(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022051235
(43)【公開日】2022-03-31
(54)【発明の名称】電気二重層キャパシタ及び電気二重層キャパシタの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 11/80 20130101AFI20220324BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20220324BHJP
【FI】
H01G11/80
H01G11/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020157605
(22)【出願日】2020-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】000190091
【氏名又は名称】ルビコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】石原 悠太
(72)【発明者】
【氏名】中川 光
(72)【発明者】
【氏名】海老名 貴人
(72)【発明者】
【氏名】野澤 隆
【テーマコード(参考)】
5E078
【Fターム(参考)】
5E078AA12
5E078AB02
5E078AB13
5E078EA03
5E078EA11
5E078KA06
5E078LA07
(57)【要約】
【課題】封口体の防水性を高めるために当該封口体に塗布する流動性の樹脂の粘度を最適化することによって、粘度が低すぎる場合の課題及び粘度が高すぎる場合の課題を解決することができ、電気二重層キャパシタの性能を長期間維持し、信頼性の高い電気二重層キャパシタを提供する。
【解決手段】有底筒形状のキャパシタ素子収納ケース110と、キャパシタ素子収納ケース110に収納される電気二重層キャパシタ素子120と、電気二重層キャパシタ素子120のリード線121,122を各リード線挿通孔131,132のリード線延出口131b、132bから延出させた状態でキャパシタ素子収納ケース110を封止する封口体130とを備え、少なくとも各リード線延出口131b、132bには、200mPa・s~3000mPa・sの粘度を有する流動性の樹脂が硬化してなるシーリング体S1が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に開口を有する有底筒状のキャパシタ素子収納ケースと、
各リード線が前記キャパシタ素子収納ケースの開口側から延出するように前記キャパシタ素子収納ケースに収納される電気二重層キャパシタ素子と、
前記各リード線を挿通させるための各リード線挿通孔を有し、前記キャパシタ素子収納ケースに収納されている前記電気二重層キャパシタ素子の前記各リード線を前記各リード線挿通孔の各リード線延出口から外部に延出させた状態で前記キャパシタ素子収納ケースの前記開口を封止する封口体と、
を備える電気二重層キャパシタであって、
前記各リード線を前記各リード線挿通孔の各リード線延出口から外部に延出させた状態の前記封口体における少なくとも前記各リード線延出口には、200mPa・s~3000mPa・sの粘度を有する流動性の樹脂が硬化したシーリング体が形成されていることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項2】
請求項1に記載の電気二重層キャパシタにおいて、
前記各リード線延出口には、前記流動性の樹脂を受ける樹脂受け凹部がそれぞれ形成されており、少なくとも前記樹脂受け凹部に前記シーリング体が形成されていることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項3】
請求項2に記載の電気二重層キャパシタにおいて、
前記各リード線は、前記電気二重層キャパシタ素子から突出して設けられている各リード線接続端子に接続されており、当該各リード線接続端子は、前記各リード線の線径よりも太い径を有するとともに、前記各リード線挿通孔は、前記各リード線接続端子を篏合した状態で挿入可能な径を有し、
前記各リード線接続端子は、当該各リード線接続端子の先端部が前記各リード線挿通孔の中途部に位置するように前記各リード線挿通孔に挿入されており、
前記樹脂受け凹部は、前記各リード線挿通孔において前記各リード線接続端子の先端部と前記各リード線延出口との間に形成されている凹部であることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項4】
請求項1に記載の電気二重層キャパシタにおいて、
前記各リード線は、前記電気二重層キャパシタ素子から突出して設けられている各リード線接続端子に接続されており、当該各リード線接続端子は、前記各リード線の線径よりも太い径を有するとともに、前記各リード線挿通孔は、前記各リード線接続端子を篏合した状態で挿入可能な径を有し、
前記各リード線接続端子は、当該各リード線接続端子の先端部が前記各リード線挿通孔の各リード線延出口から突出しており、少なくとも前記各リード線延出口と前記各リード線接続端子との接触部に前記シーリング体が形成されていることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の電気二重層キャパシタにおいて、
前記封口体は、前記キャパシタ素子収納ケースの内周面に密接する鍔状部と、
当該鍔状部から前記キャパシタ素子収納ケースの外方に出っ張るように前記鍔状部に一体形成されてなる台状凸部と、を有し、
前記台状凸部には、当該台状凸部の一方の縁部と他方の縁部までの間に凹溝が形成され、前記各リード線延出口は、前記凹溝の底面の離間した位置に存在していることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項6】
請求項5に記載の電気二重層キャパシタにおいて、
前記シーリング体は、前記各リード線延出口を含む前記凹溝の底面を覆うように形成されており、当該シーリング体の表面と前記台状凸部の表面との間には所定の間隔が存在していることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項7】
請求項5に記載の電気二重層キャパシタにおいて、
前記シーリング体は、前記各リード線延出口を含む前記凹溝の底面と、前記鍔状部の表面とを覆うように形成されており、当該シーリング体の表面と前記台状凸部の表面との間には所定の間隔が存在していることを特徴とする電気二重層キャパシタ。
【請求項8】
一端部に開口を有する有底筒状のキャパシタ素子収納ケースと、
各リード線が前記キャパシタ素子収納ケースの開口側から延出するように前記キャパシタ素子収納ケースに収納される電気二重層キャパシタ素子と、
前記各リード線を挿通させるための各リード線挿通孔を有し、前記キャパシタ素子収納ケースに収納されている前記電気二重層キャパシタ素子の前記各リード線を前記各リード線挿通孔の各リード線延出口から外部に延出させた状態で前記キャパシタ素子収納ケースの前記開口を封止する封口体と、
を備える電気二重層キャパシタを製造するための電気二重層キャパシタの製造方法であって、
前記キャパシタ素子収納ケースに前記電気二重層キャパシタ素子を収納する電気二重層キャパシタ素子収納工程と、
