(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030583
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】不織布製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 3/16 20060101AFI20220210BHJP
D04H 3/153 20120101ALI20220210BHJP
D01D 5/098 20060101ALI20220210BHJP
D01D 5/08 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
D04H3/16
D04H3/153
D01D5/098
D01D5/08 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020134696
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】512218577
【氏名又は名称】豊通ケミプラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】松山 宗平
【テーマコード(参考)】
4L045
4L047
【Fターム(参考)】
4L045AA06
4L045BA03
4L045BA44
4L045DA08
4L045DA41
4L045DA45
4L047AA28
4L047AB03
4L047AB08
4L047BA09
4L047EA05
4L047EA22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】容易に不織布構造を変化させることが可能な不織布製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】平均繊維径が2~5μmの極細繊維と平均繊維径が15~30μmの連続繊維を含む不織布の製造装置1であって、熱可塑性樹脂を溶融紡糸して第1フィラメント群24を形成する、第1口金23と、第2フィラメント群37を形成する、第2口金32と、熱可塑性樹脂を溶融紡糸して第3フィラメント群27を形成する第3口金26と、冷却装置4と、前記第1フィラメント群24、第2フィラメント群37、および第3フィラメント群27を下方に牽引するためのエジェクター5と、前記エジェクター5から噴出されるフィラメント群が混合された混合フィラメント群Fを捕集し、下流側に搬送する捕集コンベア6とを備える、不織布製造装置1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径が2~5μmの極細繊維と平均繊維径が15~30μmの連続繊維を含む不織布の製造装置であって、
熱可塑性樹脂を溶融紡糸して第1フィラメント群を形成する多数の紡糸孔を有する第1口金と、
熱可塑性樹脂を溶融紡糸する多数の紡糸孔と、該紡糸孔を挟むように設けられたスリットを有し、該スリットから噴出される高速空気により溶融樹脂を牽引細化して第2フィラメント群を形成する、第2口金と、
熱可塑性樹脂を溶融紡糸して第3フィラメント群を形成する多数の紡糸孔を有する第3口金と、
少なくとも第1フィラメント群および第3フィラメント群を冷却する冷却装置と、
前記第1フィラメント群、第2フィラメント群、および第3フィラメント群を導入し空気流によって第1フィラメント群および第3フィラメント群を下方に牽引するエジェクターと、
前記エジェクターから噴出される第1フィラメント群、第2フィラメント群、第3フィラメント群が混合された混合フィラメント群を捕集し、下流側に搬送する捕集コンベアとを備える、
不織布製造装置。
【請求項2】
前記第2口金における前記第2フィラメント群の牽引速度が、前記エジェクターにおける前記混合フィラメント群の牽引速度よりも高いことを特徴とする、請求項1の不織布製造装置。
【請求項3】
前記第2口金における前記第2フィラメント群の牽引速度が、前記エジェクターにおける前記混合フィラメント群の牽引速度よりも低いことを特徴とする、請求項1の不織布製造装置。
【請求項4】
平均繊維径が2~5μmの極細繊維と平均繊維径が15~30μmの連続繊維を含む不織布の製造装置であって、
熱可塑性樹脂を溶融紡糸し第1フィラメント群を形成する、多数の紡糸孔を有する第1口金と、
熱可塑性樹脂を溶融紡糸する多数の紡糸孔と、該紡糸孔を挟むように設けられたスリットを有し、該スリットから噴出される高速空気により溶融樹脂を牽引細化して第2フィラメント群を形成する、第2口金と、
少なくとも第1フィラメント群を冷却する冷却装置と、
前記第1フィラメント群と第2フィラメント群を導入し空気流によって第1フィラメント群を下方に牽引するためのエジェクターと、
エジェクターから噴出される第1フィラメント群と第2フィラメント群が混合された混合フィラメント群を捕集し、下流側に搬送する捕集コンベアとを備える、
不織布製造装置。
【請求項5】
平均繊維径2~5μmの極細繊維と平均繊維径15~30μmの連続繊維を含む不織布の製造方法であって、
