(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031114
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】放電検出システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/14 20060101AFI20220210BHJP
G01R 31/12 20200101ALI20220210BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20220210BHJP
H02B 1/42 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
G01R31/14
G01R31/12 B
H02H3/16 B
H02B1/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021064554
(22)【出願日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2020133523
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 淳史
【テーマコード(参考)】
2G015
5G004
5G211
【Fターム(参考)】
2G015AA15
2G015AA28
2G015BA04
2G015DA02
5G004AA01
5G004AB03
5G004BA01
5G004CA02
5G004DA01
5G004DC01
5G211AA12
5G211DD04
5G211DD14
5G211DD15
(57)【要約】
【課題】どの分岐で放電事象が生じたのかを把握することができる放電検出システムを安価に提供すること。
【解決手段】負荷が接続される電路の電圧又は電流に重畳されるノイズの閾値以上の出力が所定時間以上継続することを用いて放電事象の検出を行う放電検出システムであって、複数の分岐回路の電圧または電流に重畳するノイズの計測をする計測部と、計測部の出力を増幅させて出力する増幅部31と、閾値以上の出力が所定時間以上継続していた回路に、分岐回路に設けられた増幅部における増幅の倍率を変更させる指示部51と、指示部で増幅の倍率を変更した後の増幅部からの出力を比較対象として用いて放電事象の発生個所を特定する比較判定部52と、を備えた構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷が接続される電路の電圧又は電流に重畳されるノイズの閾値以上の出力が所定時間以上継続することを用いて放電事象の検出を行う放電検出システムであって、
複数の分岐回路の電圧または電流に重畳するノイズの計測をする計測部と、
計測部の出力を増幅させて出力する増幅部と、
閾値以上の出力が所定時間以上継続していた回路に、分岐回路に設けられた増幅部における増幅の倍率を変更させる指示部と、
指示部で増幅の倍率を変更した後の増幅部からの出力を比較対象として用いて放電事象の発生個所を特定する比較判定部と、
を備えた放電検出システム。
【請求項2】
比較判定部は、複数の回路の増幅の倍率を同様に変更した後の各回路についての増幅部からの出力を比較することで、放電事象の発生箇所を特定する請求項1に記載の放電検出システム。
【請求項3】
比較判定部は、増幅の倍率を減衰させた場合にノイズの出力値の減衰量の小さいものから放電事象の発生箇所を特定する請求項1に記載の放電検出システム。
【請求項4】
比較判定部は、所定の時間ごとに各回路について増幅部の倍率を増減させ、
増幅部の倍率を増減させた間の出力値を加算、または、平均化させた検出値を演算し、
各負荷の検出値を比較し、放電事象の発生箇所を特定する請求項1に記載の放電検出システム。
【請求項5】
放電事象と判定するための基準となる判定時間、ノイズの出力値の学習を行う学習モードと電路の電圧又は電流に重畳されるノイズの出力値と継続時間から放電事象と判定する検出モードを切り替えるために用いられる学習設定手段を備え、
学習設定手段は、学習モード中に、各電路の負荷を接続した状態のノイズ出力レベルに閾値を超える出力があった場合、検出モードで使用する増幅の倍率を指示部により減衰させる請求項1から4の何れかに記載の放電検出システム。
【請求項6】
