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  • 特開-歯科用ファイル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022030793
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】歯科用ファイル
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/42 20170101AFI20220210BHJP
【FI】
A61C5/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135040
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】390003229
【氏名又は名称】マニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松谷 和彦
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA01
4C052AA06
4C052AA16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】歯科用ファイルの柔軟性、切削性、および/または耐破断性を高くする歯科用ファイルを提供する。
【解決手段】らせん状に形成された作業部を有する歯科用ファイルは、長手方向に垂直な断面の断面形状が、上底111と下底112と第1および第2の斜辺113・114とを有する台形形状を成し、上記長手方向の軸心を中心Oとし、基端部から先端部にかけて直径が小さくなる仮想円101に対して、上記下底112の両端の頂点123・124が上記仮想円101上に位置するとともに、上記上底111の両端の頂点121・122が上記仮想円101よりも内側に位置するように設定されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
らせん状に形成された作業部を有する歯科用ファイルであって、
長手方向に垂直な断面の断面形状が、上底と下底と第1および第2の斜辺とを有する台形形状を成し、
上記長手方向の軸心を中心とし、基端部から先端部にかけて直径が小さくなる仮想円に対して、
上記下底の両端の頂点が上記仮想円上に位置することともに、
上記上底の両端の頂点が上記仮想円よりも内側に位置するように設定されていることを特徴とする歯科用ファイル。
【請求項2】
請求項1の歯科用ファイルであって、
上記長手方向における少なくとも一部の断面形状において、上記仮想円の中心から、上記上底、下底、ならびに第1および第2の斜辺までの各距離が互いに等しく設定されていることを特徴とする歯科用ファイル。
【請求項3】
請求項1から請求項2のうち何れか1項の歯科用ファイルであって、
上記先端部の断面形状は、台形形状の下底の両端の頂点付近が上記仮想円の円弧に沿ったランド部を有することを特徴とする歯科用ファイル。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうち何れか1項の歯科用ファイルであって、
上記下底の少なくとも一方の端部の頂点を通る上記仮想円の直径と、上記下底および上記頂点を端点とする上記斜辺の少なくとも一方との成す角度が、上記基端部から先端部にかけて大きく設定されていることを特徴とする歯科用ファイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療において根管の拡大や清掃に用いられる歯科用ファイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科治療において根管の拡大や清掃に用いられる歯科用根管切削具として、リーマやファイルがある。リーマは主に回転させることで根管内を切削し、ファイルは回転させたり軸方向に押し引きしたりして根管内を切削するものである。
【0003】
一般的な歯科用ファイルには、把持部を手で把持して用いられるものと、把持部を歯科用ハンドピースに接続して用いられるものとがある。歯科用ファイルは、らせん状で先端に向かって細くなっている形状の作業部と、その作業部の後端に連なるシャフトと、そのシャフトの後端に連なる把持部とを有している。このような歯科用ファイルに要求される主な性能としては、複雑な形状の根管に追従できる柔軟性、根管を適切に切削できる切削性、および作業中に破損することがない耐破断性などが挙げられる。これらの性能が高いほど、根管形成を容易かつ素早く行うことが可能となり、施術者および患者の負担を軽減することができる。
【0004】
上記のような歯科用ファイルの横断面形状としては、例えば平行四辺形状に形成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6370373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような事情に鑑み、本発明は、歯科用ファイルの柔軟性、切削性、および/または耐破断性を高くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、
らせん状に形成された作業部を有する歯科用ファイルであって、
長手方向に垂直な断面の断面形状が、上底と下底と第1および第2の斜辺とを有する台形形状を成し、
上記長手方向の軸心を中心とし、基端部から先端部にかけて直径が小さくなる仮想円に対して、
上記下底の両端の頂点が上記仮想円上に位置することともに、
上記上底の両端の頂点が上記仮想円よりも内側に位置するように設定されていることを特徴とする。
【0008】
これにより、仮想円上に位置し、切削に大きく作用する2つの鋭角部分の頂点が対角線上にないことによって、また、各鋭角部分の対角線上の頂点が仮想円よりも内側に位置することによって、食い込みロックによる伸びや破断を抑制することが容易になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、歯科用ファイルの柔軟性、切削性、および/または耐破断性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1の歯科用ファイルの平面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4図1のIV-IV線断面図である。
図5図1のV-V線断面図である。
図6】実施形態2における図1のV-V線断面相当図である。
図7】実施形態3における図1の作業部100aの先端部付近の横断面図である。
図8】実施形態4における図1のV-V線断面相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態や変形例において、同様の機能を有する構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0012】
(実施形態1)
