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特開2022-37084流体システム内の漏れを検出するための方法およびシステム
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  • 特開-流体システム内の漏れを検出するための方法およびシステム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022037084
(43)【公開日】2022-03-08
(54)【発明の名称】流体システム内の漏れを検出するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/00 20060101AFI20220301BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20220301BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20220301BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20220301BHJP
   H01M 8/04992 20160101ALI20220301BHJP
【FI】
G01M3/00 C
H01M8/04 J
H01M8/0438
H01M8/04858
H01M8/04992
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021201429
(22)【出願日】2021-12-13
(62)【分割の表示】P 2020519677の分割
【原出願日】2018-10-10
(31)【優先権主張番号】102017219055.8
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】シルト,ヨハネス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】流体システム内の漏れを検知するための方法およびシステムを提供する。
【解決手段】少なくとも1つの第1の流体の流出量を、所定の時間間隔内で算出するステップと、第1の流体の予測消費を所定の時間間隔内で算出するステップと、算出された流出量と前記算出された予測消費との間の差分を算出するステップ44と、基準値と算出された差分との比較に基づいて漏れを検出するステップ46と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体システム内の漏れを検出するための方法において、
少なくとも1つの第1の流体(2)の流出量を、所定の時間間隔内で算出するステップと、
前記第1の流体(2)の予測消費を所定の時間間隔内で算出するステップと、
前記算出された流出量と前記算出された予測消費との間の差分を算出するステップと、
基準値と前記算出された差分との比較に基づいて漏れを検出するステップと、
を有している、流体システム内の漏れを検出するための方法。
【請求項2】
少なくとも1つの第1の流体(2)の流出量の算出を、少なくとも部分的に前記第1の流体(2)の圧力測定および/または温度測定に基づいて行うことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の流体(2)の予測消費の算出を、発生した電流に基づいておよび/または排出弁若しくはエア抜きバルブ(4′)から検出された流出量に基づいて、および/または流体システムのための特性値に基づいて、少なくとも部分的に行うことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記方法を、車両の流体システムにおいて使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記方法を、燃料電池システムの運転中に信頼できる形式で実施できるようにすることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記第1の流体(2)の流出量および予測消費に加えて漏れを検出するために、少なくとも1つの第2の流体(2′)の少なくとも1つのパラメータを考慮することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記比較に基づいて、好適には、基準値と、流出量と前記予測消費との間の算出された差分との間の差に基づいて、エラーを表示し、かつ/またはエラー解消措置を開始することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
