(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022034281
(43)【公開日】2022-03-03
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 19/04 20060101AFI20220224BHJP
F16H 55/26 20060101ALN20220224BHJP
【FI】
F16H19/04 G
F16H19/04 J
F16H55/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020137998
(22)【出願日】2020-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 陽介
【テーマコード(参考)】
3J030
3J062
【Fターム(参考)】
3J030AC10
3J030BA08
3J030BB16
3J030BB17
3J030BC02
3J030BC08
3J030BC10
3J030CA10
3J062AA60
3J062AB05
3J062AC07
3J062BA05
3J062BA32
3J062CG02
3J062CG16
3J062CG83
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ラックギヤの摺動効率を高めることができる駆動装置を提供する。
【解決手段】本発明の駆動装置1は、上面側に歯面が設けられ駆動方向に沿って延びるラックギヤ20A,Bと、モータ本体、前記モータ本体に接続される伝達機構30A,Bおよび前記伝達機構に接続され中心軸線周りに回転し前記ラックギヤに噛み合うピニオンギヤを有するギヤドモータ2A,Bと、前記ラックギヤを摺動可能に支持するフレーム10と、を備える。前記フレームは、前記ラックギヤを上下方向一方側からガイドし前記ラックギヤの上下方向一方側への移動を制限するガイド面を有する。前記ラックギヤは、前記ガイド面と対向し前記駆動方向に沿って延びる対向面を有する。前記対向面には、前記駆動方向に沿って延びる凹溝3g、又は幅方向両縁部に位置し前記駆動方向に沿って延びる凹状の段差部が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側に歯面が設けられ駆動方向に沿って延びるラックギヤと、
モータ本体、前記モータ本体に接続される伝達機構および前記伝達機構に接続され中心軸線周りに回転し前記ラックギヤに噛み合うピニオンギヤを有するギヤドモータと、
前記ラックギヤを摺動可能に支持するフレームと、を備え、
前記フレームは、前記ラックギヤを上下方向一方側からガイドし前記ラックギヤの上下方向一方側への移動を制限するガイド面を有し、
前記ラックギヤは、前記ガイド面と対向し前記駆動方向に沿って延びる対向面を有し、
前記対向面には、前記駆動方向に沿って延びる凹溝、又は幅方向両縁部に位置し前記駆動方向に沿って延びる凹状の段差部が設けられる、
駆動装置。
【請求項2】
前記ラックギヤは、成形品であり、
前記対向面は、上側を向く面であり、
前記凹溝又は段差部には、エジェクタピンの痕跡が設けられる、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記対向面は、前記歯面の幅方向両側にそれぞれ配置され、
前記凹溝又は段差部は、それぞれの前記対向面に設けられる、
請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記凹溝又は段差部は、前記対向面に対し前記ガイド面が摺動し得る全領域に延びる、
請求項1~3の何れか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記凹溝又は段差部は、前記駆動方向に沿って離散的に複数並ぶ、
請求項1~3の何れか一項に記載の駆動装置。
【請求項6】
複数の前記ギヤドモータを有し、それぞれの前記ギヤドモータの前記ピニオンギヤが、前記ラックギヤに噛み合う、
請求項1~5の何れか一項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等の電子機器の薄型化が進む一方で、搭載されるギヤドモータには高出力化が求められている。特許文献1には、このような薄型の電子機器に搭載する高出力のギヤボックス装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動装置として駆動対象物を平行移動させる場合、出力部分をラックギヤとしてモータの回転を平行運動に変換する構造が採用される。ラックギヤは例えばフレームによって摺動可能に支持される。また、ラックギヤには、フレーム側のガイド面に対向し摺動する対向面が設けられる。対向面の成形精度が低い場合、ラックギヤの摺動効率が低下する虞がある。
