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特開2022-46735可塑剤として脂肪族エステルを含むポリマー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022046735
(43)【公開日】2022-03-23
(54)【発明の名称】可塑剤として脂肪族エステルを含むポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20220315BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20220315BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20220315BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20220315BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L27/06
C08L21/00
C08L67/04
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000283
(22)【出願日】2022-01-04
(62)【分割の表示】P 2019210523の分割
【原出願日】2015-01-09
(31)【優先権主張番号】MI2014A000030
(32)【優先日】2014-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】592081988
【氏名又は名称】ノバモント・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】NOVAMONT SOCIETA PER AZIONI
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】バスティオリ,カティア
(72)【発明者】
【氏名】カプッツィ,ルイジ
(72)【発明者】
【氏名】ディジオイア,フランチェスカ
(72)【発明者】
【氏名】マリーニ,ニコラ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来の可塑剤よりさらに良い性能を示す脂肪族エステルの提供。
【解決手段】一般式:R1-O-C(0)-R4-C(0)-[-0-R2-0-C(0)-R5-C(0)-]m-0-R3(R1は、H、C1~C24の直鎖及び分枝鎖の飽和及び不飽和、アルキル基、C1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基からなる1以上の基から選択され;R2は、-CH2-C(CH3)2-CH2-基等であり、-CH2-C(CH3)2-CH2-基を少なくとも50モル%含み;R3は、H、C1~C24の直鎖及び分枝鎖、飽和及び不飽和のアルキル基、C1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基からなる1以上の基から選択され;R4及びR5は、1以上のC2~C22アルキレンを含み、かつC7アルキレンを少なくとも50モル%含み;mは1~20、R1がHのとき、R1はR3と異なる)を有する脂肪族エステル組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの熱可塑性ポリマー、および一般式:
R1-O-C(0)-R4-C(0)-[-0-R2-0-C(0)-R5-C(0)-]m-0-R3
(式中、
R1は、H、C1~C24タイプの直鎖および分枝鎖、飽和および不飽和のアルキル基、およびC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基からなる1以上の基から選択され;
R2は、-CH2-C(CH3)2-CH2-基とC2~C8アルキレンとを含み、かつ該-CH2-C(CH3)2-CH2-基を少なくとも50モル%含み;
R3は、H、C1~C24タイプの直鎖および分枝鎖、飽和および不飽和のアルキル基、およびC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基からなる1以上の基から選択され;
R4およびR5は、1以上のC2~C22アルキレンを含み、かつC7アルキレンを少なくとも50モル%含み;
mは1~20の間にあり、
ここで、R1がHのとき、R1はR3と異なる)
を有する、1以上の脂肪族エステルの組成物を含む少なくとも1つの可塑剤を含むポリマー組成物。
【請求項2】
R1がHであり、R3がR1とは異なる、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
R2が-CH2-C(CH3)2-CH2-基である、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
R4およびR5がC7アルキレンである、請求項1または3に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
R1および/またはR3の少なくとも一つが、ペラルゴン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、9-ケトステアリン酸、10-ケトステアリン酸、9-ヒドロキシステアリン酸、10-ヒドロキシステアリン酸からなる群から選択される少なくとも一つのC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基を含む、請求項1~4のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【請求項6】
R1および/またはR3の少なくとも一つが、ステアリン酸、パルミチン酸、9-ケトステアリン酸、10-ケトステアリン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つのC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基を含む、請求項1~4のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【請求項7】