比較判定部は、各分岐ブレーカと接続されており、比較判定部で放電事象が発生したと判定された回路の分岐ブレーカを遮断する請求項1に記載の放電検出システム。
【請求項7】
負荷が接続される電路の電圧又は電流に重畳されるノイズの閾値以上の出力が所定時間以上継続することを用いて放電事象の検出を行う放電検出システムであって、
複数の分岐回路の電圧または電流に重畳するノイズの計測をする計測部と、
計測部の出力を増幅させて出力する増幅部と、
所定の時間ごとに増幅部における増幅の倍率を変更させる指示部と、
指示部で増幅の倍率を変更して計測したノイズの閾値の出力が、所定時間以上継続することの検出により放電事象の発生個所を特定する比較判定部と、を備えた放電検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、複数の分岐回路を備えた分電盤などで各分岐回路の放電事象を検出する放電検出システムを形成する場合には、各分岐ブレーカに放電を検出する検出部を形成するのが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
ところで、
図8に示すように他の回路から放電のノイズが伝搬できる状況である場合、検出部は、どの分岐回路の負荷で放電事象が発生したのかを判断できない。このような問題の対策として、各分岐回路の一次側に回り込み防止フィルタを形成することが知られているが、このような構成とすると、取付作業や、費用の面で負担が大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、どの分岐で放電事象が生じたのかを把握することができる放電検出システムを安価に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、負荷が接続される電路の電圧又は電流に重畳されるノイズの閾値以上の出力が所定時間以上継続することを用いて放電事象の検出を行う放電検出システムであって、複数の分岐回路の電圧または電流に重畳するノイズの計測をする計測部と、計測部の出力を増幅させて出力する増幅部と、閾値以上の出力が所定時間以上継続していた回路に、分岐回路に設けられた増幅部における増幅の倍率を変更させる指示部と、指示部で増幅の倍率を変更した後の増幅部からの出力を比較対象として用いて放電事象の発生個所を特定する比較判定部と、を備えた放電検出システムとする。
【0007】
また、比較判定部は、複数の回路の増幅の倍率を同様に変更した後の各回路についての増幅部からの出力を比較することで、放電事象の発生箇所を特定する構成とすることが好ましい。
【0008】
また、比較判定部は、増幅の倍率を減衰させた場合にノイズの出力値の減衰量の小さいものから放電事象の発生箇所を特定する構成とすることが好ましい。
【0009】
また、比較判定部は、所定の時間ごとに各回路について増幅部の倍率を増減させ、増幅部の倍率を増減させた間の出力値を加算、または、平均化させた検出値を演算し、各負荷の検出値を比較し、放電事象の発生箇所を特定する構成とすることが好ましい。
【0010】
また、放電事象と判定するための基準となる判定時間、ノイズの出力値の学習を行う学習モードと電路の電圧又は電流に重畳されるノイズの出力値と継続時間から放電事象と判定する検出モードを切り替えるために用いられる学習設定手段を備え、学習設定手段は、学習モード中に、各電路の負荷を接続した状態のノイズ出力レベルに閾値を超える出力があった場合、検出モードで使用する増幅の倍率を指示部により減衰させる構成とすることが好ましい。
【0011】
また、比較判定部は、各分岐ブレーカと接続されており、比較判定部で放電事象が発生したと判定された回路の分岐ブレーカを遮断する構成とすることが好ましい。
【0012】
また、負荷が接続される電路の電圧又は電流に重畳されるノイズの閾値以上の出力が所定時間以上継続することを用いて放電事象の検出を行う放電検出システムであって、複数の分岐回路の電圧または電流に重畳するノイズの計測をする計測部と、計測部の出力を増幅させて出力する増幅部と、所定の時間ごとに増幅部における増幅の倍率を変更させる指示部と、指示部で増幅の倍率を変更して計測したノイズの閾値の出力が、所定時間以上継続することの検出により放電事象の発生個所を特定する比較判定部と、を備えた放電検出システムとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、どの分岐で放電事象が生じたのかを把握することができる放電検出システムを安価に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】放電検出システムを使用した例を示す図である。
