(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031169
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】車両のブレーキシステムの電気機械式ブレーキ倍力装置を作動させるための制御装置および方法
(51)【国際特許分類】
B60T 15/36 20060101AFI20220210BHJP
B60T 13/14 20060101ALI20220210BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20220210BHJP
B60T 8/28 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
B60T15/36 Z
B60T13/14
B60T8/17 A
B60T8/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021123207
(22)【出願日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】10 2020 209 996.0
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】レッテンメイヤー ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ユング マルクス
(72)【発明者】
【氏名】長倉 安孝
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB25
3D048CC05
3D048CC41
3D048HH42
3D048QQ07
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3D049QQ04
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3D246AA01
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3D246HA02A
3D246HA02B
3D246HA42A
3D246HA42B
3D246HC01
3D246HC07
3D246JB03
3D246LA02Z
3D246LA10Z
3D246LA61Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両のブレーキシステムの電気機械式ブレーキ倍力装置のための制御装置、および電気機械式ブレーキ倍力装置を作動させる方法を提供する。
【解決手段】方法は、予め設定されている目標予圧および電気機械式ブレーキ倍力装置の予め設定されている圧力・距離特性曲線を考慮して、電気機械式ブレーキ倍力装置の目標作動モードに関する目標量を設定し、設定された目標量を考慮して電気機械式ブレーキ倍力装置を起動させ、電気機械式ブレーキ倍力装置の下流側に配置されているブレーキマスタシリンダ内にある実測予圧を測定する。この場合、測定された実測予圧が予め設定されている目標予圧と異なっているか、または予め設定された最小差だけ異なっている場合に限り、ブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室内に中間貯留されているブレーキ液の体積がゼロでないかを検出し、および/または少なくとも1つの車輪排出弁が開いているかを検出する。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキシステムの少なくとも電気機械式ブレーキ倍力装置(12)のための制御装置(42)であって、
前記電気機械式ブレーキ倍力装置(12)の圧力・距離特性曲線(kstandard)が記憶されているメモリユニット(44)と、
次のように構成および/またはプログラミングされている電子機構(46)であって、少なくとも、前記電子機構(46)に予め設定されている目標予圧(ptarget)と前記電気機械式ブレーキ倍力装置(12)の前記圧力・距離特性曲線(kstandard)とを考慮して、前記電気機械式ブレーキ倍力装置(12)の目標作動モードに関する少なくとも1つの目標量を設定し、前記少なくとも1つの設定された目標量を考慮して前記電気機械式ブレーキ倍力装置(12)を起動させるように、構成および/またはプログラミングされている前記電子機構(46)と、
を備えた前記制御装置(42)において、
前記電子機構(46)がさらに次のように構成および/またはプログラミングされ、すなわち測定されて前記電子機構(46)に提供され、少なくとも前記電気機械式ブレーキ倍力装置(12)の下流側に配置されている前記ブレーキシステムのブレーキマスタシリンダ(10)内にある実測予圧(pmeasured)を用いて、前記測定された実測予圧(pmeasured)が前記予め設定されている目標予圧(ptarget)と異なっているかどうか、もしくは少なくとも予め設定された最小差だけ異なっているかどうかを検知し、場合によっては前記ブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室(14)内に中間貯留されているブレーキ液の体積がゼロでないかどうかを試問もしくは検出し、および/または、前記ブレーキシステムの少なくとも1つの車輪排出弁(16a,16b)が開いているかどうかを試問もしくは検出するように、構成および/またはプログラミングされている、
ことを特徴とする制御装置(42)。
【請求項2】
前記電子機構(46)がさらに次のように構成および/またはプログラミングされ、すなわち前記測定された実測予圧(pmeasured)が、前記予め設定されている目標予圧(ptarget)よりも小さいか、もしくは少なくとも前記予め設定された最小差だけ前記予め設定されている目標予圧(ptarget)よりも小さい場合に限り、前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つの貯留室(14)内に中間貯留されているブレーキ液の体積がゼロでないかを試問もしくは検出し、および/または、前記測定された実測予圧(pmeasured)が、前記予め設定されている目標予圧(ptarget)よりも大きいか、もしくは少なくとも前記予め設定された最小差だけ前記予め設定されている目標予圧(ptarget)よりも大きい場合に限り、前記ブレーキシステムの少なくとも1つの車輪排出弁(16a,16b)が開いているかどうかを試問もしくは検出するように、構成および/またはプログラミングされている、請求項1に記載の制御装置(42)。
