(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034148
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】靴及び靴表面のコーティング方法
(51)【国際特許分類】
C14C 11/00 20060101AFI20220224BHJP
A43D 8/16 20060101ALI20220224BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220224BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20220224BHJP
B05D 7/12 20060101ALI20220224BHJP
C09D 191/06 20060101ALI20220224BHJP
C09D 201/04 20060101ALI20220224BHJP
D06N 3/00 20060101ALI20220224BHJP
【FI】
C14C11/00
A43D8/16
B05D7/24 302L
B05D1/36 Z
B05D7/12
C09D191/06
C09D201/04
D06N3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137803
(22)【出願日】2020-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】519158698
【氏名又は名称】中村 憲治
(74)【代理人】
【識別番号】100154210
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 宏
(72)【発明者】
【氏名】中村 憲治
【テーマコード(参考)】
4D075
4F050
4F055
4F056
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AD06
4D075AE04
4D075AE19
4D075BB20Z
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB04
4D075CB11
4D075DB16
4D075DC38
4D075EA05
4D075EB16
4D075EC07
4D075EC51
4F050HA01
4F055AA01
4F055AA03
4F055AA27
4F055BA13
4F055DA08
4F055DA12
4F055DA16
4F055EA01
4F055EA21
4F055EA30
4F055FA09
4F055HA17
4F056AA01
4F056BB02
4F056CC07
4F056CC49
4F056CC62
4F056DD04
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4F056FF12
4F056FF13
4F056GG03
4J038BA211
4J038GA12
4J038NA01
4J038NA07
4J038PB02
4J038PC09
(57)【要約】
【課題】表面に光沢のある模様が形成された靴及び表面、並びに皮革表面に光沢のある模様を形成することが可能な靴、靴表面及び皮革表面のコーティング方法を提供すること。
【解決手段】靴1は、表面10に、ワックス20を塗布してその上にフッ素樹脂30を塗布した有ワックス面11(光沢が強い)と、ワックス20を塗布せずにフッ素樹脂30を塗布した無ワックス面12(光沢が強い)とを備える。靴1に限らず、多くの皮革に適用できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に、ワックスを塗布してその上にフッ素樹脂を塗布した面と、ワックスを塗布せずにフッ素樹脂を塗布した面とを備えることを特徴とする、皮革。
【請求項2】
靴であることを特徴とする、請求項1に記載の皮革。
【請求項3】
本体の表面部が、本革製であり、
靴であることを特徴とする、請求項1に記載の皮革。
【請求項4】
表面の一部にワックスを塗布し、他部にワックスを塗布せず、上記一部及び他部の双方にフッ素樹脂を塗布することを特徴とする、皮革表面のコーティング方法。
【請求項5】
前記皮革が靴であることを特徴とする、請求項1に記載の皮革表面のコーティング方法。
【請求項6】
表面にシールを貼付し、全体にワックスを塗布し、前記シールを剥離し、フッ素樹脂を塗布すし、
前記皮革が靴であることを特徴とする請求項4に記載の皮革表面のコーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴、靴表面及び皮革表面のコーティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フッ素樹脂には耐熱性及び耐候性があることが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、従来から、靴表面の耐磨耗性、光沢、潤滑、汚染抵抗性、撥水性等を向上させるために、靴表面をフッ素樹脂でコーティングすることが行われている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-009853号公報
【特許文献2】特表2008-545838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
靴表面に文字、記号、印、ロゴマーク、絵等(以下、「模様」という)を描いてデザイン性のある皮革を製造する場合、皮革表面をフッ素樹脂等でコーティングする前に、皮革表面に模様を形成する加工を行う必要があった。また、皮革表面に模様を形成する加工方法としては、着色や型押しに限られており、手間がかかる割には美観に乏しいという問題があった。従来より、皮革のコーティング方法を工夫して容易に美観の高い模様を形成したいというニーズがあった。