【
図2】複数の分岐がなされた電路における一つの分岐回路に放電事象が生じた場合に、計測ユニットから得られたノイズレベルの情報の例を表した図である。
【
図3】増幅部の倍率を変えることによる、
図2に示す計測ユニットのノイズレベルの変化を表す図である。ただし、増幅の倍率を減衰させた場合にノイズの出力値の減衰量の小さいものから放電事象の発生箇所を特定するための着目箇所を破線で囲っている。
【
図4】増幅部の倍率を変えることによる、
図2に示す計測ユニットのノイズレベルの変化を表す図である。ただし、複数の回路の増幅の倍率を同様に変更した後の各回路についての増幅部からの出力を比較することで、ノイズの出力値が小さいと判明したものから放電事象の発生箇所を特定するための着目箇所を破線で囲っている。
【
図5】増幅部の倍率を所定の時間ごとに増幅部の倍率を変化させた例を示す図である。
【
図6】増幅の倍率を増減させていき、その平均値を導いた例を示す図である。
【
図7】学習設定手段を用いて増幅部の倍率を低減させた例を示す図である。ただし、ノイズレベルが特定設定値付近になるように増幅部の倍率をコントロールしている。
【
図8】他の回路からノイズが回り込んでくる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に発明を実施するための形態を示す。本実施形態の放電検出システムは、負荷8が接続される電路の電圧又は電流に重畳されるノイズの閾値以上の出力が所定時間以上継続することを用いて放電事象の検出を行うものである。
図1及び
図2に示すことから理解されるように、この放電検出システムは、複数の分岐回路の電圧または電流に重畳するノイズの計測をする計測部と、計測部の出力を増幅させて出力する増幅部31と、閾値以上の出力が所定時間以上継続していた回路に、分岐回路にノイズ倍率を変更させる指示部51と、指示部51で増幅の倍率を変更した後の増幅部31からの出力を比較対象として用いて放電事象の発生個所を特定する比較判定部52と、を備えている。このため、どの分岐で放電事象が生じたのかを把握することができる放電検出システムを安価に提供することが可能となる。
【0016】
ここで、実施形態の放電検出システムの概要から説明する。実施形態の放電検出システムは、分岐ブレーカ12と負荷8の間に計測ユニット3を配置している。また、複数の計測ユニット3から情報を集めるメインユニット5を備えている。このメインユニット5には、各計測ユニット3と通信可能に接続され、各計測ユニット3の情報を集約、演算を行う演算部55や、複数の回路の比較、または、ノイズの出力値の減衰量から放電事象の発生個所を特定する比較判定部52や、増幅部31の出力を減衰させる指示部51を備えている。
【0017】
なお、
図1に示す例では、メインユニット5は、主幹ブレーカ11の二次側に接続されており、メインユニット5は主幹ブレーカ11を通して電源を取得する電源部54を備えている。また、メインユニット5は電源部54を介して各計測ユニット3に電源を供給する。また、メインユニット5は主幹ブレーカ11にも分岐ブレーカ12にも信号が送れるように構成されており、放電事象と判定した場合には、遮断信号を適宜ブレーカに送信する。特に、比較判定部52で放電事象が発生したと判定された回路の分岐ブレーカ12を遮断するように構成するのが好ましい。
【0018】
この放電検出システムは、複数の分岐回路の電圧または電流に重畳するノイズの計測をする計測部を備えているが、
図1に示すことから理解されるように、実施形態では各分岐に設けられた計測ユニット3に備えた計測手段32の集合体が計測部である。なお、この計測手段32には、商用周波数などの所定の周波数を除去し、特定の周波数帯域におけるノイズの計測を行うフィルタ部を備えている。
【0019】
また、実施形態の計測ユニット3には、計測部の出力を増幅させて出力する増幅部31を備えている。各計測ユニット3は、その二次側で放電事象が生じたか否かを検出するのに用いられるが、放電事象によって生じるノイズに関する情報はメインユニット5に集められる。
【0020】
