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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022032148
(43)【公開日】2022-02-25
(54)【発明の名称】アクチュエータおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20220217BHJP
   H02K 33/16 20060101ALI20220217BHJP
   F16F 15/03 20060101ALI20220217BHJP
【FI】
B06B1/04 Z
H02K33/16 A
F16F15/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020135667
(22)【出願日】2020-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】日向 章二
(72)【発明者】
【氏名】小林 優帆
【テーマコード(参考)】
3J048
5D107
5H633
【Fターム(参考)】
3J048BE09
3J048EA07
5D107CC09
5D107CC10
5D107FF10
5H633BB03
5H633GG02
5H633GG09
5H633GG17
5H633HH03
5H633HH16
5H633JA02
5H633JB03
(57)【要約】
【課題】内枠部材と外枠部材をゲル状部材によって接合した部品を用いて可動体と支持体とを接続するアクチュエータの生産性を向上させる。
【解決手段】アクチュエータ1は、支持体2と可動体3を第1接続体11および第2接続体12により接続する。第1接続体11は、第1内枠部材36と第1外枠部材51との隙間にゲル材料Gを充填して硬化させることにより製造される。第1接続体11との接合面である第1内枠部材36の外周面360は、テーパー面362を備えている。従って、複数の第1内枠部材36を積層して接着補助剤13を外周面360に塗布した後、外周側からエアカッター97によって送風したときに、テーパー面362よって案内される風が第1内枠部材36同士の当接箇所に当たりやすい。従って、積層した第1内枠部材36が接合されにくい。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体および可動体と、
前記支持体および前記可動体に接続されるゲル状部材と、
磁石およびコイルを備えており前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動機構と、を有し、
前記可動体は、前記支持体の内周側で前記磁石および前記コイルのうちの一方を支持する支軸と、前記支軸に対して固定される内枠部材を備え、
前記支持体は、前記内枠部材と径方向で対向する外枠部材と、前記外枠部材の外周側を囲む筒状のケースを備え、
前記ゲル状部材は、前記内枠部材と前記外枠部材の径方向の隙間に配置され、
前記内枠部材の外周面および前記外枠部材の内周面は、前記ゲル状部材に接続される接合面であり、
前記内枠部材の外周面は、前記内枠部材の中心軸線方向の一方側へ向かうに従って径方向内側へ向かう方向へ傾斜するテーパー面を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記ゲル状部材は、ゲル材料が硬化した硬化物であり、
前記接合面は、前記ゲル材料と接触して反応する接着補助剤が塗布される接着補助剤塗布面であることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記接着補助剤は、プライマーであることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記テーパー面は、前記内枠部材の前記中心軸線方向の一方側の端面の外周縁に接続されることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記内枠部材の前記中心軸線方向の一方側の端面の外径は、前記内枠部材の前記中心軸線方向の他方側の端面の内径よりも小さく、
前記内枠部材を上下に重ねたとき、前記内枠部材の前記中心軸線方向の他方側の端面の外周縁は、前記テーパー面に線接触することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記内枠部材の外周面は、前記テーパー面と、前記テーパー面の前記中心軸線方向の一方側の端縁から前記一方側へ延びる筒状面と、を備えることを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
請求項2に記載のアクチュエータの製造方法であって、
前記内枠部材と前記外枠部材とを製造用治具に位置決めし、前記内枠部材と前記外枠部材との隙間に前記ゲル材料を充填して硬化させ、前記硬化物を前記内枠部材および前記外枠部材と共に前記製造用治具から取り外すゲル状部材製造工程と、
前記内枠部材を前記支軸に対して固定するとともに前記外枠部材を前記ケースに対して固定することにより、前記ゲル状部材を前記支持体および前記可動体に接続する組立工程と、を行い、
前記ゲル状部材製造工程では、
前記内枠部材を前記製造用治具に位置決めする前に、
複数の前記内枠部材を前記中心軸線方向に積層する工程と、
積層状態の前記内枠部材の外周面に接着補助剤を塗布する工程と、
前記積層状態の前記内枠部材の外周面に向けて送風することによって前記接着補助剤を乾燥させる工程と、を行うことを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を支持体に対して相対移動させるアクチュエータおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータとして、支持体および可動体と、支持体に対して可動体を振動させる磁気駆動機構を備えるとともに、可動体と支持体とを弾性および粘弾性を備えたゲル状部材によって接続したものがある。特許文献1には、直方体状のカバーの内部に可動体を配置し、可動体をカバーの長手方向に振動させるアクチュエータが開示される。可動体は、磁石が固定されたヨークを備えており、支持体は、コイルを保持するホルダと、可動体を収容するカバーを備える。ゲル状部材は、厚さ方向の一方の面がヨークに接着され、他方の面がカバーに接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-13086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、筒状のケースの内側に可動体を収容し、可動体を軸線方向に振動させるアクチュエータを提案している。可動体は、ケースの中心において軸線方向に延びる支軸を備えており、支軸の軸線方向の両端が円筒状のゲル状部材を介してケースに接続される。円筒状のゲル状部材は、筒状の内枠部材と外枠部材との間に配置され、内枠部材と外枠部材とを接続する。内枠部材は可動体側の部品である支軸に固定され、外枠部材は支持体側の部品であるケースに固定される。