第1口金の多数の紡糸孔から熱可塑性樹脂を溶融紡糸して第1フィラメント群を形成し、第2口金の多数の紡糸孔から熱可塑性樹脂を紡出するとともに、該紡糸孔を挟むように設けたスリットから噴出される高速空気により樹脂を牽引細化させて第2フィラメント群を形成し、第3口金の多数の紡糸孔から熱可塑性樹脂を溶融紡糸して第3フィラメント群を形成する工程と、
少なくとも第1フィラメント群および第3フィラメント群を冷却する工程と、
前記第1フィラメント群、第2フィラメント群、および第3フィラメント群をエジェクターに導入し、空気流によって第1フィラメント群および第3フィラメント群を下方に牽引し、混合フィラメント群を噴出する工程と、
噴出された前記混合フィラメント群を捕集し、下流側に搬送する工程とを備える、
不織布の製造方法。
【請求項6】
前記第2口金における前記第2フィラメント群の牽引速度が、前記エジェクターにおける前記混合フィラメント群の牽引速度よりも高いことを特徴とする、請求項5の不織布の製造方法。
【請求項7】
前記第2口金における前記第2フィラメント群の牽引速度が、前記エジェクターにおける前記混合フィラメント群の牽引速度よりも低いことを特徴とする、請求項5の不織布の製造方法。
【請求項8】
平均繊維径が2~5μmの極細繊維と、平均繊維径が15~30μmの連続繊維を含む不織布の製造方法であって、
第1口金の多数の紡糸孔から熱可塑性樹脂を溶融紡糸して第1フィラメント群を形成し、第2口金の多数の紡糸孔から熱可塑性樹脂を紡出するとともに、該紡糸孔を挟むように設けたスリットから噴出される高速空気により樹脂を牽引細化させて第2フィラメント群を形成する工程と、
少なくとも第1フィラメント群を冷却する工程と、
前記第1フィラメント群および第2フィラメント群をエジェクターに導入し空気流によって第1フィラメント群を下方に牽引し、混合フィラメント群を噴出する工程と、
噴出された前記混合フィラメント群を捕集し、下流側に搬送する工程とを備える、
不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極細繊維を含む不織布の製造装置および製造方法に関し、特に、吸音材として用いる不織布の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車や家電製品、住宅の内装には、吸音材として、グラスウール、ロックウール、アルミ繊維、多孔性セラミックなどが使用されている。しかし、これらの吸音材は、施工性、人体への障害、リサイクルなどの点で問題がある。また、特に自動車などの車両用吸音材としては、軽量な素材であることが要求される。そこで、これらの要求を満たすため、近年では不織布を用いた吸音材が提案されている。
【0003】
吸音材としてさまざまな構成の不織布や、不織布の積層体が検討されている。特に、ナノ繊維やサブミクロン繊維と称される極細繊維を他の繊維と組み合わせて成る不織布を用いることにより、特徴的な吸音特性を示すことが知られている。
【0004】
特許文献1は、緻密な構造の表面材と、粗な構造の裏面材とを接合してなる吸音性積層体であって、該表面材が平均繊維径10~30μmの連続長繊維層(S)と、平均繊維径が0.5~7μmのメルトブローン微細繊維層(M)とをSM型またはSMS型の構造に積層し、熱圧着により一体化した積層不織布である、吸音性積層体を開示している。
【0005】
また、特許文献2は、緻密な構造の面材と、粗密な構造の基材とを接合してなる複合吸音材であって、該緻密な構造の面材は、高融点成分を含む熱可塑性合成繊維層(A)、中間層としての熱可塑性合成極細繊維層(B)、該(A)の高融点繊維より30℃以上低融点である低融点成分を含む熱可塑性合成繊維を含む層(C)を、熱圧着して積層一体化した積層不織布である、複合吸音材を開示している。
【0006】
ところで、メルトブローン不織布において、異なる繊維径の繊維を含む不織布の製造方法が検討されている。特許文献3は、2種の長繊維が混繊されてなる不織布であって、該2種の長繊維が互いに異なる熱可塑性樹脂を用いて構成されており、当該不織布中に存在している長繊維の繊維径の合算値をその長繊維の構成本数で除して得られた平均繊維径が0.1~10μmであり、不織布を構成している長繊維において繊維径0.1~3μmである長繊維の割合が50構成本数%以上であり、3μmを超える長繊維の割合が50構成本数%以下であり、且つ不織布の比容積が20cm3/g以上であるメルトブロー製法で作られている混繊長繊維不織布が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特許4574262号公報
【特許文献2】特許4919881号公報
【特許文献3】特許5489084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2の場合、表面材として、繊維径が比較的大きいスパンボンド繊維層(S)と、メルトブローン極細繊維層(M)を積層する積層工程が必要となるため、工程が複雑となる。また、不織布を吸音材として用いる場合、吸音する周波数を変化させたい場合は異なる繊維層をそれぞれ作る必要があるため時間がかかり、煩雑となる。また、不織布を吸音材として用いる場合、表面材がSMS型またはSM型の積層体であるため、面方向のどの部位においても同一の吸音特性を示し、特定の周波数の吸音率は高いという利点はあるものの、広域の周波数を持つ音に対して吸音性を持たせることが難しかった。
