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特開2022-33683専用の圧縮スペースを備えた4ストローク相対運動シリンダ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022033683
(43)【公開日】2022-03-02
(54)【発明の名称】専用の圧縮スペースを備えた4ストローク相対運動シリンダ
(51)【国際特許分類】
   F01B 7/20 20060101AFI20220222BHJP
   F02F 3/00 20060101ALI20220222BHJP
   F01B 17/02 20060101ALI20220222BHJP
【FI】
F01B7/20
F02F3/00 E
F01B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215142
(22)【出願日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】16/998,771
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2019/068510
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520510542
【氏名又は名称】ハンナ、イブラヒム、モウニル
【氏名又は名称原語表記】HANNA, Ibrahim, Mounir
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ、イブラヒム、モウニル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シリンダーと内部の圧力を最適化して、未燃焼の排気ガスや混合気を最小化しつつも、優れた出力を実現させる。
【解決手段】シリンダ104には、シリンダーの出力と効率を高めるために内部スペース208に任意に挿入されるフローティングピストン202を含み、クランクシャフトピストン204に加えられる燃焼圧力が、膨張行程の初期の段階ではクランクシャフトピストンのより小さな表面積に加えられ、膨張行程の後の段階ではクランクシャフトピストンのより大きな表面積に加えられる。可変燃焼スペースとすることで不完全燃焼を防止でき、さらに1回のサイクルで4ストロークの作業(取込、圧縮、燃焼、排気)を実現する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む機械式エンジン-シリンダシステム:
内部スペース、内部構造、クランクシャフトピストンを備えたシリンダであって、
ここで、そのシリンダの内部スペースが内部構造により変化し、専用の燃焼スペースを有しており、
また、その内部構造が、専用の燃焼スペースに、表面を提供し、
さらに、その内部構造が、パワーストロークの初期段階において、キャビティ内に、第1燃焼スペースを有し、
さらに、その内部構造が端部を有し、それが第1燃焼スペースと第2燃焼スペースを分けており、
ここで、クランクシャフトピストンに加えられる燃焼圧力が、膨張行程の初期の段階ではクランクシャフトピストンのより小さな表面積に加えられ、膨張行程の後の段階ではクランクシャフトピストンのより大きな表面積に加えられ、
ここで、内部構造に加えられる燃焼圧力は、膨張行程の初期の段階ではクランクシャフトピストンの方向に加えられ、膨張行程の後の段階では反対方向に加えられ、
内部構造とクランクシャフトピストンは、膨張行程の際に係合から解放されることができるサイズになっており、
膨張行程の初期段階において、内部構造の動きにより、燃焼用のフルードを専用の燃焼スペースに送る力を生成する、
機械式エンジン-シリンダシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、パワーストローク中のクランクシャフトピストンの加速が減少して、パワーストロークの出力が、より少ない燃料で実現できる、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、内部構造のキャビティ内で圧力を受ける端部により、シリンダーの内部構造を前進させて、燃焼用の気体とスペースを奪い合い、これによりより少ないフルード取込と排気を実現する、システム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、パワーストロークによるフルードの排気条件が、シリンダのクリアランスボリュームとパワーストローク中のクランクシャフトピストンの行程容積の和よりも小さい、システム。
【請求項5】
請求項3に記載のシステムであって、内部構造とクランクシャフトピストンの表面のサイズが燃焼力とバランスが取れており、これによりパワーストローク中に機械的な干渉なしに係合から解放されることができる、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、内部構造が力を加える機構に反応する、システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムであって、力を加える機構が、センサーによりスロットルの位置に反応し、これによりスロットルの位置によって力が内部構造に加えられることになる、システム。
【請求項8】
請求項6に記載のシステムであって、力を加える機構が膨張行程中に内部構造に後退する力を加えるように構成された、システム。
【請求項9】
請求項6に記載のシステムであって、力を加える機構が膨張行程中に内部構造に前進する力を加えるように構成された、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、内部構造に前進する力を加えることにより、エンジンを加速するように構成される、システム。
【請求項11】
請求項6に記載のシステムであって、ターボチャージャー及びスーパーチャージャーが力を加える機構の一部である、システム
【請求項12】
請求項6に記載のシステムであって、力を加える機構に電磁アクチュエーターを含む、システム。
【請求項13】
請求項6に記載のシステムであって、力を加える機構が油圧システムを備え、フルードの圧縮のため専用のエンジンシリンダとして構成されている、システム。
【請求項14】
請求項1に記載のシステムであって、内部構造が前進し、燃焼スペースに残った圧縮された気体の一部が減圧されることで、シリンダヘッドに冷却効果をもたらす、システム。
【請求項15】
請求項1に記載のシステムであって、フルードの圧縮が、パワーストローク中に専用の圧縮スペースで開始される、システム。
【請求項16】
請求項1に記載のシステムであって、専用の圧縮スペースで圧縮されたフルードの1部が、解放されて、膨張行程の後の段階で第1燃焼スペースで減圧される、システム。
【請求項17】
内部構造をシリンダシステム内に導入する方法であって、
該システムは、内部スペースを備えたシリンダを含み、及び、該システムは、クランクシャフトピストンを含み、
該方法は以下を含む;
そのシリンダの内部スペースが内部構造により変化し、ここで、クランクシャフトピストンに加えられる燃焼圧力が、膨張行程の初期の段階ではクランクシャフトピストンのより小さな表面積に加えられ、膨張行程の後の段階ではクランクシャフトピストンのより大きな表面積に加えられ、
内部構造のキャビティの圧力を増大させて、内部構造とクランクシャフトピストンの両方に圧力を加え、内部構造の表面に加える力の向きを変更させることにより、内部構造は膨張行程の初期の段階ではクランクシャフトピストンの方向に加速し、膨張行程の後の段階では反対方向に加速され、
ここで内部構造は、内部のスペースに収容できるように細長い筒状の形をしており、この筒状の形が第1スペースのキャビティと第2スペースのキャビティを規定することになり、
ここで内部構造は、クランクシャフトピストンにより排気された体積を満たすためにフルードとその体積を奪い合うものであり、
ここでその内部構造が導入されることで、各パワーストロークで廃棄された実際の気体の体積が、クリアランスボリュームと行程容積の和よりも小さくなるように構成されている。
【請求項18】
以下を含む機械式のエンジンシリンダ:
フルードを充填する内部スペースを含む機械式のシリンダ、
その内部スペース内で往復運動をするように構成された、クランクシャフトピストン、
そのシリンダの内部構造にはフローティングピストンが含まれ、
ここで、この内部構造はクランクシャフトピストンの動きに合わせて可変的にシリンダ内部に前進・後退させることができ、
さらに、その内部構造に、パワーストロークの初期段階において、キャビティや、第1燃焼スペースを有するものであり、
さらに、その内部構造が端部を有し、それが第1燃焼スペースと第2燃焼スペースを分けているものであり、
ここで、クランクシャフトピストンに加えられる燃焼圧力が、膨張行程の初期の段階ではクランクシャフトピストンのより小さな表面積に加えられ、膨張行程の後の段階ではクランクシャフトピストンのより大きな表面積に加えられるものであり、
ここで、内部構造に加えられる燃焼圧力は、膨張行程の初期の段階ではクランクシャフトピストンの方向に加えられ、膨張行程の後の段階では反対方向に加えられるものであり、
内部構造の表面とクランクシャフトピストンは、膨張行程の際に係合から解放されることができるサイズになっているものであり、
吸込み(suction)、圧縮、燃焼、排気の4つのストロークが2回のクランクシャフトの往復運動で実現されるものであり、
また、圧縮されたフルードが、内部構造の第1燃焼スペースに保管されるものである。
【請求項19】
以下を含む、機械式のエンジンシステム:
エンジンブロック内に複数のシリンダを備え、力を加える機構がターボチャージャー若しくはスーパーチャージャーポンプもしくは電磁アクチュエーター、及びスロットルを備えているものであって、
そのエンジンブロックにクランクシャフトピストンの位置に反応するセンサーが含まれているものであって、
そのエンジンシリンダに内部スペース、内部構造、クランクシャフトピストン、第1フルードインレット、第2フルードインレットを備えているものであって、
ここで、そのシリンダの内部スペースが内部構造により変化し、専用の燃焼スペースを有するものであり、
また、その内部構造が、専用の燃焼スペースの表面を提供するものであり、
さらに、その内部構造がキャビティ内に端部を有し、それが第1燃焼スペースと第2燃焼スペースを分けているものであり、
さらに、その内部構造は、パワーストロークの初期段階において、キャビティ内に、第1燃焼スペースを有するものであり、
第1フルードインレットは、マニホールド及び弁を備え、各往復サイクルでフルードを専用の圧縮スペースに送るものであり、
第2フルードインレットは、マニホールド及び弁を備え、それが力を加える機構に反応して、任意の往復サイクルに応じて充填されたフルードをシリンダ内に開放するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2020年8月20日に出願された米国の出願番号16/998,771と2019年12月25日に出願されたPCT出願番号PCT/US2019/06851を優先権主張するものである。
【0002】
本発明は作業用に広く利用される機械に関するものであり、具体的には油圧シリンダ(シリンダー、ということもある)と、内燃シリンダに関するものである
【0003】
レシプロシリンダの構成部品及び操作に関する用語の定義は以下の通りである。
1.クランクシャフトのピストンの往復運動とは、クランクシャフトはボトム・デッド・センタ(下死点、以下BDC)と呼ばれるシリンダの最も低い位置と、トップ・デッド・センタ(上死点、以下TDC)と呼ばれるシリンダの最も高い位置を往復することを意味する。
