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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022047301
(43)【公開日】2022-03-24
(54)【発明の名称】カップ部を有する衣類
(51)【国際特許分類】
   A41C 3/12 20060101AFI20220316BHJP
   A41C 3/00 20060101ALI20220316BHJP
   A41C 3/08 20060101ALN20220316BHJP
【FI】
A41C3/12 A
A41C3/00 A
A41C3/12 Z
A41C3/08
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020153127
(22)【出願日】2020-09-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000131555
【氏名又は名称】株式会社シャルレ
(71)【出願人】
【識別番号】390016850
【氏名又は名称】株式会社カドリールニシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】須磨 碧
(72)【発明者】
【氏名】本城 真理子
(72)【発明者】
【氏名】蛭川 伸子
(72)【発明者】
【氏名】武田 恵子
【テーマコード(参考)】
3B131
【Fターム(参考)】
3B131AA11
3B131AA22
3B131AA23
3B131AB04
3B131BA12
3B131BA21
3B131BA41
3B131BA47
3B131BB01
3B131BB11
(57)【要約】
【課題】 肩及び胸周辺を動かした際に生ずる乳房周囲の皮膚の動き、及び伸び縮みに追随し、カップ部と乳房の位置がずれることを防止することによって、着用性に優れ、また、乳房の形状の補正機能を損なわないカップ部を有する衣類を提供すること。
【解決手段】 左右1対のカップ部、左右2枚の脇布、及び左右1対の肩紐とからなるカップ部を有する衣類であって、カップ部の上部から脇側に沿って縁部材が設けられ、脇布は、縁部材の脇側に連結されており、縁部材は、縁部材の脇布側端から肩紐接合部の近傍にかけて第一伸縮部を有し、縁部材は、縁部材の胸前中心部から肩紐接合部の近傍にかけて第二伸縮部を有し、カップ部は、第一伸縮部及び前記第二伸縮部よりも、伸縮しにくい素材からなることを特徴とするカップ部を有する衣類。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右1対のカップ部、左右2枚の脇布、及び左右1対の肩紐とからなるカップ部を有する衣類であって、
前記カップ部の上部から脇側に沿って縁部材が設けられ、
前記脇布は、前記縁部材の脇側に連結されており、
前記縁部材は、前記縁部材の脇布側端から前記肩紐接合部の近傍にかけて第一伸縮部を有し、
前記縁部材は、前記縁部材の胸前中心部から前記肩紐接合部の近傍にかけて第二伸縮部を有し、
前記カップ部は、前記第一伸縮部及び前記第二伸縮部よりも、伸縮しにくい素材からなることを特徴とするカップ部を有する衣類。
【請求項2】
前記第一伸縮部は、前記脇布側端から前記肩紐接合部を結ぶ方向Pに伸縮し易く、前記方向Pに直交する方向Qには伸縮しにくいことを特徴とする請求項1に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項3】
前記第二伸縮部は、前記胸前中心部から前記肩紐接合部を結ぶ方向Rに伸縮することを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載のカップ部を有する衣類。
【請求項4】
前記第一伸縮部及び前記第二伸縮部は、伸び率が80~220%であり、前記カップ部は、前記第一伸縮部及び前記第二伸縮部より伸縮しない素材からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカップ部を有する衣類。
【請求項5】
前記第一伸縮部は、少なくとも一部が前記カップ部の下端近傍まで延長して設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカップ部を有する衣類。
【請求項6】
前記脇布の裏面に、伸縮する素材からなる脇パネルが設けられ、前記脇パネルは前記縁部材と前記脇布の連結部寄りに配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のカップ部を有する衣類。
【請求項7】
前記脇パネルが斜め方向に伸縮することを特徴とする請求項6に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項8】
前記カップ部の着用者の肌側とは反対側に、前記カップ部を覆う表布を有し、前記表布は伸縮する素材からなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のカップ部を有する衣類。
【請求項9】
ノンワイヤーであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のカップ部を有する衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ部を有する衣類に関し、カップ部の上端から脇側に沿って縁部材が設けられ、縁部材には第一伸縮部と第二伸縮部が設けられていることにより、乳房周囲の皮膚の伸縮に追随し、乳房とカップ部の位置がずれず、着用性に優れたカップ部を有する衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、胸に相当する位置にカップ部を有する衣類は、女性にとって、乳房の下垂を防ぎ、理想的な形状に補正するために不可欠である。通常、カップ部を有する衣類は、左右1対のカップ部を肩紐等で吊り上げ、肩紐等を脇布の背中側や後身頃に接合することにより、カップ部を身体に固定して安定させている。また、カップ部の脇側もしくは下方の生地に厚みを持たせたり、バージスラインに沿ってワイヤーを設けたりすることにより、乳房を内側に寄せて乳房のボリュームが脇側下方向へ逃げるのを防ぐ場合もある。
【0003】
しかしながら、上記したような従来のブラジャーには、以下のような問題点が存在した。即ち、家事を含む日常生活の中で、腕の上げ下ろしなど肩及び胸周辺を動かした際に、乳房の形状が変化すると共に、乳房周囲の皮膚が伸びたり縮んだりすることで、カップ部が乳房周囲の皮膚の動きに対応できず、カップ部と乳房の位置がずれて、その結果乳房の形状が崩れ、脇や背中にバストが流れてしまい、さらには、流れたバストがカップ周辺にはみ出して段差が生じてしまうこともあった。また、カップ部が乳房に乗り上げてしまい、乳房がカップ部からはみ出して着用者が違和感を感じることがあるなど、着用性が悪いという問題点があった。
【0004】
上記のような問題点から、身体の動きにカップ部を有する衣類を追随させるため、一般的にカップ部及びカップ部周辺に伸縮素材が用いられている。
例えば、特許文献1には、内側縁から外側縁に向かって伸縮性の漸減する複数本のゴム紐を一本の円弧帯状に形成したカービングゴムを用いたスポーツブラジャーであって、アンダーベルト、サイドベルト及びストラップがカービングゴムで形成され、アンダーベルトの上縁、サイドベルトの外縁及びストラップの外縁にカービングゴムの外側縁を配して立体的にカップ枠を形成し、該カップ枠に伸縮性を有する生地からなるカップ体を縫着してなることを特徴とするスポーツブラジャーが開示されている。