R1および/またはR3の少なくとも一つが、ステアリン酸、パルミチン酸、9-ケトステアリン酸、10-ケトステアリン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基を、R1および/またはR3の全量に対して、≧10モル%の量で含む、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
R1および/またはR3の少なくとも一つが、ステアリン酸、パルミチン酸、9-ケトステアリン酸、10-ケトステアリン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基を、R1および/またはR3の全量に対して、≧20モル%の量で含む、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
R1および/またはR3の少なくとも一つが、9-ケトステアリン酸、10-ケトステアリン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つのC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基を含む、請求項1~4のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【請求項10】
R1および/またはR3の少なくとも一つが、9-ケトステアリン酸、10-ケトステアリン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基を、R1および/またはR3の全量に対して、≧5モル%の量で含む、請求項9に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
R1および/またはR3の少なくとも一つが、少なくとも1つのC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基を含み、該ポリオール残基が、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジアンヒドロソルビトール、ジアンヒドロマンニトール、ジアンヒドロイジトール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンメタンジオール、ペンタエリトリトール、グリセロール、ポリグリセロール、トリメチルロールプロパン、およびそれらの混合物に由来する、請求項1~10のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【請求項12】
R1および/またはR3の少なくとも一つが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ノニル、アリル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、メチルブチル、メチルペンチルおよびメチルエチル基から選択されるC1~C24タイプの直鎖および分枝鎖、飽和および不飽和のアルキル基を含む、請求項1~4のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【請求項13】
mが2~10の間の数である、請求項1~12のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【請求項14】
mが3~7の間の数である、請求項1~12のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【請求項15】
前記の脂肪族エステルを10~80重量%含む、請求項1~14のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【請求項16】
前記の1以上の熱可塑性ポリマーが、塩素化ビニルポリマー、熱可塑性エラストマーおよびヒドロキシ酸ポリエステルから選択される、請求項1~15のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【請求項17】
一般式:
R1-O-C(0)-R4-C(0)-[-0-R2-0-C(0)-R5-C(0)-]m-0-R3
(式中、
R1は、H、C1~C24タイプの直鎖および分枝鎖、飽和および不飽和のアルキル基、およびC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基からなる1以上の基から選択され;
R2は、-CH2-C(CH3)2-CH2-基とC2~C8アルキレンとを含み、かつ該-CH2-C(CH3)2-CH2-基を少なくとも50モル%含み;
R3は、H、C1~C24タイプの直鎖および分枝鎖、飽和および不飽和のアルキル基、およびC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基からなる1以上の基から選択され;
R4およびR5は、1以上のC2~C22アルキレンを含み、かつC7アルキレンを少なくとも50モル%含み;
mは1~20の間にあり、
ここで、R1がHのとき、R1はR3と異なる)
を有する脂肪族エステルの、熱可塑性ポリマー組成物のための可塑剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑剤としての使用に特に適した脂肪族エステルのファミリーおよびそれらを含む熱可塑性ポリマー組成物に関する。
特に、本発明は、熱可塑性ポリマー組成物中の可塑剤として、次の一般式:
R1-O-C(0)-R4-C(0)-[-0-R2-0-C(0)-R5-C(0)-]m-0-R3
(式中、
R1は、H、C1~C24タイプの直鎖および分枝鎖、飽和および不飽和のアルキル基、およびC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基からなる1以上の基から選択され;
R2は、-CH2-C(CH3)2-CH2-基とC2~C8アルキレンとを含み、かつ該-CH2-C(CH3)2-CH2-基を少なくとも50モル%含み;
R3は、H、C1~C24タイプの直鎖および分枝鎖、飽和および不飽和のアルキル基、およびC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基からなる1以上の基から選択され;