歯科用ファイル100は、図1に示すように、根管を切削する作業部100aと、その作業部100aの後端に連なるシャフト100bと、そのシャフト100bの後端に連なり歯科用ハンドピースに取り付けられる図示しない把持部とを有している。歯科用ファイル100の素材としては、例えば、複雑に湾曲した根管の治療に適する弾力性の高いニッケルチタン等が用いられることが多いが、これに限らず、ステンレス材や、種々の合金、プラスチックなども適用され得る。
【0013】
歯科用ファイル100の作業部100aは、外面の包絡面が、先端に向かって断面が小さくなるテーパー形状であり、かつ、類似した形状の断面がらせん状に形成された構成を有している。より詳しくは、作業部100aにおける長手方向に垂直な断面の断面形状は、例えば図1のII-II~V-V線断面図を図2図5に示すような台形形状に形成されている。すなわち、上記断面形状は、互いに平行な上底111と下底112、およびこれらの両端の頂点121~124にそれぞれ繋がる第1の斜辺113、および第2の斜辺114を有している。
【0014】
上記下底112の両端の頂点123・124は、歯科用ファイル100の長手方向の軸心を中心Oとする仮想円101上に位置することともに、上記上底111の両端の頂点121・122は、上記仮想円101よりも内側に位置するように設定されている。上記仮想円101の直径は、作業部100aの基端部から先端部にかけて小さくなるように設定されている。ここで、上記上底111、下底112、および斜辺113・114は、必ずしも正確な直線でなくてもよく、例えば多少湾曲したりしても以下に説明するような作用効果を得ることはできる。ここで、図2図5においては、便宜上、仮想円101の直径が等しくなるような縮尺で描かれている。
【0015】
上記のように台形の横断面を採用することにより、仮想円101上に位置し、切削に大きく作用する2つの鋭角部分の頂点123・124が仮想円101の直径上(仮想円101の中心Oを通る直線上)にないことによって、食い込みロックによる伸びや破断を抑制することが容易になる。
【0016】
また、頂点123・124により高い切削性を得ることが容易なので、ファイルは押し込まなくても根管を自ら進みやすく、根管を逸脱しにくくなる。すなわち、ファイルを無理に押し込まなくてもよいことによって、根管湾曲外側へ逸脱してしまうのを回避することが容易にできる。このように、 断面台形形状のファイルを形成することによって、例えば断面平行四辺形状の場合と同様に鋭角な部分による高い切削性能を得るとともに、上記鋭角な部分が仮想円101の直径上にないことによるロックし難さを両立させることが容易にできる。
【0017】
さらに、例えば特に砥石を押し当てて刃溝加工をする場合に、剛性を高く保って安定した加工をしやすくできる。すなわち、例えば仮想円101の断面形状から、最初に下底112の部分を削るとすると、反対側(上底側)では仮想円101の外径部分で砥石の押し付け力を受けることができるとともに、上底111や斜辺113・114の部分を削る際には、反対側では頂点123・124によって、砥石の押し付け力を受けやすくすることができる。これによって、刃溝研削加工を容易にしたり、刃溝研削加工精度を高くしたりすることなどが容易にできる。
【0018】
(実施形態2)
上記のような台形形状を形成する上底111、下底112、および斜辺113、・114の位置、すなわち中心Oからの距離は、種々設定してもよいが、例えば図6に示すように、等距離になるように(各辺が内接円102に接するように)設定されてもよい。この場合には、研削加工する際の刃溝追い込み量が何れの辺も等しくなるので、例えば研削機械を動作させるプログラムにおいて、所定の削り込み量のルーチンを共通に用いて研削することなどが容易にできる。また、加工がシンプルとなることなどによって、刃溝研削加工を容易にしたり、刃溝研削加工精度を高くしたりすることなどが容易になる。なお、4辺とも中心Oからの距離が等しく設定されるのに限らず、2辺以上が中心から等距離に設定されるようにしてもよい。
【0019】
(実施形態3)
上記のような台形形状は、作業部100aの全長に亘って同様に形成されるのに限らず、例えば作業部100aの先端部の所定範囲において、図7に示すように、下底112の両端の頂点付近が仮想円101の円弧に沿ったランド部131・132を残した断面形状に形成されるなどしてもよい。このような断面形状に形成されることにより、例えば特にロータリーファイルの場合などでも、引き込まれ感を低減して根管追従性を向上させることなどが容易にできる。
【0020】
(実施形態4)
台形形状の各辺の寸法や角度などを作業部100aの基端部側と先端部側とで異ならせるようにしてもよい。具体的には、例えば作業部100aの先端部付近では前記図5で示したような形状に形成する一方、基端部付近では、図8に示すような形状に形成されるようにしてもよい。すなわち、図5図8の場合には、頂点123を通る仮想円101の直径と、底辺112とのなす角度、および頂点124を通る仮想円101の直径と、斜辺114とのなす角度は、先端部での角度(図5)の方が基端部での角度(図8)よりも大きくなるように設定されている。これによって、図8において反時計回りが主となる回転方向とする場合に、歯科用ファイル100の先端部付近では、程よい切削性を保つとともに、ねじり剛性を高くして、いわゆるコシを持たせ、回転力を先端部まで伝えることが容易になる。また、基端部にかけて切削性や柔軟性や排出性が高い歯科用ファイル100を形成することが容易になる。
【0021】
ここで、歯科用ファイル100の通常の使用時において、作業部100aでの切削くずが基部の方に向けて運ばれる回転方向を主となる回転方向とすると、すなわち、具体的には例えば、歯科用ファイル100のらせんが右ねじの場合には、先端側から見て反時計回りが主となる回転方向とすると、そのような方向に回転する際には、頂点123では底辺112、頂点124では斜辺114が歯科用ファイル100の回転に伴って切削作用を生じることになる。なお、歯科用ファイル100の回転方向は上記の方向に限らず、逆回転を含むモードや、交互に回転方向が変わるモードで用いられるなどしてもよい。
【0022】
なお、図8において時計回りが主となる回転方向とする場合には、頂点123を通る仮想円101の直径と、斜辺113とのなす角度、および頂点124を通る仮想円101の直径と底辺112とのなす角度が、先端部での角度(図5)の方が基端部での角度(図8)よりも大きくなるように設定されることによって、やはり、上記反時計回りが主となる回転方向について説明したのと同じ作用効果を得ることができる。また上記のような角度の設定は、頂点123・124の何れか一方だけについてなされるだけでもよい。
【符号の説明】
【0023】
100 歯科用ファイル
100a 作業部
100b シャフト
101 仮想円
102 内接円
111 上底
112 下底
113 斜辺
114 斜辺
121 頂点
122 頂点
123 頂点
124 頂点
131 ランド部
132 ランド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8