【0005】
しかしながら、アンダーベルト、サイドベルト及びストラップがカービングゴムで形成されている構成は、乳房がサイドベルト及びストラップに押しつぶされてしまう可能性があり、また、伸縮性を有するカップ部は乳房の形状の補正及び保型力を十分確保できない虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-220005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、家事を含む日常生活の中で、肩及び胸周辺を動かした際に生ずる乳房周囲の皮膚の動き及び伸び縮みに対応して、カップ部と乳房の位置がずれることを防止することにより、着用性に優れ、また、乳房の形状の補正機能を損なわないカップ部を有する衣類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、左右1対のカップ部、左右2枚の脇布、及び左右1対の肩紐とからなるカップ部を有する衣類であって、前記カップ部の上部から脇側に沿って縁部材が設けられ、前記脇布は、前記縁部材の脇側に連結されており、前記縁部材は、前記縁部材の脇布側端から前記肩紐接合部の近傍にかけて第一伸縮部を有し、前記縁部材は、前記縁部材の胸前中心部から前記肩紐接合部の近傍にかけて第二伸縮部を有し、前記カップ部は、前記第一伸縮部及び前記第二伸縮部よりも、伸縮しにくい素材からなることを特徴とするカップ部を有する衣類に関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記第一伸縮部は、前記脇布側端から前記肩紐接合部を結ぶ方向Pに伸縮し易く、前記方向Pに直交する方向Qには伸縮しにくいことを特徴とする請求項1に記載のカップ部を有する衣類に関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記第二伸縮部は、前記胸前中心部から前記肩紐接合部を結ぶ方向Rに伸縮することを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載のカップ部を有する衣類に関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記第一伸縮部及び前記第二伸縮部は、伸び率が80~220%であり、前記カップ部は、前記第一伸縮部及び前記第二伸縮部より伸縮しない素材からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカップ部を有する衣類に関する。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記第一伸縮部は、少なくとも一部が前記カップ部の下端近傍まで延長して設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカップ部を有する衣類に関する。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記脇布の裏面に、伸縮する素材からなる脇パネルが設けられ、前記脇パネルは前記縁部材と前記脇布の連結部寄りに配置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のカップ部を有する衣類に関する。
【0014】
請求項7に係る発明は、前記脇パネルが斜め方向に伸縮することを特徴とする請求項6に記載のカップ部を有する衣類に関する。
【0015】
請求項8に係る発明は、前記カップ部の着用者の肌側とは反対側に、前記カップ部を覆う表布を有し、前記表布は伸縮する素材からなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のカップ部を有する衣類に関する。
【0016】
請求項9に係る発明は、ノンワイヤーであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のカップ部を有する衣類に関する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、左右1対のカップ部、左右2枚の脇布、及び左右1対の肩紐とからなるカップ部を有する衣類であって、カップ部の上部から脇側に沿って縁部材が設けられ、脇布は、縁部材の脇側に連結されており、縁部材は、縁部材の脇布側端から肩紐接合部の近傍にかけて第一伸縮部を有し、縁部材は、縁部材の胸前中心部から肩紐接合部の近傍にかけて第二伸縮部を有し、カップ部は、第一伸縮部及び第二伸縮部よりも、伸縮しにくい素材からなるため、肩及び胸周辺を動かした際(特に、腕の上げ下ろし時)に、伸び縮みする乳房周囲の皮膚に追随することができる。
例えば、腕上げ時には皮膚が伸びる縦及び斜め方向に第一伸縮部と第二伸縮部が皮膚と一緒に伸びて、腕下げ時には皮膚が縮む縦及び斜め方向に第一伸縮部と第二伸縮部が皮膚と一緒に収縮して、腕上げ前の元の位置に戻る。
【0018】
これにより、カップ部と皮膚の位置がずれることがなく、カップ部に収まっていた乳房の一部がはみ出して、カップ部と乳房の間に隙間が生じたり、脇や背中に段差が生じたりすることを防ぐという効果を奏する。また、第一伸縮部及び第二伸縮部よりも、伸縮しにくい素材からなるカップ部が、乳房を包み、立体的な形状を保持するという有利な効果が得られる。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、第一伸縮部は、脇布側端から肩紐接合部を結ぶ方向Pに伸縮し易く、方向Pに直交する方向Qには伸縮しにくい。これにより、乳房周囲の中でも皮膚がよく伸び縮みする部分に、伸縮部を配することができ、特に腕を上げ下げした際には、乳房周囲の皮膚は縦及び斜め方向に伸び縮みするため、効率よく皮膚に追随することができる。肩周囲の動きによって、肩紐が引っぱられた場合でも、第一伸縮部が縦及び斜め方向に伸びることにより、カップ部がずり上がるのを防ぐ効果も得られる。
また、方向Pに縮む力が、乳房の下垂する方向(重力によって乳房が下に垂れる方向と、両乳房が脇側に離れていく方向)と反対方向に作用するため、乳房を引き上げ易いという有利な効果を奏する。そして、第一伸縮部は方向Qに伸縮しにくいため、カップ部の脇側で乳房を支え、乳房を脇側に流れにくくする効果が得られる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、第二伸縮部は、胸前中心部から肩紐接合部を結ぶ方向Rに伸縮するため、乳房周囲の中でも皮膚がよく伸び縮みする部分に、伸縮部を配することができ、特に腕を上げ下げした際には、乳房周囲の皮膚は縦及び斜め方向に伸び縮みするため、効率よく皮膚に追随することができる。また、方向Rに縮む力が、乳房が脇側へ流れる方向と反対方向に作用し、カップ部の保型力を高める有利な効果を奏する。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、第一伸縮部及び第二伸縮部は、伸び率が80~220%であり、前記カップ部は、第一伸縮部及び第二伸縮部より伸縮しない素材からなるため、乳房を補正及び保型するカップ部の効果と、乳房周囲の皮膚に追随する第一伸縮部及び第二伸縮部の効果、2つの効果を効率良く得ることが可能となる。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、第一伸縮部は、少なくとも一部がカップ部の下端近傍まで延長して設けられている。これにより、乳房の脇側上部から脇側下部のバージスラインまでの範囲で皮膚の伸び縮みに追随することができ、より広範囲においてカップ部と皮膚の位置がずれることを効率よく防ぐことが可能になる効果を奏する。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、脇布の裏面に、伸縮する素材からなる脇パネルが設けられ、脇パネルは縁部材と脇布の連結部寄りに配置されているため、より広範囲で肌の伸び縮みに追随することが可能になる効果を奏する。