R4およびR5は、1以上のC2~C22アルキレン、好ましくはC2~C11、より好ましくはC4~C9アルキレンを含み、かつC7アルキレンを少なくとも50モル%含み;
mは1~20、好ましくは2~10、より好ましくは3~7の間の数である)
を有する脂肪族エステルのファミリーの使用に関する。
【0002】
これらの脂肪族エステルは、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)タイプのビニルポリマー;熱可塑性エラストマー、例えばニトリルゴムおよびSBRゴム;ならびにヒドロキシ酸ポリエステル、例えば(他のPLA中の)乳酸ベースのポリエステルのような、種々のタイプの熱可塑性ポリマー用の可塑剤としての使用に特に適している。
【背景技術】
【0003】
既に知られているように、可塑剤は、特にポリマーのガラス転移温度を下げることによって、多くのそれらの性質、中でもそれらの加工性、柔軟性、レジリエンスおよび弾性を改善する、プラスチック材料の分野で非常に重要な添加剤である。このことに加えて、可塑剤の化学構造およびそれが混合されるポリマーの性質により、可塑剤はそれらポリマーの絶縁特性および接着性を改善するのにも役立ち得る。
【0004】
プラスチック材料用の可塑剤の代表的な種類は、一般的に「フタレート」として知られているフタル酸エステルである。しかしながら、それらの使用は、長い間、そのような化合物がヒトの健康に及ぼすかもしれない潜在的な影響に関連した多くの論争の的となっている。それゆえ、化学工業は、かなりの時間、フタレートに代わる可塑剤を捜し求めることに関与している。
【0005】
効果的に使用されるため、可塑剤は、それがポリマー中に安定的かつ均一に取り込まれることができ、時間とともにプラスチック材料の表面の方に移動する(いわゆる「滲出」)傾向がないように、例えばそれが混合されようとするポリマーとの完全な混和性のようないくつかの性質を示さなければならない。
それらは、一般的に、低揮発性も有さなければならないし、場合により無臭かつ無色で、溶剤、熱および光の作用に耐性を示し、例えば環境湿度による加水分解または酸素に対して化学的に安定でなければならない。それゆえに、それらが作用する複数の性質を与えるため、およびそれらが有することが望まれる多くの特徴の観点から、新しい可塑剤の同定と開発が、プラスチック材料工業において進行中の集中研究の的となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ、本発明の1つの目的は、広範囲のポリマーの可塑剤として使用することができ、使用において同等でないにしても、現在市販されている可塑剤、例えばフタレートよりさらに良い性能を示すことができる脂肪族エステルのファミリーを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特に、本発明は、熱可塑性ポリマー組成物中の可塑剤として、
次の式:
R1-O-C(0)-R4-C(0)-[-0-R2-0-C(0)-R5-C(0)-]m-0-R3
(式中、
R1は、H、C1~C24タイプの直鎖および分枝鎖、飽和および不飽和のアルキル基、およびC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基からなる1以上の基から選択され;
R2は、-CH2-C(CH3)2-CH2-基とC2~C8アルキレンとを含み、かつ該-CH2-C(CH3)2-CH2-基を少なくとも50モル%含み;
R3は、H、C1~C24タイプの直鎖および分枝鎖、飽和および不飽和のアルキル基、およびC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基からなる1以上の基から選択され;
R4およびR5は、1以上のC2~C22アルキレン、好ましくはC2~C11、より好ましくはC4~C9アルキレンを含み、かつC7アルキレンを少なくとも50モル%含み;
mは1~20、好ましくは2~10、より好ましくは3~7の間の数である)
を有する脂肪族エステルの使用に関する。
【0008】
本発明は、これらのエステルの2つ以上を含む混合物の使用にも関する。
単独または混合物としてのいずれかで、PVCタイプのビニルポリマーまたは熱可塑性エラストマー、例えばニトリルゴムおよびSBRゴムのような熱可塑性ポリマーと混合されるとき、これらのエステルは、例えばフタル酸ジイソノニルのような公知の市販されている他の可塑剤の機械的特性と全く同等である機械的特性を保証することができる。
【0009】
それゆえ、本発明は、好ましくは塩素化ビニルポリマー、例えばPVC、熱可塑性エラストマー、例えばニトリルゴムおよびSBRゴム、ならびに例えばポリ乳酸(PLA)のようなヒドロキシ酸ポリエステルから選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマーと、一般式:
R1-O-C(0)-R4-C(0)-[-0-R2-0-C(0)-R5-C(0)-]m-0-R3
(式中、
R1は、H、C1~C24タイプの直鎖および分枝鎖、飽和および不飽和のアルキル基、およびC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基からなる1以上の基から選択され;
R2は、-CH2-C(CH3)2-CH2-基とC2~C8アルキレンとを含み、かつ該-CH2-C(CH3)2-CH2-基を少なくとも50モル%含み;
R3は、H、C1~C24タイプの直鎖および分枝鎖、飽和および不飽和のアルキル基、およびC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基からなる1以上の基から選択され;
R4およびR5は、1以上のC2~C22アルキレン、好ましくはC2~C11、より好ましくはC4~C9アルキレンを含み、かつC7アルキレンを少なくとも50モル%含み;
mは1~20、好ましくは2~10、より好ましくは3~7の間の数である)
を有する1以上の脂肪族エステルを含む少なくとも1つの可塑剤を含む、熱可塑性ポリマー組成物にも関する。
【0010】
本発明による脂肪族エステルにおいて、R1およびR3は、次の基:H、C1~C24タイプの直鎖および分枝鎖、飽和および不飽和のアルキル基またはC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基の1以上から互いに独立して選択される。好ましい実施態様において、R1がHのとき、R1はR3と異なる。
