(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022048738
(43)【公開日】2022-03-28
(54)【発明の名称】ブレーキ付き減速機ユニット
(51)【国際特許分類】
F16D 27/07 20060101AFI20220318BHJP
F16H 1/32 20060101ALI20220318BHJP
F16D 27/01 20060101ALI20220318BHJP
F16D 27/112 20060101ALI20220318BHJP
F16D 55/28 20060101ALI20220318BHJP
F16D 65/16 20060101ALI20220318BHJP
B25J 17/00 20060101ALI20220318BHJP
F16D 121/20 20120101ALN20220318BHJP
F16D 121/22 20120101ALN20220318BHJP
【FI】
F16D27/07
F16H1/32 B
F16D27/01
F16D27/112 G
F16D55/28
F16D55/28 B
F16D65/16
B25J17/00 E
F16D121:20
F16D121:22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020154728
(22)【出願日】2020-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】粥川 正康
(72)【発明者】
【氏名】小▲崎▼ 守
(72)【発明者】
【氏名】原田 天晴
【テーマコード(参考)】
3C707
3J027
3J058
【Fターム(参考)】
3C707CX03
3C707HT25
3C707HT40
3J027FA36
3J027FB32
3J027GB03
3J027GC07
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J058AA43
3J058AA47
3J058AA58
3J058AA78
3J058AA79
3J058AA87
3J058AA88
3J058BA67
3J058CC07
3J058CC13
3J058CC72
3J058FA50
(57)【要約】
【課題】軸線方向にコンパクトな構成を有するブレーキ付き減速機ユニットを得る。
【解決手段】ブレーキ付き減速機ユニット1は、回転軸線Pを中心として回転する入力軸11の回転を減速して、回転軸線Pを中心として出力軸12を回転させる減速機10と、入力軸11の回転を抑制するブレーキ20と、を備えている。ブレーキ20は、入力軸11と一体で回転する回転部材28と、回転軸線Pを中心として回転不能であり、且つ、回転部材28に接触して入力軸11の回転を抑制する第1位置と回転部材28に対して離間して入力軸11の回転を許容する第2位置とに移動可能である可動体21と、可動体21に対し、可動体21を前記第1位置と前記第2位置との間で回転軸線Pの軸線方向に移動させる駆動力を付与する電磁石25と、を有する。回転部材28、可動体21及び電磁石25の少なくとも一部は、減速機10の径方向外方に位置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線を中心として回転する入力軸の回転を減速して、前記回転軸線を中心として出力軸を回転させる減速機と、
前記入力軸の回転を抑制するブレーキと、
を備えているブレーキ付き減速機ユニットにおいて、
前記ブレーキは、
前記入力軸と一体で回転する回転部材と、
前記回転部材の回転を抑制する第1位置と前記回転部材の回転を許容する第2位置とに移動可能である可動体と、
前記可動体に対し、前記可動体を前記第1位置と前記第2位置との間で前記回転軸線の軸線方向に移動させる駆動力を付与する駆動部と、
を有し、
前記回転部材、前記可動体及び前記駆動部の少なくとも一部は、前記減速機の径方向外方に位置する、ブレーキ付き減速機ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ付き減速機ユニットにおいて、
前記駆動部は、前記減速機の径方向外方に位置し、
前記回転部材及び前記可動体は、前記駆動部に対して前記入力軸側または前記出力軸側に前記回転軸線の軸線方向に並んでいる、ブレーキ付き減速機ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブレーキ付き減速機ユニットにおいて、
前記駆動部は、電流の流れる方向に応じて磁束を生じる電磁石を有し、
前記可動体は、前記電磁石により生じる磁束によって、前記第1位置及び前記第2位置の少なくとも一方の位置に位置付けられ、
前記電磁石の少なくとも一部は、前記減速機の径方向外方に位置する、ブレーキ付き減速機ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載のブレーキ付き減速機ユニットにおいて、
前記回転部材において前記可動体が接触する部分は、強磁性を有する強磁性体によって構成されていて、
前記可動体は、
永久磁石によって構成された可動体磁石を有し、
前記回転軸線を中心として回転不能であり、
前記電磁石により生じる磁束によって、前記可動体が前記回転部材に接触して前記回転部材の回転を抑制する前記第1位置と、前記可動体が前記回転部材に対して離間して前記回転部材の回転を許容する前記第2位置とに移動可能である、ブレーキ付き減速機ユニット。
【請求項5】
請求項3に記載のブレーキ付き減速機ユニットにおいて、
前記駆動部は、
前記電磁石と、
前記可動体に対して前記電磁石から離間する方向に弾性復元力を生じる弾性変形部材と、
を有し、
前記可動体は、
前記電磁石により生じる磁束によって、前記回転部材に対して離間した前記第2位置に移動可能であり、且つ、前記弾性変形部材の弾性復元力によって、前記回転部材の回転を抑制する前記第1位置に移動可能である、ブレーキ付き減速機ユニット。
【請求項6】
請求項3に記載のブレーキ付き減速機ユニットにおいて、
前記駆動部は、
前記電磁石と、
前記可動体に対して前記電磁石から離間する方向に弾性復元力を生じる弾性変形部材と、
前記可動体を前記電磁石に近づける方向に磁束を生じる磁石と、
を有し、
前記電磁石は、前記回転軸線を中心として回転不能であり、
前記可動体は、
前記電磁石により生じる磁束及び前記弾性変形部材の弾性復元力によって、前記第1位置または前記第2位置の一方に移動可能であり、且つ、前記磁石により生じる磁束によって、前記第1位置または前記第2位置の他方に移動可能である、ブレーキ付き減速機ユニット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載のブレーキ付き減速機ユニットにおいて、
前記減速機及び前記ブレーキを収容するケーシングをさらに備え、
前記減速機は、
前記ケーシングに固定され、内周側に内歯を有する環状の固定部と、
前記固定部の径方向内方に位置するとともに前記軸線方向の一方側が前記出力軸に接続され、且つ、外周側に前記内歯と噛み合う外歯を有する、可撓性の環状の外歯歯車と、
前記外歯歯車の径方向内方に前記入力軸と一体で回転可能に配置され、前記入力軸の回転によって、前記外歯歯車を径方向に変形させる楕円状のカムと、
を有する波動歯車減速機であり、
前記駆動部は、前記固定部に対して径方向外方に位置し、前記固定部に前記可動体に駆動力を生じさせる磁路の一部を形成するように構成されている、ブレーキ付き減速機ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機とブレーキとを備えているブレーキ付き減速機ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
減速機とブレーキとを備えているブレーキ付き減速機ユニットとして、例えば特許文献1に開示されるようなブレーキ付き減速機などが知られている。
【0003】
前記特許文献1に開示されているブレーキ付き減速機では、駆動モータの回転を減速して被駆動部材側へ出力する減速機構と、前記被駆動部材から加えられる逆入力トルクに対して機械的にロックし、前記駆動モータの停止時に前記被駆動部材の位置を保持するブレーキとしてのロック式の逆入力遮断機構とが、ユニット化されている。
【0004】
なお、前記特許文献1に開示されているブレーキ付き減速機では、前記減速機構及び前記逆入力遮断機構が入力軸の軸線方向に並んで配置されている。
【0005】
