(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022031291
(43)【公開日】2022-02-18
(54)【発明の名称】モレキュラーシーブSSZ-91、SSZ-91を調製するための方法、及びSSZ-91の使用
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20220210BHJP
B01J 29/74 20060101ALI20220210BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/74 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021191308
(22)【出願日】2021-11-25
(62)【分割の表示】P 2018510769の分割
【原出願日】2016-08-11
(31)【優先権主張番号】14/837,071
(32)【優先日】2015-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/837,087
(32)【優先日】2015-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/837,094
(32)【優先日】2015-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/837,108
(32)【優先日】2015-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オホ、アデオラ フローレンス
(72)【発明者】
【氏名】シエ、ダン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、イーファ
(72)【発明者】
【氏名】リー、クアン - ダオ
(57)【要約】
【課題】SSZ-91と命名される新たな結晶性モレキュラーシーブのファミリー、同様にSSZ-91を製造する方法及びSSZ-91の使用を開示する。
【解決手段】モレキュラーシーブSSZ-91は、ZSM-48ファミリーのモレキュラーシーブに属するふるいに構造的に類似しており、(1)低い欠陥度、(2)8を超えるアスペクト比を有する従来のZSM-48材料に比較して水素化分解を抑制する低いアスペクト比を有し、(3)実質的に純相であると特徴付けられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ZSM-48ファミリーのゼオライトに属するモレキュラーシーブであって、
40~200の酸化ケイ素対酸化アルミニウムのモル比、
生成物中に存在する総ZSM-48タイプの材料の少なくとも70%のポリタイプ6、及び
総生成物の0~3.5重量%の間の量のさらなるEUOタイプモレキュラーシーブ相
を含み、
1~8の間の平均アスペクト比を集合的に有するクリスタリットを含む多結晶凝集体と特徴付けられる形態を有する
上記モレキュラーシーブ。
【請求項2】
その合成されたままの形態において、実質的に以下の表に示されたX線回折パターンを有する
【表1】
請求項1に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項3】
70~160の酸化ケイ素対酸化アルミニウムのモル比を有する、請求項1又は2に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項4】
80~140の酸化ケイ素対酸化アルミニウムのモル比を有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項5】
生成物中に存在する総ZSM-48タイプ材料の少なくとも80%のポリタイプ6を含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項6】
0.1~2重量%の間のEU-1を含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項7】
クリスタリットが、1~5の間の平均アスペクト比を集合的に有する、請求項1から6までのいずれか一項に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項8】
生成物中に存在する総ZSM-48タイプ材料の少なくとも90%のポリタイプ6を含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項9】
クリスタリットが、1~3の間の平均アスペクト比を集合的に有する、請求項1から8までのいずれか一項に記載のモレキュラーシーブ。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載のモレキュラーシーブを調製する方法であって、少なくとも1種のケイ素供給源、少なくとも1種のアルミニウム供給源、周期表の第1族及び第2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、水酸化物イオン、ヘキサメトニウムカチオン、並びに水を含有する反応混合物を調製するステップと;前記反応混合物を、モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供するステップとを含む上記方法。
【請求項11】
モレキュラーシーブが、モル比に関して以下:
【表2】
[表中、Mは周期表の第1族及び第2族からの元素からなる群から選択され;Qはヘキサメトニウムカチオンである]
を含む反応混合物から調製される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
モレキュラーシーブが、モル比に関して以下:
【表3】
[表中、Mは周期表の第1族及び第2族からの元素からなる群から選択され;Qはヘキサメトニウムカチオンである]
を含む反応混合物から調製される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
炭化水素を転化するための方法であって、炭化水素転化条件下において炭化水素系供給材料を、請求項1から9までのいずれか一項に記載のモレキュラーシーブを含む触媒と接触させるステップを含む上記方法。
【請求項14】
炭化水素転化条件下において炭化水素を転化するための、請求項1から9までのいずれか一項に記載のモレキュラーシーブの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、すべてが2015年8月27日に出願され、これらの全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願第14/837,071号、同第14/837,087号、同第14/837,108号、及び同第14/837,094号に関連する。