【0009】
一方、特許文献3では、大きな繊維径の差を出すことは難しく、吸音材として用いた場合に優れた吸音率を得ることが難しいという問題がある。一般的には、紡糸可能な繊維径はスパンボンド紡糸法では1.5~4デニール、メルトブローン紡糸法では0.1~0.3デニールであり、どちらか一方の紡糸法では、大きな繊維径の差を付けられず、吸音性能に特徴を持たせることができない。
【0010】
そこで、本発明では、平均繊維径が2~5μmの極細繊維と平均繊維径が15~30μmの繊維を含む不織布を得ることができ、容易に不織布構造を変化させることができる不織布製造装置および不織布製造方法の提供を目的とする。特に、不織布を吸音材として用いた場合は目的の吸音周波数に合わせ、不織布構造と吸音特性を容易に変化可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、平均繊維径が2~5μmの極細繊維と平均繊維径が15~30μmの連続繊維を含む不織布の製造装置であって、熱可塑性樹脂を溶融紡糸して第1フィラメント群を形成する多数の紡糸孔を有する第1口金と、熱可塑性樹脂を溶融紡糸する多数の紡糸孔と、該紡糸孔を挟むように設けられたスリットを有し、該スリットから噴出される高速空気により溶融樹脂を牽引細化して第2フィラメント群を形成する、第2口金と、熱可塑性樹脂を溶融紡糸して第3フィラメント群を形成する多数の紡糸孔を有する第3口金と、少なくとも第1フィラメント群および第3フィラメント群を冷却する冷却装置と、前記第1フィラメント群、第2フィラメント群、および第3フィラメント群を導入し空気流によって第1フィラメント群および第3フィラメント群を下方に牽引するエジェクターと、前記エジェクターから噴出される第1フィラメント群、第2フィラメント群、第3フィラメント群が混合された混合フィラメント群を捕集し、下流側に搬送する捕集コンベアとを備える、不織布製造装置である。
【0012】
これによれば、スパンボンド紡糸機の第1口金、第3口金から紡糸された第1フィラメント群と第3フィラメント群と、メルトブローン紡糸機の第2口金から紡糸された第2フィラメント群とを同一のエジェクターを通して混合フィラメントとするため、紡糸速度や牽引速度等を変更することにより、メルトブローン繊維とスパンボンド繊維の比率、溶着の程度など、製造される不織布の構造を容易に変更することができる。特に、不織布を吸音材として用いる場合には、不織布の構造を変化することにより、吸音特性を変化させることができる。
【0013】
前記第2口金における前記第2フィラメント群の牽引速度が、前記エジェクターにおける前記混合フィラメント群の牽引速度よりも高いことが好ましい。
【0014】
ここで、第2フィラメント群の牽引速度は、第2口金において紡出された溶融樹脂が高速空気流により牽引される速度である。また、エジェクターにおける混合フィラメント群の牽引速度は、エジェクターにおいて第1、第3フィラメント群が牽引され、第2フィラメント群とともに噴出される速度である。
【0015】
これによれば、製造された不織布が、メルトブローン紡糸機の第2口金から紡糸されて形成された極細繊維を比較的多く含むことができる。そのため、製造された不織布を他の不織布と積層した積層吸音材の表面材として用いた場合には、不織布の通気抵抗が高く、面共振が明確に表れ、200~800Hzの中周波数領域にある共振周波数(例えば500Hz前後)の吸音率を高くできる。不織布の通気抵抗が高いと共振時に不織布の隙間に空気が流れにくく、空気のダンピングが利用できず、吸音率がピークとなって現れる。さらに、製造された不織布には、極細繊維が比較的表面に多い領域と、繊維径の大きい連続繊維が表面に比較的多い領域がランダムに存在するため、広域の周波数に対する吸音率を有する。
【0016】
前記第2口金における前記第2フィラメント群の牽引速度が、前記エジェクターにおける前記混合フィラメント群の牽引速度よりも低いことが好ましい。
【0017】
これによれば、製造された不織布が、スパンボンド紡糸機の第1、第3口金から紡糸された繊維を多く含む。そのため、通気抵抗は低く、裏面材として他の不織布と積層した場合には、高周波数領域(1000~6300Hz)の音を裏面材の不織布に侵入させ、裏面材で吸音させることができる。通気抵抗が低いため共振時に不織布隙間を空気が流れ、空気のダンピングを利用でき、吸音率のピークはブロードする。また、製造された不織布には、極細繊維が部分的に存在するため、積層吸音材の表面材として用いた場合には広域の周波数において吸音することができる。
【0018】
また、本発明は、平均繊維径が2~5μmの極細繊維と平均繊維径が15~30μmの連続繊維を含む不織布の製造装置であって、熱可塑性樹脂を溶融紡糸し第1フィラメント群を形成する、多数の紡糸孔を有する第1口金と、熱可塑性樹脂を溶融紡糸する多数の紡糸孔と、該紡糸孔を挟むように設けられたスリットを有し、該スリットから噴出される高速空気により溶融樹脂を牽引細化して第2フィラメント群を形成する、第2口金と、少なくとも第1フィラメント群を冷却する冷却装置と、前記第1フィラメント群と第2フィラメント群を導入し空気流によって第1フィラメント群を下方に牽引するためのエジェクターと、エジェクターから噴出される第1フィラメント群と第2フィラメント群が混合された混合フィラメント群を捕集し、下流側に搬送する捕集コンベアとを備える、不織布製造装置である。