【請求項3】
前記測定された実測予圧(pmeasured)が、前記予め設定されている目標予圧(ptarget)よりも小さいか、もしくは少なくとも前記予め設定された最小差だけ前記予め設定されている目標予圧(ptarget)よりも小さく、且つ前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つの貯留室(14)内に中間貯留されているブレーキ液の体積がゼロでないことはないことを前記電子機構(46)が検知するか、もしくは試問した情報から読み取る場合に限り、または、前記測定された実測予圧(pmeasured)が、前記予め設定されている目標予圧(ptarget)よりも大きいか、もしくは少なくとも前記予め設定された最小差だけ前記予め設定されている目標予圧(ptarget)よりも大きい場合に限り、前記電子機構(46)がさらに次のように構成および/またはプログラミングされ、すなわち前記電気機械式ブレーキ倍力装置(12)の前記予め設定されている圧力・距離特性曲線(kstandard)の少なくとも1つの特性値を、少なくとも前記測定された実測予圧(pmeasured)と前記予め設定されている目標予圧(ptarget)とを考慮して新たに設定するように、構成および/またはプログラミングされている、請求項1または2に記載の制御装置(42)。
【請求項4】
前記測定された実測予圧(pmeasured)が、前記予め設定されている目標予圧(ptarget)とは異なっているか、または少なくとも前記予め設定された最小差だけ異なっている場合に限り、且つ前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つの貯留室(14)内に中間貯留されているブレーキ液の体積がゼロでないことはないこと、および/または前記ブレーキシステムの車輪排出弁(16a,16b)が開いていないことを前記電子機構(46)が検知するか、または試問した情報から読み取る場合に限り、前記電子機構(46)がさらに次のように構成および/またはプログラミングされ、すなわち前記少なくとも1つの目標量を、少なくとも前記測定された実測予圧(pmeasured)と前記予め設定されている目標予圧(ptarget)とを考慮して新たに設定し、前記電気機械式ブレーキ倍力装置(12)を、前記少なくとも1つの新たに設定した目標量を考慮してもう一度起動させるように、構成および/またはプログラミングされている、請求項1~3のいずれか一項に記載の制御装置(42)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の制御装置(42)を備えた、ブレーキシステムのブレーキマスタシリンダ(10)の上流側に支持可能または支持されている、車両の前記ブレーキシステムのための電気機械式ブレーキ倍力装置(12)。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の制御装置(42)および協働する前記電気機械式ブレーキ倍力装置(12)または請求項5に記載の電気機械式ブレーキ倍力装置(12)と、
それぞれの前記電気機械式ブレーキ倍力装置(12)の上流側に支持されているブレーキマスタシリンダ(10)と、
少なくとも、少なくとも1つの貯留室(14)および/または少なくとも1つの車輪排出弁(16a,16b)と、
を備えた車両用ブレーキシステム。
【請求項7】
車両のブレーキシステムの電気機械式ブレーキ倍力装置(12)を作動させる方法であって、
少なくとも、予め設定されている目標予圧(ptarget)および前記電気機械式ブレーキ倍力装置(12)の予め設定されている圧力・距離特性曲線(kstandard)を考慮して、前記電気機械式ブレーキ倍力装置(12)の目標作動モードに関する少なくとも1つの目標量を設定するステップ(S1)と、
前記少なくとも1つの設定された目標量を考慮して前記電気機械式ブレーキ倍力装置(12)を起動させるステップ(S2)と、
少なくとも前記電気機械式ブレーキ倍力装置(12)の下流側に配置されている前記ブレーキシステムのブレーキマスタシリンダ(10)内にある実測予圧(pmeasured)を測定するステップ(S6)と、
を備えた前記方法において、
前記測定された実測予圧(pmeasured)が前記予め設定されている目標予圧(ptarget)と異なっているか、または少なくとも予め設定された最小差だけ異なっている場合に限り、前記ブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室(14)内に中間貯留されているブレーキ液の体積がゼロでないかどうかを検出し(S8)、および/または、前記ブレーキシステムの少なくとも1つの車輪排出弁(16a,16b)が開いているかどうかを検出する(S12)ことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記測定された実測予圧(pmeasured)が、前記予め設定されている目標予圧(ptarget)よりも小さいか、または少なくとも前記予め設定された最小差だけ前記予め設定されている目標予圧(ptarget)よりも小さい場合に限り、前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つの貯留室(14)内に中間貯留されているブレーキ液の体積がゼロでないかどうかを検出する(S8)、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記測定された実測予圧(pmeasured)が、前記予め設定されている目標予圧(ptarget)よりも大きいか、または少なくとも前記予め設定された最小差だけ前記予め設定されている目標予圧(ptarget)よりも大きい場合に限り、前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つの車輪排出弁(16a,16b)が開いているかどうかを検出する(S12)、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記測定された実測予圧(pmeasured)が、前記予め設定されている目標予圧(ptarget)よりも小さいか、もしくは少なくとも前記予め設定された最小差だけ前記予め設定されている目標予圧(ptarget)よりも小さく、且つ前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つの貯留室(14)内に中間貯留されているブレーキ液の体積がゼロでないことはないことが検出される場合に限り、または、前記測定された実測予圧(pmeasured)が、前記予