(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045359
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】組み換え宿主細胞により産生された脂肪族アルコール組成物の下流処理
(51)【国際特許分類】
C07C 29/88 20060101AFI20220311BHJP
C07C 31/125 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
C07C29/88
C07C31/125
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009779
(22)【出願日】2022-01-26
(62)【分割の表示】P 2020014262の分割
【原出願日】2014-03-07
(31)【優先権主張番号】61/774,375
(32)【優先日】2013-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510199890
【氏名又は名称】ジェノマティカ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】コ ミョン ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ワン ハイボ
(72)【発明者】
【氏名】コール パトリシア ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リャオ ペリー ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】リ シモン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD11
4H006BA02
4H006BA21
4H006BA29
4H006BC51
4H006BD60
4H006BE10
4H006BE20
(57)【要約】
【課題】脂肪族アルコール(FALC)の精製法の提供。
【解決手段】以下の工程を含む精製方法。(a)FALCおよび鹸化可能な不純物を含む出発材料を用意する工程;(b)第1の混合物を生成するために、該出発材料に強塩基を添加する工程;ならびに(c)FALCが濃縮された第2の混合物を生成するために、該第1の混合物を蒸発させる工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、脂肪族アルコール(FALC)を精製する方法:
(a)FALCおよび鹸化可能な不純物を含む出発材料を用意する工程;
(b)第1の混合物を生成するために、該出発材料に強塩基を添加する工程;ならびに
(c)FALCが濃縮された第2の混合物を生成するために、該第1の混合物を蒸発させる工程。
【請求項2】
前記鹸化可能な不純物が、遊離脂肪酸(FFA)、脂肪酸と脂肪族アルコールのエステル(fatty-fatty ester)(FFE)、およびカルボニル含有化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記強塩基が、0.3~0.6重量パーセントの過剰量の水酸化ナトリウム(NaOH)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記強塩基が、FFAの中和およびFFEの鹸化によりFFAおよびFFEを低減させ、FFEの鹸化により、中和のためのさらなるFFAおよびさらなるFALCが生成され、かつ、該強塩基がさらに、カルボニル含有化合物を低減させる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記中和および鹸化が、約100℃~約130℃の温度で、周囲圧力~約80トールの部分真空で行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記中和および鹸化が、約2~4時間行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の混合物中のFFAの量が約0.03 mg KOH/g試料未満であり、かつ、該第2の混合物中のFFEの量が約0.4 mg KOH/g試料未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の混合物中のナトリウム石鹸の量が約20 ppm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の混合物中のFALCの純度が約98%である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
漂白されたFALCを生成するために前記第2の混合物を漂白剤で漂白する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記漂白剤が、次亜塩素酸塩、過酸化物、漂白土、および吸収剤からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記漂白剤が、金属化合物;色素;酸化された脂肪族化合物もしくは遊離基を有する脂肪族化合物を含む痕跡レベルのさらなる不純物、またはこれらの組み合わせを除去するのに有効である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
水素化されたFALCを生成するために前記第2の混合物を水素および触媒で水素化する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記水素化する工程が、ワンポットスラリー反応、スラリー反応およびその後の充填床反応、ならびに連続した2種の充填床反応からなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記水素化されたFALCを沸点に従って分画する工程をさらに含み、鎖長が炭素数2以上異なるFALCが分離される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記水素化されたFALCが、少なくとも約50パーセントのC12~C18脂肪族アルコールを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記出発材料が、少なくとも0.1~0.5重量パーセントの前記FFAを含む、請求項2~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記出発材料が、少なくとも0.1~0.5重量パーセントの前記FFEを含む、請求項2~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記出発材料が、少なくとも0.1~0.5重量パーセントの前記カルボニル含有化合物を含む、請求項2~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記出発材料が、1重量パーセント未満のジアルコール化合物をさらに含む、請求項2~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記出発材料が、硫黄、または少なくとも1種の硫黄含有化合物をさらに含む、請求項2~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記出発材料が、水をさらに含む、請求項2~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記出発材料が、発酵ブロスの産物である、請求項2~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記発酵ブロスが、大腸菌(E. coli)発酵ブロスである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記出発材料が、約20 mg KOH/g以下の鹸化(SAP)価を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項26】
