(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043406
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】データ生成装置、靴作製システム、およびデータ生成方法
(51)【国際特許分類】
A43D 1/04 20060101AFI20220309BHJP
【FI】
A43D1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148649
(22)【出願日】2020-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波多野 元貴
(72)【発明者】
【氏名】高島 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】小塚 祐也
(72)【発明者】
【氏名】阿部 悟
(72)【発明者】
【氏名】高浜 健太
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050NA02
4F050NA86
(57)【要約】 (修正有)
【課題】靴型の材料、作製方法を限定することなく、シューズを製作するまでの時間を短縮することが可能なデータ生成装置、靴作製システム、およびデータ生成方法を提供する。
【解決手段】データ生成装置100は、足型データを受け付ける入力部106と、入力部106で受け付けた足型データから靴型データを演算するプロセッサ102(演算部)と、プロセッサ102で演算した靴型データを出力する出力部108と、を備える。プロセッサ102は、演算した靴型データに基づき、靴のアッパーを構成する部材を加工する加工データをさらに演算する。出力部108は、プロセッサ102で演算した加工データをさらに出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定した足型データから靴を作製するための靴型データを生成するデータ生成装置であって、
前記足型データを受け付ける入力部と、
前記入力部で受け付けた前記足型データから前記靴型データを演算する演算部と、
前記演算部で演算した前記靴型データを出力する出力部と、を備え、
前記演算部は、
演算した前記靴型データに基づき、靴のアッパーを構成する部材を加工する加工データをさらに演算し、
前記出力部は、前記演算部で演算した前記加工データをさらに出力する、データ生成装置。
【請求項2】
前記入力部は、前記アッパーを構成する部材の情報をさらに受け付け、
前記演算部は、受け付けた前記アッパーを構成する部材の情報に基づき、前記加工データを補正する、請求項1に記載のデータ生成装置。
【請求項3】
前記靴型データは、前記靴の前記アッパー側の領域に対応する第1データと、前記靴のソール側の領域に対応する第2データとを含む、請求項1または請求項2に記載のデータ生成装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記第1データに基づき、前記加工データを演算する、請求項3に記載のデータ生成装置。
【請求項5】
前記アッパーを構成する部材は、シート状の部材であり、
前記加工データは、少なくとも1つの前記シート状の部材を裁断する裁断データである、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のデータ生成装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記アッパーを構成する部材が複数の前記シート状の部材で構成されている場合、前記シート状の部材の各々に対して前記裁断データを演算する、請求項5に記載のデータ生成装置。
【請求項7】
前記アッパーを構成する部材は、熱収縮性を有する糸を含む前記シート状の部材であり、
前記演算部は、前記シート状の部材に含まれる糸の想定される熱収縮率を演算し、当該演算結果に基づいて前記裁断データを補正する、請求項6に記載のデータ生成装置。
【請求項8】
前記演算部は、前記裁断データで裁断した前記シート状の部材を加工する際の加熱条件に関する情報を演算し、
前記出力部は、前記演算部で演算した前記加熱条件に関する情報をさらに出力する、請求項7に記載のデータ生成装置。
【請求項9】
前記足型データを測定する測定装置と、
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の前記データ生成装置と、
前記データ生成装置で生成した前記靴型データに基づいて靴型を作製する靴型作製装置と、
前記データ生成装置で生成した前記加工データに基づいて前記アッパーを構成する部材を加工する加工装置と、を備える靴作製システム。
【請求項10】
測定した足型データから靴を作製するための靴型データを生成するデータ生成方法であって、
前記足型データを受け付けるステップと、
受け付けた前記足型データから前記靴型データを演算するステップと、
演算した前記靴型データに基づき、靴のアッパーを構成する部材を加工する加工データを演算するステップと、
演算した前記靴型データおよび前記加工データを出力するステップと、を備える、データ生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、データ生成装置、靴作製システム、およびデータ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザの足に合わせたオーダーメイドのシューズを作製する際、測定装置で足型を測定し、測定した足型データに基づいて靴型データを生成する。生成された靴型データに基づいてシューズを作製するための靴型(ラスト)が作製される(例えば、特許文献1)。さらに、特許文献1では、作製した靴型を編組み装置に通すことで、編組みされたアッパーを作製している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