上述の構成により、前記減速機構及び前記逆入力遮断機構を別々に組み込んだ装置に比べて、組み立て作業の効率化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1の構成では、ブレーキ及び変速機が入力軸の軸線方向に並んで位置するため、ブレーキ付き減速機を軸線方向にコンパクトな構成にすることができない。
【0008】
ところで、近年、多関節ロボットアームの関節部分などに用いられる駆動装置として、モータ及び減速機が用いられている。このような駆動装置では、関節部分をコンパクトな構成にするために軸線方向にコンパクトな構成が求められている。
【0009】
本発明の目的は、軸線方向にコンパクトな構成を有するブレーキ付き減速機ユニットを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係るブレーキ付き減速機ユニットは、回転軸線を中心として回転する入力軸の回転を減速して、前記回転軸線を中心として出力軸を回転させる減速機と、前記入力軸の回転を抑制するブレーキと、を備えているブレーキ付き減速機ユニットである。前記ブレーキは、前記入力軸と一体で回転する回転部材と、前記回転部材の回転を抑制する第1位置と前記回転部材の回転を許容する第2位置とに移動可能である可動体と、前記可動体に対し、前記可動体を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させる駆動力を付与する駆動部と、を有する。前記回転部材、前記可動体及び前記駆動部の少なくとも一部が前記減速機の径方向外方に位置する(第1の構成)。
【0011】
上述の構成では、ブレーキを構成する、回転部材、可動体及び駆動部の少なくとも一部は、減速機の径方向外方に位置する。そのため、減速機及びブレーキを有するブレーキ付き減速機ユニットを、入力軸の軸線方向にコンパクトな構成にすることができる。したがって、前記軸線方向にコンパクトな構成を有するブレーキ付き減速機ユニットが得られる。
【0012】
前記第1の構成において、前記駆動部は、前記減速機の径方向外方に位置する。前記回転部材及び前記可動体は、前記駆動部に対して前記入力軸側または前記出力軸側に前記回転軸線の軸線方向に並んでいる(第2の構成)。
【0013】
これにより、可動体に駆動力を付与する駆動部を減速機の径方向外方に配置して、移動するスペースを必要とする前記可動体、及び、入力軸とともに回転するスペースを必要とする回転部材を、前記駆動部に対して回転軸線の軸線方向に配置することができる。よって、前記駆動部、前記可動体及び前記回転部材を、前記減速機に対してよりコンパクトに配置することができる。
【0014】
前記第1または第2の構成において、前記駆動部は、電流の流れる方向に応じて磁束を生じる電磁石を有する。前記可動体は、前記電磁石により生じる磁束によって、前記第1位置及び前記第2位置の少なくとも一方の位置に位置付けられている。前記電磁石の少なくとも一部は、前記減速機の径方向外方に位置する(第3の構成)。
【0015】
これにより、比較的サイズが大きい電磁石を、減速機の径方向外方に配置できるため、電磁石によって作動するブレーキを有するブレーキ付き減速機ユニットを、入力軸の軸線方向にコンパクトな構成にすることができる。したがって、前記軸線方向にコンパクトな構成を有するブレーキ付き減速機ユニットが得られる。
【0016】
前記第3の構成において、前記回転部材において前記可動体が接触する部分は、強磁性を有する強磁性体によって構成されている。前記可動体は、永久磁石によって構成された可動体磁石を有し、前記回転軸線を中心として回転不能であり、前記電磁石により生じる磁束によって、前記可動体が前記回転部材に接触して前記回転部材の回転を抑制する前記第1位置と、前記可動体が前記回転部材に対して離間して前記回転部材の回転を許容する前記第2位置とに移動可能である(第4の構成)。
【0017】
このように、電磁石により生じる磁束によって、可動体磁石を有する可動体が強磁性体によって構成された回転部材に吸着する第1位置と前記電磁石に近い第2位置とに移動するブレーキでは、前記電磁石の少なくとも一部を減速機の径方向外方に配置することによって、軸線方向にコンパクトな構成を有するブレーキ付き減速機ユニットを実現することができる。
【0018】
前記第3の構成において、前記駆動部は、前記電磁石と、前記可動体に対して前記電磁石から離間する方向に弾性復元力を生じる弾性変形部材と、を有する。前記可動体は、前記電磁石により生じる磁束によって、前記回転部材に対して離間した前記第2位置に移動可能であり、且つ、前記弾性変形部材の弾性復元力によって、前記回転部材の回転を抑制する前記第1位置に移動可能である(第5の構成)。
【0019】
このように、可動体が、電磁石により生じる磁束によって、前記回転部材に対して離間した第2位置に移動可能であり、且つ、弾性変形部材の弾性復元力によって、前記回転部材の回転を抑制する第1位置に移動可能である、ブレーキでも、前記電磁石の少なくとも一部を減速機の径方向外方に配置することによって、軸線方向にコンパクトな構成を有するブレーキ付き減速機ユニットを実現することができる。
【0020】
前記第3の構成において、前記駆動部は、前記電磁石と、前記可動体に対して前記電磁石から離間する方向に弾性復元力を生じる弾性変形部材と、前記可動体を前記電磁石に近づける方向に磁束を生じる磁石と、を有する。前記可動体は、前記電磁石により生じる磁束及び前記弾性変形部材の弾性復元力によって、前記第1位置または前記第2位置の一方に移動可能であり、且つ、前記磁石により生じる磁束によって、前記第1位置または前記第2位置の他方に移動可能である(第6の構成)。
【0021】
このように、可動体が、電磁石により生じる磁束及び弾性変形部材の弾性復元力によって、第1位置または第2位置の一方に移動可能であり、且つ、磁石により生じる磁束によって、前記第1位置または前記第2位置の他方に移動可能である、ブレーキでも、前記電磁石の少なくとも一部を減速機の径方向外方に配置することによって、軸線方向にコンパクトな構成を有するブレーキ付き減速機ユニットを実現することができる。
【0022】
前記第1から第6の構成のうちいずれか一つの構成において、ブレーキ付き減速機ユニットは、前記減速機及び前記ブレーキを収容するケーシングをさらに備える。前記減速機は、前記ケーシングに固定され、内周側に内歯を有する環状の固定部と、前記固定部の径方向内方に位置するとともに前記軸線方向の一方側が前記出力軸に接続され、且つ、外周側に前記内歯と噛み合う外歯を有する、可撓性の環状の外歯歯車と、前記外歯歯車の径方向内方に前記入力軸と一体で回転可能に配置され、前記入力軸の回転によって、前記外歯歯車を径方向に変形させる楕円状のカムと、を有する波動歯車減速機である。前記駆動部は、前記波動歯車減速機の前記固定部に対して径方向外方に位置し、前記固定部に前記可動体に駆動力を生じさせる磁路の一部を形成するように構成されている(第7の構成)。
【0023】
これにより、波動歯車減速機とブレーキとが軸線方向にコンパクトに配置されたブレーキ付き減速機ユニットを実現できる。すなわち、前記波動歯車減速機の径方向の最も外方に位置する固定部に対し、ブレーキの駆動部は径方向外方に位置するため、前記波動歯車減速機と前記ブレーキとを軸線方向に重なるように配置できる。よって、軸線方向にコンパクトな構成を有するブレーキ付き減速機ユニットを実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一実施形態に係るブレーキ付き減速機ユニットにおいて、ブレーキは、入力軸と一体で回転する回転部材と、前記回転部材の回転を抑制する第1位置と前記回転部材の回転を許容する第2位置とに移動可能である可動体と、前記可動体に対し、前記可動体を前記第1位置と前記第2位置との間で前記回転軸線の軸線方向に移動させる駆動力を付与する駆動部と、を有する。前記回転部材、前記可動体及び前記駆動部の少なくとも一部は、前記減速機の径方向外方に位置する。
【0025】
これにより、減速機及びブレーキを軸線方向にコンパクトに配置できる。よって、軸線方向にコンパクトな構成を有するブレーキ付き減速機ユニットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るブレーキ付き減速機ユニットの概略構成を示す部分拡大断面図である。
【
図2】
図2は、ブレーキの可動体が第2位置から第1位置に移動する様子を示す
図1相当図である。
【
図3】
図3は、ブレーキの可動体が第1位置に位置している状態を示す
図2相当図である。
【
図4】
図4は、ブレーキの可動体が第1位置から第2位置に移動する様子を示す