前記蒸発させる工程が、約150℃未満の温度で、約1トールで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記蒸発させる工程が、約187℃未満の温度で、約5トールで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記蒸発させる工程が、C18アルコールの蒸気圧に対応する温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年3月7日に出願された米国特許仮出願第61/774,375号の恩典を主張し、その内容は全体として本明細書に組み入れられる。
【0002】
分野
本開示は、脂肪族アルコールの下流処理に関する。本明細書において、本開示は、高純度かつ高収率で脂肪族アルコールを提供する新規の精製法を包含する。
【背景技術】
【0003】
背景
脂肪族アルコールは、多くの商業用途を有する。より短鎖の脂肪族アルコールは、乳化剤、皮膚軟化剤、および増粘剤として、化粧品および食品産業において使用される。脂肪族アルコールは、その両親媒性の性質のため、例えば、洗剤および洗浄組成物などのパーソナルケア製品および家庭用製品において有用である、非イオン性界面活性剤として挙動する。加えて、脂肪族アルコールは、ワックス、ゴム、樹脂、薬学的軟膏およびローション、湿潤油添加剤、織物用帯電防止剤および仕上げ剤、可塑剤、化粧品、産業用溶媒、および脂肪用溶媒において使用される。脂肪族アルコール(FALC)は、考慮すべき財務コストおよび環境コストにもかかわらず、パーム油、パーム核油、植物油、ダイズまたは獣脂から取得することができる。FALCが従来の供給源(例えば、植物油、パーム油など)に由来する場合、最初の混合物は、遊離脂肪酸、脂肪酸メチルエステル(FAME)、脂肪酸と脂肪族アルコールの重いエステル(heavy fatty-fatty ester)(すなわちC20~C30を含む長鎖分子)、および他の不純物を含む、多数の不純物を含有する。
【0004】
FALCはまた、C6~C18の鎖長を有するFALCを産生するように遺伝子操作された微生物の発酵(培養)から取得することもできる。ある特定の培養条件下で、微生物の発酵ブロスから産生された粗製FALCは、FALCに加えて、ある特定の不純物を含有し得る。そのような不純物は、遊離脂肪酸(FFA);脂肪酸と脂肪族アルコールのエステル(FFE);脂肪族アルデヒド、脂肪族ケトン、およびカルボニル含有化合物;硫黄および金属化合物;水およびさらなる不純物を含むが、これらに限定されない。不純物は、典型的に、最終産物の規格に合うように、FALCから除去される。FFAの除去(脱酸)は、一般的に、商業用操作におけるように、アルカリ精製法(すなわち化学的方法を介して)および物理的精製法(すなわちFFAの蒸発を介して)により行われる。従来のアルカリ精製法は、欠点がないことはなく;特に、微細に分散しかつ部分的に可溶化した石鹸(例えばC8~C18鎖長)をFALCから分離しようと試みる際に当該方法が困難を経験する傾向があり、これは遠心分離およびその後の水洗の際に起こる。概して、アルカリ精製法は、容認できないほど多いアルコールの損失、および、別々の処理工程を介して低減させなければならないFFEの混入で苦しめられる。加えて、FALC、FFA、およびFFEは、類似した沸点を有するため、物理的精製はほぼ不可能である。さらに、FFAは、FALCに類似した鎖長分布を有し、FFEのいくつかは、FALCと鎖長が重複する。従って、商業規模では、アルカリ精製法および物理的精製法は、粗製FALC中に存在するFFAおよびFFEの除去に適していない。従って、特定の製品における使用に必要とされる規格に合うように必要とされる特徴(例えば純度)を有するFALCを製造する、より新たな、かつより良好な方法が必要である。
【発明の概要】
【0005】
概要
本開示の1つの局面は、以下の工程を含む、脂肪族アルコール(FALC)を精製する方法を提供する:(a)FALCおよび鹸化可能な不純物を含む出発材料を用意する工程;b)第1の混合物を生成するために、出発材料に強塩基を添加する工程;ならびに(c)FALCが濃縮された第2の混合物を生成するために、第1の混合物を蒸発させる工程。1つの態様において、鹸化可能な不純物は、遊離脂肪酸(FFA)、脂肪酸と脂肪族アルコールのエステル(FFE)、およびカルボニル含有化合物を含む。別の態様において、強塩基は、0.3~0.6重量パーセントの過剰量の水酸化ナトリウム(NaOH)を含む。別の態様において、強塩基は、FFAの中和およびFFEの鹸化によりFFAおよびFFEを低減させ、FFEの鹸化により、中和のためのさらなるFFAおよびさらなるFALCが生成される。強塩基はさらに、カルボニル含有化合物を低減させる。また別の態様において、中和および鹸化は、約100℃~約130℃の温度で、周囲圧力~部分真空(約80トール)で行われる。さらに別の態様において、中和および鹸化は、約2~4時間行われる。また別の態様において、第2の混合物中のFFAの量は約0.03 mg KOH/g試料未満であり、第2の混合物中のFFEの量は約0.4 mg KOH/g試料未満である。別の態様において、第2の混合物中のナトリウム石鹸の量は約20 ppm未満である。第2の混合物中で得られるFALCの純度は、通常、約98%である。
【0006】
本開示の別の局面は、以下の工程を含む、FALCを精製する方法を提供する:(a)FALCおよび鹸化可能な不純物を含む出発材料を用意する工程;(b)第1の混合物を生成するために、出発材料に強塩基を添加する工程;(c)FALCが濃縮された第2の混合物を生成するために、第1の混合物を蒸発させる工程;ならびに(d)漂白されたFALCを生成するために、第2の混合物を漂白剤で漂白する工程。1つの態様において、漂白剤は、次亜塩素酸塩、過酸化物、漂白土、および吸収剤を含むが、これらに限定されない。別の態様において、漂白剤は、金属化合物;色素;酸化された脂肪族化合物もしくは遊離基を有する脂肪族化合物を含む痕跡レベルのさらなる不純物、またはこれらの組み合わせを除去するのに有効である。
【0007】
本開示の別の局面は、以下の工程を含む、FALCを精製する方法を提供する:(a)FALCおよび鹸化可能な不純物を含む出発材料を用意する工程;(b)第1の混合物を生成するために、出発材料に強塩基を添加する工程;(c)FALCが濃縮された第2の混合物を生成するために、第1の混合物を蒸発させる工程;(d)漂白されたFALCを生成するために、第2の混合物を漂白剤で漂白する工程;ならびに(e)水素化されたFALCを生成するために、第2の混合物を水素および触媒で水素化する工程。1つの態様において、水素化する工程は、ワンポットスラリー反応、スラリー反応およびその後の充填床反応、ならびに連続した2種の充填床反応を含むが、これらに限定されない。別の態様において、当該方法は、水素化されたFALCを沸点に従って分画する工程をさらに含み、鎖長が炭素数2以上異なるFALCが分離される。別の態様において、水素化されたFALCは、少なくとも約50パーセントのC12~C18脂肪族アルコールを含む。
【0008】
