(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043337
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】電気泳動装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/447 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
G01N27/447 331G
G01N27/447 315K
G01N27/447 315D
G01N27/447 331E
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022003526
(22)【出願日】2022-01-13
(62)【分割の表示】P 2020554610の分割
【原出願日】2018-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松村 仁
(72)【発明者】
【氏名】奥野 恵佳
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆介
(72)【発明者】
【氏名】穴沢 隆
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 満
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 航
(72)【発明者】
【氏名】中澤 太朗
(72)【発明者】
【氏名】山崎 基博
(57)【要約】
【課題】電気泳動装置の分析性能を向上する。
【解決手段】キャピラリと、キャピラリヘッドと、電極ホルダと、検出部とを備えたキャピラリアレイと、少なくとも前記キャピラリを加熱する加熱部と、前記検出部に光を照射し、蛍光を検出する照射検出ユニットとを備えた電気泳動装置であって、前記加熱部は、前記キャピラリアレイにおける前記電極ホルダから前記検出部までの領域である第一の領域と、前記キャピラリアレイにおける前記検出部の配置された領域である第二の領域と、前記キャピラリアレイにおける前記検出部から前記キャピラリヘッドまでの領域である第三の領域とを互いに独立に温調する構成を有し、前記第二の領域および前記第三の領域の温度が前記第一の領域の温度よりも低く、かつ、前記第二の領域と前記第三の領域との温度差が前記第二の領域と前記第一の領域との温度差よりも小さくなるように温調されることを特徴とする。
【選択図】
図10A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャピラリと、前記キャピラリ一端を束ねるキャピラリヘッドと、前記キャピラリ他端に設けられた電極を保持する電極ホルダと、前記キャピラリに設けられた検出部とを備えたキャピラリアレイと、
少なくとも前記キャピラリを加熱する加熱部と、
前記検出部に光を照射し、前記キャピラリ内の蛍光標識試料から発生した蛍光を検出する照射検出ユニットと
を備えた電気泳動装置であって、
前記加熱部は、
前記キャピラリアレイにおける前記電極ホルダから前記検出部までの領域である第一の領域と、
前記キャピラリアレイにおける前記検出部の配置された領域である第二の領域と、
前記キャピラリアレイにおける前記検出部から前記キャピラリヘッドまでの領域である第三の領域と
を互いに独立に温調する構成を有し、
前記第二の領域および前記第三の領域の温度が前記第一の領域の温度よりも低く、かつ、前記第二の領域と前記第三の領域との温度差が前記第二の領域と前記第一の領域との温度差よりも小さくなるように温調される
ことを特徴とする電気泳動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気泳動装置において、
前記第二の領域と前記第三の領域との温度差が7度以下になるように温調される
ことを特徴とする電気泳動装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電気泳動装置において、
前記第二の領域および前記第三の領域の温度は45度前後に温調される