メインユニット5に集められる情報の複数、または、1つの回路について、「負荷8が接続される電路の電圧又は電流に重畳されるノイズの閾値以上の出力が所定時間以上継続している」ことを表す場合、いずれかの情報は、その情報を送った計測ユニット3とは異なる計測ユニット3の二次側で放電事象が生じたことに起因するものであるかもしれない。当該情報を送った計測ユニット3で放電事象が生じたか否かを判定するため、本発明では、増幅部31の倍率を変更させる。指示部51で増幅の倍率を変更した後の増幅部31からの出力を比較対象として用いて放電事象の発生個所を特定するが、その具体的な例を次に説明する。
【0021】
まず、指示部51により増幅の倍率を減衰させた場合にノイズの出力値の減衰量の小さいものから放電事象の発生箇所を特定する方法について説明する。
図2に示す状態である場合、1の計測ユニット3、2の計測ユニット3、3の計測ユニット3のそれぞれの初期設定の増幅部31の倍率が5倍、10倍、10倍であったとする。
図3に示すことから理解されるように、増幅部31の倍率を低減させてノイズレベルを確認すると、二次側で放電事象が生じていない計測ユニット3からの情報におけるノイズレベルは、低減しやすい一方、二次側で放電事象が生じた計測ユニット3からの情報におけるノイズレベルは、低減しにくい。そこで、
図3に示す例では、増幅部31の倍率を低減させた場合における、ある計測ユニット3のノイズレベルの減衰度合いを基に、比較判定部52は放電事象の発生個所を特定する。また、それぞれの増幅部31の倍率で放電事象と判定する閾値が設けられており、その閾値よりノイズレベルが超えていた場合に倍率を低下していくものとしても良い。
【0022】
次に、複数の回路の増幅の倍率を同様に変更した後の各回路についての増幅部31からの出力を比較することで、ノイズの出力値が小さいと判明したものから放電事象の発生箇所を特定する方法について説明する。
図2に示す状態である場合、初期設定の増幅部31の倍率は上記したものと同じだが、例えば、各々の増幅部31の倍率を一律に1倍とするなど、一律となるように低減させる。
図4に示すことから理解されるように、複数の回路の増幅の倍率を同様に変更した場合におけるノイズレベルを確認すると、二次側で放電事象が生じていない計測ユニット3からの情報におけるノイズレベルは小さいが、二次側で放電事象が生じた計測ユニット3からの情報におけるノイズレベルは大きい。したがって、増幅の倍数を低く抑えるように変更した後の出力同士を比較することで、比較判定部52は放電事象の発生個所を特定することができることが分かる。また、増幅部31の倍率ごとで放電事象と判定する閾値が設けられており、複数の回路が閾値を超えている場合には、増幅部31の倍率を低下させるものであっても良い。
【0023】
ここで、放電事象の際に発生するノイズは距離が長いほど減衰するため、増幅部31の倍率を低下させると検出感度が低くなってしまい、放電事象を検出可能とする範囲が狭くなる場合があるので、適切な倍率に設定する必要がある。この特定設定値程度に増幅割合を低下させる際には、瞬間的なノイズを検出した場合でも増幅割合を低下すると、増幅割合を大幅に低下しなければならない。そのため、所定の時間で特定設定値以上の出力が検出された場合に、増幅割合を低下させることが好ましい。
【0024】
その他、放電事象の発生個所の計測方法として、以下のシステムが考えられる。指示部51から各計測ユニット3の増幅部31の倍率を所定の時間ごとに変更させてノイズの出力を計測する。例えば、
図5に示すように、1msごとに増幅部31の倍率を20倍、10倍、5倍、2倍と変更して計測する。その変更して計測した出力値より、倍率を変更してもノイズの閾値の出力が、所定時間以上継続する計測手段32の回路を放電事象の発生個所として特定する、または、増幅部31の同じ倍率の計測値のみ取り出して同倍率における他回路の出力値と比較して発生個所を特定するものである。このように増幅部の倍率を何度も変更させて計測する場合は、放電事象が短い時間で発生する場合であっても計測することができるものである。
【0025】
また、増幅部31の倍率を何度も変更させてノイズの出力を計測する場合、所定の時間ごとに各回路について増幅部31の倍率を増減させ、増幅部31の倍率を増減させた間の出力値を加算、または、平均化させた検出値を演算し、各負荷の検出値を比較し、放電事象の発生箇所を特定するようにするのも好ましい。このようにすると、判定回数を抑制できるため、全体として、結果を得るまでの時間を短縮することができる。したがって、比較的短時間で終わる放電事象の検出も可能となる。
