IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 湖北工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-光ファイバ用プリフォームの製造方法 図1
  • 特開-光ファイバ用プリフォームの製造方法 図2
  • 特開-光ファイバ用プリフォームの製造方法 図3
  • 特開-光ファイバ用プリフォームの製造方法 図4
  • 特開-光ファイバ用プリフォームの製造方法 図5
  • 特開-光ファイバ用プリフォームの製造方法 図6
  • 特開-光ファイバ用プリフォームの製造方法 図7
  • 特開-光ファイバ用プリフォームの製造方法 図8
  • 特開-光ファイバ用プリフォームの製造方法 図9
  • 特開-光ファイバ用プリフォームの製造方法 図10
  • 特開-光ファイバ用プリフォームの製造方法 図11
  • 特開-光ファイバ用プリフォームの製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031019
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】光ファイバ用プリフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/012 20060101AFI20220210BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20220210BHJP
   C03B 20/00 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
C03B37/012 Z
C03B37/012 A
G02B6/02 356A
C03B20/00 C
C03B20/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135396
(22)【出願日】2020-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】392017004
【氏名又は名称】湖北工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 勝博
(72)【発明者】
【氏名】朴 秋月
(72)【発明者】
【氏名】木下 祐輔
【テーマコード(参考)】
4G014
4G021
【Fターム(参考)】
4G014AH02
4G014AH06
4G021BA03
4G021BA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームの製造工程において、寸法精度、形状精度に優れた光ファイバ用プリフォーム、及びその製造方法の提供。
【解決手段】石英ガラス粉末を主原料とする石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームであって、前記石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体である。前記プリフォームは石英ガラス粉末を主原料とする円柱状の石英ガラス焼結体から成る、光ファイバ用プリフォームであって、外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下であり、且つかさ密度が2.1g/cm以上である部分を含むか、外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下であり、且つ開気孔率が3.5%以下である部分を含む、光ファイバ用プリフォーム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラス粉末を主原料とする石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームであって、
前記石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体であり、その不透明体は、その一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が90%以下であり、且つ前記不透明体のかさ密度が2.1g/cm以上である光ファイバ用プリフォーム。
【請求項2】
石英ガラス粉末を主原料とする石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームであって、
前記石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体であり、その不透明体は、その一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が90%以下であり、且つ前記不透明体の開気孔率が3.5%以下である光ファイバ用プリフォーム。
【請求項3】
石英ガラス粉末を主原料とする円柱状の石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームであって、
外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下であり、且つかさ密度が2.1g/cm以上である部分を含む光ファイバ用プリフォーム。
【請求項4】
石英ガラス粉末を主原料とする円柱状の石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームであって、
外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下であり、且つ開気孔率が3.5%以下である部分を含む光ファイバ用プリフォーム。
【請求項5】
