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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022035689
(43)【公開日】2022-03-04
(54)【発明の名称】塗膜転写具
(51)【国際特許分類】
   B43L 19/00 20060101AFI20220225BHJP
【FI】
B43L19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020140183
(22)【出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】000134589
【氏名又は名称】株式会社トンボ鉛筆
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】金川 裕樹
(57)【要約】
【課題】より安価に製造可能な復帰機構を備えた塗膜転写具を提供する。
【解決手段】塗膜転写具1は、保持枠体3と、供給リール4と、巻取リール6と、ベース本体部52、ベース本体部52の先端に設けられ、供給リール4から引き出された転写テープ4Tを被転写面に転写する転写ヘッド51、及びベース本体部52に基端が固定され先端側が保持枠体3に保持された弾性片53を有し、保持枠体3に回動可能に保持されたベース部材50と、を備え、転写ヘッド51が被転写面に押圧されると、転写ヘッド51が第1位置から第2位置へ移動し、それに伴うベース部材50の回動により弾性片53が弾性変形し、転写ヘッド51の被転写面への押圧が解除されると、弾性片53の復元力によるベース部材50の逆方向への回動により、転写ヘッド51が第2位置から第1位置に復帰する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持枠体と、
前記保持枠体に回転可能に保持され、且つ転写テープが巻装された供給リールと、
前記保持枠体に回転可能に保持され、且つ転写後の前記転写テープを巻取る巻取リールと、
ベース本体部、前記ベース本体部の先端に設けられ、前記供給リールから引き出された前記転写テープを被転写面に転写する転写ヘッド、及び前記ベース本体部に基端が固定され先端側が前記保持枠体に保持された弾性片を有し、前記保持枠体に回動可能に保持されたベース部材と、を備え、
前記転写ヘッドが前記被転写面に押圧されると、前記転写ヘッドが第1位置から第2位置へ移動し、それに伴う前記ベース部材の回動により前記弾性片が弾性変形し、
前記転写ヘッドの前記被転写面への押圧が解除されると、前記弾性片の復元力による前記ベース部材の逆方向への回動により、前記転写ヘッドが前記第2位置から前記第1位置に復帰する、塗膜転写具。
【請求項2】
前記供給リール又は前記巻取リールとともに回転し、且つ、円周に沿って係止歯が形成された回転制止板を備え、
前記ベース部材は、前記転写ヘッドが被転写面に押圧されていない状態で前記係止歯と係合する係止爪を有し、
前記転写ヘッドが前記被転写面に押圧されて前記ベース部材が前記保持枠体に対して回動すると、前記係止爪が前記係止歯から離れて前記供給リール又は前記巻取リールの回転が可能になる、
請求項1に記載の塗膜転写具。
【請求項3】
前記弾性片は、前記ベース本体部と一体的に製造されている、
請求項1又は2に記載の塗膜転写具。
【請求項4】
前記ベース本体部は、前記保持枠体に設けられたベース回動軸を中心に回動可能に保持され、
前記弾性片の基端部は、前記ベース本体部における前記ベース回動軸よりも前記転写ヘッド側に位置し、前記弾性片は前記基端部から前記転写ヘッドが設けられている側と逆側に延び、前記弾性片の先端部は、前記保持枠体に設けられた弾性片回動軸を中心として回動可能に保持されている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の塗膜転写具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼着用又は修正用等の転写テープを有する塗膜転写具に関する。
【背景技術】
【0002】