本開示の別の局面は、出発材料が少なくとも0.1~0.5重量パーセントのFFA、および/または少なくとも0.1~0.5重量パーセントのFFEを含む、FALCを精製する方法を提供する。出発材料は、少なくとも0.1~0.5重量パーセントのカルボニル含有化合物をさらに含んでもよい。加えて、出発材料は、1重量パーセント未満のジアルコール化合物をさらに含んでもよい。出発材料は、硫黄、または少なくとも1種の硫黄含有化合物、および/または水をさらに含んでもよい。1つの態様において、出発材料は、発酵ブロスの産物である。別の態様において、発酵ブロスは、大腸菌(E. coli)発酵ブロスである。また別の態様において、出発材料は、約20 mg KOH/g以下の鹸化(SAP)価を包含する。
【0009】
本開示の別の局面は、FALCを精製する方法であって、(a)FALCおよび鹸化可能な不純物を含む出発材料を用意する工程;(b)第1の混合物を生成するために、出発材料に強塩基を添加する工程;および(c)FALCが濃縮された第2の混合物を生成するために、第1の混合物を蒸発させる工程を含み、該蒸発させる工程が、約150℃未満の温度で、約1トールで実施される方法を提供する。別の態様において、蒸発させる工程は、約187℃未満の温度で、約5トールで実施される。さらに別の態様において、蒸発させる工程は、C18アルコールの蒸気圧に対応する温度で実施される。
[本発明1001]
以下の工程を含む、脂肪族アルコール(FALC)を精製する方法:
(a)FALCおよび鹸化可能な不純物を含む出発材料を用意する工程;
(b)第1の混合物を生成するために、該出発材料に強塩基を添加する工程;ならびに
(c)FALCが濃縮された第2の混合物を生成するために、該第1の混合物を蒸発させる工程。
[本発明1002]
前記鹸化可能な不純物が、遊離脂肪酸(FFA)、脂肪酸と脂肪族アルコールのエステル(fatty-fatty ester)(FFE)、およびカルボニル含有化合物を含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記強塩基が、0.3~0.6重量パーセントの過剰量の水酸化ナトリウム(NaOH)を含む、本発明1002の方法。
[本発明1004]
前記強塩基が、FFAの中和およびFFEの鹸化によりFFAおよびFFEを低減させ、FFEの鹸化により、中和のためのさらなるFFAおよびさらなるFALCが生成され、かつ、該強塩基がさらに、カルボニル含有化合物を低減させる、本発明1003の方法。
[本発明1005]
前記中和および鹸化が、約100℃~約130℃の温度で、周囲圧力~約80トールの部分真空で行われる、本発明1004の方法。
[本発明1006]
前記中和および鹸化が、約2~4時間行われる、本発明1005の方法。
[本発明1007]
前記第2の混合物中のFFAの量が約0.03 mg KOH/g試料未満であり、かつ、該第2の混合物中のFFEの量が約0.4 mg KOH/g試料未満である、本発明1001の方法。
[本発明1008]
前記第2の混合物中のナトリウム石鹸の量が約20 ppm未満である、本発明1001の方法。
[本発明1009]
前記第2の混合物中のFALCの純度が約98%である、本発明1001の方法。
[本発明1010]
漂白されたFALCを生成するために前記第2の混合物を漂白剤で漂白する工程をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1011]
前記漂白剤が、次亜塩素酸塩、過酸化物、漂白土、および吸収剤からなる群より選択される、本発明1010の方法。
[本発明1012]
前記漂白剤が、金属化合物;色素;酸化された脂肪族化合物もしくは遊離基を有する脂肪族化合物を含む痕跡レベルのさらなる不純物、またはこれらの組み合わせを除去するのに有効である、本発明1011の方法。
[本発明1013]
水素化されたFALCを生成するために前記第2の混合物を水素および触媒で水素化する工程をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1014]
前記水素化する工程が、ワンポットスラリー反応、スラリー反応およびその後の充填床反応、ならびに連続した2種の充填床反応からなる群より選択される、本発明1013の方法。
[本発明1015]
前記水素化されたFALCを沸点に従って分画する工程をさらに含み、鎖長が炭素数2以上異なるFALCが分離される、本発明1013の方法。
[本発明1016]
前記水素化されたFALCが、少なくとも約50パーセントのC12~C18脂肪族アルコールを含む、本発明1013の方法。
[本発明1017]
前記出発材料が、少なくとも0.1~0.5重量パーセントの前記FFAを含む、本発明1002~1016のいずれかの方法。
[本発明1018]
前記出発材料が、少なくとも0.1~0.5重量パーセントの前記FFEを含む、本発明1002~1016のいずれかの方法。
[本発明1019]
前記出発材料が、少なくとも0.1~0.5重量パーセントの前記カルボニル含有化合物を含む、本発明1002~1016のいずれかの方法。
[本発明1020]
前記出発材料が、1重量パーセント未満のジアルコール化合物をさらに含む、本発明1002~1016のいずれかの方法。
[本発明1021]
前記出発材料が、硫黄、または少なくとも1種の硫黄含有化合物をさらに含む、本発明1002~1016のいずれかの方法。
[本発明1022]
前記出発材料が、水をさらに含む、本発明1002~1016のいずれかの方法。
[本発明1023]
前記出発材料が、発酵ブロスの産物である、本発明1002~1016のいずれかの方法。
[本発明1024]
前記発酵ブロスが、大腸菌(E. coli)発酵ブロスである、本発明1023の方法。
[本発明1025]
前記出発材料が、約20 mg KOH/g以下の鹸化(SAP)価を含む、本発明1005の方法。
[本発明1026]
前記蒸発させる工程が、約150℃未満の温度で、約1トールで実施される、本発明1001の方法。
[本発明1027]
前記蒸発させる工程が、約187℃未満の温度で、約5トールで実施される、本発明1001の方法。
[本発明1028]
前記蒸発させる工程が、C18アルコールの蒸気圧に対応する温度で実施される、本発明1001の方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
新たな精製法の開発は、公知のアルカリ精製法を上回って有意により高い脂肪族アルコールの収率を提供し、かつ、より高い純度を含む特定の製品用の規格に合うように必要とされる特徴を有する脂肪族アルコールを生じるために使用される。新たな方法は、出発材料の中和および鹸化を含む。そのように、新たな方法は、脂肪族アルコール(FALC)および鹸化可能な不純物を含む出発材料に強塩基を添加する工程を含む。そのような不純物は、例えば、遊離脂肪酸(FFA)、脂肪酸と脂肪族アルコールのエステル(FFE)、およびカルボニル含有化合物を含む。出発材料は、通常、発酵ブロス中で増殖した微生物に由来する。強塩基を出発材料に添加すると、強塩基は、混合物中のFFAの中和およびFFEの鹸化により、FFAおよびFFEを低減させる。加えて、強塩基は、混合物中のあるカルボニル含有化合物を酸化してFFAにし、他のカルボニル含有化合物を還元してアルデヒドおよびケトンにし、それらはさらにFFAへと分かれる。FFEの鹸化により、さらなるFFAおよびFALCの生成がもたらされ、当該FFAはさらに中和されて石鹸となる。ある時点で、すべてのFFAが石鹸に変換されており、FALCが濃縮されている。従って、過剰の強塩基を用いたFFEの鹸化およびFFAの中和により、ほぼすべてのFFAおよびほぼすべてのFFEが石鹸に変換され、FALCが高度に濃縮された溶液がもたらされる。続いて脂肪族アルコールの蒸発を用いることにより、FFA、FFE、および塩をほぼ含まない高純度のFALCが生じる。驚くべきことに、出願人らは、この単純な2工程法により、純度が約98%のFALCがもたらされることを見出した。従って、本開示は、FALCおよび鹸化可能な不純物を含む出発材料からFALCを精製する、新規かつより良好な方法を提供する。最終的な混合物は、FALCが濃縮されており、最終的な混合物中の石鹸(すなわち、FFAの塩)の量は20 ppm未満である。当該新規の方法は、FFAおよびFFEをほぼ含まないFALC産物を生じさせ、FFAは、約0.1%(例えば、約0.05%、約0.03%、または約0.01%)であり、FFEは、約0.5の鹸化(SAP)価(例えば、約0.4、約0.3、または約0.2)を有する。