ことを特徴とする電気泳動装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電気泳動装置において、
前記加熱部は、第一の温調ユニットと、第二の温調ユニットとを含んで構成され、
前記第一の領域および前記第三の領域は前記第一の温調ユニットによって温調され、
前記第二の領域は前記第二の温調ユニットによって温調される
ことを特徴とする電気泳動装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電気泳動装置において、
前記第一の温調ユニットは、
第一の熱源と、
前記第一の熱源の熱を前記キャピラリへ伝達する熱伝達板と
を有し、
前記第一の熱源は、
前記第三の領域の温調を行う第一の熱源領域と、
前記第一の領域の温調を行い、かつ、前記第一の熱源領域より発熱量の大きい第二の熱源領域と
を含んで構成される
ことを特徴とする電気泳動装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電気泳動装置において、
前記熱伝達板は、高温部と接触する第一の熱伝達板と、低温部と接触する第二の熱伝達板とを含んで構成される
ことを特徴とする電気泳動装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電気泳動装置において、
前記第一の熱伝達板と、前記第二の熱伝達板との間には、断熱材が設けられる
ことを特徴とする電気泳動装置。
【請求項8】
請求項4に記載の電気泳動装置において、
前記第二の温調ユニットは、
第二の熱源と、前記第二の熱源の熱を前記検出部に伝達させるブロックとを有する
ことを特徴とする電気泳動装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電気泳動装置において、
前記ブロックにおける前記検出部と接触する面には、反射防止シートが設けられる
ことを特徴とする電気泳動装置。
【請求項10】
請求項8に記載の電気泳動装置において、
前記ブロックは、黒色である
ことを特徴とする電気泳動装置。
【請求項11】
請求項8に記載の電気泳動装置において、
前記ブロックにおける前記検出部と接触する面は、前記検出部と同等の面積である
ことを特徴とする電気泳動装置。
【請求項12】
請求項4に記載の電気泳動装置において、
前記電気泳動装置は、本体部およびドア部を有する筐体を更に備えて構成され、
前記第一の温調ユニットは、前記本体部に設けられ、
前記第二の温調ユニットは、前記ドア部に設けられる
ことを特徴とする電気泳動装置。
【請求項13】
請求項12に記載の電気泳動装置において、
前記ドア部と前記第二の温調ユニットとの間には、ばねを有する
ことを特徴とする電気泳動装置。
【請求項14】
請求項13に記載の電気泳動装置において、
前記ドア部には、前記第二の温調ユニットのガイドを有する
ことを特徴とする電気泳動装置。
【請求項15】
請求項4に記載の電気泳動装置において、
前記検出部は、前記照射検出ユニットと前記第二の温調ユニットとの間に位置する
ことを特徴とする電気泳動装置。
【請求項16】
請求項4に記載の電気泳動装置において、
前記第二の温調ユニットは、前記照射検出ユニットに設けられる
ことを特徴とする電気泳動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、DNA解析は研究用途から病院等の臨床分野へと急速に適用範囲が広がっている。DNA解析の手段として、電気泳動によりDNAフラグメントを分離する方法があり、犯罪捜査や血縁関係の判定、疾患診断に使用されている。
【0003】
特許文献1では、キャピラリ間の温度ばらつきを低減するため、検出部を有するマルチキャピラリーアレイと、前記試料導入部と前記検出部とを含む通電路に電圧を加える電圧印加機構と、前記マルチキャピラリーアレイから前記試料導入部を除いた部分の一部又は全体を収容する恒温槽と、前記試料導入部を浸す第1バッファー液を収容する第1バッファー容器と、該第1バッファー液の温度を調整する第1温度制御機構と、検出部の温度を調整する第2温度制御機構を有する電気泳動装置が開示されている。