2.行程容積とは、BDCとTDCの間のストローク距離とクランクシャフトの表面積を掛けたものである。
3.クリアランスボリュームとは、従来のシリンダにおいて燃焼の準備用に液体が圧縮されるTDCとシリンダヘッド間のスペースのことである。
4.排気量とは、往復運動のサイクルの後に交換が必要な空気と燃料の混合物の量であり、従来のシリンダーではクリアランスボリュームと行程容積の合計量と等しくなるものである。クリアランスボリューム内の内部構造(occupying structure:占有構造ともいう)の配置を変えるだけでクリアランスボリュームと圧縮比を変更することができるが、排気量を変更することはできない。
5.位置の関数としてのパスカルの法則は、パワーストローク中にフルード(FLUID)を排出することによりクランクシャフトの表面に対してかかる力を計算するために用いられるものである。ここでは力の出力とストローク距離の積は機械的出力を表し、これは機械的入力はまた熱入力と同等となる。
6.時間の関数としてのパスカルの法則は、本発明のシステムにより紹介する新しい数学的な方法であり、各ストロークごとに必要とされるフルードを交換するための、機械的入力と熱入力を保存することによりクランクシャフトピストンの背後のスペースで燃焼用のフルードと混合させて、クリアランスボリュームと行程容積の和よりも小さくすることができることを説明するものである。
7.シリンダのフルードインレット(流体入口)とは、フルードのマニホールドとエントリー弁である。従来のシリンダーでは、フルードのインレットは、例えば、ある往復サイクルと別の往復サイクルとで空気を変えて供給することができるが、こうした変化は燃焼前の圧縮比に影響を及ぼしてしまう。本明細で示す通り、第2のシリンダのフルードインレットを備えることでパワーストローク中のフルードの量や圧力を変えることができるが、従来のシリンダーではこうした事は不可能である。
8.第2のインレットとは、本明細においてはパワーストローク中に圧縮または燃焼用に供給されるフルードのことであり、これにより燃焼または油圧駆動力を増加させるものである。第一のフルードインレットが、各シリンダーのストロークごとにフルードをシリンダーに供給するものであるが、第2のインレットは増大する抵抗力駆動負荷に応じて任意のフルードを供給することができる。
9.従来の4気筒のエンジンとは、2サイクルで吸込、圧縮、燃焼、排気を行うレシプロエンジンのことである。同じシリンダー内の1回の動きで吸込、圧縮、排気を行うことにより従来の2ストロークシリンダーを最小化することができるものである。従来のシリンダーでは専用の圧縮スペースが設けられておらず、吸込、圧縮と燃焼、排気を分離しつつも各ストロークでパワーストロークを実現している。本明細で開示するこのシステムを、4ストローク相対運動シリンダーと呼ぶ。
10.専用の圧縮スペースとは、本明細書では一回のサイクルで4ストロークを実現させるための機能のことである。
11.従来の内部構造とは、シリンダー内部に配置され、燃焼前の圧縮比やクリアランスボリュームに影響与える挿入体のことを意味する。本明細書においては、内部構造は燃焼または油圧力により、クランクシャフトの方向へ向かってシリンダ内部を加速させ、燃焼を促進し、排気量を最小限に抑えるとともに、シリンダ内部の圧力を増加させるために使用される。
12、力の制御メカニズムとは、本明細書では、パワーストローク時におけるクランクシャフトの駆動力を増減させることができる機械装置を意味する
13.従来のシリンダーのフルードデコンプレッションとは、パワーストロークの終わりにフルードの圧力が減少することで発生する。クランクシャフトピストンの動きが毎秒15メートルを超える場合、クランクシャフトピストンの内部の表面はフリージングゾーン(freezingzone)と呼ぶ現象の影響を受ける。これは不完全燃焼に関わるため望ましくない。本明細書では、パワーストロークの開始時に専用の圧力スペースでフルードデコンプレッションを導入し、また、パワーストロークの後半でインレットを開いて圧縮した空気を燃焼スペースに移動させることにより、別のフルードデコンプレッションを導入する。これによりプライマリの燃焼スペースから排気し、燃焼の質を低下させることなく内部構造を冷却することができる。例えば、パワーストロークの終了近くにおいて、シリンダー内部の排気の圧力比が2:1の場合、また、燃料以外の混合過給フルードの割合が10:1でシリンダーに供給された場合、排気液が排出され、圧縮された新鮮な空気が減圧されてシリンダ内に広がり、冷却効果をもたらすとともに一部圧縮した空気を供給する。これは次のピストン運動で完全に圧縮される。
【0004】
実に様々な装置がシリンダーを使って機械的な機能や有用な仕事を生み出している。典型的な例としては内燃機関 (以下エンジン)であり、混合気を圧縮・燃焼するピストンを備えた複数のシリンダを備えている。各ピストンはクランクシャフトと結合されており、このピストンに加えられた力が、様々な中間装置を通じて車両の車輪に伝えられ、推進力を生み出している。また、こうしたピストンはタービンやポンプや発電機を駆動させるために使用される。
【0005】
エンジンや、油圧システムなどに使用する場合、一般的なシリンダではストローク量(つまりピストン表面を移動する量)に比例する仕事量を生成する。これはピストンの表面とストローク距離(つまり軸方向のピストン表面の距離)から生成される。したがって従来のシステム(つまりガソリンやディーゼルエンジン)はシリンダの出力を上げるためにストローク量や距離を増加させることを目指してきた。ストローク量や距離を増加させることでシリンダーのサイズやエンジンの質量を増大させることになるが、それによりエンジンや車両の経済性を低下させることになる。従来のシリンダーでは行程容積とクリアランスボリュームの和は、排気量と等しくなり、これが各ストロークに必要な取込量を示している。排気量を行程容積とクリアランスボリュームの和よりも小さくしたり、行程容積よりも小さくする解決方法があれば、排気量の減少率に比べてエンジンのパフォーマンスを向上させることができる。
【0006】
エンジンの経済性を改善するための別の方法としては、リカバリシステムを使う方法がある。例えば油圧シリンダーは、ターボチャージャーや電気式のリカバリシステムに結合させることができるが、こうしたリカバリシステムはしばしば効率性に制限があり(例えば20%から30%)、特に圧縮率を高めるために初期圧力を1000psiにする際に見うけられる。ターボチャージャーのリカバリーでは、より低い圧縮率でシリンダーの駆動を行うことで、リカバリー率が改善される。本明細書の例ではリカバリー率の可能性は80%を超える。
【0007】
クリーンな環境要件を満たすために、4ストロークエンジンに直接噴射方式が導入されている。2ストロークエンジンではすべてのストロークでパワーストロークを実施することが求められるが、不完全燃焼の排気ガスを排出する傾向があるため、1部の地域では禁止されている。1回のサイクルで4ストロークの作業(取込、圧縮、燃焼、排気)を実現しつつ、すべてのストロークをパワーストロークにして、しかも排気ガスの質を犠牲にしない解決方法があれば、2ストロークエンジンと4ストロークエンジンの両方にメリットをもたらすことになる。
【0008】
以上のことから、シリンダーと内部の圧力を最適化して、未燃焼の排気ガスや混合気を最小化しつつも、優れた出力を実現させるという、環境が求める条件を満たすための機械的なニーズが存在している
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この概要では、下記の発明の詳細で述べる概念についてシンプルにした形でいくつか説明する。この概要は、本発明の主な特徴を特定することを目的としたものでは全くなく、また特許請求の範囲を限定することを意図したものでもない。さらに、ここで述べるいかなる解決方法も、本明細書で主張する範囲を限定する意図はないことにご留意をいただきたい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態として、最もシンプルな形は本発明のシリンダを用いたエンジンである。このシリンダシステムはフルードを供給する内部スペースを持つ機械式のシリンダである。つまり、機械式エンジン・シリンダーシステムである。クランクシャフトピストンはその内部スペースで往復運動をするように構成されており、またそのシリンダの内部構造にはフローティングピストンが含まれる。この内部構造はクランクシャフトピストンの動きに合わせて可変的にシリンダ内部に前進・後退させることができる。この内部構造はクランクシャフトピストンとシリンダの上部にクリアランスエリアに燃焼室を含む。またこの内部構造はエンジンのヘッドに面する端部を有しており、この端部が第1と第2の燃焼室を作り出す。またこの内部構造とクランクシャフトピストンにはオス‐メスの結合部を有する。
【0011】
また、ここで開示する一つまたは複数のシリンダを備えたエンジンブロックで、シリンダシステムがフルードが供給される内部スペースを有するシリンダと、その内部スペースで反復運動をするように構成されたクランクシャフトピストンからなるものがある。またシリンダの内部構造はフローティングピストンを含み、クランクシャフトピストンの動きに合わせて可変的にシリンダ内部スペースに前進・後退させることができる。さらに、この内部構造はクランクシャフトピストンとシリンダの上部にクリアランスエリアに燃焼室を含む。このシリンダシステムには各シリンダに第1と第2のフルードインレットがあり、このフルードインレットはフルードマニホールドと弁からなる。
【0012】
別の実施形態では、エンジンブロックのシリンダは、フローティングピストンを備えたシリンダの他に従来のシリンダで構成されるか、フローティングピストンを備えたシリンダの1形態で構成されうる。
【0013】
別の実施形態では、フローティングピストンがシリンダ内部のスペースの一部を徐々に排気するものがある。これにより実際の排気量がクリアランスボリュームや行程容積の和よりも小さくなる
【0014】
別の実施形態では、フローティングピストンが排気量を減少させてフルード取込を減らすものもある。
【0015】
別の実施形態では、フローティングピストンがクランクシャフトピストンを燃焼力と同様の方向へ加速させるものもある。
【0016】
別の実施形態では、エンジンがシリンダの力を制御する機構からなるものがある。これはシリンダの内部構造を電磁アクチュエーターや、ターボチャージャーポンプ機構や、スーパーチャージャーポンプ機構により制御するものである。
【0017】
別の実施形態では、フローティングピストンが何らかの用途のための固定された構造であるか、機械的な結合か、磁気制御か、油圧により、シリンダの膨張または圧縮ストロークの際に、システムの必要性に応じて任意に、そして動的に、シリンダの内部の圧力を増減させることが可能な第2フローティングピストンとして機能するものがある。
【0018】
別の実施形態では、力の制御機構はスロットルの位置に応じて作用するものがある。
【0019】
別の実施形態では、サイクルごとに電磁アクチュエーターをトリガさせることにより、スロットルペダルの位置を監視し、またそれに反応する機械式もしくは磁気センサを起動させるものがある。
【0020】
別の実施形態では、スーパーチャージまたはターボチャージャーの気流を、第2フルードインレットを通じてシリンダーに送り込むことにより、機械式もしくは磁気センサを起動させるものがある。このセンサーはエンジンの駆動負荷及びクランクシャフトピストンの正・負両方の駆動力を監視するものである。
【0021】
別の実施形態では、制御機構のセンサーが、クランクシャフトまたはクランクシャフトのロッドの位置や、フローティングピストンの位置に反応するものがある
【0022】
また別の実施形態では、制御機構のセンサーが、エンジンの負荷の大きさやクランクシャフトの抵抗力に反応するものもある。