め設定されている目標予圧(ptarget)よりも大きいか、もしくは少なくとも前記予め設定された最小差だけ前記予め設定されている目標予圧(ptarget)よりも大きい場合に限り、前記電気機械式ブレーキ倍力装置(12)の前記予め設定されている圧力・距離特性曲線(kstandard)の少なくとも1つの特性値を、少なくとも前記測定された実測予圧(pmeasured)と前記予め設定されている目標予圧(ptarget)とを考慮して新たに設定する(S10)、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記測定された実測予圧(pmeasured)が、前記予め設定されている目標予圧(ptarget)とは異なっているか、または少なくとも前記予め設定された最小差だけ異なっている場合に限り、且つ前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つの貯留室(14)内に中間貯留されているブレーキ液の体積がゼロでないことはないことが検出される場合、および/または前記ブレーキシステムの車輪排出弁(16a,16b)が開いていないことが検出される場合に限り、前記少なくとも1つの目標量を、少なくとも前記測定された実測予圧(pmeasured)と前記予め設定されている目標予圧(ptarget)とを考慮して新たに設定し、前記電気機械式ブレーキ倍力装置(12)を、前記少なくとも1つの新たに設定した目標量を考慮してもう一度起動させる(S11)、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキシステムの少なくとも電気機械式ブレーキ倍力装置のための制御装置に関するものである。また、本発明は車両のブレーキシステムのための電気機械式ブレーキ倍力装置および車両のためのブレーキシステムに関する。さらに、本発明は車両のブレーキシステムの電気機械式ブレーキ倍力装置を作動させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1のような技術水準から、それぞれブレーキマスタシリンダの上流側に支持されている電気機械式ブレーキ倍力装置と、少なくとも1つの貯留室と、少なくとも1つの車輪排出弁とを備えた複数のブレーキシステムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102016208529A1号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明は、請求項1の構成を備えた、車両のブレーキシステムの少なくとも電気機械式ブレーキ倍力装置のための制御装置と、請求項5の構成を備えた、車両のブレーキシステムのための電気機械式ブレーキ倍力装置と、請求項6の構成を備えた車両用ブレーキシステムと、請求項7の構成を備えた、車両のブレーキシステムの電気機械式ブレーキ倍力装置を作動させるための方法とを提供する。
【0005】
本発明は、車両のブレーキシステムの電気機械式ブレーキ倍力装置を作動させることによって実際に生じる、電気機械式ブレーキ倍力装置の下流側に配置されたブレーキシステムの少なくともブレーキマスタシリンダにおける実測予圧と所望の目標予圧とのずれに反応するための改善された可能性を提供する。技術水準との違いは、本発明においては、測定された実測予圧と所望の目標予圧とのずれは、電気機械式ブレーキ倍力装置を作動させる際に考慮される圧力・距離特性曲線と電気機械式ブレーキ倍力装置の実際の圧力・距離特性との差異に起因するばかりでなく、ブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室内のブレーキ液の体積がゼロでないことにも起因させることができるという点を考慮していることにある。また、本発明は、測定された実測予圧と所望の目標予圧とが異なる場合、所望の目標予圧を生じさせるための有利な戦略は、ブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室内のブレーキ液の体積がゼロでないかどうか、および/または、ブレーキシステムの少なくとも1つの車輪排出弁が少なくとも部分的に開いているかどうかにもしばしば依存している点を考慮する。このようにして、本発明は、本発明を利用する車両のドライバーに、車両を減速する際のブレーキの優れた快適性を可能にする。
【0006】
制御装置の有利な実施態様では、電子機構はさらに次のように構成および/またはプログラミングされ、すなわち測定された実測予圧が、予め設定されている目標予圧よりも小さいか、もしくは少なくとも予め設定された最小差だけ予め設定されている目標予圧よりも小さい場合に限り、ブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室内に中間貯留されているブレーキ液の体積がゼロでないかを試問もしくは検出し、および/または、測定された実測予圧が、予め設定されている目標予圧よりも大きいか、もしくは少なくとも予め設定された最小差だけ予め設定されている目標予圧よりも大きい場合に限り、ブレーキシステムの少なくとも1つの車輪排出弁が開いているかどうかを試問もしくは検出するように、構成および/またはプログラミングされている。したがって、ここで述べている制御装置の実施態様は、測定された実測予圧が低すぎると、これはブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室内のブレーキ液の体積がゼロでないことに起因していることが多いことを考慮するように構成されていてよい。択一的に、または、補完的に、説明している制御装置の実施態様は、ブレーキシステムの少なくとも1つの車輪排出弁が少なくとも部分的に開いている場合に限り、測定された実測予圧が高すぎれば、これをブレーキシステムの少なくとも部分的に開いている少なくとも1つの車輪排出弁によるブレーキ液の変位により修正するように、さもなければブレーキシステムの電気機械式ブレーキ倍力装置を用いて修正するように構成されていてもよい。
【0007】