塗膜転写具として、前端が開口した筐体内に供給リールと巻取リールを配置し、開口より転写ヘッドを突出させ、供給リールから繰り出した転写テープを転写ヘッドの先端で反転させて巻取リールに巻き取らせる塗膜転写具がある。
それらの塗膜転写具には、使用するときに転写ヘッドが被転写面に押されて移動する機能を有するものがあり、従来、移動した転写ヘッドを元の位置に復帰させる復帰機構として、金属製の戻しバネが用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-1095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術によると、復帰機構として金属製の戻しバネを使用しているのでコストがかかる。
本発明は、より安価に製造可能な復帰機構を備えた塗膜転写具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次のような手段によって上記課題を解決する。
保持枠体と、前記保持枠体に回転可能に保持され、且つ転写テープが巻装された供給リールと、前記保持枠体に回転可能に保持され、且つ転写後の前記転写テープを巻取る巻取リールと、ベース本体部、前記ベース本体部の先端に設けられ、前記供給リールから引き出された前記転写テープを被転写面に転写する転写ヘッド、及び前記ベース本体部に基端が固定され先端側が前記保持枠体に保持された弾性片を有し、前記保持枠体に回動可能に保持されたベース部材と、を備え、前記転写ヘッドが前記被転写面に押圧されると、前記転写ヘッドが第1位置から第2位置へ移動し、それに伴う前記ベース部材の回動により前記弾性片が弾性変形し、前記転写ヘッドの前記被転写面への押圧が解除されると、前記弾性片の復元力による前記ベース部材の逆方向への回動により、前記転写ヘッドが前記第2位置から前記第1位置に復帰する、塗膜転写具。
【0006】
前記供給リール又は前記巻取リールとともに回転し、且つ、円周に沿って係止歯が形成された回転制止板を備え、前記ベース部材は、前記転写ヘッドが被転写面に押圧されていない状態で前記係止歯と係合する係止爪を有し、前記転写ヘッドが前記被転写面に押圧されて前記ベース部材が前記保持枠体に対して回動すると、前記係止爪が前記係止歯から離れて前記供給リール又は前記巻取リールの回転が可能になることが好ましい。
【0007】
前記弾性片は、前記ベース本体部と一体的に製造されていることが好ましい。
【0008】
前記ベース本体部は、前記保持枠体に設けられたベース回動軸を中心に回動可能に保持され、前記弾性片の基端部は、前記ベース本体部における前記ベース回動軸よりも前記転写ヘッド側に位置し、前記弾性片は前記基端部から前記転写ヘッドが設けられている側と逆側に延び、前記弾性片の先端部は、前記保持枠体に設けられた弾性片回動軸を中心として回動可能に保持されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、より安価に製造可能な復帰機構を備えた塗膜転写具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】塗膜転写具1の斜視図である。
図2】塗膜転写具1の分解斜視図である。
図3】塗膜転写具1を図2と逆方向から見た分解斜視図である。
図4】保持枠体3とラチェット爪保持環23とベース部材50とを右側から見た図である。
図5】ベース部材50と回転制止板20とラチェット爪保持環23とを左側からみた図であり、塗膜転写具1の不使用時を示す。
図6】ベース部材50と回転制止板20とラチェット爪保持環23とを左側からみた図であり、塗膜転写具1の使用時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の塗膜転写具1を図面に基づいて説明する。図1は、塗膜転写具1の斜視図である。図2は、塗膜転写具1の分解斜視図である。図3は、塗膜転写具1を図2と逆方向から見た分解斜視図である。
以下、使用時に使用者が塗膜転写具1を手に持った時の左右、前後、上下を明細書中においても左右、前後、上下として説明する。
【0012】
塗膜転写具1は、筐体2と、筐体2の前側に設けられた開閉可能な蓋部22とを備える。塗膜転写具1は、蓋部22を開いて筐体2の前側に設けられた開口部2aを露出させ、開口部2aから突出して設けられた転写ヘッド51を下方の被転写面に押し付けて、後方に移動させることにより、塗膜を被転写面に転写する。