靴型を編組み装置に通すことで、靴型に合ったアッパーを編組みで作製するので、各個人の足の形状を反映させた専用のシューズを製作することができる。しかし、靴型を編組み装置に通す必要があるので、当該編組み装置に耐えることができる材料で靴型を作製する必要があり、靴型の材料、作製方法が限定される。また、靴型が作製されるまでアッパーを作製することができないため、シューズを製作するまでの時間が長くなる問題があった。
【0005】
本開示では、靴型の材料、作製方法を限定することなく、シューズを製作するまでの時間を短縮することが可能なデータ生成装置、靴作製システム、およびデータ生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うデータ生成装置は、測定した足型データから靴を作製するための靴型データを生成する。データ生成装置は、足型データを受け付ける入力部と、入力部で受け付けた足型データから靴型データを演算する演算部と、演算部で演算した靴型データを出力する出力部と、を備える。演算部は、演算した靴型データに基づき、靴のアッパーを構成する部材を加工する加工データをさらに演算し、出力部は、演算部で演算した加工データをさらに出力する。
【0007】
本開示のある局面に従う靴作製システムは、足型データを測定する測定装置と、上記のデータ生成装置と、データ生成装置で生成した靴型データに基づいて靴型を作製する靴型作製装置と、データ生成装置で生成した加工データに基づいてアッパーを構成する部材を加工する加工装置と、を備える。
【0008】
本開示のある局面に従うデータ生成方法は、測定した足型データから靴を作製するための靴型データを生成する。データ生成方法は、足型データを受け付けるステップと、受け付けた足型データから靴型データを演算するステップと、演算した靴型データに基づき、靴のアッパーを構成する部材を加工する加工データを演算するステップと、演算した靴型データおよび加工データを出力するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、靴型の材料、作製方法を限定することなく、シューズを製作するまでの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る靴作製システムの構成例を示す概略図である。
【
図2】実施の形態1に係るデータ生成装置のハードウェア構成例を示す模式図である。
【
図4】実施の形態1に係るデータ生成装置が靴型データおよび加工データを演算する様子を説明するための概略図である。
【
図5】熱収縮性を有する糸を含むシート状の部材の概略図である。
【
図6】熱収縮性を有する糸を含む第1層を説明するための概略図である。
【
図7】実施の形態2に係るデータ生成装置が足型データから靴型データを生成する方法を説明するためのフローチャートである。
【
図8】アッパーを構成する部材の情報が記憶されているデータベースの一例を説明する図である。
【
図9】様々な店舗の靴作製システムがデータサーバ500に接続されている様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
<実施の形態1>
実施の形態1では、本発明が適用される場面の一例について説明する。まず、実施の形態1では、例えば店舗において、ユーザの足に合わせたオーダーメイドのシューズを作製する靴作製システムについて説明する。以下の説明では、靴作製システムのうち、特に、測定装置で測定した足型データに基づいて靴型データを生成し、さらに靴のアッパーを構成する部材を加工する加工データを生成して、靴型(ラスト)およびアッパーを作製する部分について説明する。
【0012】
図1は、実施の形態1に係る靴作製システム10の構成例を示す概略図である。
図1を参照して、靴作製システム10は、データ生成装置100、足型を測定する測定装置200、靴型データに基づいて靴型を作製する靴型作製装置400、加工データに基づいてアッパーを構成する部材を加工する加工装置600を含む。なお、店舗によっては、または、ユーザの自宅等の遠隔地からは、測定装置200に代えてスマートフォンなどの携帯端末300を用いて足型を測定してもよい。また、データ生成装置100は、店舗内または店舗外に設置されたデータサーバ500と通信することが可能である。
【0013】
データ生成装置100は、測定装置200または携帯端末300から得られた足型データに基づき靴型データを生成し、当該靴型データに基づき、靴のアッパーを構成する部材を加工する加工データをさらに生成する。
図2は、実施の形態1に係るデータ生成装置100のハードウェア構成例を示す模式図である。
図2を参照して、データ生成装置100は、プロセッサ102と、メインメモリ104と、入力部106と、出力部108と、ストレージ110と、光学ドライブ112と、通信コントローラ120とを含む。これらのコンポーネントは、プロセッサバス118を介して接続されている。
【0014】
プロセッサ102は、CPUやGPUなどで構成され、ストレージ110に記憶されたプログラム(一例として、OS1102および処理プログラム1104)を読出して、メインメモリ104に展開して実行することができる。プロセッサ102では、入力部106で受け付けた足型データ(付加情報はある場合は、当該付加情報を含む)から所定のアルゴリズムに基づいて靴型データを演算する処理プログラム1104が実行される。さらに、プロセッサ102では、演算した靴型データに基づき、靴のアッパーを構成する部材を加工する加工データをさらに演算する処理プログラム1104が実行される。当該処理プログラム1104を実行するプロセッサ102は、データ生成装置100の演算部に対応する。