制御装置の更なる有利な実施態様では、測定された実測予圧が、予め設定されている目標予圧よりも小さいか、もしくは少なくとも予め設定された最小差だけ予め設定されている目標予圧よりも小さく、且つブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室内に中間貯留されているブレーキ液の体積がゼロでないことはないことを電子機構が検知するか、もしくは試問した情報から読み取る場合に限り、または、測定された実測予圧が、予め設定されている目標予圧よりも大きいか、もしくは少なくとも予め設定された最小差だけ予め設定されている目標予圧よりも大きい場合に限り、電子機構はさらに次のように構成および/またはプログラミングされ、すなわち電気機械式ブレーキ倍力装置の予め設定されている圧力・距離特性曲線の少なくとも1つの特性値を、少なくとも測定された実測予圧と予め設定されている目標予圧とを考慮して新たに設定するように、構成および/またはプログラミングされている。したがって、ここで述べている制御装置の実施態様は、測定された実測予圧と所望の目標予圧とのずれが電気機械式ブレーキ倍力装置に対し予め設定されている圧力・距離特性曲線における「誤差」に実際にいつの時点で依拠しているのかを合目的に検知して、場合によっては予め設定されている圧力・距離特性曲線の少なくとも1つの特性値を新たに設定することにより「誤差」を修正するために適している。このようにして、電気機械式ブレーキ倍力装置の「修正された」圧力・距離特性曲線により実施される電気機械式ブレーキ倍力装置の起動の信頼性を改善させることができる。
【0008】
制御装置の有利な更なる構成として、測定された実測予圧が、予め設定されている目標予圧とは異なっているか、または少なくとも予め設定された最小差だけ異なっている場合に限り、且つブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室内に中間貯留されているブレーキ液の体積がゼロでないことはないこと、および/またはブレーキシステムの車輪排出弁が開いていないことを電子機構が検知するか、または試問した情報から読み取る場合に限り、電子機構はさらに次のように構成および/またはプログラミングされていてもよく、すなわち少なくとも1つの目標量を、少なくとも測定された実測予圧と予め設定されている目標予圧とを考慮して新たに設定し、電気機械式ブレーキ倍力装置を、少なくとも1つの新たに設定した目標量を考慮してもう一度起動させるように、構成および/またはプログラミングされていてもよい。好ましくは、少なくとも1つの目標量の新たな設定は、少なくとも1つの新たに設定した特性値を持つ「修正した」圧力・距離特性曲線を補助的に考慮して行う。以下の説明により明らかなように、所望の目標予圧への実測予圧のこのような修正/調整は、ドライバーにとって優れたブレーキ快適性を維持して実施可能である。
【0009】
前述した利点は、ブレーキシステムのブレーキマスタシリンダの上流側に支持可能または支持され、対応する制御装置を備えて成る、車両のブレーキシステムのための電気機械式ブレーキ倍力装置においても保証されている。
【0010】
対応する制御装置および協働する電気機械式ブレーキ倍力装置またはこの種の電気機械式ブレーキ倍力装置と、それぞれの電気機械式ブレーキ倍力装置の上流側に支持されているブレーキマスタシリンダと、少なくとも、少なくとも1つの貯留室および/または少なくとも1つの車輪排出弁とを備えた車両用ブレーキシステムも、上述の利点を保証する。
【0011】
さらに、車両のブレーキシステムの電気機械式ブレーキ倍力装置を作動させるための対応する方法を実施しても、上述の利点を提供する。なお、車両のブレーキシステムの電気機械式ブレーキ倍力装置を作動させる方法は、制御装置、電気機械式ブレーキ倍力装置および/またはブレーキシステムの上述した実施態様にしたがってさらに構成できることを明確に指摘しておく。
【0012】
次に、本発明の更なる構成および利点を、図面を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1a】車両のブレーキシステムの電気機械式ブレーキ倍力装置を作動させる方法の1実施形態を説明するためのフローチャートである。
【
図1b】車両のブレーキシステムの電気機械式ブレーキ倍力装置を作動させる方法の1実施形態を説明するための車両のブレーキシステムの部分図である。
【
図1c】車両のブレーキシステムの電気機械式ブレーキ倍力装置を作動させる方法の1実施形態を説明するための車両のブレーキシステムの部分図である。
【
図1d】車両のブレーキシステムの電気機械式ブレーキ倍力装置を作動させる方法の1実施形態を説明するための車両のブレーキシステムの部分図である。
【
図1e】車両のブレーキシステムの電気機械式ブレーキ倍力装置を作動させる方法の1実施形態を説明するための座標系である。
【
図1f】車両のブレーキシステムの電気機械式ブレーキ倍力装置を作動させる方法の1実施形態を説明するための座標系である。
【
図2】制御装置またはこれを備えて成るブレーキシステムの1実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1aないし
図1fは、車両のブレーキシステムの電気機械式ブレーキ倍力装置を作動させるための方法の1実施形態を説明するためのフローチャート、車両のブレーキシステムの部分図、および座標系を示している。
【0015】
なお、以下に説明する方法の実施可能性は、ブレーキシステムを備えた車両/自動車の特殊な車両タイプ/自動車タイプに限定されるものでないことを指摘しておく。
図1bないし
図1dに示したブレーキシステムの部分図も、説明のために例示したにすぎない。以下に説明する方法は、ブレーキマスタシリンダ10と、ブレーキマスタシリンダ10の上流側に支持されている(モータを備えた)電気機械式ブレーキ倍力装置12と、少なくとも1つの貯留室14ならびに/または少なくとも1つの車輪排出弁16aおよび16bとを備えたタイプのブレーキシステムであればいかなるタイプのブレーキシステムを用いても(ほぼ)実施可能である。この場合、さらに少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ20aと20bがそれぞれのブレーキシステムのブレーキマスタシリンダ10に適用可能であり/連結されている。前記少なくとも1つの貯留室14とは、ブレーキマスタシリンダ10に少なくとも1つの漏らし穴を介して連結されているブレーキ液リザーバ18(好ましくは充填用接続部材を備えている)のことを言っているのではない。前記少なくとも1つの車輪排出弁16aおよび16bとは、ブレーキ液をそれぞれ少なくとも部分的に開弁して設けられている車輪排出弁16aおよび16bを介して少なくとも1つの付設の車輪ブレーキシリンダ20aと20bから少なくとも1つの連結された貯留室14へ移送可能であるように、少なくとも1つの付設の車輪ブレーキシリンダ20aと20bを少なくとも1つの連結された貯留室14と結合させるためのそれぞれ1つの弁と理解すべきである。
【0016】
図1bないし