【0004】
特許文献2では、キャピラリと、キャピラリ内を電気泳動する試料を光学的に検出するための光学検出部とを有するキャピラリアレイと、キャピラリを一定温度に保持するために上記キャピラリアレイを収納するための本体フレームとドアフレームから構成される恒温槽装置と、本体フレームに設けられた孔を有する温度制御部材と、温度制御部材の孔に配置され光学検出部を保持するための光学検出部ホルダと、検出部に保持された光学検出部を押圧するための光学検出部ホルダカバーが設けられ、光学検出部ホルダカバーには温度制御部材に接触する温度伝播部材が設けられていることを特徴とする電気泳動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-166976号公報
【特許文献2】特開2007-322367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気泳動装置の分析性能を高めるためには、キャピラリを適切な温度で温める必要がある。
【0007】
特許文献1では、第2温度制御機構により、検出部近傍を温めている。しかし、検出部そのものの温度制御は行われていなかった。特許文献2では、温度伝播部材が、温度制御部材の熱を光学検出部に伝達させている。しかし、温度伝播部材では、十分な温度調整は出来ていなかった。
【0008】
本発明の目的は、電気泳動装置の分析性能を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の電気泳動装置は、キャピラリと、前記キャピラリ一端を束ねるキャピラリヘッドと、前記キャピラリ他端に設けられた電極を保持する電極ホルダと、前記キャピラリに設けられた検出部とを備えたキャピラリアレイと、少なくとも前記キャピラリを加熱する加熱部と、前記検出部に光を照射し、前記キャピラリ内の蛍光標識試料から発生した蛍光を検出する照射検出ユニットとを備えた電気泳動装置であって、前記加熱部は、前記キャピラリアレイにおける前記電極ホルダから前記検出部までの領域である第一の領域と、前記キャピラリアレイにおける前記検出部の配置された領域である第二の領域と、前記キャピラリアレイにおける前記検出部から前記キャピラリヘッドまでの領域である第三の領域とを互いに独立に温調する構成を有し、前記第二の領域および前記第三の領域の温度が前記第一の領域の温度よりも低く、かつ、前記第二の領域と前記第三の領域との温度差が前記第二の領域と前記第一の領域との温度差よりも小さくなるように温調されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、電気泳動装置の分析性能を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】キャピラリ電気泳動装置の一構成を示す概要図。
【
図4A】キャピラリ側から見たキャピラリカートリッジの一構成を示す図。
【
図4B】掴持部側から見たキャピラリカートリッジの一構成を示す図。
【
図5B】キャピラリカートリッジを取り付ける恒温槽の一構成を示す図。
【
図5C】キャピラリカートリッジを取り付け後の恒温槽の一構成を示す図。
【
図8B】恒温槽とキャピラリアレイの配置を示す図。
【
図9A】従来のキャピラリアレイの温度分布を示す図。
【
図10A】本発明のキャピラリアレイの温度分布を示す図。
【
図13A】実施例2の第1の温調ユニットのヒータの一例を示す図。
【
図13B】実施例2の第1の温調ユニットのヒータの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【実施例0013】
図1に、実施例1のキャピラリ電気泳動装置の装置構成図を示す。本装置は、装置上部にある照射検出/恒温槽ユニット40と、装置下部にあるオートサンプラーユニット20の、二つのユニットに大きく分けることが出来る。
【0014】