【0005】
本発明の一つの態様は、ラックギヤの摺動効率を高めることができる駆動装置の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様の駆動装置は、上面側に歯面が設けられ駆動方向に沿って延びるラックギヤと、モータ本体、前記モータ本体に接続される伝達機構および前記伝達機構に接続され中心軸線周りに回転し前記ラックギヤに噛み合うピニオンギヤを有するギヤドモータと、前記ラックギヤを摺動可能に支持するフレームと、を備える。前記フレームは、前記ラックギヤを上下方向一方側からガイドし前記ラックギヤの上下方向一方側への移動を制限するガイド面を有する。前記ラックギヤは、前記ガイド面と対向し前記駆動方向に沿って延びる対向面を有する。前記対向面には、前記駆動方向に沿って延びる凹溝、又は幅方向両縁部に位置し前記駆動方向に沿って延びる凹状の段差部が設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、ラックギヤの摺動効率を高めることができる駆動装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態の駆動装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の駆動装置の断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の駆動装置の分解図である。
【
図4】
図4は、一実施形態のフレームを斜め下方から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、一実施形態の駆動装置の断面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態の駆動装置の断面図である。
【
図7】
図7は、変形例1のラックギヤの斜視図である。
【
図8】
図8は、変形例2のラックギヤの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る駆動装置1について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。以下の説明において特に断りのない限り、各中心軸線J1、J2に平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と呼び、+Z側を単に「軸方向一方側」と呼び、-Z側を単に「軸方向他方側」と呼ぶ。また、各中心軸線J1、J2周りの周方向を単に「周方向」とよび、各中心軸線J1、J2に対する径方向を単に「径方向」と呼ぶ。
【0011】
さらに、本明細書の説明の簡易のために、Y軸方向を単に上下方向と呼び、+Y軸方向を単に上側とよび、-Y方向を単に下側と呼ぶ。なお、本明細書における上下方向は、説明の便宜のために設定する方向であって、駆動装置1の使用時の姿勢を限定するものではない。
【0012】
図1は、一実施形態の駆動装置1の斜視図である。
図2は、駆動装置1の断面図である。本実施形態の駆動装置1は、Y軸方向に沿う寸法が抑制された薄型の電子機器に搭載される。
【0013】
図1に示すように、駆動装置1は、第1のギヤドモータ2Aと、第2のギヤドモータ2Bと、ラックギヤ3と、フレーム10と、アタッチメント40と、を備える。
【0014】
第1および第2のギヤドモータ2A、2Bは、Z軸方向に沿って延びる円柱状である。第1および第2のギヤドモータ2A、2Bは、X軸方向に隣り合って配置される。
【0015】
図2に示すように、第1のギヤドモータ2Aは、第1の中心軸線J1に沿って延びる。また、第2のギヤドモータ2Bは、第2の中心軸線J2に沿って延びる。第1の中心軸線J1と第2の中心軸線J2とは、互いに平行に延びる。
【0016】
第1のギヤドモータ2Aは、第1のモータ本体20Aと、第1のモータ本体20Aに接続される第1の遊星歯車機構(第1の伝達機構)30Aと、第1の遊星歯車機構30Aに接続される第1のピニオンギヤ5Aと、を有する。第1のモータ本体20Aのモータシャフト29、第1の遊星歯車機構30Aおよび第1のピニオンギヤ5Aは、第1の中心軸線J1周りを回転する。
【0017】