【0005】
ゲル状部材は、内枠部材と外枠部材との間にゲル材料を注入して硬化させる方法(注型)により製造することができる。ここで、注型によりゲル状部材を製造する際、ゲル状部材に接合される部品(内枠部材および外枠部材)の接合面にプライマーなどの接着補助剤を塗布することにより、ゲル状部材との密着性を向上させる。塗布工程は、ディッピングもしくはスプレー塗布によって行うことができる。例えば、ゲル状部材の内周面に接合される内枠部材の外周面に接着補助剤(プライマー)を塗布する場合には、内枠部材が嵌まるピンを備えた治具を用意し、複数の内枠部材をピンに嵌めて積層した状態で、一度に複数の内枠に対して塗布工程を行う。
【0006】
しかしながら、生産性を高めるために複数の内枠部材を積層して塗布工程を行うと、内枠部材同士が当接する箇所に接着補助剤(プライマー)が付着する。その結果、内枠部材同士が接合されてしまうため、接合された部品同士を分離しなければならず、生産性が低下するという問題がある。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、内枠部材と外枠部材をゲル状部材によって接合した部品を用いて可動体と支持体とを接続するアクチュエータの生産性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るアクチュエータは、支持体および可動体と、前記支持体および前記可動体に接続されるゲル状部材と、磁石およびコイルを備えており
前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動機構と、を有し、前記可動体は、前記支持体の内周側で前記磁石および前記コイルのうちの一方を支持する支軸と、前記支軸に対して固定される内枠部材を備え、前記支持体は、前記内枠部材と径方向で対向する外枠部材と、前記外枠部材の外周側を囲む筒状のケースを備え、前記ゲル状部材は、前記内枠部材と前記外枠部材の径方向の隙間に配置され、前記内枠部材の外周面および前記外枠部材の内周面は、前記ゲル状部材に接続される接合面であり、前記内枠部材の外周面は、前記内枠部材の中心軸線方向の一方側へ向かうに従って径方向内側へ向かう方向へ傾斜するテーパー面を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、支持体および可動体に接続されるゲル状部材は、可動体側の部品である内枠部材と、支持体側の部品である外枠部材に接続されており、ゲル状部材との接合面である内枠部材の外周面がテーパー面を備えている。内枠部材に対しては、ゲル状部材との接合強度を高めるためにゲル材料と反応する接着補助剤を塗布することが好ましい。内枠部材の外周面がテーパー面を備えていれば、内枠部材を中心軸線方向に積層して一度に接着補助剤を塗布した後、外周側からエアカッター等によって送風すると、テーパー面によって案内される空気により、内枠部材の当接箇所に付着した接着補助剤が効果的に除去される。従って、積層された内枠部材が接合されにくいので、接合された内枠部材を分離する手間を削減できる。よって、アクチュエータの生産性を高めることができる。
【0010】
本発明において、前記ゲル状部材は、ゲル材料が硬化した硬化物であり、前記接合面は、前記ゲル材料と接触して反応する接着補助剤が塗布される接着補助剤塗布面である。このように、接合面に接着補助剤を塗布することにより、接合面に対するゲル状部材の固定強度を高めることができる。接着補助剤としては、例えば、プライマーを用いることができる。
【0011】
本発明において、前記テーパー面は、前記内枠部材の前記中心軸線方向の一方側の端面の外周縁に接続される。このようにすると、テーパー面に沿って内枠部材の端面同士が当接する箇所まで空気が案内されるので、内枠部材の当接箇所に付着した接着補助剤が除去されやすい。よって、積層された内枠部材が接合されにくい。
【0012】
本発明において、前記内枠部材の前記中心軸線方向の一方側の端面の外径は、前記内枠部材の前記中心軸線方向の他方側の端面の内径よりも小さく、前記内枠部材を上下に重ねたとき、前記内枠部材の前記中心軸線方向の他方側の端面の外周縁は、前記テーパー面に線接触することが好ましい。このようにすると、内枠部材を中心軸線方向に積層した際、一方の内枠部材の端部が他方の内枠部材の端部の内周側に入り込む。内枠部材がテーパー面において線接触した状態に積層されていれば、接触個所に接着補助剤が付着しても、積層された内枠部材が接合されにくい。よって、接合された内枠部材を分離する手間を削減できるので、アクチュエータの生産性を高めることができる。
【0013】
この場合に、前記内枠部材の外周面は、前記テーパー面と、前記テーパー面の前記中心軸線方向の一方側の端縁から前記一方側へ延びる筒状面と、を備えるものとすることができる。一方の内枠部材の端部が他方の内枠部材の端部の内周側に入り込む形状になっている場合には、テーパー面が内枠部材の中心軸線方向の端部まで延びていなくても、上下の内枠部材がテーパー面で線接触した状態に積層することができる。従って、上下の内枠部材が接合されにくい。
【0014】
次に、本発明は、上記のアクチュエータの製造方法であって、前記内枠部材と前記外枠部材とを製造用治具に位置決めし、前記内枠部材と前記外枠部材との隙間に前記ゲル材料を充填して硬化させ、前記硬化物を前記内枠部材および前記外枠部材と共に前記製造用治具から取り外すゲル状部材製造工程と、前記内枠部材を前記支軸に対して固定するととも