塗膜転写具1は、筐体2と、筐体2の内部に配置された保持枠体3とを備える。
【0013】
(筐体2)
筐体2は、それぞれが略楕円形の左右一対の筐体部材2Lと筐体部材2Rとを備える。筐体部材2Lと筐体部材2Rとは、上側において互いに揺動可能に連結されている。筐体部材2Rの下側に設けられた開閉ロック部21を押圧してロックを解除すると、筐体部材2Lの下部と筐体部材2Rとの下部とが互いに離間可能となり、筐体2の内部を開放することができる。
【0014】
(保持枠体3)
保持枠体3は、筐体2の内部に配置され、供給リール4と、巻取リール6と、転写ヘッド51を含むベース部材50と、を保持する。
保持枠体3の右面には、供給リール回転軸31と、ベース回動軸32と、巻取リール回転軸33とが立設されている。供給リール回転軸31には、後述する回転制止板20とラチェット爪保持環23とを介して転写テープ4Tが巻かれた供給リール4が保持される。巻取リール回転軸33には、転写後の転写テープ4Tを巻き取る巻取リール6が保持される。ベース回動軸32には、供給リール4から引き出される転写テープ4Tを被転写面に転写する転写ヘッド51を保持するベース部材50が保持される。
同じく保持枠体3の右面には、後述する弾性片53を回動可能に保持する弾性片回動軸34と、後述するラチェット爪保持環23と対向する円環状突起35及びラチェット歯36とが設けられている。
そして、これらの転写テープ4Tが巻かれた供給リール4と、転写ヘッド51を含むベース部材50と、巻取リール6と、回転制止板20と、ラチェット爪保持環23とは、保持枠体3に保持されて一体的にカートリッジとして、筐体2に対して着脱可能、すなわち詰替え可能となっている。
【0015】
(回転力伝達機構)
筐体部材2Rの内面には、端部に係止部8aが設けられた供給リール用支軸8と、端部に係止部13aが設けられた巻取リール用支軸13が左側に向って立設されている。これらの供給リール用支軸8と巻取リール用支軸13とには、回転力伝達機構が取り付けられている。
【0016】
回転力伝達機構は、供給リール4の回転を巻取リール6に伝達する機構であり、供給リール側伝達部7Aと、巻取リール側伝達部6Aと、連結ギア15とを備える。
【0017】
(供給リール側伝達部7A)
供給リール側伝達部7Aは、供給リール用ギア7と、圧縮スプリング9、環状の第1スペーサ10、環状の回転力伝達環11、環状の第2スペーサ12とを備える。
【0018】
供給リール用ギア7は供給リール用支軸8に挿入されている。供給リール用ギア7は、端部に係止部7aを有する筒状の回転軸7bを備える。回転軸7bに、圧縮スプリング9、環状の第1スペーサ10、回転力伝達環11、第2スペーサ12が順に外嵌され、第2スペーサ12が係止部7aに係止されることで、圧縮スプリング9、第1スペーサ10、回転力伝達環11、第2スペーサ12が抜け止めされている。
そして、回転軸7bが供給リール用支軸8に挿入されて係止部8aによって抜け止めされることで、供給リール用ギア7は供給リール用支軸8に対して回動可能に保持されている。
【0019】
供給リール用ギア7の回転軸7bは、外周面に形成された4箇所の平面部7cを有する。一方、第1スペーサ10及び第2スペーサ12の内面にも、平面部10a及び平面部12aが形成されている。これにより第1スペーサ10と第2スペーサ12とが供給リール用ギア7の回転軸7bに回転不能に嵌合され、供給リール用ギア7と、第1スペーサ10と第2スペーサ12とが一体的に回転する。
【0020】
回転力伝達環11の外周面には、係止突起11aが設けられている。一方、供給リール4の内周面には、係止突起11aが係止するリブ状係止部4aが設けられている。係止突起11aがリブ状係止部4aに係止することにより、回転力伝達環11は供給リール4と一体的に回転する。
【0021】
圧縮スプリング9は、第1スペーサ10と供給リール用ギア7との間に圧縮された状態で挟持されている。圧縮スプリング9の復元力により、第1スペーサ10は回転力伝達環11側に押圧され、回転力伝達環11は第2スペーサ12側に押圧される。