【0023】
また別の実施形態では、制御機構のセンサーが、エンジンの速度に反応するものもある。
【0024】
また別の実施形態では、制御機構のセンサーが、エンジンの温度に反応するものもある。
【0025】
また別の実施形態では、制御機構の電磁アクチュエーターが、2つではなく3つの極を使用するものがある。極を変えるとそれに伴って電子が一方から他方へ移動することになる。3つの極を使用することにより電子を別の場所に配置する必要もなく、引力と斥力を生み出すことができる。これによりサイクルの頻度が向上するだけでなく、高い出力を得ることもできる。
【0026】
また別の実施形態では、磁場が、フローティングピストンの永久磁石に反応して、膨張行程中にフローティングピストンをシリンダーの内部スペースから後退させるものもある
【0027】
別の実施形態では、力の制御機構がターボチャージャーまたはスーパーチャージャーであり、フルードが直接フローティングピストンとシリンダヘッドの間のスペースに充填され、その圧力を増加させてフローティングピストンの速度を加速させ、間接的に燃焼圧力やクランクシャフトピストンに作用する力を増大させるものもある。
【0028】
別の実施形態では、フルードを充填する経路は第1のインレットのほかに第2のフルードインレットも含まれる。力の制御機構の制御の下で、負荷と速度に反応する形で、この第1インレットは各ストロークでのエンジンへの吸入に利用され、第2インレットは可変的なエンジンフルードの供給に利用される。
【0029】
また別の機種形態では、シリンダーが油圧式のシリンダーで、フルードが作動液のものがある。この作動液はクランクシャフトピストンとフローティングピストン(内部構造)に囲まれたスペースに直接供給される。
【0030】
別の実施形態ではシリンダーが燃焼シリンダーであり、フルードが可燃性フルードであるものがある。
【0031】
別の実施形態では、フローティングピストンが、クランクシャフトピストンと実質的に同じ速度で、膨張行程中のクランクシャフトピストンの位置と同じまたは反対方向に、圧縮行程中のクランクシャフトピストンの動きと同じ方向に運動するものがある。
【0032】
別の態様では、フローティングピストンが、膨張行程中にシリンダの内部スペース内に進み、圧縮行程中はシリンダの内部スペースから完全に後退するものがある。このフローティングピストンは、膨張行程中には特定の位置からさらに前進または後退する。
【0033】
別の態様では、燃焼スペースがフローティングピストンの一部に含まれるか、フローティングピストンに囲まれるものがある。この時の燃焼スペースの直径は、シリンダの直径よりも小さいものである。
【0034】
別の実施形態では、クランクシャフトピストンとフローティングピストンとの係合面は一部または全体が円錐状である。
【0035】
別の実施形態では、フローティングピストンは、膨張行程中に加速の方向を変えることができる第2ピストンである。
【0036】
別の実施形態では、フローティングピストンは、別々の2つのキャビティを作る端部を有しており、4ストロークシリンダーで利用されるクランクシャフトピストンとのオスーメス係合が可能なものがある。この4ストロークは2回の往復サイクルを行うものであり、フルードの圧縮は従来の4ストロークで行い、圧縮と燃焼はシリンダー内の同じスペースで行われる。
【0037】
別の形態としては、専用の圧縮スペースで圧縮を開始して、シリンダー燃焼ごとに膨張と後退を含む2ストローク(2行程ともいう)を実行することにより、4ストロークエンジンの取込(intake)、圧縮、燃焼、排気の4ストローク機能を実現するものもある。
【0038】
別の形態としてはパワーストローク中にフローティングピストンの後ろのスペースに圧縮したフルードを供給することによって、シリンダー内圧を増加させてエンジンの加速度を増加させる方法がある。
【0039】
別の形態としては、フローティングピストンをクランクシャフトの反対方向に動かすことによってエンジンを減速させ、これによりシリンダ内部の圧力を減少させて、未燃焼の排気ガスを早々に排出することなくクランクシャフトのパワーを減少させるものがある。
【0040】
別の形態としては、シリンダの内部構造が、電磁アクチュエータや油圧プレススーパーチャージャーやターボチャージャーにより前進または後退するものがある。
【0041】
別の形態としては、電磁石とガソリンのハイブリッドシリンダ駆動、または油圧とガソリンのハイブリッドシリンダ駆動のものがある。ここでの第2ピストンはクランクシャフトに接続されたピストンに対して2次的圧力を加えるものである。
【0042】
別の形態としては、電磁石に引力や斥力を割り当てることにより、この電磁石に結合している第2ピストンのエネルギーリカバリー効率を高める方法がある。ここでの電磁石の極は2つではなく3つを用いる。
【0043】
別の形態としては、シリンダが燃焼シリンダであり、可燃性燃料を専用の圧縮スペースに噴射する手法も含むものがある。
【0044】
別の形態としては、シリンダーが油圧シリンダーであり、圧縮行程中にさらにフルードを圧縮する手法を含むものがある。
【0045】
さらに別の実施形態としては次のようなものがある。機械式のシリンダーで、フルードを投入するための内部スペースを備え、クランクシャフトピストンがその内部スペースで往復運動をするものであり、この内部構造としてフローティングピストンを第2ピストンとして備えるものがある。この時のフローティングピストンは、膨張行程中に第2ピストンとして第一の方向に移動し、圧縮行程中には第一の方向とは逆の第2の方向へ後退する。この時のシリンダの内部構造は燃焼力により一定の距離を移動し、その後電磁アクチュエーターまたは油圧アクチュエーターによりさらに前進または後退する。
【0046】
さらに機械式のシリンダーを使った別の実施形態としては次のようなものがある。シリンダは内部スペース、内部構造、クランクシャフトを備え、そのクランクシャフトピストンに加えられた燃焼圧力が、膨張行程の初期にクランクシャフトピストンのより小さな表面積に加えられ、それ以降の行程では大きな表面積に加えられるように構成される。
【0047】
さらにシリンダーを使った別の実施形態としては次のようなものがある。シリンダーはフルードを投入するための内部スペースを備え、クランクシャフトピストンがその内部スペースで往復運動をするように構成されるもので、シリンダの内部構造にフローティングピストンとして機能するシリンダ形状の構造を持つものがある。この時のフローティングピストンは、膨張行程中に第2ピストンとして第一の方向に移動し、圧縮行程中には第一の方向とは逆の第2の方向へ後退する。このフローティングピストンはクランクシャフトピストンとシリンダヘッドの間の燃焼スペースに一部囲まれている。さらにこの時のシリンダの内部構造は燃焼力により一定の距離を移動し、その後電磁アクチュエーターまたは油圧アクチュエーターによりさらに前進または後退する。
【0048】
さらに別の実施形態では、内部構造のキャビティ内で燃焼が発生し、その燃焼の圧力が、内部構造とクランクシャフトピストンの両方に加えられるものがある
【0049】
さらに別の実施形態では、内部構造がシリンダに対して動くことができ、その動きが力の制御機構により制御できるものがある。
【0050】
別の実施形態では、力を加える機構がセンサーによりスロットルの位置に反応するものもある。これによりスロットルの位置によって力が内部構造に加えられることになる。
【0051】
別の実施形態では、力を加える機構が膨張行程中に内部構造を後退する力を加えるように構成されている。
【0052】
別の実施形態では、力を加える機構が膨張行程中に内部構造に対してさらに力を加えるように構成されるものもある。
【0053】
別の態様では、システムが力印加機構(力を適用する機構、ともいう)を介して内部構造の背後に新鮮な空気をポンピングすることによって、膨張行程中に圧縮行程機能を部分的に実行するように、または第1のフルードインレットを通して自然エンジン呼吸することによってフルードサクション行程を実行するように構成される。
【0054】
別の実施形態では、膨張行程の初期に内部構造の背後でフルードデコンプレッション(フルード減圧、ともいう)を実施するように構成されるものもある。このフルードデコンプレッションは、前のサイクルで圧縮されて燃焼スペースに残ったフルードを減圧するものである。
【0055】
別の実施形態では、冷却効果のためにフルードデコンプレッションを実施するように構成されるものもある。ここでは、専用の燃焼スペースで圧縮されたフルードを後の行程の実施中に内部構造とシリンダヘッドの間の専用の燃焼スペースから内部構造のキャビティに移動させる。
【0056】
別の実施形態では、膨張行程の後半で排気をクリーンにするために内部構造のキャビティに吸込まれ圧縮された新鮮な空気やフルードを有するようにシステムを構成したものもある。
【0057】
別の実施形態ではターボチャージャーまたはスーパーチャージャーで圧縮された空気が、膨張行程中に、第2フルードインレットから内部スペースに入るように構成されたものもある。
【0058】
別の実施形態では、パワーストローク中に内部構造とクランクシャフトピストンが離れるように構成されたものもある。これを実現するために内部構造の表面エリアを設計して、初期の圧縮比の許容量の最小及び最大の範囲でパワーストローク中に確実に離れることができるようにしている。
【0059】
別の実施形態では、後退ストローク(後退行程、ともいう)の初期部分の間及び内部構造とクランクシャフトピストンとの係合前に、排気フルードがシリンダの内部スペースを出るように、構成される。
【0060】
別の実施形態では、システムが、後退ストロークの間、クランクシャフトが内部構造と係合する時間と完全な収縮の時間との間で、フルードの圧縮が、後に、完了するように構成され、この間、インレット弁は、内部構造のキャビティの間、および専用の圧縮スぺ-スの間で開かれる。
【0061】
別の実施形態では、1度の燃焼ごとに2ストロークで取込(intake)、圧縮、膨張、排気を実行するように構成されるものもある。
【0062】
別の実施形態では、力の制御機構が電磁アクチュエーターを備えたものもある。
【0063】
別の実施形態では、力の制御機構が油圧システムを備えたものもある。
【0064】
別の実施形態では、力の制御機構が強制誘導システムを含むものもある
【0065】
別の実施形態では、フルードを内部構造の取込側に送り、シリンダーの圧力とエンジンの加速度を増加させるように構成されるシステムのものもある。
【0066】
別の実施形態では、後退する力を内部構造に加えることにより、または磁力により、もしくは第2フルードインレットからフルードを取り出すことにより、エンジンを減速させるように構成されるものもある。
【0067】
別の実施形態では、内部構造に前進する力を加えることによりエンジンを加速させるものもある。
【0068】
別の実施形態では、内部構造の初期運動が、燃焼フルードと力をクランクシャフトピストンの方向に動かすことにより、エンジンの振動を吸収させるように構成されるものもある
【0069】
別の実施形態では、膨張行程中に内部構造が方向を変えるものもある
【0070】
さらに次のような機械式のシリンダーを使った実施形態もある。各シリンダに内部スペース、内部構造、クランクシャフトピストンを備えたもの。この内部スペースは、専用の燃焼および圧縮スペースを持つように改良を加えられたもの。またこの内部構造は、この専用の圧縮スペースの表面にもなる。さらにこの内部構造にはパワーストローク初期に第1燃焼スペースとして使用されるキャビティを備えている。またこの内部構造には第1燃焼スペースと第2燃焼スペースを分ける端部がある。さらにクランクシャフトピストンに加えられる燃焼の圧力は、膨張行程の初期の段階ではクランクシャフトピストンの小さな表面スペースに加えられ、膨張行程の後の段階においてはクランクシャフトピストンのより大きな表面スペースに加えられる。この内部構造に加えられる燃焼の圧力は膨張行程の初期の段階ではクランクシャフトピストンの方向に力を加えられ、膨張行程の後の段階においてはこれとは反対にカムシャフトの方向に力を加えられる。ここで、内部構造とクランクシャフトピストンは膨張行程中に係合から解放するようになっている。また膨張行程の初期の段階における内部構造の動きは、圧縮したフルードを専用の圧縮スペースへ送り込む力を生む。