石英ガラス粉末を主原料とする石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームであって、
前記石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体であり、その不透明体は、その一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が2.5%以上であり、90%以下である光ファイバ用プリフォーム。
【請求項6】
石英ガラス粉末を主原料とする石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームであって、
外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下である部分を含む光ファイバ用プリフォーム。
【請求項7】
前記石英ガラス焼結体がコア材挿入用の貫通孔を有するクラッドプリフォームである請求項1~6のいずれかに記載の光ファイバ用プリフォーム。
【請求項8】
前記石英ガラス焼結体がコアプリフォームである、請求項1~6のいずれかに記載の光ファイバ用プリフォーム。
【請求項9】
貫通孔を有するクラッドプリフォームと、前記貫通孔に挿入されたコアプリフォームとから成る光ファイバプリフォームであって、前記クラッドプリフォーム及び前記コアプリフォームの少なくとも一方が請求項1~6のいずれかに記載の光ファイバ用プリフォームである、光ファイバプリフォーム。
【請求項10】
貫通孔を有するクラッドプリフォームの前記貫通孔にコアプリフォームを挿入した後、焼結することにより光ファイバプリフォームを製造する方法であって、
前記クラッドプリフォーム及び前記コアプリフォームの少なくとも一方が請求項1~6のいずれかに記載の光ファイバ用プリフォームである、光ファイバプリフォームの製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の光ファイバプリフォームを紡糸して光ファイバを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ用プリフォーム及び光ファイバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは、一般に屈折率の高いコアと、その周りを取り囲む、屈折率の低いクラッド層とから構成される。光ファイバのコア及びクラッド層はいずれも石英ガラス(シリカガラス)を主成分とした非金属無機物質を主な原料とする。従来一般的な通信用光ファイバは、信号伝送路となるコアが1個のシングルモードファイバであったところ、光通信システムにおける伝送容量の増大に伴い、1本の光ファイバ内に複数のコアを有するマルチコアファイバ( MCF )が開発されている。
【0003】
マルチコアファイバの製造方法の1つに、スラリーキャスト(スラリーキャスティング)法で製造されたクラッドプリフォームの孔にコアロッドを挿入し、紡糸する方法(ロッドインチューブ法)がある(非特許文献1)。プレス成形法や押し出し法と異なり、スラリーキャスト法では、クラッドプリフォームを常圧で成形できることから、製造コストの低減が期待できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】"Fabrication of Multi Core Fiber by Using Slurry Casting Method.", OFC2017, Th1H.5.(※Optical Fiber Communication Conference)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高品質なMCFを得るためには、クラッドプリフォームの形状精度や寸法精度を高める必要がある。スラリーキャスト法では、石英ガラス粉体、溶媒、分散剤、硬化性樹脂から成るガラス原料溶液に硬化剤を混合してスラリーとし、このスラリーを、コアロッド挿入孔用の金属ロッドが配置された成形型に注入して硬化させる。硬化した成形体を脱型し、金属ロッドを離脱させ、乾燥、脱脂、焼結することにより、コアロッド挿入用の孔を有するクラッドプリフォームが得られる。クラッドプリフォームの形状精度、寸法精度は、主に焼結工程の条件に左右されることから、従来は、焼結工程において、緻密化が進んだ透明なクラッドプリフォームが得られるように、焼結条件が設定されていた。
【0006】
緻密な透明ガラスから成るクラッドプリフォームを得るためには、焼結温度を高くする必要があるが、焼結温度が高いと、焼結時のガラス焼結体が軟らかくて変形しやすくなる。そのため、ガラス焼結体の形状精度、寸法精度によっては焼結後の追加工など追加処理を施す場合がある。また、焼結温度を高くすると、その分、冷却時間が長くなるという問題もある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームの製造工程において、追加処理を施したり、製造時間を長くしたりすることなく、寸法精度、形状精度に優れた光ファイバ用プリフォームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明の第1の態様は、石英ガラス粉末を主原料とする石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームであって、
前記石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体であり、その不透明体は、その一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が90%以下であり、且つ前記不透明体のかさ密度が2.1g/cm以上であるものである。
【0009】