【0019】
本発明は、平均繊維径2~5μmの極細繊維と平均繊維径15~30μmの連続繊維を含む不織布の製造方法であって、第1口金の多数の紡糸孔から熱可塑性樹脂を溶融紡糸して第1フィラメント群を形成し、第2口金の多数の紡糸孔から熱可塑性樹脂を紡出するとともに、該紡糸孔を挟むように設けたスリットから噴出される高速空気により樹脂を牽引細化させて第2フィラメント群を形成し、第3口金の多数の紡糸孔から熱可塑性樹脂を溶融紡糸して第3フィラメント群を形成する工程と、少なくとも第1フィラメント群および第3フィラメント群を冷却する工程と、前記第1フィラメント群、第2フィラメント群、および第3フィラメント群をエジェクターに導入し、空気流によって第1フィラメント群および第3フィラメント群を下方に牽引し、混合フィラメント群を噴出する工程と、
噴出された前記混合フィラメント群を捕集し、下流側に搬送する工程とを備える、不織布の製造方法である。
【0020】
さらに、上記製造方法から製造される不織布を表面材とし、他の不織布を裏面材として積層する工程を備えることが好ましい。
【0021】
前記第2口金における前記第2フィラメント群の牽引速度が、前記エジェクターにおける前記混合フィラメント群の牽引速度よりも高いことが好ましい。
【0022】
前記第2口金における前記第2フィラメント群の牽引速度が、前記エジェクターにおける前記混合フィラメント群の牽引速度よりも低いことが好ましい。
【0023】
平均繊維径が2~5μmの極細繊維と、平均繊維径が15~30μmの連続繊維を含む不織布の製造方法であって、第1口金の多数の紡糸孔から熱可塑性樹脂を溶融紡糸して第1フィラメント群を形成し、第2口金の多数の紡糸孔から熱可塑性樹脂を紡出するとともに、該紡糸孔を挟むように設けたスリットから噴出される高速空気により樹脂を牽引細化させて第2フィラメント群を形成する工程と、少なくとも第1フィラメント群を冷却する工程と、前記第1フィラメント群および第2フィラメント群をエジェクターに導入し空気流によって第1フィラメント群を下方に牽引し、混合フィラメント群を噴出する工程と、噴出された前記混合フィラメント群を捕集し、下流側に搬送する工程とを備える、不織布の製造方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、平均繊維径が2~5μmの極細繊維と平均繊維径が15~30μmの連続繊維を含む不織布を得ることができ、また、容易に不織布構造を変化できる。特に、不織布を吸音材として用いる場合は、吸音したい周波数に合わせた不織布構造を有する不織布を提供できる。また、比較的広域の周波数を持つ音に対して吸音性を有する不織布が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施形態にける不織布製造装置の一例を表す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本実施形態における不織布製造装置1について、
図1を参照して説明する。
不織布製造装置1は、スパンボンド紡糸機2と、メルトブローン紡糸機3と、スパンボンド紡糸機2から紡糸されるスパンボンド繊維群24、27(第1フィラメント群、第3フィラメント群)を冷却する冷却装置4と、スパンボンド紡糸機2から紡糸されるスパンボンド繊維群24、27とメルトブローン紡糸機3から紡糸されるメルトブローン繊維群37(第2フィラメント群)を導入し、空気流によってスパンボンド繊維群24、27を下方に牽引するエジェクター5と、エジェクター5から噴出される混合フィラメント群Fを捕集し、下流側に搬送する捕集コンベア6と、搬送された混合フィラメント群Fからなるウェブを板厚調整するための板厚調整装置7と、板厚調整後の不織布を巻き取るワインダー8とを備える。
【0027】
スパンボンド紡糸機2は、押出機20、ギアポンプ21、紡糸ブロック22および25、および口金23、26を備える。メルトブローン紡糸機3は、押出機30、ギアポンプ31、およびメルトブローンダイ32を備える。
【0028】
スパンボンド紡糸機2では、押出機20に供給された熱可塑性樹脂が溶融、押し出され、ギアポンプ21を経て、紡糸ブロック22、25に送られる。紡糸ブロック22、25には、それぞれ、多数の紡糸孔を有する口金23(第1口金)、口金26(第3口金)が取付けられており、口金23、26の紡糸孔から溶融樹脂が紡糸され、スパンボンド繊維群24、27が形成される。スパンボンド紡糸機2の口金23、26の紡糸孔の直径は、0.07~2.0mmが好ましい。
【0029】
口金23、26から溶融紡糸された、連続繊維からなるスパンボンド繊維群24、27は、エジェクター5により牽引され、延伸、細化さる。口金23、26と、エジェクター5の間には、少なくともスパンボンド繊維群24、27を冷却風4Aにより冷却する、冷却装置4が配置される。スパンボンド繊維群24、27は、冷却装置4により、所定の温度まで冷却される。