前記各リード線を前記各リード線挿通孔の各リード線延出口から外部に延出させた状態の前記封口体における少なくとも前記各リード線延出口には、200mPa・s~3000mPa・sの粘度を有する流動性の樹脂を塗布し、塗布した前記流動性の樹脂を硬化させることにより、少なくとも前記各リード線延出口にシーリング体を形成するシーリング体形成工程と、
を有することを特徴とする電気二重層キャパシタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ及び電気二重層キャパシタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有底筒状のキャパシタ素子収納ケースに電気二重層キャパシタ素子を収納した状態でキャパシタ素子収納ケースが封口体によって封止されている電気二重層キャパシタは様々な分野で広く使用されている。このような電気二重層キャパシタにおいては、キャパシタ素子収納ケースに収納されている電気二重層キャパシタ素子のリード線が、封口体に設けられているリード線挿通孔を挿通した状態で外部に延出している。
【0003】
電気二重層キャパシタは、高温・高湿の条件下で使用されることも多いため、キャパシタ素子収納ケースの内部に水分が侵入することを防止するための対策が必要となる。キャパシタ素子収納ケースの内部に水分が侵入する主な経路としてはリード線挿通孔を挙げることができる。リード線挿通孔から水分がキャパシタ素子収納ケース内に侵入するのを防ぐためには、封口体に流動性の樹脂(以下、流動性樹脂と表記する場合もある。)を塗布し、塗布した流動性樹脂を硬化させることによって、水分の侵入経路を塞ぐことが考えられる。
【0004】
このような対策を施した電気二重層キャパシタは種々提案されている(例えば、特許文献1参照。)。なお、特許文献1に記載の電気二重層キャパシタは、内部に収納されている電気二重層キャパシタ素子の陽イオンが外部に漏出することを防止できる効果が得られるとしているが、リード線挿通孔から水分がキャパシタ素子収納ケースの内部に侵入を防ぐことができる効果も期待できると考えられる。
【0005】
図9は、特許文献1に記載されている電気二重層キャパシタ900を説明するために示す図である。特許文献1に記載されている電気二重層キャパシタ900は、
図9に示すように、電気二重層キャパシタを収納する有底筒状のケース910の開口側の端部には、当該開口を封止するための封口体としてのラバーキャップ920が設けられており、当該ラバーキャップ920には、当該ラバーキャップ920から外方に突出したボリューム突出部921と、電気二重層キャパシタ素子(図示せず。)のリード線931,932を挿通させるためのリード線挿通孔としての第1スルーホール922及び第2スルーホール923が設けられている。そして、当該第1スルーホール922及び第2スルーホール923にはウレタン充填溝924,925が設けられている。なお、ウレタン充填溝924,925は、ボリューム突出部921に対して相対的に低い位置に設けられており、当該ウレタン充填溝924,925にウレタン樹脂が充填されることにより、シーリング(sealing)体が形成される。
【0006】
特許文献1に記載の電気二重層キャパシタ900によれば、内部に収納されている電気二重層キャパシタ素子の陽イオンが外部に漏出することを防止できる効果が得られるとともに、リード線挿通孔から水分がキャパシタ素子収納ケースの内部に侵入を防ぐことができる効果も期待できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電気二重層キャパシタの中には、封口体の表面に凹凸を有するものもある。このような凹凸を有する封口体に流動性樹脂を塗布した後に硬化させて所望とする箇所にシーリング体を形成する場合、流動性樹脂の粘度によっては、流動性樹脂が満遍なく塗布されずに気泡が生じてしまい、気泡が生じたまま樹脂が硬化してしまうことがある。このような電気二重層キャパシタを高温化で使用すると、気泡が膨張して硬化した状態の樹脂が剥がれてしまい、防水効果が失われてしまうこととなる。
【0009】
これを防止するためには、樹脂の粘度を低くして流動性をより高めて、流動性樹脂が満遍なく塗布されるようにすることが考えらえる。しかし、流動性樹脂の粘度を低くしすぎると、塗布した樹脂が、塗布する必要のない部分にまで流れ込んでしまうといった課題(粘度が低すぎる場合の課題とする。)がある。逆に、流動性樹脂の粘度を高くしすぎると、樹脂の流動性が乏しくなり、流動性樹脂が満遍なく塗布されずに気泡が生じてしまうといった課題(粘度が高すぎる場合の課題とする。)がある。
【0010】
以上の点を考慮すると、封口体に塗布する流動性樹脂の粘度を最適化することが重要なものとなってくる。封口体の防水性を高めるために塗布する流動性樹脂の粘度を最適化することによって、前述した粘度が低すぎる場合の課題及び粘度が高すぎる場合の課題を解決することができる。
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の電気二重層キャパシタにおいては、このような課題を解決するための対策については言及していないため、粘度が低すぎる場合の課題及び粘度が高すぎる場合の課題を解決できるものとは言えない。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、封口体の防水性を高めるために当該封口体に塗布する流動性樹脂の粘度を最適化することによって、前述した粘度が低すぎる場合の課題及び粘度が高すぎる場合の課題を解決し、それによって、電気二重層キャパシタが有する性能を長期間維持することができ、信頼性の高い電気二重層キャパシタを提供することを目的とする。また、このような電気二重層キャパシタを製造するに好適な電気二重層キャパシタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[1]本発明の電気二重層キャパシタは、一端部に開口を有する有底筒状のキャパシタ素子収納ケースと、各リード線が前記キャパシタ素子収納ケースの開口側から延出するように前記キャパシタ素子収納ケースに収納される電気二重層キャパシタ素子と、前記各リード線を挿通させるための各リード線挿通孔を有し、前記キャパシタ素子収納ケースに収納されている前記電気二重層キャパシタ素子の前記各リード線を前記各リード線挿通孔の各リード線延出口から外部に延出させた状態で前記キャパシタ素子収納ケースの前記開口を封止する封口体と、を備える電気二重層キャパシタであって、前記各リード線を前記各リード線挿通孔の各リード線延出口から外部に延出させた状態の前記封口体における少なくとも前記各リード線延出口には、200mPa・s~3000mPa・sの粘度を有する流動性の樹脂が硬化したシーリング体が形成されていることを特徴とする。
【0014】
[2]本発明の電気二重層キャパシタにおいては、前記各リード線延出口には、前記流動性の樹脂を受ける樹脂受け凹部がそれぞれ形成されており、少なくとも前記樹脂受け凹部に前記シーリング体が形成されていることが好ましい。
【0015】
[3]本発明の電気二重層キャパシタにおいては、前記各リード線は、前記電気二重層キャパシタ素子から突出して設けられている各リード線接続端子に接続されており、当該各リード線接続端子は、前記各リード線の線径よりも太い径を有するとともに、前記各リード線挿通孔は、前記各リード線接続端子を篏合した状態で挿入可能な径を有し、前記各リード線接続端子は、当該各リード線接続端子の先端部が前記各リード線挿通孔の中途部に位置するように前記各リード線挿通孔に挿入されており、前記樹脂受け凹部は、前記各リード線挿通孔において前記各リード線接続端子の先端部と前記各リード線延出口との間に形成されている凹部であることが好ましい。