【0071】
別の実施形態では、内部構造のキャビティ内で燃焼させるように構成されているものもあり、この場合キャビティの直径はシリンダーの内側の直径よりも小さく設定されている。
【0072】
別の実施形態では、加速のために必要な時間を減少させることにより、より少ない燃料でストロークのパワー出力を行うことが可能になる。
【0073】
別の実施形態では、内部構造のキャビティが、カムシャフト及びシリンダヘッドに面した端部を有している。
【0074】
別の実施形態では、内部構造の端部により、燃焼フルードを乱流運動させて完全に燃焼させるものもある。
【0075】
別の実施形態では、内部構造のキャビティの端部により内部構造をシリンダー内部で漸次的に前進させ、スペース内にあるフルードをより燃焼させ、必要なフルード取込量も少なくてすむように構成されている。
【0076】
別の実施形態では、内部構造とクランクシャフトピストンの結合部は、円錐型になっている。
【0077】
別の実施形態では、燃焼力により内部構造を前進させることで、フルードの吸引をする。
【0078】
別の実施形態では、内部構造等の及びクランクシャフトピストンの表面のサイズは、燃焼力とバランスをとるように構成されており、パワーストローク中に機械的な干渉を受けることなく分離することができる。
【0079】
別の実施形態では、内部構造は力を加える機構(力を適用する機構、ともいう)に反応する。
【0080】
別の実施形態では、力を加える機構は、センサーによりスロットルの位置に反応する。これによりスロットルの位置によって力が内部構造に加えられることになる。
【0081】
別の実施形態においては力を加える機構が、膨張行程中に内部構造に対して後退する力を与えるように構成されているものもある。
【0082】
別の実施形態においては力を加える機構が、膨張行程中に内部構造に対して前進する力を与えるように構成されているものもある。
【0083】
別の実施形態においては、パワーストロークの初期段階においてフルードの圧縮を増大させるために使うターボチャージャーの力が、力を加える機構の一部であるものがある。
【0084】
別の実施形態においては、力を加える機構に電磁アクチュエーターを備えたものもある。
【0085】
別の実施形態においては、力を加える機構に電磁誘導を備えたものもある。
【0086】
別の実施形態においては、力を加える機構に油圧システムを備えたものもある。
【0087】
別の実施形態においては、内部構造に対して後退する力を加えることにより、エンジンを減速させるものもある。
【0088】
別の実施形態においては、内部構造に対して後退する力を加えることにより、エンジンを減速させるものもある。
【0089】
別の実施形態では、冷却ジャケットを使ってシリンダーを冷却するものもある。
【0090】
別の実施形態では、パワーストロークの後の段階で、シリンダー内部の減圧したフルードによってシリンダを冷却するものもある。
【0091】
別の実施形態では、内部構造が前進することにより、燃焼スペースに残った圧縮されたフルードを減圧する。これによりパワーストロークの初期段階においてシリンダヘッドを冷却する効果をもたらす。
【0092】
別の実施形態では、内部構造が前進することにより、燃焼フルードを引き出し、これにより燃焼初期に起こる振動を最小限に抑えることができる。
【0093】
別の実施形態においては、4つのストロークを、それぞれ別個の2つの圧縮と燃焼スペースで行うものがある。
【0094】
別の実施形態では、4つのストロークが、クランクシャフトピストンの往復運動ごとに行われるものもある。
【0095】
別の実施形態では、4-ストローク-相対運動-シリンダの各サイクルでパワーストロークを実施し、クランクシャフトピストンとシリンダーの間の摩擦を減少させるものもある。
【0096】
別の実施形態では、内部構造がシリンダーに対して相対的に可動するものがある。
【0097】
これらに加えて、シリンダーのシステム内に内部構造を導入する手法として次のものがある。
【0098】
シリンダーや、その内部スペースを含むシステムであり、またクランクシャフトピストンを備えたものも含む。
【0099】
本発明の方法は次の内容を含む。クランクシャフトピストンに加えられた圧力が、膨張行程の初期にクランクシャフトピストンのより小さな表面積に加えられ、それ以降の行程では大きな表面積に加えられるようにシリンダ内部の構造が構成されるもの;
【0100】
及び、内部構造のキャビティ内で圧力を上昇させることにより、内部構造とクランクシャフトピストン両方に圧力を加える。これによりパワーストロークの初期段階においてはクランクシャフトの方向に内部構造を加速させ、後の段階ではそれとは反対に動くことになる。これは内部構造の表面に加えられる力の方向が変わるためである。
【0101】
ここで、内部構造は、内部のスペースに収容できるように細長い筒状の形をしており、この筒状の形が第1スペースの第1キャビティと第2スペースの第2キャビティを規定することになる。
【0102】
ここで、内部構造は、膨張行程においてクランクシャフトピストンの動きで生み出されたものが移動したスペースに供給されるフルードとぶつかることになる。
【0103】
ここで、内部構造がシリンダ内部で燃焼用のフルードと衝突するため、内部構造に供給されるフルードの量は、クリアランスボリュームと行程容積の和よりも小さくなる。
【0104】
別の実施形態においては、シリンダは油圧シリンダであり、フルードは作動液(油圧液、ともいう)である。
【0105】
別の実施形態ではシリンダは燃焼シリンダであり、フルードは燃焼用のフルードである。
【0106】
添付の図面および以下の実施形態の詳細な説明により、本発明の目的、特徴、利点をより簡単に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
ここで取り上げる実施形態は、請求の範囲について説明するための添付の図についてのものであり、請求の範囲を限定する意図はない。
【0108】
図1図1は、本願発明で開示する改善されたシリンダシステムを含んだエンジンシステムの例を概略的に示したものである
【0109】
図2図2 および 3 は、本願発明で開示するシリンダの内部構造の別の例である。ここではシリンダの内部構造の背後にスペースがある。
図3】同上
【0110】
図4図4 は、本願発明で開示するシリンダの内部構造の一例である。
【0111】
図5図5 は、本発明に関する断面図である
【0112】
図6図6は、本発明で開示する内容のうち、膨張行程中にクランクシャフトピストンがどのように動くかを概略的に示したものである。
【0113】
図7図7は、本発明で開示する内容のうち、クランクシャフトロッドとクランクシャフト回転直径を示したものである。
【0114】
図8図8は、本発明で開示する内容のうち、シリンダの内部構造を引き寄せまたは反発させるための磁気の配置について概略的に示したものである。
【0115】
図9図9は、内部構造と、その種々の端部及び表面の一例を示したものである。
【0116】
図10図10 は、本願発明で開示するシリンダの内部構造を用いた手法を示したものである
【0117】
図11図11は、本発明における様々なシステムの仕事量を示したものである。ここでは、より大きな仕事量で、より高いトルクや馬力、またはより少ない燃料を実現している。
【0118】
図12図12は、排出量の値について従来のものと本発明の相対運動デザインを比較した表である。
【0119】
図13図13 本発明による、化学物質および排気ガスの試験結果を示したものである。
【0120】
図14図14-17は、本発明のシリンダ内部構造の様々なメリットや可能性についてグラフで示したものである。
図15】同上
図16】同上
図17】同上
【発明を実施するための形態】
【0121】
以下の詳細は単なる例示であり、説明する実施形態や、その使用に限定することを意図するものではまったくない。本明細書で用いる「一例」または「例」という言葉の意味は、「例、実例、例示として役立つもの」という意味である。ここで「一例」または「例」として説明する実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好ましいとか、有利だとかと、解釈されるべきではない。以下であげる実施形態すべては、当業者が本発明の実施形態を作成または使用することを可能にするために例示したものであり、特許請求の範囲を制限することを意図したものではまったくない。さらに、前述の技術分野、背景、簡単な要約、そして以下の詳細で述べる、明示または黙示な理論に拘束する意図もない。添付の図面に示した、また以下の明細書に記載する特定の装置やプロセスは、添付の特許請求の範囲で定義する本発明の概念を説明するための例示的な実施形態であることを理解していただきたい。したがって、本明細書の実施形態における特定の寸法や物理的特性といったものについては、特許請求の範囲において明示的に別段の記載をしない限りこれに限定するものではない。
【0122】
シリンダの内部構造について開示する。ここでは機械式のシリンダを使ったシリンダシステムを紹介する。このシリンダにはフルードを充填する内部スペースがあり、またその内部スペースで往復運動をするクランクシャフトピストンと、フローティングピストンを含むシリンダーの内部構造がある。このフローティングピストンはクランクシャフトピストンの往復運動に合わせて、シリンダーの内部で前進したり後退したりする。
【0123】
図1では、 一例としてシリンダベースのエンジン102を用いたエンジンシステムを示す。この例に限定するものではないが、エンジン102は車両の推進力に使用する。例えば船舶、車両、飛行機などであるがこれに限るものではない。掘削装置やその他の産業用機械の油圧リフト、フォークリフトアーム、バックホーアームなどのさまざまな装置を動かすことができる。図1は、そうした機能を実現させて有用な仕事を生み出すためのエンジン102 とそのシリンダ104について概略的に示したものである。シリンダーは内部構造と従来のシリンダーを含む改良型である
【0124】
ある実施形態では、エンジン102は、シリンダ104内で燃料を燃焼させることにより有用な仕事を生成するように構成された内燃機関(ICE)である。シリンダ104は、適切な任意の構成(例えば、I-4、V6、V8、V12)で、線形または円形に配置することができる。図1では示していないが、エンジン102の例として、エネルギー源(つまりバッテリー)や車輪に設置されたモーターといった電気システムによりサポートされるものがある。こうした構成は「ハイブリッド」と呼ばれ、エネルギーを充電するためのリカバリーブレーキ技術などを使用する。
【0125】
シリンダー104は、燃料の燃焼によって引き起こされる往復運動で動くピストン(つまり、シリンダ内の第1及び第2ピストン)を備える。ある実施形態では、クランクシャフトピストンの往復運動がクランクシャフトの回転運動に変換され、これがトランスミッションを介して1つまたは複数の車輪に伝えられ、車両推進力得るものがある。また別の実施形態では、こうしたクランクシャフトピストンの往復運動が、それ以外の部分や、運動に転換されるものがある。例えば産業用車両のアームの関節運動(例、フォークリフトやバックホー)があるが、これに限るものではない。図1は、エンジン102によって生成される出力108を示しており、これは上記の回転運動、関節運動などの任意の他の適切な出力を含むものである。