【0011】
出発材料は、FALC、ならびに、ある特定の重量パーセント(重量%)のFFA、FFE、および/またはカルボニル含有化合物を含む鹸化可能な不純物の任意の組み合わせを含み得る。好ましい態様において、出発材料は、少なくとも約0.5(重量%)(例えば少なくとも1.0重量%)のFFE、および/または少なくとも約0.5重量%(例えば少なくとも1.0重量%)のFFA、および/または少なくとも約0.5重量%(例えば少なくとも1.0重量%)のカルボニル含有化合物を含む。出発材料は、典型的に、約5重量%未満(例えば、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、および/または1重量%未満)のカルボニル含有化合物を含むと考えられる。出発材料はまた、約1重量%未満(例えば0.5重量%未満)のジアルコール化合物、硫黄、少なくとも1種の硫黄含有化合物、および/または約5重量%未満(例えば3.5重量%未満)の水などの、他の成分および/または不純物も含み得る。好ましくは、出発材料は、約20 mg(例えば、15 mg、10 mg、5 mg、または2 mg)KOH/g以下の鹸化(SAP)価を含む。出発材料の例は、約10重量%未満のFFA、約5重量%未満のFFE、約2重量%未満のカルボニル含有化合物、約250 ppmの硫黄、約3.5重量%の水、および、C6~C18の範囲の脂肪族アルコールを含有する残りの部分を含む。本開示の1つの態様において、出発材料は、発酵ブロスの産物である。発酵ブロスは、例えば、大腸菌発酵ブロスなどの、微生物発酵ブロスであり得る。微生物細胞は、好ましくは、FALC産生を最適化するように遺伝子操作されている。遺伝子操作された微生物細胞においてFALC産生を最適化するための方法および組成物は、例えば、米国特許出願公開第2012/0142979号、第2011/0256599号、第2011/0250663号、および第2010/0105963号に記載されている。
【0012】
強塩基は、加水分解(例えば、完全に加水分解)し、かつFFAの中和およびFFEの鹸化をすることができる任意の塩基である。典型的に、そのような強塩基は、第I族または第II族のアルカリ金属の水酸化物である。強塩基は、例えば、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、および水酸化ルビジウムを含む。1つの好ましい態様において、強塩基は水酸化ナトリウムである。強塩基は、FFAの中和およびFFEの鹸化のために任意の適当な濃度で使用することができる。概して、約0.01重量%以上のような過剰量の強塩基(例えば、0.05重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、または0.5重量%以上の、出発材料に関する総SAP価に対して過剰量の塩基)が使用されると考えられる。あるいは(または加えて)、使用される過剰量の強塩基は約1.0重量%以下であることができる(例えば、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、または0.4重量%以下であり、出発材料に関する総SAP価に対して過剰量の塩基である)。従って、過剰量の強塩基は、上記の端点の任意の2つにより制約される量(例えば、0.1~0.5重量%、0.3~0.6重量%、0.5~1.0重量%、0.6~0.8重量%、または0.05~1.0重量%)であることができる。例えば、FFEのFFAおよび脂肪族アルコールへの鹸化、ならびに全FFAの中和は、本明細書において過剰量の0.2~0.5重量% NaOHを用いて効果的に達成されている。NaOHの理論的な量は、粗製脂肪族アルコール中のFFA、FFE、およびカルボニルに相当する。強塩基は、典型的に、少なくとも約1重量%(例えば、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、および少なくとも60重量%の塩基)を含む水性混合物の形態において使用されると考えられる。石鹸(すなわちFFAの塩)は、FFAと強塩基との間の鹸化反応の副産物である。石鹸は、強塩基のために使用されるアルカリの性質に依存し、例えば、第I族(例えば、Li、Na、Kなど)および/または第II族(例えば、Mg、Caなど)のメンバーを含む。1つの好ましい態様において、石鹸はナトリウム石鹸である。
【0013】
典型的な中和/鹸化プロセスの条件は、110℃~140℃の範囲の操作温度、少なくとも1時間の反応時間、および/または周囲圧力~部分真空(360トール)の範囲の圧力を含む。本開示の1つの態様において、第1の混合物の生成(例えば、FFAの中和およびFFEの鹸化)は、例えば、約80℃~180℃で、約0.5~4時間、出発材料に関する総SAP価に対して過剰量の約0.05~1.0重量%の塩基で実施することができる。FFAが中和されるにつれて、粗製脂肪族アルコールの粘度は実質的に増大する。典型的に、中和された粗製脂肪族アルコールは、水分が完全に除去された際に、約110℃未満の温度で凝固することができる。約130℃より高い温度では、約10%までのFFAレベルを有する中和および除湿された(de-moisturized)粗製脂肪族アルコールは、液相にあることが観察される。
【0014】
典型的に、出発材料は、水分(例えば、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも3重量%、少なくとも4重量%、および少なくとも5重量%であるが;10重量%未満、8重量%未満、および6重量%未満である)を含有する。例えば、出発材料は、約3.5重量%の水を含み得る。余分な水分(20%~50%の塩基溶液の添加、およびFFAの中和の際の水分生成による)は、脂肪族アルコールの蒸発の際に有意な発泡を引き起こす。典型的には130℃および360トールで2時間操作されるSAP低減反応の前または後のいずれかに、水分乾燥プロセス(例えば、およそ130℃の操作温度および80トールでの)を組み込むことができる。乾燥工程およびSAP低減反応工程の両方において、脂肪族アルコール産物の酸化を低減させるために部分真空を適用することができる。粗製脂肪族アルコール中に示される少量のヘキサノールは、望ましくない副産物成分であり、その後の下流処理のために望まれるレベルに達するように、水分乾燥工程中に同時に除去することができる。強塩基でFFAの中和およびFFEの鹸化を行う(すなわち加水分解する)工程は、カルボニル含有化合物(例えば、脂肪族アルデヒドおよび脂肪族ケトン)の量を低減させる工程を含むことができる。例えば、カルボニル含有化合物の濃度は、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減される。蒸発は、1トールで約155℃の蒸気温度で、5トールで187℃で、または、C18アルコールの蒸気圧に対応する温度で、実施することができる。蒸気温度は、典型的にはエントレインメントセパレータの頂部で測定される。蒸気温度および真空レベルを決定するために、ノルマルパラフィンアルコールのVLEグラフを使用することができる。蒸発が完了した際、非常に粘性の蒸発器塔底物は、脂肪族アルコール(大部分はC18OH)、塩、および過剰量の塩基を含有する。蒸発器底部において液体またはゲル状態を維持するために、温度を典型的には約130℃以上に保つ。蒸発器底部の温度は、典型的には、対応する蒸気温度よりも10~50℃高く、蒸発表面から完全凝縮点までの圧力降下により決定される。従って、蒸発器底部の温度は、使用される装置に依存する。粗製FALCの蒸発の蒸留物を「EC-FALC」と呼び、EC-FALCを生じる工程は任意である(実施例3を参照されたい)。EC-FALCの総SAPは、約6.5 mg KOH/g(2.5% FFA相当)である。