図2相当図である。
【
図5】
図5は、ブレーキの可動体が第2位置に位置している状態を示す
図2相当図である。
【
図6】
図6は、実施形態1の変形例1に係るブレーキ付き減速機ユニットの概略構成を示す部分拡大断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態1の変形例2に係るブレーキ付き減速機ユニットの概略構成を示す部分拡大断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態2に係るブレーキ付き減速機ユニットの概略構成を示す部分拡大断面図である。
【
図9】
図9は、その他の実施形態に係るブレーキ付き減速機ユニットにおいて、ブレーキの可動体が第2位置に位置している状態を示す部分拡大断面図である。
【
図10】
図10は、その他の実施形態に係るブレーキ付き減速機ユニットにおいて、ブレーキの可動体が第1位置に位置している状態を示す部分拡大断面図である。
【
図11】
図11は、その他の実施形態に係るブレーキ付き減速機ユニットにおいて、ブレーキの可動体が第1位置に位置している状態を示す部分拡大断面図である。
【
図12】
図12は、その他の実施形態に係るブレーキ付き減速機ユニットにおいて、ブレーキの可動体が第2位置に位置している状態を示す部分拡大断面図である。
【
図13】
図13は、その他の実施形態に係るブレーキ付き減速機ユニットにおいて、ブレーキの可動体が第2位置に位置している状態を示す部分拡大断面図である。
【
図14】
図14は、その他の実施形態に係るブレーキ付き減速機ユニットにおいて、ブレーキの可動体が第1位置に位置している状態を示す部分拡大断面図である。
【
図15】
図15は、その他の実施形態に係るブレーキ付き減速機ユニットにおいて、ブレーキの可動体が第1位置に位置している状態を示す部分拡大断面図である。
【
図16】
図16は、その他の実施形態に係るブレーキ付き減速機ユニットにおいて、ブレーキの可動体が第2位置に位置している状態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。なお、以下の説明において、「径方向」は、減速機10の径方向を意味し、「軸線方向」は、減速機10の入力軸11の回転軸線Pが延びる方向を意味する。
【0028】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るブレーキ付き減速機ユニット1の概略構成を示す断面図である。
図1は、ブレーキ付き減速機ユニット1を、入力軸11の回転軸線Pを含む面で切断し、その一部を拡大して示した拡大断面図である。
【0029】
ブレーキ付き減速機ユニット1は、減速機10と、ブレーキ20と、ケーシング30とを有する。ブレーキ付き減速機ユニット1では、減速機10及びブレーキ20は、回転軸線Pの軸線方向に並んだ状態でケーシング30内に収容されている。ブレーキ付き減速機ユニット1は、例えば、多関節ロボットアームの関節部分などに用いられる。
【0030】
減速機10は、入力軸11と、出力軸12と、固定部13と、外歯歯車14と、カム15と、可撓性軸受16と、第1軸受17と、第2軸受18とを有する。入力軸11は、図示しないモータなどの駆動源の出力軸に連結されている。入力軸11は、第1軸受17によって回転可能に支持されている。
【0031】
カム15は、前記軸線方向から見て楕円状の外形を有する円環状部材である。カム15は、その厚み方向が前記軸線方向と一致するように、入力軸11の外周面上に嵌合されている。なお、入力軸11に対するカム15の固定方法は、溶接であってもよいし、接着やボルト締めであってもよい。また、入力軸及びカムは、一体で形成されていてもよい。
【0032】
カム15の一部は、前記軸線方向に延びている。カム15において軸線方向に延びた部分の外周面上には、回転部材28が固定されている。これにより、回転部材28は、入力軸11と一体で回転する。
【0033】
回転部材28は、円盤状の回転基部28aと、円盤状の接触部28bとを有する。回転基部28aは、非磁性体によって構成されている。接触部28bは、回転部材28において後述するブレーキ20の可動体21が接触する部分であり、強磁性を有する強磁性体によって構成されている。回転基部28aの内周側は、カム15において軸線方向に延びた部分の外周面に接続されている。回転基部28aの外周側には、接触部28bの内周側が接続されている。
【0034】
接触部28bは、回転基部28aよりも径方向外方に位置する。接触部28bは、ブレーキ20の可動体21側に位置する部分に、可動体21が接触した際に入力軸11の回転を抑制可能な高摩擦係数の面を有する。接触部28bは、例えばディスクブレーキである。
【0035】
なお、回転基部及び接触部は、一体で形成されていてもよい。
【0036】
カム15を囲むように、有底円筒状の外歯歯車14及び円環状の固定部13が配置されている。すなわち、カム15の径方向外方には、外歯歯車14が位置し、外歯歯車14の径方向外方には固定部13が位置している。固定部13の内周面には、複数の内歯が周方向に一定のピッチで形成されている。前記内歯は、前記軸線方向における固定部13の内周面に、前記軸線方向に延びるように形成されている。固定部13は、強磁性を有する強磁性体によって構成されている。
【0037】
前記軸線方向から見て、カム15と外歯歯車14との間には、カム15と外歯歯車14とを相対回転可能に支持する可撓性軸受16が配置されている。可撓性軸受16は、カム15と外歯歯車14との間に配置され、カム15の回転に応じてカム15の径方向に変形可能である。これにより、楕円状のカム15が回転した際に、カム15の長軸方向の端部が可撓性軸受16を介して外歯歯車14の内周側を径方向外方に向かって押圧する。
【0038】
外歯歯車14は、可撓性を有する薄板によって構成された有底円筒状の部材である。具体的には、外歯歯車14は、カム15を径方向外方から覆う円筒部14aと、円筒部14aにおける前記軸線方向の一方側に、径方向内方に向かって延びる底部14bとを有する。
【0039】
円筒部14aには、外周面(外周側)のうちカム15の径方向外方の位置に、複数の外歯が周方向に一定のピッチで形成されている。前記外歯は、前記軸線方向における円筒部14aの他方側の外周面に、前記軸線方向に延びるように形成されている。円筒部14aは、その内周面がカム15の外周に配置された可撓性軸受16に接触している。
【0040】
これにより、楕円状のカム15が回転することにより、楕円状のカム15における長軸方向の端部が、可撓性軸受16を介して、円筒部14aに径方向に変形を生じさせる。このように、楕円状のカム15が回転することにより、外歯歯車14の外歯に対して径方向に波動を与えることができる。
【0041】
底部14bは、前記軸線方向から見て円環状である。底部14bには、出力軸12が連結されている。底部14bは、前記軸線方向において、入力軸11とは反対側に、出力軸12が連結されている。出力軸12の外周面上には、円筒状の出力軸支持部19の内面が接続されている。出力軸支持部19は、第2軸受18によって回転可能に支持されている。
【0042】
ブレーキ20は、回転軸線Pを中心として回転する入力軸11の回転を抑制する。ブレーキ20は、可動体21と、ブレーキコイル26と、ブレーキヨーク27と、回転部材28とを有する。ブレーキコイル26がブレーキヨーク27に巻回されることにより、ブレーキ20の電磁石25を構成する。可動体21は、例えばアーマチュアである。ブレーキ20の電磁石25は、例えばフィールドである。
【0043】
ブレーキ20では、ブレーキコイル26が生じる磁束によって可動体21の位置を制御することで、減速機10の入力軸11の回転を抑制したり許容したりする。すなわち、可動体21は、回転部材28に接触して入力軸11の回転を抑制する第1位置(
図3に示す位置)と、回転部材28に対して離間して入力軸11の回転を許容する第2位置(
図1に示す位置)とに移動可能である。
【0044】
可動体21は、前記第1位置では、回転部材28に接触して回転部材28との間で摩擦力を生じる。また、可動体21は、前記第2位置では、電磁石25に接触する。可動体21は、回転部材28とともに、前記軸線方向において、電磁石25よりも入力軸11側に位置する。なお、前記第2位置は、可動体21が電磁石25に接触する位置ではなく、ブレーキコイル27に流す電流を止めても可動体21の磁石22の磁力により定位置に保持することができれば、回転部材28よりも電磁石25に近い位置であってもよい。