【0126】
取込通路が、含気的にエンジン102と対になり、エンジンに空気取込を供給することにより、空気と燃料を混合させ、燃焼用の空気をシリンダの燃焼用に供給することができる。取込はシリンダーごとに第1と第2のインレットを経るものがある。フルードの取込まれた空気は内部構造の背後にある取込スペースで圧縮され、内部構造が取込通路の方向へ後退した時に、内部構造内にある燃焼スペースに送られる。そのため、図1では、エンジン102が、インプット106を受け取るところを表している。このインプットは燃料と空気の混合や、作動液や、大気圧での空気や、圧縮空気が含まれる。さらにインプット106は、ガソリン、ディーゼル、亜酸化窒素、エタノール、天然ガス、その組み合わせが含まれるがこれに限定するものではない。取込通路には取込スロットルが設置され、エンジン102に取り込む空気を制御する。例えば空気の質量、体積、圧力を制御する。取込通路は、給気冷却器、圧縮機(例、ターボチャージャー若しくはスーパーチャージャーの)、取込マニホールドなどを含むがこれに限定するものではない。それぞれの取込弁は、シリンダ104への給気を制御することができる。エンジン102に供給する燃料を貯蔵・供給するための燃料システムを備えることもできる。
【0127】
排気通路は、エンジン102と含気的に連結され、燃焼の結果の生成物がエンジンから排出される経路を提供する。排気ガス処理のためのNOxトラップ、微粒子フィルター、触媒などを廃棄通路に設置することができるが、これに限定するものではない。エンジン102がターボチャージャーにより加速される場合には、タービンを排気通路に設置してターボチャージャーコンプレッサーを駆動することもできる。各排気弁は、シリンダ104からの排気ガスを制御することができる。
【0128】
制御装置110は、エンジン102の様々な部品と結合され、センサーからの入力を受け取たときにデバイスを作動させて、エンジンを動作させる。制御装置110はエンジンコントロールユニット(ECU)と呼ばれる。例えば、ECUは、スロットル位置、気圧、トランスミッション操作ギア、エンジンの温度、エンジンの速度、特定エンジン速度の変化などのインプットを受け取る。また以下で説明するように、制御装置110は、シリンダの動作サイクルに従って、シリンダ104の内部スペースで動作するシリンダの動きを制御することができる。
【0129】
制御装置110は任意の適切な方法で設置される。例えば制御装置110は演算装置や、演算装置で処理する機械言語の指示を補完するためのストレージを備えることもできる。演算装置は、制御装置、プロセッサ、システムオンチップ(SOC)の形態で実装されうる。ストレージは読み取り専用メモリ(ROM、例えば電子的に消去可能でプログラム可能なROM)やランダムアクセスメモリ(RAM)などの形態で実装されうる。制御装置110は、入力を受信し、出力(例えば、構成要素を作動させるための制御信号)を行うための入出力 (I/O) インターフェースを含む。
【0130】
エンジン102は別の形も考えられる。例えばエンジン102には油圧機械用に構成することもできる。ここでは、シリンダー104は往復運動により作動液を圧縮する各クランクシャフトピストンを含む。この例では、シリンダー104に供給される作動液として、インプット106には、油、水、その他のフルードが含まれる。出力108には、回転運動、関節運動、アクチュエーションなどの機械的出力を含む。また、出力108はシリンダー104によって圧縮される作動液を含むこともでき、この時シリンダによって加えられる圧力は、作動液を通じてその他の構成要素に伝えられる。こうした油圧の出力は、例えば、油圧リフトのように、機械的出力を生成するために利用できる。エンジン102を油圧機械用に構成する場合は、ポンプ、弁、アキュムレータ、リザーバ、フィルターなどが含むまれるがこれらに限定するものではない。こうした実施形態においては、制御装置110は、センサーの出力(例えば、圧力、弁の状態、フローレート)で動作する油圧シリンダー104、エンジン102、その他の回路などと組み合わせて実装される。
【0131】
上で述べるようなシリンダの出力を増加させるための一長一短を解消しつつシリンダの出力を上げるために、シリンダー104は、動作用のフルード(例、作動液や燃焼用のフルード)を供給するシリンダ内部のスペースに任意に前進・後退が可能な内部構造202 (例、フローティングピストン)を備える。この図は燃焼シリンダ用のシリンダの内部構造の実施例を示したものであり、ここでは内部構造は、電磁アクチュエーター、油圧チャージャー、ターボチャージャー等により、燃焼スペースもしくはクランクシャフトピストンの方向に前進・後退することができるように構成されている。
【0132】
この図では、挿入ロッドまたは第2ピストンとも呼ぶシリンダーの内部構造202を有するシリンダ104を示している。シリンダの内部構造202は第2ピストンとして働き、クランクシャフトピストン204(例、クランクシャフトピストン204が第1ピストン)と内部構造202が燃焼室を部分的に囲んでいる。
【0133】
クランクシャフトピストン204 は、コネクティングロッドと結合され、このコネクティングロッドがクランクシャフト等の別の装置に結合されて、クランクシャフトピストンの往復運動をクランクシャフトの回転運動やその他の運動に転換する。これを利用することで車両の推進力を入れたり、発電機を操作したり、ポンプを駆動させたり、なんらかの装置を作動させることができる。クランクシャフトピストン204の往復運動は、シリンダ104の内部スペース208の給気の燃焼によって生じる。この燃焼は取込カムシャフトを通じて、取込弁210で部分的に制御が可能である。この取込弁210は任意に内部スペース208に空気を送り込むことができる。スパークプラグまたはグロープラグを制御することにより、噴射された給気に点火することができる。燃焼生成物は排気カムシャフトによって駆動する排気弁216から排出される。取込んだ空気を燃焼させる過程でシリンダー104から熱を逃さずに、任意の温度を保つため、また熱劣化を防ぐために、シリンダの内壁に冷却ジャケットを設置する。このジャケットが内部スペース208を決め、またシリンダの外壁を決めることになる。水、不凍液などを使用した冷却剤は冷却システムを通じて冷却ジャケットで循環する。冷却システムは、例えば、冷却剤の熱を外部に放射するラジエーターを含む。冷却システムはエンジンの一部のフルードを圧縮したり、冷却ジャケットが到達するのが難しい内部構造付近ではシリンダ内のフルードを減圧することを含む。
【0134】
上記のように、シリンダ104には、シリンダーの出力と効率を高めるために内部スペース208に任意に挿入されるシリンダの内部構造202を含む。内部構造202はフローティングピストンであり、クランクシャフトピストン204の往復運度に合わせて内部スペース208に向かって前進する。別の実施形態においては、フローティングピストン202には、クランクシャフトピストン204が下の方向(図2参照)に動くのに合わせて、内部スペース208に挿入されるものがある。この内部構造は、フルードの圧縮の専用の取込側の近くでその背後にフルード蓄積スペース、すなわちコンパートメントを有してもよく(図2上部704)、専用のフルードの圧縮スペースは、2回のクランクシャフトピストン運動で実行される4ストローク機能を有するように構成される。
しかしながらシリンダー104は、挿入ロッド202を内部スペース208に挿入するタイミングに応じて、任意の適したサイクルに従って構成される。一般的には、内部構造202はクランクシャフトピストン204が下方向に動く(図2参照)のに合わせて、内部スペース208に挿入される。
【0135】
シリンダ104は、圧縮ストローク(例、2または4ストロークサイクル)又は排気ストローク(例、4ストロークサイクル)を実施することができる。挿入ロッド202は、クランクシャフトピストン204が下方向または上方向に動くのに合わせて、内部スペース208から後退する。フローティングピストン202と、クランクシャフトピストン204の動きは任意の形で合わせることができる。ある実施形態においては、フローティングピストン202の動きと、クランクシャフトピストン204の動きを、実質的に同じ速度で、同じ方向に動くようにシンクロされているものもある
【0136】
内部構造202は、シリンダ104の必要取込量を減少させることができる。また内部スペース208により、燃焼または油圧の過程に使用される「燃焼ボリューム」若しくは「油圧ボリューム」と呼ばれる排気量の量に影響を与える。その際の内部スペースはクリアランスボリュームや行程容積の和よりも小さくなる。
【0137】
図8に示すとおり、特定の機器においては、内部構造を引きつけたり、反発するために、電磁石を使うこともできる。電磁石の使う方向が(反発または誘引の)のいずれであっても、その反対(反発または誘引)は受動的な機能で足りる。エンジンや、車両や、スロットルを減速させる目的で、膨張行程の初期の段階で、内部構造を後退させるために電磁力を使うこともできる。
この実施形態では内部構造202は、コイル224を介して伝達される電流によって生成される磁場と相互に作用する図2の磁石227(例えば、永久磁石)及び内部構造のソレノイド型の電磁的な伸縮、を含む。
コイル224によって生成される磁力線は、(具体的には、コイルの上端より下でコイルの下端より上の部分)は、フローティングピストン202が伸縮する長さと並行になる。フローティングピストン202の電磁作動を容易にするために、電気システム226には、コイル224に任意に電流を供給する電流源を含む。電気システム226は制御装置110に結合され、制御装置110は、電気システムを制御して上記のシリンダ104の動作に従って、もしくは入力に基づいて(例えば、カムシャフトのタイミング、弁のタイミング、取込や給気変数、他の動作条件)、挿入ロッド202を任意に配置することができるほか、内部構造202を前進または後退させることができる。
いくつかの実施形態では、制御装置110は図1の制御装置110だが、内部構造202を前進または後退させるため、または内部構造202の上部(例、図2の取込側)に圧力を加えるためのシステム及び装置を含み得る。制御装置101のそうした装置及びシステムは、油圧またはターボチャージャーもしくは電磁アクチュエーターであり、内部構造202に力を加えることができるもので、一般的にはここでは「力を加える機構」(力を適用する機構、ともいう)と呼ぶ。コイル224、電気システム226、磁石227、制御装置110は、ここで「電磁アクチュエーター」と呼ぶものを構成する。ある実施形態では、電磁アクチュエーターはソレノイドを考慮することができ、挿入ロッドが電磁アクチュエーターによりスラッグとして機能する。図2に示すように、前進する力と後退する力が内部構造(フローティングピストン) 202の本体に加えられることを理解していただきたい。
【0138】
図2図3のシリンダー104は、シリンダーの出力を増加させるために別の形態に構成することもできる。例えば燃焼波の形状に適合するように、円錐形状のクランクシャフトピストン及び/又は内部構造にすることも可能である
【0139】
クランクシャフトピストンの内面は、クランクシャフトピストンの相対運動中のせん断応力を増加させるためのへこみ及び/又は突起を含む。
【0140】
コイル224はハウジング内に設置できる。このハウジングは断熱され、挿入ロッド202の動きに対して滑らか(低摩擦)であり、内部スペース208とハウジングの間を埋めるものでもある。コイル224は電気システム226により駆動し、制御装置110に結合されている。
【0141】