に前記外枠部材を前記ケースに対して固定することにより、前記ゲル状部材を前記支持体および前記可動体に接続する組立工程と、を行い、前記ゲル状部材製造工程では、前記内枠部材を前記製造用治具に位置決めする前に、複数の前記内枠部材を前記中心軸線方向に積層する工程と、積層状態の前記内枠部材の外周面に接着補助剤を塗布する工程と、前記積層状態の前記内枠部材の外周面に向けて送風することによって前記接着補助剤を乾燥させる工程と、を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、内枠部材にゲル状部材との接合強度を高めるためにゲル材料と反応する接着補助剤を塗布する際、内枠部材を中心軸線方向に積層して一度に接着補助剤を塗布する。その後、外周側からエアカッター等によって送風して接着補助剤を乾燥させる工程を行うと、内枠部材の外周面に設けられたテーパー面によって案内される空気により、内枠部材の当接箇所に付着した接着補助剤が効果的に除去される。従って、積層された内枠部材が接合されにくく、接合された内枠部材を分離する手間を削減できる。よって、アクチュエータの生産性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、支持体および可動体に接続されるゲル状部材は、可動体側の部品である内枠部材と、支持体側の部品である外枠部材に接続されており、ゲル状部材との接合面である内枠部材の外周面がテーパー面を備えている。内枠部材に対しては、ゲル状部材との接合強度を高めるためにゲル材料と反応する接着補助剤を塗布することが好ましい。内枠部材の外周面がテーパー面を備えていれば、内枠部材を中心軸線方向に積層して一度に接着補助剤を塗布した後、外周側からエアカッター等によって送風すると、テーパー面によって案内される空気により、内枠部材の当接箇所に付着した接着補助剤が効果的に除去される。従って、積層された内枠部材が接合されにくいので、接合された内枠部材を分離する手間を削減できる。よって、アクチュエータの生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータの斜視図である。
図2図1に示すアクチュエータの分解斜視図である。
図3図1に示すアクチュエータの断面図(図1のA-A断面図)である。
図4】内枠部材および外枠部材が固定されたゲル状部材の断面図である。
図5】ゲル状部材の製造方法の説明図である。
図6】内枠部材に対する接着補助剤の塗布方法の説明図である。
図7】変形例の内枠部材、外枠部材、およびゲル状部材の断面図、ならびに変形例の内枠部材に対する接着補助剤の塗布方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明において、可動体3の中心軸線が延在する方向を軸線L方向とし、軸線L方向の一方側をL1とし、軸線L方向の他方側をL2とする。本発明を適用したアクチュエータ1は、可動体3が支持体2に対して軸線L方向に振動する。
【0019】
以下に説明する実施形態では、可動体3を支持体2に対して振動させる磁気駆動機構6は、可動体3に配置される磁石61と、支持体2に配置されるコイル62とを備えているが、本発明では、磁石61とコイル62の配置を逆にした構成を採用してもよい。すなわち、磁気駆動機構6は、可動体3に配置されるコイル62と、支持体2に配置される磁石61とを備えている態様であってもよい。
【0020】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るアクチュエータ1の斜視図である。図2は、図1に示
すアクチュエータ1の分解斜視図である。図3は、図1に示すアクチュエータ1の断面図であり、図1のA-A位置で切断した断面図である。アクチュエータ1は、支持体2と、可動体3と、支持体2および可動体3に接続された接続体10と、可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動機構6とを備える。接続体10は、弾性および粘弾性のうちの少なくとも一方を備える。磁気駆動機構6は、可動体3に配置される磁石61と、支持体2に配置されるコイル62とを備えており、支持体2に対して可動体3を軸線L方向に相対移動させる。図3に示すように、可動体3は、軸線L方向の一方側L1の端部、および軸線L方向の他方側L2の端部の各位置において、接続体10を介して支持体2と接続される。
【0021】
(支持体)
支持体2は、筒状のケース20と、ケース20の軸線L方向の一方側L1の開口を塞ぐ第1蓋部材21と、ケース20の軸線L方向の他方側L2の開口を塞ぐ第2蓋部材22と、ケース20の内周側で第1蓋部材21と第2蓋部材22との間に配置されるコイルホルダ4を有する。本形態では、ケース20、第1蓋部材21、第2蓋部材22、およびコイルホルダ4は樹脂製である。また、支持体2は、コイルホルダ4の内周側に嵌まる第1外枠部材51と、第1外枠部材51に対して軸線L方向の他方側L2に離間した位置でケース20の内周側に嵌まる第2外枠部材52を有する。第1外枠部材51と第2外枠部材52は同一形状であり、軸線L方向で逆向きに配置される。
【0022】
(接続体)
接続体10は、第1外枠部材51の内周面に接合された環状の第1接続体11と、第2外枠部材52の内周面に接合された環状の第2接続体12を備える。可動体3の軸線L方向(すなわち、可動体の振動方向)の一端側に第1接続体11が配置され、可動体3の軸線L方向の他端側に第2接続体12が配置される。第1接続体11と第2接続体12は同一形状であり、軸線L方向で逆向きに配置される。
【0023】
第1接続体11および第2接続体12はゲル状部材であり、ゲル状部材自身の粘着性によって、第1外枠部材51および第2外枠部材52に接合される。第1接続体11および第2接続体12は、例えば、針入度が90度から110度のシリコーンゲルからなる。本形態では、第1外枠部材51をコイルホルダ4に圧入して固定することにより、第1接続体11が支持体2に接続される。また、第2外枠部材52をケース20に圧入して固定することにより、第2接続体12が支持体2に接続される。
【0024】
(コイルホルダ)
図2に示すように、コイルホルダ4は、環状の第1外枠部材固定部41と、第1外枠部材固定部41から軸線L方向の他方側L2へ突出する胴部42とを備えており、胴部42の周りにコイル62が配置される。コイル62から引き出されたコイル線63の端部は、コイルホルダ4の第1外枠部材固定部41から径方向外側へ突出する2本の端子ピン64に絡げられている。図1に示すように、端子ピン64はケース20の外部へ突出しており、配線基板7に接続される。