【0026】
具体的には、複数の回路で閾値以上の検出値があった場合、所定の時間ごと(例えば、5ms)に増幅部31の倍率を増減させる。また、その増減を所定の時間(例えば、100ms)繰り返し、ノイズの出力を検出する。繰り返し検出した所定の時間分の出力値を加算または平均化させるように演算し、各々の演算結果を比較し、加算値または平均値が最も高いユニットで放電事象があったことを特定するようにすれば良い。
【0027】
図6に示す例では、増幅部31の倍率を段階的に下げた後、再度最初の倍率に増幅させるということを繰り返すようにメインユニット5の指示部51で指示している。具体的には増幅部31の倍率を4段階で変化させるようにしている。この例では、倍率の変化を4段階としているが、倍率の変化は2段階としても良いし、それ以上としても良い。勿論、平均化の時間や加算の時間も自由に設定すればよい。
【0028】
このように、増幅部31の出力を所定の時間ごとに変更する指示部51を用いて計測する方法は、放電事象が起こっていない場合でも常に行うものでも、複数の計測手段32で「負荷8が接続される電路の電圧又は電流に重畳されるノイズの閾値以上の出力が所定時間以上継続している」ことを検出した後に行うものであっても良い。また、増幅部31の倍率の最大値は、後述するように、学習モードで設定した倍率として可変していくものとすることが好ましい。
【0029】
このようなことから理解されるように、負荷が接続される電路の電圧又は電流に重畳されるノイズの閾値以上の出力が所定時間以上継続することを用いて放電事象の検出を行う放電検出システムであって、複数の分岐回路の電圧または電流に重畳するノイズの計測をする計測部と、計測部の出力を増幅させて出力する増幅部31と、所定の時間ごとに増幅部における増幅の倍率を変更させる指示部51と、指示部51で増幅の倍率を変更して計測したノイズの閾値の出力が、所定時間以上継続することの検出により放電事象の発生個所を特定する比較判定部52と、を備えた放電検出システムとすることが好ましい。
【0030】
ところで、実施形態の放電検出システムは、負荷8が接続される電路の電圧又は電流に重畳されるノイズの閾値以上の出力が所定時間以上継続することを用いて放電検出を行うものであるが、工場からの出荷時などにはあらかじめ、特定の値が設定されている。使用条件によっては、この初期設定ではうまく機能しない場合が考えられるため、実施形態では、設置環境の固有の事情に合わせることができるようにしている。具体的には、放電事象と判定するための基準となる判定時間、ノイズの出力値の学習を行う学習モードと電路の電圧又は電流に重畳されるノイズの出力値と継続時間から放電事象と判定する検出モードを切り替えるために用いられる学習設定手段53で、検出モードから学習モードに切り替えて、使用環境における状態を学習する状態とし、学習モードで学習した内容を反映して判定基準再設定手段で判定基準を設定しなおすことができるように構成している。なお、実施形態では、学習設定手段53をメインユニット5に設けている。
【0031】
次に、学習設定手段53を用いて判定閾値を学習する方法の例について説明する。なお、ここでは、電圧を計測する方法を例として示す。例えば、負荷8を使用した状態とすると
図7に示すようにノイズレベルが閾値を超える場合がある。このような場合、放電事象の有無を適切に判断できない。そこで、実施形態では学習設定手段53により増幅部31による出力の増幅割合を低下させる。
図7に示す例では、閾値を超えていたノイズレベルがあらかじめ定めた特定設定値程度になるまで増幅部31による出力の増幅割合を低下させ、検出モードでも変化後の増幅の倍率を使用する。このため、負荷8を使用するだけで閾値を超えるようなことは無くなる。このように、学習設定手段53は、学習モード中に、各電路の負荷8を接続した状態のノイズ出力レベルに閾値を超える出力があった場合、検出モードで使用する増幅の倍率を指示部51により減衰させるように構成することが好ましい。
【0032】
また、特定設定値は放電事象が生じていない通常の状態ではノイズレベルが超えない程度に設定することが望ましいが、特定設定値を超えているか否かは放電の判定には特に影響しない。
【0033】