内部構造 202 は、複数のパーツもしくは筒状の層から構成される。内部構造は様々なエンジンシリンダーに合わせて様々なサイズがあり得る。例えば内部構造202の形状は、高いトルクの仕様に合わせたデザインにすることができるが、これに限るものではない。クランクシャフトピストンとは異なり、内部構造の冷却は課題であるが、高い耐火性の素材で作成するか、中を空洞にしてヘリウムなどを充填させたり、シリンダーの冷却ジャケットと接触させる方法が考えられる。内部構造の冷却は、膨張行程でフルードデコンプレッション(フルード減圧、ともいう)によって達成できる。さらに、内部構造と、シリンダーの内壁の接触については、冷却ジャケットの前後にベアリングを用いる方法や、圧縮した空気を圧縮スペースから通過させて、シリンダーと内部構造の間の小さなスペースを埋め、摩擦を最小限に抑える方法が考えられる。
【0142】
ここで説明する内部構造202及びシリンダの実装は、一例として紹介したものであり、これに限定することを意図するものではまったくない。本明細書で述べる「シリンダ」とは、必ずしも筒状のものに限定するものではなく、クランクシャフトピストンの往復運動により有用な仕事及び出力を生成するために使用される機械的装置のことを示すものである。半球形状若しくは楔形なども考えられる。シリンダヘッド要素、弁などのシリンダの構成要素は、追加、削除、変更することができる。さらに、挿入体を用いる構成も考えられる。例えば、ここで開示する挿入体は、非線形のシリンダ104において、底面、側面、または斜めなどの任意の方向からシリンダの内部スペースに挿入させることができる。シリンダ104自体は、ストローク中に円形若しくは湾曲した経路をたどることになるピストン及びフローティングピストンを備えたエンジンの一部であり、そのため湾曲している。さらに、フローティングピストンを制御するために電磁アクチュエーターを採用することもできる。
【0143】
別の実装形態では、フルードを機械で送るだけでなく、磁気アクチュエータの磁気力でクランクシャフトピストンに対して前進させるというハイブリッドなソリューションを採用できる。例えば、油圧ポンプを使わずにフルードがクランクシャフトピストン棒に対して圧力を加えたり、別の例としては、第2シリンダを専用の燃焼室として使い、圧縮した空気を第1シリンダの圧縮スペースに送り込む油圧シリンダとして機能させることにより、有効な圧縮比をあげたり、パワーストローク中に内部構造に対してさらに前進させる力を加えることもできる。内部構造202を備えた第1シリンダは、油圧機構として動作させるために内部構造とクランクシャフトピストンの間に作動液を使用できる。
【0144】
ここで述べるシリンダの内部構造の実装は、様々な技術的効果及び利点を生み出す可能性がある。例えば、内部構造202は、1ストロークあたりの排気量として説明するように必要なフルード取込を減らすことができる。別の例では、シリンダの内部構造はより長い間隔のストロークを同様のフルード量で実現することが可能になる。さらに、クランクシャフトピストンの内面に1平方インチあたりでより大きな力を加えることを可能にする。別の実施形態では、電磁アクチュエーターを使用して内部構造を前進させることにより、燃焼圧力を維持するものある。別の実施形態では、より低い圧力で、クランクシャフトピストンの動きを層状にすることができる。油圧を履行する場合、フローティングピストンにより、作動液の取込ポンプに必要な量のフルードを減らすことができる。こうした技術的な影響は、車両の経済性を向上させることになる。
【0145】
ここで説明する手順、タスク、及び手法は、シリンダの動作全体を通じて任意の頻度、間隔、サイクル等で繰り返されるものである。これは連続して行う場合もあれば、中断される場合もある(たとえば、コントローラー入力、オペレーター入力に応答する形)。
【0146】
燃焼スペース208は、フローティングピストン202とクランクシャフトピストン204により囲まれており、燃焼前の位置の調整をすること、燃焼スペース自体をシリンダーに合わせて相対的に動かすこと若しくはその形状やサイズを変更することができる。
【0147】
電磁石(図2-226)を反発または引力だけに動作するようにして、3極電磁アクチュエータを使用すると、磁気アクチュエータの極の向きを変更することがないため、電子は片側に留まる。このように配置することで、ソレノイドの部品に加えられる磁場の強度を数百倍に増加させることができ、正極と負極の間で電子を移動させるために費やされる電気エネルギーを節約できることになろう。
【0148】
シリンダの内圧を低下させるための解決方法は、電磁石226または他の動力源からの二次的な力を使用することによって、未燃の状態で排気する代わりに、第2ピストン202をクランクシャフトピストンと反対方向に(例えば、離れて)動かすことである。
【0149】
圧縮スペース側の取込経路210と燃焼スペース804の間に第2ピストン202を配置し、取込側のフルードの圧力を高くすることにより、取込経路を長期間にわたってより清潔で信頼性の高い状態に保つことができる。
【0150】
内部構造202が燃焼室を取り囲み、端部202-2がシリンダヘッドやフルードインレットの側に面する場合、第2ピストンとして初期加速の一部となって前進するとともに、2つのピストンが外れた後にクランクシャフト側からの圧力を受けると方向を変えることができる。この際、フローティングピストンに干渉することなく変更することができ、膨張ストローク中に停止して、ゆっくりと方向を反転を始めることになる。
【0151】
「クランクシャフトピストンの方向に動かす」とは、クランクシャフトピストンの移動方向ではなく、クランクシャフトピストンの位置を示すものであることにご留意をいただきたい。
【0152】
内部構造202の背後にあるフルードを蓄積する区画704が、2回のクランクシャフトの運動で4ストロークを可能にする。これは、エンジンRPM(回転/毎分)を半分にして摩擦力を減少させることを意味する。このシステムは、汚染物質の排出を抑えながらエンジンの加速と減速を管理することを可能にして省エネに資するものである。
【0153】
2回のクランクシャフトの運動で4ストロークを実行するために、新鮮な空気や予混合のフルードが、圧縮行程中に、ポートインジェクションチャンバー704にある内部構造202の背後に供給される。これにより膨張行程に力を加え、(圧縮行程の一部として)部分的に空気を圧縮することになる。圧縮行程が始まると、この部分的に圧縮されたフルードが、間接噴射として燃焼スペース804に移動し、内部スペースの背後の連絡経路706を介してさらに圧縮(例えば、完全圧縮)される。特別な経路を使用した別の方法(直接噴射)では、点火プラグとともに燃焼室804に直接供給できる。排気口216は、様々な位置や構成が考えられる。 「予混合」フルードとは、ポートインジェクションフルードまたは間接インジェクションフルードであり、「予混合チャンバー」は、ポートチャンバーであることをご理解いただきたい。
【0154】
圧縮行程が始まり、ピストンが後退を始めると、スペース704内の部分的に圧縮された空気が燃焼スペースに移動してさらに圧縮される。これが内部構造に減圧冷却効果をもたらし、エリア804からフルードを排気弁216に向けて排気する。そして、ピストンが動いて、燃焼スペースから排気がきれいになるまでに、燃料のフルードがポートインジェクションチャンバーの1つにすべてまたは一部が噴射されて、新鮮な空気と混合される。ピストンが完全に後退すると、燃焼スペース804内において空気と燃料の混合物の圧縮が完了する。特別な経路を介して直接噴射する別の方法では、燃料は点火プラグとともに燃焼室に直接供給され、燃料はポートインジェクションチャンバーではなく燃焼スペースに噴射される。排気口216は別の場所に設置しうるが、圧縮行程中に稼働され(engage)始めると、2つのピストンの間のスペースに整列することになる。
【0155】
図2-10ではさらに詳細について示している。
【0156】
図2-10ではシリンダーの内部構造を使ったシステムについての様々な実施形態や、構成部分や、特徴について示している。例えばシリンダー104は、内部スペース208、内部構造202、クランクシャフトピストン204を含む。シリンダー104の内部スペース208は、内部構造202により修正され、クランクシャフトピストン204に加えられる燃焼圧力は、膨張行程の初期段階において、そのより小さい表面積に加えられるようになり、膨張行程の後の段階では、そのより大きな表面積に加えられるようになる。
【0157】
例えば、図2に見られるように、エアマニホールド及び一方向弁などを備える第1フルードインレット210-1は、すべての行程において圧縮スペースへの空気の供給を可能にする。
第1フルードインレットのマニホールドは、自然取込用に構成される、またはターボチャージャー若しくはスーパーチャージャーのフルードの経路若しくは貯蔵場所に接続される。
第2フルードインレット210-2は、フルードマニホールド及び一方向弁などを備え、力を適用する機構に反応するか、クランクシャフトドライブへの抵抗の増加時、またはスロットル位置の変更時において、圧縮したフルードをシリンダ内部の専用の燃焼スペース704または第1燃焼スペース804に送り込む。これによりシリンダの内圧を高めることができる。フルードの経路706は後退の行程の際に、フルードを取込側704から燃焼チャンバー804に移動させる。
【0158】
例えば図6に見られるように、膨張行程の初期の段階では、より小さい表面802が燃焼キャビティー804内で燃焼にさらされる。膨張行程の後の段階では、より大きい表面806が燃焼キャビティー804内で燃焼にさらされる。このコンセプトは図で示すすべての実施例に適用される。一部円錐状のクランクシャフトピストンは、直角の形と比べてより大きな表面積が燃焼圧力の波にさらされることになる。
【0159】
例えば、クランクシャフトピストンは薄い部分808から厚い部分810に変わる端部を有する。図6に示すように、この薄い部分は、初期に燃焼圧力にさらされ、厚い部分は後の燃焼圧力にさらされる。この薄い部分は燃焼スペースに挿入でき、また燃焼スペースの端のすぐ隣に設置することもできる。内部構造の形状は、このクランクシャフトピストンに正確に一致、もしくはおおよそ一致するように構成される。
【0160】
このシステムは、内部構造202内のキャビティ804の中で燃焼が発生するように構成される。これにより燃焼の圧力が内部構造202とクランクシャフトピストン204の両方にかかる。
【0161】
内部構造202には、相対運動が可能なシリンダ104を含む。この内部構造202の動きは、力を適用する機構702により制御される。内部構造202は膨張行程中に加速の向きを変えることができる。
【0162】
力を適用する機構702は、スロットル位置に関するセンサーにより、スロットル位置に反応するように構成することができる。例えば、内部構造202に加わる力をスロットルの位置に依存させることができる。力を適用する機構702は、膨張行程または収縮行程において内部構造202に後退する力を加えることができる。
【0163】
力を適用する機構702は、電磁アクチュエータ、油圧システム及び/又は過給機を含む。過給機には、ターボチャージャー、油圧チャージャー、及びスーパーチャージャーなどがある。内部構造は、電磁アクチュエーターと機械的に連結することができる。
【0164】
図7で示す通り、300は、クランクシャフトであり、301は、クランクシャフトの直径であり、302 は、クランクシャフトのロッドである。相対運動シリンダでは、膨張行程の初期の段階で、圧縮したフルードをスーパーチャージすることにより、より大きなトルクを得ることができる。またクランクシャフトのロッド(302)や、クランクシャフトの直径 (301)は、高いトルクを得るための長いロッドや、大きな重量により動きが鈍くなるような今日の商業用の車両に使われているものよりも小さいものにすることができる。
【0165】