【0016】
[4]本発明の電気二重層キャパシタにおいては、前記各リード線は、前記電気二重層キャパシタ素子から突出して設けられている各リード線接続端子に接続されており、当該各リード線接続端子は、前記各リード線の線径よりも太い径を有するとともに、前記各リード線挿通孔は、前記各リード線接続端子を篏合した状態で挿入可能な径を有し、前記各リード線接続端子は、当該各リード線接続端子の先端部が前記各リード線挿通孔の各リード線延出口から突出しており、少なくとも前記各リード線延出口と前記各リード線接続端子との接触部に前記シーリング体が形成されていることが好ましい。
【0017】
[5]本発明の電気二重層キャパシタにおいては、前記封口体は、前記キャパシタ素子収納ケースの内周面に密接する鍔状部と、当該鍔状部から前記キャパシタ素子収納ケースの外方に出っ張るように前記鍔状部に一体形成されてなる台状凸部と、を有し、前記台状凸部には、当該台状凸部の一方の縁部と他方の縁部までの間に凹溝が形成され、前記各リード線延出口は、前記凹溝の底面の離間した位置に存在していることが好ましい。
【0018】
[6]本発明の電気二重層キャパシタにおいては、前記シーリング体は、前記各リード線延出口を含む前記凹溝の底面を覆うように形成されており、当該シーリング体の表面と前記台状凸部の表面との間には所定の間隔が存在していることが好ましい。
【0019】
[7]本発明の電気二重層キャパシタにおいては、前記シーリング体は、前記各リード線延出口を含む前記凹溝の底面と、前記鍔状部の表面とを覆うように形成されており、当該シーリング体の表面と前記台状凸部の表面との間には所定の間隔が存在していることが好ましい。
【0020】
なお、本発明の電気二重層キャパシタにおいては、前記キャパシタ素子収納ケースの有底側の端部が重力に沿った方向の下側となるように前記電気二重層キャパシタを位置させた場合において、前記凹溝の底面には、当該底面における前記各リード線延出口間に、当該各リード線延出口よりも高い位置となるような段部が形成されていることも好ましい。
【0021】
また、本発明の電気二重層キャパシタにおいては、前記各リード線延出口間に形成されている前記段部は、前記凹溝の底面が嵩高(かさだか)となっている嵩高底面部と、当該嵩高底面部における前記凹溝の底面の中心を含む所定範囲内に、当該嵩高底面部に一体形成された突出体と、を有し、前記突出体は、当該突出体の頂点が前記凹溝の底面の中心に対応するように位置しており、当該突出体の頂点から前記嵩高底面部に向かう面を有し、前記突出体の頂点の高さは、前記台状凸部の表面を超えない高さであることも好ましい。
【0022】
また、本発明の電気二重層キャパシタにおいては、前記突出体は、前記頂点を含む表面全体が凸状の曲面でなる形状をなしていることも好ましい。
【0023】
[8]本発明の電気二重層キャパシタの製造方法は、各リード線が前記キャパシタ素子収納ケースの開口側から延出するように前記キャパシタ素子収納ケースに収納される電気二重層キャパシタ素子と、前記各リード線を挿通させるための各リード線挿通孔を有し、前記キャパシタ素子収納ケースに収納されている前記電気二重層キャパシタ素子の前記各リード線を前記各リード線挿通孔の各リード線延出口から外部に延出させた状態で前記キャパシタ素子収納ケースの前記開口を封止する封口体と、を備える電気二重層キャパシタを製造するための電気二重層キャパシタの製造方法であって、前記キャパシタ素子収納ケースに前記電気二重層キャパシタ素子を収納する電気二重層キャパシタ素子収納工程と、前記各リード線を前記各リード線挿通孔の各リード線延出口から外部に延出させた状態の前記封口体における少なくとも前記各リード線延出口には、200mPa・s~3000mPa・sの粘度を有する流動性の樹脂を塗布し、塗布した前記流動性の樹脂を硬化させることにより、少なくとも前記各リード線延出口にシーリング体を形成するシーリング体形成工程と、を有することを特徴とする電気二重層キャパシタの製造方法。
【0024】
なお、本発明の電気二重層キャパシタの製造方法においては、前記各リード線延出口には、前記流動性樹脂を受ける樹脂受け凹部がそれぞれ形成されており、前記シーリング体形成工程は、少なくとも前記樹脂受け凹部に前記流動性の樹脂を塗布し、塗布した前記流動性の樹脂を硬化させることにより、少なくとも前記樹脂受け凹部にシーリング体を形成することも好ましい。
【0025】
また、本発明の電気二重層キャパシタの製造方法においては、前記各リード線は、前記電気二重層キャパシタ素子から突出して設けられている各リード線接続端子に接続されており、当該各リード線接続端子は、前記各リード線の線径よりも太い径を有するとともに、前記各リード線挿通孔は、前記各リード線接続端子を篏合した状態で挿入可能な径を有し、前記各リード線接続端子は、当該各リード線接続端子の先端部が前記各リード線挿通孔の各リード線延出口から突出しており、前記シーリング体形成工程は、少なくとも前記各リード線延出口と前記各リード線接続端子との接触部に前記流動性の樹脂を塗布し、塗布した前記流動性の樹脂を硬化させることにより、少なくとも前記各リード線延出口と前記各リード線接続端子との接触部に前記シーリング体を形成することも好ましい。
【0026】
また、本発明の電気二重層キャパシタの製造方法においては、前記封口体は、前記キャパシタ素子収納ケースの内周面に密接する鍔状部と、当該鍔状部から前記キャパシタ素子収納ケースの外方に出っ張るように前記鍔状部に一体形成されてなる台状凸部と、を有し、前記台状凸部には、当該台状凸部の一方の縁部と他方の縁部までの間に凹溝が形成され、前記各リード線延出口は、前記凹溝の底面の離間した位置に存在しており、前記シーリング体形成工程は、前記流動性の樹脂を前記封口体の所定箇所に滴下して流動させることによって前記各リード線延出口を含む前記凹溝の底面を覆うように前記流動性の樹脂を塗布し、塗布した流動性の樹脂を硬化させることにより、前記各リード線挿通孔の各リード線延出口を含む前記凹溝の底面を覆うようにシーリング体を形成することも好ましい。
【0027】
また、本発明の電気二重層キャパシタの製造方法においては、前記封口体は、前記キャパシタ素子収納ケースの内周面に密接する鍔状部と、当該鍔状部から前記キャパシタ素子収納ケースの外方に出っ張るように前記鍔状部に一体形成されてなる台状凸部と、を有し、前記台状凸部には、当該台状凸部の一方の縁部と他方の縁部までの間に凹溝が形成され、前記各リード線延出口は、前記凹溝の底面の離間した位置に存在しており、前記シーリング体形成工程は、前記流動性の樹脂を前記封口体の所定箇所に滴下して流動させることによって前記各リード線挿通孔の各リード線延出口を含む前記凹溝の底面と、前記鍔状部の表面とを覆うように塗布し、塗布した流動性の樹脂を硬化させることにより、前記各リード線延出口を含む前記凹溝の底面と、前記鍔状部の表面とを覆うようにシーリング体を形成することも好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の電気二重層キャパシタは、各リード線延出口から各リード線を外部に延出させた状態の封口体における少なくとも各リード線延出口には、200mPa・s~3000mPa・sの粘度を有する流動性の樹脂が硬化したシーリング体が形成されている。このように、本発明の電気二重層キャパシタによれば、封口体の防水性を高めるために、当該封口体に塗布する流動性樹脂の粘度を最適化することによって、前述した粘度が低すぎる場合の課題及び粘度が高すぎる場合の課題を解決することができる。それによって、電気二重層キャパシタが有する性能を長期間維持することができ、信頼性の高い電気二重層キャパシタを提供することができる。