【0025】
図3に示すように、コイルホルダ4は、第1外枠部材51を軸線L方向に位置決めする第1段部44を備える。第1外枠部材固定部41は第1外枠部材51の外周側を囲んでいる。第1外枠部材固定部41の内周面には、軸線L方向の他方側L2に凹む第1凹部43が設けられ、第1外枠部材51は、第1凹部43に圧入される。第1段部44は、第1凹部43の軸線L方向の他方側L2の端部に設けられている。本形態では、第1外枠部材51の外周面に形成された環状段部511が第1段部44に対して軸線L方向に当接する。
【0026】
(ケース)
ケース20は、円筒状のケース本体24と、ケース本体24の内周側に配置される第2外枠部材固定部25を備える。図2に示すように、第2外枠部材固定部25は、ケース本体24の内周面から内周側に突出しており、ケース本体24と一体に成形される。図3に示すように、第2外枠部材固定部25は、コイルホルダ4に対して軸線L方向の他方側L2に離間した位置に配置される。
【0027】
ケース20は、第2外枠部材52を軸線L方向に位置決めする第2段部45を備える。図3に示すように、第2外枠部材固定部25の内周面には、軸線L方向の一方側L1に凹む第2凹部46が設けられ、第2外枠部材52は、第2凹部46に圧入される。第2段部45は、第2凹部46の軸線L方向の一方側L1の端部に設けられている。本形態では、第2外枠部材52の外周面に形成された環状段部521が第2段部45に対して軸線L方向に当接する。
【0028】
また、ケース20は、コイルホルダ4を軸線L方向に位置決めする第3段部47を備える。図3に示すように、第3段部47は、ケース本体24の内周面に形成される。ケース本体24の内周面には、軸線L方向に延びる複数の溝部29が形成され、各溝部29の軸線L方向の他方側L2の端部に第3段部47が形成されている。一方、図2図3に示すように、コイルホルダ4は、第1外枠部材固定部41の外周面から突出する複数の凸部49を備える。支持体2を組み立てる際、コイルホルダ4の各凸部49は、ケース本体24の各溝部29に軸線L方向の一方側L1から嵌め込まれ、第3段部47に対して軸線L方向に当接する。これにより、コイルホルダ4がケース本体24に圧入されて固定されるとともに、コイルホルダ4が軸線L方向に位置決めされる。
【0029】
(蓋部材)
図3に示すように、第1蓋部材21は、コイルホルダ4に設けられた第1外枠部材固定部41の軸線L方向の一方側L1からケース本体24に固定されている。また、第2蓋部材22は、第2外枠部材固定部25の軸線L方向の他方側L2からケース本体24に固定されている。図2に示すように、第1蓋部材21および第2蓋部材22は、それぞれ、軸線L方向から見て円形の蓋部26と、蓋部26の外周縁に等間隔で配置された複数の係止部27を備える。本形態では、第1蓋部材21および第2蓋部材22は、それぞれ、3個所の係止部27を備える。係止部27は、蓋部26から外周側へ拡がる方向に傾斜して延びる爪部である。
【0030】
係止部27は、径方向に弾性変形して蓋部26と共にケース本体24の内周側に押し込まれる。ケース20は、係止部27がケース20の内側から外れることを規制する規制部28を備える。規制部28は、ケース本体24の端部から内周側に突出する凸部である。図1図2に示すように、規制部28は、ケース本体24の軸線L方向の一方側L1および他方側L2の端部に、それぞれ、3個所ずつ等間隔で配置される。規制部28は、係止部27の先端に対して軸線L方向に当接する。
【0031】
第1蓋部材21は、係止部27および規制部28による係止構造と、接着剤による固定と、溶着とを併用してケース20に固定される。接着剤は、硬化後にケース20の一方側L1の端部と第1蓋部材21との隙間を封止する封止材となるように塗布される。従って、組立後の支持体2では、第1蓋部材21とケース20との隙間は、接着剤(図示せず)によって封止される。
【0032】
第1蓋部材21は、溶着によってコイルホルダ4に固定され、コイルホルダ4を介してケース20に固定される。図2図3に示すように、第1蓋部材21は、蓋部26から軸線L方向の他方側L2に突出する複数の溶着用凸部210を備える。一方、コイルホルダ4は、蓋部26と軸線L方向に対向する複数の溶着用凹部410を備える。本形態では、
溶着用凸部210および溶着用凹部410は、周方向に等間隔で3個所に配置される。第1蓋部材21をケース20に固定する際には、図3に示すように、各溶着用凸部210がコイルホルダの溶着用凹部410に溶着される。
【0033】
第2蓋部材22は、第1蓋部材21と同様に、係止部27および規制部28による係止構造と、接着剤による固定と、溶着とを併用してケース20に固定される。接着剤は、硬化後にケース20の他方側L2の端部と第2蓋部材22との隙間を封止する封止材となるように塗布される。従って、組立後の支持体2では、第2蓋部材22とケース20との隙間は、接着剤(図示せず)によって封止される。
【0034】
第2蓋部材22は、溶着によってケース20の第2外枠部材固定部25に固定される。図2図3に示すように、第2蓋部材22は、蓋部26から軸線L方向の一方側L1に突出する複数の溶着用凸部220を備える。一方、第2外枠部材固定部25は、蓋部26と軸線L方向に対向する複数の溶着穴250を備える。本形態では、溶着用凸部220および溶着穴250は、周方向に等間隔で3個所に配置される。第2蓋部材22をケース20に固定する際には、図3に示すように、各溶着用凸部220が第2外枠部材固定部25の溶着穴250に溶着される。
【0035】
図2に示すように、コイルホルダ4の第1外枠部材固定部41は、ケース本体24に設けられた3個所の規制部28と軸線L方向で重なる部分を内周側に切り欠いた溝部48を備える。従って、コイルホルダ4をケース本体24の内部に挿入する際に、第1外枠部材固定部41と規制部28とが干渉することが回避される。
【0036】
(配線引き出し部)
図1に示すように、支持体2は、磁気駆動機構6のコイル62から引き出したコイル線63を絡げた端子ピン64を外部に引き出すための配線引き出し部60を備える。配線引き出し部60は、ケース20の軸線L方向の一方側L1の縁を軸線L方向の他方側L2に切り欠いた切欠き部65と、第1蓋部材21の外周縁の周方向の一部から軸線L方向の他方側L2に延びるカバー66との間に設けられた隙間である。