オートサンプラーユニット20には、サンプラーベース21の上にY軸駆動体23が搭載され、Y軸駆動体23にはZ軸駆動体24が搭載され、Z軸駆動体24の上にはサンプルトレイ25が搭載されている。これにより、サンプルトレイを、Y軸駆動体23とZ軸駆動体により、Y軸方向及びZ軸方向に駆動することができる。サンプルトレイ25の上に、泳動媒体容器28、陽極側緩衝液容器29、陰極側緩衝液容器33、サンプル容器26をユーザがセットする。サンプル容器26は、サンプルトレイ25上に搭載されたX軸駆動体22の上にセットされ、サンプルトレイ25上でサンプル容器26のみがX軸に駆動することが出来る。Z軸駆動体24には送液機構27も搭載される。この送液機構27は泳動媒体容器28の下方に配置される。
【0015】
照射検出/恒温槽ユニット40には、主に恒温槽ユニット41と照射検出ユニット42から構成される。恒温槽ユニット41は中の温度を一定に保つことが出来る。恒温槽ユニット41の後方には照射検出部である照射検出ユニット42が搭載されている。恒温槽ユニット41の中に、後で詳述するキャピラリカートリッジ01がユーザによりセットされ、恒温槽ユニット41内に固定される。恒温槽ユニット41にてキャピラリを恒温に保ちながら、蛍光がつけられたサンプルの電気泳動を行い、照射検出ユニット42にてサンプルに付与された蛍光の検出を行う。また、恒温槽ユニット41には、電気泳動のための高電圧印加時にGNDに落とすための電極(陽極)43も搭載されている。上述したように、泳動媒体容器28、陽極側緩衝液容器29、陰極側緩衝液容器33、サンプル容器26は、オートサンプラーユニット20にてYZ軸に駆動することができ、サンプル容器26のみ、さらにX軸に駆動することが出来る。これにより、恒温槽ユニット41に固定されたキャピラリカートリッジ01のキャピラリに、泳動媒体容器28、陽極側緩衝液容器29、陰極側緩衝液容器33、サンプル容器26を、オートサンプラーユニット20の動きで、任意に自動で接続することが可能である。
【0016】
図2に、
図1に示したキャピラリ電気泳動装置の平面図を示す。サンプルトレイ25上にセットされた陽極側緩衝液容器29には、陽極側洗浄槽30、陽極側電気泳動用緩衝液槽31、陽極側サンプル導入用緩衝液槽32がある。また、陰極側緩衝液容器33には、廃液槽34、陰極側洗浄槽35、陰極側電気泳動用緩衝液槽36がある。
【0017】
泳動媒体容器28、陽極側緩衝液容器29、陰極側緩衝液容器33、サンプル容器26は図示のような位置関係に配置される。これにより、恒温槽ユニット41内のキャピラリ05との接続の際の陽極側-陰極側の位置関係は、「泳動媒体容器28-廃液槽34」、「陽極側洗浄槽30-陰極側洗浄槽35」、「陽極側電気泳動用緩衝液槽31-陰極側電気泳動用緩衝液槽36」、「陽極側サンプル導入用緩衝液槽32-サンプル容器26」となる。
【0018】
図3に、
図2におけるA-A断面図を示す。泳動媒体容器28はサンプルトレイ25にセットされる。また、送液機構27は、送液機構27に内蔵されたプランジャが、泳動媒体容器28の下方になるように配置される。
【0019】
電気泳動の際、キャピラリ05の
図3における右側が陰極側となり、左側が陽極側となる。サンプルトレイ25がキャピラリの陽極側及び陰極側が「陽極側電気泳動用緩衝液槽31-陰極側電気泳動用緩衝液槽36」の位置になるように移動し、陰極側のキャピラリ05に高電圧がかかり、陰極側緩衝液容器33、陽極側緩衝液容器29を介し、電極(陽極)43にてGNDに流すことで電気泳動を行う。なお、サンプルトレイ25の位置を固定して、照射検出/恒温槽ユニット40を可動にする装置構造にしても良い。
【0020】
図4Aに、本実施例におけるキャピラリカートリッジの一構成の概略図を示す。キャピラリカートリッジ01は、キャピラリ05、検出部06、キャピラリヘッド07、電極(陰極)08、電極ホルダ09から成るキャピラリアレイ02と、セパレータ10、支持体03、シート04、掴持部11(
図4B参照)から構成されている。また、同図では電極ホルダ09で電極(陰極)08を保持しているが、電極(陰極)08は、直接、支持体03に固定された構造でも良い。なお、同図において、キャピラリカートリッジ01は、
図4の手前側から掴持部11を備える支持体03、シート04、キャピラリアレイ02の順に配置されている。
【0021】