【0002】
本明細書に記載されているものは、SSZ-91と命名される新たなファミリーの結晶性モレキュラーシーブ、SSZ-91を調製するための方法及びSSZ-91の使用である。
【背景技術】
【0003】
結晶性モレキュラーシーブ及びモレキュラーシーブは、その特有のふるい特性、並びにその触媒特性のために、炭化水素転化、ガス乾燥及び分離等の用途において特に有用である。多数の様々な結晶性モレキュラーシーブが開示されているが、ガス分離及び乾燥、炭化水素及び化学的転化、並びに他の用途のための、望ましい特性を有する新たなモレキュラーシーブが継続的に求められている。新たなモレキュラーシーブは、新規な内部細孔構造を含有し、これらの工程において向上した選択性を提供することができる。
【0004】
モレキュラーシーブは、個別のX線回折パターンによって示される個別の結晶構造を有する。結晶構造は、異なる種に特徴的な空洞及び細孔を規定する。
【0005】
モレキュラーシーブは、ゼオライト命名法に関するIUPAC委員会の規則に従って、国際ゼオライト協会の構造委員会によって分類される。この分類に従って、構造が確立されている骨格タイプゼオライト及び他の結晶性微多孔質モレキュラーシーブは、3文字のコードが割り当てられ、「ゼオライト骨格タイプのアトラス(Atlas of Zeolite Framework Types)」第6次改訂版、Elsevier(2007)、及び国際ゼオライト協会のウェブサイト(http://www.iza-online.org)上のモレキュラーシーブ構造のデータベースに記載される。
【0006】
モレキュラーシーブの構造は、秩序立っている又は無秩序であり得る。秩序立った構造を有するモレキュラーシーブは、3次元すべてにおいて周期的に秩序立っている周期的構成単位(PerBUs)を有する。構造的に無秩序である構造は、3未満の次元(即ち、2、1又は0次元において)周期的な秩序化を示す。無秩序は、PerBUsが異なった方法で接続する場合に、又は同じ結晶内で2種以上のPerBUsが相互成長する場合に起こる。PerBUsから創り出された結晶構造は、周期的な秩序化が3次元すべてにおいて達成される場合、端成分構造と呼ばれる。
【0007】
無秩序である材料において、平面積層欠陥は、該材料が2次元の秩序化を含有する場合に起こる。平面欠陥は、材料の細孔系によって形成されたチャンネルを分断させる。表面近傍に位置する平面欠陥は、供給原料成分が細孔系の触媒的に活性な部分に接近するのを可能するためにその他の場合には必要な拡散経路を制限する。したがって、欠陥度が増大するにつれて、該材料の触媒活性は典型的には低減する。
【0008】
平面欠陥を有する結晶の場合、X線回折パターンの解釈には、積層無秩序の効果をシミュレートする能力が必要である。DIFFaXは、平面欠陥を含有する結晶からの強度を計算するための数学モデルに基づくコンピュータプログラムである。(M.M.J.Treacyら、Proceedings of the Royal Chemical Society、London、A(1991)、433巻、499~520頁)を参照されたい)。DIFFaXは、モレキュラーシーブの相互成長する相に対するXRD粉末パターンをシミュレートするための、国際ゼオライト協会によって選定され、そこから入手可能なシミュレーションプログラムである。(国際ゼオライト協会の構造委員会のために発行された、M.M.J.Treacy及びJ.B.Higgins、2001、第4版による、「ゼオライトに関するシミュレートされたXRD粉末パターンのコレクション(Collection of Simulated XRD Powder Patterns for Zeolites)」を参照されたい)。DIFFaXは、K.P.Lillerudらによって、「表面科学及び触媒作用に関する研究(Studies in Surface Science and Catarlsis)」1994、84巻、543~550頁に報告されたように、AEI、CHA及びKFIモレキュラーシーブの相互成長する相を理論的に研究するためにも使用されている。DIFFaXは、相互成長するモレキュラーシーブ等の平面欠陥を有する無秩序である結晶性材料を特徴付けるための、周知され確立された方法である。
【0009】
記号ZSM-48は、それぞれが1次元の10員環管状細孔系を有するものと特徴付けられる、無秩序である材料のファミリーを表す。細孔は、縮合四面体6員環構造の巻き上げられたハニカム様シートから形成され、細孔開孔部は、10個の四面体原子を含有する。ゼオライトEU-2、ZSM-30及びEU-11は、ZSM-48ファミリーのゼオライトに分類される。
【0010】
Lobo及びKoningsveldによれば、ZSM-48ファミリーのモレキュラーシーブは、9種のポリタイプからなる。(J.Am.Chem.Soc.2002、124、13222~13230を参照されたい)。これらの材料は、非常に類似しているが、同一ではないX線回折パターンを有する。Lobo及びKoningsveldの論文は、Chevron CorporationのDr.Alexander Kupermanによって提供された3種のZSM-48試料の彼らの分析を記載している。それぞれ試料A、B及びCと標識された3種の試料それぞれを、3種の異なる構造規定剤を用いて調製した。本明細書の以下の比較例2及び3は、Lobo及びKoningsveldの論文に記載されている試料A及びB対応している。
【0011】
Lobo及びKoningsveldの論文は、試料Aはポリタイプ6であり、試料Bは欠陥が生じたポリタイプ6であると記載している。該論文は、試料Aの形態が約20nmの直径及び約0.5μmの長さを有する針状の結晶からなるとさらに記載している。試料Bの形態は、約0.5μmの幅及び4~8μmの長さを有する長い、細い結晶からなるものであった。以下の比較例2及び3に示されるように、試料A及びBに対する走査電子顕微鏡画像は、
図3及び4において本明細書に示されている。
【0012】
Kirschhock及び共同研究者らは、純相ポリタイプ6の成功した合成を記載している。(Chem.Mater.2009、21、371~380を参照されたい)。その論文において、Kirschhock及び共同研究者らは、その純相なポリタイプ6材料(これを彼らはCOK-8と称している)は、相互接続する細孔の方向に沿って成長する、非常に大きな長さ/幅の比を有する長い針状の結晶(幅15~80nm;長さ0.5~4μm)からなる形態を有していると記載している。
【0013】