【0037】
切欠き部65の内周側には、コイルホルダ4の第1外枠部材固定部41が配置される。本形態では、第1外枠部材固定部41から外周側に延びる2本の端子ピン64が配線引き出し部60に配置される。図2に示すように、各端子ピン64の根本には、コイル62から引き出されたコイル線63が絡げられている。
【0038】
ケース20は、切欠き部65の他方側L2に形成された基板固定部69を備える。配線引き出し部60には、基板固定部69に固定される配線基板7の端部が配置される。端子ピン64は、配線基板7の縁に設けられた保持溝71に位置決めされ、保持溝71の縁に形成されたランドと電気的に接続される。配線基板7には、コイル62に対する給電用のリード線8が接続される。
【0039】
(可動体)
図2図3に示すように、可動体3は、支持体2の径方向の中心において軸線L方向に延びる支軸30を有する。支軸30には、筒状の第1内枠部材36、および筒状の第2内枠部材37によって、磁石61および第3ヨーク35が固定される。支軸30は金属製の丸棒である。第1内枠部材36および第2内枠部材37は、金属製の円筒体であり、第1内枠部材36および第2内枠部材37には円形の貫通穴が設けられている。第1内枠部材36および第2内枠部材37は同一形状であり、軸線L方向で逆向きに配置される。
【0040】
第1内枠部材36は第1外枠部材51と径方向に対向しており、第1内枠部材36と第
1外枠部材51の間に第1接続体11が配置される。また、第2内枠部材37は第2外枠部材52と径方向に対向しており、第2内枠部材37と第2外枠部材52の間に第2接続体12が配置される。上記のように、第1接続体11および第2接続体12はゲル状部材であり、ゲル状部材自身の粘着性によって、第1接続体11が第1内枠部材36に接合され、第2接続体12が第2内枠部材37に接合されている。第1内枠部材36および第2内枠部材37に支軸30を圧入して固定することにより、第1接続体11および第2接続体12が可動体3に接続される。
【0041】
図3に示すように、第1内枠部材36の内周面には、軸線L方向の他方側L2の端部に径方向内側に突出した環状突部361が形成されている。第1内枠部材36を支軸30に圧入した際、支軸30は環状突部361に圧入される。また、第2内枠部材37の内周面には、軸線L方向の一方側L1の端部に径方向内側に突出した環状突部371が形成されている。第2内枠部材37を支軸30に圧入した際、支軸30は環状突部371に圧入される。
【0042】
磁石61は、支軸30が貫通する軸穴610が設けられており、支軸30の軸線L方向の略中央に固定される。第3ヨーク35は、磁石61に軸線L方向の一方側L1で重なる第1ヨーク31と、磁石61に軸線L方向の他方側L2で重なる第2ヨーク32を備える。第1ヨーク31は、支軸30が貫通する軸穴310が設けられた円板状であり、磁石61と第1ヨーク31とは外径が等しい。第2ヨーク32は、カップ状の第1磁性部材33と、円板状の第2磁性部材34の2つの部材からなる。第1磁性部材33は、支軸30が貫通する軸穴330が設けられた円形の端板部331と、端板部331の外縁から軸線L方向の一方側L1に延びる円筒部332とを有する。本形態では、第1磁性部材33の端板部331が磁石61の軸線L方向の他方側L2の端面に固定される。第2磁性部材34は、支軸30が貫通する軸穴340を備えており、第1磁性部材33の端板部331に対して磁石61とは反対側から固定される。
【0043】
可動体3は、磁石61および第3ヨーク35を構成する各部材の軸穴310、610、330、340に支軸30を貫通させた状態で、磁石61および第3ヨーク35の軸線L方向の両側で第1内枠部材36および第2内枠部材37を支軸30に固定する。その結果、第1内枠部材36が軸線L方向の一方側L1から磁石61および第3ヨーク35を支持し、第2内枠部材37が軸線L方向の他方側L2から磁石61および第3ヨーク35を支持する結果、磁石61および第3ヨーク35は、支軸30に固定される。
【0044】
(接続体の製造方法)
図4は、内枠部材および外枠部材が固定されたゲル状部材の断面図である。図4(a)は、第1内枠部材36および第1外枠部材51が固定された第1接続体11の断面図であり、図4(b)は、第2内枠部材37および第2外枠部材52が固定された第2接続体12の断面図である。図4(a)、図4(b)において、LAは、第1内枠部材36、第1外枠部材51、第2内枠部材37、および第2外枠部材52の中心軸線である。
【0045】
第1内枠部材36は、中心軸線LA方向の長さ(高さ)が第1外枠部材51よりも大きく、第1外枠部材51から中心軸線LA方向の一方側LA1へ突出する。同様に、第2内枠部材37は、中心軸線LA方向の長さ(高さ)が第2外枠部材52よりも大きく、第2外枠部材52から中心軸線LA方向の一方側LA1へ突出する。アクチュエータ1を組み立てると、中心軸線LAと可動体3の軸線Lとが一致する。また、第1内枠部材36および第1外枠部材51は、中心軸線LA方向の一方側LA1と軸線L方向の他方側L2とが同一方向を向くように組み立てられ、第2内枠部材37および第2外枠部材52は、中心軸線LA方向の一方側LA1と軸線L方向の一方側L1とが同一方向を向くように組み立てられる。
【0046】
第1接続体11および第2接続体12は、ゲル材料を成形したゲル状部材であり、注型により製造される。図4(a)に示すように、第1接続体11は、成形される際に第1外枠部材51および第1内枠部材36が接合されて部品化されている。また、図4(b)に示すように、第2接続体12は、成形される際に第2外枠部材52および第2内枠部材37が接合されて部品化されている。従って、アクチュエータ1を組み立てる際には、ゲル状部材を接着する工程を行わずに、支持体2と可動体3とを接続することができる。
【0047】
図5は、接続体10の製造方法の説明図である。以下、図5を参照して第1接続体11の製造方法を説明する。第2接続体12の製造方法は、第1接続体11の製造方法と同一であるため、説明を省略する。図5に示すように、第1工程では、製造用治具90に設けられた円形凹部91の中央から突出するピン92を第1内枠部材36に挿入し、円形凹部91の底面94に第1内枠部材36を当接させる。また、円形凹部91の内周面に第1外枠部材51を内接させ、円形凹部91の底面94に第1外枠部材51を当接させる。これにより、第1内枠部材36と第1外枠部材51が位置決めされ、第1内枠部材36と第1外枠部材51の間に環状の隙間Sが形成される。