流体システム内の漏れを検出するためのシステムにおいて、
少なくとも1つの第1の流体(2)の流出量を所定の時間間隔内で算出するための値を検出するための少なくとも1つのセンサユニットと、
前記第1の流体(2)の予測消費を所定の時間間隔内で算出し、かつ算出された前記流出量と算出された前記予測消費との間の差分を算出するための少なくとも1つのコントロールユニットと、
基準値と前記算出された差分との比較に基づいて漏れを検出するための少なくとも1つの検出ユニットと、
を有している、流体システム内の漏れを検出するためのシステム。
【請求項9】
前記システムが、エラーを表示若しくは解消するためのエラー表示ユニット若しくはエラー解消ユニットを有しており、前記エラー表示ユニット若しくは前記エラー解消ユニットは好適な形式で、流出量および予測消費から算出された前記差分と基準値との間の差に関する限界値を上回るときに作動されることを特徴とする、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
請求項8または9記載のシステムを有する、車両の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立方法請求項の前提部に記載した方法、独立システム請求項の前提部に記載したシステム、並びに並列式の独立システム請求項の前提部に記載した燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
流体システム内の漏れを検知するための方法およびシステムは、従来技術により公知である。
【0003】
このために、通常は流体システムの様々な領域内に圧力センサが配置されており、これらの圧力センサは、システム圧力を適切な運転状態で監視し、定常の状態でもまた非定常の状態でも漏れを検知することができる。ガスが流れていない定常状態では、漏れは通常は迅速な圧力低下に基づいて確認される。これに対して、ガス流が発生する流体システムの運転中では、漏れは、定常流れにおいて低すぎる圧力の発生が確認されることによってのみ検出される。
【発明の概要】
【0004】
本発明の対象は、独立方法請求項の特徴を有する方法、独立システム請求項の特徴を有するシステム、並びに並列式の独立システム請求項の特徴を有する燃料電池システムである。本発明のその他の特徴および詳細は、それぞれの従属請求項、明細書および図面に記載されている。この場合、本発明による方法に関連して記載された特徴および詳細は、もちろん本発明によるシステムおよび本発明による燃料電池システムにも関連して当てはまり、またそれぞれその逆でもあるので、個別の発明概念の開示に関連して、常に相互に引き合いに出されてよい。
【発明の効果】
【0005】
主請求項記載の本発明による方法は、特に流体システム、好適には燃料電池システム、特にPEM燃料電池システム内の漏れを検出するために用いられる。この場合、この方法の利点は、特に流体システムの運転中でも既に小さい漏れを確実に検出できるという点にある。これは、漏れを検知するための従来の方法では不可能である。従来の方法では、アクティブな状態では、中くらいから大きい漏れだけが確実に検知され得る。この場合、特にPEM燃料電池システムにおいては、高いシステム気密性が安全上重要なファクターである。何故ならば、水素は可燃性ガスであって、PEM燃料電池内にたいていは大量に存在するからである。
【0006】
この場合、流体システムの漏れを検出するための本発明による方法は、好適な形式で車両、特に燃料電池車両に使用され得る。本発明による方法では、具体的にまず、少なくとも1つの第1の流体の第1の流出量が所定の時間間隔内で算出される。この場合、第1の流体の流出量の算出は、直接的にまたは間接的に行われてよい。直接的な算出の場合、例えば流体の流れが充填レベル表示器または流量計を介して決定される。間接的な方法によれば、流出量は、好適には測定された様々な別のパラメータから間接的に決定することもできる。この場合、時間間隔は好適な形式で自由に選択されてよい。好適な形式で、第1の流体の流出量の算出と同時に、具体的に第1の流体の予測された消費が算出される。同時に行われる算出の代わりに、予測された消費は、第1の流体の流出量の算出の前または後に算出されてもよい。
【0007】