【0024】
請求項7に係る発明によれば、脇パネルは斜め方向に伸縮するため、腕を上げ下げした際、乳房周囲の皮膚の縦及び斜め方向の伸び縮みに効率よく追随することができる。
【0025】
請求項8に係る発明によれば、カップ部の着用者の肌側とは反対側に、カップ部を覆う表布を有し、表布は伸縮する素材からなる。これにより、カップ部と、第一伸縮部及び第二伸縮部を有する縁部材をまとめて覆うことができ、より乳房を包み込んで自然で滑らかな形に補正することができる。また、表布にレース等の装飾を設けて、見た目をより美しくすることが可能になる。
【0026】
請求項9に係る発明によれば、ノンワイヤーであることで、ワイヤーが食い込んでしまうことがなく、また、着用者の肌に硬いワイヤーを押し付けることなく自然にフィットして、着用性に優れたカップ部を有する衣類を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係るブラジャーの裏面を表す図である。
図2図1のブラジャーの左カップ部周辺を拡大した説明図であり、縁部材と、左カップ部がそれぞれ接合されていない状態で示された図である。
図3図1のブラジャーの右カップ部周辺の拡大説明図である。
図4】乳房周囲の皮膚において、よく伸び縮みする箇所と方向を示している図であり、(a)は身体を正面から見た図、(b)は身体を右脇側から見た図である。
図5図1のブラジャーの左カップ部周辺から左脇布にかけての裏面拡大図である。
図6図1のブラジャーの表面を表す図である。
図7図6のブラジャーの左カップ部(2A)のA-A断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係るロングブラジャーの正面を表す図である。
図9】本発明の一実施形態に係るボディスーツの正面を表す図である。
図10】本発明の一実施形態に係るボディシェーパーの正面を表す図である。
図11】本発明の一実施形態に係るカップ付インナーの正面を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るカップ部を有する衣類の好適な実施形態について、ブラジャーを例に、具体的な実施の形態に基づいて図面を参照しながら説明する。
【0029】
本明細書において、「バスト」と「乳房」は互換的に使用され得る。
本明細書において、「皮膚」と「肌」は互換的に使用され得る。
本明細書において、「下」とは着用者の腹部方向を意味する。
本明細書において、「上」とは着用者の肩方向を意味する。
本明細書において、「縦」とは着用者の頭と足を結ぶ垂直方向を意味する。
本明細書において、「横」とは着用者の身体の幅方向を意味する。
本明細書において、「脇側」とは着用者の脇方向の領域を意味する。
本明細書において、「胸前中心」又は「胸前中心部」とは着用者の左右の乳房の間の領域、すなわち谷間を意味する。
本明細書において、「胸前中心側」とは着用者の胸前中心方向の領域を意味する。
本明細書において、「バージスライン」とはバストの下側の輪郭線、つまりバストと胴部の境目を示すラインを意味する。
【0030】
以下、本発明に係るカップ部を有する衣類について、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係るカップ部を有するブラジャー(X)の裏面図である。図2は、左カップ部(2A)の裏面を拡大した図であり、左カップ部(2A)と縁部材(1)が接合されていない状態を示している。
なお、図2では左カップ部(2A)の周辺について説明しているが、右カップ部(2B)の周辺についても左カップ部(2A)の周辺と同様の構造および効果を有する。
図1に示す実施形態は本発明をブラジャーに適用した場合を示しているため、左右のカップ部(2)の下にカップ台(3)が設けられ、左右の肩紐(4)と、左右の脇布(5)を備えている。さらに、図1に示す実施形態は連結部(6)及び調節部(7)を有するが、これらは実施の形態の1つに過ぎず、本発明のカップ部を有する衣類は、カップ台(3)、連結部(6)や調節部(7)のいずれか又は全てが備えられていない形態であってもよい。
連結部(6)としては、例えばホック、ピン、スナップ、面ファスナー、紐、ボタンとボタン穴等が挙げられるが、当業者に自明のものが当然採用される。
調節部(7)としては、例えば紐、エイト環、丸環、ゼット環等が挙げられるが、特に限定されない。
【0031】
肩紐(4)、脇布(5)及びカップ台(3)の形状および素材は、特に限定されず、一般的なブラジャーの一般的な形状および素材、例えばストラップ、紐、バンド、布地(例えばストレッチ素材の布地)が好適に用いられる。カップ台(3)は身体の幅方向に伸縮する素材であれば、乳房下の胴周囲(アンダーバスト)にしっかりとブラジャーを固定できるため、なお良い。
【0032】
図1及び図2に示すように、カップ部(2)の上部から脇側に沿って縁部材(1)が設けられ、脇布(5)は、縁部材(1)の脇側に連結されている。
そして、縁部材(1)は、縁部材(1)の脇布側端(10)から肩紐接合部(8)の近傍にかけて第一伸縮部(9)を有し、且つ、縁部材(1)の胸前中心部(11)から肩紐接合部(8)の近傍にかけて第二伸縮部(12)を有している。
図2に示すように、縁部材(1)は、第一伸縮部(9)の胸前中心側端(131)とカップ部(2)の脇側端(14)とが接合されることが望ましい。第一伸縮部(9)の胸前中心側端(131)にカップ部(2)の脇側端(14)の一部が重なった状態で接合されていても良いが、縁部材(1)の領域においては、第一伸縮部(9)にカップ部(2)が重なって伸縮しにくい範囲が増えるよりも、第一伸縮部(9)とカップ部(2)が重なる面積が少ない方が、肌に追随して伸び縮みできる範囲をより広く確保できるため好適である。
【0033】
図2に示すように、縁部材(1)は、第二伸縮部(12)の下端(15)とカップ部(2)の上端(16)が接合されることにより、固定されることが望ましい。第二伸縮部(12)の下端(15)にカップ部(2)の上端(16)の一部が重なった状態で接合されていても良いが、縁部材(1)の領域においては第二伸縮部(12)にカップ部(2)が重なって伸縮しにくい範囲が増えるよりも、第二伸縮部(12)にカップ部(2)が重なる面積が少ない方が、肌に追随して伸び縮みできる範囲をより広く確保できるため好適である。
【0034】
第一伸縮部(9)及び第二伸縮部(12)の素材は、特に限定されないが、パワーネット、ツーウェイトリコット、ベア天竺、サテンネット等の素材が好適に用いられる。
【0035】
縁部材(1)は、第一伸縮部(9)と第二伸縮部(12)が二つ以上のパーツからなり接合されて1つの縁部材(1)となっていても良いし、第一伸縮部(9)と第二伸縮部(12)が一つのパーツからなっていても良い。第一伸縮部(9)と第二伸縮部(12)が別々のパーツからなる場合は、製造工程で生地素材を裁断してパーツを作成する際に無駄な生地が出ることが少ないし、第一伸縮部(9)と第二伸縮部(12)が一つのパーツからなる場合は、部分的に伸縮方向を変えることで、接合箇所の凹凸を減らしながら皮膚に合わせて伸び縮みする効果を発揮することができる。
【0036】
カップ部(2)は、第一伸縮部(9)及び第二伸縮部(12)を構成する素材よりも、伸縮しにくい素材からなる。第一伸縮部(9)及び第二伸縮部(12)よりも伸縮しにくいことにより、重力で下垂していく方向に引っぱられて変形する乳房を、立体的で美しい形状に補正し、その形状を保つ効果が得られる。