【0048】
本形態では、第1内枠部材36は、支軸30を固定するための環状突部361を備えている。製造用治具90に第1内枠部材36を位置決めする際、環状突部361が配置される側とは反対側からピン92を挿入し、環状突部361が配置される側とは反対側の端面を円形凹部91の底面94に当接させる。
【0049】
図5に示すように、第1内枠部材36の外周面360および第1外枠部材51の内周面510には、接着補助剤13が塗布される。本形態では、接着補助剤13はプライマーである。後述するように、接着補助剤13は、第1内枠部材36および第1外枠部材51を製造用治具90に位置決めする前に、外周面360および内周面510に塗布される。
【0050】
第2工程では、第1内枠部材36と第1外枠部材51との隙間Sにディスペンサー93からゲル材料Gを充填する。本形態では、第1内枠部材36の外周面360および第1外枠部材51の内周面510は、第1接続体11が接合される接合面である。隙間Sに充填されたゲル材料Gは、接合面(外周面360および内周面510)に塗布された接着補助剤13に接触する。
【0051】
第3工程では、ゲル材料Gを製造用治具90ごと加熱し、規定の温度で規定の時間維持することにより硬化させる。これにより、隙間Sにはゲル状部材である第1接続体11が形成される。ゲル材料Gは、加熱硬化する際に、接着補助剤13に接する部分が接着補助剤13と反応して、第1内枠部材36の外周面360および第1外枠部材51の内周面510に固定される。従って、第1接続体11は、第1接続体11自体の接着力によって第1内枠部材36および第1外枠部材51に固定される。
【0052】
第4工程では、完成した第1接続体11を第1内枠部材36および第1外枠部材51と共に製造用治具90から取り外す。例えば、円形凹部91の底面94に突き出しピンを配置するための貫通孔(図示せず)を設けておき、突き出しピンを用いて、第1内枠部材36および第1外枠部材51と共に第1接続体11を製造用治具90から取り外す。
【0053】
図4(a)に示すように、第1接続体11は、中心軸線LA方向の他方側LA2を向く第1ゲル端面111と、中心軸線LA方向の一方側LA1を向く第2ゲル端面112を備える。図4(b)に示すように、第2接続体12は、中心軸線LA方向の他方側LA2を向く第1ゲル端面121と、中心軸線LA方向の一方側LA1を向く第2ゲル端面122を備える。アクチュエータ1を組み立てると、第1接続体11と第2接続体12は軸線L
方向で逆向きに配置されるため、第1接続体11の第2ゲル端面112と第2接続体12の第2ゲル端面122とが対向する。
【0054】
第1ゲル端面111、121は、円形凹部91の底面94によって成形される。従って、第1ゲル端面111、121は平坦面である。一方、第2ゲル端面112、122は凹面である。第2ゲル端面112、122は、成形時にゲル材料Gの表面張力によって凹んだ形状に成形される。
【0055】
図4(a)、図4(b)は、アクチュエータ1を組み立てる前の、部品の状態の第1接続体11および第2接続体12を示す。部品の状態では、第1接続体11および第2接続体12はせん断変形していない。本形態では、アクチュエータ1を組み立てたとき、第1接続体11と第2接続体12が軸線L方向で逆向きにせん断変形した状態となるように構成されている(図2参照)。これにより、可動体3が軸線L方向に振動した際に、第1接続体11および第2接続体12の内周部に加わる応力が緩和されるので、アクチュエータ1の耐久性を高めることができる。
【0056】
(接着補助剤の塗布方法)
図6は、内枠部材に対する接着補助剤13の塗布方法の説明図である。図6では、第1内枠部材36に対する接着補助剤13の塗布方法を示しているが、第2内枠部材37に対しても、同一の塗布方法によって接着補助剤13が塗布される。図6に示すように、本形態では、複数の第1内枠部材36を積層して塗布用治具95によって保持し、接着補助剤13を塗布した後、乾燥させて塗布用治具95から取り外す。
【0057】
第1内枠部材36は、可動体3の支軸30が圧入される環状突部361を備える。図6(a)に示すように、塗布用治具95に設けられたピン96を第1内枠部材36の環状突部361の内周側に通し、複数の第1内枠部材36を中心軸線LA方向に積層する。これにより、複数の複数の第1内枠部材36が中心軸線LA方向に当接した状態で、塗布用治具95に保持される。
【0058】
次に、図6(b)に示すように、積層状態の第1内枠部材36をピン96と共に接着補助剤13に浸漬し、ディッピングによって接着補助剤13を塗布する。あるいは、積層状態の第1内枠部材36に対して外周側からスプレーにより接着補助剤13を塗布する。これにより、複数の第1内枠部材36の外周面360に対して一度に接着補助剤13が塗布される。
【0059】
図4(a)に示すように、第1内枠部材36の外周面360は、中心軸線LA方向の一方側LA1へ向かうに従って径方向内側へ向かう方向へ傾斜するテーパー面362を備える。テーパー面362は、外周面360の一方側LA1の端部に配置され、第1内枠部材36の一方側LA1の端面363の外周縁に接続される。第1内枠部材36は、一方側LA1の端面363の外径が他方側LA2の端面364の内径よりも大きい。そのため、第1内枠部材36を中心軸線LA方向に積層したとき、図6(a)に示すように、上側に配置される第1内枠部材36の他方側LA2の端面364と、下側に配置される第1内枠部材36の一方側LA1の端面363とが当接する。
【0060】
本形態では、第1内枠部材36の外周面360がテーパー面362を備えているので、第1内枠部材36の当接箇所には、テーパー面362と他方側LA2の端面364によって径方向内側へ凹むV字状の窪みが形成される。ディッピングもしくはスプレーにより接着補助剤13を塗布すると、図6(b)に示すように、接着補助剤13はテーパー面362と他方側LA2の端面364によって構成される窪みに入り込み、テーパー面362および端面364にも接着補助剤13が塗布される。
【0061】