【0015】
メインメモリ104は、DRAMやSRAMなどの揮発性記憶装置などで構成される。ストレージ110は、例えば、HDDやSSDなどの不揮発性記憶装置などで構成される。
【0016】
ストレージ110には、基本的な機能を実現するためのOS1102に加えて、データ生成装置100としての機能を提供するための処理プログラム1104が記憶される。すなわち、処理プログラム1104は、データ生成装置100のプロセッサ102で実行されることで、足型データから靴型データを演算し、さらに加工データを演算する。さらに、ストレージ110には、複数の靴型データを含む靴型データベース1106と、靴のソール側の領域に対応するソールデータを含むソールデータベース1108と、アッパーを構成する部材に関する情報を含む部材データベース1109とが記憶されている。なお、靴型データベース1106に記憶される靴型データは、靴のアッパー側の領域に対応するアッパーデータのみでもよい。靴型データベース1106、ソールデータベース1108および部材データベース1109は、頻繁に利用するデータのみがストレージ110に記憶され、その他のデータはデータサーバ500に記憶されていてもよい。また、靴型データベース1106、ソールデータベース1108および部材データベース1109には、リストのみ記憶され、複数の靴型データ、複数のソールデータおよびアッパーを構成する部材に関する情報自体はデータサーバ500に記憶されていてもよい。
【0017】
入力部106は、測定装置200または携帯端末300と接続して、測定装置200または携帯端末300から足型データを受け付ける入力インターフェースを含む。また、入力部106は、キーボードやマウス、マイク、タッチデバイスなどで構成され、ユーザにより選択された付加情報をさらに受け付けることができる。付加情報は、足のサイズ、足の形状に関する情報以外の情報であり、情報の内容から、靴の形状に関する情報、靴の使用に関する情報、ユーザの足に関する情報に分かることができる。靴の形状に関する情報には、ユーザの嗜好に関する情報、ユーザが使用している靴の情報、既存の靴型データ、履き口の形状の情報、アッパーの材料の情報、ソールの形状の情報などが含まれる。靴の使用に関する情報には、ランニングデータ、使用する競技の情報などが含まれる。ユーザの足に関する情報には、足甲部の圧力の情報、足圧の情報、足型の変形の情報などが含まれる。
【0018】
また、付加情報は、情報の内容から、事実情報と、選択情報とに分けることもできる。ここで、事実情報とは、客観的な情報であり、長さ、圧力、速度など様に数値データで表すことができる情報である。一方、選択情報は、ユーザの主観的な情報であり、ゆるめ、きつめ、速い、ゆっくりなどユーザに対するヒアリングなどで選択した情報である。
【0019】
例えば、ユーザの嗜好に関する情報として、つま先エリアの形状が「ゆるめ」で、中足部エリアの形状が「きつめ」で、踵エリアの形状が「ふつう」であるとのユーザの好みの情報がある。このユーザの好みの情報は、ユーザに対するヒアリングで収集できる選択情報で、靴のエリアごとの好みを携帯端末300に入力してもらうことで得ることができる。プロセッサ102では、足のサイズ、足の形状に関する足型データだけでなく、上記の付加情報を反映させて靴型データを演算してもよい。
【0020】
出力部108は、プロセッサ102で演算した靴型データを靴型作製装置400に、加工データを加工装置600に出力する出力インターフェースを含む。また、出力部108は、ディスプレイ、各種インジケータ、プリンタなどで構成され、プロセッサ102からの処理結果などを出力する。
【0021】
通信コントローラ120は、有線通信または無線通信を用いて、他の制御装置などとの間でデータを遣り取りする。データ生成装置100は、測定装置200または携帯端末300との間で通信コントローラ120を介して足型データ、付加情報の遣り取りを行ったり、靴型作製装置400との間で通信コントローラ120を介して靴型データの遣り取りを行ったり、加工装置600との間で通信コントローラ120を介して加工データの遣り取りを行ったりしてもよい。なお、通信コントローラ120と別にプロセッサバス118に接続されるUSBコントローラを設け、USB接続を介して、他の制御装置などとの間のデータを遣り取りしてもよい。
【0022】
データ生成装置100は、光学ドライブ112を有しており、コンピュータ読取可能なプログラムを非一過的に記憶する記録媒体114(例えば、DVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体)から、その中に記憶されたプログラムが読取られてストレージ110などにインストールしてもよい。
【0023】
データ生成装置100で実行される処理プログラム1104などは、コンピュータ読取可能な記録媒体114を介してインストールされてもよいが、ネットワーク上のサーバ装置などからダウンロードする形でインストールするようにしてもよい。また、実施の形態1に係るデータ生成装置100が提供する機能は、OSが提供するモジュールの一部を利用する形で実現される場合もある。
【0024】
図2には、プロセッサ102がプログラムを実行することで、データ生成装置100として必要な機能が提供される構成例を示したが、これらの提供される機能の一部または全部を、専用のハードウェア回路(例えば、ASICまたはFPGAなど)を用いて実装してもよい。また、
図2に示したデータ生成装置100の構成は例示であって、この構成に限定されない。
【0025】