【0045】
可動体21は、可動体磁石22と、保持部23とを有する。可動体磁石22は、円環状の永久磁石である。保持部23は、可動体磁石22の内周側に位置する円環状の内側保持部23aと、可動体磁石22の外周側に位置する円環状の外側保持部23bとを有する。可動体磁石22は、保持部23の内側保持部23a及び外側保持部23bによって径方向に挟み込まれた状態で接着等されることにより、保持されている。内側保持部23aは、例えばインナープレートである。外側保持部23bは、例えばアウタープレートである。
【0046】
保持部23は、鉄、コバルト、ニッケルなどの元素を含む強磁性体によって構成されている。可動体磁石22は、ネオジウム磁石やフェライト磁石などの永久磁石である。可動体磁石22の着磁方向は、径方向内方から径方向外方に向かう方向である。保持部23は、可動体磁石22で生じる磁力を強める機能を果たす。
【0047】
上述の構成により、可動体21の周りには、例えば
図2に破線で示すようにループ状の磁束が形成されている。可動体磁石22及び保持部23の少なくとも一方は、可動体21の周りに生じる磁束を強化するような形状または構成を有していてもよい。
【0048】
保持部23の外側保持部23bの外周面上には、一対の係止部24が設けられている。一対の係止部24は、外側保持部23bの外周面における径方向の反対側に位置し、それぞれ、前記軸線方向に延びている。保持部23の外側保持部23b及び一対の係止部24は、別部材であってもよいし、一体に形成されていてもよい。
【0049】
一対の係止部24において保持部23の径方向外方に位置する部分は、ケーシング30の内周面における径方向の反対側にそれぞれ設けられた一対のキー溝(図示省略)内に位置する。一対のキー溝は、それぞれ、係止部24が軸線方向に移動可能なように、軸線方向に延びている。
【0050】
これにより、可動体21は、一対の係止部24がケーシング30の一対のキー溝に沿って移動するように、軸線方向に移動可能である。一方、一対の係止部24は一対のキー溝内で周方向の移動を規制されるため、可動体21は回転軸線Pを中心として回転しない。
【0051】
よって、可動体21が第1位置に位置する状態で回転部材28と接触することにより、回転部材28の回転を、可動体21と回転部材28との摩擦力、及び、一対の係止部24とキー溝との係合によって、抑制することができる。
【0052】
なお、保持部23の一部が、回転部材28に向かって前記軸線方向に突出していてもよい。この場合には、可動体21が前記第1位置に位置する状態で、保持部23の前記一部が回転部材28に接触する。
【0053】
これにより、可動体21が前記第1位置で回転部材28に接触する際に、可動体磁石22が回転部材28に接触して損傷を受けるのを防止できる。
【0054】
ブレーキヨーク27は、ケーシング30の内周面上に固定された円筒状の部材である。ブレーキヨーク27は、鉄、コバルト、ニッケルなどの元素を含む強磁性体によって構成されている。よって、ブレーキヨーク27は、ブレーキコイル26に電流を流した際に生じる磁束の磁路の一部を構成する。ブレーキヨーク27の内周側は、第2軸受18を支持している。
【0055】
ブレーキコイル26は、ブレーキヨーク27の可動体21側に、巻回されている。ブレーキコイル26は、減速機10の固定部13に対して径方向外方に位置する。減速機10の固定部13は、ブレーキコイル26の径方向内方に位置するため、後述するようにブレーキコイル26に電流を流した際に発生する磁束の磁路の一部を構成する。これにより、減速機10に対してブレーキ20を前記軸線方向にコンパクトに配置できる。
【0056】
なお、ブレーキ20のうち減速機10の固定部13に対して径方向外方に位置する部分は、回転部材28、可動体21及び電磁石25の少なくとも一部であってもよい。
【0057】
ブレーキコイル26に対する通電は、図示しないブレーキ駆動制御部によって制御される。ブレーキコイル26には、
図1の紙面表側から紙面裏側に向かって、または、
図1の紙面裏側から紙面表側に向かって、電流が流れる。ブレーキコイル26に対して電流を流す方向を切り替えることにより、例えば
図2及び
図4に示すように、ブレーキコイル26によって生じる磁束の向きを切り替えることができる。
図2から
図5は、それぞれ、ブレーキ20の動作を説明するための部分拡大断面図である。
【0058】
詳しくは後述するように、ブレーキコイル26に流れる電流の方向を切り替えてブレーキコイル26によって生じる磁束の向きを切り替えることにより、可動体21を、回転部材28に接触する第1位置(
図3に示す位置)と、ブレーキヨーク27に接触する第2位置(
図5に示す位置)とに移動させることができる。可動体21を回転部材28に接触させることにより、可動体21と回転部材28との摩擦力、及び、一対の係止部24とキー溝との係合によって、入力軸11の回転を抑制することができる。
【0059】
詳しくは後述するように、可動体21は、電磁石25及び可動体磁石22によって、前記第1位置と前記第2位置とに移動する。したがって、電磁石25及び可動体磁石22が本発明の駆動部20aとして機能する。
【0060】
次に、
図1から
図5を用いて、上述の構成を有するブレーキ20の動作について説明する。以下の説明では、可動体21がブレーキコイル26に近い位置に位置している状態(
図1に示す状態)を、可動体21の初期状態とする。なお、ブレーキ20の作動開始時に、入力軸11は、停止していてもよいし回転していてもよい。
【0061】
ブレーキ20をブレーキ作動状態にする場合には、ブレーキコイル26に紙面奥から紙面手前に向かって電流を流す。
図1に示すように、可動体21が電磁石25に接触した状態において、ブレーキコイル26に紙面奥から紙面手前に向かって電流を流した場合、ブレーキコイル26の周りに一点鎖線で示すような磁束が生じる。この場合の磁束の向きは、可動体21の可動体磁石22により生じる磁束の強さを弱める方向である。そのため、可動体21と電磁石25との間に生じる吸引力は弱まる。これにより、可動体21の可動体磁石22の磁束によって可動体21と回転部材28との間に生じる吸引力は、可動体21と電磁石25との間に生じる吸引力に比べて強くなる。
【0062】
その結果、
図2に示すように、可動体21は、回転部材28に引き寄せられるため、回転部材28に向かって軸線方向に移動する(白抜き矢印参照)。このとき、可動体21の係止部24は、ケーシング30のキー溝に沿って軸線方向に移動する。
【0063】
図3に示すように、可動体21は、可動体21の可動体磁石22の磁束によって生じる吸引力によって回転部材28に吸着する。保持部23は、係止部24によって回転軸線Pを中心とした回転方向の変位が規制される。回転部材28の回転は、可動体21と回転部材28との摩擦力、及び、一対の係止部24とキー溝との係合によって、抑制される。したがって、回転軸線Pを中心とする入力軸11の回転は抑制される。
【0064】
なお、可動体21が回転部材28に吸着した状態では、ブレーキコイル26に流す電流を止めてもよいし、可動体21と回転部材28との吸着状態を維持できる程度に、
図1及び
図2に示す磁束が生じるような電流をブレーキコイル26に流してもよい。
図3に示す状態において、ブレーキコイル26に流す電流を止めた場合でも、可動体21は、可動体磁石22の磁力によって、回転部材28に吸着した状態で保持される。このように、
図3に示す状態において、ブレーキコイル26に流す電流を止めることで、ブレーキコイル26に流す電力量を低減できるため、ブレーキ20の駆動制御において省電力化を図れるとともに、ブレーキコイル26の温度上昇を抑制できる。
【0065】
ブレーキ20をブレーキ解除状態にする際には、ブレーキコイル26に紙面手前から紙面奥に向かって電流を流す。
図4に示すように、可動体21が回転部材28に接触した状態において、ブレーキコイル26に紙面手前から紙面奥に向かって電流を流した場合、ブレーキコイル26に一点鎖線で示すような磁束が生じる。この場合の磁束の向きは、可動体21の可動体磁石22により生じる磁束の強さを強める方向である。そのため、可動体21と電磁石25とは互いに吸引する方向に力を受ける。これにより、可動体21と電磁石25との間で生じる吸引力は、可動体21と回転部材28との間で生じる吸引力に比べて強くなる。
【0066】
その結果、
図4に示すように、可動体21は、電磁石25に引き寄せられるため、電磁石25に向かって軸線方向に移動する(白抜き矢印参照)。このとき、可動体21の係止部24は、ケーシング30のキー溝に沿って軸線方向に移動する。