Kirschhockの論文に示されたように、ZSM-48ファミリーのモレキュラーシーブからのモレキュラーシーブは、10員環、1次元細孔構造からなり、ここで、相互接続した細孔によって形成されたチャンネルは、針状結晶の長軸に垂直に伸びている。したがって、チャンネル開口は、針状結晶の短端に位置する。これらの針状結晶の長さ対直径の比(アスペクト比としても知られている)が増加するにつれて、炭化水素供給材料のための拡散経路も増加する。拡散経路が増加するにつれて、チャンネル中の供給材料の滞留時間も増加する。より長い滞留時間は、供給材料の望ましくない水素化分解の増加を生じさせ、同時に選択性の低下も伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、公知のZSM-48モレキュラーシーブより低い程度の水素化分解を示すZSM-48モレキュラーシーブが現時点で求められている。また、純相である又は実質的に純相であり、構造内に低い無秩序度(低い欠陥度)を有するZSM-48モレキュラーシーブが継続的に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下に本明細書に記載されているものは、本明細書で「モレキュラーシーブSSZ-91」又は簡単に「SSZ-91」と称される、特有の特性を有する結晶性モレキュラーシーブのファミリーである。モレキュラーシーブSSZ-91は、ZSM-48ファミリーのゼオライトに属するふるいに構造的に類似しており、特徴は、(1)低い欠陥度、(2)8を超えるアスペクト比を有する従来のZSM-48材料に比較して、水素化分解を抑制する低アスペクト比を有し、(3)は、実質的に純相であることである。
【0016】
以下の実施例において示されるように、SSZ-91の3つの特性の特有の組合せ(低いアスペクト比、低いEU-1含量、高いポリタイプ6の組成)のいずれか1つが欠けたZSM-48材料は、不良な触媒性能を示す。
【0017】
一態様において、40~200の酸化ケイ素対酸化アルミニウムのモル比を有するであるモレキュラーシーブを提供する。その製造されたまま形態において、本明細書の表2のX線回折線形は、SSZ-91の指標となる。
【0018】
DIFFaXシミュレーションによって決定されるように、並びにLobo及びKoningsveldによってJ.Am.Chem.Soc.2012、124、13222~13230(ここで、無秩序は、3種の異なる欠陥確率によって調節される)に記載されたように、SSZ-91材料は、生成物中に存在する総ZSM-48タイプ材料の少なくとも70%のポリタイプ6で構成されている。「少なくとも70%」という語句には、構造中に他のZSM-48ポリタイプが存在しない、即ち、該材料は100%純相のポリタイプ6である場合が含まれることに留意するべきである。
【0019】
別の態様において、SSZ-91は、実質的に純相である。SSZ-91は、さらなるEUOタイプモレキュラーシーブ相を、総生成物の0~3.5重量%(を含めて)の間の量で含有する。
【0020】
モレキュラーシーブSSZ-91は、多結晶凝集体と特徴付けられる形態を有し、凝集体のそれぞれは、1~8(を含めて)の間の平均アスペクト比を集合的に有するクリスタリットで構成されているとして特徴付けられる。SSZ-91は、より高いアスペクト比を有するZSM-48材料より低い程度の水素化分解を示す。アスペクト比1は、理想的な最小値であり、この場合、長さ及び幅は同じである。
【0021】
別の態様において、結晶性材料を調製する方法であって、結晶化条件下において、(1)少なくとも1種の酸化ケイ素の供給源;(2)少なくとも1種の酸化アルミニウムの供給源;(3)周期表の第1族及び第2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源;(4)水酸化物イオン;並びに(5)ヘキサメトニウムカチオンを接触させることによる上記方法を提供する。
【0022】
さらに別の態様において、製造されたままの状態で表2のX線回折線形を有する結晶性材料を調製するための方法であって、
(a)(1)少なくとも1種の酸化ケイ素の供給源;(2)少なくとも1種の酸化アルミニウムの供給源;(3)周期表の第1族及び第2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源;(4)水酸化物イオン;(5)ヘキサメトニウムカチオン;並びに(6)水を含有する反応混合物を用意するステップと、
(b)該反応混合物をモレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件下に維持するステップと
による上記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】比較例1において調製された、合成されたままのモレキュラーシーブの粉末X線回折(XRD)パターンを示す図である。
【0024】
【
図2】比較例1において調製された、合成されたままのモレキュラーシーブの走査電子顕微鏡写真である。
【0025】
【
図3】比較例2において調製された、合成されたままのモレキュラーシーブの走査電子顕微鏡写真である。
【0026】
【
図4】比較例3において調製された、合成されたままのモレキュラーシーブの走査電子顕微鏡写真である。
【0027】
【
図5】例7において調製された、合成されたままのモレキュラーシーブSSZ-91の粉末XRDパターンを示す図である。
【0028】
【
図6】例7において調製された、合成されたままのモレキュラーシーブSSZ-91の走査電子顕微鏡写真である。
【0029】
【
図7】例8において調製された、合成されたままのモレキュラーシーブの走査電子顕微鏡写真である。
【0030】
【
図8】DIFFaXで作成したシミュレートしたいくつかのXRDパターンのプロット及び例8において調製された、合成されたままのモレキュラーシーブSSZ-91の粉末XRDパターンを示す図である。
【0031】
【
図9】DIFFaXで作成したシミュレートしたいくつかのXRDパターンのプロット及び例11において調製された、合成されたままのモレキュラーシーブの粉末XRDパターンを示す図である。
【0032】
【
図10】DIFFaXで作成したシミュレートしたいくつかのXRDパターンのプロット及び比較例1において調製された、合成されたままのモレキュラーシーブの粉末XRDパターンを示す図である。
【0033】
【
図11】例13において調製された、合成されたままのモレキュラーシーブの走査電子顕微鏡写真である。
【0034】
【
図12】DIFFaXで作成したシミュレートしたいくつかのXRDパターンのプロット及び例13において調製された、合成されたままのモレキュラーシーブの粉末XRDパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