供給リール4が回転すると、回転力伝達環11が回転する。そうすると、圧縮スプリング9の復元力による、回転力伝達環11と第1スペーサ10との間の摩擦力及び回転力伝達環11と第2スペーサ12との間の摩擦力により、第1スペーサ10及び第2スペーサ12が、回転力伝達環11に対して互いの間の相対回転を可能としつつ回転し、それとともに供給リール用ギア7が回転する。
【0022】
(巻取リール側伝達部6A)
巻取リール側伝達部6Aは、巻取リール6が挿入される筒部6aと、筒部6aの右側端部に設けられたフランジ部6bと、筒部6aの外面に形成された係止突起6dと、フランジ部6bの右面に設けられた巻取リール用ギア6c(図3に図示)と、を備える。
巻取リール側伝達部6Aの筒部6aが巻取リール用支軸13に挿入され、係止部13aによって抜け止めされ、巻取リール側伝達部6Aは巻取リール用支軸13に対して回動可能に保持されている。
【0023】
筒部6aの外周面には、係止突起6dが設けられている。一方、巻取リール6の内周面には、係止突起6dが係止するリブ状係止部6eが設けられている。係止突起6dがリブ状係止部6eに係止することにより、巻取リール側伝達部6Aは巻取リール6と一体的に回転する。
【0024】
(連結ギア15)
連結ギア15は供給リール用ギア7と巻取リール側伝達部6Aの巻取リール用ギア6cとの間に配置された、連結ギア15a及び連結ギア15bを備え、巻取リール側伝達部6Aが巻取リール用支軸13に取り付けられると、供給リール用ギア7、連結ギア15a、連結ギア15b及び巻取リール側伝達部6Aの巻取リール用ギア6cが噛み合う。
【0025】
転写作業により、転写テープ4Tが繰り出されると、供給リール4が回転する。供給リール4が回転すると、回転力伝達環11が回転する。回転力伝達環11が回転すると、圧縮スプリング9によって回転力伝達環11に対して押圧されている第1スペーサ10と第2スペーサ12も回転し、その回転力により供給リール用ギア7が回転する。供給リール用ギア7が回転すると、その回転力は、連結ギア15a、連結ギア15b、巻取リール用ギア6cと伝達され、巻取リール6が回転する。
【0026】
(逆転防止機構)
(回転制止板20)
回転制止板20は、保持枠体3と供給リール4との間に配置される円板部材である。回転制止板20の中央には開口部20eが設けられ、開口部20eの縁部には凹部20fが設けられている。
【0027】
(ラチェット爪保持環23)
ラチェット爪保持環23は、保持枠体3と回転制止板20との間に配置されている。ラチェット爪保持環23の外周には、回転制止板20側に固定爪23bが突出して設けられている。固定爪23bは、開口部20eに挿入されて、凹部20fに嵌りこむ。
さらに、固定爪23bは、供給リール4の内面の左側に形成された固定爪係合孔4bと係合する。これにより、ラチェット爪保持環23及び回転制止板20は供給リール4に固定され、ラチェット爪保持環23及び回転制止板20は供給リール4とともに一体的に回転する。
【0028】
図4は、保持枠体3とラチェット爪保持環23とベース部材50とを右側から見た図である。矢印r1は、供給リール4、すなわちラチェット爪保持環23の順転方向である。順転方向とは、塗膜転写具1を用いて転写テープ4Tの塗膜を被転写面に転写する際の、供給リール4の回転方向である。
【0029】
(保持枠体3側の逆転防止機構)
保持枠体3の右面には、供給リール用支軸8に対応する位置に供給リール回転軸31と、供給リール回転軸31を中心とした所定径の円環状突起35とが一体的に設けられている。
円環状突起35の内面には、内径側に突出したラチェット歯36が設けられている。ラチェット歯36は山形で、r1方向後ろ側は傾斜が緩く、r1方向前側は、r1方向後ろ側よりも傾斜が急で、実施形態ではr1方向前側の傾斜は略90度である。
【0030】
(ラチェット爪保持環23側の逆転防止機構)
ラチェット爪保持環23には、供給リール回転軸31が挿通される筒部23aが設けられている。筒部23aの外周の2箇所から、円周方向に沿ったr1方向と逆方向に円弧状に2本のアーム23gが延びている。
【0031】
アーム23gの先端には、径方向外側にわずかに突出するとともに、先端が尖ったラチェット爪23iが設けられている。
【0032】
(順転時における逆転防止機構動作)