本発明の第2の態様は、石英ガラス粉末を主原料とする石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームであって、
前記石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体であり、その不透明体は、その一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が90%以下であり、且つ前記不透明体の開気孔率が3.5%以下であるものである。
【0010】
本発明の第3の態様は、石英ガラス粉末を主原料とする円柱状の石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームであって、
外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下であり、且つかさ密度が2.1g/cm以上である部分を含むものである。
【0011】
本発明の第4の態様は、石英ガラス粉末を主原料とする円柱状の石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームであって、
外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下であり、且つ開気孔率が3.5%以下である部分を含むものである。
【0012】
本発明の第5の態様は、石英ガラス粉末を主原料とする石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームであって、
前記石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体であり、その不透明体は、その一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が2.5%以上であり、90%以下であるものである。
【0013】
本発明の第6の態様は、石英ガラス粉末を主原料とする石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームであって、
外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下である部分を含むものである。
【0014】
また、本発明に係る光ファイバプリフォームは、
貫通孔を有するクラッドプリフォームと、前記貫通孔に挿入されたコアプリフォームとから成る光ファイバプリフォームであって、前記クラッドプリフォーム及び前記コアプリフォームの少なくとも一方が第1~第6態様のいずれかの光ファイバ用プリフォームであるものである。
【0015】
また、本発明に係る光ファイバプリフォームの製造方法は、
貫通孔を有するクラッドプリフォームの前記貫通孔にコアプリフォームを挿入した後、焼結することにより光ファイバプリフォームを製造する方法であって、
前記クラッドプリフォーム及び前記コアプリフォームの少なくとも一方が第1~第6態様のいずれかの光ファイバ用プリフォームであるものである。
【0016】
さらにまた、本発明に係る光ファイバの製造方法は、
貫通孔を有するクラッドプリフォームと、前記貫通孔に挿入されたコアプリフォームとから成る光ファイバプリフォームであって、前記クラッドプリフォーム及び前記コアプリフォームの少なくとも一方が第1~第6態様のいずれかの光ファイバ用プリフォームである光ファイバプリフォームを紡糸して光ファイバを製造するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームの製造工程において、追加処理を施したり、製造時間を長くしたりすることなく、寸法精度、形状精度の優れた光ファイバ用プリフォームを得ることができる。また、このような光ファイバ用プリフォームから成るクラッドプリフォーム、コアプリフォーム、光ファイバプリフォームを用いることで、寸法精度、形状精度の優れた光ファイバを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態であるクラッドプリフォームから光ファイバを製造する工程の概略的な温度プロファイル。
図2】クラッドプリフォームの横断面図。
図3】製造例1で用いたサンプル1~5から得られたクラッドプリフォームの、焼結温度と光透過率、外形真円度、孔真円度との関係を示すグラフ。
図4】製造例2で用いたサンプル6~9から得られたクラッドプリフォームの、焼結温度と光透過率、外形真円度、孔真円度との関係を示すグラフ。
図5】製造例3で用いたサンプル10~20から得られたクラッドプリフォームの、焼結温度と外径、孔径との関係を示すグラフ。
図6】製造例3で用いたサンプル10~20から得られたクラッドプリフォームの、焼結温度と外径、かさ密度、見掛け密度との関係を示すグラフ。
図7】製造例3で用いたサンプル10~20から得られたクラッドプリフォームの、焼結温度とかさ密度、光透過率との関係を示すグラフ。
図8】製造例3で用いたサンプル10~20から得られたクラッドプリフォームの、かさ密度と開気孔率との関係を示すグラフ。
図9】製造例3で用いたサンプル10~20から得られたクラッドプリフォームの、焼結温度とかさ密度、開気孔率との関係を示すグラフ。
図10】製造例3で用いたサンプル10~20から得られたクラッドプリフォームの、焼結温度と開気孔率、光透過率との関係を示すグラフ。
図11】製造例3で用いたサンプル10~20から得られたクラッドプリフォームの、焼結温度と収縮率、光透過率との関係を示すグラフ。
