを、組み合わせの適合性を確実にするように適切な修正により、本明
細書に記載の本発明の任意の他の態様及び/又は実施形態の他の特性のうちのいずれかの
1つ以上と組み合わせることができることを、本発明に関係する当業者は理解するべきで
ある。かかる組み合わせは、本開示によって考慮される本発明の一部であるとみなされる
。
【0013】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、いずれもただ例示的かつ説明的なもので
あり、特許請求される本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。他の
実施形態は、本明細書に開示の本発明の仕様及び実施を考慮することで当業者には明らか
となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
添付の図面を考慮して、本発明の実施形態についての以下の記載を参照することによっ
て、本発明の上述及び他の特性及び有利性、並びにそれらを達成する様式がより明らかに
なり、本発明自体がより良好に理解されるであろう。
【0015】
【
図1】-10℃で測定した、実施例2で形成された混合物の蒸気圧のプロットを示す。
【0016】
図面は、本開示に従った様々な特性及び構成要素の実施形態を表すが、図面は必ずしも
縮尺どおりではなく、本開示をより良好に例示及び説明するために、ある特定の特性が誇
張されている場合がある。本明細書に記載の例証は、本発明の実施態様を例示するもので
あり、かかる例証は、いかなる様式においても本発明の範囲を限定するものとして解釈さ
れるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(本明細書では、HCFO-
1232zd又は1232zdとしても知られかつ称される)は、フッ化水素(HF)と
共に、不均質な共沸性及び共沸混合物様組成物又は混合物を形成し、本発明は、1232
zdとHFとを含む(including)又は含む(comprising)不均質な
共沸性又は共沸混合物様組成物を提供し、他の実施形態では、組成物は、1232zdと
HFとから本質的になり得、また更なる実施形態では、組成物は、1232zdとHFと
からなり得る。
【0018】
1232zdとHFとの共沸性又は共沸混合物様混合物は、1,1,1,3,3-ペン
タフルオロプロパン(HFC-245fa)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプ
ロペン(HCFO-1233zd)、及び1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(H
FO-1234ze)の生成における中間体及び/又は供給原料として使用され得、かか
る組成物は、加えて、金属から表面酸化を除去するための溶媒組成物として有用である。
更に、1232zdとHFとの共沸混合物又は共沸混合物様混合物は、一度形成されると
、その後抽出又は蒸留技術によってその構成要素部分へと分離されることができる。12
32zdは、約74℃の沸点を有し、HFは、標準大気圧で約20℃の沸点を有する。
【0019】
流体の熱力学的状態は、その圧力、温度、液体組成、及び蒸気組成によって画定される
。真の共沸性組成物の場合、液体組成物及び蒸気相は、所与の温度及び圧力範囲において
本質的に等しい。実際の条件では、これは、相変化中に構成要素を分離することができな
いことを意味する。本発明の目的では、共沸混合物は、周囲の混合物構成要素の沸点に対
して最大沸点又は最低沸点を呈する液体混合物である。また、本明細書で使用される場合
、用語「共沸混合物様」とは、厳密に共沸性である、及び/又は概ね共沸性混合物のよう
に挙動する組成物を指す。
【0020】
共沸混合物又は共沸混合物様組成物は、所与の圧力下で液体形態であるとき、実質的に
一定の温度で沸騰する2つ以上の異なる構成要素の混和物であり、この温度は個々の構成
要素の沸騰温度よりも高くても低くてもよく、沸騰している液体組成物と本質的に同一の
蒸気組成物を提供するであろう。
【0021】
本発明の目的では、共沸性組成物は、共沸混合物様組成物を含むと定義され、共沸混合
物のように挙動する、すなわち、一定の沸騰特徴、又は沸騰若しくは蒸発時に分留しない
傾向を有する組成物である。したがって、沸騰又は蒸発中に形成される蒸気の組成は、元
の液体組成物と同じであるか、又は実質的に同じである。したがって、沸騰又は蒸発中、
液体組成物は、少しでも変化する場合、最小又はごくわずかな程度のみ変化する。これは
、沸騰又は蒸発中に液体組成物が実質的な度合まで変化する非共沸混合物様組成物とは対
照的である。
【0022】
したがって、共沸混合物又は共沸混合物様組成物の本質的な特性は、所与の圧力で、液
体組成物の沸点が固定されていること、及び沸騰している組成物の上の蒸気の組成が、本
質的に、沸騰している液体組成物のものである、すなわち、液体組成物の構成要素の分留
が本質的に起こらないことである。共沸性組成物の各構成要素の沸点及び重量百分率の両