【0015】
上で述べたように(上記)、典型的な中和/鹸化条件は、約110℃~140℃の範囲の操作温度(例えば100~130℃)、少なくとも1時間の反応時間(例えば2~4時間)、および/または周囲圧力~部分真空(360トール)の範囲の圧力(例えば80トール)を含む。具体例において、約130℃で約2時間、0.3~0.5重量%の過剰量のNaOHを使用して実施される中和および鹸化プロセスは、検出不能なレベルのFFA、0.2未満のSAP価、および有意に低減したカルボニル濃度を有する、ナトリウム塩および脂肪族アルコールを生じる。別の具体例において、約130℃で約4時間、約80トールで、約0.4重量%の過剰量のNaOHを使用して実施される中和および鹸化プロセスは、同様に検出不能なレベルのFFA、0.2未満のSAP価、および有意に低減したカルボニル濃度を有する、ナトリウム塩および脂肪族アルコールを生じる。中和/鹸化された脂肪族アルコールの蒸発は、1トールで約155℃の蒸気温度で、5トールで約187℃で、または、C18アルコールの蒸気圧に対応する温度で実施され、すべてのナトリウム塩を除去し、かつ蒸留物中の硫黄濃度を20~30 ppmに低減させる。脂肪族アルコール蒸留物の収率は、約5%のFFAおよび20 mg KOH/gより大きい総SAP価を含有する粗製脂肪族アルコールにおける脂肪族アルコール含量に対して、約98%以上であり得る。
【0016】
方法は、(d)酸性化された塔底物を生成するために、第1の混合物(中和/鹸化された脂肪族アルコール)の蒸留塔底物を酸性化する工程、をさらに含むことができる。鉱酸または有機酸(例えば、スルホン酸、カルボン酸)などの、任意の適当な酸を使用することができる。鉱酸の例は、塩化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、硫酸、フルオロ硫酸、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸、クロム酸、およびホウ酸を含むが、これらに限定されない。有機酸の例は、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、グルコン酸、およびギ酸を含むが、これらに限定されない。1つの好ましい態様において、酸は、鉱酸(例えば硫酸)である。酸は、第1の混合物(中和/鹸化された脂肪族アルコール)を酸性化するために任意の適当な濃度で使用することができる。例えば、酸は、少なくとも約1重量%(例えば、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、および少なくとも25重量%)の酸を含む、水性混合物であることができる。商業的プロセスを模擬するために、インサイチュの酸性化プロセスを行うことができ、240℃未満のワイプトフィルム蒸発器(wiped film evaporator)由来の底部の排出物を、強力なインライン混合器を介して、またはバッチ混合タンクにおいて酸性化することができる。特定の例において、20%化学量論的過剰量の20重量%硫酸溶液を用いて、ナトリウム石鹸および残留NaOHと反応させ、FFA、Na2SO4、および水を形成した。このプロセスは、蒸発器底部の温度を130℃および周囲圧力下で保つことにより、行った。20重量%硫酸溶液の添加は、過剰な水蒸気の煙霧を引き起こさないように、ゆっくりと導いた。酸の用量が増大するにつれて、蒸発器底部の温度は約100℃に低下した。結果として生じた蒸発器塔底物は、10分の反応時間後に100℃で完全に液化した。この段階で、ほぼ等体積の脱イオン水を、清浄目的で、かつ酸性化された混合物を希釈するために、完全に液化された蒸発器塔底物に添加した。熱を遮断した後、結果として生じた混合物を一晩混合して、蒸発器装備を徹底的に清浄にした。
【0017】
出発材料は、40~90%までの、種々の鎖長の一価不飽和脂肪族アルコールを含むことができる。ある特定の態様において、FALCの炭素の長さは、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、または少なくとも19個である。あるいは、または加えて、FALCの炭素の長さは、20個以下、19個以下、18個以下、17個以下、16個以下、15個以下、14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、または6個以下である。従って、FALCは、上記の端点の任意の2つにより制約される鎖長を有し得る。例えば、R基は、6~16個の炭素の長さ、10~14個の炭素の長さ、または12~18個の炭素の長さであり得る。いくつかの態様において、FALCは、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、またはC26 FALCである。ある特定の態様において、FALCは、C12、C13、C14、C15、C16、C17、またはC18 FALCである。出発材料は、前述のいずれかの鎖長のFALCを任意の量で含み得る。出発材料はまた、分岐または非分岐FALCも含み得る。分岐鎖は、複数の分岐点を有してもよく、環状分岐を含んでもよい。いくつかの態様において、分岐FALCは、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23、C24、C25、またはC26分岐FALCである。1つの態様において、分岐FALCは、C6、C8、C10、C12、C13、C14、C15、C16、C17、またはC18分岐FALCである。別の態様において、分岐FALCのヒドロキシル基は、第1(C1)位にある。別の態様において、分岐FALCは、イソ脂肪族アルコール、またはアンテイソ脂肪族アルコールである。また別の態様において、分岐FALCは、イソ-C7:0、イソ-C8:0、イソ-C9:0、イソ-C10:0、イソ-C11:0、イソ-C12:0、イソ-C13:0、イソ-C14:0、イソ-C15:0、イソ-C16:0、イソ-C17:0、イソ-C18:0、イソ-C19:0、アンテイソ-C7:0、アンテイソ-C8:0、アンテイソ-C9:0、アンテイソ-C10:0、アンテイソ-C11:0、アンテイソ-C12:0、アンテイソ-C13:0、アンテイソ-C14:0、アンテイソ-C15:0、アンテイソ-C16:0、アンテイソ-C17:0、アンテイソ-C18:0、およびアンテイソ-C19:0分岐脂肪族アルコールを含むが、これらに限定されない。さらに、出発材料は、飽和または不飽和FALCを含み得る。不飽和の場合、FALCは、1つまたは複数の不飽和の箇所を有し得る。1つの態様において、不飽和FALCは、一価不飽和FALCである。別の態様において、不飽和FALCは、C6:1、C7:1、C8:1、C9:1、C10:1、C11:1、C12:1、C13:1、C14:1、C15:1、C16:1、C17:1、C18:1、C19:1、C20:1、C21:1、C22:1、C23:1、C24:1、C25:1、およびC26:1不飽和FALCを含むが、これらに限定されない。ある特定の態様において、不飽和FALCは、C10:1、C12:1、C14:1、C16:1、またはC18:1である。他の態様において、不飽和FALCは、オメガ-7位で不飽和である。さらに他の態様において、不飽和FALCは、シス二重結合を含む。