【0005】
以上のニーズは、特に靴において強かった。
【0006】
本発明は、表面に光沢のある模様が形成された靴及び表面、並びに皮革表面に光沢のある模様を形成することが可能な靴、靴表面及び皮革表面のコーティング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の皮革は、
表面に、ワックスを塗布してその上にフッ素樹脂を塗布した面と、ワックスを塗布せずにフッ素樹脂を塗布した面とを備えることを特徴とする。
【0008】
この特徴によれば、本発明の皮革は、表面に、ワックスを塗布してその上にフッ素樹脂を塗布した面と、ワックスを塗布せずにフッ素樹脂を塗布した面とを備えるため、各面の光の反射の違いにより見え方に違いが生じることを利用して、靴の表面に光沢のある模様を形成することが可能となる。
【0009】
本発明の皮革は、
靴であることを特徴とする。
【0010】
この特徴によれば、靴表面に光沢のある模様を形成することが可能となる。
【0011】
本発明の皮革は、
本体の表面部が、本革製であり、
靴であることを特徴とする。
【0012】
この特徴によれば、本革製の靴表面に光沢のある模様を形成することが可能となる。
【0013】
本発明の皮革表面のコーティング方法は、
表面の一部にワックスを塗布し、他部にワックスを塗布せず、上記一部及び他部の双方にフッ素樹脂を塗布することを特徴とする。
【0014】
この特徴によれば、表面の一部にワックス及びフッ素樹脂を塗布し、他部にワックスを塗布せずにフッ素樹脂を塗布することにより、一部と他部の光の反射に違いが生じ、当該光の反射の違いにより見え方に違いが生じることを利用して、皮革の表面に光沢のある模様を形成することが可能となる。
【0015】
本発明の皮革表面のコーティング方法は、
前記皮革が靴であることを特徴とする。
【0016】
この特徴によれば、靴表面に光沢のある模様を形成することが可能となる。
【0017】
本発明の皮革表面のコーティング方法は、
表面にシールを貼付し、全体にワックスを塗布し、前記シールを剥離し、フッ素樹脂を塗布することを特徴とする、前記皮革が靴であることを特徴とする。
【0018】
この特徴によれば、皮革の表面にシールを貼付し、全体にワックスを塗布し、前記シールを剥離し、フッ素樹脂を塗布することで、靴の表面に、ワックスを塗布してその上にフッ素樹脂を塗布した面と、ワックスを塗布せずにフッ素樹脂を塗布した面とを容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の皮革は、表面に、ワックスを塗布してその上にフッ素樹脂を塗布した面と、ワックスを塗布せずにフッ素樹脂を塗布した面とを備えるため、各面の光の反射の違いにより見え方に違いが生じることを利用して、靴の表面に光沢のある模様を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る靴の模式的平面図である。
【
図2】
図2は、同実施形態に係る靴表面のコーティング方法の工程図である。
【
図3】
図3は、ワックス塗布工程における靴の本体の表面部付近の断面図である。
【
図4】
図4は、フッ素樹脂塗布工程における靴の本体の表面部付近の断面図である。
【
図5】
図5は、変形例1に係る靴表面のコーティング方法の工程図である。
【
図6】
図6は、変形例2に係る靴表面のコーティング方法の工程図である。
【
図7】
図7は、変形例3に係る靴表面のコーティング方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
以下、靴として説明するが、靴以外の皮革も、同様に対応できる。例えば、鞄、ポーチ、財布、ベルトに対応できる。なお、靴であれば皮革の片面に光沢を与えることでよいが、皮革によっては両面に光沢を与えてもよい。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る靴の模式的平面図である。当該靴1は、表面10にワックス20を塗布してその上にフッ素樹脂30を塗布した面(以下、「有ワックス面」という)11と、表面10にワックス20を塗布せずにフッ素樹脂30を塗布した面(以下、「無ワックス面」という)12とを備える。本実施形態においては、靴1の本体の表面部は本革製である。
【0024】
有ワックス面11は、入光に対してワックス20の面で強く光を反射し、強い光沢を有する。これに対して、無ワックス面12は、フッ素樹脂30中のフッ素の反射防止特性により、有ワックス面11よりも光沢が弱い。さらに、無ワックス面12においては、靴1の表面部の皮革に残留している油脂とフッ素とが結合し、当該油脂で光が反射されるため、無ワックス面12はシルバーに光って見えることとなる。
【0025】
このような有ワックス面11と無ワックス面12との見え方の違いから、無ワックス面12を模様領域とし、有ワックス面11を模様領域の背景領域とすることで、シルバーに光る文字、記号、印、ロゴマーク、絵等の模様を視認可能とすることができる。また、光の入射角度により、模様は視認可能となったり消えたりするため、トリックアートの効果が生じる。
【0026】
このように、ワックス20で光が反射した場合の見え方と、油脂で光が反射した場合の見え方との違いを利用して、油脂による模様を描き出すことができる。特に、靴1の表面10の色が黒色等の濃い色である場合に、模様が鮮明に浮き上がって見え、美観が向上する。
【0027】
ワックス20及びフッ素樹脂30の種類としては、一般的な公知のものを用いることができる。ワックス20としては、例えば、水とアクリル系樹脂とが混合されたエマルジョン系の樹脂ワックスを用いることができる。フッ素樹脂30としては、例えば、フルオロエチレンを単量体単位として含むフルオロエチレン重合体を用いることができる。
【0028】
次に、
図2に示す工程図と、
図3及び
図4に示す靴1の本体の表面部付近の断面図とを参照して、本実施形態に係る靴表面のコーティング方法を説明する。