接着補助剤13の塗布後には、図6(c)に示すように、エアカッター97を用いて、径方向外側から第1内枠部材36の外周面360に送風して乾燥させる。図6(c)の拡大図に示すように、外周面360の一方側LA1の端部では、テーパー面362に沿ってエアカッター97からの風が案内されるため、テーパー面362と他方側LA2の端面364によって構成される窪みに空気が流れ込み、上下方向に重なる第1内枠部材36の当接箇所に風が当たる。
【0062】
第2内枠部材37は第1内枠部材36と同一形状である。従って、第1内枠部材36と同一の方法によって接着補助剤13が塗布される。図4(b)に示すように、第2内枠部材37の外周面370は、中心軸線LA方向の一方側LA1へ向かうに従って径方向内側へ向かう方向へ傾斜するテーパー面372を備える。テーパー面372は、第2内枠部材37の外周面370の一方側LA1の端部に配置され、第2内枠部材37の一方側LA1の端面373の外周縁に接続される。第2内枠部材37の環状突部371の内周側にピン96を通して複数の第2内枠部材37を中心軸線LA方向に積層すると、下側に配置される第2内枠部材37の一方側LA1の端面373と、上側に配置される第2内枠部材37の他方側LA2の端面374とが当接して、第1内枠部材36と同一の積層状態になる。この状態で、上記と同様に、接着補助剤13の塗布工程および乾燥工程を行う。
【0063】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のアクチュエータ1は、支持体2および可動体3と、支持体2および可動体3に接続されるゲル状部材(第1接続体11および第2接続体12)と、磁石61およびコイル62を備えており可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動機構6と、を有する。可動体3は、支持体2の内周側で磁石61およびコイル62のうちの一方を支持する支軸30と、支軸30に対して固定される内枠部材(第1内枠部材36および第2内枠部材37)を備える。支持体2は、内枠部材と径方向で対向する外枠部材(第1外枠部材51および第2外枠部材52)と、外枠部材の外周側を囲む筒状のケース20を備える。ゲル状部材(第1接続体11および第2接続体12)は、内枠部材と外枠部材の径方向の隙間に配置される。第1内枠部材36の外周面360、第2内枠部材37の外周面370、第1外枠部材51の内周面510、および第2外枠部材52の内周面520は、ゲル状部材(第1接続体11、第2接続体12)に接続される接合面である。第1内枠部材36の外周面360は、中心軸線LA方向の一方側LA1へ向かうに従って径方向内側へ向かう方向へ傾斜するテーパー面362を備える。同様に、第2内枠部材37の外周面370は、中心軸線LA方向の一方側LA1へ向かうに従って径方向内側へ向かう方向へ傾斜するテーパー面372を備える。
【0064】
また、本形態のアクチュエータ1の製造方法は、ゲル状部材(第1接続体11および第2接続体12)を製造するゲル状部材製造工程と、ゲル状部材(第1接続体11および第2接続体12)を支持体2および可動体3に接続する組立工程と、を行う。ゲル状部材製造工程では、内枠部材と外枠部材(第1内枠部材36と第1外枠部材51、もしくは第2内枠部材37と第2外枠部材52)を製造用治具90に位置決めし、内枠部材と外枠部材との隙間Sにゲル材料Gを充填して硬化させ、硬化物を内枠部材および外枠部材と共に製造用治具90から取り外す。組立工程では、内枠部材(第1内枠部材36および第2内枠部材37)を支軸30に対して固定するとともに外枠部材(第1外枠部材51および第2外枠部材52)をケース20に対して固定する。また、ゲル状部材製造工程では、各内枠部材を製造用治具90に位置決めする前に、各内枠部材に接着補助層を形成する。接着補助層形成工程では、複数の内枠部材(第1内枠部材36もしくは第2内枠部材37)を中心軸線LA方向に積層する工程と、積層状態の内枠部材の外周面360に接着補助剤13を塗布する工程と、積層状態の内枠部材の外周面360に向けて送風することによって接着補助剤13を乾燥させる工程と、を行う。
【0065】
このように、本形態では、ゲル状部材(第1接続体11および第2接続体12)は、可動体3側の部品である内枠部材と、支持体2側の部品である外枠部材に接続されて部品化されている。第1接続体11との接合面である第1内枠部材36の外周面360は、テーパー面362を備えている。同様に、第2接続体12との接合面である第2内枠部材37の外周面370は、テーパー面372を備えている。
【0066】
ゲル状部材との接合強度を高めるためにゲル材料と反応する接着補助剤13(例えば、プライマー)をゲル状部材との接合面に塗布するにあたって、接合面である外周面360がテーパー面362を備え、外周面370がテーパー面372を備えていれば、内枠部材(第1内枠部材36、第2内枠部材37)を中心軸線LA方向に積層して一度に接着補助剤13を塗布した場合に、積層された内枠部材同士が接合されにくい。すなわち、接着補助剤13の塗布後に外周側からエアカッター97によって送風して乾燥させる際、テーパー面362、372によって空気が案内されるので、内枠部材の当接箇所に風が当たりやすい。これにより、内枠部材の当接箇所に付着した接着補助剤13が除去されやすいので、積層された内枠部材が接合されにくい。よって、接着補助剤13の塗布作業を効率的に行うことができるとともに、積層状態で接合された内枠部材を分離する手間を削減できる。よって、アクチュエータ1の生産性を高めることができる。
【0067】
本形態では、ゲル状部材(第1接続体11および第2接続体12)は、ゲル材料が硬化した硬化物であり、ゲル状部材が接合される接合面(第1内枠部材36の外周面360、第2内枠部材37の外周面370、第1外枠部材51の内周面510、および第2外枠部材52の内周面520)は、ゲル材料と接触して反応する接着補助剤13が塗布される接着補助剤塗布面である。このように、ゲル状部材との接合面に接着補助剤13を塗布することにより、接合面に対するゲル状部材の固定強度を高めることができる。
【0068】