【0030】
スパンボンド紡糸機2の押出機20に供給する熱可塑性樹脂としては、スパンボンド繊維を構成可能であれば、特に限定されるものではない。熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。特に、材料コストの観点から、PET樹脂が好ましい。
【0031】
口金23、26における、溶融樹脂の単孔吐出量は、0.1~0.6g/分が好ましい。上記範囲より小さいと生産性が低くなり、上記範囲を超えると繊維径のばらつきが大きくなる虞がある。紡糸孔の孔間距離は、6~12mmが好ましい。孔間距離が上記範囲よりも小さいと、エジェクター5内で、スパンボンド繊維同士が接触しやすくなり、接触した部分が溶着し、溶着箇所が多すぎる虞がある。溶着箇所が多すぎると、吸音材として用いる場合、繊維が振動しにくくなり吸音率が低くなる。一方、孔間距離が上記範囲よりも大きいと、エジェクター5内でスパンボンド繊維同士が接触しにくくなり、溶着箇所が少なくなり、溶着強度が低下し、製品化した際に強度が低くなる虞がある。
【0032】
メルトブローン紡糸機3では、押出機30に供給された熱可塑性樹脂が溶融、押し出され、ギアポンプ31を経て、多数の紡糸孔35を有するメルトブローンダイ32(第3口金)に送られる。メルトブローンダイ32では、樹脂通路33に供給された溶融樹脂が各紡糸孔35から下方に向かって押し出される。なお、
図1では、押し出される一本の繊維のみを示している。一方で、紡糸孔35の列を両側から挟むようにスリット34a、34bが形成され、これらのスリットにより空気通路が形成され、空気通路から送られる高温高圧空気が、溶融樹脂の押出時に斜め下方に向かって噴出され、高温高圧空気により樹脂は牽引細化され、糸状に吹き出し、メルトブローン繊維群37を形成する。メルトブローンダイ32の紡糸孔35は、直径0.2~1.0mmが好ましい。高温高圧空気により牽引細化されたメルトブローン繊維群37の平均繊維径は2~5μmが好ましい。
【0033】
メルトブローン紡糸機3の押出機30に供給する熱可塑性樹脂としては、メルトブローン繊維を構成可能であれば、特に限定されるものではない。熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。特に、材料コストの観点から、PET樹脂が好ましい。
【0034】
メルトブローンダイ32における溶融樹脂の単孔吐出量は、0.1~0.5g/分が好ましい。上記範囲より小さいと生産性が低くなり、上記範囲を超えると十分な細化が行われない虞がある。紡糸孔の孔間距離は、25~30mmが好ましい。孔間距離が上記範囲よりも小さいと、メルトブローン繊維同士が溶着する虞がある。一方、孔間距離が上記範囲よりも大きいとメルトブローン繊維同士の溶着強度の低下の問題がある。
【0035】
スリット34a、34bから噴出される高温高圧空気の空気流の流速は、通常100~200m/sであり、温度は100~250℃である。
【0036】
本実施形態においては、メルトブローンダイ32の前後(不織布搬送方向の上流側および下流側)にスパンボンド紡糸機2の紡糸ブロック22、25と口金23、26が配置され、メルトブローン繊維群37を前後から挟むようにスパンボンド繊維群24、27が噴出される。メルトブローンダイ32の450~650mm下方に、エジェクター5が配置される。
【0037】
メルトブローンダイ32により紡糸され、高温高圧空気により牽引細化されたメルトブローン繊維群37は、スパンボンド繊維群24、27が導入されるエジェクター5に共に導入される。エジェクター5は不織布の進行方向に直交したスリットを有し、スリットにスパンボンド繊維群24、27とメルトブローン繊維群37を通過させる。エジェクター5内には、圧力空気51が流入されることにより下向きの吸引流が形成されており、この吸引流によってスパンボンド繊維群24、27の各糸条は加速、牽引され、繊維の走行速度であるエジェクター5からの紡糸速度(牽引速度)が空気流速と近い速度に到達する。エジェクター5内の圧力空気51の空気流入速度は3000~6000m/分である。エジェクター内では、繊維同士が一部接触し、接触した場所で溶着する。
【0038】
ここで、メルトブローン繊維群37は、エジェクター5に到達する前に大方固化しており、エジェクター5内の吸引流により、繊維が溶融状態のダイ出口で都度切断されるが、エジェクター5による吸引力により、引き続きエジェクター5内へ導入される。また、後述するスパンボンドリッチ形態では、冷却装置4の冷却能力を調整することにより、スパンボンド繊維群24、27がエジェクター5の到達時に半溶融状態となり、部分的にスパンボンド繊維にメルトブローン繊維が溶着し、スパンボンド繊維群24、27の紡糸速度とメルトブローン繊維群37の牽引速度の差によりメルトブローン繊維群37が短く切断される。しかし、メルトブローン繊維群37は、エジェクター5による吸引力により、引き続きエジェクター5内へ導入される。
【0039】