同様に、第2のギヤドモータ2Bは、第2のモータ本体20Bと、第2のモータ本体20Bに接続される第2の遊星歯車機構(第2の伝達機構)30Bと、第2の遊星歯車機構30Bに接続される第2のピニオンギヤ5Bと、を有する。第2のモータ本体20Bのモータシャフト29、第2の遊星歯車機構30Bおよび第2のピニオンギヤ5Bは、第2の中心軸線J2周りを回転する。
【0018】
第1および第2のモータ本体20A、20Bは、各中心軸線(すなわち第1の中心軸線J1又は第2の中心軸線J2)に沿って延びる。第1および第2のモータ本体20A、20Bは、全体として各中心軸線J1、J2を中心とする円柱状である。本実施形態において、第1および第2のモータ本体20A、20Bは、ステッピングモータである。
【0019】
第1および第2のモータ本体20A、20Bは、各中心軸線J1、J2周りに回転するロータ21と、ロータ21を径方向外側から囲むステータ22と、さらにステータ22を径方向外側から囲むモータケース23と、を有する。ロータ21は、各中心軸線J1、J2に沿って延びるモータシャフト29を有する。
【0020】
第1および第2の遊星歯車機構30A、30Bは、それぞれ第1および第2のモータ本体20A、20Bのモータシャフト29に接続される。第1および第2の遊星歯車機構30A、30Bは、それぞれ第1および第2のモータ本体20A、20Bから出力された動力を減速して第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bに伝える減速機構である。本実施形態において、第1の遊星歯車機構30Aの減速比と、第2の遊星歯車機構30Bの減速比とは、互いに等しい。
【0021】
第1および第2の遊星歯車機構30A、30Bは、それぞれ、ギヤハウジング39と、第1太陽ギヤ33aと、3つの第1遊星ギヤ33bと、第1キャリア31と、3つの第2遊星ギヤ34bと、第2キャリア32と、3つの第3遊星ギヤ35bと、第3キャリア36と、を有する。
【0022】
ギヤハウジング39は、フレーム10に固定される。すなわち、第1および第2の遊星歯車機構30A、30Bは、ギヤハウジング39においてフレーム10に支持される。ギヤハウジング39は、内歯ギヤ39aと、軸受部39dと、を有する。
【0023】
内歯ギヤ39aは、各中心軸線J1、J2を中心として軸方向に延びる筒状である。内歯ギヤ39aは、第1遊星ギヤ33b、第2遊星ギヤ34bおよび第3遊星ギヤ35bに噛み合う。軸受部39dは、内歯ギヤ39aの軸方向他方側の端部に位置する。軸受部39dは、中心軸線J1、J2を中心として筒状に延びる。軸受部39dの内周面には滑り軸受が装着される。軸受部39dは、後述する円柱部36fを回転可能に支持する。
【0024】
第1太陽ギヤ33aは、モータシャフト29に固定され、モータシャフト29とともに各中心軸線J1、J2を中心として回転する。3つの第1遊星ギヤ33bは、各中心軸線J1、J2の周方向に等間隔に配置される。3つの第1遊星ギヤ33bは、第1太陽ギヤ33aに噛み合う。3つの第1遊星ギヤ33bは、第1太陽ギヤ33aの回転に伴い、各中心軸線J1、J2の周りを公転回転する。
【0025】
第1キャリア31は、第1円盤部31bと、3本の第1サブシャフト31aと、第2太陽ギヤ31cと、を有する。第1円盤部31bは、各中心軸線J1、J2を中心として径方向に延びる。3本の第1サブシャフト31aは、第1円盤部31bから軸方向一方側に延びる。第2太陽ギヤ31cは、各中心軸線J1、J2を中心として第1円盤部31bから軸方向他方側に延びる。
【0026】
3本の第1サブシャフト31aは、それぞれ第1遊星ギヤ33bを回転可能に支持する。第1キャリア31は、3つの第1遊星ギヤ33bの公転回転に伴い、各中心軸線J1、J2を中心として回転する。
【0027】
第2太陽ギヤ31cは、第1キャリア31の一部であるため、第1遊星ギヤ33bの公転回転に伴い、各中心軸線J1、J2を中心として回転する。
【0028】
3つの第2遊星ギヤ34bは、各中心軸線J1、J2の周方向に等間隔に配置される。3つの第2遊星ギヤ34bは、第2太陽ギヤ31cに噛み合う。3つの第2遊星ギヤ34bは、第2太陽ギヤ31cの回転に伴い、各中心軸線J1、J2の周方向に公転回転する。
【0029】
第2キャリア32は、第2円盤部32bと、3本の第2サブシャフト32aと、第3太陽ギヤ32cと、を有する。第2円盤部32bは、各中心軸線J1、J2を中心として径方向に延びる。3本の第2サブシャフト32aは、第2円盤部32bから軸方向一方側に延びる。第3太陽ギヤ32cは、各中心軸線J1、J2を中心として第2円盤部32bから軸方向他方側に延びる。
【0030】