しかしながら、算出された流出量と算出された予測消費との間のできるだけ説得力のある比較のために、好適な形式で、算出と算出の間の時間間隔は時間的にできるだけ互いに近くに位置しているべきであり、好適には同じであるべきである。さらに、算出された流出量若しくは算出された予測消費の間のできるだけ説得力のある比較のために、時間間隔は概ね同じ長さでなければならない。選択的に、次いで相応の補外法がより長い時間間隔に亘って行われる場合は、2つの算出値が、より短い時間間隔で決定されることも可能である。
【0008】
第1の流体の流出量の算出後、並びに第1の流体の予測された消費の算出後に、具体的に、第1の流体の算出された流出量と算出された予測消費との間の差分が算出される。この場合、差分の算出は、個別の値から直接的にまたは所定数の個別の値の算出後に初めて平均化された値に基づいて行われてもよい。次いで、時間的に差分の算出後に、漏れの検出が行われ、漏れは、算出された差分と基準値との比較に基づいて具体的に決定される。この場合、基準値は好適な形式でシステムに依存する一定の値であって、この値は、場合によっては測定不正確さを考慮してよい。したがって、基準値は、システムが完全に気密であって測定不正確さがまったく存在しないことを前提とすれば、理想的には0である。したがって、この場合、第1の流体の予測された消費と流出量との間の差分も確認されない。
【0009】
しかしながら、完全に気密なシステムは存在せず、場合によって測定不正確さが避けられないので、これは一定の基準値に基づいて前もって考慮されてよい。その間に、基準値と算出された差分との比較は様々な形式で行われてよい。最も簡単な場合、比較は、基準値と算出された差分との単なる差に基づいて行われ、この場合、漏れは、特に少なくとも所定の限界値だけ基準値からずれている場合に検出され得る。様々なシステムに使用可能であり個別の環境条件を考慮した特にフレキシブルな検出方法の枠内で、公差ファクター若しくは公差範囲もこの検出方法に加えられてよい。公差ファクターを使用する場合、漏れは例えば、ずれと公差ファクターとの積が限界値を上回るときに初めて検出されるので、公差ファクターは外部の条件およびシステム条件に応じて決定され得る。選択的に、公差範囲を使用する場合、漏れは例えば、ずれと公差範囲との合計が限界値を上回ると初めて検出され得る。漏れの連続的な検査を保証するために、さらに好適な形式で、具体的な方法のステップ1~4が周期的に繰り返されるようになっていてよい。この方法の説得力を改善し、場合によってはこの方法の精度を高めるために、相応の次のステップが開始される前に、この方法の個別のステップだけを複数回繰り返すようになっていてもよい。
【0010】
好適な形式で、本発明の枠内で、少なくとも1つの第1の流体の流出量の算出を、少なくとも部分的に第1の流体の圧力測定および/または温度測定に基づいて行うようになっていてよい。この場合、圧力測定および/または温度測定に基づく流出量の決定は、流体の流出量の簡単かつフレキシブルな算出形式だけではなく、同時に精確な算出形式も約束する。特に高揮発性のガスにおいて、例えば充填レベル表示、フローティング、流量計に基づく体積決定はしばしば誤っている。何故ならば、流体の組成に応じて容器内の流体の密度は変化し、それによって体積決定に狂いが生じ得るからである。これに対して、圧力測定および/または温度測定によれば、流体体積は例えば2つの異なる時点で算出され、流体体積の差を介して流出量が異なる時点で決定され得る。したがって、PEM燃料電池では、例えば水素の流出量は体積差を介して決定され得る。この場合、水素の体積は、次のように構成されてよい:
V(H)=p/p T/T
この式中、PおよびTは大気圧(1.01310Pa)若しくは室温(298.15K)、およびVはタンクの正味体積を表す。2つの異なる時点における水素の体積差から、流出した水素の(規格条件に換算された)体積が得られ、この流出した水素の体積から最終的に、流出した水素の質量若しくは物質量が選択的に算出され得る。
【0011】
第1の流体の予測された消費の算出に関連して、本発明の枠内でさらに、この算出が、発生した電流に基づいておよび/または排出弁若しくはエア抜きバルブから検出された流出量に基づいて、および/または流体システムのための特性値に基づいて、少なくとも部分的に行われるようになっていてよい。この場合、特に簡単な算出は、測定された電流若しくは通過した電荷から第1の流体の予測消費を算出することによって得られる。この場合、流体の消費は、反応の化学量論に従って得られる。PEM燃料電池においては、例えば測定された電荷の2クーロンが水素の1モルの物質量に相当する。この物質量は相応に、再び相応の流体の体積若しくは質量に換算されてよい。
【0012】