上述したように、メルトブローン繊維群37は、エジェクター5に導入される前には、大方固化している。これにより、他の繊維とは接着しない独立メルトブローン繊維が一定数存在する。この独立メルトブローン繊維は拘束されていないため、非常に振動しやすく、不織布を吸音材として用いた場合にはその吸音性能を向上する。なお、この独立メルトブローン繊維は、他のメルトブローン繊維が自己接着したり、スパンボンド繊維と接着した繊維構造の中に保護されているため、飛散することはない。
【0040】
メルトブローン繊維群37と、連続長繊維であるスパンボンド繊維群24、27を、同一のエジェクター5に導入して、メルトブローン法により形成された平均繊維径2~5μmの極細繊維と、スパンボンド法により形成された平均繊維径15~30μmの連続繊維とを混合ことにより、混合フィラメント群Fが形成される。それにより、不織布を吸音材として用いた場合、全体として、または部分的に、小さな繊維空隙を有する緻密な構造の不織布とすることができるため、進入する音の波長が細孔中の摩擦抵抗で小さくなり、繊維空隙を進入するため、優れた吸音性を発現する。
【0041】
混合フィラメント群Fは、捕集コンベア6より下流側へ搬送され、板厚調整装置7により、板厚調整される。板厚調整装置7においては、ウェブを軟化させる温度(例えばPET繊維を採用する場合は200℃程度)に暖めて、スプリングバッグを考慮してローラーの隙間を製品板厚より少し薄くなるよう設定し、ローラーの隙間にウェブを通して板厚を調整する。なお、捕集コンベア6内には減圧手段により吸引する図示しないサクションボックスが配置され、効率よく混合フィラメント群Fが堆積する。
【0042】
本発明においては、口金23、26から紡糸されるスパンボンド紡糸速度、およびメルトブローンダイ32から紡糸、牽引されるメルトブローン牽引速度、およびエジェクター5による牽引速度を調整することにより、不織布構造を変化させることができる。特に、不織布を吸音材として用いる場合は、不織布構造を変化させることにより、吸音周波数特性を変化させることができる。詳細は後述するように、これらの紡糸速度と牽引速度の調整により、不織布をメルトブローンリッチ形態、スパンボンドリッチ形態、積層形態に変化させることができる。
【0043】
口金23、26から紡糸されるスパンボンド紡糸速度、およびメルトブローンダイ32から紡糸、牽引されるメルトブローン牽引速度は、押出機20、押出機30からの熱可塑性樹脂の供給速度を制御することにより、変更できる。メルトブローン繊維の牽引速度は、高温高圧空気の流速を制御することによっても変更できる。一方、エジェクター5の空気流入速度を制御することにより、エジェクター5による牽引速度を変更できる。
【0044】
<メルトブローンリッチ形態>
まず、メルトブローンリッチ形態(メルトブローン過多形態)の不織布とその製造方法について説明する。メルトブローンリッチ形態では、メルトブローン繊維である極細繊維の質量割合が30~40%、スパンボンド繊維である連続繊維の質量割合が60~70%であり、比較的メルトブローン繊維が多い形態である。
【0045】
エジェクター5の牽引速度は口金23、26から紡糸されるスパンボンド繊維群24、27を15~30μmに細化牽引すべき速度に設定する。一方、メルトブローンダイ32からのメルトブローン繊維の牽引速度(スリットからの高圧空気流により牽引された速度)をエジェクター5の牽引速度よりも高く設定する。具体的には、エジェクター5の牽引速度は3000~5000m/分が好ましく、メルトブローンダイ32からのメルトブローン繊維群37の牽引速度は4000~6000m/分が好ましい。これにより、メルトブローン繊維群37はスパンボンド繊維群24、27に進路を阻まれ、スパンボンド繊維群24、27に絡みつき、その状態でエジェクター5から噴出される。
【0046】
メルトブローンリッチ形態の不織布では、平均繊維径が2~5μmの極細繊維が、平均繊維径が15~30μmの連続繊維にランダムに入り込んでいる状態である。すなわち、平均繊維径が2~5μm極細繊維が比較的表面に多く、平均繊維径が15~30μm連続繊維が比較的裏面に多い領域と、極細繊維が比較的裏面に多く、連続繊維が比較的表面に多い領域を含んでいる。メルトブローン繊維がスパンボンド繊維よりも早くエジェクター5内に流入するため、エジェクター5内ではスパンボンド繊維群24、27の繊維間の隙間からメルトブローン繊維が外側にはみ出す部分が発生する。これにより、メルトブローンリッチ形態の不織布では、スパンボンド繊維群24、27による連続繊維は均一な層とはならず、薄い部分と厚い部分ができ、薄い部分でメルトブローン繊維群37からなる極細繊維が表面側へはみ出す状態となる。
【0047】
この不織布を吸音材として用いた場合、通気抵抗が部分毎に変化し、吸音特性も部分的に変化する。すなわち、表面側に極細繊維が集中した部分は高周波の吸音率が増し、逆に、裏側に極細繊維が集中し、スパンボンドの太い繊維が表面側に集中した部分は、太い繊維が振動し易い中周波の騒音を吸音し易く吸音率が増す。これにより、全体として、吸音率のピークは低いが広い範囲の周波数の騒音を吸音できる特性を得られる。すなわち、吸音特性を台形状にすることで広域に効果のある不織布となる。メルトブローンリッチ形態の不織布の目付は20~50g/m2が好ましい。
【0048】