3本の第2サブシャフト32aは、それぞれ第2遊星ギヤ34bを回転可能に支持する。第2キャリア32は、3つの第2遊星ギヤ34bの公転回転に伴い、各中心軸線J1、J2を中心として回転する。
【0031】
第3太陽ギヤ32cは、第2キャリア32の一部であるため、第2遊星ギヤ34bの公転回転に伴い、各中心軸線J1、J2を中心として回転する。
【0032】
3つの第3遊星ギヤ35bは、各中心軸線J1、J2の周方向に等間隔に配置される。3つの第3遊星ギヤ35bは、第3太陽ギヤ32cに噛み合う。3つの第3遊星ギヤ35bは、第3太陽ギヤ32cの回転に伴い、各中心軸線J1、J2の周方向に公転回転する。
【0033】
第3キャリア36は、第3円盤部36bと、3本の第3サブシャフト36aと、出力部36cと、を有する。第3円盤部36bは、各中心軸線J1、J2を中心として径方向に延びる。3本の第3サブシャフト36aは、第3円盤部36bから軸方向一方側に延びる。出力部36cは、各中心軸線J1、J2を中心として第3円盤部36bから軸方向他方側に延びる。
【0034】
3本の第3サブシャフト36aは、それぞれ第3遊星ギヤ35bを回転可能に支持する。第3サブシャフト36aは、3つの第3遊星ギヤ35bの公転回転に伴い、各中心軸線J1、J2を中心として回転する。
【0035】
出力部36cは、各中心軸線J1、J2を中心として延びる円柱部36fと、円柱部36fの先端面から軸方向に沿って延びる嵌合軸部(凸部)37と、を有する。円柱部36fは、ギヤハウジング39の軸受部39dによって回転可能に支持される。また、出力部36cの軸方向他方側(-Z側)を向く端面には、保持穴36dが設けられる。保持穴36dには、シャフト36pが挿入される。
【0036】
第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bは、各中心軸線J1、J2を中心として配置される。第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bには、軸方向に貫通する貫通孔5hが設けられる。貫通孔5hには、シャフト36pが挿入される。
【0037】
シャフト36pは、各中心軸線J1、J2を中心として延びる。シャフト36pの軸方向一方側の端部は、出力部36cに支持され、軸方向他方側の端部は、軸受6を介してアタッチメント40に支持される。シャフト36pは、第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bの各中心軸線J1、J2周りの回転を補助する。
【0038】
第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bの軸方向一方側(+Z側)を向く面には、嵌合凹部38が設けられる。嵌合凹部38には、嵌合軸部37が挿入される。これにより、第1のピニオンギヤ5Aは、第1の遊星歯車機構30Aを介して、第1のモータ本体20Aに回転させられる。同様に、第2のピニオンギヤ5Bは、第2の遊星歯車機構30Bを介して、第2のモータ本体20Bに回転させられる。
【0039】
図1に示すように、ラックギヤ3は、上下方向を板厚方向とする板状である。ラックギヤ3は、MIM(Metal Injection Molding、金属粉末射出成形)によって成形される。第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bは、各中心軸線J1、J2と直交する方向(本実施形態においてX軸方向)に隣り合って配置される。ラックギヤ3は、第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bが並ぶ方向(X軸方向)に沿って直線状に延びる。
【0040】
ラックギヤ3は、第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bに対し下側に位置する。ラックギヤ3は、上面3a側に歯面3kが設けられる。第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bは、上下方向においてラックギヤ3に対向して噛み合う。
【0041】
ラックギヤ3は、第1のピニオンギヤ5Aおよび第2のピニオンギヤ5Bに噛み合う。ラックギヤ3は、第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bから出力される動力が伝わることで、X軸方向に沿って移動する。
【0042】