測定された電流若しくは通過した電荷に基づく算出に加えて、第1の流体の予測消費の特に精確な決定およびエラー警告の防止のために、排出弁若しくはエア抜きバルブからの流出量の追加的な算入が有意義であり得る。例えばこのために実際に十分でない酸素が燃料電池の他方側に供給されると、水素の一部が反応時に全く変換されないことが生じ得る。この場合、もっぱら測定された電流若しくは通過した電荷から算出された、予測しようとする水素の消費が、実際に流出した量よりも著しく少ないので、修正なしに排出弁若しくはエア抜きバルブからの流出量を追加的に算入することによって、システムの完全なシール性にも拘わらず漏れが検出され、それによってエラー警告が作動されることになる。排出弁若しくはエア抜きバルブからのガス流出は、弁特性、温度および差圧から決定され得るか、または排出弁若しくはエア抜きバルブの開放なしに決定され得る。
【0013】
この具体的な方法をさらに最適化するために、特に精確であると同時に様々なシステムにフレキシブルに適合可能である本発明の方法の実施例の枠内で、第1の流体の予測消費の算出を少なくとも部分的に、流体システムのための特性値に基づいて行うようになっていてよい。この場合、流体システムのための特性値は一定であってよいか、または連続的に若しくは周期的に決定され若しくは測定されてもよい。この場合、システム特有の若しくは流体特有のまたは環境条件特有の値を算出に取り入れるために、流体システムのための特性値の算入を、特に測定された電流若しくは通過した電荷に基づいて第1の流体の予測消費の算出と組み合わせて、および排出弁若しくはエア抜きバルブからの流出量の算入と組み合わせて行うことが有意義であり得る。したがって、流体システムのための特性値は、システム特有の値の枠内で、例えば(燃料電池の)スタックモデルまたは個別のスタックに適用され、例えばシステムの変換率に関係してよい。流体特有の値の枠内で、これらの特性値は、例えば流体の密度または揮発性、引火性、着火性または有毒性に関して関連付けされ得る。環境条件特有の値の枠内で、特徴付けされた値は、例えば外気温度、外圧等に関連付けされてよい。
【0014】
最大限のシステム気密性の他に、できるだけ経済的な運転を保証するために、本発明によればさらに、この方法は、燃料電池システムの運転中でも信頼できる形式で実施できるようになっている。運転中の信頼できる漏れ検知は、安全上の重要性に基づいて、特に危険物質、例えば燃えやすい、発火性の、可燃性の若しくは健康を害する恐れのある流体等を使用する際に望まれている。そうでなければ、運転中の信頼できる漏れ検知の代わりに、ここでは定常状態での1回の試験だけが残っている。漏れに関する信頼できる試験を、定常状態においてのみ実施できるようにするためには、流体システムの運転はもちろん著しく制限されるであろう。何故ならば、場合によっては生じる漏れを望ましくは周期的に監視する場合、信頼できる漏れ試験を実施するために、運転が規則的な時間間隔で中断されなければならないからである。本発明の枠内で、より小さい漏れの検知は、各接続箇所および時間毎に既に100規格mlよりも少ない漏れ、好適には各接続箇所および時間毎に50規格mlより少ない漏れ、特に各接続箇所および時間毎に20規格mlより少ない漏れが、信頼できる方法とみなされる。
【0015】
また、本発明による方法の信頼性を特にさらに最適化するために、この方法は、第1の流体の流出量および予測消費に加えて漏れを検出するために、少なくとも1つの第2の流体の少なくとも1つのパラメータ、特に第2の流体の流出量および/または予測消費を考慮することが考えられる。第2の流体のパラメータを算入することは、具体的な方法が流体システムの漏れを検知するために排出弁若しくはエア抜きバルブからの流出量の決定を含んでいないときに、特に有意義である。したがって、例えば第2の流体の使用量を知ることによって、および反応の化学量論を知ることによって、反応相手の化学量論的に等しい物質量比が使用されているかどうか確認され、これによって、反応相手の等しくない物質量比において第1の流体の予測消費が相応に修正され得る。さらに本発明によれば、第1の流体の流出量の決定および予測消費、並びに第2の流体の少なくとも1つのパラメータに加えて、漏れ検知の信頼性をさらに改善するために、別のパラメータ、例えば薄膜の水分および/または開始システムの水分および/またはガス分布構造の水分および/または周囲温度および/または周囲圧力等が考慮されてよい。
【0016】