【0067】
可動体21は、
図5に示すように、可動体磁石22及びブレーキコイル26の各磁束によって生じる吸引力によって、電磁石25に吸着する。
【0068】
なお、可動体21が電磁石25に吸着した状態では、ブレーキコイル26に流す電流を止めてもよいし、可動体21と電磁石25との吸着状態を維持できる程度に、
図4及び
図5に示す磁束が生じるような電流をブレーキコイル26に流してもよい。
図5に示す状態において、ブレーキコイル26に流す電流を止めた場合でも、可動体21は、可動体磁石22の磁力によって、電磁石25に吸着した状態で保持される。このように、
図5に示す状態において、ブレーキコイル26に流す電流を止めることで、ブレーキコイル26に流す電力量を低減できるため、ブレーキ20の駆動制御において省電力化を図れるとともに、ブレーキコイル26の温度上昇を抑制できる。
【0069】
本実施形態では、ブレーキ付き減速機ユニット1は、回転軸線Pを中心として回転する入力軸11の回転を減速して、回転軸線Pを中心として出力軸12を回転させる減速機10と、入力軸11の回転を抑制するブレーキ20と、を備えている。ブレーキ20は、入力軸11と一体で回転する回転部材28と、回転軸線Pを中心として回転不能であり、且つ、回転部材28に接触して入力軸11の回転を抑制する第1位置と回転部材28に対して離間して入力軸11の回転を許容する第2位置とに移動可能である可動体21と、可動体21に対し、可動体21を前記第1位置と前記第2位置との間で回転軸線Pの軸線方向に移動させる駆動力を付与する電磁石25と、を有する。回転部材28、可動体21及び電磁石25の少なくとも一部は、減速機10の径方向外方に位置する。
【0070】
上述の構成では、ブレーキ20を構成する回転部材28、可動体21及び電磁石25の少なくとも一部は、減速機10の径方向外方に位置する。そのため、減速機10及びブレーキ20を有するブレーキ付き減速機ユニット1を、入力軸11の軸線方向にコンパクトな構成にすることができる。したがって、前記軸線方向にコンパクトな構成を有するブレーキ付き減速機ユニット1が得られる。
【0071】
本実施形態では、回転部材28において可動体21が接触する部分は、強磁性を有する強磁性体によって構成されている。可動体21は、永久磁石によって構成された可動体磁石22を有する。可動体21は、ブレーキコイル26により生じる磁束によって、回転部材28に接触する前記第1位置と電磁石25に接触する前記第2位置とに移動可能である。
【0072】
このように、ブレーキコイル26により生じる磁束によって、磁石22を有する可動体21が強磁性体によって構成された回転部材28の接触部28bに吸着する第1位置と電磁石25に吸着する第2位置とに移動するブレーキ20では、ブレーキコイル26の少なくとも一部を減速機20の径方向外方に位置付けることによって、軸線方向にコンパクトな構成を有するブレーキ付き減速機ユニット1を実現することができる。
【0073】
本実施形態では、電磁石25は、ブレーキコイル26と、ブレーキコイル26を保持し且つブレーキコイル26によって生じる磁束の磁路の一部を構成するブレーキヨーク27とをさらに有する。減速機10の一部は、ブレーキヨーク27とともに前記磁路の一部を構成する。
【0074】
これにより、ブレーキコイル26によって生じる磁束の磁路の一部を、ブレーキヨーク27及び減速機10の一部によって構成することができる。よって、コンパクトな構成を有するブレーキ付き減速機ユニット1を実現することができる。
【0075】
しかも、上述の構成により、個別にユニット化されたブレーキと減速機とを組み合わせる場合に比べて、減速機10及びブレーキ20のそれぞれの部品点数を少なくすることができるとともに、減速機10及びブレーキ20でそれぞれ組立公差を管理する必要がないため、ブレーキ付き減速機ユニット1の生産性を向上することができる。
【0076】
本実施形態では、ブレーキ付き減速機ユニット1は、減速機10及びブレーキ20を収容するケーシング30をさらに備える。減速機10は、ケーシング30に固定され、内周側に内歯を有する環状の固定部13と、固定部13の径方向内方に位置するとともに前記軸線方向の一方側が出力軸12に接続され、且つ、外周側に前記内歯と噛み合う外歯を有する、可撓性の環状の外歯歯車14と、外歯歯車14の径方向内方に入力軸11と一体で回転可能に配置され、入力軸11の回転によって、外歯歯車14を径方向に変形させる楕円状のカム15と、を有する波動歯車減速機である。電磁石25は、前記波動歯車減速機の固定部13に対して径方向外方に位置し、固定部13に可動体21に駆動力を生じさせる磁路の一部を形成するように構成されている。
【0077】
これにより、波動歯車減速機である減速機10とブレーキ20とが軸線方向にコンパクトに配置されたブレーキ付き減速機ユニット1を実現できる。すなわち、減速機10において、径方向の最も外方に位置する固定部13に対し、ブレーキ20の電磁石25は径方向外方に位置するため、減速機10とブレーキ20とを軸線方向に重なるように配置できる。よって、軸線方向にコンパクトな構成を有するブレーキ付き減速機ユニット1を実現することができる。
【0078】
本実施形態では、回転部材28及び可動体21は、前記軸線方向において、減速機10の固定部13よりも入力軸11側に位置する。これにより、入力軸11とともに回転するスペースを必要とする回転部材28と、移動するスペースを必要とする可動体21とを、波動歯車減速機である減速機10において径方向のスペースの余裕が大きい入力軸11側に配置できる。よって、減速機10に対して回転部材28及び可動体21を径方向にコンパクトに配置することができる。したがって、減速機10として波動歯車減速機を用いたブレーキ付き減速機ユニット1において、よりコンパクトな構成を実現することができる。
【0079】
本実施形態では、駆動部20aは、電流の流れる方向に応じて磁束を生じる電磁石25を有する。可動体21は、電磁石25により生じる磁束によって、前記第1位置及び前記第2位置の少なくとも一方の位置に位置付けられる。電磁石25の少なくとも一部は、減速機10の径方向外方に位置する。
【0080】
これにより、比較的サイズが大きい電磁石25を、減速機10の径方向外方に配置できるため、電磁石25によって作動するブレーキ20を有するブレーキ付き減速機ユニット1を、入力軸11の軸線方向にコンパクトな構成にすることができる。したがって、前記軸線方向にコンパクトな構成を有するブレーキ付き減速機ユニット1が得られる。
【0081】
(実施形態1の変形例1)
上述の実施形態1では、減速機10の固定部13の径方向外方にブレーキコイル26が位置する。しかしながら、減速機の固定部の径方向外方に、ブレーキの他の部材も位置していてもよい。
図6は、実施形態1の変形例1の概略構成を示す図である。以下の説明において、実施形態1の構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0082】
図6に示すように、減速機110の固定部113は、断面L字状になるようなフランジ部113aを有する円環部材であり、非磁性体によって構成されている。フランジ部113aは、軸線方向において固定部113の出力軸12側に位置する。固定部113の外周面上には、電磁石125が固定されている。すなわち、固定部113の径方向外方には、電磁石125が位置している。また、固定部113の径方向外方で、且つ、軸線方向において電磁石125よりも入力軸11側には、可動体21が位置する。このように、固定部113の径方向外方には、電磁石125及び可動体21が位置する。
【0083】
固定部113は、アダプタ131を介して、ケーシング130に固定されている。固定部113の内周面の一部には、内歯が設けられている。
【0084】
可動体21は、電磁石125に対して、軸線方向の入力軸11側に位置する。電磁石125は、ブレーキコイル126と、C字状の断面を有するブレーキヨーク127とを有する。ブレーキ120の駆動部120aは、電磁石125と、可動体磁石22とを有する。
【0085】
回転部材128は、円盤状の部材である。本実施形態の回転部材128は、一体の部材だが、実施形態1の回転部材28のように、複数の部材に分かれていてもよい。回転部材128は、カム115の外周面上に接続されている。これにより、回転部材128は、カム115と一体で回転する。カム115は、図示しない入力軸に接続されている。
【0086】