以下の説明において、ラックギヤ3が駆動する方向を駆動方向と呼ぶ。すなわち、ラックギヤ3は、駆動方向に沿って延びる。本実施形態において、駆動方向は、X軸方向に一致する。また、Z軸方向について、ラックギヤ3の幅方向と呼ぶ場合がある。
【0043】
本実施形態の駆動装置1によれば、第1および第2のギヤドモータ2A、2Bによって1つの駆動対象であるラックギヤ3を駆動する。このため、駆動装置1は、ラックギヤ3を高主力で駆動することができる。加えて、第1および第2のギヤドモータ2A、2Bの回転を平行運動に変換することができる。
【0044】
本実施形態の駆動装置1によれば、第1および第2のギヤドモータ2A、2Bは、X軸方向に沿って並んで配置される円柱状である。このため、駆動装置1の高さ方向(Y軸方向)の寸法を抑制することができ、駆動装置1をY軸方向に薄型の電子機器に搭載しやすくなる。すなわち、本実施形態によれば、第1および第2のモータ本体20A、20Bを用いることで駆動装置1の出力を確保しつつ、Y軸方向の寸法を抑制できる。また、ステータを軸方向に積層する場合と比較して、ロータマグネットを軸方向に沿って長くする必要がなく、衝撃等が加わった場合であっても、ロータマグネットの損傷を抑制できる。
【0045】
ラックギヤ3は、上側を向く上面3aと、下側を向く下面3bとを有する。上面3a側に設けられる歯面3kは、ラックギヤ3の駆動方向に沿って並ぶ。
【0046】
ラックギヤの上面3aには、歯面3kの幅方向両側に配置される対向面3fが設けられる。対向面3fは、上側を向く面である。すなわち、フレーム10は、歯面3kの幅方向両側にそれぞれ配置される一対の対向面3fを有する。対向面3fは、ラックギヤ3の駆動方向に沿って延びる。
【0047】
対向面3fには、駆動方向に沿って延びる凹溝3gが設けられる。本実施形態において、一対の対向面3fには、それぞれ凹溝3gが1つずつ設けられる。凹溝3gは、上側に開口する。凹溝3gは、対向面3fの幅方向中央に位置する。凹溝3gは、対向面3fの駆動方向の全域に一様に延びる。
【0048】
上述したように、本実施形態のラックギヤ3は、MIMによって成形される成型品である。このため、ラックギヤ3には、成型時に生じるエジェクタピンの痕跡3tが残留する。
【0049】
本実施形態において、エジェクタピンの痕跡3tは、対向面3fに設けられる。本実施形態において、エジェクタピンの痕跡3tは、凹溝3gに設けられる。痕跡3tは、凹溝3gの底面において凹状に成形される。また、痕跡3tは、凹溝3gの側面において筋状に形成される。複数の痕跡3tは、ラックギヤ3の駆動方向に沿って等間隔に並ぶ。エジェクタピンを、ラックギヤ3の歯面3kが設けられる上側に配置することで、ラックギヤ3を金型から円滑に離脱することができる。
【0050】
下面3bの幅方向両縁部には、凹状の段差部4がそれぞれ設けられる。段差部4は、駆動方向に沿って延びる。段差部4は、下側を向く第1段差面4aと、ラックギヤ3の幅方向外側を向く第2段差面4bと、を有する。第1段差面4aは、ラックギヤ3の下面3bより上側に位置する。ラックギヤ3の幅方向一方側および他方側の第1段差面4aは、互いに同一平面上に位置する。
【0051】
図3は、駆動装置1の分解図である。
フレーム10は、第1のギヤドモータ2Aおよび第2のギヤドモータ2Bを支持する。フレーム10には、アタッチメント40が固定される。フレーム10は、ラックギヤ3を摺動可能に支持する。
【0052】
フレーム10は、複数(本実施形態では2つ)のハウジング部11と、支持枠部12と、複数の固定部15と、を有する。フレーム10は、MIMによって成形される。
【0053】
2つのハウジング部11は、それぞれ第1および第2のギヤドモータ2A、2Bを支持する。ハウジング部11は、上側に開口する。ハウジング部11は、開口内に第1又は第2のギヤドモータ2A、2Bを収容しに固定される。本実施形態において、2つのハウジング部11は、X軸方向に並んで配置される。
【0054】
固定部15は、上下方向と直交する平面(XZ平面)に沿う板状である。固定部15には、板厚方向に貫通する固定孔15aが設けられる。固定孔15aには、駆動装置1を外部部材(例えば、駆動装置1が格納される電子機器の筐体)に固定するためのネジが挿入される。フレーム10は、固定部15において、外部部材に固定される。
【0055】
支持枠部12は、2つのハウジング部11に対し軸方向他方側(-Z側)に配置される。支持枠部12は、第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bを四方から囲む枠状である。支持枠部12に囲まれた平面視矩形状の包囲空間は、上下方向に開口する。支持枠部12は、上下方向を開口方向とする上側開口部および下側開口を有する。下側開口部は、ラックギヤ3によって覆われる。また、上側開口部には、アタッチメント40が挿入される。
