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特開2022-54749液体循環構造、インバータ装置および車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022054749
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】液体循環構造、インバータ装置および車両
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220331BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020161941
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】300052246
【氏名又は名称】日本電産エレシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 明裕
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA02
5H770DA03
5H770DA41
5H770JA10X
5H770PA13
5H770PA17
5H770PA21
5H770PA26
5H770PA42
5H770PA43
5H770QA01
5H770QA02
5H770QA06
5H770QA11
5H770QA21
5H770QA28
5H770QA37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポンプ等の液体循環用装置を設けることなく筐体内の液体を循環することが可能な液体循環構造およびインバータ装置並びに故障を抑制することが可能な車両を提供する。
【解決手段】インバータ装置1において、移動体搭載用の液体循環構造2は、液体を充填可能な内部空間9を有する筐体10と、内部空間を仕切る仕切り部20A、20Bと、を備える。内部空間の少なくとも一部には、液体が充填されている。内部空間における筐体と仕切り部との間および仕切り部の少なくとも一方には、液体が通過可能な通路30が設けられている。液体循環構造を移動体に搭載した場合、移動体の移動による揺れ及び重力の作用によって液体が通路を通過することにより液体が内部空間を循環する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載用の液体循環構造であって、
液体を充填可能な内部空間を有する筐体と、
前記内部空間を仕切る仕切り部と、を備え、
前記内部空間の少なくとも一部には、前記液体が充填され、
前記内部空間における前記筐体と前記仕切り部との間および前記仕切り部の少なくとも一方には、前記液体が通過可能な通路が設けられ、
前記液体循環構造を前記移動体に搭載した場合には、前記移動体の移動による揺れ及び重力の作用によって前記液体が前記通路を通過することにより前記液体が前記内部空間を循環するように構成されている
液体循環構造。
【請求項2】
前記液体は、絶縁性を有し、
前記内部空間には、複数の電子部品が設けられ、
前記複数の電子部品のうち最も発熱する最発熱部品は、前記筐体がいかなる姿勢であっても前記液体に浸っている
請求項1に記載の液体循環構造。
【請求項3】
前記液体は、絶縁性を有し、
前記内部空間には、複数の電子部品が設けられ、
前記複数の電子部品のうち最も発熱する最発熱部品は、前記液体循環構造が前記移動体に搭載されかつ前記移動体が静止している状態において前記液体に浸っている
請求項1または2に記載の液体循環構造。
【請求項4】
前記通路は、鉛直上下方向において最も上側に配置された最上位通路を含み、
前記移動体が静止している状態において前記液体の上面は前記最上位通路よりも下方に配置され、
前記移動体が移動しているときに前記液体が前記最上位通路を通過するように構成されている
請求項1から3のいずれか一項に記載の液体循環構造。
【請求項5】
前記仕切り部は、複数設けられている
請求項1から4のいずれか一項に記載の液体循環構造。
【請求項6】
前記液体は、絶縁性を有し、
前記内部空間には、複数の電子部品が設けられ、
前記複数の仕切り部は、
第一仕切り部と、
前記第一仕切り部とは異なる位置に設けられた第二仕切り部と、を含み、
前記通路は、
前記内部空間における前記筐体と前記第一仕切り部との間および前記第一仕切り部の少なくとも一方に設けられた第一通路と、
前記内部空間における前記筐体と前記第二仕切り部との間および前記第二仕切り部の少なくとも一方に設けられた第二通路と、を含み、
前記移動体の移動による揺れ及び重力の作用によって前記液体が前記第一通路及び前記第二通路のそれぞれを通過することにより前記液体が前記内部空間における前記第一仕切り部と前記第二仕切り部との間の中間空間を流動するように構成され、
前記複数の電子部品のうち最も発熱する最発熱部品は、前記中間空間に設けられている
請求項5に記載の液体循環構造。
【請求項7】
前記筐体は、
第一部材と、
前記第一部材に接続される第二部材と、
前記第一部材と前記第二部材との接続部位に設けられ前記内部空間を封止する弾性部材と、を備える
請求項1から6のいずれか一項に記載の液体循環構造。
【請求項8】