好適な形式で、本発明の枠内で同様に、前記比較に基づいて、好適には、基準値と、流出量と予測消費との間の算出された差分との間の差に基づいて、特に少なくとも限界値を上回るときに、エラーが表示され、かつ/またはエラー解消措置が開始されるようになっていてよい。この場合、エラー解消措置は、特に流体システムの少なくとも部分的な遮断、特に完全な遮断のことであってよい。部分的な若しくは完全なシステム遮断の代わりに、純粋なエラー表示の枠内で限界値を上回ったときに、エラー表示によって少なくとも警告メッセージが発せられ、この警告メッセージにより、漏れを検知するための特により精確な別のテストが開始されるようになっていてもよい。
【0017】
基本的に、本発明による方法は、燃料電池システムの中圧力側または高圧力側(中圧力は約9~13bar/高圧力は約350~700bar)において行われ、この場合、最小の漏れはこの方法によって既に早期に検出可能である。
【0018】
同様に本発明の対象は、流体システム、特に燃料電池システム内で漏れを検出するための、請求項8の特徴を有するシステムである。この場合、具体的に、このシステムは、少なくとも1つの第1の流体の流出量を算出するための値を検出するための少なくとも1つのセンサユニットを有している。さらに、本発明によるシステムは、第1の流体の予測消費を算出し、かつ算出された流出量と算出された予測消費との差分を算出するためのコントロールユニットを有している。また、具体的なシステムは、基準値と算出された差分との比較に基づいて漏れを検出するための少なくとも1つの検出ユニットを有している。これにより、本発明によるシステムは、本発明による方法に関連して詳しく説明されているのと同じ利点をもたらす。本発明による方法の実施例で既に説明されているように、具体的なシステムは、好適な形式で流体システム、特に燃料電池システムの漏れを検出するために設けられている。本発明によるシステムの利点は、特に、このシステムによって、流体システムのアクティブな状態においても、既に小さい漏れの確実な検知を行うことができる、という点にある。本発明によるシステムを制御するために、個別のシステム構成要素は、好適な形式で互いにコントロール接続若しくは通信接続を介して接続されている。この場合、コントロール接続若しくは通信接続は、少なくとも部分的に無線式および/または少なくとも部分的に有線式に構成されていてよい。好適な形式で、コントロール接続および/または通信接続は、BUSシステム、特にCAN-BUSシステムを介して互いに接続されていてよい。
【0019】
さらに、本発明の枠内で、前記システムは、エラーを表示若しくは解消するためのエラー表示ユニット若しくはエラー解消ユニットを有しており、この場合、エラー表示ユニット若しくはエラー解消ユニットは好適な形式で、流出量および予測消費から算出された差分と基準値との間の差に関する限界値を上回るときに作動されるように提案される。この場合、エラー表示エレメントとして、バイブレータ式および/または聴覚式および/または視覚式のエレメントが設けられていてよい。この場合、エラー表示は、例えばすべてのエレメントまたは個別のエレメントのみを含んでいてよい。同様に、表示エレメントは、ずれの大きさによって決定されてもよい。したがって、小さいずれの場合は、単にバイブレータ式のエラー表示が行われてよい。大きいずれの場合は、もっぱら聴覚式のエラー表示が行われるかまたはバイブレータ式および聴覚式のエラー表示が行われてよい。さらに大きいずれの場合は、最終的に視覚式のエラー表示のみが行われるかまたは聴覚式、バイブレータ式および視覚式のエラー表示が行われてよい。したがって、流体システムの運転者にとって、既に非常に早期に、検知された漏れおよび漏れの大きさも明らかにされ得る。エラー解消ユニットとして、具体的に、少なくとも部分的な、好適には完全な流体システムの遮断のための緊急遮断エレメントが設けられていてよい。
【0020】
同様に、本発明の対象は、本発明による方法を実施するための本発明によるシステムを有する燃料電池システム、特に(燃料電池)車両である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】流体システムの漏れを検出するための本発明によるシステムの概略図である。
図2】流体システムの漏れを検出するための本発明による方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のその他の利点、特徴および詳細は、図面を参照して本発明の複数の実施例の詳細を示す以下の説明に記載されている。この場合、請求項および明細書に記載された特徴は、それぞれ個別でもまたは任意の組み合わせでも本発明にとって重要である。
【0023】
図面では、同じ技術的な特徴のためには同じ符号が使用されている。