それぞれの部品について説明する。キャピラリ05は、遮光及び強度を保持するための被覆が施された侠流路であり、例えばポリイミド被覆の施された内径約50μm程度の石英ガラス管である。この管に泳動媒体を充填して試料を泳動分離する泳動路となる。キャピラリヘッド07は、キャピラリ05の端部であり、キャピラリ05を束ねて保持するとともに、泳動媒体を充填する注入端または排出端である。セパレータ10は、キャピラリ05の本数と同一数の孔が形成されており、孔の内径はキャピラリ05の内径よりやや大きく、各孔に1本のキャピラリ05が貫通する。こうして、キャピラリ05を互いに分離し、キャピラリ05が互いに絡み合うこと、及び密集して束状になることを防止する。また、セパレータ10は、片面に粘着性を持ったシール状の部材であり、キャピラリ05を貫通させた状態でシート04に貼ることでキャピラリ05をシート04上に沿って定位させる役割もある。セパレータ10の材料は、恒温槽ユニット41にキャピラリカートリッジを固定する際に邪魔にならないように薄くて柔らかいものが好ましい。例えば、セパレータ10の材料としてはシリコンゴムや紙、フィルム等がある。セパレータ10の数はキャピラリ02の長さに応じて増減しても良い。
【0022】
電極(陰極)08は、キャピラリ05の本数に対応して存在し、電圧をかけることで、帯電した試料をキャピラリ05内に導入し、分子サイズごとに泳動分離を行うことができる。電極(陰極)08は、例えば内径0.1~0.5mm程度のステンレスパイプであり、この中にキャピラリ05が挿入されている。検出部06は、キャピラリ05上に位置し、キャピラリ05が平面状に一定の精度で配列されている。検出部06はキャピラリ05内を通過する試料の蛍光を検出する箇所であり、装置の検出系の位置と高精度に位置合わせを行う必要がある。
【0023】
シート04には、クッション性のある柔らかいものが好ましい。クッション性のあるものを使用することでキャピラリ05の破損を防ぐことが可能である。さらに、シート04に断熱材や放熱材を使用することで、断熱性能または放熱性能を得ることも出来る。例えば、断熱材としてはポリウレタンフォームやポリエチレン等の発砲プラスチックやグラスウール等の繊維系のもの、放熱材にはシリコン等のゴムやエラストマー、放熱ジェル等がある。
【0024】
図5Aに恒温槽ユニット41の例を示す。
図5Aに示すように、恒温槽ユニット41は恒温槽ベース60と恒温槽ドア61で構成されている。恒温槽ベース60には、キャピラリ05を温調するための第1の温調ユニット62が設けられている。第1の温調ユニット62は切り欠き部63を有する。この切り欠き部63には照射検出ユニット42が配置される。恒温槽ドア61にはキャピラリの検出部06を温調するための第2の温調ユニット64が設けられている。第1の温調ユニット62と第2の温調ユニット64の詳細は後述する。
【0025】
キャピラリカートリッジ01の恒温槽ベース60への取り付けの一例を、
図5Bを用いて詳細を説明する。恒温槽ベース60にある支持体挿し込み口55である開口部に支持体03に形成された挿し込み部56である突出部を差し込む。このとき同時に、電極ホルダ位置決め穴52を恒温槽ベース60にある電極ホルダ位置決めピン51に入れながら、支持体に形成された支持体足部53を恒温槽ベース60に形成された支持体足場54に置くことでキャピラリカートリッジ01を取り付けられる。この支持体03の挿し込みにより恒温槽ドア61を閉じるときの支持体03の片当たりによるキャピラリカートリッジ01の浮き上がりを防止している。そして、恒温槽ドア61を閉めることで、キャピラリカートリッジ01は取り付け面であるヒータ62に押し付けられ固定される。
【0026】