増幅部31における増幅の倍率を減少させることができると、負荷8の使用によりノイズレベルが上昇した後に放電事象が発生した場合でも、放電事象が発生したか否かを適切に判定することができる。
【0034】
このようなことを可能とするため、実施形態では、学習モードにおいても、計測手段32や増幅部31や指示部51は機能させている。
【0035】
ここで、学習設定手段53を用いて閾値を学習する方法の例について説明する。実施形態では、学習設定手段53を備えたユニットの表面に、学習設定手段53を操作する操作手段を備えている。この例では操作手段はボタンである。一般家庭に設置した放電検出システムに学習をさせる際には、学習設定手段53のボタンを押せばよい。例えば、学習設定手段53のボタンを押したあと、数秒後に学習を開始し、複数回学習を繰り返して、判定閾値を再設定させる。この際、1回ボタンを押すことで、1回学習するようにしても、複数回に分けて学習するようにしても良い。いずれにせよ取得された閾値を超えるノイズについての情報を学習する。所定の閾値を超えていることを検出した場合には、通常時に想定されるノイズが、閾値よりも低い特定設定値付近の値となるように、増幅部31の出力感度を低下させる。
【0036】
なお、実施形態では、学習設定手段53を用いて設定した閾値などを元に戻すリセット部を備えている。このため、学習設定がうまくいかなかった場合にも、初期に設定された状態で使用することができる。また、本実施形態のメインユニット5、計測ユニット3を導入する際には分岐ブレーカ12に接続される負荷を動作させる前に、回路で放電事象が発生しておらず、回路に異常がないことを検出したことをトリガーにして、学習設定手段15で設定可能としておくことが好ましい。
【0037】
なお、学習モードにおいて、複数のサンプルが得られるように測定する方法は、どのようなものであっても良い。例えば、1週間を学習期間として1日1回、所定のタイミングで測定した計測時間をサンプルとする。測定の結果得られた複数のサンプルから、最大値や中央値や平均値などの特定の値を導出し、得られた結果を基に判定時間として再設定する。
【0038】
ところで、学習モード中でも正常な状態であるかどうかは分からないため、所定以上のノイズが特定の時間継続する場合には注意をしなくてはならない。そこで、実施形態では、学習モードにおいてノイズによる閾値以上の出力が所定の継続時間を超えると、放電検出と判定する強制判定時間を設定している。
【0039】
所定以上のノイズが強制判定時間継続している場合、強制的に遮断するようブレーカを操作するか、警告を出力する。なお、強制判定時間は、これ以上、所定以上のノイズが継続すると危険であると判定するためのものであるため、所定以上のノイズが強制判定時間継続する場合には、強制的に遮断するのが望ましい。
【0040】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。実施形態では、ノイズの出力値を電圧から計測する方法であるが、そのようなものに限る必要は無い。例えば、CTを用いて電流からノイズの出力値を抽出するものであっても良い。
【0041】
また、実施形態では、負荷の電路に放電検出システムを形成するものであるが、このような形態でなくても良い。例えば分電盤内の複数の電路に計測手段や増幅部や、それらの計測手段の情報を収集するメインユニットを形成し、このメインユニットに判定手段、判定基準再設定手段、学習設定手段を形成するようにしても良い。
【0042】
また、学習モードにおいて、増幅部の出力を低下させても、閾値を超えている場合は、強制判定時間を超えなくても、放電事象が発生しているとみなすようにしても良い。この場合、放電検出システムは、遮断をするように動作しても良いし、判定基準の再設定をできないように規制するようにしても良い。
【0043】
増幅部は計測ユニットに備えられているものである必要はない。例えば、メインユニットに設けても良い。また、実施形態ではメインユニット5に比較判定部52を形成するものであるが、計測ユニット3内に比較判定部52を形成するものであっても良い。また、実施形態の計測ユニット3は、分岐ブレーカ12と負荷8に直列に接続しているが、計測ユニット3は、分岐ブレーカ12の一次側に形成するものであっても良いし、並列に接続するものであっても良い。
【符号の説明】
【0044】
3 計測ユニット
8 負荷
12 分岐ブレーカ
31 増幅部
51 指示部
52 比較判定部