導入
「活性供給源」という用語は、反応することができる形態の少なくとも1種の元素を供給することが可能であり、モレキュラーシーブ構造中に取り込まれる得る試薬又は前駆体材料を意味する。「供給源」及び「活性供給源」という用語は、本明細書では互換的に使用することができる。
【0036】
「モレキュラーシーブ」及び「ゼオライト」という用語は同義であり、(a)中間の及び(b)最終の又は目的のモレキュラーシーブ及び(1)直接合成又は(2)結晶化後処理(二次的修飾)によって生成されるモレキュラーシーブを含む。二次的合成技術は、ヘテロ原子格子置換又は他の技術によって、中間材料から目的の材料の合成を可能にする。例えば、アルミノケイ酸塩は、中間のホウケイ酸塩から、BからAlへの結晶化後ヘテロ原子格子置換によって合成することができる。このような技術は、例えば、C.Y.Chen及びStacey Zonesの2004年9月14日に発行された、米国特許第6,790,433号に記載されているように公知である。
【0037】
「*MREタイプモレキュラーシーブ」及び「EUOタイプモレキュラーシーブ」という用語には、「ゼオライト骨格タイプのアトラス(Atlas of Zeolite Framework Types)」、Ch.Baerlocher、L.B.McCusker及びD.H.Olson編、Elsevier、第6次改訂版、2007及び国際ゼオライト協会のウェブサイト(http://www.iza-online.org)上のゼオライト構造のデータベースに記載されているように、国際ゼオライト協会の骨格に割り当てられているすべてのモレキュラーシーブ及びそのアイソタイプが含まれる。
【0038】
「周期表」という用語は、2007年6月22日の日付のあるIUPAC元素の周期表のバージョンを表し、周期表の族に対するナンバリングの方式は、Chem.Eng.News、63(5)、26~27(1985)に記載されている通りである。
【0039】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的では、別の指示がなければ、本明細書及び特許請求の範囲に使用される量、百分率又は比率及び他の数値を表しているすべての数値は、すべての場合「約」という用語によって修飾されているものと理解される。したがって、逆の指示がなければ、以下の明細書及び付属の特許請求の範囲に示される数字のパラメーターは近似値であり、得ようとする所望の特性に応じて変化する場合がある。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」には、特別に及び明確に1つの指示物に限定されていなければ、複数の参照事項が含まれることに留意されたい。本明細書で使用される場合、「含む(include)」という用語及びその文法的変形は、非限定的なものであり、したがって、リストへの項目の列挙は、列挙される項目と置換される又はそれに追加され得る他の同様の項目を除外するものではない。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、その用語に続いて特定される要素又はステップを含むが、任意のこのような要素又はステップは網羅的ではなく、ある実施形態は、他の要素又はステップを含むことができることを意味する。
【0040】
別の指定がなければ、個々の成分又は成分の混合物が選択され得る、元素、材料又は他の成分の種類の詳述には、列挙された成分及びそれらの混合物のすべての可能な下位の一般的な組合せが含まれるものである。さらに、本明細書で提示されたすべての数値の範囲は、その上限及び下限値を含んでいる。
【0041】
特許性のある範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者なら思い付く他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、他の実施例が特許請求の範囲の字義通りの意味と相異しない構造要素を有する場合、又は他の実施例が特許請求の範囲の字義通りの意味とごくわずかな差異を有する等価の構造要素を含む場合は、本特許請求の範囲内にあるものである。本明細書と矛盾がない限りは、本明細書に参照されたすべての引用は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
反応混合物及び結晶化
SSZ-91の調製において、ZSM-48ファミリーのゼオライトからのモレキュラーシーブを合成するために選択する少なくとも1種の有機化合物は、構造規定剤(「SDA」)、結晶化テンプレートとしても知られている、として使用される。SSZ-91を製造するのに有用なSDAは、以下の構造(1)
【化1】
によって表される。
【0043】
SDAカチオンは、典型的には、モレキュラーシーブの形成に害を及ぼさない任意のアニオンであってもよいアニオンを伴う。アニオンの代表例には、水酸化物イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオン、及びハロゲン化物イオン、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオンが含まれる。一実施形態において、該アニオンは臭化物イオンである。
【0044】
一般に、SSZ-91は、
(a)(1)少なくとも1種の酸化ケイ素の供給源;(2)少なくとも1種の酸化アルミニウムの供給源;(3)周期表の第1族及び第2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源;(4)水酸化物イオン;(5)ヘキサメトニウムカチオン;並びに(6)水を含有する反応混合物を調性するステップと、
(b)該反応混合物をモレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件下に維持するステップと
によって調製される。
【0045】
モレキュラーシーブが形成される反応混合物の組成は、モル比に関して以下の表1において特定される。
【表1】
表中、
(1)Mは、周期表の第1族及び第2族からの元素からなる群から選択され、
(2)Qは、上記構造1によって表される構造規定剤である。
【0046】
ケイ素に対する本明細書で有用な供給源には、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、シリカヒドロゲル、ケイ酸、コロイド状シリカ、テトラ-アルキルオルトシリカート(例えば、テトラエチルオルトシリカート)、及び水酸化シリカが含まれる。
【0047】
アルミニウムに対する本明細書で有用な供給源には、アルミン酸塩、アルミナ、及びAlCl3、Al2(SO4)3、Al(OH)3等のアルミニウム化合物、カオリン粘土、並びに他のゼオライトが含まれる。酸化アルミニウムの供給源の一例は、LZ-210ゼオライト(Yゼオライトの一タイプ)である。