本発明のシステムは、第2の力の機構として油圧ターボチャージャーを使用することにより、膨張行程中に圧縮力を増加させるための時間当たりの仕事量を向上させることができる。これはさらに燃焼スペース内の圧力の増加及びさらなる駆動力になる。シリンダ内で正の力を維持すると、仕事のための加速時間を最小限にすることができ、その結果作業エネルギーの一部を不要にすることができる。従来のシリンダーの圧力は、結果としてエネルギーの無駄を引き起こし、パワーストロークの力から差し引かれることになる。
【0166】
図8は、クランクシャフトピストンの膨張中に反発作用(前進力)を提供する第1の電磁石 1802を示したものである。第2の電磁石1804は、クランクシャフトピストンの引き込み中に後退させる力(引き込む力)を提供することができる。極1802、1804、227は、3極の電磁配置を形成する。従来の配置では、227と1802のような2つの極のみである。3極構成では、例えば、極1802と227は常に同様の極として動くことで反発力を形成し、極1804と227は、引力を実行するように構成することができる。3極の配置では、電子が極の間を移動する必要がないため、1秒あたりの力の出力が大きくなるだけでなく、より高い頻度での運動が可能になる。
【0167】
このシステムでは、圧縮行程中に取込側でフルードを圧縮することにより、圧縮行程を部分的に実行するように構成することができる。これはつまり、力を適用する機構702を通じて内部構造202に力を加えることを意味する。このようにして、燃焼ごとに2回のストロークを行い、取込、圧縮、膨張、排気を実行するように構成される。相対運動のシリンダ は、専用のスペース704でフルードの圧縮を行う。
【0168】
本システムは、内部構造202の取込側704にフルードを送り、シリンダー内の圧力を高めるとともに、エンジンの加速を高めるように構成される。また、内部構造202に後退する力を加えることによってエンジンの減速を引き起こすように構成される。また、内部構造202に前進する力を加えることによってエンジンを加速するように構成される。
【0169】
連絡経路とも呼ばれるフルードの経路706は、フルードの管理のステージ1とステージ2との間のタイミングを分けるための制御弁を備える。ステージ1では、ターボチャージャー若しくはスーパーチャージャーを使用して新鮮な空気を部分的に圧縮する膨張行程中に、内部構造(フローティングピストン)の背後にフルードを蓄積して、ピストンに二次的な駆動力を加える。ステージ2では、部分的に圧縮された新鮮な空気若しくは予混合のフルードを、複数の弁及び経路を備えた連絡経路を通じて、内部構造202内の燃焼スペース804に移動させる。連絡経路は、取込口への経路及び排気口への経路を含む。
【0170】
連絡経路は、一方向弁を備え、圧縮したフルードの一部を燃焼スペースに送り込むことができる。また膨張行程中は弁を閉じることができ、さらに膨張行程の後の段階では弁を開いて、燃焼スペースに正の圧力を加えたり、スペース804を排気してクリーンにすることができる。ポートインジェクションの区画は、膨張行程中にサイズを拡張することもできる。
【0171】
本システムは、クランクシャフトピストン204と内部構造202の間の燃焼圧力により、内部構造202をクランクシャフトピストン204から離れる方向に後退させて、燃焼圧力を吸収することもできる
【0172】
図9の図は、圧縮スペースに面する内部構造の端部202-1と、第1燃焼スペースに面する内部構造の端部202-2 と、第2燃焼スペースに面する内部構造の端部202-3を示したものである。202-4は、内部構造の外側の表面の切り込みを示したものである。
これは排気フルードをシリンダのインレット(inlet)側に近づけるようにするものである。端部(202-2)は、燃焼時や油圧の上昇時に、燃焼の内部スペースや油圧シリンダー内で内部構造を前進させることにより、位置に関するパスカルの法則を次のように変化させることになる。
つまりフローティングピストンが燃焼用のフルードの体積とスペースに対して圧迫を加えることであり、これはパスカルの法則では計算されるものではない。ストロークの出力は、クランクシャフトのピストン表面とストロークの距離に依存する。時間に関するパスカルの法則では、追加の出力が計算され、それが位置に関するパスカルの法則に加えられる。これは、内部構造が前進することにより置き換えられる燃焼や油圧の量に比例する。
【0173】
また図9に示すように、表面202-3と202-2の違いが、膨張行程の初期段階では内部構造を加速させ、後の段階では減速と収縮を発生させる。
【0174】
図10に示すように、1902では内部構造のピストンとシリンダーの間で動作するパーツの境界内で燃焼が開始され、1904ではその両方のパーツをシリンダーの内部スペースに前進させている。これはシリンダ内部構造が向きを変えて、膨張行程中に完全に停止するまで続く。1906では、膨張行程の初期段階でフルードの圧縮が専用のスペースで始まる。1908では、電磁アクチュエータ、油圧システム、ターボチャージャーなどの2次的な装置による力を適用することにより、シリンダ内部構造をさらに前進または後退させている。
1910では、膨張行程の後の段階で圧縮したフルードが燃焼スペースに移動し、排気を行って第1燃焼スペースをクリーンにするとともに、フルードの減圧により内部構造に冷却効果をもたらす。1912では後退ストロークの初期において、内部構造とフローティングピストンが稼働(engage)を始める前に排気が行われる。1914では、内部構造とクランクシャフトピストンが完全に後退することで、フルードの圧縮が完了すると、インレット(inlet)弁が閉じて、圧縮したフルードの大部分が内部構造内の第1燃焼スペースに残り、一部が連絡経路に残る。この一部は次の往復運動の開始時に減圧され、内部構造に冷却効果をもたらす。
【0175】
図11では、ジュール.Wで測定した仕事量を示したものである。
【0176】
たとえば、従来のシリンダーで50mgの燃料が約150ジュールの仕事量を提供していた場合、本発明のシステムを使用したシミュレーションテストでは約400ジュールを提供している。あるテストでは、燃焼として25mgを用意して、ターボチャージャーのポンプを駆動するエネルギー源として25mgと計算して、作業出力が800ジュール近くまで上がった。
あるエネルギーの研究によれば、従来のエンジンを使って車を走らせる場合、熱エネルギーの20%程度しか使用していないと主張している。我々のシュミレーションの結果では、本発明のシステムを使用することで化石燃料の使用を最適化することができることがわかっている。
仕事量の向上は、教科書で使用されている次の式によって理論的に評価することもできる(パフォーマンスの向上は、シリンダー内の圧力上昇に比例し、変位量に反比例する)。図17のような圧力テストでは、本発明のシステムでは200%を超える圧力上昇の達成を示しており、フローティングピストンは、行程容積の約50%で、燃焼用のフルードとスペースを奪い合うことも可能である。こうしたパフォーマンスの向上により、理論的には従来のシリンダーよりも400%向上すると言える。
【0177】
図12は、燃料のポートインジェクションに関連するテストのうち最良の結果を示したものである。このシミュレーションテストでは、HCが0%であり、排気中のCOとNOがほぼ0%であることが明らかになった。
【0178】
図13は、本発明のシステムにおいては排気中に従来よりも少ない炭化水素残留物が見つかったことを示している。一定の配置では、シュミレーションのテストではパワーストロークを完了した時点でHCの排出量が0だったことが明らかになった。
【0179】
図14は、直接噴射を使用した場合の機械的な仕事量の評価のグラフを示したものである。ここでは新しいデザインD3により、通常のシリンダーよりも仕事対時間のグラフの下に大きなエリアが生まれていることがわかる。これは、面積の違いに応じた仕事エネルギーの効率性で200%の向上である。従来のデザインであるD1-T3では、本発明のD3-T2にくらべて膨張行程の初期段階でより大きな燃焼暴露面積(図6の802)になっていることがわかる。 従来のシステム(D1-T3)では、膨張行程の開始時に高い仕事エネルギーを提供するが、パワーストロークの後半では仕事出力が低くなる。グラフの下のより大きな領域は、従来の設計で直接噴射と間接噴射を比べたときに見られるものであり、本発明のシステムでは時間あたりの機械的な仕事量のグラフで下の領域がさらに大きくなっていることがわかる。本発明の一つのデザイン態様では、図14で機械的な仕事量のグラフがストロークの最後にプラスに増加していることを示している。これはクランクシャフトピストンの距離が離れ、フローティングピストンの圧力が高まり、フローティングピストンがまだゆっくりと前進している一方でクランクシャフトピストンが完全に停止した状態である。
【0180】
図15はフローティングピストンに対して急激に前進する力を与えた際の仕事のグラフであり、その力を実施するために使用した力のうち80%以上が回復しており、従来のものでは力の回復が25%以下であることに鑑みると、本発明のシステムの大きな可能性を示している。
また、本システムの可能性として、第2インレットを通じてターボチャージャーフルードなど2次的な力をパワーストローク中に加えることができる点にある。これはつまり、エンジンの出力を犠牲にせずにより高いトルクを実現することができる。なぜなら、大きな抵抗力によりエンジンの駆動力が妨げられた際に、スーパーチャージャー若しくはターボチャージャーによってより高いトルクを利用することができるからである
【0181】
図16は、力と距離のグラフを示したものである。このグラフは、本発明のシリンダーD2-T1の初期の力が通常のシリンダーよりも小さいことを示している。このグラフから、新しい設計と従来の設計の間のエネルギー評価を混同されないようにご留意をいただきたい。仕事エネルギーのパフォーマンスを(力*距離/秒)に基づいて評価し、仕事対時間として(作業/秒)を示す場合がある。
【0182】
図17は、圧力対距離と圧力対時間のグラフを示したものである。このテストは、負荷抵抗なしで実施した。本発明のD2-T1は、従来のシリンダのD1-T1に比べて曲線の下の領域がはるかに大きいことがわかる。膨張行程中、シリンダーは約300%の高い内部圧力を維持しており、これはより高い熱効率、クリーンな燃焼、 NO2/NOxの排気比の向上を意味するものである。クランクシャフトピストンに抵抗負荷をかけた状態で試験を繰り返したところ、本発明システムD2-T1(D2-T3となずける)のグラフ下の面積は、通常のシリンダーと比較してシリンダの内圧がより高くなり、フルードの燃焼がさらに進んだ。またシミュレーション結果では、ゼロHC、ゼロCO、略ゼロNO(0.000035)の出力であることが明らかになった。
【0183】
本発明の手法は以下を含む。1)シリンダレベルで2つのエネルギー源を使用するハイブリットエンジン手法。2)相対的な内圧を上げて、クランクシャフトピストン速度を下げることにより、COと遊離炭化水素ラジカルの大部分を管理可能なCO2、N2、NO2に変換させて、シリンダレベルでフルードフィルタを実施する手法。3)内部構造を衝撃吸収材として使用して振動を抑制する方法。4) ニュートン-ガリレイの相対性の第2理論として内部構造を使用することにより、エネルギーを節約する手法。5)エネルギーの交換と節約を時間に依存させる手法。
【0184】
内部構造の形状により、膨張行程中に必要なフルードの取込(インテイクともいう:intake)量が減少する。例えば、クランクシャフトピストンのクリアランスと行程容積の合計が10立方インチの場合、本発明の相対運動シリンダでは、第1と第2燃焼スペースでの排気条件は約5-6立方インチである。
【0185】