【0037】
カップ部(2)のサイズは、4分の3カップであっても良いが、少なくとも乳房の下方から半分以上を覆うサイズのカップ、例えばフルカップであることが望ましい。
乳房の下方から半分以上を覆うサイズであれば、乳房の全体を包み込んで形状を美しく保つ効果を奏し易い。加えて、第一伸縮部(9)をより広範囲に配することが可能になり、且つ、第二伸縮部(12)をより広範囲に配することが可能になる。
【0038】
カップ部(2)の下端(17)は、バージスラインに沿って下方に突出するようにカーブを描いていることが望ましい。カップ部(2)が乳房を立体的に包み込んでいる状態で、乳房の付け根が美しいバージスラインを描くことを補助する効果が得られ、より理想的な形状の乳房に補正することができるという利点を有する。
また、カップ部(2)の下端(17)はカップ台(3)の上端(23)に接合されていると良い。第一伸縮部(9)と第二伸縮部(12)が伸び縮みして縁部材(1)が変形しても、カップ部(2)の位置がある程度固定されるため、乳房が脇側に流れたり、立体的に補正した乳房が型崩れしたりすることを防ぐことができる。
【0039】
図3は、右カップ部(2B)周囲の裏面図であり、第一伸縮部(9)と第二伸縮部(12)がそれぞれ伸縮する向きを矢印で示している。
図4は、乳房周囲の皮膚においてよく伸び縮みする箇所(18)と方向(19)を示しており、(a)は身体を正面から見た図、(b)は身体を右脇側から見た図である。
図3に示すように、第一伸縮部(9)は脇布側端(10)から肩紐接合部(8)を結ぶ方向(P)に伸縮しやすく、方向Pに直交する方向Qには伸縮しにくいことが望ましい。
第一伸縮部(9)が脇布側端(10)から肩紐接合部(8)を結ぶ方向(P)に伸びることにより、着用者が腕を上げた際に皮膚が伸びる方向(19)に対応でき、効率よく皮膚に追随するという効果が得られる。また、着用者が腕を下げた際には皮膚が縮む方向(19)に対応し、皮膚と一緒に縮んで追随するという効果が得られる。
加えて、第一伸縮部(9)が伸縮する方向(P)に縮むことで、乳房の下垂する方向(重力によって乳房が下に垂れる方向と、両乳房が脇側に離れていく方向)と反対方向に乳房が引き上げられ、乳房の補正及び立体的な形状の維持をする上で有利な効果が得られる。
また、第一伸縮部(9)は方向Pに直交する方向Qに伸縮しにくいことが望ましい。乳房が脇側に離れていくことを防ぐ効果が得られる。
【0040】
第一伸縮部(9)が伸び縮みする方向(P)は斜め方向であればより良い。図4に示す如く、腕上げ時に皮膚がよく伸び縮みする箇所(18)は垂直ではなく斜め方向に位置しているため、垂直方向にのみ伸び縮みするよりも、乳房及びカップ部(2)に沿って乳房周囲の皮膚の動きに自然と沿うことができ、好適である。
【0041】
図3に示すように、第二伸縮部(12)は胸前中心部(11)から肩紐接合部(8)を結ぶ方向(R)に伸縮することが望ましい。
第二伸縮部(12)が胸前中心部(11)から肩紐接合部(8)を結ぶ方向(R)に伸びることにより、着用者が腕を上げた際に皮膚が伸びる方向(19)に対応でき、効率よく皮膚に追随するという効果が得られる。また、着用者が腕を下げた際には皮膚が縮む方向(19)に対応し、皮膚と一緒に縮んで皮膚に追随するという効果が得られる。
【0042】
第二伸縮部(12)が伸び縮みする方向(R)は斜め方向であればより良い。図4に示す如く、腕上げ時に皮膚がよく伸び縮みする箇所(18)は垂直ではなく斜め方向に位置しているため、垂直にのみ伸び縮みするよりも、乳房及びカップ部(2)に沿って乳房周囲の皮膚の動きに自然と沿うことができ、好適である。
【0043】
第一伸縮部(9)及び第二伸縮部(12)は、伸び率が80~220%であり、カップ部(2)は、第一伸縮部(9)及び第二伸縮部(12)より伸縮しない素材からなるため、乳房を補正及び保型するカップ部(2)の効果と、乳房周囲の皮膚に追随する第一伸縮部(9)及び第二伸縮部(12)の効果、2つの効果を効率良く得ることができる。
伸び率が80~220%とは、例えば10cmの生地が18~32cmの範囲まで伸縮可能であることを表す。
【0044】
第一伸縮部(9)は、少なくとも一部がカップ部(2)の下端(17)近傍まで延長して設けられていると良い。つまり、カップ部を有するブラジャー(X)において、第一伸縮部(9)が乳房下方のバージスラインまで延長され、バージスライン上に位置する場所でカップ台(3)の上端(23)に接合されていることが望ましい。乳房上部から乳房下部のバージスラインまでのより広範囲で皮膚の伸び縮みに追随することができ、カップ部(2)と皮膚の位置がずれる可能性がある皮膚においてよく伸び縮みする箇所(18)をより良くカバーすることができる。
【0045】
図5は、本発明に係るカップ部を有するブラジャー(X)の左カップ部(2A)周辺から左脇布(5A)にかけての裏面拡大図である。なお、左カップ部(2A)周辺から左脇布(5A)について説明しているが、右カップ部(2B)周辺から右脇布(5B)についても同様の構造および効果を有する。
図5に示すように、脇布(5)の裏面に、伸縮する素材からなる脇パネル(20)が設けられ、脇パネル(20)は縁部材(1)と脇布(5)の連結部(21)寄りに配置されていても良い。脇パネル(20)が伸縮することにより、皮膚においてよく伸び縮みする箇所(18)に伸縮する部分をより広く設けることができる。
【0046】
脇パネル(20)は斜め方向に伸縮しても良い。また、伸縮する斜め方向は、胸前中心部側上部と脇側下部を結ぶ方向(S)であればより良く、第一伸縮部(9)が伸び縮みする方向(P)と同じ方向であると望ましい。乳房周囲の皮膚が腕上げ時に伸びる方向及び腕下げ時に縮む方向に効率良く追随することができる。また、方向Sに直交する方向Tに伸縮しにくければより良い。カップ部(2)の脇側で乳房を支え、脇側に離れていくことを防ぐ効果が得られる。
【0047】
図6は、本発明に係るカップ部を有するブラジャー(X)の表面図である。
図6に示すように、カップ部(2)の着用者の肌側とは反対側に、カップ部(2)を覆う表布(22)を設けても良く、表布(22)は伸縮する素材から構成されていても良い。カップ部(2)と、第一伸縮部(9)及び第二伸縮部(12)とを有する縁部材(1)を表布(22)がまとめて覆うことで、乳房をより自然で滑らかな形に補正することができ、表布にレースや刺繍などの装飾を設けて、見た目をより美しくすることも可能になる。また、表布(22)が伸縮することによって、第一伸縮部(9)と第二伸縮部(12)が伸び縮みし易いため、皮膚に追随するという効果も発揮することが可能となる。
【0048】
図7は、図6における左表布(22A)周辺のA-A断面図であり、左カップ部(2A)と左表布(22A)の断面を表している。なお、左表布(22A)周辺について説明しているが、右表布(22B)周辺についても同様の構造および効果を有する。
表布(22)は、カップ台(3)の上端(23)、脇布(5)のカップ部側端(24)、及び肩紐接合部(8)に接合されており、図7に示すように、カップ部(2)と表布(22)が遊離している構造(ふらし構造)であっても良い。第一伸縮部(9)と第二伸縮部(12)が伸び縮みした際に、表布(22)がつっぱることがなく、第一伸縮部(9)と第二伸縮部(12)の伸縮を制限しない。
【0049】
図8乃至図11は、それぞれ本発明の一実施形態に係るロングブラジャー、ボディスーツ、ボディシェーパー、またはカップ付インナーを表す図である。
本発明のカップ部を有する衣類は、カップ部を有する衣類であれば特に限定されず、ブラジャーの他、ロングブラジャー、ボディスーツ、ボディシェーパー、またはカップ付インナーであってもよい。