また、このメルトブローンリッチ形態の不織布を表面材とし、他の不織布を裏面材として積層し、不織布積層吸音材とすることが好適である。ここで用いる裏面材の不織布としては、例えば、1~15μmのPP樹脂の微細繊維と20~50μmのPET樹脂繊維の複合材からなる短繊維不織布が好適である。表面材の不織布は、目付20~50g/m2が好ましく、裏面材の不織布は、目付100~700g/m2、厚み15~75mmが好ましい。
【0049】
この場合、表面材としてのメルトブローンリッチ形態の不織布は、メルトブローン繊維群37による極細繊維を比較的多く含むため、通気が抑制され、通気抵抗が高くなり、裏面材と積層すると面共振(表面材の不織布がマス、裏面材の不織布がバネ)が明確に発生し、中周波数領域(200~800Hz)の共振周波数前後の吸音率を高くできる。表面材の面共振は表面材としての不織布の目付と、裏面材としての不織布の密度と板厚(バネ定数)によって決まる。一方で、高周波数領域(1000~6300Hz)の騒音は、表面材の通気抵抗が高いため、裏面材の吸音層に侵入できず、裏面材は高周波騒音の吸音に利用できない。しかし、表面材に含まれる極細繊維が高周波騒音の吸音に役立つ。
【0050】
<スパンボンドリッチ形態>
次に、スパンボンドリッチ形態(スパンボンド繊維過多形態)の不織布とその製造方法について説明する。スパンボンドリッチ形態では、メルトブローン繊維である極細繊維の質量割合が10~30%、スパンボンド繊維である連続繊維の質量割合が70~90%であり、比較的スパンボンド繊維が多い形態である。
【0051】
エジェクター5の牽引速度は口金23、26から紡糸されるスパンボンド繊維群24、27を15~30μmに細化牽引すべき速度に設定する。一方、メルトブローンダイ32からの紡糸速度(スリットからの空気流により牽引された速度)をエジェクター5の牽引速度より低く設定する。具体的には、エジェクター5の牽引速度は4000~6000m/分が好ましく、メルトブローンダイ32からのメルトブローン繊維群37の牽引速度は3000~5000m/分が好ましい。これにより、エジェクター5の内部で、メルトブローン繊維群37はスパンボンド繊維群24、27に溶着し、引っ張られて短く切断される。
【0052】
スパンボンドリッチ形態においては、冷却装置4の冷却能力を調整して、スパンボンド繊維群24、27がエジェクター5の到達時に半溶融状態とし、メルトブローン繊維がスパンボンド繊維に溶着するように調整することが好ましい。メルトブローン繊維は、スパンボンド繊維群24、27紡糸速度とメルトブローン繊維群37の紡糸速度の差により短く切断される。ただし、繊維同士が完全に溶着すると、極細繊維であるメルトブローン繊維群37による通気抵抗の増加や、高周波数の騒音の吸音ができないため、部分的に溶着するような冷却状態の調整が必要である。
【0053】
具体的には、スパンボンド繊維の材料としてPET樹脂を用いた場合、エジェクター5到達時のPET繊維の温度を220~250℃になるよう、冷却装置4の冷却能力(冷却風4Aの温度、速度等)を制御することが好ましい。また、スパンボンド繊維同士がエジェクター5内で溶着しないように、口金23、26における孔同士の間隔を広げることが好ましい。具体的には、孔同士の間隔は8~12mmが好ましい。
【0054】
スパンボンドリッチ形態の不織布では、平均繊維径2~5μm極細繊維が平均繊維径15~30μmの連続繊維の厚み方向の中央部に不連続に部分的に配置された状態となる。言い換えると、平均繊維径2~5μmの極細繊維が存在する領域と存在しない領域ができる。この不織布を吸音材として用いた場合、通気抵抗が部分毎に変化し、吸音特性も部分的に変化する。
【0055】
このスパンボンドリッチ形態の不織布を表面材とし、他の不織布を裏面材として積層し、不織布積層吸音材とすることが好適である。裏面材として用いる不織布としては、例えば、1~15μmのPP樹脂の微細繊維と20~50μmのPET樹脂繊維の複合材からなる短繊維不織布が好適である。表面材の不織布は、目付20~50g/m2が好ましく、裏面材の不織布は、目付100~700g/m2、厚み15~75mmが好ましい。
【0056】
スパンボンドリッチ形態の不織布を上述のように積層すれば、極細繊維が存在する領域は通気抵抗が高くなり、裏面材との面共振により中周波数領域(200~800Hz)の吸音率が増す。一方、極細繊維が存在しない領域は、空気抵抗が高くならず、共振時に空気がダンピング材として働くため明確な共振が現れず、明確な吸音率のピークが現れないが、高周波領域(1000~6300Hz)の音はスパンボンドの太い繊維の隙間を通って裏面材の吸音材に侵入でき、吸音率が優れる。これにより、全体として、吸音率のピークは低いが広い範囲の周波数の騒音を吸音できる特性を得られる。すなわち、吸音特性を台形状にすることで広域に効果のある不織布となる。スパンボンドリッチ形態の不織布の目付は40~50g/m2が好ましい。
【0057】
<積層形態の場合>
次に、積層形態の不織布とその製造方法について説明する。
エジェクター5の牽引速度は口金23、26から紡糸されるスパンボンド繊維群24、27を15~30μmに細化牽引すべき速度に設定する。メルトブローンダイ32からの紡糸速度(スリットからの空気流により牽引された速度)がエジェクター5の牽引速度と同程度に設定する。これにより、スパンボンド繊維群24からなるスパンボンド層、メルトブローン繊維群37からなるメルトブローン層、スパンボンド繊維群27からなるスパンボンド層が積層した、積層形態の不織布が形成される。