図1dに図示した、ブレーキシステムの図示の第1のブレーキ回路に、少なくとも1つの車輪吸込弁22aおよび22bと、切換え弁24と、高圧開閉弁26と、ポンプモータ30を備えた少なくとも1つのポンプ28と、スロットル機構32と、予圧センサ34と、逆止弁36とを備えさせることは、単にオプションにすぎない。選択的に、ブレーキシステムの図示していない第2のブレーキ回路は、第1のブレーキ回路に対応するように、または、第1のブレーキ回路とは異なるように形成されていてよい。
【0017】
方法ステップS1では、電気機械式ブレーキ倍力装置12の目標作動モードに関する少なくとも1つの目標量を、少なくとも、予め設定した目標予圧ptargetと、電気機械式ブレーキ倍力装置12の予め設定した圧力・距離特性曲線kstandardとを考慮して、設定する。前記少なくとも1つの目標量として、たとえば電気機械式ブレーキ倍力装置12のモータに供給すべき目標電流強さおよび/またはモータの目標通電時間を方法ステップS1において設定することができる。
【0018】
目標予圧ptargetは、好ましくは車両の速度制御装置によって予め設定されている。目標予圧ptargetは、車両の要求される目標減速度を用いて、および/または、車両に作用すべき目標ブレーキ力を用いて、(間接的に)速度制御装置によって予め設定されていてもよい。この事例では、目標予圧ptargetは、その都度速度制御装置によって要求された量を考慮して設定される。速度制御装置とは、ブレーキシステムを用いて発生させるべき少なくとも1つの車両減速度を予め設定するための自動装置と理解してよい。速度制御装置はたとえば車間距離クルーズコントロール(特にACCシステム、アダプティブクルーズコントロールのような)、緊急ブレーキ装置、および/または、車両を自律的に運転させるための自動装置であってよい。有利な態様では、目標予圧ptargetは、ブレーキマスタシリンダ10の上流側に支持されているブレーキ操作要素38がその非操作位置にあるときに、速度制御装置によって要求され、ブレーキ操作要素は、当該ブレーキ操作要素38の操作を通じてドライバーによってその非操作位置から調整可能である。ブレーキ操作要素38とは、たとえばブレーキペダル38と理解してよい。
【0019】
圧力・距離特性曲線kstandardとは、電気機械式ブレーキ倍力装置12に対し予め設定される特性曲線であって、この特性曲線が電気機械式ブレーキ倍力装置12の実際に存在している圧力・距離特性に対応していると仮定されるような特性曲線と理解すべきである。圧力・距離特性曲線kstandardは、特に、(もっぱら)電気機械式ブレーキ倍力装置12の作動により発生する予圧評価値の、電気機械式ブレーキ倍力装置12の位置調整可能なピストンの位置調整距離xに依存する関数であってよい。この事例において、電気機械式ブレーキ倍力装置12の実際に存在する圧力・距離特性が圧力・距離特性曲線kstandardに対応している限りにおいては、電気機械式ブレーキ倍力装置12の位置調整可能なピストンの位置調整後の目標予圧ptargetは、少なくともブレーキシステムのブレーキマスタシリンダ10内においては、目標予圧ptargetに相当する位置調整距離xだけ前にある。電気機械式ブレーキ倍力装置12の位置調整可能なピストンとは、たとえば出力棒と理解してよい。
【0020】
続いての方法ステップS2では、少なくとも1つの設定した目標量を考慮して電気機械式ブレーキ倍力装置12を起動させる。たとえば、電気機械式ブレーキ倍力装置12のモータを、設定した目標電流強さに対応する電流強さで、目標通電時間に対応する時間で通電させる。
【0021】
ここで述べている方法の実施形態では、方法ステップS2と同時にさらに、
図1bに図示されているオプションの方法ステップS3を実施する。起動した電気機械式ブレーキ倍力装置12によりブレーキマスタシリンダ10からブレーキ液が押し出されるにもかかわらず、少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ20aおよび20bでのブレーキ圧増圧を阻止するため、方法ステップS3として、第1のブレーキ回路の第1の車輪ブレーキシリンダ20aの上流側に配置された第1の車輪吸込弁22aと、第1の車輪ブレーキシリンダ20aの下流側に配置された第1の車輪排出弁16aとを、それらのそれぞれの開弁状態に制御/保持させ、その結果ブレーキマスタシリンダ10から押し出されたブレーキ液を、第1の車輪吸込弁22aと第1の車輪排出弁16aとを介して、少なくとも1つの下流側に配置された貯留室14内へ移動させる。この限りにおいては、第1のブレーキ回路の第2の車輪ブレーキシリンダ20bの上流側に配置される第2の車輪吸込弁22bと、第2の車輪ブレーキシリンダ20bの下流側に配置される第2の車輪排出弁16bとを、方法ステップS3の間、それらの閉弁状態に制御/保持させてよい(図示していない第2のブレーキ回路に対しても、同様に方法ステップS3を実施してよい)。ブレーキマスタシリンダ10から押し出されたブレーキ液を、
図1bに図示したように少なくとも1つの貯留室14内で中間貯留することにより、車両を復熱減速させるための車両の少なくとも1つの(図示していない)電動機を、車両をオーバーブレーキさせずに、車両の運動エネルギーを電気エネルギーへ変換して活用することができる。このようにして、特に、車両を(ほぼ)少なくとも1つの電動機だけで減速させるようにした車両の純復熱式/純回生式減速が可能である。
【0022】
図1cは、更なるオプションの方法ステップS4を示すもので、これを実施することにより、少なくとも第1のブレーキ回路の第2の車輪ブレーキシリンダ20bにおいてブレーキ圧増圧を生じさせる。このため、起動した電気機械式ブレーキ倍力装置12によりブレーキマスタシリンダ10から引き続きブレーキ液を押し出している間に、第2の車輪吸込弁22bをその開弁状態に制御、保持させ、加えて第1の車輪排出弁16aが開いた状態にあるときに第1の車輪吸込弁22aを開閉することにより、第2の車輪ブレーキシリンダ20b内で望ましいブレーキ圧を調整する(図示していない第2のブレーキ回路に対しても、同様に方法ステップS4を実施してよい)。方法ステップS4により、(車両をオーバーブレーキさせずに)車両を部分復熱式に/部分回生式に減速させることによって、復熱式制動のために使用される少なくとも1つの電動機の適用可能性がなくなることを補償することができる。
【0023】
方法ステップS4の間に、以下でより詳細に述べる方法ステップS6ないしS11を実施することができる。わかりやすくするため、方法ステップS6ないしS11の説明は後で行う。
【0024】