【0029】
また、本発明の電気二重層キャパシタの製造方法によれば、シーリング体を形成するシーリング体形成工程は、200mPa・s~3000mPa・sの粘度を有する流動性の樹脂を、少なくとも各リード線挿通孔の各リード線延出口に塗布し、塗布した流動性の樹脂を硬化させることにより、少なくとも各リード線延出口にシーリング体を形成するようにしている。このようなシーリング体形成工程を有する本発明の電気二重層キャパシタの製造方法によれば、電気二重層キャパシタが有する性能を長期間維持することができ、信頼性の高い電気二重層キャパシタを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10を説明するために示す外観図である。
【
図2】実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10を説明するために示す断面図である。
【
図3】実施形態1に係る電気二重層キャパシタの製造工程を説明するためのフローチャートである。
【
図4】実施形態2に係る電気二重層キャパシタ20を説明するために示す外観図である。
【
図5】実施形態2に係る電気二重層キャパシタ20を説明するために示す断面図である。
【
図6】実施形態3に係る電気二重層キャパシタ30を説明するために示す外観図である。
【
図7】実施形態3に係る電気二重層キャパシタ30を説明するために示す断面図である。
【
図8】実施形態4に係る電気二重層キャパシタ40を説明するために示す断面図である。
【
図9】特許文献1に記載されている電気二重層キャパシタ900を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0032】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10を説明するために示す外観図である。
図1(a)は実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10の側面図であり、
図1(b)は
図1(a)に示す実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10におけるキャパシタ素子収納ケース110の一端部(開口側の端部)111から見た場合の平面図である。
【0033】
図2は、実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10を説明するために示す断面図である。
図2(a)は
図1(b)におけるa-a矢視断面図であり、
図2(b)は
図1(b)におけるb-b矢視断面図である。
【0034】
図3は、実施形態1に係る電気二重層キャパシタの製造工程を説明するためのフローチャートである。
【0035】
なお、
図1及び
図2は実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10を模式的に示す図ある。また、
図2(a)及び
図2(b)に示す断面図においては、封口体130の台状凸部135の高さが誇張して描かれている。これは、後述する各実施形態においても同様である。
【0036】
まず、
図1及び
図2を参照して実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10について説明する。実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10は、
図1及び
図2に示すように、一端部111が開口となっていて他端部113が有底となっている有底筒状(円筒状とする。)のキャパシタ素子収納ケース110と、各リード線121,122がキャパシタ素子収納ケース110の一端部111の開口側から延出するように当該キャパシタ素子収納ケース110に収納されている電気二重層キャパシタ素子120と、キャパシタ素子収納ケース110の開口を封止する封口体130とを備えている。
【0037】
なお、前述した「一端部111」を「開口側の端部111」と表記する場合もあり、「他端部113」を「有底側の端部113」と表記する場合もある。また、以下の説明においては、キャパシタ素子収納ケース110の有底側の端部113が重力に沿った方向の下側となるように電気二重層キャパシタを位置させた場合、すなわち、
図1及び
図2に示すように、有底側の端部113が下側となるように位置させた場合について説明する。
【0038】
各リード線121,122は、電気二重層キャパシタ素子120に設けられている各リード線接続端子123,124(
図2参照。)に接続されている。各リード線接続端子123,124は、各リード線121,122の線径よりも太い径を有し、その先端部に各リード線121,122が接続されている。
【0039】
封口体130は、各リード線121,122をそれぞれ挿通させるための各リード線挿通孔131,132を有し、各リード線121,122を各リード線挿通孔131,132の各リード線延出口131b,132bから外部に延出させた状態でキャパシタ素子収納ケース110の開口側の端部111を封止する。なお、以下の説明では、各リード線121,122、各リード線接続端子123,124、各リード線挿通孔131,132、各リード線延出口131b,132bなどの「各」を省略する場合もある。
【0040】
リード線挿通孔131,132におけるリード線延出口131b,132bには、流動性樹脂を受ける樹脂受け凹部131a,132aが形成されている。この樹脂受け凹部131a,132aは、リード線挿通孔131,132において、リード線接続端子123,124の先端部とリード線延出口131b、132bとの間に形成されている凹部である。
【0041】
すなわち、リード線挿通孔131,132は、リード線121,122を貫通させるだけでなく、電気二重層キャパシタ素子120のリード線接続端子123,124を篏合した状態で挿入可能としている。従って、リード線挿通孔131,132は、リード線接続端子123,124を篏合した状態で挿入可能な径を有している。そして、リード線接続端子123,124は、当該リード線接続端子123,124の先端部がリード線挿通孔131,132の中途部に位置するようにリード線挿通孔131,132に挿入されている。このため、リード線接続端子123,124がリード線挿通孔131,132に挿入された状態となると、当該リード線接続端子123,124の先端部とリード線延出口131b,132bとの間には凹部が形成され、当該凹部が樹脂受け凹部131a,132aとなる。
【0042】
実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10においては、樹脂受け凹部131a,132aにシーリング体S1が形成されたものとなる。このシーリング体S1は、樹脂受け凹部131a,132aに、流動性樹脂を滴下することによって樹脂受け凹部131a,132aに流動性樹脂を塗布し、塗布した流動性樹脂を硬化させることにより形成されたものである。