測定装置200は、レーザ測定による3次元の足型スキャナで、天板に足を載せ、当該足を挟んで両側に設けた壁に内蔵されたレーザ測定装置が、足のつま先から踵まで移動して測定することでユーザの3次元の足型データを得る。なお、測定装置200は、3次元の足型データを測定することができれば、測定方式などは特に問わない。また、スマートフォンなどの携帯端末300を用いて、ユーザの足を撮影して、足の画像データを取得し、予めインストールされているソフトウェアにより撮影した足の画像データから足型データを生成してもよい。
【0026】
図3は、足型データの概略図である。
図3(a)は、測定装置200または携帯端末300で測定して得られた3次元の足型データIの斜視図である。
図3(a)に示す足型データIは、解像度にもよるがデータ量が多い。そのため、測定装置200または携帯端末300は、データ生成装置100に3次元の足型データIをそのまま送るのではなく、
図3(b)に示す相同モデルに基づくデータに変換した足型データFをデータ生成装置100に送る。ここで、相同モデルに基づく足型データFとは、足型を解剖学的に対応付けられた295点のデータを使って同一位相幾何構造の多面体で物体形状を表現する足型データである。なお、足型データは、相同モデルに基づく足型データFに限定されず、
図3(a)に示す足型データIの物体形状を表現できれは、足型を所定の複数の断面に分け、当該断面内で特定された複数の代表点を結んで作成されるモデルに基づく足型データであってもよい。
【0027】
なお、測定装置200または携帯端末300で3次元の足型データIを相同モデルに基づく足型データFに変換すると説明したが、データ生成装置100で3次元の足型データIを相同モデルに基づく足型データFに変換してもよい。また、携帯端末300は、ユーザの足を撮影して、足の画像データを取得するだけで足型データを生成せず、携帯端末300で撮影した足の画像データに基づき、データ生成装置100で足型データを生成してもよい。
【0028】
靴型作製装置400は、靴型データに基づいて靴型を作製する3Dプリンタ、CNC(computerized numerical control)工作機械などである。靴型作製装置400が3Dプリンタであれば、データ生成装置100で生成した靴型データに基づいて3次元の靴型が樹脂により作製される。作製される靴型は、樹脂に限定されず段ボールなどでもよく、当該段ボールで靴型を作製する場合、靴型作製装置400は段ボールをカットする装置、または段ボールをカットする形状パターンを出力する装置でもよい。また、靴型が形状を可変できる靴型の場合、靴型作製装置400は、データ生成装置100で生成した靴型データに基づいて靴型を可変させる装置となる。
【0029】
加工装置600は、加工データに基づいてアッパーを構成する部材を裁断する裁断装置などである。アッパーを構成する部材が布のようなシート状の部材であれば、加工データはシート状の部材からアッパーを構成する部材を切り出す裁断データである。アッパーを構成する部材は、布のようなシートに限定されず、アッパーを構成できれば何れの部材であってもよい。例えば、アッパーの一部を樹脂で形成する場合、アッパーを構成する部材を3Dプリンタで作製してもよい。
【0030】
データ生成装置100は、加工装置600が裁断装置であれば当該裁断装置にあった加工データとして裁断データを生成し、加工装置600が3Dプリンタであれば当該3Dプリンタにあった加工データとして3Dデータを生成する。加工装置600は、靴型を利用することなく、加工データに基づいてアッパーを構成する部材を加工することができるので、靴型作製装置400で作製される靴型の材料、作製方法に限定されない。また、加工装置600は、加工データのみでアッパーを構成する部材を加工するので、靴型作製装置400で靴型が作製されるのを待ってアッパーを構成する部材を加工する必要がない。したがって、これらの作業を並行に行うことができるため、シューズを作製する時間を短縮できる。
【0031】
シューズを作製する時間の短縮例について説明する。まず、靴の製造においては、主に以下のような(a)~(g)の製造ステップを経る必要がある。
(a)靴型の靴型データ(3Dデータ)の作成
(b)靴型データからアッパーの加工データ(裁断データ)を作成
(c)靴型を例えば段ボールで作製する場合、靴型データから段ボールのカットデータを作成し、当該カットデータに基づいてレーザーカット機器で段ボールをカット
(d)加工データに基づいてレーザーカット機器でアッパーを構成する部材を裁断
(e)カットした段ボールを組み立て靴型の作製
(f)裁断した部材(例えば布)をアッパーの形に縫製
(g)組み立てた靴型に縫製したアッパーを被せてスチーム加熱して、アッパーを熱収縮させる
このような製造ステップにおいて、(e)の靴型の作製のステップを待たずに(b)のステップでアッパーの加工データを作成するので、(c)および(d)のステップを並行に行うことができる。(c)の段ボールのカットと(d)のアッパーを構成する部材の裁断とのタイミングを待つなどの必要がないので(e)のステップ以降の処理の開始を早めることができる。
【0032】
図4は、実施の形態1に係るデータ生成装置100が靴型データおよび加工データを演算する様子を説明するための概略図である。まず、データ生成装置100は、靴型データベース1106に記憶されている複数の靴型データのライブラリLaから足型データに近い靴型データUを選択する(ステップS4a)。また、データ生成装置100は、作製するシューズにより予め定められているソールデータ、またはユーザが選択したソールデータをソールデータベース1108に記憶されている複数のソールデータのライブラリLbから選択する(ステップS4b)。
【0033】