実施形態において、転写作業による供給リール4の回転(順転)に伴ってラチェット爪保持環23がr1方向に回転すると、ラチェット爪23iの径方向外側の面は、ラチェット歯36の傾斜の緩い面に沿って移動する。そして、アーム23gがラチェット歯36に押されて弾性変形して径方向内側に移動して、ラチェット歯36を乗り越えると、弾性変形していたアーム23gは弾性復元力によって元の位置に戻る。つまり、供給リール4の順転は妨げられない。
【0033】
(逆転における逆転防止機構動作)
ラチェット爪保持環23がr1と逆方向に回転(逆転)しようとすると、ラチェット歯36の急斜面にラチェット爪23iが食い込み、ラチェット爪23iのr1方向と逆方向への移動が防止される。これにより、ラチェット爪保持環23はr1と逆方向に回転できず、供給リール4の逆転が防止される。
【0034】
(転写ヘッド51の復帰機構及び供給リール4の回転制止機構)
図5はベース部材50と回転制止板20とラチェット爪保持環23とを左側からみた図であり、塗膜転写具1の不使用時(非転写時)を示す。図6はベース部材50と回転制止板20とラチェット爪保持環23とを左側からみた図であり、塗膜転写具1の使用時(転写時)を示す。
【0035】
(回転制止板20)
回転制止板20の左面円周縁に立設した環の内側には、係止爪52dが噛み合う係止歯20aが円周縁に一体的に設けられている。
【0036】
(ベース部材50)
ベース部材50は、転写ヘッド51と、ベース本体部52と、弾性片53とを備える。
【0037】
(転写ヘッド51)
転写ヘッド51は、供給リール4から引き出される転写テープ4Tを被転写面に転写する部分で、後部にヘッド保持軸52aが挿入される孔部51aが設けられ、前部に転写ローラ51bを備える。孔部51aにベース本体部52のヘッド保持軸52aを挿入することで、転写ヘッド51はヘッド保持軸52aを中心として揺動可能に保持される。
【0038】
(ベース本体部52)
ベース本体部52は、保持枠体3の右側の供給リール4の前方に配置された部材であり、材質は、実施形態ではポリアセタールである。ただし、これに限定されず、弾性片53が、ある程度の弾性を有していれば、ベース本体部52の材質は、ポリプロピレンやポリカーボネート等の他の合成樹脂であってもよい。
ベース本体部52は、壁部52bと、壁部52bの先端に設けられたヘッド保持軸52aと、壁部52bの前方に設けられた筒部52cと、壁部52bの右面後部の位置に右側に向かって立設されている係止爪52dと、を備える。
【0039】
壁部52bの先端にはヘッド保持軸52aが設けられる。壁部52bの後方は、回転制止板20の外周側に略沿った湾曲形状となっている。
前述のように、ヘッド保持軸52aは、転写ヘッド51の孔部51aに挿入され、転写ヘッド51をベース本体部52に対してヘッド保持軸52aを中心として揺動可能に保持する。
筒部52cは、壁部52bにおけるヘッド保持軸52aの根元部分の右面において、右側の筐体部材2R側に延びる。筒部52cの左側から、保持枠体3に立設されたベース回動軸32が挿通される。ベース回動軸32には、右側端面にすり割り部32aと、右側外周面に係合凸部32bが設けられている。ベース回動軸32は、筒部52cに対して、すり割り部32aを介して係合凸部32bが内側に変形しつつ挿入され、係合凸部32bと筒部52cの右側端面により所定位置に係合し抜け止めされる。筒部52cの内径とベース回動軸32の外径とは、ベース本体部52が回動可能な範囲で径差を小さくすることが好ましい。後述する使用時における転写ヘッド51のガタツキをなくすためである。
係止爪52dは、壁部52bの右面後部から右側に向かって立設されている。係止爪52dは底面台形の四角柱で、次に述べる回転制止板20の係止歯20aと係合することにより供給リール4の回転を制止する。
【0040】
(弾性片53)
弾性片53は、壁部52bにおける筒部52cが設けられている部分の前寄りの部分から壁部52bの外周に沿って後方に延びる細長い形状を有する。弾性片53はベース本体部52と一体的に製造されている。実施形態では、弾性片53及びベース本体部52は、一体成形により製造される。