図12】製造例3で用いたサンプル10~20から得られたクラッドプリフォームの、焼結温度とかさ密度、ビッカース硬さとの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、石英ガラス粉末を主原料とする石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームに関する。本発明に係る光ファイバ用プリフォームには、光ファイバプリフォーム(光ファイバ母材)、コアプリフォーム(コア母材)、クラッドプリフォーム(クラッド母材)が含まれる。
【0020】
本発明に係る光ファイバ用プリフォームの特徴は、前記石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体であり、その不透明体は、その一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が90%以下であり、且つ前記不透明体のかさ密度が2.1g/cm以上である点、あるいは、前記石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体であり、その不透明体は、その一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が90%以下であり、且つ前記不透明体の開気孔率が3.5%以下である点、あるいは、前記石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体であり、その不透明体は、その一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が2.5%以上であり、90%以下である点にある。
【0021】
また、本発明に係る光ファイバ用プリフォームが円柱状である場合は、外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下であり、且つかさ密度が2.1g/cm以上である部分を含む点、あるいは、外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下であり、且つ開気孔率が3.5%以下である部分を含む点、あるいは、外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下である部分を含む点に特徴を有する。ここで、外形真円度の比率が0.5%以下である部分には、外形真円度の比率が略0%、つまり、円柱状の光ファイバ用プリフォームの横断面の形状が略真円であるものも含む。
【0022】
本発明に係る光ファイバ用プリフォームが光ファイバプリフォームである場合、この光ファイバプリフォームはコアプリフォームとクラッドプリフォームとから構成されることになるが、コアプリフォーム及びクラッドプリフォームの両方が本発明に係る光ファイバ用プリフォームの要件を備えていても良く、一方のみが本発明に係る光ファイバ用プリフォームの要件を備えていてもよい。
【0023】
以下、本発明に係る光ファイバ用プリフォームをクラッドプリフォームに適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態のクラッドプリフォームから光ファイバを製造する工程の概略的な温度プロファイルを示しており、その横軸は時間、縦軸は温度を表している。図1に示すように、本実施形態のクラッドプリフォーム100は円柱状のガラス焼結体から成り、その内部に両端面を貫通する孔10を有している。図1には、1個の孔10を有するクラッドプリフォーム100が示されているが、複数の孔を有していてもよい。また、クラッドプリフォームの外形状は円柱状に限らず、角柱状でもよい。また、両端面を貫通する孔を有していないクラッドプリフォームでもよい。このクラッドプリフォームの場合は、切削加工等により、両端面を貫通する孔を形成することができる。
【0024】
この実施形態では、クラッドプリフォーム100はスラリーキャスト法により製造される。スラリーキャスト法の製造工程には、スラリーの調合、成形、脱型、乾燥、脱脂、焼結の工程が含まれる。図1には、スラリーキャスト法の最終工程である焼結工程が示されている。
【0025】
スラリーキャスト法では、最初に、石英ガラス粉体、溶媒、分散剤、硬化性樹脂を含むガラス原料溶液をボールミルに入れ、所定時間かけて混合してスラリーを調合する(調合工程)。溶媒としては通常、蒸留水が用いられる。ガラス原料溶液には、クラッドの屈折率を調整するための添加物(二酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、フッ素(F)など)が含まれていても良い。なお、コアプリフォーム製造用のスラリーには、コアの屈折率を調整するための添加物として、上述した添加物の他に二酸化ゲルマニウム(GeO)が含まれることがある。また、意図せぬ不純物がガラス原料溶液に含まれていることを排除しない。ボールミルから取り出されたスラリーは、硬化剤が添加された後、孔形成用ロッドが配置された成形型に充填される。
【0026】
成形型に充填されたスラリーは室温下に放置されることで、硬化性樹脂が硬化する(成形工程)。硬化性樹脂の硬化により成形型内に成形体が形成されると、その成形体から成形型及び孔形成用ロッドが脱離される(脱型工程)。続いて、孔を有する成形体は乾燥され、脱脂され、焼結される。乾燥工程では成形体中の主に溶媒(蒸留水)が除去され、脱脂工程では主に成形体中の硬化性樹脂が除去される。そして、焼結工程により孔を有するガラス焼結体であるクラッドプリフォームが得られる。
【0027】
上記のようにして作製されたクラッドプリフォームは、ロッドインチューブ法にて、つまり、クラッドプリフォームの孔にコア材が挿入された後、紡糸工程を経て光ファイバとなる。プリフォーム表面の汚染物質の除去を目的として、紡糸前に火炎研磨を行ってもよい。乾燥、脱脂、焼結、火炎研磨、紡糸の温度プロファイルはスラリーの組成、クラッドプリフォームの大きさ、形状等に応じて予め設定されている。
【0028】