【0043】
ここで、樹脂受け凹部131a,132aに塗布する流動性樹脂は、200mPa・s~3000mPa・sの粘度を有する流動性樹脂であり、樹脂受け凹部131a,132aに形成されるシーリング体S1は、200mPa・s~3000mPa・sの粘度を有する流動性樹脂が硬化したものである。なお、「シーリング体S1は、200mPa・s~3000mPa・sの粘度を有する流動性樹脂が硬化したものである。」というのは、「シーリング体S1は、粘度が200mPa・s~3000mPa・sに調整された流動性樹脂が硬化したものである。」ということもでき、また、「シーリング体S1は、粘度が200mPa・s~3000mPa・sに調整された流動性樹脂を原料として用いたものである。」ということもできる。
【0044】
ここで、流動性樹脂の粘度を、200mPa・s~3000mPa・sとしたのは、200mPa・S~s~3000mPa・sの粘度を有する流動性樹脂を用いることによって、前述したような粘度が低すぎる場合の課題及び粘度が高すぎる場合の課題を解決できることが確かめられたからである。なお、流動性樹脂の粘度の上限を3000Pa・sとしたのは、粘度が3000Pa・s以下であれば、気泡が発生しにくくなるからである。また、流動性樹脂の粘度を2000Pa・s以下とすれば、より粘度が低くなって流動性がより高くなることから流動性樹脂の滴下箇所を減らすことができ、さらに、流動性樹脂の粘度を1000Pa・s以下とすれば、より一層、粘度が低くなることから、流動性樹脂を短時間で塗布できる。
【0045】
なお、流動性樹脂の材料としては、エポキシ樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、その他既知の材料を例示できる。この中で、エポキシ樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂は、所望とする粘度に容易に調整できる点で好ましい。また、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂は硬化時において気泡が発生しにくい点で好ましい。
【0046】
また、封口体130は、キャパシタ素子収納ケース110の内周面に密接する鍔状部133と、当該鍔状部133からキャパシタ素子収納ケース110の外方に出っ張るように鍔状部133に一体形成されてなる台状凸部135とを有している。そして、台状凸部135には、当該台状凸部135の一方の縁部から他方の縁部までの間に凹溝136が形成されており、当該凹溝136の底面136aには、前述したリード線挿通孔131,132のリード線延出口131b,132bが存在している。
【0047】
なお、鍔状部133は、キャパシタ素子収納ケース110が円筒状であるため、平面形状が円形をなしている。また、台状凸部135も、平面形状が円形をなしている。但し、当該台状凸部135は、凹溝136によって2分割されているため、ほぼ半円形をなす2つの台状凸部135a,135bによって構成されている。
【0048】
なお、封口体130の材料としては、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素ゴム、その他既知のエラストマーを例示できるが、ブチルゴムが好適である。また、封口体130の厚み(鍔状部133の厚み)t1は3mm以上(3mm~7mm程度)とすることが好ましい。
【0049】
また、封口体130における凹溝136の底面136aには、当該底面136aにおけるリード線延出口131b,132b間(リード線延出口131bとリード線延出口132bとの間)に、当該リード線延出口131b,132bよりも高い位置となるような段部137が形成されている。
【0050】
ここで、段部137について説明する。リード線延出口131b,132b間に形成されている段部137は、リード線延出口131b,132bよりも高い位置となるように凹溝136の底面136aが嵩高(かさだか)となっている嵩高底面部137aと、当該嵩高底面部137aにおける凹溝136の底面136aの中心Po(
図1(b)参照。)を含む所定範囲内に、当該嵩高底面部137aに一体形成されている突出体137bとを有している。なお、凹溝136の底面136aの中心Poというのは、当該底面136aの長手方向の中心(リード線延出口131bとリード線延出口132bとを結ぶ線上の中心)と、当該長手方向に直交する凹溝136の幅方向の中心とが一致する点であるとする。
【0051】
また、突出体137bは、当該突出体137bの頂点P1(
図1(b)及び
図2(a)参照。)から嵩高底面部137aに向かう斜面を有している。具体的には、当該突出体137bは、頂点P1を含む表面全体が凸状の曲面でなる形状をなしている、例えば、外観的には底の浅いボウル(bowl)を伏せたような形状を例示できる。
【0052】
このような形状を有する突出体137bは、当該突出体137bの頂点P1が凹溝136の底面136aの中心Poに対応するように位置している。また、突出体137bの頂点P1は、台状凸部135の表面(上面)を超えない高さとなっている。
【0053】
なお、突出体の頂点P1と底面136aの中心Poとの位置関係は、突出体の頂点P1が、凹溝136の底面136aの中心Poに高精度に一致することが好ましいが、多少のずれは許容される。
【0054】
突出体137bがこのような形状となっているため、流動性樹脂を当該突出体137bの頂点P1に滴下すると、滴下された流動性樹脂は、頂点P1から放射状に流動して行くこととなる。特に、突出体137bは、頂点P1を含む表面全体が凸状の曲面でなる形状をなしていることにより、頂点P1に流動性樹脂を滴下した際に、当該流動性樹脂を放射状に満遍なく嵩高底面部137aに流動させることができる。但し、実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10においては、流動性樹脂は、樹脂受け凹部131a,132aに滴下すればよいため、流動性樹脂を当該突出体137bの頂点P1に滴下する必要性は特にはない。
【0055】
次に、
図3に示す実施形態1に係る電気二重層キャパシタの製造工程について説明する。実施形態1に係る電気二重層キャパシタの製造工程は、キャパシタ素子収納ケース110に電気二重層キャパシタ素子120を収納する電気二重層キャパシタ素子収納工程(ステップSP1)と、キャパシタ素子収納ケース110の開口側の端部を封口体130で封止する封口体による封止工程(ステップSP2)と、リード線121,122をリード線挿通孔131,132のリード線延出口131b、132bから外部に延出させた状態の封口体130における少なくともリード線延出口131b、132bに、200mPa・s~3000mPa・sの粘度を有する流動性の樹脂を塗布し、塗布した流動性の樹脂を硬化させることにより、少なくともリード線延出口131b、132bにシーリング体を形成するシーリング体形成工程(ステップSP3)と、を有している。
【0056】