少なくとも1つの電動機を用いても車両の部分復熱式減速を生じさせることができない場合には、たとえば車両の少なくとも1つのエネルギー蓄積ユニットが完全に充電されているために、および/または、車両の現時点での速度が少なくとも1つの電動機の使用可能性のために部分復熱式減速に必要な最小速度を下回っているがために、車両の部分復熱式減速を生じさせることができない場合には、
図1dに図示したオプションの方法ステップS5を実施することができる。方法ステップS5として、少なくとも第1のブレーキ回路の少なくとも1つの車輪吸込弁22aと22bをその開弁状態に制御/保持させ、他方同時に、少なくとも第1のブレーキ回路の少なくとも1つの車輪排出弁16aと16bをその閉弁状態に制御/保持させる。同時に、少なくとも第1のブレーキ回路の少なくとも1つのポンプ28を用いてブレーキ液を少なくとも1つの連結された貯留室14から少なくとも第1のブレーキ回路の少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ20aおよび20b内へ送り込む(図示していない第2のブレーキ回路に対しても、同様に方法ステップS5を実施してよい)。方法ステップS5は、ブレーキマスタシリンダ10から押し出されたブレーキ液が少なくとも部分的に第1のブレーキ回路の少なくとも1つのポンプ28により少なくとも1つの連結された貯留室14から少なくとも第1のブレーキ回路の少なくとも1つの車輪ブレーキシリンダ20aおよび20b内へ送り込まれていることが想定されるまでの間、実施される(ブレーキマスタシリンダ10から押し出されたブレーキ液を再び完全に送り戻す必要はない)。
【0025】
遅くとも方法ステップS1ないしS5を実施した後、方法ステップS6として、少なくともブレーキシステムのブレーキマスタシリンダ10内にある実測予圧pmeasuredを測定する。次に、方法ステップS7で、測定した実測予圧pmeasuredを、予め設定した目標予圧ptargetと比較する。測定した実測予圧pmeasuredと予め設定した目標予圧ptargetとが(実質的に)一致していれば、方法を終了させる。
【0026】
測定した実測予圧pmeasuredが予め設定した目標予圧ptargetと異なっているか、または少なくとも予め設定された最小差だけずれている場合に限り、ブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室14内に中間貯留されているブレーキ液の体積がゼロでないかどうかを調べ、および/または、ブレーキシステムの少なくとも1つの車輪排出弁16aと16bが開いているかどうかを調べる(開いている車輪排出弁16aと16bとは、部分的に開いている車輪排出弁16aと16bであると理解してもよいし、完全に開いている車輪排出弁16aと16bであると理解してもよい)。次の説明により明らかであるように、このようにして、測定した実測予圧pmeasuredと予め設定した目標予圧ptargetとの確定したずれが、方法ステップS1を実施するために使用した圧力・距離特性曲線kstandardと電気機械式ブレーキ倍力装置12の実際に存在している圧力・距離特性との不十分な一致に基づいているのか、それとも(実質的に)他のエラー原因に基づいているのかどうかを、信頼性をもって調べることができる。したがって、ここで述べている方法は、測定した実測予圧pmeasuredと予め設定した目標予圧ptargetとのずれの確認に従った信頼性の高い故障診断を可能にする。
【0027】
ここで説明している方法の実施形態では、測定した実測予圧pmeasuredが予め設定した目標予圧ptargetよりも小さいか、または少なくとも予め設定された最小差だけ予め設定した目標予圧ptargetよりも小さい場合に限り、方法ステップS8を実施する。方法ステップS8として、ブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室14内に中間貯留されているブレーキ液の体積が(まだ)ゼロでないかどうかを調べる。このようにして、測定した実測予圧pmeasuredと予め設定した目標予圧ptargetとのずれが、前もって実施した方法ステップS3ないしS5における圧力調整の不正確さによって発生したものか、或いは、方法ステップS1を実施するために使用した圧力・距離特性曲線kstandardと電気機械式ブレーキ倍力装置12の実際に存在している圧力・距離特性との不十分な一致によって発生したものなのかを区別することができる。
【0028】
ブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室14内にまだ存在するブレーキ液の体積がゼロでないかどうかを確認するため、ブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室14内に実際にまだあるブレーキ液の体積の評価を実施することができる。択一的にまたは補完的に、たとえば上述の方法ステップS5を実施するために最後に実施したブレーキシステムの少なくとも1つのポンプ28の作動の間に記録した時間的な圧力増大に関する測定曲線を、ブレーキシステムの少なくとも1つのポンプ28のそれぞれのポンプ速度と、同時に行われる電気機械式ブレーキ倍力装置12の作動とを考慮して評価することができる。測定曲線により、時間的な圧力増大がそれぞれのポンプ速度およびブレーキ操作要素38の同時操作を考慮した場合よりも(著しく)低いと予想される場合に限り、ブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室14内に中間貯留されているブレーキ液の体積がゼロでないことから確実に出発することができる。
【0029】
方法ステップS8において、ブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室14内にあるブレーキ液の体積が(高い確率で)まだゼロでないことが確定されると、測定した実測予圧p
measuredと予め設定した目標予圧p
targetとの確定したずれが、(実質的に)方法ステップS1を実施するために使用した圧力・距離特性曲線k
standardと電気機械式ブレーキ倍力装置12の実際に存在している圧力・距離特性との不十分な一致に基づいているものでないことから確実に出発することができる。それ故、方法ステップS8においてブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室14内のブレーキ液の体積がゼロでないことが確定される事例では、次の方法ステップS9として、少なくとも第1のブレーキ回路の少なくとも1つのポンプ28をもう一度/引き続き作動させる。したがって、測定した実測予圧p
measuredと所望の目標予圧p