【0024】
図1は、流体システムの漏れを検出するための本発明によるシステム1の概略図を示す。システム1は、アノード12およびカソード14を有する燃料電池を有しており、このアノード12とカソード14とはメンブレン16によって互いに分離されている。燃料電池を冷却するために、冷却循環路20を含有する冷却ユニット18が燃料電池のカソード14の側に配置されている。アノード12もカソード14も、メンブレン16と電気的に接続されている。運転中に、燃料電池のアノード12の周囲をアノードガス2が流れ、この場合、アノードガス2は水素である。水素2は容器2a内に配置されていて、この容器2aは、実際の容器圧力を測定するための圧力センサ8を有している。遮断弁4の開放によって、水素ガス2は、まずアノードガス管路22の高圧領域22a内に導かれる。ここでは、まず導出されたガス2の圧力測定および温度測定が、配置された圧力センサ8および温度センサ10を介して行われ、その結果から導出された水素2の量が決定される。調量弁6の調整された開放によって、アノードガス2は調量弁6の後ろに配置されたアノードガス管路22の中圧領域22bを貫流し、この中圧領域22b内に、実際の水素圧を測定するための、中くらいの圧力領域のために設計された別の圧力センサ8′が配置されている。別の調量弁6を介してガスは最終的にアノード12に達する。
【0025】
アノードガス2とは反対側でカソードガス2′、この実施例では酸素を含有する新鮮空気が導入される。空気2′は吸入され、まずエアフィルタ28内でフィルタ処理される。この場合、空気濾過は、燃料電池構成要素を、吸入された空気からの有害な微粒子およびガス状の汚染物質に対して保護するために用いられる。濾過後に、カソードガス2′は圧縮機26によって圧縮され、遮断弁4を介してカソードガス管路24の高圧領域24a内にガイドされ、この高圧領域24a内でやはり、アノードガス管路22内と同様に、配置された圧力センサ8および温度センサ10を介して圧力測定および温度測定が行われる。算出された圧力値および温度値から、流出されたアノードガス2の量の決定と同様に、流出されたカソードガス2′の量も決定され得る。次いで、カソードガス2′は調量弁6を介してカソードガス管路24の中圧領域24b内に導かれ、この中圧領域24b内に、実際のカソードガス圧の圧力測定のための、中くらいの圧力領域のために設計された別の圧力センサ8′が配置されている。別の調量弁6を介して、カソードガス2′は最終的にカソード14に供給される。アノード12の側にも、またカソード14の側にも、導出管路22c若しくは24cが配置されており、これらの導出管路22c若しくは24c内で圧力は圧力センサ8″を介して決定され、これらの圧力センサを介して、消費されなかった残留ガスおよび反応生成物が特に、設けられた遮断弁4′によって(コントロールされて)導出され得る。この場合、反応時に消費されなかったアノードガス2は、好適な形式で相応の管路を介してシステムに新たに供給される。
【0026】
図2は、ステップ40~50を有する、流体システム1の漏れを検出するための本発明による方法の概略図を示す。ステップ40若しくは42において、所定の時間間隔内で好適には同時に、少なくとも第1の流体2の流出量、並びにこの第1の流体2の予測された消費が算出される。時間的に同時に行われる算出の代わりに、予測された消費は、第1の流体2の流出量の算出前または算出後に算出されてもよいが、この場合、算出間の時間間隔は、算出された流出量と算出された予測消費との間のできるだけ説得力のある比較を得るために、互いにできるだけ近くにあるべきであり、それによって2つの算出のためのできるだけ同じ条件が得られる。さらに、算出された流出量若しくは算出された予測消費の間のできるだけ説得力のある比較のために、時間間隔は概ね同じ長さでなければならない。選択的に、次いで相応の補外法がより長い時間間隔に亘って行われる場合には、2つの算出された値のうちの一方がより短い時間間隔で決定されてもよい。
【0027】
流出量の算出後並びに第1の流体2の予測された消費後に、ステップ44で2つの値の差分の算出が行われる。この場合、差分の算出は、個別の値から直接に行われてよいか、または所定数の複数の値の算出後に初めて、これらの値の平均値に基づいて行われてもよい。
【0028】