図4に示した例では、靴型データUとソールデータSとを別々に選択して組み合わせる例を示す。しかし、データ生成装置100は、複数の靴型データが記憶されているライブラリから足型データに近い靴型データのみを選択し、選択した靴型データのうちアッパー側の領域に対応するアッパーデータを足型データに合わせて修正し、ソール側の領域に対応するソールデータはそのまま利用してもよい。もちろん、データ生成装置100は、選択した靴型データのアッパー側の領域に対応するアッパーデータを足型データに合わせて修正するとともに、ソール側の領域に対応するソールデータをユーザが選択したソールデータに合わせて修正してもよい。また、データ生成装置100は、データベースに記憶されているライブラリからデータを選択して修正するのではなく、足型データから所定のアルゴリズムに基づいて靴型データを演算して生成してもよい。
【0034】
データ生成装置100は、選択した靴型データUに対して足型データと異なる部分(例えば、足甲部のサーフェス部分)を修正し、付加情報の入力がある場合、当該付加情報を反映して靴型データUの特定の部分を補正した靴型データUを生成する(ステップS4c)。具体的に、データ生成装置100は、つま先エリアの形状が「ゆるめ」とのユーザの好みの情報(付加情報)に基づいて、つま先エリアの靴型データの断面形状を例えば3%大きくし、踵エリアの形状が「きつめ」とのユーザの好みの情報(付加情報)に基づいて、踵エリアの靴型データの断面形状を例えば2%小さくする。
【0035】
また、データ生成装置100は、選択したソールデータSを選択した靴型データUに合わせるために修正する(ステップS4d)。データ生成装置100は、修正した靴型データUと修正したソールデータSとを合わせて靴型データKを生成する。靴型データKが、足型データから演算して生成した最終的な靴型データである。
【0036】
さらに、データ生成装置100は、生成した靴型データKに基づいて、靴のアッパーを構成する部材を加工する加工データを演算する(ステップS4e)。データ生成装置100は、靴型データではなく靴型データのアッパー側の領域に対応するアッパーデータのみに基づいて、加工データを演算してもよい。アッパーを構成する部材が、シート状の部材である場合、加工データは、
図4に示すようなシート状の部材からアッパーの形状A1,A2を裁断する裁断データとなる。アッパーの形状A1は、アッパーの側面部分に対応し、アッパーの形状A2は、アッパーの底面部分に対応している。また、アッパーの形状A2と靴型データのソール側の形状とが対応する。アッパーを構成する部材には、靴型の形状に沿って成形しやすいことから、熱収縮性を有する糸を含むシート状の部材が採用される場合がある。データ生成装置100は、シート状の部材に含まれる糸の想定される熱収縮率を演算し、その演算結果に基づいて裁断データを補正してもよい。例えば、糸の熱収縮率が大きい方向が他の方向よりも大きくなるように、データ生成装置100は、裁断データを補正してもよい。以下に、熱収縮性を有する糸を含むシート状の部材の一例を説明する。もちろん、アッパーを構成する部材は、以下に説明するシート状の部材に限定されず、他の材料や他の形状の部材であってもよい。
【0037】
図5は、熱収縮性を有する糸を含むシート状の部材の概略図である。
図5に示すシート状の部材は、シート状の第1層31と、第1層31の外側に積層されたシート状の第2層32と、第1層31の内側に積層されたシート状の第3層33とを含む。第1層31は、熱収縮性を有する糸311を含む。第1層31は、内部空隙312を有する編物(編地)または織物(織地)よりなる。編物における編み方は特に限定されないが、例えばラッセル編みやトリコット編みとできる。織物における織り方も特に限定されないが、例えば平織りや綾織りとできる。なお、シート状の部材は、第1層31と第2層32と第3層33との3層で構成される場合に限定されない。
【0038】
第2層32は、不織布よりなる。不織布は、例えばポリエステル繊維を有するものとできる。第2層32の不織布は、繊維が絡み合っていることから、第1層31の内部空隙312に相当する内部空隙は有さない。
【0039】
アッパーにおいて、第1層31は第2層32よりも内側(着用時において着用者の足に近い側)に配置され、さらに第3層33は第1層31よりも内側に配置されている。つまり、第1層31が中層であり、第2層32は外層で、第3層33は内層である。第1層31、第2層32、第3層33は、ニードルパンチ加工が施され3層が一体化されている。なお、第1層31と第2層32と第3層33との3層をニードルパンチ加工で一体化すると説明したが、ニードルパンチ加工を行わなくてもよい。
【0040】
ここで、「内部空隙」とは、編物または織物を構成する糸等の繊維同士、または繊維の集合体同士の間に存在する空間のことである。また、一般的に編物または織物において、繊維が平面方向に延びるように配置されている場合、前記平面の法線方向に貫通する空間、または平面方向において分断された空間のことである。また、繊維の交差点のうち隣り合うもの同士で距離が保たれている場合には、複数の繊維の交差点に囲まれた空間である。なお、後述のように融着糸を用いる場合、アッパーに対する熱成形によって融着された後における繊維の交差点は固着状態となり、交差する繊維(糸)同士が固定される。「内部空隙」は、例えば、メッシュの目(
図5において重なり合いの2枚目として示した、第1層31の織物における糸311(緯糸)と糸313(経糸)とにより形成される内部空隙312を参照)や、布地の目開き部分が該当する。実施の形態1では、隣り合う繊維の交差点間の距離が1~5mmに設定される。または、編物または織物に占める、平面方向での空間率が15~30%に設定される。この二つの条件は、いずれか一方を満たすよう設定することができる。
【0041】
第1層31が内部空隙312を有することにより、熱収縮性を有する糸311の変形(収縮)、及び、これに伴う交差する糸313(