【0050】
本発明に係るカップ部を有するブラジャーはノンワイヤーが望ましい。着用者の肌に硬いワイヤーを押し付けることなく自然にフィットし、皮膚に追随することによって、着用性に優れた衣類とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るカップ部を有する衣類は、左右1対のカップ部、左右2枚の脇布、及び左右1対の肩紐とからなるカップ部を有する衣類であって、カップ部の上部から脇側に沿って縁部材が設けられ、脇布は、縁部材の脇側に連結されており、縁部材は、縁部材の脇布側端から肩紐接合部の近傍にかけて第一伸縮部を有し、縁部材は、縁部材の胸前中心部から肩紐接合部の近傍にかけて第二伸縮部を有し、カップ部は、第一伸縮部及び第二伸縮部よりも、伸縮しにくい素材からなることを構成要件としていることから、以下のような効果を奏する。
【0052】
乳房周囲の皮膚が伸び縮みする領域に沿うように、カップ部脇側と上辺に、皮膚と共に伸び縮みすることができる伸縮部を設けることで、家事を含む日常生活の中でも、肩及び胸周辺を動かした際に生ずる乳房周囲の皮膚の動き及び伸び縮みに対応し、カップ部と乳房の位置がずれることを防止することによって、着用性に優れ、また、乳房の形状の補正機能を損なわないカップ部を有する衣類として好適に使用され得る。
【符号の説明】
【0053】
X カップ部を有するブラジャー
1 縁部材
2 カップ部
2A 左カップ部
2B 右カップ部
3 カップ台
4 肩紐
5 脇布
5A 左脇布
5B 右脇布
6 連結部
7 調節部
8 肩紐接合部
9 第一伸縮部
10 第一伸縮部の脇布側端
11 胸前中心部
12 第二伸縮部
131 第一伸縮部の胸中心側端
14 カップ部の脇側端
15 第二伸縮部の下端
16 カップ部の上端
17 カップ部の下端
18 皮膚においてよく伸び縮みする箇所
19 皮膚においてよく伸び縮みする方向
20 脇パネル
21 縁部材と脇布の連結部
22 表布
22A 右表布
22B 左表布
23 カップ台の上端
24 脇布のカップ部側端
P 脇布側端から肩紐接合部を結ぶ方向P(第一伸縮部が伸び縮みする方向)
Q 方向Pに直交する方向Q
R 胸前中心部から肩紐接合部を結ぶ方向R(第二伸縮部が伸び縮みする方向)
S 胸前中心部側上部と脇側下部を結ぶ方向S
T 方向Sに直交する方向T
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2021-03-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右1対のカップ部、左右2枚の脇布、及び左右1対の肩紐とからなるカップ部を有する衣類であって、
前記カップ部の上部から脇側に沿って縁部材が設けられ、
前記脇布は、前記縁部材の脇側に連結されており、
前記縁部材は、前記縁部材の脇布側端から前記肩紐と前記縁部材との接合部である肩紐接合部の近傍にかけて第一伸縮部を有し、
前記縁部材は、前記縁部材の胸前中心部から前記肩紐接合部の近傍にかけて第二伸縮部を有し、
前記第一伸縮部は、前記脇布側端から前記肩紐接合部を結ぶ方向Pに伸縮し易く、前記方向Pに直交する方向Qには伸縮しにくく、
前記第二伸縮部は、前記胸前中心部から前記肩紐接合部を結ぶ方向Rに伸縮することを特徴とし、
前記第一伸縮部及び前記第二伸縮部は、伸び率が80~220%であり、
前記カップ部は、前記第一伸縮部及び前記第二伸縮部よりも、伸縮しにくい素材からなり、
前記脇布の裏面に、伸縮する素材からなる脇パネルが設けられ、前記脇パネルは前記縁部材と前記脇布の連結部寄りに配置されており、
前記脇パネルは、前記第一伸縮部が伸縮する前記方向Pと同じ方向である、前記胸前中心部側上部と前記脇側下部を結ぶ方向Sに伸縮し、前記方向Sに直交する方向Tに伸縮しにくいことを特徴とするカップ部を有する衣類。
【請求項2】
前記第一伸縮部は、少なくとも一部が前記カップ部の下端近傍まで延長して設けられていることを特徴とする請求項1のいずれかに記載のカップ部を有する衣類。
【請求項3】
前記カップ部の着用者の肌側とは反対側に、前記カップ部を覆う表布を有し、前記表布は伸縮する素材からなることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のカップ部を有する衣類。
【請求項4】
ノンワイヤーであることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のカップ部を有する衣類。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ部を有する衣類に関し、カップ部の上端から脇側に沿って縁部材が設けられ、縁部材には第一伸縮部と第二伸縮部が設けられていることにより、乳房周囲の皮膚の伸縮に追随し、乳房とカップ部の位置がずれず、着用性に優れたカップ部を有する衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、胸に相当する位置にカップ部を有する衣類は、女性にとって、乳房の下垂を防ぎ、理想的な形状に補正するために不可欠である。通常、カップ部を有する衣類は、左右1対のカップ部を肩紐等で吊り上げ、肩紐等を脇布の背中側や後身頃に接合することにより、カップ部を身体に固定して安定させている。また、カップ部の脇側もしくは下方の生地に厚みを持たせたり、バージスラインに沿ってワイヤーを設けたりすることにより、乳房を内側に寄せて乳房のボリュームが脇側下方向へ逃げるのを防ぐ場合もある。
【0003】
しかしながら、上記したような従来のブラジャーには、以下のような問題点が存在した。即ち、家事を含む日常生活の中で、腕の上げ下ろしなど肩及び胸周辺を動かした際に、乳房の形状が変化すると共に、乳房周囲の皮膚が伸びたり縮んだりすることで、カップ部が乳房周囲の皮膚の動きに対応できず、カップ部と乳房の位置がずれて、その結果乳房の形状が崩れ、脇や背中にバストが流れてしまい、さらには、流れたバストがカップ周辺にはみ出して段差が生じてしまうこともあった。また、カップ部が乳房に乗り上げてしまい、乳房がカップ部からはみ出して着用者が違和感を感じることがあるなど、着用性が悪いという問題点があった。
【0004】
上記のような問題点から、身体の動きにカップ部を有する衣類を追随させるため、一般的にカップ部及びカップ部周辺に伸縮素材が用いられている。
例えば、特許文献1には、内側縁から外側縁に向かって伸縮性の漸減する複数本のゴム紐を一本の円弧帯状に形成したカービングゴムを用いたスポーツブラジャーであって、アンダーベルト、サイドベルト及びストラップがカービングゴムで形成され、アンダーベルトの上縁、サイドベルトの外縁及びストラップの外縁にカービングゴムの外側縁を配して立体的にカップ枠を形成し、該カップ枠に伸縮性を有する生地からなるカップ体を縫着してなることを特徴とするスポーツブラジャーが開示されている。
【0005】