方は、共沸混合物又は共沸混合物様液体組成物が異なる圧力で沸騰に曝されると変化し得
る。したがって、共沸混合物又は共沸混合物様組成物は、その構成要素間に存在する関連
性の観点において、又は構成要素の組成範囲の観点において、又は特定の圧力での固定沸
点を特徴とする組成物の各構成要素の正確な重量百分率の観点において定義され得る。
【0023】
本発明は、有効量の1232zdとHFとを含む組成物を提供して、共沸性又は共沸混
合物様組成物を形成する。本明細書で使用される場合、用語「有効量」は、他の構成要素
と組み合わせられると、共沸混合物又は共沸混合物様混合物の形成をもたらす各構成要素
の量である。
【0024】
本発明の組成物は、好ましくは、1232zdとHFとの組み合わせから本質的になる
か、又は1232zdとHFとの組み合わせからなる二成分の共沸混合物である。本明細
書で使用される場合、共沸混合物様組成物又は混合物の構成要素に関して、用語「から本
質的になる」とは、組成物が、共沸混合物様の比で示された構成要素を含有し、追加の構
成要素が新たな共沸混合物様の系を形成しないという条件で、追加の構成要素を含有し得
ることを意味する。例えば、2つの化合物から本質的になる共沸混合物様混合物は、二成
分の共沸混合物を形成するものであり、追加の構成要素が混合物を非共沸性にせず、化合
物のいずれか又は両方と共沸混合物を形成しない(例えば、三成分の共沸混合物を形成し
ない)という条件で、任意選択的に、1つ以上の追加の構成要素を含んでもよい。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「異相共沸混合物」及び「不均質な共沸混合物」とは
、2つの液相と同時に存在する蒸気相を含む共沸混合物様組成物を意味する。
【0026】
本発明はまた、1232zdとHFとを組み合わせることによって共沸性又は共沸混合
物様組成物を形成する方法も提供する。2つ以上の構成要素を組み合わせて組成物を形成
するための、当該技術分野において既知の多種多様な方法のうちのいずれかは、本発明の
方法への使用に適合させることができる。例えば、1232zdとHFとは、バッチ式若
しくは連続式の反応及び/若しくはプロセスの一部として、又は2つ以上のかかる工程の
組み合わせを介して、手によって及び/又は機械によって、混合、ブレンド、又は組み合
わせることができる。一実施形態では、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(H
CC-240fa)とHFとが反応器に供給されるとき、1232zdは、1232zd
とHFとの共沸性又は共沸混合物様組成物の形態で中間副生成物として形成される。
【0027】
共沸性又は共沸混合物様組成物は、1232zdとHFとを組み合わせた重量に基づい
て、約1~約99重量パーセントの1232zd、約2~約98重量パーセントの123
2zd、約20~約98重量パーセントの1232zd、約15~約85重量パーセント
の1232zd、又は約30~約55重量パーセントの1232zd、及び1232zd
とHFとを組み合わせた重量に基づいて、1~約99重量パーセントのHF、約2~約9
8重量パーセントのHF、約2~約80重量パーセントのHF、約15~約85重量%の
HF、又は約45~約70重量パーセントのHFを含むか、これらからから本質的になる
か、又はこれらからなる。
【0028】
本発明の共沸性又は共沸混合物様組成物は、約7psiaの±1psiaの圧力で約-
10℃±0.5℃の沸点を有する。特定の一実施形態では、70±2重量パーセントのH
F及び30±2重量パーセントの1232zdを有する本発明の共沸性又は共沸混合物様
組成物は、-10℃及び7.1psiaで沸騰することが見出されている。
【0029】
本開示はまた、1232zdとHFとの共沸性又は共沸混合物様組成物を生成し、その
後、不純物から共沸混合物を分離することも包含する。本開示はまた、以下より詳細に論
じられるように、共沸性混合物から1232zdを分離及び精製するための工程も含む。
【0030】
1232zdは、当該技術分野において既知の1つ以上の方法を使用して生成され得、
1232zdが、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(240fa)、1,1,
3,3-テトラクロロ-1-フルオロプロパン(HFC-241fa)、1,3,3-ト
リクロロ-1,1-ジフルオロプロパン(242fa)、3,3-ジクロロ-1,1,1
-トリフルオロプロパン(243fa)、(E)-1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオ
ロプロプ-1-エン(1231zd(E))、(Z)-1,3-ジクロロ-3,3-ジフ
ルオロプロプ-1-エン(1231zd(Z))、(E)-1-クロロ-3,3,3-ト
リフルオロプロペン(1233zd(E))、(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフ
ルオロプロペン(1233zd(Z))、3-クロロ-1,1,1,3-テトラフルオロ
プロパン(244fa)、及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(245f
a)などの1つ以上の不純物を含有する反応混合物の構成要素として生成される。
【0031】
この混合物又は1232zd及び不純物を含有する任意の他の混合物から1232zd
を除去することにおける第1の工程は、本明細書に定義されるように、有効量でHFを添
加して、1232zdとHFとの共沸性組成物を形成することによってであり、不純物自
体は、1232zd、HF、又は1232zdとHFとの混合物と共沸性混合物を形成し
ない。その後、共沸性組成物は、これらに限定されないが、液-液相分離、蒸留、スクラ
ビング、又は分離手段として認識されている他の技術などの、標準的な分離技術を使用し
て不純物から分離される。
【0032】
精製された共沸混合物は、オゾン層破壊係数を有さず、地球温暖化の一因としてごくわ
ずかであり、不燃性である混合物に対する、当該技術分野における必要性を満たす。かか
る混合物は、これらに限定されないが、冷媒、発泡剤、噴射剤、及びガス滅菌用希釈剤な
どの広い範囲に利用され得る。共沸混合物はかかる目的のために、他の有用な添加剤又は
成分と組み合わせて提供され得る。
【0033】
精製後、1232zdとHFとの共沸混合物の構成要素の一部を、本質的にHFを含ま
ない1232zdの精製された形態に分離することが望ましい場合もある。本明細書で使
用される場合、「本質的にHFを含まない」、又は「HFを含まない」とは、1.0重量
%未満のHF、0.5重量%未満のHF、又は0.1重量%未満のHFを含む1232z
dの組成物を指す。
【0034】
分離方法としては、当該技術分野において一般的に既知の任意の方法が挙げられ得る。
一実施形態では、例えば、余剰なHFは、液-液相分離によって1232zdから除去す
ることができるが、他の代替形態としては、蒸留又はスクラビングが挙げられる。次いで
、残りのHFは、蒸留、及び/又は分子篩、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、及びこ
れらの組み合わせなどの1つ以上の乾燥媒体又は乾燥剤の使用によって、1232zdか
ら除去することができる。
【0035】
精製された1232zdは、冷媒、発泡剤、噴射剤、若しくはガス滅菌用の希釈剤など
の最終生成物として使用されてもよく、又は出発物質、中間体、モノマーとして使用され
てもよく、又はHFO代替物若しくは類似の化合物の生成のために更に処理されてもよい
。
【0036】
本発明の別の実施形態では、本明細書に記載の共沸混合物様組成物は、溶媒、特に洗浄
溶媒として使用することができる。ある特定の実施形態では、溶媒を金属基材の酸化した
表面と接触させて、酸化した表面の少なくとも一部を除去又は低減する。かかる溶媒は、
浸漬、噴霧、拭き取りなどの当該技術分野において既知の任意の手段を介して、標的基材
に適用されてもよい。
【0037】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の新規の共沸混合物様組成物を含む噴霧可能
な組成物が提供される。ある特定の実施形態では、噴霧可能な組成物はエアロゾルである
。ある特定の実施形態では、噴霧可能な組成物は、不活性成分、共溶媒、噴射剤、共噴射
剤などの他の構成要素を更に含む。
【0038】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の新規の共沸混合物様組成物は、1-クロロ
-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、1,3,3,3-テ
トラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、及び1,1,1,3,3-ペンタフル
オロプロパン(HFC-245fa)などの、ある特定のヒドロクロロフルオロオレフィ
ン、ヒドロフルオロオレフィン、及びヒドロフルオロカーボンの合成中に誘導される有用
な中間体である。例えば、合成反応中に1232zdとHFとを反応器に導入して、1-
クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)、1,3,3,
3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、又は1,1,1,3,3-ペン
タフルオロプロパン(HFC-245fa)を生成する場合、これらの構成要素の少なく
とも一部は、関連する反応生成物流から後で回収することができる共沸混合物を形成する
。
【0039】
ある特定の実施形態では、ヒドロクロロプロパンの沸点を低減するための方法が提供さ
れ、この方法では、有効量の1232zdとHFとをブレンドして、1232zdとHF
とから本質的になる共沸混合物様混合物を形成することを含む。1232zdの沸点を低
下させることは、1232zdが蒸気相フッ素化反応での反応物質として使用されるとき