【0058】
具体的には、エジェクター5の牽引速度は3000~4000m/分が好ましく、メルトブローンダイ32からのメルトブローン繊維群37の紡糸速度は3000~4000m/分が好ましい。積層形態の不織布の場合はどの部分も同一の吸音特性であるため、広域に吸音性を持たせることができず、ある一定の範囲に高い吸音率を有する。
【0059】
また、この積層形態の不織布を表面材とし、他の不織布を裏面材として積層し、不織布積層吸音材とすることも好適である。ここで用いる裏面材の不織布としては、例えば、1~15μmのPP樹脂の微細繊維と20~50μmのPET樹脂繊維の複合材からなる短繊維不織布が好適である。表面材の不織布は、目付20~50g/m2が好ましく、裏面材の不織布は、目付100~700g/m2が好ましい。この場合、表面材としての不織布は、メルトブローン繊維群37の極細繊維を比較的多く含むため、通気が抑制され、通気抵抗が高くなり、裏面材と積層すると面共振(表面材の不織布がマス、裏面材の不織布がバネ)が明確に発生し、共振周波数前後の吸音率を高くできる。一方で、高周波数の騒音は、表面材の通気抵抗が高いため、裏面材の吸音層に侵入できず、高周波騒音吸音率は比較的低い。
【0060】
このように、エジェクター5の牽引速度、口金23、26から紡糸されるスパンボンド紡糸速度、およびメルトブローンダイ32から紡糸されるメルトブローン紡糸速度を調整することにより、最終的に得られる不織布の構造を容易に変更することができる。特に、不織布を吸音材として用いる場合は、吸音したい周波数に合わせ、最適な不織布構造を選択し、エジェクター5の牽引速度、スパンボンド繊維の紡糸速度、メルトブローン繊維の牽引速度を決定する。
【0061】
例えば、本発明により得られた不織布を単独で用いる場合、広域の周波数を持つ音に対して吸音性を持たせ、特に高周波数の吸音性を高くする場合は、メルトブローンリッチ形態となるようにそれぞれの紡糸速度等を調整する。広域の周波数の音に対して吸音性を持たせ、特に中周波数の吸音性を高くする場合は、スパンボンドリッチ形態となるようにそれぞれの紡糸速度等を調整する。単一周波数に吸音特性のピークを持たせる場合は、積層形態となるように紡糸速度等を調整する。
【0062】
また、本発明により得られた不織布と他の不織布を積層した積層不織布とした場合、さらに優れた吸音特性が得られる。特に、本発明によるメルトブローンリッチ形態やスパンボンドリッチ形態の不織布を表面材とし、1~15μmの微細繊維と20~50μmの繊維を含む複合不織布を裏面材として積層すれば、広域周波数に対する吸音性能を保ちつつ、吸音性能を高めることができる。
【0063】
広域周波数に対する吸音性能を保ちつつ、特に面共振により共振周波数である中周波数領域(200~800Hz)の吸音率を高くする場合は、表面材として用いる不織布がメルトブローンリッチ形態となるように、紡糸速度等を調整する。そうすれば、面共振により共振周波数である中周波数領域(200~800Hz)の吸音率を高くでき、さらに表面材の極細繊維の存在により高周波数騒音(1000~6300Hz)もある程度吸音できる。一方で、広域周波数に対する吸音性能を保ちつつ、特に高周波数領域の音の吸音率を高くする場合はスパンボンドリッチ形態となるように、紡糸速度等を調整する。そうすれば、部分的に裏面材に高周波数領域の音を浸入させ、裏面材で高周波数騒音の吸音ができ、かつ部分的に存在する表面材中の極細繊維による通気抵抗の増加により、部分的な面共振もおきるため、中周波数領域の吸音率もある定度可能である。また、単一周波数に吸音特性のピークを持たせる場合は、積層形態の不織布となるように紡糸速度等を調整する。
【0064】
本発明による実施形態の変形例を説明する。
上述の実施形態においては、メルトブローンダイ32の前後にスパンボンド紡糸ブロックおよび口金を配置したが、変形例として、メルトブローンダイ32の前方または後方に、スパンボンド紡糸ブロックと口金を配置することができる。すなわち、上述の実施形態において、一つのスパンボンド紡糸ブロックおよび口金を省略した形態である。この変形例は、特にメルトブローンリッチ形態の場合に良好である。
【0065】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、改変等を加えることが出来るものであり、それらの改変、均等物等も本発明の技術的範囲に含まれることとなる。
【符号の説明】
【0066】
1・・・不織布製造装置
2・・・スパンボンド紡糸機
3・・・メルトブローン紡糸機
4・・・冷却装置
5・・・エジェクター
6・・・捕集コンベア
7・・・板厚調整装置
8・・・ワインダー
20、30・・・押出機
21、31・・・ギアポンプ
22、25・・・紡糸ブロック
23、26・・・口金
24、27・・・スパンボンド繊維群
32・・・メルトブローンダイ
33・・・樹脂通路
34a、34b・・・スリット
35・・・紡糸孔
37・・・メルトブローン繊維群
51・・・圧力空気
F・・・混合フィラメント