ここで、シーリング体形成工程(ステップSP3)について具体的に説明する。実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10においては、リード線挿通孔131,132のリード線延出口131b,132bに形成されている樹脂受け凹部131a,132aに流動性樹脂を塗布して、塗布した流動性樹脂を硬化させて、樹脂受け凹部131a,132aにシーリング体S1を形成する。ここで、「流動性樹脂を塗布」というのは、実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10においては、樹脂受け凹部131a,132aに流動性樹脂を滴下することによって樹脂受け凹部131a,132aに塗布することである。
【0057】
樹脂受け凹部131a,132aに塗布される樹脂は、200mPa・s~3000mPa・sの粘度を有する流動性樹脂である。このような粘度に調整された流動性樹脂が、樹脂受け凹部131a,132aに塗布され、塗布された流動性樹脂が硬化することによって、リード線延出口131b,132b(具体的には、リード線延出口131b,132bに形成されている樹脂受け凹部131a,132a)にシーリング体S1が形成される(
図1(b)、
図2(a)及び
図2(b)参照。)。
図1(b)、
図2(a)及び
図2(b)において、灰色で塗りつぶした領域はシーリング体S1が形成された領域である。
【0058】
リード線延出口131b,132bに形成されている樹脂受け凹部131a,132aに塗布する流動性樹脂の粘度を、このような最適化された粘度、すなわち、200mPa・s~3000mPa・sの粘度とすることによって、前述した粘度が低すぎる場合の課題及び粘度が高すぎる場合の課題を解決することができる。それによって、電気二重層キャパシタが有する性能を長期間維持することができ、信頼性の高い電気二重層キャパシタとすることができる。
【0059】
[実施形態2]
図4は、実施形態2に係る電気二重層キャパシタ20を説明するために示す外観図である。
図4(a)は実施形態2に係る電気二重層キャパシタ20の側面図であり、
図4(b)は
図4(a)に示す実施形態2に係る電気二重層キャパシタ20におけるキャパシタ素子収納ケース110の一端部111(開口側の端部111)から見た場合の平面図である。
【0060】
図5は、実施形態2に係る電気二重層キャパシタ20を説明するために示す断面図である。
図5(a)は
図4(b)におけるa-a矢視断面図であり、
図5(b)は
図4(b)におけるb-b矢視断面図である。
【0061】
なお、
図4及び
図5は実施形態2に係る電気二重層キャパシタ20を模式的に示す図ある。また、封口体130の凹溝136に形成されている段部137の構造は、実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10(
図2参照。)と同様である。また、実施形態2に係る電気二重層キャパシタの製造工程は基本的には
図3と同様である。但し、
図3におけるシーリング体形成工程SP3が多少異なるが、この点については後述する。
【0062】
実施形態2に係る電気二重層キャパシタ20が実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10と異なる点は、シーリング体を形成する箇所である。すなわち、実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10においては、リード線挿通孔131,132のリード線延出口131b,132b(具体的には、リード線延出口131b,132bに形成されている樹脂受け凹部131a,132a)にシーリング体S1を形成したが、実施形態2に係る電気二重層キャパシタ20においては、シーリング体S2は、リード線延出口131b,132bを含む凹溝136の底面136aを覆うように形成されている。なお、「底面136aaを覆うように形成されている」というのは、具体的には、底面136aに形成されている嵩高底面部137aと突出体137bとを含む底面136aを覆うように形成されているということを意味している。これは、以降の説明においても同様である。
【0063】
実施形態2に係る電気二重層キャパシタ20において、シーリング体S2が形成された状態を
図4(b)、
図5(a)及び
図5(b)に示す。
図4(b)、
図5(a)及び
図5(b)において、灰色で塗りつぶした領域はシーリング体S2が形成された領域である。なお、形成されたシーリング体S2は、当該シーリング体S2の表面が、台状凸部135を超えることなく、シーリング体S2の表面と台状凸部135の表面(上面)との間には、z軸に沿って所定の間隔が存在している。
【0064】
実施形態2に係る電気二重層キャパシタ20においては、台状凸部135の一方の縁部から他方の縁部までの間に形成されている凹溝136の底面136aを覆うようにシーリング体S2が形成されるため、実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10に比べて、流し込む流動性樹脂の量が多い。このため、粘度が低すぎる場合の課題及び粘度が高すぎる場合の課題がより発生し易くなるが、流動性樹脂が200mPa・s~3000mPa・sの粘度を有することによって、粘度が低すぎる場合の課題及び粘度が高すぎる場合の課題を確実に解決できる。
【0065】
すなわち、流動性樹脂の粘度を低くしすぎると、塗布した樹脂が、塗布する必要のない部分にまで流れ込んでしまうといった課題があるが、流動性樹脂が200mPa・s~3000mPa・sの粘度を有することによって、このような課題を解決できる。逆に、流動性樹脂の粘度を高くしすぎると、樹脂の流動性が乏しくなり、流動性樹脂が満遍なく塗布されずに気泡が生じてしまうといった課題があるが、流動性樹脂が200mPa・s~3000mPa・sの粘度を有することによって、このような課題も解決できる。
【0066】
また、実施形態2に係る電気二重層キャパシタ20の場合、凹溝136の底面136aを覆うようにシーリング体S2が形成されるため、リード線延出口131b,132bに形成されている樹脂受け凹部131a,132aもシーリング体S2によって確実に覆われた状態となるため、防水性をより高めることができる。
【0067】
実施形態2に係る電気二重層キャパシタの製造方法は、実施形態1に係る電気二重層キャパシタの製造方法とほぼ同様の工程によって行うことができる。但し、実施形態2に係る電気二重層キャパシタの製造方法においては、凹溝136の底面136aを覆うようにシーリング体S2を形成するため、シーリング体形成工程SP3が多少異なる。
【0068】
すなわち、実施形態2に係る電気二重層キャパシタの製造方法においては、200mPa・s~3000mPa・sの粘度を有する流動性樹脂を、嵩高底面部137aに形成されている突出体137bの頂点P1付近に滴下する。
【0069】
滴下された流動性樹脂は、突出体137bの表面(凸状曲面)を放射状に流動したのちに嵩高底面部137aを流動して行く。そして、嵩高底面部137aの両端部(リード線延出口131b側の端部及びリード線延出口132b側の端部)から、それぞれの樹脂受け凹部131a,132aに流れ込む。これによって、リード線延出口131b,132bを含む凹溝136の底面136aには流動性樹脂が満遍なく塗布され、塗布された流動性樹脂が硬化して、リード線延出口131b,132bを含む凹溝136の底面136aを覆うようにシーリング体S2が形成される。
【0070】