しかしながら、アンダーベルト、サイドベルト及びストラップがカービングゴムで形成されている構成は、乳房がサイドベルト及びストラップに押しつぶされてしまう可能性があり、また、伸縮性を有するカップ部は乳房の形状の補正及び保型力を十分確保できない虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-220005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、家事を含む日常生活の中で、肩及び胸周辺を動かした際に生ずる乳房周囲の皮膚の動き及び伸び縮みに対応して、カップ部と乳房の位置がずれることを防止することにより、着用性に優れ、また、乳房の形状の補正機能を損なわないカップ部を有する衣類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、左右1対のカップ部、左右2枚の脇布、及び左右1対の肩紐とからなるカップ部を有する衣類であって、前記カップ部の上部から脇側に沿って縁部材が設けられ、前記脇布は、前記縁部材の脇側に連結されており、前記縁部材は、前記縁部材の脇布側端から前記肩紐と前記縁部材との接合部である肩紐接合部の近傍にかけて第一伸縮部を有し、前記縁部材は、前記縁部材の胸前中心部から前記肩紐接合部の近傍にかけて第二伸縮部を有し、前記第一伸縮部は、前記脇布側端から前記肩紐接合部を結ぶ方向Pに伸縮し易く、前記方向Pに直交する方向Qには伸縮しにくく、前記第二伸縮部は、前記胸前中心部から前記肩紐接合部を結ぶ方向Rに伸縮することを特徴とし、前記第一伸縮部及び前記第二伸縮部は、伸び率が80~220%であり、前記カップ部は、前記第一伸縮部及び前記第二伸縮部よりも、伸縮しにくい素材からなり、前記脇布の裏面に、伸縮する素材からなる脇パネルが設けられ、前記脇パネルは前記縁部材と前記脇布の連結部寄りに配置されており、前記脇パネルは、前記第一伸縮部が伸縮する前記方向Pと同じ方向である、前記胸前中心部側上部と前記脇側下部を結ぶ方向Sに伸縮し、前記方向Sに直交する方向Tに伸縮しにくいことを特徴とするカップ部を有する衣類に関する。
【0009】
請求項に係る発明は、前記第一伸縮部は、少なくとも一部が前記カップ部の下端近傍まで延長して設けられていることを特徴とする請求項1のいずれかに記載のカップ部を有する衣類に関する。
【0010】
請求項に係る発明は、前記カップ部の着用者の肌側とは反対側に、前記カップ部を覆う表布を有し、前記表布は伸縮する素材からなることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のカップ部を有する衣類に関する。
【0011】
請求項に係る発明は、ノンワイヤーであることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のカップ部を有する衣類に関する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、左右1対のカップ部、左右2枚の脇布、及び左右1対の肩紐とからなるカップ部を有する衣類であって、カップ部の上部から脇側に沿って縁部材が設けられ、脇布は、縁部材の脇側に連結されており、縁部材は、縁部材の脇布側端から肩紐接合部の近傍にかけて第一伸縮部を有し、縁部材は、縁部材の胸前中心部から肩紐接合部の近傍にかけて第二伸縮部を有し、カップ部は、第一伸縮部及び第二伸縮部よりも、伸縮しにくい素材からなるため、肩及び胸周辺を動かした際(特に、腕の上げ下ろし時)に、伸び縮みする乳房周囲の皮膚に追随することができる。
例えば、腕上げ時には皮膚が伸びる縦及び斜め方向に第一伸縮部と第二伸縮部が皮膚と一緒に伸びて、腕下げ時には皮膚が縮む縦及び斜め方向に第一伸縮部と第二伸縮部が皮膚と一緒に収縮して、腕上げ前の元の位置に戻る。
【0013】
これにより、カップ部と皮膚の位置がずれることがなく、カップ部に収まっていた乳房の一部がはみ出して、カップ部と乳房の間に隙間が生じたり、脇や背中に段差が生じたりすることを防ぐという効果を奏する。また、第一伸縮部及び第二伸縮部よりも、伸縮しにくい素材からなるカップ部が、乳房を包み、立体的な形状を保持するという有利な効果が得られる。
【0014】
また、第一伸縮部は、脇布側端から肩紐接合部を結ぶ方向Pに伸縮し易く、方向Pに直交する方向Qには伸縮しにくい。これにより、乳房周囲の中でも皮膚がよく伸び縮みする部分に、伸縮部を配することができ、特に腕を上げ下げした際には、乳房周囲の皮膚は縦及び斜め方向に伸び縮みするため、効率よく皮膚に追随することができる。肩周囲の動きによって、肩紐が引っぱられた場合でも、第一伸縮部が縦及び斜め方向に伸びることにより、カップ部がずり上がるのを防ぐ効果も得られる。
また、方向Pに縮む力が、乳房の下垂する方向(重力によって乳房が下に垂れる方向と、両乳房が脇側に離れていく方向)と反対方向に作用するため、乳房を引き上げ易いという有利な効果を奏する。そして、第一伸縮部は方向Qに伸縮しにくいため、カップ部の脇側で乳房を支え、乳房を脇側に流れにくくする効果が得られる。
【0015】
二伸縮部は、胸前中心部から肩紐接合部を結ぶ方向Rに伸縮するため、乳房周囲の中でも皮膚がよく伸び縮みする部分に、伸縮部を配することができ、特に腕を上げ下げした際には、乳房周囲の皮膚は縦及び斜め方向に伸び縮みするため、効率よく皮膚に追随することができる。また、方向Rに縮む力が、乳房が脇側へ流れる方向と反対方向に作用し、カップ部の保型力を高める有利な効果を奏する。
【0016】
一伸縮部及び第二伸縮部は、伸び率が80~220%であり、前記カップ部は、第一伸縮部及び第二伸縮部より伸縮しない素材からなるため、乳房を補正及び保型するカップ部の効果と、乳房周囲の皮膚に追随する第一伸縮部及び第二伸縮部の効果、2つの効果を効率良く得ることが可能となる。
【0017】
さらに、脇布の裏面に、伸縮する素材からなる脇パネルが設けられ、脇パネルは縁部材と脇布の連結部寄りに配置されているため、より広範囲で肌の伸び縮みに追随することが可能になる効果を奏する。
【0018】
脇パネルは斜め方向に伸縮するため、腕を上げ下げした際、乳房周囲の皮膚の縦及び斜め方向の伸び縮みに効率よく追随することができる。
【0019】
請求項に係る発明によれば、第一伸縮部は、少なくとも一部がカップ部の下端近傍まで延長して設けられている。これにより、乳房の脇側上部から脇側下部のバージスラインまでの範囲で皮膚の伸び縮みに追随することができ、より広範囲においてカップ部と皮膚の位置がずれることを効率よく防ぐことが可能になる効果を奏する。
【0020】
請求項に係る発明によれば、カップ部の着用者の肌側とは反対側に、カップ部を覆う表布を有し、表布は伸縮する素材からなる。これにより、カップ部と、第一伸縮部及び第二伸縮部を有する縁部材をまとめて覆うことができ、より乳房を包み込んで自然で滑らかな形に補正することができる。また、表布にレース等の装飾を設けて、見た目をより美しくすることが可能になる。
【0021】
請求項に係る発明によれば、ノンワイヤーであることで、ワイヤーが食い込んでしまうことがなく、また、着用者の肌に硬いワイヤーを押し付けることなく自然にフィットして、着用性に優れたカップ部を有する衣類を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るブラジャーの裏面を表す図である。
図2図1のブラジャーの左カップ部周辺を拡大した説明図であり、縁部材と、左カップ部がそれぞれ接合されていない状態で示された図である。
図3図1のブラジャーの右カップ部周辺の拡大説明図である。
図4】乳房周囲の皮膚において、よく伸び縮みする箇所と方向を示している図であり、(a)は身体を正面から見た図、(b)は身体を右脇側から見た図である。
図5図1のブラジャーの左カップ部周辺から左脇布にかけての裏面拡大図である。
図6図1のブラジャーの表面を表す図である。
図7図6のブラジャーの左カップ部(2A)のA-A断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係るロングブラジャーの正面を表す図である。
図9】本発明の一実施形態に係るボディスーツの正面を表す図である。
図10】本発明の一実施形態に係るボディシェーパーの正面を表す図である。
図11】本発明の一実施形態に係るカップ付インナーの正面を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るカップ部を有する衣類の好適な実施形態について、ブラジャーを例に、具体的な実施の形態に基づいて図面を参照しながら説明する。