targetとのずれは、少なくとも第1のブレーキ回路の少なくとも1つのポンプ28により発生する少なくとも1つの貯留室14の汲み出しによって解消させることができる。方法ステップS9を実施した後、オプションの態様では、見やすくするために
図1aには反復法は図示していないが、方法ステップS7をもう一度実施することができる。
【0030】
しかしながら、方法ステップS8において、測定した実測予圧pmeasuredが予め設定した目標予圧ptargetよりも小さいにもかかわらず、または、予め設定した目標予圧ptargetよりも少なくとも予め設定された最小差だけ小さいにもかかわらず、ブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室14内に中間貯留されているブレーキ液の体積がゼロでないことはないと確定されるならば、測定した実測予圧pmeasuredと目標予圧ptargetとのずれが、予め設定した圧力・距離特性曲線kstandardと電気機械式ブレーキ倍力装置12の実際に存在している圧力・距離特性との不十分な一致に基づいていることが立証されたことになる。方法ステップS8により、ブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室14内のブレーキ液に中間貯留されている体積がゼロでないことはないと確実に立証されたならば、方法ステップS10とS11のうちの少なくとも1つを実施する。
【0031】
方法ステップS10として、電気機械式ブレーキ倍力装置12の予め設定した圧力・距離特性曲線k
standardの少なくとも1つの特性値を、少なくとも測定した実測予圧p
measuredと予め設定した目標予圧p
targetとを考慮して新たに確定する。これは、
図1eの座標系を用いて例示されている。
【0032】
図1eの座標系では、横軸は電気機械式ブレーキ倍力装置12の位置調整可能なピストンの出発位置からの位置調整距離xを(ミリメートル)で表し、他方縦軸により圧力値pが(バール)で表示されている。
【0033】
予め設定される圧力・距離特性曲線k
standradに加えて、さらに、選択可能な複数の特性曲線kの選択量が
図1eの座標系に記入されている。
図1eの座標系を用いると、予め設定した目標予圧p
targetと測定した実測予圧p
measuredとを用いて、選択可能な複数の特性曲線の中から、電気機械式ブレーキ倍力装置12の現時点での圧力・距離特性を最も信頼性をもって表す特性曲線k
1を特定可能であることが分かる。適正に選択した特性曲線k
1は、たとえば、電気機械式ブレーキ倍力装置12の位置調整可能なピストンの現時点での位置調整距離x
1に対し測定した実測予圧p
measured-1が(ほぼ)選択した特性曲線k
1上にある(p
measured-1=k
1(x
1))ことで識別がつく。これに対し、電気機械式ブレーキ倍力装置12の位置調整可能なピストンの現時点での位置調整距離x
1に対し予め設定した目標予圧p
target-1だけが予め設定した圧力・距離特性曲線k
standard上にある。特に、選択した特性曲線k
1を次に新たな圧力・距離特性曲線k
standardとして設定して、メモリユニットに記憶させることができる。
【0034】
方法ステップS10に加えて、または、これとは択一的に、方法ステップS11として、少なくとも1つの目標量を、少なくとも測定した実測予圧p
measuredと予め設定される目標予圧p
targetとを考慮して新たに設定し、次に電気機械式ブレーキ倍力装置12を、少なくとも1つの新たに設定した目標量を考慮してもう一度起動させることもできる。このようにして、ブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室14が空であるにもかかわらず(或いは、以下の説明により明らかになるように、車輪ブレーキシリンダ20aと20bが閉じている場合でも)、方法ステップS11により生じる電気機械式ブレーキ倍力装置12の作動により、十分な量のブレーキ液をブレーキマスタシリンダ10から(或いは、ブレーキマスタシリンダ10内へ)移送して、ブレーキシステムの少なくとも一部の容積部において所望の目標予圧p
targetを確保することを保証できる。これは、
図1eの座標系において矢印40により図示されている。
【0035】
好ましくは、方法ステップS11を実施するために、事前に終了した方法ステップS10により「修正した」電気機械式ブレーキ倍力装置12の特性曲線k1を、前記少なくとも1つの目標量を新たに設定するためにも使用する。この事例では、「修正した」特性曲線k1は、(ほぼ)電気機械式ブレーキ倍力装置12の実際の圧力・距離特性に対応しているので、方法ステップS11を実施する際の電気機械式ブレーキ倍力装置12の最適な作動が保証されている。ドライバーは、減速しても、電気機械式ブレーキ倍力装置12の位置調整可能なピストンの、位置x1から新たな位置x1+δ1への位置調整距離x1の上昇には気づかず/ほとんど気づかない。
【0036】
ここで説明している方法の実施形態では、さらに、測定した実測予圧pmeasuredが予め設定した目標予圧ptargetよりも大きいか、または少なくとも予め設定された最小差だけ予め設定した目標予圧ptargetよりも大きい場合に限り、方法ステップS12において、ブレーキシステムの少なくとも1つの車輪排出弁16aと16bが開いているかどうかを検出する。ブレーキシステムの車輪排出弁16aと16bの少なくとも1つが少なくとも部分的に開いていることが方法ステップS12で確定されるならば、測定した実測予圧pmeasuredと所望の目標予圧ptargetとのずれは、電気機械式ブレーキ倍力装置12の新たな作動なしでも修正可能であることから確実に出発することができる。このため、方法ステップS13として、測定した実測予圧pmeasuredと所望の目標予圧ptargetとのずれに相当するブレーキ液体積を、少なくとも1つの少なくとも部分的に開いている車輪排出弁16aと16bを介して下流側に配置した貯留室14内へ移送させる。
【0037】
しかしながら、方法ステップS12において、ブレーキシステムの車輪排出弁16aと16bが開いていないことが確定されるならば、すでに上述した方法ステップS11を実施する。
【0038】
方法ステップS11に加えて、測定した実測予圧p
measuredが予め設定した目標予圧p
targetよりも大きい場合にも、または、少なくとも予め設定された最小差だけ予め設定した目標予圧p
targetよりも大きい場合にも、方法ステップS10を実施することができる。したがって、方法ステップS10は方法ステップS11とともに、または方法ステップS13とともに実施してよい。これは、