図6(b)参照)の移動を内部空隙312の空間が許容する。よって、熱収縮性を有する糸311による第1層31の変形を内部空隙312の空間が阻害しない。従って、第1層31を設計通り変形させることができるので、熱収縮のための条件(加熱温度及び加熱時間等)を設定しやすい。
【0042】
図6は、熱収縮性を有する糸311を含む第1層31を説明するための概略図である。
図6(a)は、芯鞘材からなる糸の構成を概略的に示す斜視図である。
図6(b)は織物の当初の状態を示し、
図6(c)は緯糸が収縮した状態を模式的に示し、
図6(d)は経糸と緯糸とが溶着した状態を模式的に示す。
【0043】
第1層31に含まれる熱収縮性を有する糸311は、
図6(a)に略示するように、芯3111(内周部分)と鞘3112(外周部分)とが一体形成された芯鞘材よりなるものとできる。この糸311は熱により融着する融着糸であって、芯3111と鞘3112とで融点が異なっている。この糸311において、融点は芯3111よりも鞘3112の方が低い。このため、アッパーを成形する際の成形前のアッパーに対する加熱により、糸311の全体を収縮させ、かつ、鞘3112の部分のみ融解させられる。このため、鞘3112による保形作用と、芯3111による弾性作用とが両立できる。この熱収縮性を有する糸311として、例えばポリエステル樹脂を含む糸、より詳しくは、ポリエステル系熱可塑性エラストマーからなる鞘芯材、また、芯3111がポリエステル系熱可塑性エラストマーからなり、鞘3112がポリアミド系熱可塑性エラストマーからなる鞘芯材等を用いることができる。
【0044】
また、第1層31は、経糸または緯糸のうち一方が熱収縮性を有する糸311である織物、または、10%以上が熱収縮性を有する糸311である編物で構成されることができる。織物の場合、熱収縮性を有する糸311(経糸または緯糸)は、アッパーにおける幅方向に沿って配置される。なお、熱収縮性を有する糸311は緯糸に用いられることが、(技術的には)一般的である。このため、熱収縮性を有する糸311が緯糸に用いられた場合の第1層31における織物の構成を
図6(b)に示す。この構成によると、第1層31を加熱することにより、
図6(c)に示すように糸311(緯糸)が長さ方向に収縮する(矢印で示した方向の収縮により、隣り合う糸313(経糸),糸313(経糸)同士の間隔が小さく変化する)。そして、芯鞘材よりなる糸311の鞘3112が溶融して糸313(経糸)に固着する(
図6(d)に黒丸で示した固着箇所314)。このように第1層31が変形する。この変形を利用することで、アッパーを所望の形状とするため、具体的には靴型の形状に沿わせるための適切な成形が可能である。
【0045】
以上のように、実施の形態1に係るデータ生成装置100は、測定した足型データから靴を作製するための靴型データを生成する。データ生成装置100は、足型データを受け付ける入力部106と、入力部106で受け付けた足型データから靴型データを演算するプロセッサ102(演算部)と、プロセッサ102で演算した靴型データを出力する出力部108と、を備える。プロセッサ102は、演算した靴型データに基づき、靴のアッパーを構成する部材を加工する加工データをさらに演算する。出力部108は、プロセッサ102で演算した加工データをさらに出力する。靴作製システム10は、足型を測定して足型データをデータ生成装置100に出力する測定装置200と、上記のデータ生成装置100と、データ生成装置100で生成した靴型データに基づいて靴型を作製する靴型作製装置400と、データ生成装置100で生成した加工データに基づいてアッパーを構成する部材を加工する加工装置600と、を備える。
【0046】
これにより、実施の形態1に係るデータ生成装置100は、靴のアッパーを構成する部材を加工する加工装置600に合わせた加工データを演算するので、靴型の材料、作製方法に限定されず、シューズを作製するまでの時間を短縮することができる。また、靴作製システム10は、データ生成装置100で生成した靴型データから靴型を作製し、加工データに基づいてアッパーを構成する部材を加工するので、靴型の作製を待たずにアッパーを構成する部材を加工でき、シューズを作製するまでの時間を短縮できる。
【0047】
靴型データは、靴のアッパー側の領域に対応するアッパーデータ(第1データ)と、靴のソール側の領域に対応するソールデータ(第2データ)とのうち、少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。例えば、同じ形状のソールの靴を作製する場合、ソールデータを共通化することができる。また、プロセッサ102は、アッパーデータに基づき、加工データを演算することが好ましい。これにより、加工データの演算する対象をアッパーデータに限定することができる。
【0048】
アッパーを構成する部材は、シート状の部材であり、加工データは、少なくとも1つのシート状の部材を裁断する裁断データであることが好ましい。特に、アッパーを構成する部材は、熱収縮性を有する糸を含むシート状の部材であり、プロセッサ102は、シート状の部材に含まれる糸の想定される熱収縮率を演算し、当該演算結果に基づいて裁断データを補正することが好ましい。これにより、データ生成装置100は、靴型の形状に沿わせるための適切なアッパーの形状をシート状の部材から裁断するための裁断データを生成することが可能となる。
<実施の形態2>
実施の形態1に係るデータ生成装置100では、靴型データに基づいて、靴のアッパーを構成する部材を加工する加工データを演算する一例を説明した。実施の形態2に係るデータ生成装置100では、加工データだけでなくシート状の部材を加工する際の加熱条件を演算する。なお、実施の形態2に係る靴作製システムおよびデータ生成装置は、実施の形態1に係る靴作製システム10およびデータ生成装置100と同じ構成であり、同じ符号を付して詳しい説明を繰返さない。