【0024】
本明細書において、「バスト」と「乳房」は互換的に使用され得る。
本明細書において、「皮膚」と「肌」は互換的に使用され得る。
本明細書において、「下」とは着用者の腹部方向を意味する。
本明細書において、「上」とは着用者の肩方向を意味する。
本明細書において、「縦」とは着用者の頭と足を結ぶ垂直方向を意味する。
本明細書において、「横」とは着用者の身体の幅方向を意味する。
本明細書において、「脇側」とは着用者の脇方向の領域を意味する。
本明細書において、「胸前中心」又は「胸前中心部」とは着用者の左右の乳房の間の領域、すなわち谷間を意味する。
本明細書において、「胸前中心側」とは着用者の胸前中心方向の領域を意味する。
本明細書において、「バージスライン」とはバストの下側の輪郭線、つまりバストと胴部の境目を示すラインを意味する。
【0025】
以下、本発明に係るカップ部を有する衣類について、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係るカップ部を有するブラジャー(X)の裏面図である。図2は、左カップ部(2A)の裏面を拡大した図であり、左カップ部(2A)と縁部材(1)が接合されていない状態を示している。
なお、図2では左カップ部(2A)の周辺について説明しているが、右カップ部(2B)の周辺についても左カップ部(2A)の周辺と同様の構造および効果を有する。
図1に示す実施形態は本発明をブラジャーに適用した場合を示しているため、左右のカップ部(2)の下にカップ台(3)が設けられ、左右の肩紐(4)と、左右の脇布(5)を備えている。さらに、図1に示す実施形態は連結部(6)及び調節部(7)を有するが、これらは実施の形態の1つに過ぎず、本発明のカップ部を有する衣類は、カップ台(3)、連結部(6)や調節部(7)のいずれか又は全てが備えられていない形態であってもよい。
連結部(6)としては、例えばホック、ピン、スナップ、面ファスナー、紐、ボタンとボタン穴等が挙げられるが、当業者に自明のものが当然採用される。
調節部(7)としては、例えば紐、エイト環、丸環、ゼット環等が挙げられるが、特に限定されない。
【0026】
肩紐(4)、脇布(5)及びカップ台(3)の形状および素材は、特に限定されず、一般的なブラジャーの一般的な形状および素材、例えばストラップ、紐、バンド、布地(例えばストレッチ素材の布地)が好適に用いられる。カップ台(3)は身体の幅方向に伸縮する素材であれば、乳房下の胴周囲(アンダーバスト)にしっかりとブラジャーを固定できるため、なお良い。
【0027】
図1及び図2に示すように、カップ部(2)の上部から脇側に沿って縁部材(1)が設けられ、脇布(5)は、縁部材(1)の脇側に連結されている。
そして、縁部材(1)は、縁部材(1)の脇布側端(10)から肩紐接合部(8)の近傍にかけて第一伸縮部(9)を有し、且つ、縁部材(1)の胸前中心部(11)から肩紐接合部(8)の近傍にかけて第二伸縮部(12)を有している。
図2に示すように、縁部材(1)は、第一伸縮部(9)の胸前中心側端(131)とカップ部(2)の脇側端(14)とが接合されることが望ましい。第一伸縮部(9)の胸前中心側端(131)にカップ部(2)の脇側端(14)の一部が重なった状態で接合されていても良いが、縁部材(1)の領域においては、第一伸縮部(9)にカップ部(2)が重なって伸縮しにくい範囲が増えるよりも、第一伸縮部(9)とカップ部(2)が重なる面積が少ない方が、肌に追随して伸び縮みできる範囲をより広く確保できるため好適である。
【0028】
図2に示すように、縁部材(1)は、第二伸縮部(12)の下端(15)とカップ部(2)の上端(16)が接合されることにより、固定されることが望ましい。第二伸縮部(12)の下端(15)にカップ部(2)の上端(16)の一部が重なった状態で接合されていても良いが、縁部材(1)の領域においては第二伸縮部(12)にカップ部(2)が重なって伸縮しにくい範囲が増えるよりも、第二伸縮部(12)にカップ部(2)が重なる面積が少ない方が、肌に追随して伸び縮みできる範囲をより広く確保できるため好適である。
【0029】
第一伸縮部(9)及び第二伸縮部(12)の素材は、特に限定されないが、パワーネット、ツーウェイトリコット、ベア天竺、サテンネット等の素材が好適に用いられる。
【0030】
縁部材(1)は、第一伸縮部(9)と第二伸縮部(12)が二つ以上のパーツからなり接合されて1つの縁部材(1)となっていても良いし、第一伸縮部(9)と第二伸縮部(12)が一つのパーツからなっていても良い。第一伸縮部(9)と第二伸縮部(12)が別々のパーツからなる場合は、製造工程で生地素材を裁断してパーツを作成する際に無駄な生地が出ることが少ないし、第一伸縮部(9)と第二伸縮部(12)が一つのパーツからなる場合は、部分的に伸縮方向を変えることで、接合箇所の凹凸を減らしながら皮膚に合わせて伸び縮みする効果を発揮することができる。
【0031】
カップ部(2)は、第一伸縮部(9)及び第二伸縮部(12)を構成する素材よりも、伸縮しにくい素材からなる。第一伸縮部(9)及び第二伸縮部(12)よりも伸縮しにくいことにより、重力で下垂していく方向に引っぱられて変形する乳房を、立体的で美しい形状に補正し、その形状を保つ効果が得られる。
【0032】
カップ部(2)のサイズは、4分の3カップであっても良いが、少なくとも乳房の下方から半分以上を覆うサイズのカップ、例えばフルカップであることが望ましい。
乳房の下方から半分以上を覆うサイズであれば、乳房の全体を包み込んで形状を美しく保つ効果を奏し易い。加えて、第一伸縮部(9)をより広範囲に配することが可能になり、且つ、第二伸縮部(12)をより広範囲に配することが可能になる。
【0033】
カップ部(2)の下端(17)は、バージスラインに沿って下方に突出するようにカーブを描いていることが望ましい。カップ部(2)が乳房を立体的に包み込んでいる状態で、乳房の付け根が美しいバージスラインを描くことを補助する効果が得られ、より理想的な形状の乳房に補正することができるという利点を有する。
また、カップ部(2)の下端(17)はカップ台(3)の上端(23)に接合されていると良い。第一伸縮部(9)と第二伸縮部(12)が伸び縮みして縁部材(1)が変形しても、カップ部(2)の位置がある程度固定されるため、乳房が脇側に流れたり、立体的に補正した乳房が型崩れしたりすることを防ぐことができる。
【0034】
図3は、右カップ部(2B)周囲の裏面図であり、第一伸縮部(9)と第二伸縮部(12)がそれぞれ伸縮する向きを矢印で示している。
図4は、乳房周囲の皮膚においてよく伸び縮みする箇所(18)と方向(19)を示しており、(a)は身体を正面から見た図、(b)は身体を右脇側から見た図である。
図3に示すように、第一伸縮部(9)は脇布側端(10)から肩紐接合部(8)を結ぶ方向(P)に伸縮しやすく、方向Pに直交する方向Qには伸縮しにくいことが望ましい。
第一伸縮部(9)が脇布側端(10)から肩紐接合部(8)を結ぶ方向(P)に伸びることにより、着用者が腕を上げた際に皮膚が伸びる方向(19)に対応でき、効率よく皮膚に追随するという効果が得られる。また、着用者が腕を下げた際には皮膚が縮む方向(19)に対応し、皮膚と一緒に縮んで追随するという効果が得られる。
加えて、第一伸縮部(9)が伸縮する方向(P)に縮むことで、乳房の下垂する方向(重力によって乳房が下に垂れる方向と、両乳房が脇側に離れていく方向)と反対方向に乳房が引き上げられ、乳房の補正及び立体的な形状の維持をする上で有利な効果が得られる。