ロッドインチューブ法では、クラッドプリフォームが有する孔にコアプリフォームが挿入される関係上、クラッドプリフォームの孔の位置、及びクラッドプリフォームが複数の孔を有する場合にそれら孔の間隔が設計通りでない場合、或いは、孔の真円度が悪く、その孔に挿入されたコア材の周囲に空隙が生じる場合は、得られる光ファイバの伝送特性が劣化するおそれがある。また、クラッドプリフォームの孔の真円度が悪い場合には、クラッドプリフォームの孔内周、コアプリフォームの外周をエッチングしなければならないことがある。したがって、クラッドプリフォームには高い寸法精度及び形状精度が求められる。
【0029】
本発明者は、高い寸法精度及び形状精度の光ファイバ用プリフォームを得るための条件について検討を重ねた結果、ガラス焼結体の主原料である石英ガラス粉体の緻密化がほぼ終了した状態で焼結工程を終了させればよいこと、ガラスが完全に透明化している必要はないこと、完全に透明化するまで焼結すると、かえって形状精度、寸法精度が低下することを見出した。本発明に係る光ファイバ用プリフォームは、このような知見に基づきなされたものである。
【0030】
したがって、本実施形態のクラッドプリフォームと従来のクラッドプリフォームの大きな違いは、前者は透明化が不完全なガラス焼結体から成るのに対して、後者は完全に透明化しているガラス焼結体から成る点にある。透明化が不完全なガラス焼結体とは、ガラス焼結体の少なくとも一部に不透明な部分が含まれるガラス焼結体を指す。本実施形態では、厚さが5mm以下における可視光の光透過率が90%以下のものを透明化が不完全な部分と定義し、90%より大きいものを透明化が完全な部分と定義する。
【0031】
また、本発明者は、石英ガラス粉体の緻密化が略終了していることを表す指標として、かさ密度、開気孔率が有効であることを見出し、これら指標のいずれかと光透過率とによって本実施形態のクラッドプリフォームを定義した。
具体的には、本実施形態に係るクラッドプリフォームは、厚さが5mm以下における可視光の光透過率が90%以下であり、且つかさ密度が2.1g/cm以上である部分を含むか、厚さが5mm以下における可視光の光透過率が90%以下であり、且つ開気孔率が3.5%以下である部分を含む、石英ガラス粉末を主原料とする円柱状の石英ガラス焼結体から成るものである。もちろん、本実施形態に係るクラッドプリフォームの全体が、上記の要件(光透過率とかさ密度、光透過率と開気孔率)を満たしていてもよい。
【0032】
また、円柱状のガラス焼結体が、緻密化が十分に進んだ状態にある場合は、その外形真円度が良好であることから、本実施形態のクラッドプリフォームは、外形真円度と上記指標のいずれかによっても定義することができる。
具体的には、本実施形態のクラッドプリフォームは、外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下であり、且つかさ密度が2.1g/cm以上である部分を含むか、外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下であり、且つ開気孔率が3.5%以下である部分を含む、石英ガラス粉末を主原料とする円柱状の石英ガラス焼結体から成るものである。この場合も、本実施例に係るクラッドプリフォームの全体が、上記の要件(外径に対する外形真円度の比率とかさ密度、外径に対する外形真円度の比率と開気孔率)を満たしていてもよい。
【0033】
かさ密度と開気孔率はアルキメデス法(煮沸法)を用いて測定することができる。クラッドプリフォームの一部を切り出した試料(試験片)の乾燥質量をW[g]、水中質量をW[g]、飽水質量をW[g]、かさ密度をPb[g/cm3]、開気孔率をP[%]とすると、かさ密度Pb、開気孔率Pは、それぞれ以下の式(1)、(2)で表される。
Pb={W/(W-W)}×ρ ・・・(1)
={(W-W)/(W-W)}×100・・・(2)
【0034】
式(1)中、ρは測定に用いる蒸留水の密度[g/cm3]を表す。
また、かさ密度は、試料が開気孔及び閉気孔を有する場合に、試料の質量を閉気孔と開気孔を含めた全容積(外形容積)で除した値に相当する。また、開気孔率は試料の外形容積を1とした場合、開気孔部分の容積が占める容積の百分比である。
【0035】
次に、本実施形態に係るクラッドプリフォームの製造条件を調べるために行った製造例について説明する。なお、製造条件には、クラッドプリフォームの形状、スラリーの組成、スラリーの調合から焼結までの各工程の温度条件が含まれる。
【0036】
[製造例1]
製造例1では、製造条件のうち焼結工程の温度条件のみを異ならせた5個のサンプル1~5を用意した。これらサンプル1~5の製造条件は表1に示す通りである。表1に示すように、製造例1では、サンプル1~5から、両端面を貫通する7個の孔を有する円柱状のガラス焼結体から成り、外径が30mm、長さが400mmであり、孔の内径が5.85mmであるクラッドプリフォームが得られるように、製造条件を設定した。また、表1には示されていないが、成形から乾燥までの工程は、一般的な温度条件で行った。
【0037】
【表1】
【0038】
サンプル1~5から得られたクラッドプリフォームの外径、外形真円度及び外径に対する外形真円度の比率(%)、孔径、孔真円度、及び光透過率を表2に示す。また、サンプル1~5から得られたクラッドプリフォームの横断面を図2に示す。クラッドプリフォームの外径、外形真円度は、クラッドプリフォームの長手方向の両端部の一方から10mm、100mm、200mm、300mm、390mmの位置で測定した値の平均値である。また、孔径は同様に10mm、390mmの位置で測定した7個の孔の内径の平均値、孔真円度は7個の孔の真円度の平均値である。光透過率は、得られたクラッドプリフォームの端部を切断し、その両端面を鏡面研磨した厚さ2mmの薄片及び厚さ5mmの薄片のそれぞれの表面に対して垂直方向から波長が530nmの可視光(ビーム径約3mm)を照射したときの光透過率とした。表2において「-」が表示されている欄は、その項目を測定していないことを表している。図2に黒丸で示した箇所が、可視光ビームを照射した箇所である。