【0056】
図3に示すように、アタッチメント40は、支持枠部12の内部に挿入され支持枠部12に固定される。これにより、アタッチメント40は、第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bの周囲においてフレーム10を補強する。アタッチメント40は、軸受6を保持する。すなわち、アタッチメント40は、軸受6を介して、シャフト36pを回転可能に支持する。本実施形態のアタッチメント40は、MIMによって成形される。
【0057】
支持枠部12は、第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bの軸方向一方側(+Z側)に位置する第1包囲壁(ガイド壁)13aと、軸方向他方側(-Z側)に位置する第2包囲壁(ガイド壁)13bと、ラックギヤ3の駆動方向一方側(-X側)に位置する第3包囲壁(接続壁部)13cと、ラックギヤ3の駆動方向他方側(+X側)に位置する第4包囲壁(接続壁部)13dと、を有する。すなわち、フレーム10は、上下方向から見て矩形状に配置される第1~第4包囲壁13a~13dを有する。
【0058】
第1包囲壁13aと第2包囲壁13bとは、ラックギヤ3の駆動方向に沿って延びる。第1包囲壁13aと第2包囲壁13bとは、ラックギヤ3の幅方向において互いに対向する。第1包囲壁13aには、上側に開口する一対の切欠16が設けられる。一対の切欠16には、それぞれ第1および第2のギヤドモータ2A、2Bの軸受部39dが挿入される。
【0059】
図4は、フレーム10を斜め下方から見た斜視図である。
第1包囲壁13aおよび第2包囲壁13bは、ラックギヤ3の幅方向両側に位置する。すなわち、ラックギヤ3は、幅方向両側から第1包囲壁13aおよび第2包囲壁13bに挟み込まれる。
【0060】
第1包囲壁13aおよび第2包囲壁13bは、下端部からそれぞれラックギヤ3の幅方向内側に突出するラックガイド部14を有する。すなわち、フレーム10は、一対のラックガイド部14を有する。ラックガイド部14は、ラックギヤ3の駆動方向に沿って延びる。一対のラックガイド部14は、ラックギヤ3のそれぞれ異なる段差部4の第1段差面4aの一部を覆う。
【0061】
ラックガイド部14は、突出方向先端に位置する第2ガイド面14bを有する。第2ガイド面14bは、ラックギヤ3の駆動方向に沿って延びる平坦面である。一対のラックガイド部14の第2ガイド面14b同士は、ラックギヤ3の幅方向において互いに対向する。
【0062】
一対のラックガイド部14は、支持枠部12の下側開口部に位置する。一対のラックガイド部14は、それぞれ互いに向き合う方向に突出する。また、一対のラックガイド部14は、それぞれ一様な断面でラックギヤ3が延びる方向(X軸方向)に沿って並行に延びる。
【0063】
図5および
図6は、ラックギヤ3の段差部4を含む駆動装置1の断面図である。
図5は、第1の中心軸線J1に沿う駆動装置1の断面図であり、
図6は、駆動方向に沿う駆動装置1の断面図である。
【0064】
図6に示すように、ラックガイド部14は、ラックギヤ3に対し下側に位置する。ラックガイド部14は、複数(本実施形態において2つ)の摺動台座14aを有する。複数の摺動台座14aは、ラックギヤ3の駆動方向に沿って並ぶ。摺動台座14aは、上側に突出する。
【0065】
摺動台座14aは、の上端には上側を向く摺動面14fが設けられる。複数の摺動台座14aの摺動面14fは、同一平面上に配置される。摺動面14fは、上下方向においてラックギヤ3の第1段差面4aと対向して接触する。ラックガイド部14は、摺動面14fにおいてラックギヤ3を下側から摺動可能に支持する。これにより、支持枠部12は、ラックギヤ3のX軸方向に沿う移動をガイドする。
【0066】
第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bからラックギヤ3への動力伝達によって、ラックギヤ3は第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bから下側の力を受ける。本実施形態によれば、ラックガイド部14は、摺動台座14aの摺動面14fにおいてラックギヤ3の第1段差面4aを支持する。これにより、ラックギヤ3とラックガイド部14との摺動部の面積を制限し、摩擦抵抗を低減できる。さらに、摺動面14fの面積を制限することで、寸法管理および表面粗さの管理を行う領域を制限することができる。このため、切削等による追加工を行い、摺動面14fの寸法精度を高めるとともに表面性状を改善し、ラックギヤ3とラックガイド部14と摩擦抵抗を低減できる。