本形態では、第1内枠部材36の外周面360に設けられたテーパー面362は、第1内枠部材36の一方側LA1の端面363の外周縁に接続されている。このように、第1内枠部材36の一方側LA1の端部にテーパー面362を配置すると、テーパー面362に沿って案内された風が第1内枠部材36の当接箇所(すなわち、端面363、364が当接する箇所)に当たりやすい。また、本形態では、テーパー面362に沿って案内された風が上側の第1内枠部材36の他方側LA2の端面364に衝突するので、第1内枠部材36の当接箇所に風が当たりやすい。従って、中心軸線LA方向に積層された第1内枠部材36同士が接合されにくい。また、第2内枠部材37においても、テーパー面372を設けたことにより、同様の作用効果を奏する。
【0069】
(変形例)
図7(a)は、変形例の内枠部材38、外枠部材、およびゲル状部材の断面図であり、図7(b)は、変形例の内枠部材38に対する接着補助剤13の塗布方法の説明図である。アクチュエータ1では、上記形態の第1内枠部材36および第2内枠部材37に代えて、図7(a)、図7(b)に示す形状の内枠部材38を用いることができる。図7(a)には、第1内枠部材36に代えて変形例の内枠部材38を用いた場合の構成を示す。
【0070】
図7(a)に示すように、変形例の内枠部材38と、内枠部材38を囲む第1外枠部材51との間には、第1接続体11が配置される。なお、図7(a)では、第1接続体11および第1外枠部材51の形状を模式的に示しているため、図4(a)に示す第1接続体11および第1外枠部材51の形状と異なっているが、図4(a)に示す形状と同一であってもよいことは勿論である。
【0071】
内枠部材38は、径方向内側へ突出する環状突部381を備える。環状突部381に可
動体3の支軸30を圧入することにより、内枠部材38が支軸30に固定される。内枠部材38の外周面380は、中心軸線LA方向の一方側LA1へ向かうに従って径方向内側へ向かう方向へ傾斜するテーパー面382と、テーパー面382の一方側LA1の端縁から一方側LA1へ延びる筒状面385を備える。また、テーパー面382の他方側LA2の端縁には、筒状面385よりも大径の大径筒状面386が接続される。大径筒状面386、および、第1外枠部材51の内周面510は、第1接続体11に接合される接合面である。
【0072】
変形例の内枠部材38に対して接着補助剤13を塗布する際、上記形態と同様に、複数の内枠部材38を積層して塗布用治具95によって保持し、接着補助剤13を塗布した後、エアカッター97からの送風により乾燥させて塗布用治具95から取り外す。
【0073】
例えば、図7(b)に示すように、塗布用治具95に設けられたピン96を内枠部材38の環状突部381の内周側に通し、複数の内枠部材38を中心軸線LA方向に積層する。これにより、複数の複数の内枠部材38が中心軸線LA方向に当接した状態で、塗布用治具95に保持される。この状態で、ディッピングによって接着補助剤13を塗布するか、もしくは、外周側からスプレーにより接着補助剤13を塗布する。
【0074】
図7(b)に示すように、内枠部材38の中心軸線LA方向の一方側LA1の端面383の外径(すなわち、筒状面385の外径)は、内枠部材38の中心軸線LA方向の他方側LA2の端面384の内径よりも小さい。そのため、複数の内枠部材38を中心軸線LA方向に積層したとき、上側の内枠部材38の他方側LA2の端部の内側に下側の内枠部材38の一方側LA1の端部が入り込む。そして、上側の内枠部材38の他方側LA2の端面384の内周縁がテーパー面382に当接する。変形例では、上側の内枠部材38と下側の内枠部材38との当接箇所がテーパー面382であるため、当接箇所は面接触でなく、線接触している。
【0075】
このように、変形例では、積層した内枠部材38が面接触でなく線接触しており、接触面積が小さい。従って、内枠部材38の当接個所に接着補助剤13が付着しても接合されにくい。また、当接箇所はテーパー面382であるため、乾燥工程を行う際、テーパー面382に案内された風が当接箇所に当たりやすい。従って、当接個所から接着補助剤13が除去されやすく、内枠部材38が接合されにくい。よって、接合された内枠部材38を分離する手間を削減できるので、アクチュエータ1の生産性を高めることができる。
【0076】
なお、変形例の内枠部材38において、テーパー面382の一方側LA1の端縁から一方側LA1へ延びる筒状面385を設けず、テーパー面382が内枠部材38の一方側LA1の端面383の外周縁に繋がる構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…アクチュエータ、2…支持体、3…可動体、4…コイルホルダ、6…磁気駆動機構、7…配線基板、8…リード線、10…接続体、11…第1接続体、12…第2接続体、13…接着補助剤、20…ケース、21…第1蓋部材、22…第2蓋部材、24…ケース本体、25…第2外枠部材固定部、26…蓋部、27…係止部、28…規制部、29…溝部、30…支軸、31…第1ヨーク、32…第2ヨーク、33…第1磁性部材、34…第2磁性部材、35…第3ヨーク、36…第1内枠部材、37…第2内枠部材、38…内枠部材、41…第1外枠部材固定部、42…胴部、43…第1凹部、44…第1段部、45…第2段部、46…第2凹部、47…第3段部、48…溝部、49…凸部、51…第1外枠部材、52…第2外枠部材、60…配線引き出し部、61…磁石、62…コイル、63…コイル線、64…端子ピン、65…切欠き部、66…カバー、69…基板固定部、71…保持溝、90…製造用治具、91…円形凹部、92…ピン、93…ディスペンサー、94
…底面、95…塗布用治具、96…ピン、97…エアカッター、111、121…第1ゲル端面、112、122…第2ゲル端面、210…溶着用凸部、220…溶着用凸部、250…溶着穴、310、330、340…軸穴、331…端板部、332…円筒部、360…外周面、361…環状突部、362…テーパー面、363…一方側の端面、364…他方側の端面、370…外周面、371…環状突部、372…テーパー面、373…一方側の端面、374…他方側の端面、380…外周面、381…環状突部、382…テーパー面、383…一方側の端面、384…他方側の端面、385…筒状面、386…大径筒状面、410…溶着用凹部、510、520…内周面、511、512…環状段部、610…軸穴、G…ゲル材料、L…軸線、L1…一方側、L2…他方側、LA…中心軸線、LA1…一方側、LA2…他方側、S…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7