また、第一伸縮部(9)は方向Pに直交する方向Qに伸縮しにくいことが望ましい。乳房が脇側に離れていくことを防ぐ効果が得られる。
【0035】
第一伸縮部(9)が伸び縮みする方向(P)は斜め方向であればより良い。図4に示す如く、腕上げ時に皮膚がよく伸び縮みする箇所(18)は垂直ではなく斜め方向に位置しているため、垂直方向にのみ伸び縮みするよりも、乳房及びカップ部(2)に沿って乳房周囲の皮膚の動きに自然と沿うことができ、好適である。
【0036】
図3に示すように、第二伸縮部(12)は胸前中心部(11)から肩紐接合部(8)を結ぶ方向(R)に伸縮することが望ましい。
第二伸縮部(12)が胸前中心部(11)から肩紐接合部(8)を結ぶ方向(R)に伸びることにより、着用者が腕を上げた際に皮膚が伸びる方向(19)に対応でき、効率よく皮膚に追随するという効果が得られる。また、着用者が腕を下げた際には皮膚が縮む方向(19)に対応し、皮膚と一緒に縮んで皮膚に追随するという効果が得られる。
【0037】
第二伸縮部(12)が伸び縮みする方向(R)は斜め方向であればより良い。図4に示す如く、腕上げ時に皮膚がよく伸び縮みする箇所(18)は垂直ではなく斜め方向に位置しているため、垂直にのみ伸び縮みするよりも、乳房及びカップ部(2)に沿って乳房周囲の皮膚の動きに自然と沿うことができ、好適である。
【0038】
第一伸縮部(9)及び第二伸縮部(12)は、伸び率が80~220%であり、カップ部(2)は、第一伸縮部(9)及び第二伸縮部(12)より伸縮しない素材からなるため、乳房を補正及び保型するカップ部(2)の効果と、乳房周囲の皮膚に追随する第一伸縮部(9)及び第二伸縮部(12)の効果、2つの効果を効率良く得ることができる。
伸び率が80~220%とは、例えば10cmの生地が18~32cmの範囲まで伸縮可能であることを表す。
【0039】
第一伸縮部(9)は、少なくとも一部がカップ部(2)の下端(17)近傍まで延長して設けられていると良い。つまり、カップ部を有するブラジャー(X)において、第一伸縮部(9)が乳房下方のバージスラインまで延長され、バージスライン上に位置する場所でカップ台(3)の上端(23)に接合されていることが望ましい。乳房上部から乳房下部のバージスラインまでのより広範囲で皮膚の伸び縮みに追随することができ、カップ部(2)と皮膚の位置がずれる可能性がある皮膚においてよく伸び縮みする箇所(18)をより良くカバーすることができる。
【0040】
図5は、本発明に係るカップ部を有するブラジャー(X)の左カップ部(2A)周辺から左脇布(5A)にかけての裏面拡大図である。なお、左カップ部(2A)周辺から左脇布(5A)について説明しているが、右カップ部(2B)周辺から右脇布(5B)についても同様の構造および効果を有する。
図5に示すように、脇布(5)の裏面に、伸縮する素材からなる脇パネル(20)が設けられ、脇パネル(20)は縁部材(1)と脇布(5)の連結部(21)寄りに配置されていても良い。脇パネル(20)が伸縮することにより、皮膚においてよく伸び縮みする箇所(18)に伸縮する部分をより広く設けることができる。
【0041】
脇パネル(20)は斜め方向に伸縮しても良い。また、伸縮する斜め方向は、胸前中心部側上部と脇側下部を結ぶ方向(S)であればより良く、第一伸縮部(9)が伸び縮みする方向(P)と同じ方向であると望ましい。乳房周囲の皮膚が腕上げ時に伸びる方向及び腕下げ時に縮む方向に効率良く追随することができる。また、方向Sに直交する方向Tに伸縮しにくければより良い。カップ部(2)の脇側で乳房を支え、脇側に離れていくことを防ぐ効果が得られる。
【0042】
図6は、本発明に係るカップ部を有するブラジャー(X)の表面図である。
図6に示すように、カップ部(2)の着用者の肌側とは反対側に、カップ部(2)を覆う表布(22)を設けても良く、表布(22)は伸縮する素材から構成されていても良い。カップ部(2)と、第一伸縮部(9)及び第二伸縮部(12)とを有する縁部材(1)を表布(22)がまとめて覆うことで、乳房をより自然で滑らかな形に補正することができ、表布にレースや刺繍などの装飾を設けて、見た目をより美しくすることも可能になる。また、表布(22)が伸縮することによって、第一伸縮部(9)と第二伸縮部(12)が伸び縮みし易いため、皮膚に追随するという効果も発揮することが可能となる。
【0043】
図7は、図6における左表布(22A)周辺のA-A断面図であり、左カップ部(2A)と左表布(22A)の断面を表している。なお、左表布(22A)周辺について説明しているが、右表布(22B)周辺についても同様の構造および効果を有する。
表布(22)は、カップ台(3)の上端(23)、脇布(5)のカップ部側端(24)、及び肩紐接合部(8)に接合されており、図7に示すように、カップ部(2)と表布(22)が遊離している構造(ふらし構造)であっても良い。第一伸縮部(9)と第二伸縮部(12)が伸び縮みした際に、表布(22)がつっぱることがなく、第一伸縮部(9)と第二伸縮部(12)の伸縮を制限しない。
【0044】
図8乃至図11は、それぞれ本発明の一実施形態に係るロングブラジャー、ボディスーツ、ボディシェーパー、またはカップ付インナーを表す図である。
本発明のカップ部を有する衣類は、カップ部を有する衣類であれば特に限定されず、ブラジャーの他、ロングブラジャー、ボディスーツ、ボディシェーパー、またはカップ付インナーであってもよい。
【0045】
本発明に係るカップ部を有するブラジャーはノンワイヤーが望ましい。着用者の肌に硬いワイヤーを押し付けることなく自然にフィットし、皮膚に追随することによって、着用性に優れた衣類とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係るカップ部を有する衣類は、左右1対のカップ部、左右2枚の脇布、及び左右1対の肩紐とからなるカップ部を有する衣類であって、カップ部の上部から脇側に沿って縁部材が設けられ、脇布は、縁部材の脇側に連結されており、縁部材は、縁部材の脇布側端から肩紐接合部の近傍にかけて第一伸縮部を有し、縁部材は、縁部材の胸前中心部から肩紐接合部の近傍にかけて第二伸縮部を有し、カップ部は、第一伸縮部及び第二伸縮部よりも、伸縮しにくい素材からなることを構成要件としていることから、以下のような効果を奏する。
【0047】
乳房周囲の皮膚が伸び縮みする領域に沿うように、カップ部脇側と上辺に、皮膚と共に伸び縮みすることができる伸縮部を設けることで、家事を含む日常生活の中でも、肩及び胸周辺を動かした際に生ずる乳房周囲の皮膚の動き及び伸び縮みに対応し、カップ部と乳房の位置がずれることを防止することによって、着用性に優れ、また、乳房の形状の補正機能を損なわないカップ部を有する衣類として好適に使用され得る。
【符号の説明】
【0048】
X カップ部を有するブラジャー
1 縁部材
2 カップ部
2A 左カップ部
2B 右カップ部
3 カップ台
4 肩紐
5 脇布
5A 左脇布
5B 右脇布
6 連結部
7 調節部
8 肩紐接合部
9 第一伸縮部
10 第一伸縮部の脇布側端
11 胸前中心部
12 第二伸縮部
131 第一伸縮部の胸中心側端
14 カップ部の脇側端
15 第二伸縮部の下端
16 カップ部の上端
17 カップ部の下端
18 皮膚においてよく伸び縮みする箇所
19 皮膚においてよく伸び縮みする方向
20 脇パネル
21 縁部材と脇布の連結部
22 表布
22A 右表布
22B 左表布
23 カップ台の上端
24 脇布のカップ部側端
P 脇布側端から肩紐接合部を結ぶ方向P(第一伸縮部が伸び縮みする方向)
Q 方向Pに直交する方向Q
R 胸前中心部から肩紐接合部を結ぶ方向R(第二伸縮部が伸び縮みする方向)
S 胸前中心部側上部と脇側下部を結ぶ方向S
T 方向Sに直交する方向T