【0067】
本実施形態において、複数の摺動面14fのうち一部は、第1の中心軸線J1の直下に位置する。同様に、複数の摺動面14fのうち一部は、第2の中心軸線J2の直下に位置する。摺動面14fは、第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bからラックギヤ3に伝わる下側の力を受ける。摺動面14fが、第1および第2の中心軸線J1、J2の直下に配置されることで、ラックギヤ3の撓みを抑制でき、ラックギヤ3の摺動効率を高めることができる。
【0068】
図5に示すように、ラックガイド部14の第2ガイド面14bは、ラックギヤ3の幅方向において、ラックギヤ3の第2段差面4bと対向して第2段差面4bをガイドする。ラックガイド部14は、ラックギヤ3の幅方向の移動を制限する。これにより、ラックガイド部14は、ラックギヤ3を効率的に平行移動させることができる。
【0069】
図4に示すように、第3包囲壁13cと第4包囲壁13dとは、ラックギヤ3の幅方向に沿って延びる。第3包囲壁13cと第4包囲壁13dとは、ラックギヤ3の駆動方向において互いに対向する。すなわち、第3包囲壁13cおよび第4包囲壁13dは、駆動方向に並ぶ。第3包囲壁13cおよび第4包囲壁13dは、ラックギヤ3の上側に位置する。第3包囲壁13cおよび第4包囲壁13dは、第1包囲壁13aと第2包囲壁13bとを互いに繋ぐ。これにより、第1~第4包囲壁13a~13dは、互いに剛性が高められる。
【0070】
第3包囲壁13cおよび第4包囲壁13dの下面には、それぞれラックギヤ3を上側からガイドする一対の第1ガイド面(ガイド面)13fが設けられる。一対の第1ガイド面13f同士は、ラックギヤ3の幅方向に並ぶ。第1ガイド面13fは、平坦面である。
【0071】
図6に示すように、第1ガイド面13fは、ラックギヤ3の対向面3fの直上に位置する。第3包囲壁13cおよび第4包囲壁13dは、ラックギヤ3の動作を上側からガイドする。すなわち、第3包囲壁13cおよび第4包囲壁13dの第1ガイド面13fは、ラックギヤ3の動作を上側からガイドする。なお、ラックギヤ3が、第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bから動力を伝達され第1および第2のピニオンギヤ5A、5Bから下向きの力を受ける際、第1ガイド面13fと対向面3fとの間には、若干の隙間が生じる。また、ラックギヤ3が駆動対象から力を受ける場合などには、第1ガイド面13fと対向面3fとは、互いに摺動する。
【0072】
上述したように、本実施形態の対向面3fには、凹溝3gが設けられる。本実施形態のラックギヤ3には、それぞれ1つの凹溝3gが設けられる一対の対向面3fが設けられる。このため、ラックギヤ3と第1ガイド面13fとの接触部は、合計4本の筋状で駆動方向に延びる。
【0073】
対向面3fに凹溝3gが設けられない場合、ラックギヤ3の幅方向において、対向面3fの成形精度の低下が、第1ガイド面13fと対向面3fとの摩擦抵抗の増大を招きやすい。本実施形態によれば、対向面3fに、ラックギヤ3の駆動方向に沿って延びる凹溝3gを設けることで、対向面3fの幅方向寸法を小さくすることができる。このため、ラックギヤ3の成形精度が低い場合であっても、第1ガイド面13fと対向面3fとの接触面積が制限されることで摩擦抵抗を低減できる。したがって、対向面3fに研磨等を行うことなく、摺動効率を高めることができ、駆動装置1を安価に製造できる。
【0074】
なお、本実施形態では、凹溝3gが設けられる面は、上側を向く対向面3fである。しかしながら凹溝3gが設けられる面が、下側を向く面であっても、上述の効果を得ることができる。すなわち、凹溝3gが設けられる面は、本実施形態では、第1ガイド面13fと対向する面であるが、ラックギヤを上下方向一方側からガイドしラックギヤの上下方向一方側への移動を制限する面(本実施形態の第1ガイド面13f)と対向する面であればよい。したがって、凹溝3gは、例えば、第1段差面4aに設けられていてもよい。
【0075】