【0048】
本明細書に上で記載したように、本明細書に記載の各実施形態に対して、反応混合物は、周期表の第1族及び第2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源(本明細書でMと称される)を含有して形成され得る。1つの下位の実施形態において、反応混合物は、周期表の第1族からの元素の供給源を用いて形成される。別の下位の実施形態において、反応混合物は、ナトリウム(Na)の供給源を用いて形成される。結晶化工程に害を及ぼさない任意のM含有化合物が適している。このような第1族及び第2族元素のための供給源には、それらの酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩、クエン酸塩及び酢酸塩が含まれる。
【0049】
本明細書に記載の各実施形態に対して、モレキュラーシーブ反応混合物が2種以上の供給源によって供給されてもよい。同様に、2種以上の反応成分が1種の供給源によって供給されてもよい。
【0050】
反応混合物は、バッチ式で又は連続的に調製することができる。本明細書に記載のモレキュラーシーブの結晶サイズ、形態及び結晶化時間は、反応混合物の性質及び結晶化条件によって変動し得る。
【0051】
反応混合物は、モレキュラーシーブの結晶が形成されるまで、高温に維持される。一般に、ゼオライト熱水結晶化は、加圧下で通常実施され、反応混合物が自己発生圧力に供され、場合により撹拌を受けるように、通常オートクレーブ中で125℃~200℃の間の温度で1~18時間を超えて実施される。
【0052】
本明細書中上記のように、SSZ-91は実質的に純相の材料である。本明細書で使用される場合、「実質的に純相の材料」という用語は、該材料が、ZSM-48ファミリーのゼオライトに属するもの以外のゼオライト相を完全に含まない、又は該材料の選択性への、測定可能な効果を有しない若しくは材料の欠点を付与しない量で存在することを意味する。SSZ-91と共結晶する2種の共通相はEU-1等のEUOタイプモレキュラーシーブ、並びにマガディアイト及びケニヤアイトである。これらの追加の相は、分離相として存在してもよく、又はSSZ-91の相と相互成長してもよい。以下の実施例において示すように、生成物中の大量のEU-1の存在は、SSZ-91による水素化異性化のための選択性に有害である。
【0053】
一実施形態において、SSZ-91生成物は、0~3.5重量%の間の量でさらなるEUOタイプモレキュラーシーブ相を含有する。1つの下位実施形態において、SSZ-91は0.1~2重量%の間のEU-1を含有する。別の下位実施形態において、SSZ-91は、0.1~1重量%の間のEU-1を含有する。
【0054】
粉末XRDピーク強度の比は、混合物中の任意の2つの相に対する重量分率の関数として直線的に変化する:(Iα/Iβ)=(RIRα/RIRβ)*(xα/xβ)、ここで、RIR(参照強度比)パラメーターは、回折データに関する国際センターの粉末回折ファイル(PDF)データベース(http://www.icdd.com/products/)において見出すことができることが知られている。EUO相の重量百分率は、したがって、EUO相のピーク強度とSSZ-91相のピーク強度の間の比を測定することによって計算される。
【0055】
EUO相の総量の形成は、SSZ-91生成物の収量を最大化しながら、EUO相の形成を最小限に抑える、最適なヒドロゲル組成、温度及び結晶化時間を選択することによって抑制される。以下の実施例は、これらの工程変数の変化がEU-1の形成を最小限に抑える方法に関する指針を提供する。ゼオライト製造の当業者なら、これらの変数は生産運転のサイズ、利用可能な装置能力、所望の目標収率及び生成物中のEU-1材料の許容されるレベルに応じて決まるので、EU-1の形成を最小限に抑えるために必要な工程変数を容易に選択することが可能である。
【0056】
熱水結晶化ステップの間に、モレキュラーシーブ結晶は、反応混合物から自然に核形成すること可能である。シード材料としてモレキュラーシーブの結晶を使用すると、完全な結晶化が生じるのに必要な時間を低減させるのに好都合である場合がある。さらに、シード添加は、核形成及び/又は任意の望まれない相に優先してモレキュラーシーブの形成を促進することによって、得られた生成物の高い純度をもたらすことができる。しかし、シード添加が用いられる場合、多量のEUO相の形成を回避するために、シードは非常に純粋な相のSSZ-91でなければならないことが見出されている。シードとして使用される場合、シード結晶は反応混合物に使用されるケイ素供給源の重量の0.5%~5%の間の量が添加される。
【0057】
マガディアイト及びケニヤアイトの形成は、ヘキサメトニウムブロミド/SiO2比を最適化すること、水酸化物濃度を制御すること、並びにマガディアイト及びケニヤアイトは層状ケイ酸ナトリウム組成物であるので、ナトリウムの濃度を最小化することによって最小限に抑えられる。以下の実施例は、ゲル条件の変化がEU-1の形成を最小限に抑える方法に関する指針を提供する。
【0058】
モレキュラーシーブ結晶が形成された後、固体生成物をろ過等の標準的な機械的分離技術によって反応混合物から分離する。結晶を水で洗浄し、次いで乾燥して、合成されたままのモレキュラーシーブ結晶を得る。乾燥ステップは、大気圧又は真空下で実施することができる。
【0059】
結晶化後処理
モレキュラーシーブは、合成されたままで使用することができるが、典型的には熱的に処理される(焼成)。「合成されたままの」という用語は、SDAカチオンを除去する前の結晶化後のその形態のモレキュラーシーブを表す。SDAは、熱処理(例えば、焼成)によって、好ましくは酸化性雰囲気(例えば、空気、0kPaを超える酸素分圧を有するガス)中で、モレキュラーシーブからSDAを除去するのに十分な当業者によって容易に決定可能な温度において除去することができる。SDAは、米国特許第6,960,327号に記載されているように、オゾン処理及び光分解技術(例えば、モレキュラーシーブから有機化合物を選択的に除去するのに十分な条件下において、可視光より短い波長を有する光又は電磁放射線にSDA含有モレキュラーシーブ生成物を曝露する)によっても除去することができる。
【0060】
続いて、モレキュラーシーブを200℃~800℃の範囲の温度で1~48時間、又はそれより長い範囲の期間、水蒸気、空気又は不活性ガス中で焼成してもよい。通常、イオン交換によって骨格外カチオン(例えば、Na+)を除去して、それを水素、アンモニウム、又は任意の所望の金属イオンと置換えることが望ましい。
【0061】