【0039】
【表2】
【0040】
図3は、サンプル1~5から得られたクラッドプリフォームの外形真円度、孔真円度、光透過率(厚さ5mm、厚さ2mm)と、焼結温度(表1、表2参照)との関係を示している。図3から分かるように、焼結温度が高いほど、外形真円度、孔真円度が劣化した(真円度の値が大きくなった)。また、焼結温度が1550℃未満の時は、焼結温度が高いほど光透過率が大きくなったが、焼結温度が1550℃以上では、光透過率は略一定であった。このことから、焼結温度を1550℃以上に設定して得られたクラッドプリフォームは、緻密化が十分進んだ状態にあるといえる。
【0041】
[製造例2]
製造例2では、製造条件のうち焼結工程の温度条件のみを異ならせた4個のサンプル6~9を用意した。これらサンプル6~9の製造条件は表3に示す通りである。表3に示すように、製造例2では、サンプル6~9から、両端面を貫通する7個の孔を有する円柱状のガラス焼結体から成り、外径が28.7mm、長さが400mmであり、孔の内径が5.6mmであるクラッドプリフォームが得られるように、製造条件を設定した。なお、表3には示されていないが、成形から乾燥までの工程は、一般的な温度条件で行った。
【0042】
【表3】
【0043】
サンプル1~4から得られたクラッドプリフォームの外径、外形真円度及び外径に対する外形真円度の比率(%)、孔径、孔真円度、光透過率を表4に示す。各値の求め方、光透過率を測定した薄片の作製方法、光透過率の測定箇所については製造例1と同じである。
【0044】
【表4】
【0045】
図4は、サンプル6~9から得られたクラッドプリフォームの外形真円度、孔真円度、光透過率と焼結温度(表3、表4参照)との関係を示している。図4から分かるように、製造例2でも、焼結温度が高いほど、外形真円度、孔真円度が劣化した(真円度の値が大きくなった)。また、製造例2では、焼結温度が1500℃以上では、光透過率が略一定となった。このことから、焼結温度を1500℃以上に設定して得られたクラッドプリフォームは、緻密化が十分進んだ状態にあるといえる。
【0046】
[製造例3]
製造例3では、製造条件のうち焼結工程の温度条件のみを異ならせた11個のサンプル10~20を用意した。これらサンプル10~20の製造条件は表5に示す通りである。表5に示すように、製造例3では、サンプル10~19から、両端面を貫通する1個の孔を有する円柱状のガラス焼結体から成り、外径が20mm、長さが400mmであり、孔の内径が5.85mmであるクラッドプリフォームが得られるように、製造条件を設定した。また、サンプル20からは、外径が20mm、長さが400mmであり、孔を有していない(中実の)円柱状のガラス焼結体から成るクラッドプリフォームが得られるように、製造条件を設定した。表5には示されていないが、成形から乾燥までの工程は、一般的な温度条件で行った。
【表5】
【0047】
サンプル10~20から得られたクラッドプリフォームの外径及び孔径(孔の内径)、見かけ密度、かさ密度、開気孔率、ビッカース硬さ、光透過率を測定した。
【0048】
サンプル10~20に関する測定結果を表6に示す。なお、クラッドプリフォームの外径の求め方は製造例1と同じである。また、見かけ密度、かさ密度及び開気孔率は、いずれも煮沸法(JIS 1634)により測定した(かさ密度、開気孔率については、上述した式(1)、(2)参照)。表6において「-」が表示されている欄は、その項目を測定していないことを表している。なお、サンプル10,11については、得られたガラス焼結体の全体が白かったこと、及び、サンプル10、11よりも焼結温度の高いサンプル12から得られたガラス焼結体の光透過率が0.9%であったことから、光透過率は略0%になることが予想されたため、光透過率を測定しなかった。また、焼結温度が低いサンプル10,11から得られたガラス焼結体は緻密化が進んでおらず、ビッカース硬さの測定が難しいことが予想されたため、その測定を省略した。
【0049】
また、製造例3では、サンプル14、15、18から得られたクラッドプリフォームの孔にコアプリフォームを挿入して紡糸することにより光ファイバを得、その光ファイバの伝送損失を測定した。サンプル14及び18は紡糸前に火炎研磨を行い、サンプル15は火炎研磨を行わなかった。表6には、その結果も併せて示されている。
【0050】
【表6】
【0051】
図5~12は、製造例3で得られたクラッドプリフォームの外径、孔径、かさ密度、光透過率、開気孔率、収縮率、焼結温度(表5、表6参照)との関係を示すグラフである。
【0052】
図5~12の結果から、焼結温度が1400℃を超えるとガラスの緻密化が始まり、1450℃を超えると透明化が開始することが推測された。したがって、焼結温度を1400℃~1450℃に設定して得られたクラッドプリフォームの特性を満たしていれば、緻密で且つ不透明なガラス焼結体のクラッドプリフォームが得られるといえる。
【0053】
また、図8より、かさ密度と開気孔率との間に高い相関がみられることから、かさ密度、開気孔率のどちらを使用した場合でも、本実施例のクラッドプリフォームを定義することができるといえる。
【0054】
さらに、焼結温度を1400℃に設定して得られたクラッドプリフォーム(サンプル14、15)と、焼結温度を1500℃に設定して得られたクラッドプリフォーム(サンプル18)を紡糸して光ファイバを製造したところ、サンプル14、15の方がサンプル18よりも伝送損失がやや劣っていたが、問題ないことが分かった。このことから、本実施形態のクラッドプリフォームは、光ファイバのプリフォームとして有用であるといえる。