【0011】
R1およびR3に関して、C1~C24タイプの直鎖および分枝鎖、飽和および不飽和のアルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ノニル、アリル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、メチルブチル、メチルペンチルおよびメチルエチル基である。
【0012】
C1~C24モノカルボン酸と反応させるポリオール残基に関して、それらは、例えば1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジアンヒドロソルビトール、ジアンヒドロマンニトール、ジアンヒドロイジトール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンメタンジオール、ペンタエリトリトール、グリセロール、ポリグリセロール、トリメチルロールプロパン、およびそれらの混合物のような、1以上のヒドロキシ基を含むポリオールに由来する。
【0013】
該ポリオールは、それらのヒドロキシ基の一つを介して本発明による脂肪族エステルの構造に結合する。
ポリオールの残りのヒドロキシ基に関するかぎり、それらは1以上のC1~C24モノカルボン酸で部分的または完全にエステル化される。これらのC1~C24モノカルボン酸は直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和のタイプであってもよく、有利には鎖中に1以上のヒドロキシまたはカルボニル基を有し得る。
【0014】
このタイプのC1~C24モノカルボン酸の典型的な例は、ペラルゴン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、9-ケトステアリン酸、10-ケトステアリン酸、9-ヒドロキシステアリン酸および10-ヒドロキシステアリン酸である。
好ましい実施態様において、R1および/またはR3の少なくとも一つは、ステアリン酸、パルミチン酸、9-ケトステアリン酸、10-ケトステアリン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基を、R1および/またはR3の全量に対して、好ましくは≧10モル%、より好ましくは≧20モル%、さらに好ましくは≧25モル%の量で含む。
特に好ましい実施態様において、R1および/またはR3の少なくとも一つは、9-ケトステアリン酸、10-ケトステアリン酸およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのC1~C24モノカルボン酸でエステル化されたポリオール残基を、R1および/またはR3の全量に対して、好ましくは≧5モル%、より好ましくは≧9モル%の量で含む。
【0015】
この種のR1および/またはR3基を含む本発明による脂肪族エステルは、捩り変形に付されたとき、貯蔵弾性率(G')の減少した値を示し、経時それを維持することが見出された。貯蔵弾性率(G')の減少した値は、それらを含むポリマー組成物の改善された剪断応力耐性を示す。改善された剪断応力耐性を有するポリマー組成物は、例えば電気ケーブルおよびワイヤーのような捩れ運動、曲げ運動または折り畳み運動にさらされる工業製品に特に適している。
【0016】
本発明による脂肪族エステルの組成および構造は、当業者に公知のいくつかの方法、例えばHPLC-MSの手段によって決定され得る。
R2に関して、それは、-CH2-C(CH3)2-CH2-とC2~C8アルキレン基、好ましくはC2~C4アルキレン基とを含み、該-CH2-C(CH3)2-CH2-基を少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも75モル%含む。好ましい実施態様において、R2は-CH2-C(CH3)2-CH2-基である。
【0017】
R4およびR5に関する限り、それらは同一かまたは異なり、1以上のC2~C22アルキレン、好ましくはC2~C11、より好ましくはC4~C9アルキレンを互いに独立して含み、C7アルキレンを少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも60モル%、より好ましくは少なくとも65モル%含む。特に好ましい実施態様において、R4およびR5はともにC7アルキレンである。
【0018】
本発明によるエステルにおいて、-C(0)-R4-C(0)-および-C(0)-R5-C(0)-基は、有利には直鎖のC4~C24脂肪族ジカルボン酸、好ましくはC4~C13、より好ましくはC4~C11脂肪族ジカルボン酸に由来し、それらのC1~C24アルキルエステル、好ましくはC1~C4アルキルエステルに由来する。
該ジカルボン酸またはそれらのエステルの例は、コハク酸、コハク酸ジメチル、コハク酸ジブチル、グルタル酸、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジブチル、アジピン酸、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジブチル、ピメリン酸、スベリン酸、スベリン酸ジメチル、スベリン酸ジブチル、アゼライン酸、アゼライン酸ジメチル、アゼライン酸ジブチル、セバシン酸、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジブチル、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、ブラシル酸ジメチル、ブラシル酸ジブチルである。
【0019】
本発明の1つの実施態様において、脂肪族エステルは、アゼライン酸およびそのC1~C24エステルを少なくとも50モル%、好ましくは60モル%以上、より好ましくは65モル%以上含む混合物に由来する。
【0020】
本発明による脂肪族エステルは、当業者に公知のいずれかの方法、例えばエステル化反応またはエステル交換反応の手段によって製造され得る。特に、本発明による脂肪族エステルは、直鎖の脂肪族ジカルボン酸のアルキルエステルをポリオール、例えばネオペンチルグリコールと一緒に含む混合物をエステル交換することによって製造することができる。