形成されたモレキュラーシーブが中間体モレキュラーシーブの場合、目的のモレキュラーシーブは、ヘテロ原子格子置換技術等の合成後の技術を用いて実現することができる。目的のモレキュラーシーブ(例えば、ケイ酸塩SSZ-91)は、酸浸出等の公知の技術によって、格子からヘテロ原子を除去することによっても実現することができる。
【0062】
本明細書に開示された方法で製造されたモレキュラーシーブは、広範な物理的形状に形成することができる。一般に、モレキュラーシーブは粉末、顆粒、又は2メッシュ(Tyler)ふるいを通過し、400メッシュ(Tyler)ふるいに保持されるのに十分な粒径を有する押出物等の成型品の形態であることができる。有機結合剤との押出成型等によって、触媒が成型される場合、モレキュラーシーブは、乾燥の前に押し出され、又は乾燥され若しくは部分的に乾燥され次いで押し出され得る。
【0063】
モレキュラーシーブは、有機転化工程で用いられる温度及び他の条件に抵抗性の他の材料と複合化することができる。このようなマトリックス材料には、活性及び不活性材料並びに合成又は天然起源のモレキュラーシーブ、加えて粘土、シリカ及び金属酸化物等の無機材料が含まれる。このような材料の例及びそれらを使用することができる方法が、米国特許第4,910,006号及び同第5,316,753号に開示されている。
【0064】
次いで、該押出物又は粒子に、含浸又はイオン交換等の技術を用いて、水素化機能を増強するために、周期表の第8族~第10族の金属からなる群から選択される1種又は複数の活性金属をさらに添加してもよい。米国特許第4,094,821号に開示されているように、修飾金属及び1種又は複数の第8族~第10族金属を同時に共含浸させることが望ましい。一実施形態において、少なくとも1種の活性金属は、ニッケル、白金、パラジウム、及びそれらの組合せからなる群から選択される。金属添加後、金属を添加した押出物又は粒子を空気又は不活性ガス中で200℃~500℃の温度で焼成してもよい。一実施形態において、金属を添加した押出物を空気又は不活性ガス中で390℃~482℃の温度で焼成する。
【0065】
SSZ-91は、芳香族化合物等の水素化分解、脱蝋、オレフィン異性化、アルキル化及び異性化等の様々な炭化水素転化反応に有用である。SSZ-91は、一般的な分離目的のために吸着剤としても有用である。
【0066】
モレキュラーシーブの特徴付け
本明細書に開示された方法によって製造されたモレキュラーシーブは、40~200のSiO2/Al2O3モル比(SAR)を有する。SARは、誘導結合プラズマ(ICP)元素分析によって決定される。1つの下位実施形態において、SSZ-91は、70~160の間のSARを有する。別の下位実施形態において、SSZ-91は、80~140の間のSARを有する。
【0067】
SSZ-91材料は、DIFFaXシミュレーションによって決定されるように、並びにLobo及びKoningsveldによって、J.Am.Chem.Soc.2012、124、13222~13230(ここで、無秩序は、3種の異なる欠陥確率によって調節される)に記載されたように、生成物中に存在する総ZSM-48タイプ材料の少なくとも70%のポリタイプ6で構成されている。「少なくともX%」という語句には、構造中に他のZSM-48ポリタイプが存在しない、即ち、該材料は100%ポリタイプ6である場合が含まれることに留意するべきである。ポリタイプ6の構造は、Lobo及びKoningsveldによって記載されている通りである。(J.Am.Chem.Soc.2002、124、13222~13230を参照されたい)。一実施形態において、SSZ-91材料は、生成物中に存在する総ZSM-48タイプ材料の少なくとも80%のポリタイプ6で構成されている。別の実施形態において、SSZ-91材料は、生成物中に存在する総ZSM-48タイプ材料の少なくとも90%のポリタイプ6で構成されている。ポリタイプ6の構造には、国際ゼオライト協会の構造委員会によって、骨格コード*MREが付与されている。
【0068】
モレキュラーシーブSSZ-91は、約100nm~1.5μmの間の直径を有する多結晶凝集体と特徴付けられる形態を有し、凝集体のそれぞれは、1~8の間の平均アスペクト比を集合的に有するクリスタリットの集合を含む。本明細書で使用される場合、直径という用語は検討される各クリスタリットの短端上の最短長さを表す。SSZ-91は、より高いアスペクト比を有するZSM-48材料より低い程度の水素化分解を示す。1つの下位実施形態において、平均アスペクト比は1~5の間である。別の下位実施形態において、平均アスペクト比は1~4の間である。さらに別の下位実施形態において、平均アスペクト比は1~3の間である。
【0069】
本明細書に開示されている方法によって合成されたモレキュラーシーブは、そのXRDパターンによって特徴付けることができる。表2の粉末XRD線形は、本明細書に記載の方法に従って製造された合成されたままのSSZ-91の代表例である。回折パターンのわずかな変動は、格子定数の変化のために特定の試料の骨格種のモル比の変動から生じる場合がある。さらに、十分に小さい結晶は、ピークの形状及び強度に影響を及ぼして、有意なピークの広がりをもたらす。回折パターンのわずかな変動は、調製に使用される有機化合物の変動から及び試料毎のSi/Alモル比の変動からも生じ得る。焼成もXRDパターンのわずかなシフトをもたらす場合がある。これらのわずかな摂動にもかかわらず、基本的な結晶格子構造は不変のままである。
【表2】
【0070】
表3のX線回折パターン線形は、本明細書に記載の方法に従って製造された焼成されたSSZ-91の代表例である。
【表3】
【0071】
本明細書に提示された粉末X線回折パターンは、標準的な技術によって収集された。放射線はCuKα放射線である。ピーク高さ及び位置(2θの関数とし、ここでθはブラック角度である)をピークの相対強度から読み取り(バックグランドに対して調整した)、d(記録された線形に相当する格子面間隔)を計算することができる。
【実施例0072】
以下の例示的な実施例は、非限定的なものである。
【0073】
実施例の概要
以下の実施例は、SSZ-91の3つの特性の特有の組合せ(低いアスペクト比、低いEU-1含量、高いポリタイプ6の組成)のいずれか1つが欠けたZSM-48材料は、不良な触媒性能を示すことを実証する。以下の表4は、以下に概要を述べた様々な例に対する水素化処理性能を要約する。例8(SSZ-91)のみが優れた性能、即ち、他の3つの例に比較して優れた選択性及び低いガスの生成を示した。試験した他の3つの例の残りの材料は、それぞれが、SSZ-91を規定する3つの特性の特有の組合せの少なくとも1つが欠けているので、不良な性能を示した。
【表4】
【0074】
(比較例1)
ZSM-48の合成