【0029】
まず、
図3に示すように、靴1の表面10のうち無ワックス面12とする部分(模様とする部分)にシール40を貼付し、靴1の表面10全体に(シール40が貼り付けられている部分には、当該シール40の上に)ワックス20を塗布する(
図2の工程S11)。
【0030】
このように靴1の表面10にシール40を貼り付けることで、模様とする部分の表面10にワックス20を塗らず、その模様とする部分の周りの表面10にワックス20を塗ることが容易となる。
【0031】
ワックス20が乾いた後に、シール40を剥離し、
図4に示すように、ワックス20を塗った部分及びシール40を剥離して靴1の表面10が露出した部分全体に、フッ素樹脂30を塗布する(
図2の工程S12)。
【0032】
このように、靴1の表面10のうち無ワックス面12とする部分にシール40を貼付した状態でワックス20を全体に塗布し、その後シール40を剥離してフッ素樹脂30を全体に塗布することで、表面10の一部にワックス20を塗布し、他部にワックス20を塗布せず、上記一部及び他部の双方にフッ素樹脂30を塗布することが容易となる。
【0033】
すなわち、
図4に示すように、シール40が貼り付けられずに、ワックス20及びその上にフッ素樹脂30が塗布された有ワックス面11と、シール40が貼り付けられて、ワックス20が塗布されずにフッ素樹脂30のみが塗布された無ワックス面12とを、靴1の表面10に容易に形成することができる。
【0034】
なお、上述した実施形態は一例に過ぎず、本発明は特許請求の範囲に記載の発明の範囲で種々変形して実施することが可能である。
【0035】
例えば、上述した実施形態では、靴1の表面10に無ワックス面12を形成するためにシール40を用いたが、これに限定されることはなく、シール40を貼り付けずに、コンピュータ制御によりワックス20を塗る領域を制御してもよいし、刷毛を用いて手作業でワックス20を塗ってもよい。また、表面10に塗料を塗ってもよい。
【0036】
また、上述した実施形態では、靴1の本体の表面部が本革製である場合について説明したが、本革製に限定されることはなく、例えば、合成皮革、人工皮革、合成樹脂、プラスチック等の油脂を含んでいない素材であってもよい。靴1の本体の表面部に油脂を含んでいない素材を用いる場合には、靴1の表面10に油脂を補給してフッ素樹脂30と結合させることで、無ワックス面12を上述した実施形態と同様の見え方とすることができる。以下、靴1の本体の表面部に油脂を含んでいない素材を用いた場合の靴表面のコーティング方法の変形例を説明する。
【0037】
(変形例1)
まず、
図5に示す工程図を参照して、靴1の本体の表面部に油脂を含んでいない素材を用いた場合の変形例1に係る靴表面のコーティング方法を説明する。
【0038】
まず、靴1の表面10全体に油脂を塗布する(
図5の工程S21)。次に、
図2の工程S11と同様に、無ワックス面12とする部分にシール40を貼付し、全体にワックス20を塗布する(
図5の工程S22)。次に、
図2の工程S12と同様に、ワックス20が乾いた後に、シール40を剥離し、ワックス20を塗った部分及びシール40を剥離した部分全体に、フッ素樹脂30を塗布する(
図5の工程S23)。
【0039】
(変形例2)
次に、
図6に示す工程図を参照して、靴1の本体の表面部に油脂を含んでいない素材を用いた場合の変形例2に係る靴表面のコーティング方法を説明する。
【0040】
まず、靴1の表面10全体に、油脂とフッ素樹脂30とを混合したものを塗布する(
図6の工程S31)。油脂とフッ素樹脂30とを混合することにより、乾燥が促進される。
【0041】
次に、
図2の工程S11と同様に、無ワックス面12とする部分にシール40を貼付し、全体にワックス20を塗布する(
図6の工程S32)。
【0042】
次に、
図2の工程S12と同様に、ワックス20が乾いた後に、シール40を剥離し、ワックス20を塗った部分及びシール40を剥離した部分全体に、フッ素樹脂30を塗布する(
図6の工程S33)。
【0043】
(変形例3)
次に、
図7に示す工程図を参照して、靴1の本体の表面部に油脂を含んでいない素材を用いた場合の変形例3に係る靴表面のコーティング方法を説明する。
【0044】
まず、
図2の工程S11と同様に、靴1の表面10のうち無ワックス面12とする部分にシール40を貼付し、靴1の表面10全体に(表面10にシール40が貼付けられている部分には、シール40の上に)ワックス20を塗布する(
図7の工程S41)。
【0045】
次に、ワックス20が乾いた後に、シール40を剥離し、ワックス20を塗った部分及びシール40を剥離して靴1の表面10が露出した部分全体に、油脂とフッ素樹脂30とを混合したものを塗布する(
図7の工程S42)。
【0046】
なお、上述した各変形例では、無ワックス面12が靴1の本体の表面部に本革を用いた場合と同様の見え方となるように油脂を補給してコーティングを行ったが、これに限定されることはなく、視認性及び美観が劣るが、油脂を補給せずに
図2と同様の手順でコーティングを行ってもよい。
【0047】
以上説明したように、靴1の表面10に、ワックス20を塗布してその上にフッ素樹脂30を塗布した有ワックス面11と、ワックス20を塗布せずにフッ素樹脂30を塗布した無ワックス面12とを形成することで、各面11、12の光の反射の違いが生じ、当該反射の違いにより見え方に違いが生じるため、当該見え方の違いを利用して靴1の表面10に光沢のある模様を形成することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、靴等の表面に光沢のある模様を形成するコーティング技術の分野に利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 靴
10 表面
11 有ワックス面
12 無ワックス面
20 ワックス
30 フッ素樹脂
40 シール