当業者は、所望のm値を有する脂肪族エステルを得るために、製造のための適切な条件を選択することができ、例えば化学量論量かまたは直鎖の脂肪族ジカルボン酸のモルと比較してより少ないかもしくはより大過剰のポリオールで処理する。該エステル化反応およびエステル交換反応は、適切な温度および圧力条件下、有利には適切な触媒の存在下で行われる。
【0021】
脂肪族エステル中の-C(0)-R4-C(0)-および-C(0)-R5-C(0)-基に依存して、当業者は、エステル化またはエステル交換されなければならない直鎖の脂肪族ジカルボン酸およびそれらの混合物の組成を変更することができるであろう。該混合物は、当業者に公知のいずれかの方法、例えばそれらの全ての成分を一緒に混合するか、または後で混合される予備混合物を製造することによって製造され得る。既に市販されているか、または副産物として入手可能なジカルボン酸の混合物は、基礎原料として用いられ、続いて所望によりそれらの組成を適当に変更することも可能である。
【0022】
好ましい実施態様において、直鎖の脂肪族ジカルボン酸の混合物は、例えば特許出願WO2008/138892、WO 2011/080296に記載されているような植物油の酸化のための工程からの中間体生成物または副産物として、または特許出願WO 2012/085012およびPCT/EP2013/062588に記載された複合オリゴマー構造を製造する工程での蒸発物として得られる。ヒマワリ油およびオオアザミ油の酸化、ならびに一般に高いオレイン酸含量を有する植物油から得られる直鎖の脂肪族ジカルボン酸混合物は、特に興味深く、例えばアゼライン酸の高い含量を有する混合物を得ることを可能にする。
【0023】
再生可能資源の使用に役立ち、化石起源の資源を保存することに加えて、上記の工程由来の酸混合物の使用は、その他の場合は副産物として見なされ、市販されるか、またはいずれにしても個別に利用されるために、複雑な精製工程を必要とするであろう生成物およびプロセス画分を使用するという、さらなる利点を有する。
【0024】
本発明による脂肪族エステルは、熱可塑性ポリマーの広範な可塑剤として個別のまたは混合物としての使用に特に適している。したがって、本発明は、前記の脂肪族エステルの1以上を含む少なくとも1つの可塑剤を含む熱可塑性ポリマー組成物にも関する。
1つの実施態様において、本発明は、前記の1以上の脂肪族エステルを含む可塑剤を10~80重量%含む熱可塑性ポリマー組成物に関する。
【0025】
該熱可塑性ポリマー組成物に関する限り、それらは、塩素化ビニルポリマー、例えばPVC;熱可塑性エラストマー、例えばニトリルゴムおよびSBRゴム;ならびに例えばポリ乳酸(PLA)のようなヒドロキシ酸ポリエステルから選択される1以上の熱可塑性ポリマーを含み得る。
塩素化ビニルポリマーについて、それらは、本明細書において、ポリ塩化ビニルに加えて、ポリ塩化ビニリデン、塩化ポリエチレン、ポリ(塩化ビニル-酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニル-エチレン)、ポリ(塩化ビニル-プロピレン)、ポリ(塩化ビニル-スチレン)、ポリ(塩化ビニル-イソブチレン)ならびにその中にポリ塩化ビニルが50モル%以上を示すコポリマーを含むと理解されるべきである。該コポリマーはランダム、ブロックまたは交互コポリマーであり得る。好ましくは、該塩素化ビニルポリマーの1以上を含むポリマー組成物は、本発明による脂肪族エステルを10~80重量%含む。
【0026】
熱可塑性エラストマーに関し、それらは天然ゴム(NR)および合成ゴムの両方を含む。合成ゴムの例は、ビニルアレーン-ジエン共役コポリマー(例えばSBR、スチレン/ブタジエンゴム)、ジエンポリマー(例えばポリブタジエン、イソプレン)、エチレン-プロピレン コポリマー、特にエチレン/プロピレン/ジエン ターポリマー(EPDM、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー)およびスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックコポリマー、ニトリルゴム、アクリロニトリル-ブタジエン コポリマー(NBR)およびスチレン-イソプレン-スチレン(SIS)コポリマーのような熱可塑性エラストマーのようなジエンベースを有するゴムである。
【0027】
本発明の好ましい実施態様において、エラストマーはニトリルゴムまたはランダム共役ビニルアレーン-ジエン コポリマーから選択される。
好ましくは、該熱可塑性エラストマーの1以上を含むポリマー組成物は、本発明による脂肪族エステルを含む可塑剤を5~70重量%含む。
【0028】
ヒドロキシ酸ポリエステルの例は、ポリL-乳酸、ポリD-乳酸および立体複合体のポリD-L乳酸、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート-バレレート、ポリヒドロキシブチレート-プロパノエート、ポリヒドロキシブチレート-ヘキサノエート、ポリヒドロキシブチレート-デカノエート、ポリヒドロキシブチレート-ドデカノエート、ポリヒドロキシブチレート-ヘキサデカノエート、ポリヒドロキシブチレート-オクタデカノエート、ポリ3-ヒドロキシブチレート-4-ヒドロキシブチレートである。
好ましくは、該ポリエステルは、本明細書でPLA:ポリL-乳酸、ポリD-乳酸および立体複合体のポリD-L-乳酸によっても示される乳酸のポリエステル、ならびに該乳酸ポリエステルを50モル%以上含むコポリマーである。好ましくは、該乳酸ポリエステルの1以上を含むポリマー組成物は、本発明による脂肪族エステルを含む可塑剤を10~80重量%含む。
【0029】
本発明に記載の脂肪族エステルに加えて、本発明によるポリマー組成物は、その他の可塑剤、充填剤、バイオフィラー(biofiller)、顔料、成核剤、エキステンダー油、分離剤、架橋剤、相溶化剤、染料および熱安定剤のようなその他の添加剤も含み得る。
【0030】
本発明による脂肪族エステルの可塑化特性により、それを含むポリマー組成物は、救命外科用ドレープ、電気ケーブル、ワイヤー、フィルム、衣類および靴用の合成繊維のような工業製品、ならびに自動車産業用部品を製造するために効果的に用いられ得る。
【0031】
上記の目的に加えて、本発明による脂肪族エステルは、ポリエステルおよびポリアミド用の改質剤、木材用の含浸成分ならびに熱硬化性および熱可塑性ポリウレタン用の基剤としても適用され得る。
【0032】