図5Cを用いて、恒温槽ベース60にキャピラリカートリッジ01を取り付け後の詳細図を説明する。キャピラリの検出部06は、照射検出ユニット42により、キャピラリ05内の蛍光を検出される箇所であるため、照射検出ユニット42と接するように配置される。そのため、キャピラリの検出部06は、照射検出ユニットが配置される第1の温調ユニットの切り欠き部63に位置する。そのため、キャピラリの検出部06は第1の温調ユニット62と接触せず、第1の温調ユニット62に直接温められない。さらに、検出部06は照射検出ユニット42と接しているため、熱が流出し、温度が低くなりやすい。これによる、検出部06の温度の低下は泳動性能に影響を及ぼす。そこで、本実施例では、検出部06を温めるための第2の温調ユニット64を設けることを特徴とする。第2の温調ユニット64は、キャピラリが配列されている検出部06と直接接触し、検出部06を温める。これにより、検出部06を温調することができ泳動性能を向上することができる。さらに、第2の温調ユニット64を恒温槽ドア61に取り付けることで、恒温槽ドア61を閉じる動作で第2の温調ユニット64の配置も同時に行うことができる。そのため、第2の温調ユニット64を容易に設置することができる。さらに、第2の温調ユニット64は検出部06を照射検出ユニット42押し付け、検出部06の位置決めを行う役割も担っている。
【0027】
以下これを実現するための第2の温調ユニット64の構成について
図6A、
図6B及び
図6Cを用いて説明する。
【0028】
図6Aは、第2の温調ユニット64の構成を示す図である。第2の温調ユニット64は、ヒータ70と、ヒータ70の熱を検出部06に伝えるための押さえブロック71と、ヒータ70を取り付けるためのベース板72と、反射防止シート73から構成される。第2の温調ユニット64を組み立てたものを
図6Bに示す。第2の温調ユニット64は、恒温槽ドア61を閉じると、キャピラリの検出部06と直接接触するように恒温槽ドア61に取り付けられる。第2の温調ユニット64は、検出部06が照射検出ユニット42により蛍光を検出される方向の、反対側から検出部06を温調する。第2の温調ユニット64は、ヒータ70の熱を、検出部06と接触している押さえブロック71に伝播させ、検出部06を温調する。ヒータ70の熱を効率的に伝えるために、押さえブロック71の検出部06と接触する面の面積は、検出部06の面積と同等であること好ましく、押さえブロック71の材料には、アルミニウムや銅等の熱伝導率の高いものが好適である。なお、押さえブロック71には、反射防止シート73が設けられていることが好ましい。反射防止シート73を設けない場合、キャピラリ05内を通過する試料から発せられた蛍光が、押さえブロック71に反射する可能性がある。この反射蛍光が検出部06に到達してしまうと、バックグラウンドノイズの増大等の問題を引き起こし、検出精度を低下させてしまう。反射防止シート73を設けることで、バックグラウンドノイズの増大等の問題を軽減することが可能である。押さえブロック71も、黒色等の反射が軽減される色が好適である。
【0029】
図6Cに恒温槽ドア61に設けられた第2の温調ユニット64を示す。第2の温調ユニット64と恒温槽ドア61の間にはばね74が設けられている。恒温槽ドア61には、第2の温調ユニット64とばね74を囲むように、ガイド75が設けられている。ガイド75を有することで、第2の温調ユニット64は、ばね74により所定の方向にのみ動くことできる。ガイド75は、
図6Cのように恒温槽ドア61と別途設けても、恒温槽ドア61をガイド75の役割を担うような形状にしてもよい。恒温槽ドア61を閉めると、第2の温調ユニット64は、キャピラリの検出部06に押し当てられる。第2の温調ユニット64とガイド75との間には、隙間が設けられているため、第2の温調ユニット64は、隙間の範囲内で可動する。そのため、恒温槽ドア61を閉めた際に、押さえブロック71と検出部06とを面接触させることができ、検出部06にヒータ70の熱を効率よく伝えることができる。さらに、第2の温調ユニット64に押された、検出部06は照射検出ユニット42に押し付けられる。これにより、検出部06の位置決めも行っている。
【0030】
図7A及び
図7Bを用いて、検出部06近傍の温調について説明する。キャピラリカートリッジ01の支持体03等は省略し、キャピラリ05と検出部06のみ記載する。
図7Aは特許文献1に記載の検出部周りの温調を示す図である。検出部06近傍のキャピラリ05は、本体部91と蓋部94に設けられたヒータ(または、導電部材)92、93に挟まれて温調されている。一方検出部06は、照射検出ユニット42の方に蓋部94に設けられたばね95で押されているだけで、検出部06は温調されていない。そのため、検出部06はヒータ92、93に挟まれている検出部06近傍のキャピラリよりも低い温度になっている。本発明の検出部06近傍の温調を、