本実施形態によれば、凹溝3gには、エジェクタピンの痕跡3tが設けられる。エジェクタピンは、歯面3k側に設けることで金型からの歯面3kの離型をスムーズに行わせるものである。このため、エジェクタピンの痕跡3tは、ラックギヤ3の歯面3kが設けられる面(上面)側に配置することが望ましく、幅方向寸法の範囲内では、対向面3f以外の場所に配置され難い。エジェクタピンの痕跡3tは、その周囲に対して若干凹んで成形される。エジェクタピンの痕跡3tを対向面3fに配置すると、痕跡3tに由来する段差が摺動時の抵抗となる虞がある。本実施形態によれば、痕跡3tを凹溝3gに配置することで、痕跡3tが対向面3fに表出することがない。これにより、エジェクタピンによりラックギヤ3の成型をスムーズに行うとともに、エジェクタピンの痕跡3tが摺動時の抵抗となることを抑制できる。
【0076】
本実施形態によれば、対向面3fが歯面3kの幅方向両側にそれぞれ配置され、凹溝3gがそれぞれの対向面3fに設けられる。このため、歯面3kの幅方向両側で、ラックギヤ3をフレーム10に対して安定的に摺動させることができる。また、凹溝3gにエジェクタピンの痕跡3tを配置する場合には、ラックギヤ3を金型からスムーズに離脱させることができる。
【0077】
本実施形態によれば、凹溝3gは、ラックギヤ3の可動域の全域に延びる。このため、凹溝3gの縁部が、第1ガイド面13fとの摺動時の抵抗となることを抑制することができる。なお、ここで、ラックギヤ3の可動域の全域とは、対向面3fに対し第1ガイド面13fが摺動し得る摺動方向の全領域を意味する。
【0078】
本実施形態によれば、フレーム10は、ラックギヤ3を、下側から摺動面14fで支持し、上側から第1ガイド面13fでガイドする。このため、ラックギヤ3が、フレーム10から離脱することが抑制することができる。特に本実施形態において、摺動面14fおよび第1ガイド面13fは、1つの部材(フレーム10)に設けられる。このため、摺動面14fと第1ガイド面13fとの相対的な寸法精度を高めやすく、ラックギヤ3の摺動効率を高めることができる。
【0079】
(変形例1)
図7は、上述の実施形態のラックギヤとして採用可能な変形例1のラックギヤ103の斜視図である。本変形例のラックギヤ103は、上述の実施形態と比較して凹溝3gに代えて段差部103gが設けられる点が異なる。
なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0080】
上述の実施形態と同様に、ラックギヤ103の対向面103fは、第1ガイド面13f(
図6等参照)と対向し駆動方向に沿って延びる。また、本変形例において、対向面103fには、ラックギヤ103の幅方向両縁部に位置し駆動方向に沿って延びる凹状の段差部103gが設けられる。これにより、上述の実施形態と同様に、対向面103fの幅方向寸法が小さくなり、ラックギヤ103の平面度が低い場合であっても摺動効率を高めることができる。また、上述の実施形態と同様に、段差部103gにエジェクタピンの痕跡103tを設けることで、エジェクタピンの痕跡103tが摺動時の抵抗となることを抑制できる。
【0081】
(変形例2)
図8は、上述の実施形態のラックギヤとして採用可能な変形例2のラックギヤ203の斜視図である。本変形例のラックギヤ203は、上述の実施形態と比較して凹溝3gが複数設けられる点が主に異なる。
なお、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
上述の実施形態と同様に、ラックギヤ203の対向面203fは、第1ガイド面13f(
図6等参照)と対向し駆動方向に沿って延びる。また、本変形例の対向面203fにおいて、凹溝203gは、ラックギヤ203の駆動方向に沿って離散的に複数並ぶ。本変形例においても、対向面203fと第1ガイド面13fとの接触面積を制限することができるため、ラックギヤ203の駆動効率を高める一定の効果を得ることができる。また、上述の実施形態と同様に、複数の凹溝203gのうち少なくとも一部にエジェクタピンの痕跡203tを設けることで、エジェクタピンの痕跡203tが摺動時の抵抗となることを抑制できる。
なお、本変形例では、複数の凹溝203gが設けられる場合について説明した。しかしながら、変形例1として説明した段差部103gが、ラックギヤの駆動方向に沿って離散的に並んでいてもよい。
【0083】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0084】
1…駆動装置、2A、2B…ギヤドモータ、3,103,203…ラックギヤ、3a…上面、3f,103f,203f…対向面、3g,203g…凹溝、3k…歯面、3t,103t,203t…痕跡、103g…段差部、10…フレーム、13f…第1ガイド面、20A、20B…モータ本体、30A、30B…遊星歯車機構(伝達機構)、J1、J2…中心軸線