本発明による脂肪族エステルは、ポリエステルおよびポリアミドの製造過程のあらゆる段階でポリエステルおよびポリアミドに加えられ得るし、添加の条件により反応性および非反応性の改質剤として働き得る。
本発明による脂肪族エステルが反応性改質剤として用いられるとき、例えばエステル交換触媒、架橋剤、連鎖延長剤および過酸化物のような反応を促進し得る化合物の有効量が有利に加えられ得る。ポリエステルに関する限り、本明細書において、それらは一般的に、ジアシッド-ジオールタイプの生分解性および非生分解性のポリエステルを含む。生分解性ポリエステルは脂肪族または脂肪族-芳香族のいずれかであり得る。
【0033】
生分解性脂肪族-芳香族ポリエステルは、合成および再生可能の両起源の多官能基を有する芳香族酸を主に含む芳香族部分と脂肪族ジアシッドと脂肪族ジオールを含む脂肪族部分を有するのに対して、ジアシッド-ジオールからの生分解性脂肪族ポリエステルは、脂肪族ジアシッドと脂肪族ジオールを含み得る。
ジアシッド-ジオールからの生分解性脂肪族芳香族ポリエステルは、好ましくは、酸成分に対して30~90モル%の間、好ましくは45~70モル%の間の量の芳香族酸によって特徴付けられる。
【0034】
合成起源の多官能基を有する芳香族酸は、好ましくはフタル酸タイプおよびそれらのエステルのジカルボン酸芳香族化合物、好ましくはテレフタル酸である。再生可能起源の多官能基を有する芳香族酸は、2,5-フランジカルボン酸およびそのエステルを含む群から好ましくは選択される。芳香族ジアシッド成分が合成および再生可能起源の多官能基を有する芳香族酸の混合物を含む、ジアシッド-ジオールからの生分解性脂肪族-芳香族ポリエステルが特に好ましい。
【0035】
生分解性脂肪族ポリエステルおよび脂肪族-芳香族ポリエステルの脂肪族ジアシッドは、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、2-メチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸およびブラシル酸のような脂肪族ジカルボン酸、それらのエステルおよびそれらの混合物である。それらの中で好ましいものは、アジピン酸および再生可能資源からのジカルボン酸であり、それらの中で、コハク酸、セバシン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸およびブラシル酸のような再生可能資源からのジカルボン酸ならびにそれらの混合物が特に好ましい。
【0036】
ジアシッド-ジオールからの生分解性ポリエステル中の脂肪族ジオールの例は、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジアンヒドロソルビトール、ジアンヒドロマンニトール、ジアンヒドロイジトール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンメタンジオールおよびそれらの混合物である。これらの中で、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオールおよび1,2-エタンジオールならびにそれらの混合物が特に好ましい。
【0037】
上記のジアシッド-ジオールからの生分解性ポリエステルを有する本発明による脂肪族エステルの組成物は、好ましくは、該組成物の全重量に対して0.2~20重量%の範囲、好ましくは0.5~10重量%の間で変化する、該脂肪族エステルを含む可塑剤の含有量によって特徴付けられる。
非生分解性ポリエステルの中で好ましいものは、PET、PBT、PTTおよびポリアルキレンフランジカルボキシレートである。後者の中で特に好ましいものは、ポリエチレンフランジカルボキシレート、ポリプロピレンフランジカルボキシレート、ポリブチレンフランジカルボキシレートおよびそれらの混合物である。
【0038】
非生分解性ポリエステルを有する本発明による脂肪族エステル組成物は、好ましくは、該組成物の全重量に対して0.2~20重量%の範囲で変化する、該脂肪族エステルを含む可塑剤の含量によって特徴付けられる。
【0039】
ポリアミドの例は、ポリアミド6および6,6、ポリアミド9および9,9、ポリアミド10および10,10、ポリアミド11および11,11、ポリアミド12および12,12ならびに6/9、6/10、6/11および6/12タイプのそれらの組合せである。
ポリアミドを有する本発明による脂肪族エステルの組成物は、好ましくは、該組成物の全重量に対して0.2~20重量%の範囲で変化する、該脂肪族エステルを含む可塑剤の含量によって特徴付けられる。
【実施例0040】
本発明は、単に説明することだけを意図し、本発明を限定しない多くの実施例によって以下に説明される。
【0041】
実施例
実施例1 - 本発明による脂肪族エステルの製造
脂肪族エステルを製造するために、WO 2012/085012の実施例1に記載の複合オリゴマー構造物の合成の間に蒸留によって得られる、ブチルエステル類と少量の直鎖脂肪族ジカルボン酸およびモノカルボン酸を含む混合物を用いた。
温度計、磁気撹拌子、還流蒸留カラムとガラスリングとフラスコ内の還流を調節するための系、コンデンサーと凝縮物回収用フラスコを備えた、電気ジャケットによって加熱されるフラスコ中に、次の組成:
【表1】
を有する混合物の100 gをネオペンチルグリコールの19 gと一緒に入れた。
【0042】
その系を撹拌しながら100℃に加熱し、ネオペンチルグリコールの完全溶解が達成されたら、Tyzor TE(登録商標)の0.0223 gを加えた。次いで、その系を250℃まで徐々に加熱し、ブタノールと水を介して反応媒体から蒸留した。250℃の温度に達したあと、20ミリバールに達するまで段階的真空を適用した。反応の完了時に、ブタノールと水を含む凝縮物をコンデンサーから回収した。
【0043】
得られた脂肪族エステルは、透明な黄色の液体の形態をとっており、HPLC-MSで分析された。分析のため、エステル混合物の2 mgをアセトニトリルの10 mlに溶解し、次の条件下で分析した:
カラム:Kinetex 2.6μm C8 100Å 100×2.1 mm
溶出液:(A) = HCOOHとともに50mM CH3COONH4pH=4;
(B) = CH3CN;
溶出プログラム
【表2】
流速(ml/分):0.5
注入容量(μl):10
カラムT(℃):40
【0044】