図8Bを用いて説明する。本発明は、先述したとおり、検出部06を直接温めるための、ヒータ70を有する第2の温調ユニット64が設けられている。恒温槽ドア61と第2の温調ユニット64の間にはばね74が設けられており、恒温槽ドア61を閉めると第2の温調ユニット64が検出部06を照射ユニット42へ押し当て、検出部06と第2の温調ユニット64も接触する。これにより、検出部06を照射検出ユニット42が設けられた面の反対側の面から、第2の温調ユニット64により温めることが可能となる。検出部06近傍のキャピラリ05は、特許文献1のようにヒータ81を有する第1の温調ユニット62と恒温槽ドア61に挟まれ温められている。第1の温調ユニット62の詳細は後述する。本実施例では、恒温槽ドア61に検出部06を温めるための第2の温調ユニット64を設けているが、第2の温調ユニット64は、検出部06の照射検出ユニット42が設けられる面の反対側の面から温めることができればよい。本実施例のように恒温槽ドア61に第2の温調ユニット64を設けても、恒温槽ベース60に第2の温調ユニット62を設けるためのドアのような取り付け部材を別途設けても良い。
【0031】
続いて、電気泳動時のキャピラリアレイ02温度と泳動結果について説明する。
図8Aに示すように、キャラリアレイ02の電極ホルダ09から検出部06までをエリア1、検出部06をエリア2、検出部06からキャピラリヘッド07をエリア3とし説明する。キャピラリアレイ02は、
図8Bのように恒温槽ユニット41に配置されており、
図8Aのエリア1を温調する第1の温調ユニットの領域をエリア1’、エリア2の検出部が配置される位置をエリア2’、エリア3を温調する第1の温調ユニット62の領域をエリア3’とする。キャピラリアレイ02のエリア1とエリア3は、恒温槽ベース61に設けられた第1の温調ユニット62により温調される。エリア2の検出部06は、照射検出ユニット42が配置される第1の温調ユニット62の切り欠き部63に位置するため、第1の温調ユニットでは、温調することが出来ない。そのため、エリア2の検出部06は、恒温槽ドア61に設けられた第2の温調ユニット64により温調する。
【0032】
従来のように第1の温調ユニット64のみで、キャピラリアレイ02を温調するときのキャピラリアレイ02の温度分布を、キャピラリアレイ02を60℃に温調する時を例に
図9Aを用いて説明する。エリア1及びエリア3は、設定温度である60℃になっている。エリア2の検出部06は、上述したように第一の温調ユニット64と接触せず温調されないため、エリア2の温度はエリア1及びエリア3よりも低い温度となっている。このときの泳動結果を
図9Bに示す。
図9Bの泳動結果では、検出される蛍光強度が段々と減少してしまうという問題が起きている。蛍光強度が減少すると長塩基側の検出感度が悪くなり、微量サンプルの場合検出できない恐れがあるという問題があった。そこで、検討を重ねたところ、蛍光強度の減少には、キャピラリアレイ02のエリア2とエリア3の温度差が関係しており、エリア2とエリア3の温度差が小さいほうが、蛍光強度が均一になることが分かった。エリア2とエリア3の温度差が小さくなるように設定したときのキャピラリアレイ02の温度分布を
図10A、キャピラリアレイ02の温度分布が
図10Aのときの泳動結果を、
図10Bに示す。
図10Bに示した泳動結果は、蛍光強度が減少せずに蛍光強度が均一になっていることが分かる。エリア2とエリア3の温度差を小さくすれば、蛍光強度が均一になることが分かった。エリア2とエリア3の温度差はできるだけ小さいほうが好ましく、温度差が7度以内であれば実用的に均一な信号強度が得られる。また、エリア2とエリア3の温度は45度前後であることが好ましい。エリア2とエリア3の温度を低くしすぎると、サンプルの分離能が低下や分離時間が長くなるおそれがある。また、エリア1、エリア2、エリア3を高温で均一にしようとするには、高い出力が必要になる。そのため、エリア2とエリア3の温度は、45度前後が好適である。
【0033】
特許文献2のような第1の温調ユニット62の熱を検出部伝搬させる温度伝搬部材を設けたときには、