【0018】
不飽和FALCは、完全なまたはほぼ完全な飽和に変換することができる。従って、方法は、(d)水素化されたFALCを生成するために、第2の混合物を水素および触媒で水素化する工程、をさらに含むことができる。水素化工程は、ワンポットスラリー反応、スラリー反応およびその後の充填床反応、連続した2種の充填床反応、またはこれらの技術の組み合わせを含む、当技術分野において公知である方法を用いて行うことができる。水素化されたFALCは、少なくとも約50%(例えば、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、および少なくとも80%)のC12~C18脂肪族アルコールを含む。概して、水素化されたFALCは、約100%まで(例えば、99%まで、97%まで、95%まで、93%まで、91%まで、88%まで、および85%まで)のC12~C18脂肪族アルコールを含むと考えられる。水素化されたFALCは、C12~C18脂肪族アルコールの、例えば50~99%、55~97%などの、前述の値の任意の組み合わせにおける任意の範囲を含み得る。水素化反応の化学量論および速度論を決定する鍵となるパラメータは、供給脂肪族アルコールの飽和レベル(ヨウ素価(IV)により測定される)、脂肪族アルコール密度、脂肪族アルコール中の水素の溶解度、触媒負荷、ならびに、反応温度および/または圧力である。飽和レベルは、IV滴定を行うことに加えて、GCまたはGC-MS解析を通して測定することもできる。水素化反応を駆動するために、触媒を使用することができる。第1の反応工程において、熱的および/または動力学的に、不飽和脂肪族アルコールは、シス位からトランス位へ再形成する反応条件下で回転し始める。トランス脂肪族アルコールは、概して、そのより低いエネルギー状態のために水素化反応に好都合である。次に、触媒表面で水素が二重結合に付加され、飽和脂肪族アルコールを形成する。水素化反応の完全性は、触媒の選択、触媒負荷、反応条件、および時間に依存する。多数の触媒を、脂肪族アルコールの水素化プロセスのために使用することができる。市販されている触媒は、亜鉛、ニッケル、パラジウム、白金、および銅-クロムを含む。ニッケルベースの触媒はより低コストだが、反応速度がより遅くあり得、選択性がより低くあり得、かつ触媒がより容易に汚染され得る。ニッケルを、IV滴定により測定される際に不飽和の大幅な低減を提供する初期反応器として使用することができる。パラジウムおよび白金ベースの触媒は、より良好な飽和反応速度論およびより良好な選択性を有することが公知である。これらの触媒のコストは、ニッケルより実質的により高く、完全飽和(すなわち、IV<0.1)を得るために水素化を完成させる工程において最も良好に使用することができる。銅-クロム触媒もまた使用することができる。1つの具体例において、ニッケルを触媒として使用する。触媒負荷および触媒寿命は、飽和の完全性、反応速度、および供給の流れにおける潜在的な不純物に大きく依存する。典型的な触媒の量は、少なくとも約0.01重量%(例えば、少なくとも0.02重量%、少なくとも0.03重量%、少なくとも0.05重量%、少なくとも0.08重量%、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも1重量%、および少なくとも1.5重量%)である。通常、触媒の量は、約10重量%未満(例えば、8重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.1重量%未満、0.08重量%未満、および0.05重量%未満)である。触媒の量はまた、0.01~10重量%などの、前述の値の任意の組み合わせにおける任意の範囲も含み得る。概して、触媒は、水素化プロセスのコストの主要な一因であり得る。結果として、触媒を潜在的に不活性化し得、かつその有用なライフサイクルを短くし得る脂肪族アルコール供給物中の不純物を除去するために、措置が取られるべきである。硫黄、リン、セレン、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、シリカ、および窒素化合物(例えば、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、およびアミン)などの不純物は、触媒に対していくらかの有害な影響を有することが公知である。蒸発は、消泡剤(いくらか存在する場合)、色素、および遊離脂肪酸(FFA)を除去すると同時に、これらの不純物を有意に低減させることができる。
【0019】
前述の方法のいずれかにおいて、水素化工程は、ワンポットスラリー反応であり、1~3重量%のニッケル触媒と共に100~135℃、100~500 psiで約4~8時間実施され、結果として、純度が少なくとも約97%(例えば、少なくとも98%または少なくとも99%)であり、総FALC産物の収率が少なくとも約90%であり、ヨウ素価(「IV」)が約0.3未満であり、かつカルボニルレベルが約150 ppm未満のFALC産物をもたらす。あるいは、水素化工程は、スラリー反応およびその後の充填床反応であり、該スラリー反応は、0.03~0.05重量%のニッケル触媒と共に約100~135℃および約100~500 psiで約0.5~2時間実施され、該充填床反応は、4~8時間の滞留時間相当、小球状ニッケル触媒を100~135℃および約100~500 psiで用いて行われ、結果として、純度が少なくとも約97%(例えば、少なくとも98%または少なくとも99%)であり、総FALC産物の収率が少なくとも約90%であり、ヨウ素価(「IV」)が約0.3未満であり、かつカルボニルレベルが約150 ppm未満のFALC産物をもたらす。加えて、水素化工程は、小球状ニッケル触媒を100~135℃および約100~500 psiで用いた、第1の充填床反応器について0.5~1時間相当のニッケル滞留時間、およびその後の、4~8時間の滞留時間相当の、連続した2種の充填床反応であり得、結果として、純度が少なくとも約97%(例えば、少なくとも98%または少なくとも99%)であり、総FALC産物の収率が少なくとも約90%であり、ヨウ素価(「IV」)が約0.3未満であり、かつカルボニルレベルが約150 ppm未満のFALC産物をもたらす。工程(d)における水素化の前に、方法は、第2の混合物(例えば、中和/鹸化されたFALCの蒸留物)の漂白剤での漂白を、さらに含むことができる。漂白剤は、金属化合物(例えば、硫黄、リン、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなど)、色素、および/または痕跡レベルの他の不純物を除去するのに有効な、次亜塩素酸塩、過酸化物、漂白土、吸収材料などの任意の適当な材料である。漂白剤はまた、前述の材料の任意の組み合わせも含むことができる。本開示の1つの態様において、F-160(BASF)またはBiosil(SudChemie)などの漂白土が使用される。使用済みの漂白土は、MF(マイクロフィルター)濾過を通して除去することができる。任意の適当な量の漂白土を、該量が、金属化合物および色素などの不純物を除去するのに有効である限り、使用することができる。