この変形例では、減速機110の固定部113の径方向外方に、ブレーキ120の電磁石125及び可動体21が位置する。これにより、減速機110及びブレーキ120を軸線方向によりコンパクトに配置できる。したがって、軸線方向によりコンパクトなブレーキ付き減速機ユニット100が得られる。
【0087】
なお、上述の実施形態1では、ブレーキ付き減速機ユニット1の減速機10の固定部13が、ブレーキ20のブレーキコイル26によって形成される磁束の磁路の一部を構成している。しかしながら、本変形例では、減速機110の固定部113がブレーキコイル126によって形成される磁束の磁路の一部を構成しない。
【0088】
本変形例では、係止部24は、可動体21の保持部23における外側保持部23bの外周面上に設けられている。係止部24において保持部23の径方向外方に位置する部分は、ケーシング30の内周面に設けられたキー溝(図示省略)内に位置する。しかしながら、係止部材は、可動体の保持部における内側保持部の内周面上に設けられていてもよい。この場合には、係止部において保持部の径方向内方に位置する部分は、固定部113の外周面に設けられたキー溝(図示省略)内に位置する。
【0089】
(実施形態1の変形例2)
上述の実施形態1及び変形例1では、軸線方向においてブレーキコイルの入力軸側に可動体が位置する。しかしながら、軸線方向においてブレーキコイルの出力軸側に可動体が位置してもよい。
図7は、実施形態1の変形例2の概略構成を示す図である。以下の説明において、実施形態1の構成と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0090】
図7に示すように、減速機210の固定部213は、断面L字状になるようなフランジ部213aを有する円環部材であり、非磁性体によって構成されている。フランジ部213aは、軸線方向において固定部213の入力軸側に位置する。固定部213の外周面上には、電磁石225が固定されている。すなわち、固定部213の径方向外方には、電磁石225が位置している。
【0091】
また、固定部213の径方向外方で、且つ、軸線方向において電磁石225よりも出力軸12側には、可動体21及び回転部材228の接触部228bが位置する。このように、固定部213の径方向外方には、電磁石225、可動体21及び回転部材228の接触部228bが位置する。本変形例では、電磁石225、可動体21及び回転部材の接触部228bは、この順番で、軸線方向に入力軸11から出力軸12に向かって並んでいる。
【0092】
固定部213は、アダプタ131に固定されている。アダプタ131は、ケーシング230に接続されている。固定部213の内周面の一部には、内歯が設けられている。
【0093】
回転部材228は、断面L字状の回転基部228aと、円盤状の接触部228bとを有する。回転基部228aの内周側は、カム115において軸線方向に延びた部分の外周面に接続されている。回転基部228aは、軸線方向の出力軸12側に折曲したL字状の断面を有する有底円筒状の部材であり、非磁性体によって構成されている。接触部228bは、回転部材228において可動体21が接触する部分であり、強磁性を有する強磁性体によって構成されている。接触部228bは、回転基部228aの出力軸12側の端部に、径方向内方に向かって延びるように、接続されている。なお、カム115は、図示しない入力軸に接続されている。
【0094】
この変形例も、減速機210の固定部213の径方向外方に、ブレーキ220の電磁石225、可動体21及び回転部材228の接触部228bが位置する。よって、減速機210及びブレーキ220を軸線方向によりコンパクトに配置できる。したがって、軸線方向によりコンパクトなブレーキ付き減速機ユニット200が得られる。
【0095】
しかも、本変形例では、回転部材28及び可動体21は、電磁石25に対して出力軸12側に回転軸線Pの軸線方向に並んでいる。
【0096】
これにより、可動体21に駆動力を付与する電磁石225を減速機210の径方向外方に配置して、移動するスペースを必要とする可動体21及び入力軸とともに回転するスペースを必要とする回転部材228を、電磁石225に対して回転軸線Pの軸線方向に配置することができる。よって、電磁石225、可動体21及び回転部材228を、減速機10に対して軸線方向にコンパクトに配置することができる。
【0097】
なお、本変形例のブレーキ220の駆動部220aは、電磁石225と、可動体磁石22とを有する。
【0098】
(実施形態2)
図8は、実施形態2に係るブレーキ付き減速機ユニット300の概略構成を示す断面図である。この実施形態の構成は、減速機が遊星歯車減速機である点で、実施形態1の構成と異なる。以下では、実施形態1の構成と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1の構成と異なる部分についてのみ説明する。
【0099】
ブレーキ付き減速機ユニット300は、遊星歯車減速機である減速機310を有する。減速機310は、太陽歯車311と、その周囲に配置された複数の遊星歯車312と、複数の遊星歯車312と噛み合う内歯車313と、キャリア314とを有する。
【0100】
太陽歯車311及び複数の遊星歯車312は、円環状の内歯車313の径方向内方に位置する。すなわち、太陽歯車311と複数の遊星歯車312とは、内歯車313の径方向内方で噛み合っている。複数の遊星歯車312は、太陽歯車311及び内歯車313に噛み合うことで、太陽歯車311の周りを自転しつつ公転する。
【0101】
キャリア314は、複数の遊星歯車312をその回転軸の軸線方向に挟み込み且つ複数の遊星歯車312とともに太陽歯車311の回転軸を中心として回転する一対の板状の部材を有する。キャリア314は、太陽歯車311に対する複数の遊星歯車312の公転を、太陽歯車311の回転軸を中心とした回転として出力する。
【0102】
遊星歯車減速機の構成は、従来の構成と同様である。よって、減速機310の構成の詳しい説明は省略する。
【0103】
ブレーキ320は、可動体21と、ブレーキコイル326と、ブレーキヨーク327と、回転部材328とを有する。ブレーキコイル326がブレーキヨーク327に巻回されることにより、ブレーキ320の電磁石325を構成する。回転部材328は、入力軸301の外周面上に固定されている。本実施形態では、回転部材328は、一体の部材であるが、複数の部材によって構成されていてもよい。入力軸301は、モータの出力軸などに連結されている。本実施形態のブレーキ320の駆動部320aは、電磁石325と、可動体磁石22とを有する。
【0104】
ケーシング330は、ブレーキヨーク327に固定されている。ブレーキヨーク327には、減速機310の内歯車313が固定されている。軸線方向においてブレーキヨーク327の可動体21側には、ブレーキコイル326が巻回されている。ブレーキコイル326は、内歯車313の径方向外方に位置する。内歯車313は、例えば強磁性を有する強磁性体によって構成されている。これにより、内歯車313は、ブレーキヨーク327とともに、ブレーキコイル326によって形成される磁束の磁路の一部を構成する。
【0105】
本実施形態の構成により、遊星歯車減速機である減速機310及びブレーキ320を軸線方向にコンパクトに配置できる。したがって、軸線方向にコンパクトなブレーキ付き減速機ユニット300が得られる。
【0106】
なお、
図8に示す例では、可動体21の一部も、減速機310の径方向外方に位置する。これにより、減速機310及びブレーキ320を軸線方向によりコンパクトに配置できる。なお、可動体の一部は、
図8に示すように減速機の径方向外方に位置していなくてもよい。
【0107】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0108】
前記実施形態1では、減速機10は、波動歯車減速機である。前記実施形態2では、減速機310は、遊星歯車減速機である。しかしながら、減速機は、径方向外方に固定部(非回転部)を有する構成であれば、どのような種類の減速機であってもよい。
【0109】
前記各実施形態では、ブレーキ20,120,220,320は、可動体21の可動体磁石22と電磁石25,125,225,325との磁力の関係を利用して、可動体21を、回転部材28、128,228,328の回転を抑制する第1位置と、回転部材28、128,228,328から離間させる第2位置とに移動させる。しかしながら、ブレーキは、減速機の入力軸の回転抑制可能な状態と、前記入力軸の回転を許容する状態とに切り替え可能な構成を有していれば、どのような構成を有するブレーキであってもよい。例えば、ブレーキの駆動部は、電磁石以外であってもよい。