弾性片53の先端には円環部53aが設けられ、円環部53aは弾性片回動軸34に回動可能に保持されている。円環部53aと弾性片回動軸34は、前述したベース回動軸32の係合凸部32bと筒部52cとが右側端面で係合されているため、外れないよう回動可能に保持される。なお、弾性片回動軸34の外周に係合凸部を設け、円環部53aとの間に抜け止めを設けてもよい。保持枠体3とベース部材50との間の回動可能部に抜け止めを設けることで、本実施形態のようなカートリッジを詰替え可能な構成としやすい。
円環部53aの内径と弾性片回動軸34とは、回動可能な範囲で径差を小さくすることが、後述する使用時の転写ヘッド51のガタツキをなくすことや、使用時に弾性片53を応答性の良い弾性変形をさせることができるため好ましい。
【0041】
(不使用時)
塗膜転写具1の不使用時においては、転写ヘッド51は第1位置にある。そして、図5に示すように係止爪52dは回転制止板20の係止歯20aに係止し、回転制止板20と一体的に回動する供給リール4の回転(実施形態では順転、逆転どちらも)が制止されている。
弾性片53は、基端が壁部52bにおける筒部52cが設けられている部分の前寄りの部分から延び、先端は弾性片回動軸34に保持され、弾性変形していない状態である。
【0042】
(使用時)
塗膜転写具1の使用時においては、図6に示すように、転写ヘッド51が被転写面に押圧されて図中二点鎖線で示す第1位置から、図中矢印r2の方向の図中実線で示す第2位置に移動する。そうすると、ベース本体部52もベース回動軸32を中心に回動し、係止爪52dが図6の矢印r3の方向に移動する。転写ヘッド51の後方にある当接部51cと筐体2の開口部付近に設けられた係合部2bが当接することにより、転写ヘッド51の移動が規制され、使用時に転写ヘッド51への押圧力を被転写面に伝達することができる。
これにより、回転制止板20の係止歯20aと、係止爪52dとの係止が解除され、供給リール4が回転可能となり、供給リール4に巻装された転写テープ4Tの引き出しができるようになる。なお、このときも、前記逆転防止機構により、供給リール4の逆転は防止されている。
【0043】
塗膜転写具1の使用時において弾性片53の基端部は、ベース本体部52がベース回動軸32を中心に回動するので、わずかに後方に移動する。
そうすると弾性片53の先端部は、弾性片回動軸34を中心に回動可能であるが、保持枠体3における位置は固定されているので、弾性片53は弾性変形して図示するように、二点鎖線の状態から実線で示すように中央部が下方に湾曲する。
【0044】
(押圧解除)
そして、転写作業が終了し、転写ヘッド51の被転写面からの押圧が解除されると、弾性変形していた弾性片53が元の形に戻ろうとする復元力で、転写ヘッド51が図5の位置(第1位置)に戻る。係止爪52dは回転制止板20の係止歯20aに再度係止し、回転制止板20と一体的に回動する供給リール4の回転が制止される。このような構成とすることで、被転写面への転写作業を終了すると同時に、確実に供給リール4の回転を制止して、転写テープ4Tの塗膜の切断を良好にし、糸引き現象を防止することができる。
【0045】
以上説明したように実施形態の塗膜転写具1は、保持枠体3と、保持枠体3に回転可能に保持され、且つ転写テープ4Tが巻装された供給リール4と、保持枠体3に回転可能に保持され、且つ転写後の転写テープ4Tを巻き取る巻取リール6と、ベース本体部52、ベース本体部52の先端に設けられ供給リール4から引き出された転写テープ4Tを被転写面に転写する転写ヘッド51、及びベース本体部52に基端が固定され先端が保持枠体3に保持された弾性片53を有し、保持枠体3に回動可能に保持されたベース部材50と、を備える。
そして転写ヘッド51が被転写面に押圧されると、転写ヘッド51が第1位置から第2位置へ移動し、それに伴うベース部材50の回動により、弾性片53が弾性変形し、転写ヘッド51の被転写面への押圧が解除されると、弾性片53の復元力によるベース部材50の逆方向に回動により、転写ヘッド51が第2位置から第1位置に復帰する。
【0046】
この塗膜転写具1によると、ベース本体部52に基端が固定され、先端が保持枠体3に保持された弾性片53により、転写ヘッド51の復帰機構が構成されている。したがって、ベース本体部52と別に復帰機構として金属製のバネを別途用いる必要がないのでコストが削減される。