典型的な量は、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.4重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.6重量%、少なくとも0.8重量%、少なくとも1重量%、および少なくとも2重量%を含む。漂白工程に使用される条件の例が本明細書において記載されるが、典型的には、温度が約80~120℃(例えば、105~115℃)の範囲であり、および/または約60~100トール(例えば、60トール、70トール、80トール、90トール、または100トール)の範囲であると考えられる。漂白のための期間は、出発材料における成分の濃度、ならびに漂白剤のタイプおよび量に依存すると考えられる。漂白のための期間の例は、少なくとも約15分(例えば、少なくとも20分、少なくとも30分、少なくとも45分、少なくとも60分、少なくとも90分、および少なくとも120分)である。方法は、(e)水素化されたFALCを、鎖長が炭素数2以上異なるFALCが分離される条件下で分画する工程、をさらに含むことができる。1つの例示的プロセスにおいて、粗製FALCを含む出発材料は、本明細書に記載されるように、以下のプロセス工程を受ける:(A)FALCの蒸発、(B)連続的な鹸化および蒸発、(C)漂白、(D)ワンポット水素化、ならびに(E)少なくとも2段階の分画蒸留。
【実施例0020】
以下の実施例は、本開示をさらに例証するが、当然、決してその範囲を限定すると解釈されるべきではない。下記の表1は、本明細書において使用されるいくつかの用語を説明する。
【0021】
【0022】
実施例1
本実施例は、中和および鹸化ならびにその後の脂肪族アルコールの蒸発を用いた、粗製FALCの精製を実証する。
【0023】
出発材料は、とりわけ、88.6%の粗製FALC、12.8 mg KOH/g試料のFFA、7.3 mg KOH/g試料のFFE、1800 ppmのカルボニル含有化合物、および3%の水分を含んだ。合計2.23重量%のNaOH(0.61重量% NaOHの過剰量を含む)を、出発材料に110℃および480ミリバールで添加し、2時間撹拌した。混合物を次に、240℃の底部温度および2~4トールで蒸発させ、FALCが濃縮されたSE-FALCを生成した。混合物の組成を、表2に示す。
【0024】
SE-FALC(中和/鹸化されたFALCの蒸留物)は中間FALCを含み、ここで、FFAおよびFFEの不純物(洗剤または化学的供給原料の規格に合う)は、鹸化/蒸発(SAP/EVAP)プロセスを通して除去され得る。他の不純物(カルボニル、硫黄、および不飽和)は、その後のプロセス工程、例えば、漂白、水素化、および分画蒸留を通して低減させ得る。
【0025】
【0026】
実施例2
本実施例は、BF-FALC(漂白および濾過されたSE-FALC)およびニッケル触媒を含む出発材料の3種の水素化ランの結果を実証する。供給物は、水素化前の出発材料を表す。3種の異なる温度を、100 psigの圧力で、0.27グラムのニッケルベースの触媒であるPricat 9910を用いて行った。結果を、表3に示す。
【0027】
【0028】
ラン1および2におけるIVおよびGCの両方のデータは、不飽和の有意な低減を示す。ラン3のデータは利用可能ではないが、水素の消費により、変換の程度が匹敵していることが示唆される。ヒドロキシル価(HV)は、インタクトなヒドロキシル基の数の指標である。HV数の低減は、これらの基のアルカンへの副反応を示すと考えられる。HVの低減が無かったため、170℃の操作温度が適していた。
【0029】
実施例3
本実施例は、本開示の1つの態様における粗製FALCの精製を実証する。パイロット(1 m3)発酵またはFermic(20 m3)発酵に由来する、1~2% FFAを有するいくつかの粗製FALC試料を準備した。最初のFALCの蒸発工程は、粗製FALCのFFAおよびFFE含量を実質的に低減させ、「EC-FALC」を提供するために使用された。FFAおよびFFEの最大の低減を伴うほぼ100%のFALCを回収するために、蒸発の蒸気温度は、エントレインメントセパレータの頂部で測定した際に、5トールで187℃、または1トールで155℃であった。EC-FALCの特徴を、表4に提供する。EC-FALCを生成するためのさらなる蒸発工程は任意であり、出発材料が高レベルのFFAおよびFFEを含有する場合、そのような高レベルのFFAおよびFFEが、鹸化/蒸発(SAP/EVAP)手順中に処理の困難を引き起こし得るために、必要とされるだけである。
【0030】
【0031】
EC-FALCは、約6.5の総SAP(~2.5% FFA相当)を有していた。
【0032】
次に、「SE-FALC」(例えば、FALCの第2の混合物)を形成するため、EC-FALCを、鹸化、水分乾燥、C6OH除去、および鹸化されたFALCの蒸発を含む連続的な鹸化/蒸発プロセス(CSEP)に供した。総SAP価に対して0.2重量%~0.4重量%過剰のNaOHを、50% NaOH溶液を用いてEC-FALCに添加し、FFEを完全に中和および鹸化した。鹸化されたFFEは、FFAおよびFALCに分裂した。いくつかのカルボニル含有化合物は酸化されて、FFA、鹸化可能な化合物、ならびに、飽和および不飽和C18OHよりも高い沸点を有する長鎖化合物を生成した。鹸化反応器中のFFAのすべてが、ナトリウム石鹸に変換された。鹸化は、110~130℃および60トールで2時間行った。続いて、真空度を20~30トールに1時間低下させることにより、水分を除去した。乾燥の終わりに、鹸化されたEC-FALCの期待される水分含量は1000 ppm未満である。凝縮水は、有意な量のヘキサノール(C6OH)を含有したが、これらの条件下で、C6OHは、鹸化されたEC-FALCから部分的にのみ除去された。乾燥した鹸化EC-FALCを、1トールで155℃、または5トールで187℃で蒸発させた。第1の混合物(中和/鹸化されたFALC)の蒸発の蒸留物を、「SE-FALC」(例えば、第2の混合物FALC)と呼んだ。5トールで215℃の蒸発器底部の温度が、望ましい収率を提供することができる。蒸発器中の石鹸相はまた、適度に乾燥していることもできる。
【0033】
適切なエントレインメントまたは蒸留カラムが蒸発器の頂部に装備されている場合、SE-FALCの石鹸価(soap value)は、30 ppm(0.01酸価相当)未満であるべきである。石鹸の継続的な除去およびFALCの最大収率を達成するため、2段階蒸発を商業システム用に使用することができる。2段階商業用蒸発ユニットは、蒸発器の頂部に充填カラムを有する、流下薄膜式、上昇薄膜式、または強制循環式の蒸発器と、その後に続く、頂部にエントレインメントセパレータを有するワイプトフィルム蒸発器(WFE)とからなると考えられる。本実施例においては、バッチ蒸発器を使用してSE-FALCを生成した。当該蒸発器は、反応器ジャケットの側面および底部から有効な加熱能力を有し、石鹸により形成される安定な泡を壊すための複数の刃を有する混合器、および蒸発器の頂部のエントレインメントセパレータを装備している。エントレインメントセパレータもまた、190℃への熱油または蒸気加熱のいずれかのためにジャケットを有している。
【0034】
SE-FALCの特徴を下記の表5に提供する。
【0035】
【0036】
鹸化/蒸発プロセス工程の完了後、SE-FALCは、検出不能な酸、<0.4のSAP価、<1 ppmのNa、50~100 ppmのSi、7~20 ppmの硫黄、薄黄色から非常に透明な色、および粗製FALCとほぼ同じIVを有する。これはまた、EC-FALCから消泡剤および大部分の色素も除去した。カルボニルの部分的な低減もまた、鹸化/蒸発工程を通して観察された。
【0037】