【0049】
以下に、シート状の部材が熱収縮性を有する糸を含む場合に、データ生成装置100が、当該シート状の部材を裁断する裁断データ(加工データ)とともに、裁断したシート状の部材を加熱して靴型に合わせて成形する際の加熱条件も演算する一例を説明する。
図7は、実施の形態2に係るデータ生成装置が足型データから靴型データを生成する方法を説明するためのフローチャートである。まず、データ生成装置100は、測定装置200または携帯端末300で測定した足型データを受け付ける(ステップS101)。
【0050】
データ生成装置100は、アッパーを構成する部材の情報を受け付ける(ステップS102)。具体的に、アッパーを構成する部材が、
図5に示すような熱収縮性を有する糸を含むシート状の部材である場合、シートの形状、材質、使用されている糸の熱収縮率などの情報を、データ生成装置100が受け付ける。具体的に、入力部106でユーザが選択したアッパーを構成する部材の情報に基づき、ストレージ110またはデータサーバ500に予め記憶されているデータベースから当該部材に対応する情報を読み出す。
図8は、アッパーを構成する部材の情報が記憶されているデータベースの一例を説明する図である。
【0051】
図8では、アッパーを構成する部材とした部材A、部材B、部材Cなどの情報がデータベースに記憶されている。部材Aは、
図5に示すように3層が一体化され1枚のシートでアッパーを構成する部材である。そのため、データベースの部材Aの情報には、形状の情報として「シート(3層)」、材質の情報として「熱収縮性を有する糸を含む層あり」、その他の情報として「熱収縮率」の情報が格納されている。部材Bは、3枚のシートでアッパーを構成する部材である。そのため、データベースの部材Bの情報には、シートB1の情報、シートB2の情報、シートB3の情報が格納されている。シートB1の情報には、形状の情報として「シート(B1)」、材質の情報として「布」の情報が格納されている。シートB2の情報には、形状の情報として「シート(B2)」、材質の情報として「樹脂」の情報が格納されている。シートB3の情報には、形状の情報として「シート(B3)」、材質の情報として「熱収縮性を有する糸を含む」、その他の情報として「熱収縮率」の情報が格納されている。部材Cは、3Dプリンタで加工してアッパーを構成する部材である。そのため、データベースの部材Cの情報には、形状の情報として「3Dプリンタで加工」、材質の情報として「熱可塑性樹脂」、その他の情報として「3Dプリンタの設定条件」の情報が格納されている。
【0052】
図7に戻って、データ生成装置100は、足型データから靴型データを演算する(ステップS103)。データ生成装置100は、ステップS103で演算した靴型データに基づき、靴のアッパーを構成する部材を加工する加工データを演算する(ステップS104)。データ生成装置100は、ステップS102で受け付けたアッパーを構成する部材の情報により演算する加工データが異なる。具体的に、アッパーを構成する部材が部材Aの場合、データ生成装置100は、1枚のシートからアッパーの形状を裁断するための裁断データを演算する。部材Aは熱収縮性を有する糸を含む層を有しているので、データ生成装置100は、シート状の部材に含まれる糸の想定される熱収縮率を演算し、その演算結果に基づいて裁断データを補正する。
【0053】
また、アッパーを構成する部材が部材Bの場合、データ生成装置100は、3枚のシートのそれぞれに対してアッパーの形状を裁断するための裁断データを演算する。シートB3は熱収縮性を有する糸を含むので、データ生成装置100は、シート状の部材に含まれる糸の想定される熱収縮率を演算し、その演算結果に基づいてシートB3の裁断データを補正する。さらに、アッパーを構成する部材が部材Cの場合、データ生成装置100は、3Dプリンタでアッパーの形状を加工するための加工データを演算する。
【0054】
図7に戻って、データ生成装置100は、アッパーを構成する部材が熱収縮性を有する糸を含むシート状の部材であるか否かを判断する(ステップS105)。アッパーを構成する部材が熱収縮性を有する糸を含むシート状の部材である場合(ステップS105でYES)、データ生成装置100は、ステップS102で受け付けたアッパーを構成する部材の情報、およびステップS104で演算した加工データに基づき加熱条件に関する情報を演算する。具体的に、アッパーを構成する部材の情報から熱収縮性を有する糸の材質および熱収縮率、加工データからアッパーのサイズなどの情報が得られ、データ生成装置100は、これらの情報に基づいて、アッパーを構成する部材をスチーム加熱して靴型に合わせて成形する場合の加熱温度、加熱時間などの加熱条件を演算する。例えば、データ生成装置100は、アッパーのサイズが大きければ加熱時間を長くし、熱融着する温度が高い糸の場合加熱温度を高くする。
【0055】
なお、データ生成装置100は、3Dプリンタでアッパーの形状を加工するための加工データを演算した場合、アッパーを構成する部材の情報から3Dプリンタの設定条件を演算してもよい。具体的に、データ生成装置100は、アッパーを構成する部材の情報から得た3Dプリンタの設定条件をベースに、加工データから得たアッパーのサイズなどの情報を考慮した最適な設定条件を演算する。
【0056】