なお、凹溝136の底面136a(嵩高底面部137a)を流動した樹脂は、リード線延出口131b及びリード線延出口132bを超えて、さらに鍔状部133にまで流れ込む場合もあるため、リード線延出口131b及びリード線延出口132b周辺の鍔状部133にもシーリング体S2が形成される場合もある。
【0071】
このように、実施形態2に係る電気二重層キャパシタの製造方法においては、凹溝136の底面136aを覆うようにシーリング体S2を形成するが、この場合、凹溝136の底面136aを流動性樹脂で過不足なく覆うことができるように、滴下する流動性樹脂の量を適宜設定するとともに粘度も200mPa・s~3000mPa・sの範囲で適宜設定することが好ましい。
【0072】
ところで、凹溝136の底面136aは、嵩高底面部137aと、当該嵩高底面部137aに形成されている突出体137bを有しており、最も高い位置にある突出体137bの頂点P1に、流動性樹脂を滴下することによって、滴下された流動性樹脂は、おのずから低い方へと流動して行くこととなる。また、突出体137bの頂点P1は凹溝136の底面136aの中心Poに対応した位置となっている。
【0073】
このため、流動性樹脂を、一箇所(突出体137bの頂点P1)に所定量滴下するだけで、凹溝136の底面136aに満遍なく流動性樹脂を流動させることができ、凹溝136の底面136aに満遍なく流動性樹脂を塗布することができる。このように、凹溝136の底面136aを覆うようにシーリング体S2を形成する場合であっても、流動性樹脂を、一箇所(突出体137bの頂点P1)に所定量滴下するだけでよいことから、シーリング体形成工程を効率化することができる。
【0074】
なお、
図5は模式図であるため、形成されたシーリング体S2の表面は、平坦面として示されているが、必ずしも平坦面になるとは限らず、鍔状部133、嵩高底面部137a、突出体137bの表面に沿った段差が形成される場合もある。また、
図4(b)においては、シーリング体S2が鍔状部133を横切ってカール部112まで形成されている例が示されているが、これも一例であって、必ずしも、鍔状部133を横切ってカール部112まで形成する必要はない。これらは、滴下する流動性樹脂の量を適宜設定したり、粘度を200mPa・s~3000mPa・sの範囲で適宜設定したりすることによってシーリング体S2を様々な状態で形成できる。
【0075】
[実施形態3]
図6は、実施形態3に係る電気二重層キャパシタ30を説明するために示す外観図である。
図6(a)は実施形態3に係る電気二重層キャパシタ30の側面図であり、
図6(b)は
図6(a)に示す実施形態3に係る電気二重層キャパシタ30におけるキャパシタ素子収納ケース110の一端部111(開口側の端部111)から見た場合の平面図である。
【0076】
図7は、実施形態3に係る電気二重層キャパシタ30を説明するために示す断面図である。
図7(a)は
図6(b)におけるa-a矢視断面図であり、
図7(b)は
図6(b)におけるb-b矢視断面図である。
【0077】
なお、
図6及び
図7は実施形態3に係る電気二重層キャパシタ30を模式的に示す図ある。また、封口体130の凹溝136に形成されている段部137の構造は、実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10(
図2参照。)と同様である。また、実施形態3に係る電気二重層キャパシタの製造工程は基本的には
図3と同様である。但し、
図3におけるシーリング体形成工程SP3が多少異なるが、この点については後述する。
【0078】
実施形態3に係る電気二重層キャパシタ30が実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10及び実施形態2に係る電気二重層キャパシタ20と異なる点は、シーリング体を形成する箇所である。実施形態3に係る電気二重層キャパシタ30においては、封口体130の鍔状部133の表面にもシーリング体S3が形成されている。すなわち、実施形態3に係る電気二重層キャパシタ30においては、シーリング体S3は、リード線挿通孔131,132のリード線延出口131b,132bを含む凹溝136の底面136aと、鍔状部133の表面とを覆うように形成されている。
【0079】
実施形態3に係る電気二重層キャパシタ30において、シーリング体S3が形成された状態を
図6(b)、
図7(a)及び
図7(b)に示す。
図6(b)、
図7(a)及び
図7(b)において、灰色で塗りつぶした領域はシーリング体S3が形成された領域である。なお、このようにして形成されたシーリング体S3は、台状凸部135を超えることなく、シーリング体S3の表面と台状凸部135の表面(上面)との間には、z軸に沿って所定の間隔が存在している。
【0080】
ところで、実施形態3に係る電気二重層キャパシタ30においては、シーリング体S3は、リード線挿通孔131,132のリード線延出口131b,132bを含む凹溝136の底面136aと、鍔状部133の表面とを覆うように形成されているため、実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10及び実施形態2に係る電気二重層キャパシタ20に比べて、流し込む樹脂の量がさらに多い。このため、粘度が低すぎる場合の課題及び粘度が高すぎる場合の課題がより発生し易くなるが、流動性樹脂が200mPa・s~3000mPa・sの粘度を有することによって、粘度が低すぎる場合の課題及び粘度が高すぎる場合の課題を確実に解決できる。
【0081】
また、実施形態3に係る電気二重層キャパシタ30においては、封口体130の鍔状部133の表面を覆うようにシーリング体S3が形成されているため、キャパシタ素子収納ケース110のカール部112と封口体130との接触部はシーリング体S3によって確実に封止される。これにより、キャパシタ素子収納ケース110のカール部112と封口体130との接触部の防水性も確保できる。
【0082】
実施形態3に係る電気二重層キャパシタの製造する際のシーリング体形成工程(ステップSP3)は、実施形態2に係る電気二重層キャパシタの製造方法において説明したシーリング体形成工程とほぼ同様の工程によって行うことができる。
【0083】
実施形態3に係る電気二重層キャパシタの製造方法においても、200mPa・s~3000mPa・sの粘度を有する流動性樹脂を、嵩高底面部137aに形成されている突出体137bの頂点P1付近に滴下する。
【0084】
滴下された流動性樹脂は、突出体137bの表面(凸状曲面)を放射状に流動したのちに嵩高底面部137aを流動して行く。そして、嵩高底面部137aの両端部(リード線延出口131b側の端部及びリード線延出口132b側の端部)から、それぞれの樹脂受け凹部131a,132aに流れ込んだ後に、鍔状部133にまで達し、さらに、鍔状部133の表面を流動して行く。これによって、凹溝136の底面136a及び鍔状部133には流動性樹脂が満遍なく塗布され、塗布された流動性樹脂が硬化して、凹溝136の底面136aと、鍔状部133の表面とを覆うようにシーリング体S3が形成される。
【0085】
また、実施形態3に係る電気二重層キャパシタ30においては、凹溝136の底面136aに加えて鍔状部133の表面をも覆うようにシーリング体S3が形成されるため、キャパシタ素子収納ケース110のカール部112を流動性樹脂の堰き止め部として利用することができる。このため、塗布される流動性樹脂の全体の表面を平坦面とすることができ、それによって、