に有利である。より具体的には、沸点を下げることにより、化合物の気化が促進され、し
たがって、化合物の分解の防止を助け、またフッ素化プロセスに必要とされるエネルギー
量も低減する。
【0040】
したがって、有機化合物をフッ素化するための方法であって、(a)1232zdとH
Fとから本質的になる共沸混合物様組成物を提供する工程と、(b)蒸気相の当該123
2zdの少なくとも一部を、フッ素化剤と反応させて、ペンタフルオロプロパン、例えば
、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、ヒドロクロロ
トリフルオロプロペン、例えば、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HC
FO-1233zd(E)、及び/又は(Z))、及び/又はテトラフルオロプロペン、
例えば、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)などの少な
くとも1つのフッ素化有機化合物を生成する工程と、を含む、方法もまた提供される。
【0041】
以下の非限定的な実施例は、本発明を例示するのに役立つ。
【0042】
実施例1
7.2gの1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-12
32zd)を13.4gのHFと組み合わせて、-10℃及び7.1psiaで(目視観
測では)不均質な共沸混合物混合物を形成した。底部の相(1232zdを多く含む層)
の液体組成物もまた、サンプリング及び分析し、1.2重量%で存在するHFと、98.
8重量%で存在する1232zdとを有することを見出した。
【0043】
実施例2
1232zdとHFとのみを含有する二成分の組成物をブレンドして、異なる組成物で
不均質な共沸混合物混合物を形成した。混合物の蒸気圧を-10℃で測定し、その結果を
以下の表1に示し、これは、約-10℃の一定温度でのHF重量パーセントの組成に相関
する、1232zdとHFとの蒸気圧測定値を示している。
【0044】
【0045】
データはまた、全てがブレンドの比率で示されている1232zdとHFとの混合物の
蒸気圧が、例えば、HFが0.0重量%(及び、1232zdが100.0重量%)であ
るとき、及びHFが100.0重量%(及び1232zdが0.0重量%)であるとき、
第1行及び最後の行に示されている1232zd単独及びHF単独のものよりも高いので
、混合物が共沸混合物であることを示している。表1からのデータはまた、
図1にグラフ
の形態で示されている。
【0046】
実施例3
1232zdとHFとの共沸性組成物も形成し、次いで、蒸気-液-液平衡(VLLE
)実験によって検証した。12.0gの1232zdを14.3gのHFと組み合わせて
、-10℃で(目視観察では)不均質な混合物を形成した。混合物の蒸気組成物を-10
℃の温度及び7.1psiaの圧力でサンプリングし、結果は、共沸性組成物が-10℃
で約70+2重量%のHFであることを示し、混合物が-10℃の温度及び7.1psi
aの圧力で不均質な共沸混合物であることが観察された。
【0047】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそう
でない旨を明確に指示しない限り、複数形を含む。更に、量、濃度、又は他の値若しくは
パラメータが、範囲、好ましい範囲、又は上方の好ましい値と下方の好ましい値との列挙
のいずれかとして与えられるとき、これは、範囲が別々に開示されているかどうかにかか
わらず、任意の上限範囲又は上方の好ましい値と任意の下限範囲又は下方の好ましい値と
の任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示しているものとして理解されるべき
である。数値の範囲が本明細書に列挙されている場合、特に明記しない限り、範囲は、そ
の端点、並びに範囲内の全ての整数及び端数を含むことが意図される。本発明の範囲は、
範囲を定義するときに列挙される特定の値に限定されることを意図するものではない。
【0048】
前述の説明は、本発明の単なる例示に過ぎないことが理解されるべきである。本発明か
ら逸脱することなく、当業者によって様々な代替形態及び修正形態を考案することができ
る。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれる全てのかかる代替形態、
修正形態、及び変動を包含することを意図する。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~99重量%の1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)と、1~99重量%のフッ化水素(HF)と、から本質的になる、共沸性又は共沸混合物様組成物を提供することと、
前記1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)の少なくとも一部を、フッ素化剤と反応させて、少なくとも1つのフッ素化有機化合物を生成することと、を含む、有機化合物をフッ素化するための方法。