ステップS106後、またはアッパーを構成する部材が熱収縮性を有する糸を含むシート状の部材でない場合(ステップS105でNO)、データ生成装置100は、演算した結果(靴型データ、加工データ、加熱条件など)を出力部108から出力する。データ生成装置100から出力された靴型データは、靴型作製装置400で受け付けられる。靴型作製装置400は、受け付けた靴型データに基づいて靴型を作製する。データ生成装置100から出力された加工データは、加工装置600で受け付けられる。加工装置600は、受け付けた加工データに基づいてアッパーを構成する部材を加工する。加工データが裁断データである場合、加工装置600は、当該裁断データに基づいてシート状の部材からアッパーの形状を裁断する。データ生成装置100から出力された加熱条件は、加熱装置(図示せず)で受け付けられる。加熱装置は、受け付けた加熱条件に基づきアッパーを構成する部材を加熱し、靴型の形状に沿わせるようにアッパーの形状を成形できる。
【0057】
以上のように、実施の形態2に係るデータ生成装置100は、プロセッサ102が、裁断データで裁断したシート状の部材を加工する際の加熱条件に関する情報を演算し、出力部108が、プロセッサ102で演算した加熱条件に関する情報をさらに出力する。これにより、靴型の形状に沿わせた適切なアッパーの形状の成形が可能となる。
【0058】
また、入力部106は、アッパーを構成する部材の情報をさらに受け付け、プロセッサ102は、受け付けたアッパーを構成する部材の情報に基づき、加工データを補正することが好ましい。例えば、アッパーを構成する部材が部材Bの場合、プロセッサ102は、熱収縮性を有する糸を含むシートB3に対して、当該シートB3の糸の想定される熱収縮率を演算し、その演算結果に基づいて裁断データ(加工データ)を補正するが、他のシートB1,B2に対して裁断データ(加工データ)の補正を行わない。これにより、データ生成装置100は、靴型の形状に沿わせるための適切なアッパーの形状を加工するための加工データを生成することが可能となる。
【0059】
さらに、プロセッサ102は、アッパーを構成する部材が複数のシート状の部材で構成されている場合、シート状の部材の各々に対して裁断データを演算することが好ましい。例えば、アッパーを構成する部材が部材Bの場合、データ生成装置100は、シートB1~B3の各々に対して裁断データを演算する。これにより、データ生成装置100は、シートB1~B3の各々に対して最適な裁断データを生成できる。
<その他の変形例>
図1では、データ生成装置100、測定装置200、靴型作製装置400、加工装置600を含む1つの店舗の靴作製システム10について説明した。しかし、店舗によっては、測定装置200を有しておらず、スマートフォンなどの携帯端末300を用いて足型を測定する店舗が靴作製システム10に含まれてもよい。また、靴型作製装置400、加工装置600を有しておらず、他の店舗の靴型作製装置400で靴型を作製したり、加工装置600でアッパーを作製したりしてシューズを作製する店舗が靴作製システム10に含まれてもよい。
図9は、様々な店舗の靴作製システムがデータサーバ500に接続されている様子を示す概略図である。
【0060】
図9に示すように、靴作製システム10は、複数の店A~店Cのそれぞれに配置されている。たとえば、店Aおよび店Cは街にある小型店舗であり、当該店Aおよび店Cの店内において、店員がユーザの足を携帯端末300で撮影して、携帯端末300で足型データを測定するか、ユーザ自身が自宅等において携帯端末300で測定した足型データを店舗で受け付ける。一方、店Bはショッピングモールなどにある大型店舗であり、当該店Bの店内において、店員がユーザの足を測定装置200で測定して足型データを取得する。店A~店Cのそれぞれで取得された足型データは、各々の店舗にあるデータ生成装置100で処理されるが、ネットワーク5を介して、メーカなどに配置されたデータサーバ500に、ユーザの個人情報とともに保存されてもよい。
【0061】
メーカにおいては、既存のシューズの靴型データ、ソールデータを作成し、当該データをデータサーバ500内の靴型データベースおよびソールデータベースに記憶しておく。データサーバ500内の靴型データベースおよびソールデータベースに既存のシューズの靴型データ、ソールデータを記憶しておくことで、店舗に設けたデータ生成装置100から、靴型データベースのライブラリから足型データに近い靴型データを選択したり、ソールデータベースのライブラリからユーザが選択したソールデータを選択したりすることができる。また、データ生成装置100は、ユーザが使用している靴の情報から当該靴の靴型データ、ソールデータを、データサーバ500内の靴型データベースおよびソールデータベースから検索することができる。データサーバ500に記憶される情報は、既存のシューズの靴型データ、ソールデータに限られず、ユーザのランニングデータ、ユーザが前回作成した靴型データ、使用する競技の情報、アッパーの材料の情報などを記憶してもよい。
【0062】
なお、データサーバ500は、店舗とは異なるメーカに配置されるものに限らず、他の場所、特定の店舗内に配置されてもよい。たとえば、店A~店Cのうちのいずれかの店舗内にデータサーバ500が配置されてもよい。また、1つの店舗内に複数の靴作製システム10が配置されてもよく、さらに、当該1つの店舗内に当該複数の靴作製システム10と通信可能なローカルのデータサーバが配置されてもよい。また、データサーバ500は、クラウドサービスの形態で実現されてもよい。
【0063】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0064】
10 靴作製システム、100 データ生成装置、102 プロセッサ、104 メインメモリ、106 入力部、108 出力部、110 ストレージ、112 光学ドライブ、114 記録媒体、118 プロセッサバス、120 通信コントローラ、200 測定装置、300 携帯端末、400 靴型作製装置、500 データサーバ、600 加工装置、1104 処理プログラム、1106 靴型データベース、1108 ソールデータベース。