内部構造をシリンダ内、特に燃焼シリンダに前進させることは、燃焼力や油圧をコントロールして、より多くのトルクや馬力を実現したり、様々な条件で最適化するためのものであることをご理解いただきたい。本発明の相対運動シリンダは出力を大幅に向上させるものであり、特にトルクと馬力で最適化する際には顕著である。こうした向上は、パスカルの時間の法則をベースにしている。たとえば、物理学の研究には、車輪と道路の間の摩擦により、車両の運動中にエネルギーが消費される可能性があることを示したものがあるが、これは、運動に費やされるエネルギーのごく一部である。大部分の非効率な点はクランクシャフトピストンの加速に費やされるエネルギーにある。仮に1時間の運動におけるそうした加速の値を秒毎で計算する場合、同じ動作時間で、同様の重量の別の車の半分の値であり、同じ距離を走行するのに燃料の半分で済む。
こうした加速時間の経過については、
(E=1/2 Mf*g2 *t)
というエネルギーの公式を使用したが、これについて説明する。
この公式は、加速時間(t)がジュールによって計算された作業エネルギーとどのように交換されるかを示している。ここでは(t)の値を最小化して2秒から1秒にすると、エネルギー出力が1ジュールから2ジュールに変化する。これは、より高いトルクや馬力を実現するための最適化を行う前に生じるものである。加速の時間の経過の値を最小化するとエネルギー出力が大幅に変化する一方で、熱出力は燃料1立方インチあたり固定されているとみなすことができ、これこそが本発明と先行技術のエンジンの効率性の解決方法の差である。
【0186】
本発明の新システムでは、往復サイクルでワンパワーストロークが実現するため、全ての他の往復サイクルによるものに比べて摩擦による損失が15%減少する。さらに従来のエンジンのような他の往復サイクルによるパワーストロークでは、6000 RPMが往復サイクルの許容限度であるが、ここで問題になっているのはエンジンの取込と機械的な故障にあり、本発明の手法ではRPMを半分に減らすことによりこの問題を解決している。
これはつまり、6000 RPMが実際には3000 RPMに減少することを意味し、50%の摩擦損失の減少、より多くの取込、機械的故障の減少により、約15%の出力向上を達成するものである。これは圧縮による損失を考慮に入れる前の状態であり、ここでも本システムが役に立つ。圧縮時に消費されるジュールは燃焼圧力を上昇させるために利用され、またパワーストローク中にクランクシャフトピストンに力を加えることでジュールが回復するからである。
【0187】
本発明のシステムは時間に関するパスカルの法則を導入している。これは加速のための時間の経過がニュートンや特殊相対性理論で知られている座標になるだけではなく、エネルギー源としての役割を果たすためである。この時、時間の関数としての物体の動きはジュールで計測されるエネルギーを加速の時間の経過と交換することになりうるため、ニュートンのような仕事の単位では、その動きが実際には時間の関数である場合に十分に物理的な距離を定義できない。時間の関数としてクランクシャフトピストンの物理的な移動距離を、どれだけのニュートン量が必要になるかとして計算する事では不十分であり、その代わりに、圧力やフルードの排気の様々な条件における仮想の移動距離を定義する必要がある。
【0188】
本発明の相対運動のシリンダーの解決策では、内部構造のキャビティーには、シリンダーのカムシャフト側に面する端部があるその表面積(202-2)は、クランクシャフトピストンに面する端部よりも小さいため、内部構造の初期のクランクシャフト方向への加速が可能になり、膨張行程の後の段階では反対方向への加速が可能になる。
内部構造のキャビティ内に端部を有することで、第1と第2の燃焼区画において2次的にフルードの乱流の動きを作り出すことが可能になる。これによりフルードをよりよく混ぜ合わせて、より完全に燃焼させることが可能になる。
【0189】
さらに、力を適用する機構は、磁力やターボチャージャーを使用することができ、これにより膨張行程中に内部構造を加速させて、燃焼スペースの内圧を上昇させることができる。しかも、急激な燃料の燃焼も不要であり、クランクシャフトロッドや機械的なギアのロットや直径の比率を増やすことも不要である。
【0190】
ターボチャージャーとスーパーチャージャーをエンジンで使うことで、予(pre-)燃焼流体の圧縮比を高めることができる。本発明のシステムでは、ターボチャージャー若しくはスーパーチャージャーは、力を適用する機構の一部として使用され、内部構造を前進させたり、燃焼スペースの圧力を最小化してエンジンを減速させることにより、エンジンの加速を制御する。本発明のターボチャージャーは、風力タービンのシリンダに接続した力を適用するメカニズムとしても利用できる。現在では、風速が安定しないことから、風力タービンの回転数は安定しておらず、風力タービンを電気モーターに接続させる点に問題があり、高価なブレーキ装置を設置したり、風力タービンと発電機の間に蓄圧器を配置することによって解決しているが、こうした蓄圧機が風力発電の半分以上を支えている。
本発明の相対運動のシリンダーでは、風力タービンは1つまたは複数の油圧ターボチャージャーポンプで駆動させることができる。この時、作動フルードが1若しくはそれ以上のシリンダーの方向に駆動する場合、強い風速の場合に力を適用する機構によりフルードがより多くのシリンダ に供給され、発電用の安定した回転数を実現させることができる。
【0191】
図11から17は、ANSYS分析を用いたテスト結果を示したものである。
また(4)インチボアシリンダーの燃焼条件の同様の初期パラメーターは次のとおりである:
マスフローインジェクション = 0.05 kg/s;
インジェクション時間 = 0.001 sec;
インジェクションの圧力 = 17405 PSI;
燃料の温度 = 300 K;
投入する燃料の量 = 50 mg;
ノズル直径 = 1 mm;
およそのエンジン回転数 = 4000 RPM.
圧縮空気初期パラメーター:
初期ボリューム = 4.81 インチ^3;
空気圧 = 500 PSI;
空気の温度 = 830 K;
N2の質量濃度 = 0.7675
O2の質量濃度 = 0.2325
抵抗圧力 = 20 PSI (クランクシャフトピストンでは1074Nの抵抗)
【0192】
図11-17のグラフ全体に示すように、炭化水素の除去は相対運動のシリンダで実現することができる。 H12C23テストでは炭化水素が500%減少し、同等の直接噴射パラメーターの質量分率では、18:1の圧縮比で、6.59%から0.67%に減少している。〔予(pre)混合とターボチャージャー〕で10:1の圧縮の場合、炭化水素が排除され、排気ガス中に検出されたのは0.000000ppmであった。本発明の予(pre)混合の場合だけで見ると(ターボチャージャーを使用した場合)、この黒い排気ガスを0.00024%まで削減することができた。これは直接噴射方式よりも1000%少なくなったことになる。予(pre)混合はこの相対運動のシリンダで部分的に使用することができ、CO2排出も制御できるが、従来のシリンダでは予(pre)混合によるCO2排出レベルはあらゆる地域で禁止されているレベルになってしまう。
【0193】
管理できないCOやNO排気削減は、第1燃焼スペースの内圧の増加に比例していたが、燃料と空気を早期に混合することにより、COが排除され、ゼロ出力を達成することができた。 NOは、従来のシリンダの11,000ppmと比較して、35ppmに減少した。
【0194】
相対運動するシリンダーの内圧は、ターボチャージャーの力や、早期のインジェクションもしくは予(pre)混合により、より高い駆動とともに増大する。
【0195】
相対運動のシリンダは、時間に関する関数として、正の距離移動する(パワーストライク)負の質量(燃焼流体の質量、フローティングピストンによって変位)の概念を導入している。これは数学的にニュートンの用語でいえば、運動の加速にかかる時間を最小限に抑えることによって、エネルギーを消費するのではなく生成することを意味する。これを実施するためには、複素数を使用して質量の負の値を扱う。位置エネルギーは実際の数値で測るのではなく、デカルトの加速度ベクトルの体積座標を仮定する。
【0196】
本発明の手法での負の質量は、燃焼用のフルードの体積として表される。これは、クランクシャフトピストンの動きによって生成された行程容積よりも小さくなるように、内部構造によって排気され体積が減少するものである。この体積は次のように計算される(負の質量=クランクシャフトピストン表面にストローク距離を掛けたものから利用可能な燃焼スペースを引いたもの)。
【0197】
こうしたパワーストロークのエネルギーの差は、この内部構造においては、時間の関数である。この時間はエネルギー出力方程式の直接変数となる。ここでは物理的な距離の値を短い仮想の距離に変更し、またメートルではなく秒で計算する。計算は次のようになる。仕事エネルギー=1/2質量力*加速度の2乗* T(W = 1/2 Mf * g2 * t)。
ここで、(t)は、調査対象が平均速度に達するための一般的な加速の経過時間である。
【0198】
ここで説明した本発明の実施形態から、様々な修正や、変更などが考えられるため、これまでの説明や図については、あくまでも例として示したものであり、これに限定する意図は全くない。したがって特許請求の範囲は、添付の特許請求の範囲と、法的にそれと同等とみなされるものによって決まるべきである。
【符号の説明】
【0199】
101:制御装置
102:エンジン / シリンダーベースのエンジン
104:シリンダ
106:インプット
108:出力
110:制御装置
1802,1804,227:極
1802:第1の電磁石
1804:第2の電磁石
1902:内部構造のピストンとシリンダーの間で動作するパーツの境界内で燃焼が開始
1904:その両方のパーツをシリンダーの内部スペースに前進
1906:パワーストローク行程の初期段階でフルードの圧縮が専用のスペースで始まる
1908:電磁アクチュエータ、油圧システム、ターボチャージャーなどの第2的な装置による力を適用することにより、シリンダ内部構造をさらに前進または後退
1910:パワーストローク行程の後の段階で圧縮したフルードが燃焼スペースに移動し、排気を行って第1燃焼スペースを清潔にするとともに、フルードの減圧により内部構造に冷却効果をもたらす
1912:後退ストロークの初期において、内部構造とフローティングピストンが係合を始める前に排気が行われる
1914:内部構造とクランクシャフトピストが完全に後退することで、フルードの圧縮が完了すると、吸気バルブが閉じて、圧縮したフルードの大部分が内部構造内の第1燃焼空間に残り、一部が通信経路に残る
202:フローティングピストン
202:挿入ロッド
202:内部構造
202-2:第1燃焼空間に面する内部構造の端部
202-2:端部
202-3:第2燃焼空間に面する内部構造の端部
202-4:内部構造の外側の表面の切り込み
204:クランクシャフトピストン
208:内部スペース
208:燃焼スペース
210:取込経路
210:取込弁
210-1:第1フルードインレット
210-2:第2フルードインレット
216:排気口
216:排気弁
224:コイル
226:電気システム
226:電磁石
227:磁石
300:クランクシャフト
301:クランクシャフトの直径
302:クランクシャフトのロッド
702:力を適用する機構(力を加える機構、ともいう)
704:スペース
704:フルードを蓄積する区画
704:フルードを貯蓄するための専用のスペースまたは小さな区画
704:ポートインジェクションチャンバー
704:スペース
704:取込口
704:燃焼スペース
706:フルードの経路
706:連絡経路
802:表面
804:エリア
804:第1燃焼スペース
804:燃焼キャビティー
804:燃焼スペース
804:燃焼チャンバー
804:燃焼室
806:表面
808:薄い部分
810:厚い部分
図1
図2
図3
図4
図5
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図17