図1fに図示されている。
【0039】
図1fの座標系では、横軸は電気機械式ブレーキ倍力装置12の位置調整可能なピストンの出発位置からの位置調整距離xを(ミリメートル)で表し、他方縦軸により圧力値pが(バール)で表示されている。
【0040】
図1fの座標系においても、予め設定される圧力・距離特性曲線k
standradと、選択可能な複数の特性曲線kの選択量とが記入されている。加えて、
図1fの座標系には、選択可能な特性曲線のうち、電気機械式ブレーキ倍力装置12の現時点での圧力・距離特性を最も信頼性をもって表わしている特性曲線k
2の、予め設定される目標予圧p
targetと測定した実測予圧p
measuredとを用いた選択が図示されている。適正に選択した特性曲線k
2は、特に、電気機械式ブレーキ倍力装置12の位置調整可能なピストンの現時点での位置調整距離x
2に対し測定した実測予圧p
measured-2が(ほぼ)選択した特性曲線k
2上にある(p
measured-2=k
2(x
2))ことで識別がつく。これに対し、電気機械式ブレーキ倍力装置12の位置調整可能なピストンの現時点での位置調整距離x
2に対し予め設定した目標予圧p
target-2だけが予め設定した圧力・距離特性曲線k
standard上にある。次に、選択した特性曲線k
2を新たな圧力・距離特性曲線k
standardとして設定して、メモリユニットに記憶させることができる。したがって、方法ステップS10を実施することにより、電気機械式ブレーキ倍力装置12の実際の圧力・距離特性の「学習」が可能であり、或いは、電気機械式ブレーキ倍力装置12の圧力・距離特性の「新たな学習」が可能であり、これによって電気機械式ブレーキ倍力装置12およびこれを備えたブレーキシステムの他の構成要素の製造公差および/または老化作用を修正可能である。
【0041】
矢印40により、
図1fの座標系には方法ステップS11も図示されている。方法ステップS11により、電気機械式ブレーキ倍力装置12の作動が生じることによって、ブレーキ液はブレーキマスタシリンダ10内へ移送される。好ましくは、方法ステップS11により所望の目標予圧p
targetまでの予圧減少を達成させる。方法ステップS11を実施する際、有利な態様では、測定した実測予圧p
measuredと、予め設定した目標予圧p
targetと、事前に終了した方法ステップS10により「修正した」電気機械式ブレーキ倍力装置12の特性曲線k
2とを考慮して、少なくとも1つの目標量の新たな設定を行う。この事例でも、ドライバーは、電気機械式ブレーキ倍力装置の位置調整可能なピストンの位置調整距離xが位置x
2から新たな位置x
2-δ
2へ減少したことに気づかない。なお、方法ステップS11は常に比較的静かに実施可能であり、その結果優れたNVH(Noise Vibration Harshness)整合性が保証されている。
【0042】
本方法の更なる構成として、ブレーキシステムのスチフネス係数(Stiffness Factor)SFを、ここに説明している方法を用いて学習することも可能であり、この場合スチフネス係数SFは数式1によって定義されている。
【0043】
【0044】
スチフネス係数SFを確定するために、数式2を利用することができる。
【0045】
【0046】
図2は、制御装置またはこれを備えて成るブレーキシステムの1実施形態を図示したものである。
【0047】
以下で説明する制御装置42の適用可能性は、特別なタイプのブレーキシステムにも、制御装置42を備えて成る車両/自動車の特殊な車両タイプ/自動車タイプにも限定されるものではない。したがって、
図2に図示したブレーキシステムをあくまでも一例として説明する。
【0048】
制御装置42はメモリユニット44を有し、メモリユニットには、制御装置42によって起動可能な電気機械式ブレーキ倍力装置の圧力・距離特性曲線kstandardが記憶されている。さらに、制御装置42は電子機構46を有し、電子機構は、少なくとも当該電子機構46に予め設定されている目標予圧ptargetと電気機械式ブレーキ倍力装置12の圧力・距離特性曲線kstandardとを考慮して、電気機械式ブレーキ倍力装置12の目標作動モードに関する少なくとも1つの目標量を設定し、この少なくとも1つの設定した目標量を考慮して電気機械式ブレーキ倍力装置12を少なくとも1つの制御信号12sにより起動させるために構成および/またはプログラミングされている。少なくとも1つの目標量の例はすでに上述した。目標予圧ptargetは、たとえば制御装置42の、速度制御装置48として形成されている他の従属ユニット48によって設定されていてもよい。この種の速度制御装置の例はすでに上述した。しかしながら、択一的に、制御装置42/その電子機構46は別個に形成される速度制御装置と協働するように構成されていてもよい。
【0049】
電子機構46は、加えて、測定されて電子機構46に提供され、少なくとも電気機械式ブレーキ倍力装置12の下流側に配置されているブレーキシステムのブレーキマスタシリンダ10内にある実測予圧pmeasuredを用いて、測定したこの実測予圧pmeasuredが予め設定した目標予圧ptargetと異なっているかどうか、または、少なくとも予め設定された最小差だけ異なっているかどうかを検知するために構成および/またはプログラミングされている。場合によっては、電子機構46は、ブレーキシステムの少なくとも1つの貯留室14内に中間貯留されているブレーキ液の体積がゼロでないかどうかを試問もしくは検出するために、および/または、ブレーキシステムの少なくとも1つの車輪排出弁16aと16bが開いているかどうかを(車輪排出弁16aと16bが開いているとは、部分的に開いている車輪排出弁16aと16bと理解してよいし、完全に開いている車輪排出弁16aと16bと理解してもよい)試問もしくは検出するために構成および/またはプログラミングされていてもよい。これにより、ここで説明している制御装置42もすでに上述した利点を生じさせる。
【0050】
制御装置42は、特に、上述した方法を実施するために構成されていてよい。ここではその方法ステップを新たに説明することは省略する。制御装置42は、電気機械式ブレーキ倍力装置12の従属ユニットであるか、或いは、電気機械式ブレーキ倍力装置とは別個にブレーキシステムに取り付けられていてよい。
【符号の説明】
【0051】
10 ブレーキマスタシリンダ
12 電気機械式ブレーキ倍力装置
14 貯留室
16a,16b 車輪排出弁
42 制御装置
44 メモリユニット
46 電子機構
kstandard 圧力・距離特性曲線
pmeasured 実測予圧
ptarget 目標予圧
【外国語明細書】