ステップ46で最終的に、流出量と第1の流体2の予測された消費との間の算出された差分が基準値と比較され、この比較に基づいて漏れが識別される。この場合、基準値は、好適な形式で、場合によっては測定不正確さが考慮され得る、システムに依存する一定の値である。したがって、システムが完全に気密であって測定不正確さがまったく存在しないことを前提とすれば、理想的には0であってよい。したがって、この場合、流出量と第1の流体の予測された消費との間の差がないと検知されてもよい。しかしながら完全に気密なシステムは存在せず、場合によっては測定不正確さが避けられないので、これは、予め一定の基準値に基づいて考慮されてよい。基準値と算出された差分との間の比較は、様々な形式で行うことができる。最も簡単な場合、比較は、基準値と算出された差分との間の単なる差に基づいて行われ、この場合、漏れは特に基準値から所定の限界値だけずれている場合に検出される。様々なシステムに使用可能であり、個別の環境条件を考慮する特別にフレキシブルな検出方法の枠内で、追加的に公差ファクター若しくは公差範囲もこの検出方法に加えられてよい。流出量と予測された消費との間の算出された差分を基準値と比較する際に、所定の限界値を上回るずれが算出されると、ステップ48若しくは50で、エラーが表示され、かつ/またはエラー解消措置が開始される。ずれが所定の限界値を上回らないと、ステップ40~46が新たに実行される。漏れに関する継続的な検査を保証するために、基準値と、流出量と予測された消費との差分との間のずれが、限界値を上回らなくなるまで、具体的な方法のステップ40~46が周期的に繰り返し行われるようになっていれば、特に好適である。
【符号の説明】
【0029】
1 システム、流体システム
2 第1の流体、アノードガス
2′ 第2の流体、カソードガス
2a 容器
4 遮断弁
4′ 遮断弁、排出弁若しくはエア抜きバルブ
6 調量弁
8,8′,8″ 圧力センサ
10 温度センサ
12 アノード
14 カソード
16 メンブレン
18 冷却ユニット
20 冷却循環路
22 アノードガス管路
22a 高圧領域
22b 中圧領域
22c 導出管路
24 カソードガス管路
24a 高圧領域
24b 中圧領域
24c 導出管路
26 圧縮機
28 エアフィルタ
40,42,44,46,48,50 ステップ
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2021-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体システム内の漏れを検出するための方法において、
少なくとも1つの第1の流体(2)の流出量を、所定の時間間隔内で算出するステップと、
前記第1の流体(2)の予測消費を所定の時間間隔内で算出するステップと、
前記算出された流出量と前記算出された予測消費との間の差分を算出するステップと、 基準値と前記算出された差分との比較に基づいて漏れを検出するステップと、
を有し
前記第1の流体(2)の予測消費の算出を、流体システムのための特性値に基づいて、少なくとも部分的に行い、
前記流体システムのための特性値は、前記流体システムの変換率に関係している、流体システム内の漏れを検出するための方法。
【請求項2】
流体システム内の漏れを検出するための方法において、
少なくとも1つの第1の流体(2)の流出量を、所定の時間間隔内で算出するステップと、
前記第1の流体(2)の予測消費を所定の時間間隔内で算出するステップと、
前記算出された流出量と前記算出された予測消費との間の差分を算出するステップと、 基準値と前記算出された差分との比較に基づいて漏れを検出するステップと、
を有し、
前記第1の流体(2)の予測消費の算出を、流体システムのための特性値に基づいて、少なくとも部分的に行い、
前記流体システムのための特性値は、前記第1の流体(2)の密度または揮発性または引火性または着火性または有毒性に関して関連付けされる、流体システム内の漏れを検出するための方法。
【請求項3】
流体システム内の漏れを検出するための方法において、
少なくとも1つの第1の流体(2)の流出量を、所定の時間間隔内で算出するステップと、
前記第1の流体(2)の予測消費を所定の時間間隔内で算出するステップと、
前記算出された流出量と前記算出された予測消費との間の差分を算出するステップと、 基準値と前記算出された差分との比較に基づいて漏れを検出するステップと、
を有し、
前記第1の流体(2)の予測消費の算出を、流体システムのための特性値に基づいて、少なくとも部分的に行い、
前記流体システムのための特性値は、外気温度または外圧に関連付けされる、流体システム内の漏れを検出するための方法。
【請求項4】