図7に示すように、塗布された流動性樹脂が硬化した後のシーリング体S3の表面も平坦面とすることができる。また、流動させる量を適宜調整したり、粘度を200mPa・s~3000mPa・sの範囲で適宜調整したりすれば、シーリング体S3は、嵩高底面部137aと鍔状部133との間の段差に沿った階段状に形成することも可能である。
【0086】
[実施形態4]
実施形態4に係る電気二重層キャパシタ40は、リード線接続端子123,124のリード線挿通孔131,132への取り付け方が前述の各実施形態と異なる。但し、シーリング体の形成箇所は、実施形態2に係る電気二重層キャパシタ20の場合と同様であるとして説明する。このため、実施形態4に係る電気二重層キャパシタ40の外観図は、
図4に示した実施形態2に係る電気二重層キャパシタ20の外観図とほぼ同様である。このため、実施形態4に係る電気二重層キャパシタ40の外観図の図示は省略する。
【0087】
図8は、実施形態4に係る電気二重層キャパシタ40を説明するために示す断面図である。なお、
図8は実施形態4に係る電気二重層キャパシタ40を模式的に示す図である。
図8において、封口体130の凹溝136に形成されている段部137の構造は、実施形態1に係る電気二重層キャパシタ10(
図2参照。)と同様である。
【0088】
実施形態4に係る電気二重層キャパシタ40が前述した各実施形態と異なる点は、前述したように、リード線接続端子123,124のリード線挿通孔131,132への取り付け方である。
【0089】
すなわち、前述の各実施形態に係る電気二重層キャパシタにおいては、電気二重層キャパシタ素子120におけるリード線接続端子123,124の先端部は、リード線挿通孔131,132のリード線延出口131b,132bから奥に引っ込んだ位置(リード線挿通孔131,132の中途部の位置)に存在していたが、実施形態4に係る電気二重層キャパシタ40においては、リード線接続端子123,124は、リード線挿通孔131,132を貫通して、当該リード線接続端子123,124の先端部が、リード線延出口131b,132bから外部に突出した状態となっている。
【0090】
実施形態4に係る電気二重層キャパシタ40においては、シーリング体S2は、リード線接続端子123,124の先端部をほぼ埋め込む位置まで形成されている。リード線接続端子123,124の先端部をほぼ埋め込む位置までシーリング体S2が形成された状態を
図8(a)及び
図8(b)に示す。
図8(a)及び
図8(b)において、灰色で塗りつぶした領域はシーリング体S2が形成された領域である。
【0091】
実施形態4に係る電気二重層キャパシタ40においては、リード線接続端子123,124がリード線挿通孔131,132のリード線延出口131b,132bから突出しているため、前述した各実施形態のように、リード線延出口131b,132bには樹脂受け凹部131a,132aが存在しない。このように、実施形態4に係る電気二重層キャパシタ40においては、前述した各実施形態に比べて流動性樹脂を塗布すべき箇所(主に、凹溝136の底面136a)には凹部が存在しないため、その分だけ、流動性樹脂を満遍なく塗布することができ、それによって、気泡の発生を、より一層抑制できる。
【0092】
実施形態4に係る電気二重層キャパシタのシーリング体形成工程は、実施形態2に係る電気二重層キャパシタのシーリング体形成工程とほぼ同様に行うことができるため、ここではその説明は省略する。
【0093】
なお、
図8においては、シーリング体S2は実施形態2に係る電気二重層キャパシタ20と同様に、凹溝136の底面136a(嵩高底面部137a)を覆うように形成する場合を例示したが、実施形態3に係る電気二重層キャパシタ20と同様に凹溝136の底面136aと、鍔状部133の表面とを覆うように形成するようにしてもよい。この場合のシーリング体形成工程は、実施形態3に係る電気二重層キャパシタにおけるシーリング体形成工程とほぼ同様に行うことができる。
【0094】
また、実施形態4に係る電気二重層キャパシタ40においては、シーリング体S2は、リード線接続端子123,124の先端部をほぼ埋め込む位置まで形成されている場合を例示したが、これに限られるものではなく、リード線延出口131b,132bのみに流動性樹脂を塗布するようにしてもよい。
【0095】
具体的には、リード線延出口131b,132bとリード線接続端子123,124との接触部にシーリング体(図示は省略する。)が形成されていてもよい。この場合のシーリング体形成工程は、リード線延出口131b,132bとリード線接続端子123,124との接触部に流動性樹脂を滴下し、滴下した流動性樹脂を硬化させることによってシーリング体(図示は省略する。)を形成する。
【0096】
なお、本発明は前述の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
【0097】
(1)前述の実施形態1に係る電気二重層キャパシタにおいては、キャパシタ素子収納ケース110は円筒形としたが、円筒形に限られるものではなく、例えば、角筒状であってもよい。
【0098】
(2)前述の実施形態1においては、電気二重層キャパシタ素子120のリード線接続端子123,124の先端部とリード線延出口131b、132bとの間に形成されている凹部を樹脂受け凹部131a,132aとして用いたが、樹脂受け凹部131a,132aは、このような凹部であることに限られるものではなく、流動性の樹脂を受けるための凹部として形成されたものであってもよい。
【0099】
(3)前述の各実施形態においては、凹溝136の底面136aに形成されている段部137は、底面136aを嵩上げしてなる嵩高底面部137aと、当該嵩高底面部137aに形成された突出体137bとによって構成されているものを例示したが、このような構成に限られるものではない。例えば、底面136aの中心Poに対応する位置に、頂点を有する突出体のみが形成されているものであってもよい。また、階段状に複数段の段部が形成されているものであってもよい。この場合、複数段の段部の最上段が底面136aの中心Poに位置し、当該最上段の段部から両側にそれぞれ階段状に段部が形成されるようなものを例示できる。
【0100】
(4)前述の各実施形態においては、凹溝136の底面136aには段部137(嵩高底面部137a、突出体137b)が形成されている場合を例にとって説明したが、段部137は必須なものではなく、凹溝136の底面136aは平坦面であってもよい。
【符号の説明】
【0101】
10,20.30,40・・・電気二重層キャパシタ、110・・・キャパシタ素子収納ケース、111・・・一端部(開口側の端部)、112・・・カール部、112a・・・カール部の折り返し部、113・・・他端部(有底側の端部)、120・・・電気二重層キャパシタ素子、121,122・・・リード線、123.124・・・リード線接続端子、130・・・封口体、131,132・・・リード線挿通孔、131a,132a・・・樹脂受け凹部、131b,132b・・・リード線延出口、133・・・鍔状部、134・・・段差部、135・・・台状凸部、136・・・凹溝、136a・・・凹溝136の底面、137・・・凹溝136の底面136aに形成されている段部、137a・・・凹溝136の底面136aに形成されている嵩高底面部、137b・・・嵩高底面部137aに形成されている突出体、Po・・・底面136aの中心、P1・・・突出体137bの頂点、S1,S2,S3・・・シーリング体