【請求項2】
フッ素化された有機化合物が、少なくとも、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)及び1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)の一つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応が蒸気相で行われる、請求項1に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
前述の説明は、本発明の単なる例示に過ぎないことが理解されるべきである。本発明から逸脱することなく、当業者によって様々な代替形態及び修正形態を考案することができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれる全てのかかる代替形態、修正形態、及び変動を包含することを意図する。
本明細書は以下の発明の態様を包含する。
[1]
1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)と、フッ化水素(HF)と、から本質的になる、共沸性又は共沸混合物様組成物。
[2]
前記組成物が、前記フッ化水素(HF)と1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)とを組み合わせた重量に基づいて、約1~約99重量%のフッ化水素(HF)と、約1~約99重量%の1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)と、から本質的になる、[1]に記載の組成物。
[3]
前記組成物が、前記フッ化水素(HF)と1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)とを組み合わせた重量に基づいて、約2~約99重量%のフッ化水素(HF)と、約1~約98重量%の1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)と、から本質的になる、[1]に記載の組成物。
[4]
前記組成物が、前記フッ化水素(HF)と1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)とを組み合わせた重量に基づいて、約2~約80重量%のフッ化水素(HF)と、約20~約98重量%の1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)と、から本質的になる、[1]に記載の組成物。
[5]
前記組成物が、約7psia±1psiaの圧力で約-10℃±0.5℃の沸点を有する、[1]に記載の組成物。
[6]
前記フッ化水素(HF)と1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)とを組み合わせた重量に基づいて、約1~約99重量%のフッ化水素(HF)と、約1~約99重量%の1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)と、から本質的になる、ブレンドを形成することを含む、共沸性又は共沸混合物様組成物を形成する方法。
[7]
前記形成する工程が、前記フッ化水素(HF)と1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)とを組み合わせた重量に基づいて、約2~約99重量%のフッ化水素(HF)と、約1~約98重量%の1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)と、から本質的になる、ブレンドを形成することを含む、[6]に記載の方法。
[8]
前記形成する工程が、前記フッ化水素(HF)と1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)とを組み合わせた重量に基づいて、約2~約80重量%のフッ化水素(HF)と、約20~約98重量%の1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)と、から本質的になる、ブレンドを形成することを含む、[6]に記載の方法。
[9]
前記組成物が、約7psia±1psiaの圧力で約-10℃±0.5℃の沸点を有する、[6]に記載の方法。
[10]
1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)と、フッ化水素(HF)と、から本質的になる、共沸性又は共沸混合物様組成物を提供することと、
蒸気相の前記1,3-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロプ-1-エン(HCFO-1232zd)の少なくとも一部を、フッ素化剤と反応させて、少なくとも1つのフッ素化有機化合物を生成することと、を含む、有機化合物をフッ素化するための方法。
【外国語明細書】