質量分析条件:ESIイオン化源 (陽イオン化)、Sheathガス流速 (a.u.) 20、Auxガス流速 (a.u.) 0、電源電圧 (Kv): 4.5, キャピラリー温度 (℃): 275、キャピラリー電圧 (V): 28、チューブレンズ電圧 (V): 80、スキャン: フルスキャン 150~2000および350~3500 Da
【0045】
該エステルのHPLC-MS特徴付けは、次の構造式:
R1-O-C(O)-R4-C(O)-[-O-R2-O-C(O)-R4-C(O)-]m-O-R3
(ここで、R1およびR3= H、ブチル、-CH2-C(CH3)2-CH2-O-C(O)-(CH2)7-C(O)-(CH2)8-CH3、-CH2-C(CH3)2-CH2-O-C(O)-(CH2)8-C(O)-(CH2)7-CH3、-CH2-C(CH3)2-CH2-O-C(O)-(CH2)14-CH3、-CH2-C(CH3)2-CH2-O-C(O)-(CH2)16-CH3
R4およびR5 = C6およびC7およびC9アルキレン、
mは1~10の間 (平均値 = 3)である)
を有する化合物の混合物の存在を示した。
【0046】
これらのエステルの例は、
CH3-(CH2)3-O-C(O)-(CH2)7-C(O)-[-O-CH2-C(CH3)2-CH2-O-C(O)-(CH2)7-C(O)-]3-O-(CH2)3-CH3、H-O-C(O)-(CH2)7-C(O)-[-O-CH2-C(CH3)2-CH2-O-C(O)-(CH2)7-C(O)-]3-O-(CH2)3-CH3、H-O-C(O)-(CH2)7-C(O)-[-O-CH2-C(CH3)2-CH2-O-C(O)-(CH2)7-C(O)-]4-O-CH2-C(CH3)2-CH2-O-C(O)-(CH2)7-C(O)-(CH2)8-CH3
である。
【0047】
実施例2~4
次の量のネオペンチルグリコール:
【表3】
を用いて、実施例1と同じ製造条件で3つの脂肪族エステルを製造するために、次の組成:
【0048】
【表4】
を有するブチルエステルの3つの混合物を用いた。
【0049】
該エステルのHPLC-MS特徴付けは、実施例1によるエステルと同じ一般構造式を有し、R1およびR3 = H、ブチル、-CH2-C(CH3)2-CH2-O-C(O)-(CH2)7-C(O)-(CH2)8-CH3、-CH2-C(CH3)2-CH2-O-C(O)-(CH2)8-C(O)-(CH2)7-CH3、-CH2-C(CH3)2-CH2-O-C(O)-(CH2)14-CH3、-CH2-C(CH3)2-CH2-O-C(O)-(CH2)16-CH3; R4およびR5 = C6およびC7およびC9アルキレン、mが1~10の間 (実施例2および3に対して平均値 = 3、実施例4に対して = 2)を有する化合物の混合物の存在を示した。
【0050】
以下の表1は、本願の前記のHPLC-MS分析により測定された、ステアリン酸、パルミチン酸、9-ケトステアリン酸、10-ケトステアリン酸およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの酸でエステル化されたポリオール残基を含む、実施例1~4によるエステルのR1および/またはR3基の量を示す。
【0051】
【表5】
【0052】
実施例5~12 - ポリ塩化ビニル用の可塑剤としての使用
本発明による脂肪族エステルの可塑化性を、慣用の可塑剤、フタル酸ジイソノニル(DINP、商品名 DIPLAST(登録商標) NSでPolyntにより販売)およびn-オクタノールおよびn-デカノールのブレンドでのトリメリット酸のエステル(商品名 DIPLAST(登録商標) TM 8-10/STでPolyntにより販売)の可塑化性と比較した。用いられた可塑剤のタイプだけが異なる市販品質のポリ塩化ビニル(NORVINYL 7102 PVC、Ineosにより販売)に基づく同一のポリマー組成物をこの目的のために製造した。それらの組成物を表2に示す。
【0053】
【表6】
【0054】
PVC 1 = PCV K70 (PVC NOR VINYL 7102);
可塑剤 1 = 実施例1により製造された脂肪族エステル;
可塑剤 2 = 実施例2により製造された脂肪族エステル;
可塑剤 3 = 実施例3により製造された脂肪族エステル;
可塑剤 4 = 実施例4により製造された脂肪族エステル;
可塑剤 5 - フタル酸ジイソノニル (DINP);
可塑剤 6 = n-オクタノールおよびn-デカノールのブレンドでのトリメリット酸のエステル (DIPLAST(登録商標) TM 8-10/ST);
安定化剤 1 = ステアリン酸カルシウム;
安定化剤 2 = ステアリン酸亜鉛;
安定化剤 3 = カルシウム/亜鉛 安定化剤 (Bareopan MC 8890 KA/S)
【0055】
標準ASTM D2538に示される化合物の製造手順により、ポリマー組成物をHAAKE RHEOMIX 600混合器中で製造した。個々の成分を秤量し、手動混合により均質にし、続いて混合チャンバー中に装填した。処理のために次の条件を用いた:
- 温度 = 150℃ (実施例5および6-比較)および170℃ (実施例7、8、9、10、11-比較、12-比較);
- 40 r.p.m.;
- 混合時間:7分。
【0056】
ポリマー組成物の混合物の処理は同等であった。
このように製造したそれぞれのポリマー組成物について、厚さ0.25 mm、1.5 mmおよび3.0 mmのシートが圧縮成形された。成形の間、サンプルは5000 psiおよび6分間 T = 150℃
(実施例5および6)ならびに5000 psiおよび6分間 T=170℃ (実施例7、8、9、10、11-比較、12-比較)で成形された。圧縮成形シートは、24時間、23℃±1℃および50%±5%RHで平衡化するために放置された。
【0057】
次いで、そのポリマー組成物が5000 psiおよび6分間 T = 150℃ (実施例5および6)ならびに5000 psiおよび6分間 T=170℃ (実施例7、8、9、10、11-比較、12-比較)で圧縮成形され、それぞれについて異なる厚さ(0.25 mm、1.5 mmおよび3.0 mm)のシートを得た。その圧縮成形シートは、24時間、23℃±1℃および50%±5%RHで平衡化され、それらの引張特性、それらのショアーA硬度、および異なる溶剤中での抗抽出性ならびに温度の関数としての特性によって特徴付けられた。
【0058】
引張特性の測定