少なくとも1つの第1の流体(2)の流出量の算出を、少なくとも部分的に前記第1の流体(2)の圧力測定および/または温度測定に基づいて行うことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記第1の流体(2)の予測消費の算出を、発生した電流に基づいておよび/または排出弁若しくはエア抜きバルブ(4′)から検出された流出量に基づいて、少なくとも部分的に行うことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記方法を、車両の流体システムにおいて使用することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記方法を、燃料電池システムの運転中に信頼できる形式で実施できるようにすることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記第1の流体(2)の流出量および予測消費に加えて漏れを検出するために、少なくとも1つの第2の流体(2′)の少なくとも1つのパラメータを考慮することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記比較に基づいて、エラーを表示し、かつ/またはエラー解消措置を開始することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
基準値と、流出量と前記予測消費との間の算出された差分との間の差に基づいて、エラーを表示し、かつ/またはエラー解消措置を開始することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
流体システム内の漏れを検出するためのシステムにおいて、
少なくとも1つの第1の流体(2)の流出量を所定の時間間隔内で算出するための値を検出するための少なくとも1つのセンサユニットと、
前記第1の流体(2)の予測消費を所定の時間間隔内で算出し、かつ算出された前記流出量と算出された前記予測消費との間の差分を算出するための少なくとも1つのコントロールユニットと、
基準値と前記算出された差分との比較に基づいて漏れを検出するための少なくとも1つの検出ユニットと、
を有し
前記第1の流体(2)の予測消費の算出を、流体システムのための特性値に基づいて、少なくとも部分的に行い、
前記流体システムのための特性値は、前記流体システムの変換率に関係している、流体システム内の漏れを検出するためのシステム。
【請求項12】
流体システム内の漏れを検出するためのシステムにおいて、
少なくとも1つの第1の流体(2)の流出量を所定の時間間隔内で算出するための値を検出するための少なくとも1つのセンサユニットと、
前記第1の流体(2)の予測消費を所定の時間間隔内で算出し、かつ算出された前記流出量と算出された前記予測消費との間の差分を算出するための少なくとも1つのコントロールユニットと、
基準値と前記算出された差分との比較に基づいて漏れを検出するための少なくとも1つの検出ユニットと、
を有し、
前記第1の流体(2)の予測消費の算出を、流体システムのための特性値に基づいて、少なくとも部分的に行い、
前記流体システムのための特性値は、前記第1の流体(2)の密度または揮発性または引火性または着火性または有毒性に関して関連付けされる、流体システム内の漏れを検出するためのシステム。
【請求項13】
流体システム内の漏れを検出するためのシステムにおいて、
少なくとも1つの第1の流体(2)の流出量を所定の時間間隔内で算出するための値を検出するための少なくとも1つのセンサユニットと、
前記第1の流体(2)の予測消費を所定の時間間隔内で算出し、かつ算出された前記流出量と算出された前記予測消費との間の差分を算出するための少なくとも1つのコントロールユニットと、
基準値と前記算出された差分との比較に基づいて漏れを検出するための少なくとも1つの検出ユニットと、
を有し、
前記第1の流体(2)の予測消費の算出を、流体システムのための特性値に基づいて、少なくとも部分的に行い、
前記流体システムのための特性値は、外気温度または外圧に関連付けされる、流体システム内の漏れを検出するためのシステム。
【請求項14】
前記システムが、エラーを表示若しくは解消するためのエラー表示ユニット若しくはエラー解消ユニットを有しており、前記エラー表示ユニット若しくは前記エラー解消ユニットは好適な形式で、流出量および予測消費から算出された前記差分と基準値との間の差に関する限界値を上回るときに作動されることを特徴とする、請求項11から13までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項15】
請求項11から14までのいずれか1項記載のシステムを有する、車両の燃料電池システム。
【外国語明細書】