中和/鹸化されたEC-FALCの蒸発を完了した後、生成された石鹸は、バッチ蒸発プロセスのために蒸発器底部に残された。石鹸相は、ほぼ等量の石鹸およびFALCを含有していた。脂肪酸種の回収および蒸発器のCIP(定置洗浄(clean-in-place))のために、蒸発器中の石鹸の酸性化を、H2SO4を用いて100~130℃で1時間行った。20%の過剰量のH2SO4(10%溶液)を使用した。完全なCIPを、さらなる等量のDI水でのさらなる1時間の煮沸を通して達成した。石鹸でコーティングされた反応容器の表面を完全に湿らせるために、水の添加を行った。
【0038】
漂白の単位操作を使用して、水素化触媒を保護した。漂白は、SE-FALCから、硫黄、金属不純物、色素、および他の微小不純物の実質的な量を低減させることができる。漂白を、115℃および80トールで、0.5%の漂白土(BASF由来のF160)で1時間の吸着時間行った。次に、混合物を、濾過する前に60℃に冷却した。漂白および濾過されたSE-FALCを、「BE-FALC」と称する。典型的には、漂白後の硫黄およびナトリウムのレベルは、それぞれ<5 ppmおよび<1 ppmである。部分真空で使用される反応温度下での酸化のために、薄黄色がわずかに増強され得る。BE-FALCの特徴を下記の表6に提供する。
【0039】
【0040】
表6に見られるように、カルボニル含有化合物は、BF-FALCの残留不純物である。不飽和化合物のレベルは、最初の粗製FALCと同じであった(IVとして表される)。理想的には、水素化を通して、カルボニル含有化合物およびIVは、それぞれ150 ppmおよび0.15未満まで低減される。保護媒体として完全飽和C16OH/C18OHコーティングまたは完全硬化植物油(TAG)コーティングでコーティングされているシリカ支持体上の22%活性ニッケル触媒であるPRICAT(商標)9910(Johnson Matthey, Billingham, England)を、バッチスラリー水素化のための触媒として使用することができる。シリカまたはアルミナ上に支持された小球状ニッケルを、充填床水素化のための触媒として使用することができる。2段階水素化(すなわち、バッチスラリーIV水素化、ならびにその後に続く充填床カルボニル水素化およびIVポリシング)を使用することができる。ワンポット水素化プロセス条件を、IVおよびカルボニル水素化の両方に及ぶように適用することができる。
【0041】
ワンポット水素化条件は、典型的に、5~13%のPRICAT(商標)9910触媒(1.1~2.86%活性Ni)、100~130℃、100~300 psi(例えば250 psi)のH2、および4~8時間の反応時間であり得る。N2を使用して、反応器を洗い流す。水素化の完了後、水素化されたFALCを、触媒濾過のために60℃に冷却する。スパークラー(1μm MFフィルター)濾過を、PRICAT(商標)9910触媒の濾過のために使用することができる。TAGでコーティングされたPricat9910を使用すると、TAG(触媒上の保護用植物油コーティング)は、完全に水素化されたFALCの濾過物中に残ると考えられる。完全に水素化/濾過されたFALCを、「HF-FALC」と呼ぶ。TAGは、蒸発工程を使用することにより分画蒸留の前に除去することができるか、または、最終的な蒸留塔底物として除去することができる。HF-FALCの蒸留物を、「HFE-FALC」と呼ぶ。HFE-FALCは、<0.15のIV、<150 ppmのカルボニル、および無視可能なアルカンを有さなければならない。HF-FALCおよびHFE-FALCの特徴を下記の表7に提供する。
【0042】
【0043】
表8は、C8OH留分の特徴を提示する。
【0044】
【0045】
表9は、C10OH留分の特徴を提示する。
【0046】
【0047】
表10は、中間留分FALCの特徴を提示する。
【0048】
【0049】
表11は、重質留分FALCの特徴を提示する。
【0050】
【0051】
表12は、本実施例において記載されるプロセス条件を要約する。
【0052】
【0053】
分画蒸留条件は、通常、蒸留装置のタイプに依存し、当業者は、必要に応じてそれらを使用することができる。各処理工程の性能をモニタリングして、中間体および最終FALC産物の品質を確実にする。粗製FALC、中間体、および最終産物の分析の必要性を下記の表13に要約する。
【0054】
【0055】
実施例4
本実施例は、本開示のまた別の態様におけるFALCの精製を実証する。本実施例においては、粗製FALCの一形態(すなわちEC-FALC;実施例3を参照されたい)を生成するためのさらなる蒸発工程を実施せずにFALCの精製を行った。加えて、本実施例は、第1の混合物を生成するために強塩基で中和および鹸化する工程、およびその後の、第2の混合物を生成するための蒸発工程を介して本方法によりFALCが濃縮される場合に達成され得る高純度を示す。
【0056】
出発材料は、約89.95%の偶数鎖FALC、0.78%の奇数鎖FALC、1.28 mg KOH/g試料のFFA、13.71 mg KOH/g試料のFFE、2061 ppmのカルボニル含有化合物、および2.99%の水分を含んだ。当該出発材料に合計1.47重量%のNaOH(0.4重量% NaOHの過剰量を含む)を130℃および360トールで添加し、第1の混合物を取得するための中和および鹸化プロセスを進めるために2時間撹拌した。第1の混合物(中和/鹸化されたFALCの蒸留物)は、不純物であるFFAおよびFFE(洗剤または化学的供給原料の規格を満たす)が蒸発により除去された中間FALCを含んでいた。本明細書において、第1の混合物を、240℃の蒸発器底部温度および2トールで蒸発させて、FALCが濃縮された第2の混合物を生成させた。第2の混合物の組成を下記の表14に示す。特に、第2の混合物の組成は、純度が約98.5%のFALCを含んだ。濃縮されたFALC混合物の高純度は、比較的単純な2工程手順(すなわち、鹸化および蒸発(SAP/EVAP))により達成されるため、意外であった。純度が98.5%のFALCは、依然として、600 ppmのカルボニルおよび7.8 ppmの硫黄などの、少量のいくつかの不純物を含有していた。これらの不純物は非常に少ないため、98.5% FALCを商業製品に用いることを妨げない。しかしながら、いかなる残りの不純物も、漂白、ポリシング、および分画蒸留を介して除去することができる。加えて、FALCの不飽和度は、その後の水素化工程を通して低減させることができる。
【0057】
少量の不純物の除去を試験するために、以下の条件、0.5重量%のF-160(BASF)漂白土を用いた115℃、80トールで1時間の反応時間を、漂白のために使用した。ワンポットバッチスラリー水素化工程を使用して、1.5%活性ニッケル(Johnson Matthey由来のPRICAT(商標)9910)を用いて130℃、450 psiのH2、4時間の反応時間で、不飽和FALCを還元した。漂白および水素化の後、FALCの純度は約98.8%に増大した。本発明の新たなプロセス工程を通して生成された中間留分FALC(MC-FALC)の品質を実証するために、軽質画分(LC-FALC)を、83℃の蒸気温度および2トールで、2:1の還流比で最初に除去し、その後、168℃の蒸気温度および2トールで、2:1の還流比でのMC-FALCの蒸留を行った。生成されたMC-FALCの鎖長分布は、正確には商業用MC-FALCに合わないが、ヒドロキシル価以外のすべての他の規格を実証するのにほぼ十分である。
【0058】
【0059】
当業者に明らかであるように、上記の局面および態様の種々の改変および変種を、本開示の精神および範囲から逸脱することなく作成することができる。そのような改変および変種は本開示の範囲内である。