図9Aのように温調していないときと比較して、エリア2の温度が上昇した。しかし、蛍光強度の減少にわずかな改善はみられたものの、温度伝搬部材では検出部06を十分に温めることができず、蛍光強度が均一にはならなかった。そのため、第一の温調ユニット62の熱を検出部に伝搬して検出部06を温めるのではなく、本発明のように、第2の温調ユニット64を設け、エリア2とエリア3との温度差が小さくなるように、より高出力で精度よく温める必要がある。
【0034】
次に、
図11を用いて、キャピラリアレイ02のエリア1を高温に、エリア3を低温で温めるための、高温領域のエリア1’と低温領域のエリア3’を有する第1の温調ユニット62について説明する。
図11では、理解しやすくするため、第1の温調ユニット62は恒温槽ベース60から離して図示している。
【0035】
第1の温調ユニット62は、断熱シート80、ヒータ81、熱伝達板82、熱伝導シート83から成り、これらは接着、溶着、ネジ止めなどの方法で互いに固定されている。
【0036】
キャピラリアレイ02のエリア1を高温で、エリア3を低温で温調するため、ヒータ80は、高温領域のエリア1’と低温領域のエリア3’とから構成される(
図12参照)。また、エリア1’の温度がエリア3’に伝わらないように、エリア1’とエリア3’の間には、発熱しない領域85を設けている。詳細は図示していないが、ヒータ81は、ポリイミドフィルムやシリコンゴム、セラミック等のベース部材に発熱抵抗線を配置しており、発熱抵抗線の太さや、発熱抵抗線の配置の疎密により発熱量を調節することが可能であり、疎に配置すると発熱量が小さくなる。これにより、1枚のヒータ81で、高温領域と低温領域を有することが可能となる。本実施例では、1枚のヒータ81を使用しているが、エリア1’とエリア3’と異なるヒータを設けても良い。また、ヒータの発熱量は2段階に限らず、放熱量に合わせて3段階以上に分割しても良い。
【0037】
ヒータ81が発生させた熱は、熱伝達板82と熱伝導シート83を通してキャピラリカートリッジ01のキャピラリ05に伝熱され、キャピラリ05を加熱する。ヒータ81の熱を発散させないよう、第1の温調ユニット62の恒温槽ベース60側には断熱シート80が取り付けられている。熱伝達板82は、ヒータ81の発熱を均一に熱伝導シート83に広げるために設けられており、熱伝導率の高い金属材料であることが好ましく、たとえば、アルミニウムや銅等が好適である。熱伝導シート83はヒータから発生した熱を効率よくキャピラリ05に伝える事が必要である為、伝熱性が優れる事が望ましい。また、接触するキャピラリ05を破損させないために柔らかい素材である事が望ましい。なお、熱伝達板82とヒータ81の順番は逆でもよく、第1の温調ユニット62は、断熱材81、熱伝達板82、ヒータ81、熱伝導シート83という並びでもよい。
【0038】
キャピラリアレイ02のエリア1を高温、エリア3を低温で温調するためには、ヒータ81だけでなく、熱伝達板82もエリア1’とエリア3’で分割する必要がある。ヒータ81に高温領域と低温領域を設けても、熱伝達板82が、高温領域と低温領域で共通だと、高温領域の熱が低温領域に伝わってしまい、低温領域の温度が高くなってしまう。そこで、本発明の熱伝達板82は、エリア1’とエリア3’で分割されている。さらに、エリア1’の熱をエリア3’に伝播させないように、エリア1’の熱伝達板82とエリア3’の熱伝達板82の間には、断熱ブロック84を設けるのが好ましい。
【0039】
ヒータ81の温度制御は、第1の温調ユニット62に取り付けられたサーミスタなどの温度感知センサで行う。図示を省略したサーミスタの取り付け位置は、断熱シート80、ヒータ81、熱伝達板82、熱伝導シートのいずれでもよいが、キャピラリ05と接触する放熱ゴム64の上が望ましい。本発明のようにヒータ81が1枚の場合には、温度制御もエリア1’とエリア3’共通で行えるために、ヒータを2枚設けるよりも安価に温度制御を行うことが可能となる。
実施例1では、エリア1’とエリア3’の2段階で発熱量を分割したヒータを81示したが、ヒータ81の発熱量を3段階以上で分割しても良い。ヒータ81以外は実施例1と同じである。