伸長速度v = 500 mm/分で、標準ASTM D412に従って引張特性を測定した。試験サンプルは、厚さ1.5 mmのシートを打ち抜くことによって得られた。標準ASTM D 412に従った打ち抜き型を用い、サンプルを調製した。引張強度(σb)、最大荷重(σmax)、引張強度に対する伸び(εb)、最大荷重に対する伸び(ε@σmax)および100% (E100%)、200% (E200%)および300% (E300%)の伸びに対する弾性率が、それぞれの混合物について測定された。140℃で7日間維持された通風オーブン中での経時劣化後のサンプルでも、同じ特性および重量損失が測定された。試験前に、経時劣化サンプルは、24時間、23℃±1℃および50%±5%RHで平衡化された。
【0059】
ショアーA硬度の測定
ショアーA硬度は標準ASTM D2240に従って測定された。サンプルは、圧縮成形によって得られた厚さ3.0 mmの圧縮成形シートから3.0 cm×3.0 cmのサンプルを得ることによって調製された。このようにして得られたサンプルを、標準ASTM D2240に特定された手順に従って、少なくとも6.0 mmの最終の厚さを達成するために積み重ねた。ショアーA硬度値は、測定の開始から15秒後に記録された。
【0060】
異なる溶剤中での抗抽出性
標準ASTM D1239に記載の手順を用いて、可塑剤の異なる溶剤中での抗抽出性を評価した。サンプルは、厚さ0.25 mmの圧縮成形シートから寸法5.0 cm×5.0 cmのサンプルをカットすることによって得られた。抽出試験のために、次の溶剤が用いられた:
- 石鹸水:1.0重量%のマルセル石鹸を含む蒸留水。石鹸は105℃で60分間、通風ストーブ中にそれを放置することによって前もって脱水された。抽出試験は40℃で24時間を通して行われた。
- 油:高オレイン酸含量を有するヒマワリ油(Agripur AP 80)。抽出試験は40℃で24時間を通して行われた。
- n-オクタン:抽出試験は23℃で24時間を通して行われた。
【0061】
試験の終了時に、サンプルは、考えられる微量な溶剤を除去するために洗浄され、紙のシートを用いて乾燥され、20℃で24時間平衡化された。
【0062】
DMTA分析
回転式レオメータTA計器Ares G2を用いて、DMTA分析を行った。測定は、3℃/分の温度速度、-80℃~50℃の温度ウインドーで、長方形のサンプルによる捩れジオメトリーモードを用いてなされた。分析のために、l Hzの振動周波数および0.1%の変形が用いられた。第2のサンプルのセットは、140℃で7日間維持された通風オーブン中で経時劣化され、これらのサンプルもDMTA特性が測定された。試験前に、経時劣化サンプルは、24時間、23℃±1℃および50%±5%RHで平衡化された。
【0063】
表3aに示されるデータから分かるように、本発明による脂肪族エステルで可塑化されたPVC混合物(実施例5、7、8、9、10)の引張特性およびショアーA硬度は、DINP (実施例6および11-比較)およびDIPLAST(登録商標) TM 8-10/ST (実施例12-比較)を用いて可塑化された比較の混合物のそれらと同様である。
【0064】
【表7】
【0065】
表3bのデータに見られるように、本発明によるエステルを含むサンプルは、DIPLAST(登録商標) TM 8-10/STと同様に、経時劣化後、適切な機械的特性を維持している。DINPで可塑化されたポリマー組成物は、その代わりに機械的特性の顕著な減少を示した。
【0066】
【表8】
【0067】
可塑剤の抗抽出性試験について、表4は前記の試験に付された試験片の重量損失%を示している。
【0068】
【表9】
【0069】
得られる混合物の製造方法ならびに機械的特性および溶剤抗抽出性の両方を考慮すると、本発明による脂肪族エステルは、慣用の可塑剤と完全に同等とみなされる。
【0070】
DMTA分析に関して、次の表は、実施例7~12のポリマー組成物自体(表5a)および140℃に維持された通風オーブン中での7日間の経時劣化後の実施例7~12のポリマー組成物(表5b)について、G'@ 25℃、G'@ -25℃、オンセット(Onset) G'、Max G"およびMax Tan (δ)を示す。
【0071】
【表10】
【0072】
【表11】
【0073】
【表12】
【0074】
PVC 1 = PCV K70 (PVC NORVINYL 7102);
可塑剤 2 = 実施例2によって製造された脂肪族エステル;
可塑剤 3 = 実施例3によって製造された脂肪族エステル;
可塑剤 5 - フタル酸ジイソノニル(DINP);
可塑剤 6 = n-オクタノールおよびn-デカノールのブレンドでのトリメリット酸のエステル (DIPLAST(登録商標) TM 8-10/ST);
充填剤 1 = CaC03
1 = エポキシ化大豆油;
安定化剤 3 = カルシウム/亜鉛 安定化剤(Bareopan MC 8890 KA/S);
安定化剤 4 = オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert.ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート (Irganox 1076、BASFより販売)
【0075】
ポリマー組成物は、標準ASTM D2538に従って、HAAKE RHEOMIX 600混合器中で製造された。個々の成分を秤量し、手動混合により均質にし、続いて混合チャンバー中に装填した。処理のために次の条件を用いた:
- 温度 = および170℃;
- 40 r.p.m.;
- 混合時間:7分。
【0076】
ポリマー組成物の混合物の処理は同等であった。
このように製造されたそれぞれのポリマー組成物について、厚さ1.5 mmのシートが圧縮成形された。成形の間、試料は5000 psiおよび6分間 T=170℃で成形された。圧縮成形シートは、24時間、23℃±1℃および50%±5%RHで平衡化するために放置された。
【0077】
次いで、そのポリマー組成物が圧縮成形(6分間 T=170℃)され、製造されたそれぞれのポリマー組成物について1.5 mmの厚さのシートを得た。その圧縮成形シートは、24時間、23℃±1℃および50%±5%RHで平衡化され、前に開示された方法に従って、それらの引張特性を分析することによって特徴付けられた(表6aおよび6b)。
【0078】
【表13】
【0079】
【表14】