【符号の説明】
【0055】
10…孔
100…クラッドプリフォーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2021-09-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラス粉末を主原料とする円柱状の石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームであって、
前記石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体であって該不透明体の一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が90%以下であり、前記石英ガラス焼結体が、その外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下であり、且つかさ密度が2.1g/cm以上である部分を含む光ファイバ用プリフォーム。
【請求項2】
石英ガラス粉末を主原料とする円柱状の石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームであって、
前記石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体であって該不透明体の一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が90%以下であり、前記石英ガラス焼結体が、その外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下であり、且つ開気孔率が3.5%以下である部分を含む光ファイバ用プリフォーム。
【請求項3】
石英ガラス粉末を主原料とする石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームであって、
前記石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体であって該不透明体の一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が90%以下であり、前記石英ガラス焼結体が、その外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下である部分を含む光ファイバ用プリフォーム。
【請求項4】
前記不透明体が、その一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が2.5%以上であり、90%以下である請求項1~3のいずれかに記載の光ファイバ用プリフォーム。
【請求項5】
前記石英ガラス焼結体がコア材挿入用の貫通孔を有するクラッドプリフォームである請求項1~のいずれかに記載の光ファイバ用プリフォーム。
【請求項6】
前記石英ガラス焼結体がコアプリフォームである、請求項1~のいずれかに記載の光ファイバ用プリフォーム。
【請求項7】
貫通孔を有するクラッドプリフォームと、前記貫通孔に挿入されたコアプリフォームとから成る光ファイバプリフォームであって、前記クラッドプリフォーム及び前記コアプリフォームの少なくとも一方が請求項1~のいずれかに記載の光ファイバ用プリフォームである、光ファイバプリフォーム。
【請求項8】
貫通孔を有するクラッドプリフォームの前記貫通孔にコアプリフォームを挿入した後、焼結することにより光ファイバプリフォームを製造する方法であって、
前記クラッドプリフォーム及び前記コアプリフォームの少なくとも一方が請求項1~のいずれかに記載の光ファイバ用プリフォームである、光ファイバプリフォームの製造方法。
【請求項9】
請求項に記載の光ファイバプリフォームを紡糸して光ファイバを製造する方法。
【請求項10】
石英ガラス粉体、溶媒、分散剤、硬化性樹脂を含むガラス原料溶液を混合してスラリーを調合する調合工程と、
前記スラリーと硬化剤の混合物を円筒状の成形型内で硬化させて、円柱状の成形体を形成する成形工程と、
前記成形体を前記成形型から脱離させる脱型工程と、
前記成形体を乾燥する乾燥工程と、
乾燥後の前記成形体を脱脂する脱脂工程と、
脱脂後の前記成形体を焼結して円筒状の石英ガラス焼結体を得る焼結工程と
を有する、円柱状の石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームを製造する方法において、
前記焼結工程において得られる円筒状の石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体であって該不透明体の一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が90%以下であり、前記円筒状の石英ガラス焼結体が、その外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下であり、且つかさ密度が2.1g/cm 以上である部分を含むものである、光ファイバ用プリフォームの製造方法。
【請求項11】
石英ガラス粉体、溶媒、分散剤、硬化性樹脂を含むガラス原料溶液を混合してスラリーを調合する調合工程と、
前記スラリーと硬化剤の混合物を円筒状の成形型内で硬化させて、円柱状の成形体を形成する成形工程と、
前記成形体を前記成形型から脱離させる脱型工程と、
前記成形体を乾燥する乾燥工程と、
乾燥後の前記成形体を脱脂する脱脂工程と、
脱脂後の前記成形体を焼結して円筒状の石英ガラス焼結体を得る焼結工程と
を有する、円柱状の石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームを製造する方法において、