【0110】
ブレーキは、例えば
図9及び
図10に示すように、スプリング429(弾性変形部材)を有していてもよい。スプリング429は、
図10に示すように、電磁石425による吸引力が生じていないときに、可動体421を回転部材428の接触部428bに押し付ける。
【0111】
詳しくは、ブレーキ付き減速機ユニット400は、減速機10と、ブレーキ420と、ケーシング30とを有する。減速機10及びケーシング30の構成は、実施形態1の構成と同様である。よって、減速機10及びケーシング30の構成の説明は省略する。
【0112】
ブレーキ420は、可動体421と、ブレーキコイル426と、ブレーキヨーク427と、回転部材428と、スプリング429とを有する。ブレーキコイル426及びブレーキヨーク427によって電磁石425が構成される。後述するように、ブレーキ420は、電磁石425及びスプリング429によって、可動体421に対して軸線方向に移動させる駆動力を付与する。すなわち、ブレーキ420の駆動部420aは、電磁石425と、スプリング429とを有する。
【0113】
ブレーキヨーク427には、圧縮ばねであるスプリング429を収容可能な収容凹部427aが設けられている。スプリング429の一端は、収容凹部427aの底部に接続されている。スプリング429の他端は、可動体421に接続されている。可動体421は、強磁性体によって構成された円盤状の部材であり、可動体磁石を有していない。可動体421は、実施形態1の可動体21とは、前記可動体磁石を有しない点で異なる。可動体421は、実施形態1の可動体21と同様、一対の係止部24によって、軸線方向に延びる図示しないキー溝に沿って軸線方向に移動可能であり、且つ、回転軸線Pを中心として回転不能である。
【0114】
回転部材428は、回転基部428aと、接触部428bとを有する。回転基部428aは、実施形態1の回転基部28と同様、非磁性体によって構成されていて、回転基部428aの内周側が、カム15において軸線方向に延びた部分の外周面に接続されている。回転基部428aの外周側には、接触部428bが軸線方向に移動可能なように、軸線方向に延びる溝が形成されている。よって、回転基部428aの外周側には、接触部428bの内周側が軸線方向に移動可能に接続されている。接触部428bは、入力軸11及びカム15の回転に伴って、回転基部428aと一体で回転する。接触部428bも、回転基部428aと同様、非磁性体によって構成されている。
【0115】
図9に示すように、ブレーキコイル426に通電した状態でブレーキコイル426によって一点鎖線のような磁束が発生するため、電磁石425に可動体421が吸引される。この状態では、可動体421は、回転部材428に対して離間した第2位置に位置しており、回転部材428の接触部428bと接触しない。よって、回転部材428の回転は抑制されない。また、この状態では、スプリング429は、可動体421によって軸線方向に圧縮された状態で収容凹部427a内に収容されている。
【0116】
ブレーキコイル426への通電を停止すると、上述のようなブレーキコイル426による磁束が生じないため、可動体421は、スプリング429の弾性復元力によって電磁石425から離間する方向に移動する。
図10に示すように、可動体421は、スプリング429によって回転部材428の接触部428bに押し付けられて、回転部材428に接触した第1位置に移動する。これにより、接触部428bは、回転基部428aに対してケーシング30の内面に向かって移動して、可動体421とケーシング30の内面とに挟まれた状態になる。したがって、可動体421と回転部材428との摩擦及びケーシング30の内面と回転部材428の接触部428bとの摩擦によって、回転部材428の回転が抑制されるため、入力軸11及びカム15の回転が抑制される。
【0117】
また、ブレーキは、例えば
図11及び
図12に示すように、板バネ529(弾性変形部材)を有していてもよい。可動体521が接触板540を介して電磁石525に接触した状態において、
図12に示すように、永久磁石550が生じる磁束の強さを弱める方向に磁束を生じさせることにより、可動体521と電磁石525との間に生じる吸引力が弱まる。これにより、板バネ529は、可動体521を電磁石525に対して離間した位置に位置付ける。
【0118】
詳しくは、ブレーキ付き減速機ユニット500は、減速機10と、ブレーキ520と、ケーシング30とを有する。減速機10及びケーシング30の構成は、実施形態1の構成と同様である。よって、減速機10及びケーシング30の構成の説明は省略する。
【0119】
ブレーキ520は、可動体521と、ブレーキコイル526と、ブレーキヨーク527と、回転部材528と、板バネ529と、永久磁石550とを有する。ブレーキコイル526及びブレーキヨーク527によって電磁石525が構成される。後述するように、ブレーキ520は、電磁石525、板バネ529及び永久磁石550によって、可動体521に対して軸線方向に移動させる駆動力を付与する。すなわち、ブレーキ520の駆動部520aは、電磁石525と、板バネ529と、永久磁石550とを有する。
【0120】
なお、ブレーキコイル526、ブレーキヨーク527及び電磁石525の構成は、実施形態1の構成と同様である。よって、ブレーキコイル526、ブレーキヨーク527及び電磁石525の詳しい構成は、説明を省略する。電磁石525は、ケーシング30に固定されていて、回転軸線Pを中心として回転不能である。
【0121】
永久磁石550は、軸線方向においてブレーキコイル526を挟んで可動体521とは反対側に位置する。永久磁石550の着磁方向は、径方向内方から径方向外方に向かう方向である。永久磁石550は、一体のリング状であってもよいし、複数の磁石がリング状に配置されていてもよい。永久磁石550によって、ブレーキヨーク527、減速機10の固定部13には、磁束が生じる(
図11及び
図12の破線参照)。
【0122】
電磁石525における可動体521側の面には、中空円板状の接触板540が設けられている。接触板540は、後述するように、電磁石525のブレーキコイル526への通電によって生じた磁束により可動体521が電磁石525によって吸引された際に、可動体521と接触する。接触板540は、非磁性体によって構成されている。
【0123】
なお、本実施形態では、接触板540は、ブレーキコイル526の可動体521側の面を覆いつつ、ブレーキヨーク527及び固定部13における可動体521側の面の一部を覆うように配置されている。これにより、ブレーキコイル526を保護しつつ、接触板540が、ブレーキコイル526によって生じる磁束を妨げることを防止できる。接触板540は、ブレーキヨーク527及び固定部13における可動体521側の面全体を覆ってもよいし、ブレーキヨーク527を覆わなくてもよいし、固定部13を覆わなくてもよい。
【0124】
可動体521は、回転部材528の外周側に位置する。回転部材528の外周側には、可動体521が接触する部分に、可動体521が軸線方向のみに移動可能なように、軸線方向に延びる図示しない溝が形成されている。よって、回転部材528の外周側には、可動体521の内周側が軸線方向に移動可能に接続されている。可動体521は、入力軸11及びカム15の回転に伴って、回転部材528と一体で回転する。可動体521は、強磁性体によって構成されている。
【0125】
可動体521と回転部材528とは、板バネ529によって接続されている。詳しくは、可動体521及び回転部材528の軸線方向に対向する面において、可動体521の径方向外側と回転部材528の径方向外側とが中空円板状の板バネ529によって接続されている。
【0126】
図11に示すように、ブレーキコイル526に通電していない状態では、可動体521は、永久磁石550によって生じる磁束により電磁石525側に吸引されるため、電磁石525に設けられた接触板540と接触する。すなわち、可動体521は、接触板540を介して電磁石525に間接的に接触する第1位置に位置する。これにより、可動体521の回転が、可動体521と接触板540との摩擦によって抑制される。よって、入力軸11及びカム15の回転が抑制される。この状態では、板バネ529は、可動体521によって端部が厚み方向に引っ張られた状態であり、前記厚み方向に弾性変形を生じている。
【0127】
図12に示すように、ブレーキコイル526に通電した状態では、一点鎖線のように磁束が発生するため、上述のような永久磁石550によって生じる磁束を打ち消して、永久磁石550による磁気吸引力を低下させる。これにより、可動体521は、板バネ529の弾性復元力によって電磁石525から離間する方向に移動して、電磁石525に対して離間した第2位置に移動する。