この実施例における生成物は、1991年12月24日に発行された、Thomas F.Degnan及びErnest W.Valyocsik(Mobil Oil Corp.)の米国特許第5,075,269号の教示に従って、入手可能な試薬を用いて調製した。
【0075】
1ガロンオートクレーブライナーにNaOH(50%)76.51g、脱イオン水846g、HI-SIL 233シリカ(PPG Industries)124.51g、及びヘキサメトニウムブロミド(「HMB」、Sigma Aldrich)63gを添加した。すべての固体が溶解した後、脱イオン水733.52g中でAl
2(SO
4)
3・18H
2O 4.35g及び濃H
2SO
4 63gを溶解することによって調製したアルミニウム原液396gを添加した。最後に、例7からのSSZ-91シード結晶0.45gを添加した。混合物を均質になるまで撹拌した。製造されたアルミノケイ酸塩ゲルの組成は、以下のモル比を有した。
【表5】
【0076】
該ライナーを1ガロンオートクレーブに移し、これを160℃まで8時間の間にわたって加熱し、自己発生圧力において150rpmの速度で撹拌した。80時間後、生成物をろ過し、脱イオン水で洗浄し、乾燥した。得られた固体をXRDによってZSM-48材料であると決定した(
図1)。XRDは、生成物中に測定不能量のEU-1が存在していることを示した(おそらく1%未満のEU-1)。SEMは、7~12のアスペクト比を有するZSM-48結晶の凝集された長い針状結晶を示す(
図2)。
【0077】
(比較例2及び3)
上記のように、Lobo及びKoningsveldの論文は、Chevron CorporationのDr.Alexander Kupermanによって提供された3種のZSM-48試料の彼らの分析を記載している。3種の各試料、試料A、B及びCはそれぞれ、3種の異なる構造規定剤を用いて調製した。Lobo及びKoningsveldの論文は、試料Aをポリタイプ6として、及び試料Bを欠陥が生じたポリタイプ6として記載している。該論文は、試料Aの形態(
図3)は、直径約20nm及び長さ約0.5μmを有する薄い針状結晶からなるとさらに記載している。試料Bの形態(
図4)は、直径約30nm及び長さ4~8μmを有する長く、細い結晶からなった。Dr.Kupermanの材料は、高濃度のポリタイプ6を有するものと報告されたにもかかわらず、該試料は、試料Aに対しては25のアスペクト比(長さ/直径)、試料Bに対しては、133~266の間の範囲のアスペクト比を有するものと特徴付けられている。
【0078】
(例4~11)
生成物中に様々なEU-1濃度を有するSSZ-91の合成
例4から11までのそれぞれを、オートクレーブライナーにNaOH(50%)、脱イオン水、HI-SIL 233シリカ(PPG Industries)、ヘキサメトニウムブロミド(Sigma Aldrich)を添加することによって調製した。すべての固体が溶解した後、脱イオン水540.6g中にAl
2(SO
4)
3・18H
2O 4.18g及び濃H
2SO
4 45.58gを溶解することによって調製したアルミニウム原液を添加した。混合物を均質になるまで撹拌した。アルミノケイ酸塩ゲルに対するモル比及び加熱期間を以下の表6に列挙する。
【表6】
【0079】
該ライナーをオートクレーブに移し、これを160℃まで8時間の間にわたって加熱し、自己発生圧力において150rpmの速度で撹拌した。結晶化期間後、生成物をろ過し、脱イオン水で洗浄し、乾燥した。得られた固体を、生成物及び生成物中のEU-1のレベルを決定するためにXRDによって分析した。バルクSiO
2/Al
2O
3モル比及びEU-1含量を以下の表7に列挙する。
【表7】
【0080】
例1及び4~11からの生成物をXRD及びSEMによって分析した。例7に対するXRDパターンを
図5に示すが、これは残りの例4~11に対して収集されたXRDパターンの例示である。
【0081】
例7及び8に対するSEM画像をそれぞれ、
図6及び7に示すが、これは残りの例4~11に対するSEM画像の例示である。
図6及び7は、SSZ-91材料が多結晶凝集体からなり、凝集体のそれぞれはクリスタリットで構成されており、ここで各クリスタリットは、8未満の特徴的な平均アスペクト比を有する。対照的に、比較例1~3(
図2~4)のZSM-48材料は、長い針状結晶及び繊維状の形態を含有し、その形態の存在は、一貫して不良な触媒性能を示した。
【0082】
モレキュラーシーブの焼成及びイオン交換
比較例1及び例4~11からの合成されたままの生成物を、乾燥空気の雰囲気下、120℃まで1℃/分の加熱速度で、及び120分間保持し、続いて540℃まで1℃/分の第2の温度上昇を行い、この温度で180分間保持し、最後に、595℃まで1℃/分の第3の温度上昇を行い、この温度で180分間保持し、ナトリウム型に変換した。最終的に試料を120℃以下に冷却した。次いで、これらの焼成された試料のそれぞれを以下の通りアンモニウム型に交換した。交換される試料の質量と等しい量の硝酸アンモニウムを、試料の質量の10倍量の脱イオン水に完全に溶解した。次いで、試料を硝酸アンモニウム溶液に添加し、懸濁液をフラスコに封入し、95℃のオーブン中で一晩加熱した。フラスコをオーブンから取り出し、試料をろ過によって直ちに回収した。回収された試料でアンモニウム交換手順を繰り返し、大量の脱イオン水で50μS/cm未満の導電率まで洗浄し、最後に95℃のオーブン中で3時間乾燥した。
【0083】
水素化処理試験
例1及び4~11からのアンモニウム交換した試料に、テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩(0.5重量%Pd)を用いてパラジウムイオン交換を実施した。イオン交換後、試料を95℃において乾燥し、次いで482℃の空気中で3時間焼成して、テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩を酸化パラジウムに変換した。
【0084】
例11からのパラジウム交換した試料のそれぞれ0.5gを、供給材料の予熱のために触媒の上流にアランダムが装填された長さ23インチで外径0.25インチのステンレス鋼反応器チューブの中心に装填した(総圧力1200psig;下降流水素速度160mL/分(1気圧、25℃で測定した場合);下降流液体供給速度1mL/時間)。すべての材料を、最初に、約315℃において1時間水素流中で還元した。生成物を30分毎にオンラインキャピラリーガスクロマトグラフィー(GC)によって分析した。GCからの生データを、自動データコレクション/処理システムによって収集し、生データから炭化水素転化率を計算した。
【0085】