前記焼結工程において得られる円筒状の石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体であって該不透明体の一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が90%以下であり、前記円筒状の石英ガラス焼結体が、その外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下であり、且つその開気孔率が3.5%以下である部分を含むものである、光ファイバ用プリフォームの製造方法。
【請求項12】
石英ガラス粉体、溶媒、分散剤、硬化性樹脂を含むガラス原料溶液を混合してスラリーを調合する調合工程と、
前記スラリーと硬化剤の混合物を円筒状の成形型内で硬化させて、円柱状の成形体を形成する成形工程と、
前記成形体を前記成形型から脱離させる脱型工程と、
前記成形体を乾燥する乾燥工程と、
乾燥後の前記成形体を脱脂する脱脂工程と、
脱脂後の前記成形体を焼結して円筒状の石英ガラス焼結体を得る焼結工程と
を有する、円柱状の石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームを製造する方法において、
前記焼結工程において得られる円筒状の石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体であって該不透明体の一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が90%以下であり、前記円筒状の石英ガラス焼結体が、その外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下である部分を含むものである、光ファイバ用プリフォームの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
【非特許文献1】"Fabrication of Multi Core Fiber by Using Slurry Casting Method.", OFC(Optical Fiber Communication Conference)2017, Th1H.5.
【手続補正書】
【提出日】2021-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラス粉体、溶媒、分散剤、硬化性樹脂を含むガラス原料溶液を混合してスラリーを調合する調合工程と、
前記スラリーと硬化剤の混合物を円筒状の成形型内で硬化させて、円柱状の成形体を形成する成形工程と、
前記成形体を前記成形型から脱離させる脱型工程と、
前記成形体を乾燥する乾燥工程と、
乾燥後の前記成形体を脱脂する脱脂工程と、
脱脂後の前記成形体を焼結して円筒状の石英ガラス焼結体を得る焼結工程と
を有する、円柱状の石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームを製造する方法において、
前記焼結工程において得られる円筒状の石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体であって該不透明体の一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が90%以下であり、前記円筒状の石英ガラス焼結体が、その外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下であり、且つかさ密度が2.1g/cm以上である部分を含むものである、光ファイバ用プリフォームの製造方法。
【請求項2】
石英ガラス粉体、溶媒、分散剤、硬化性樹脂を含むガラス原料溶液を混合してスラリーを調合する調合工程と、
前記スラリーと硬化剤の混合物を円筒状の成形型内で硬化させて、円柱状の成形体を形成する成形工程と、
前記成形体を前記成形型から脱離させる脱型工程と、
前記成形体を乾燥する乾燥工程と、
乾燥後の前記成形体を脱脂する脱脂工程と、
脱脂後の前記成形体を焼結して円筒状の石英ガラス焼結体を得る焼結工程と
を有する、円柱状の石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームを製造する方法において、
前記焼結工程において得られる円筒状の石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体であって該不透明体の一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が90%以下であり、前記円筒状の石英ガラス焼結体が、その外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下であり、且つその開気孔率が3.5%以下である部分を含むものである、光ファイバ用プリフォームの製造方法。
【請求項3】
石英ガラス粉体、溶媒、分散剤、硬化性樹脂を含むガラス原料溶液を混合してスラリーを調合する調合工程と、
前記スラリーと硬化剤の混合物を円筒状の成形型内で硬化させて、円柱状の成形体を形成する成形工程と、
前記成形体を前記成形型から脱離させる脱型工程と、
前記成形体を乾燥する乾燥工程と、
乾燥後の前記成形体を脱脂する脱脂工程と、
脱脂後の前記成形体を焼結して円筒状の石英ガラス焼結体を得る焼結工程と
を有する、円柱状の石英ガラス焼結体から成る光ファイバ用プリフォームを製造する方法において、
前記焼結工程において得られる円筒状の石英ガラス焼結体の少なくとも一部が不透明体であって該不透明体の一方向の長さ5mm以下における可視光の光透過率が90%以下であり、前記円筒状の石英ガラス焼結体が、その外径に対する外形真円度の比率が0.5%以下である部分を含むものである、光ファイバ用プリフォームの製造方法。