【0128】
上述の
図9から
図12に示す構成を有するブレーキ420,520においても、電磁石425,525の少なくとも一部を減速機10の径方向外方に配置することによって、軸線方向にコンパクトな構成を有するブレーキ付き減速機ユニット400,500を実現することができる。
【0129】
なお、
図9及び
図10に示す構成を有するブレーキ付き減速機ユニットが、永久磁石を有していてもよい。具体的には、
図13及び
図14に示すように、ブレーキ付き減速機ユニット600は、永久磁石650を有していてもよい。この場合におけるブレーキ付き減速機ユニット600のブレーキ620の動作は、
図11及び
図12に示すように板バネ529によって可動体521と回転部材528とが接続された構成を有するブレーキ520の動作と同様である。
【0130】
すなわち、
図13に示すように、ブレーキコイル426に通電していない状態では、可動体421は、永久磁石650によって生じる磁束により電磁石425側に吸引される。この状態では、可動体421は、回転部材428に対して離間した第1位置に位置しており、回転部材428の接触部428bと接触しない。よって、回転部材428の回転は抑制されない。また、この状態では、スプリング429は、可動体421によって軸線方向に圧縮された状態で収容凹部427a内に収容されている。
【0131】
図14に示すように、ブレーキコイル426に通電した状態では、一点鎖線のように磁束が発生するため、上述のような永久磁石650によって生じる磁束を打ち消して、永久磁石650による磁気吸引力を低下させる。これにより、可動体421は、スプリング429の弾性復元力によって電磁石425から離間する方向に移動する。すなわち、可動体421は、スプリング429によって回転部材428の接触部428bに押し付けられて、回転部材428に接触した第1位置に移動する。これにより、接触部428bは、回転基部428aに対してケーシング30の内面に向かって移動して、可動体421とケーシング30の内面とに挟まれた状態になる。したがって、可動体421と回転部材428との摩擦及びケーシング30の内面と回転部材428の接触部428bとの摩擦によって、回転部材428の回転が抑制されるため、入力軸11及びカム15の回転が抑制される。
【0132】
また、
図11及び
図12に示す構成を有するブレーキ付き減速機ユニットが、永久磁石を有していなくてもよい。具体的には、
図15及び
図16に示すように、可動体521と回転部材528とが板バネ529によって接続されたブレーキ付き減速機ユニット700は、永久磁石を有していない。この場合におけるブレーキ付き減速機ユニット700のブレーキ720の動作は、
図9及び
図10に示すようにスプリング429によって可動体421がブレーキヨーク427に接続された構成を有するブレーキ420の動作と同様である。
【0133】
すなわち、
図15に示すように、ブレーキコイル526に通電した状態でブレーキコイル526によって一点鎖線のような磁束が発生するため、可動体521は、電磁石525側に吸引され、電磁石525に設けられた接触板540と接触する。すなわち、可動体521は、接触板540を介して電磁石525に間接的に接触する第1位置に位置する。これにより、可動体521の回転が、可動体521と接触板540との摩擦によって抑制される。よって、入力軸11及びカム15の回転が抑制される。この状態では、板バネ529は、可動体521によって端部が厚み方向に引っ張られた状態であり、前記厚み方向に弾性変形を生じている。
【0134】
図16に示すように、ブレーキコイル526に通電していない状態では、可動体521は、板バネ529の弾性復元力によって電磁石525から離間する方向に移動して、電磁石525に対して離間した第2位置に移動する。
【0135】
図9から
図16に示す構成において、可動体に弾性復元力を付与する部材は、弾性復元力を生じる部材であれば、スプリング及び板バネ以外の部材であってもよい。
【0136】
また、
図11及び
図12に示す構成において、ブレーキ付き減速機ユニット500は、接触板を有していなくてもよい。この場合には、可動体521は、永久磁石550の吸引力によって電磁石525に直接接触する。
【0137】
前記実施形態1では、ブレーキ20,120,220のブレーキコイル26,126,226は、減速機10,110,210の固定部13,113,213の径方向外方に位置する。しかしながら、ブレーキコイルは、減速機の固定部以外の部分の径方向外方に位置していてもよい。また、ブレーキの他の部分が、減速機の径方向外方に位置していてもよい。
【0138】
前記実施形態2では、ブレーキ320のブレーキコイル326は、減速機310の内歯車313の径方向外方に位置する。しかしながら、ブレーキコイルは、減速機の内歯車以外の部分の径方向外方に位置していてもよい。また、ブレーキの他の部分が、減速機の径方向外方に位置していてもよい。
【0139】
前記各実施形態では、可動体磁石22は、内側保持部23aと外側保持部23bとによって径方向に挟み込まれた状態で接着等されることにより、保持されている。しかしながら、可動体磁石は、内側保持部及び外側保持部のうち、係止部を有する保持部のみに保持されていてもよい。すなわち、本発明の保持部は、内側保持部及び外側保持部のうち係止部を有する保持部のみを含んでいてもよい。
【0140】
前記各実施形態では、可動体磁石22の着磁方向は、径方向内方から径方向外方に向かう方向である。しかしながら、可動体磁石の着磁方向は、径方向外方から径方向内方に向かう方向であってもよいし、軸線方向であってもよい。このように可動体磁石が軸線方向に着磁されている場合には、可動体の周りに、
図2に破線で示すループ状の磁束と同様の磁束が形成されるように、保持部の形状を変更すればよい。
【0141】
前記各実施形態では、永久磁石550の着磁方向は、径方向内方から径方向外方に向かう方向である。しかしながら、永久磁石の着磁方向は、径方向外方から径方向内方に向かう方向であってもよいし、軸線方向であってもよい。このように永久磁石が軸線方向に着磁されている場合には、ブレーキヨークにおいてブレーキコイルが巻回される側に、溝を形成し、その溝内に前記永久磁石を配置すればよい。
【0142】
前記各実施形態では、板バネ529は、可動体521の径方向外側と回転部材528の径方向外側とを接続している。しかしながら、ブレーキコイルに通電することによって永久磁石による磁気吸引力を低下させた際に、電磁石に対して離間可能な弾性復元力を生じることができれば、板バネは、可動体の径方向外側以外の部分と回転部材の径方向外側以外の部分とを接続してもよい。また、板バネは、可動体の径方向外側と、回転部材の径方向外側以外の部分とを接続してもよい。さらに、板バネは、可動体の径方向外側以外の部分と、回転部材の径方向外側とを接続してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明は、減速機とブレーキとを備えているブレーキ付き減速機ユニットに利用可能である。
【符号の説明】
【0144】
1、100、200、300、400、500、600、700 ブレーキ付き減速機ユニット
10、110、210、310 減速機
11 入力軸
12 出力軸
13、113、213 固定部
14 外歯歯車
14a 円筒部
14b 底部
15、115 カム
16 可撓性軸受
17 第1軸受
18 第2軸受
19 出力軸支持部
20、120、220、320、420、520、620、720 ブレーキ
20a、120a、220a、320a、420a、520a 駆動部
21、421、521 可動体
22 可動体磁石
23 保持部
23a 内側保持部
23b 外側保持部
24、224 係止部
25、125、225、325、425、525 電磁石
26、126、226、326、426、526 ブレーキコイル
27、127、227、327、427、527 ブレーキヨーク
28、128、228、328、428、528 回転部材
28a、228a、428a 回転基部
28b、228b、428b 接触部
30、130、230、330 ケーシング
113a、213a フランジ部
131 アダプタ
311 太陽歯車
312 遊星歯車
313 内歯車
314 キャリア
427a 収容凹部
429 スプリング(弾性変形部材)
529 板バネ(弾性変形部材)
540 接触板
550、650 永久磁石
P 回転軸線