また、このような構造とすることで、金属製のバネを別途用いなくても、転写ヘッド51への小さな押圧力に対して、弾性片53が弾性変形し、転写ヘッド51の十分な復元力を得られる構造とすることができる。
【0047】
また実施形態の塗膜転写具1は、供給リール4とともに回転し、且つ、円周に沿って係止歯20aが形成された回転制止板20を備え、ベース部材50は、転写ヘッド51が被転写面に押圧されていない状態で係止歯20aと係合している係止爪52dを有し、転写ヘッド51が被転写面に押圧されてベース部材50が保持枠体3に対して回動すると、係止爪52dが係止歯20aから離れて供給リール4の回転が可能になる。
【0048】
このように、供給リール4の回転防止機構を構成する係止爪52dも、弾性片53が設けられたベース部材50に形成されているので、回転防止機構の係止爪52dを別部材にする必要がなく、コストが削減されるとともにスペース効率がよい。
【0049】
実施形態の塗膜転写具1において弾性片53及びベース本体部52は一体成形により一体的に製造されている。
【0050】
このように、弾性片53は転写ヘッド51を保持するベース本体部52と一体的に製造されているので、弾性片53をベース本体部52と別部材により製造した後、弾性片53をベース本体部52に取り付ける取付工程が不要である。ゆえに製造工程も短縮される。
【0051】
実施形態の塗膜転写具1においてベース本体部52は、保持枠体3に設けられたベース回動軸を中心に回動可能に保持され、弾性片53の基端部は、ベース本体部52におけるベース回動軸よりも転写ヘッド51側に位置し、弾性片53は基端部から転写ヘッド51が設けられている側と逆側に延び、弾性片53の先端部は、保持枠体3に設けられた弾性片回動軸34を中心として回動可能に保持されている。
【0052】
このようにすることで、弾性片53を用いた復帰機構を簡単な構造で製造することができる。
弾性片53の先端部は、円環部53aが回動しないよう、例えば、弾性片回動軸34と圧入により固定するように保持しても、弾性片53が弾性変形し十分に転写ヘッド51の復元力を得られる構造とすることができる。円環部53aが弾性片回動軸34と回動可能に保持することで、弾性片53に応力集中が発生しにくい構造とすることができ、繰り返し使用による破壊等を防ぐことができるので、より好ましい。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、これに限定されず、種々の変更が可能である。例えば、上述した左右は、逆であってもよい。また、逆転防止機構又は回転制止機構は、巻取リールと同軸に設けてもよい。
【0054】
実施形態は、カートリッジを詰替え可能なタイプであったが、これに限定されず、詰替えできない使い切りタイプであってもよい。すなわち、保持枠体3と筐体2とを一体で形成し、筐体2を、保持枠体3を含む構成としてもよい。
【0055】
ベース部材50は、転写ヘッド51と、ベース本体部52と、弾性片53とを備える。実施形態において、転写ヘッド51は、ベース本体部52及び弾性片53と別体であるが、これに限定されず、転写ヘッド51は、ベース本体部52及び弾性片53と一体部材であってもよい。弾性片53の長さや厚み、材質等を変更することで、復元力を適宜調整することができる。
【0056】
実施形態では、弾性片53の先端は円環部53aにより弾性片回動軸34(保持枠体3)に回動可能に保持されているが、これに限らない。すなわち、保持枠体を、この保持枠体から突出する一対の保持片を含んで構成し、弾性片の先端を、一対の保持片の間に保持させてもよい。この場合、弾性片の先端には、円環部は形成されない。
【符号の説明】
【0057】
1 塗膜転写具
2 筐体
3 保持枠体
4 供給リール
4T 転写テープ
6 巻取リール
6A 巻取リール側伝達部
7A 供給リール側伝達部
15 連結ギア
20 回転制止板
20a 係止歯
31 供給リール回転軸
32 ベース回動軸
33 巻取リール回転軸
34 弾性片回動軸
50 ベース部材
51 転写ヘッド
51a 孔部
51b 転写ローラ
51c 当接部
52 ベース本体部
52a ヘッド保持軸
52b 壁部
52c 筒部
52d 係止爪
53 弾性片
53a 円環部
図1
図2
図3
図4
図5
図6