触媒を最初に約260℃において試験して、次の測定のセットに対する温度範囲を決定した。全温度範囲は広範囲のヘキサデカン転化率をもたらし、最大転化率は96%の直下及びそれを超える。各温度において少なくとも5つのオンラインGC注入を収集した。転化率は、他の生成物(イソ-nC
16異性体を含む)を生成するために反応したヘキサデカンの量として定義した。収率は、n-C
16以外の生成物の重量パーセントとして表し、収量生成物としてイソ-C
16を含めた。結果を表8に含める。
【表8】
【0086】
本発明の好ましい材料に対する、96%転化率における望ましい異性化選択率は少なくとも85%である。96%転化率における異性化選択率と温度の間の良好なバランスは、本発明に対して重大な意味を持つ。96%転化率における望ましい温度は605°F未満である。少なくとも85%の異性化選択率をなお維持しながら、96%転化率における温度が低いほど、触媒はより望ましい。最良の触媒性能は、96%転化率における異性化選択率及び温度の間の相乗作用により決まる。多量の不純物は、高レベルのC4
-分解によって表8に反映されている、付随する高いガス生成量を有する望ましくない接触分解を生じさせる。本発明の材料に対する望ましいC4
-分解は、2.0%未満である。EU-1の増加する濃度は接触分解を促進するので、6.82% EU-1において選択率が低下し始めることに留意されたい。
【0087】
ポリタイプの分布
DIFFaXを用いて、70~100%の間のポリタイプ6を有するZSM-48材料に対するシミュレートしたXRDパターンを作成し、例8及び11からのモレキュラーシーブ生成物に対して収集したXRDパターンと比較した。シミュレートした及び生成物のXRDパターンをそれぞれ本明細書の
図8及び9に示す。生成物XRDパターンをシミュレートしたパターンと比較すると、例8及び11で合成された生成物は、90%超のポリタイプ6を含有していることを示す。
【0088】
DIFFaXを用いて、70~100%の間のポリタイプ6を有するZSM-48材料に対するシミュレートしたXRDパターンを作成し、比較例1からのモレキュラーシーブ生成物に対して収集したXRDパターンと比較した。シミュレートした及び生成物のXRDパターンを本明細書の
図10に示す。生成物XRDパターンをシミュレートしたパターンと比較すると、比較例1において合成された生成物は、80%のポリタイプ6を含有していることを示す。
【0089】
比較例1において合成された材料を、上記の例4~11で概要を述べたヘキサデカン水素化処理試験に供した。比較例1からの材料は、614°Fの温度における96%転化率において、78%の異性化選択率を示した。以下の表9に示されたように、C
4
-分解は2.8%であった。わずか80%のポリタイプ6含量を有する、比較例1の材料に対する96%転化率における異性化選択率は、比較例1の材料は測定不能(<1%)量のEU-1を含有していたにもかかわらず、上記の表7に示す例4から10までに記載されているものより劣っていた。これは、比較例1及び例11の材料は、SSZ-91の3つの特性(低いアスペクト比、低いEU-1含量、高いポリタイプ6含量)のうちの2つを示したが、第3の特性の欠如が材料の不良な触媒性能の一因となったことを示している。
【表9】
【0090】
(例12~13)
代替のシリカ供給源によるSSZ-91の合成
オートクレーブライナーにNaOH(50%)、脱イオン水、CAB-O-SIL M-5シリカ(Cabot Corporation)及びヘキサメトニウムブロミド(HMB)を添加することによって、例12の材料を調製した。すべての固体が溶解した後、無水、Riedel de Haenアルミン酸ナトリウムを添加した。最後に、例4からのスラリーに類似のSSZ-91スラリーを添加した。混合物を均質になるまで撹拌した。生成したアルミノケイ酸塩ゲルの組成物は以下のモル比を有していた。
【表10】
【0091】
該ライナーをオートクレーブに移し、これを160℃まで8時間の間にわたって加熱し、自己発生圧力において150rpmの速度で撹拌した。48時間後、生成物をろ過し、脱イオン水で洗浄し、乾燥した。得られた固体を、SSZ-91であること及び0.30重量%のEUOを含有していることをXRDによって決定した。バルクSiO2/Al2O3モル比は、約102であることが判明した。
【0092】
NaOH(50%)、脱イオン水、市販されているNALCO 2327コロイド状シリカ(40.3% SiO
2)及びヘキサメトニウムブロミドをオートクレーブライナーに添加することによって例13の材料を調製した。すべての固体が溶解した後、一部の水にあらかじめ溶解したAl
2(SO
4)
3・18H
2Oを添加した。混合物を均質になるまで撹拌した。生成したアルミノケイ酸塩ゲルの組成物は以下のモル比を有していた。
【表11】
【0093】
該ライナーをオートクレーブに移し、これを160℃まで8時間の間にわたって加熱し、自己発生圧力において150rpmの速度で撹拌した。35時間後、生成物をろ過し、脱イオン水で洗浄し、乾燥した。得られた固体を、SSZ-91であること及び3.16重量%のEU-1を含有していることをXRDによって決定した。バルクSiO
2/Al
2O
3モル比は、約155であることが判明した。例13の材料を走査電子顕微鏡によって分析し、その分析からのSEM画像を
図11に示す。
【0094】
水素化処理試験
例12及び13において合成したSSZ-91材料に対して、パラジウム添加試験及び触媒試験を、上記の実施例に関して記載されている通りに実施した。触媒試験の結果を以下の表12に示す。使用する原材料を変化させることによって調製されたこれらの2つの実施例は、SSZ-91の調製の汎用性を示す。例12は、かなり低い温度における96%での異性化選択率が88%と望ましい、別の良好な実施例を示した。例13は、純相ではあるが、劣った触媒性能、結晶の不良なアスペクト比を有する結晶の習性の結果を示した。
【表12】
【0095】
DIFFaXを用いて、70~100%の間のポリタイプ6を有するZSM-48材料に対するシミュレートしたXRDパターンを作成し、例13からのモレキュラーシーブ生成物に対して収集したXRDパターンと比較した。シミュレートした及び生成物のXRDパターンを本明細書の
図12に示す。この分析からのSEM画像を
図11に示す。生成物のXRDパターンをシミュレートしたパターンと比較すると、比較例1で合成された生成物は、90%超のポリタイプ6を含有することを示す。これは、例13の材料が必須の低いEU-1含量及び所望のポリタイプ分布を有しているが、高アスペクト比が該材料の不良な触媒性能の一因となったことを示している。例13は、SSZ-91の3つの特性(低いアスペクト比、低いEU-1含量、高いポリタイプ6含量)のいずれか1つの欠如は、該材料の不良な触媒性能の一因となることを再度実証している。