前記筐体は、前記内部空間と前記筐体の外部空間との間で気体は通過させかつ前記液体は通過させないフィルターを備える
請求項1から7のいずれか一項に記載の液体循環構造。
【請求項9】
前記液体は、絶縁性を有し、
前記内部空間には、複数の電子部品が設けられ、
前記複数の電子部品のうち最も発熱する最発熱部品の一部は、前記液体に浸っており、
前記最発熱部品の他の一部を冷却するための冷却液が流れる冷却路を更に備える
請求項1から8のいずれか一項に記載の液体循環構造。
【請求項10】
前記冷却路は、前記内部空間と連通していない
請求項9に記載の液体循環構造。
【請求項11】
前記冷却路は、前記内部空間と連通しており、
前記液体は、前記冷却液を兼ねている
請求項9に記載の液体循環構造。
【請求項12】
前記仕切り部は、鉛直上下方向に延びる板状をなし、
前記通路は、
前記仕切り部の上部を前記仕切り部の板厚方向に開口する上部通過孔と、
前記仕切り部の下部を前記仕切り部の板厚方向に開口する下部通過孔と、を含む
請求項1から11のいずれか一項に記載の液体循環構造。
【請求項13】
前記内部空間には、電子部品が設けられ、
前記電子部品は、前記液体が前記内部空間を循環するときに前記液体を一方向に流す整流部を備える
請求項1から12のいずれか一項に記載の液体循環構造。
【請求項14】
前記内部空間には、電子部品が設けられ、
前記電子部品は、
鉛直上下方向に沿う第一面と、
前記第一面に対して直交する第二面と、
前記第一面及び前記第二面に連なるとともに前記鉛直上下方向に対して斜めに交差する傾斜面と、を備える
請求項1から13のいずれか一項に記載の液体循環構造。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の液体循環構造を備えるインバータ装置。
【請求項16】
前記液体は、絶縁性を有し、
前記内部空間には、パワーモジュール及びコンデンサを含む複数の電子部品が設けられ、
前記パワーモジュール及び前記コンデンサは、前記液体に常に浸っている
請求項15に記載のインバータ装置。
【請求項17】
請求項1から14のいずれか一項に記載の液体循環構造を備える車両。
【請求項18】
請求項15または16に記載のインバータ装置を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体循環構造、インバータ装置および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、筐体内に冷却液が充填されるとともに、筐体内に入口及び出口を通じて冷却液を循環させるポンプを設けた構造が開示されている。
特許文献2には、容器内で絶縁油を対流させるために、絶縁油内で回転することによって絶縁油を攪拌する攪拌子と、容器を載置する筐体内で回転する磁石部を有する攪拌子駆動部と、を設けた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-18049号公報
【特許文献2】特開2014-180114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ポンプ等の液体循環用装置を設けることなく筐体内の液体を循環することが求められている。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、液体循環用装置を設けることなく筐体内の液体を循環することが可能な液体循環構造およびインバータ装置、並びに故障を抑制することが可能な車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る液体循環構造は、移動体に搭載用の液体循環構造であって、液体を充填可能な内部空間を有する筐体と、前記内部空間を仕切る仕切り部と、を備え、前記内部空間の少なくとも一部には、前記液体が充填され、前記内部空間における前記筐体と前記仕切り部との間および前記仕切り部の少なくとも一方には、前記液体が通過可能な通路が設けられ、前記液体循環構造を前記移動体に搭載した場合には、前記移動体の移動による揺れ及び重力の作用によって前記液体が前記通路を通過することにより前記液体が前記内部空間を循環するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体循環用装置を設けることなく筐体内の液体を循環することが可能な液体循環構造およびインバータ装置、並びに故障を抑制することが可能な車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第一実施形態に係るインバータ装置の概略を示す斜視図である。
図2図2は、第一実施形態に係るインバータ装置をXY平面で切断した断面図である。
図3図3は、図2のIII-III断面図である。
図4図4は、第一実施形態に係るインバータ装置をYZ平面で切断した構造詳細を示す断面図である。
図5図5は、第一実施形態に係る仕切り板の模式図である。
図6図6は、第一実施形態に係るパワーモジュールユニットが液体に浸っている状態の説明図である。
図7図7は、第一実施形態に係るインバータ装置の作用説明図である。
図8図8は、第一実施形態に係る筐体の内部空間における液体の循環の説明図である。
図9図9は、第一実施形態に係る筐体の内部空間における液体の循環の他の説明図である。
図10図10は、第一実施形態に係る上部通過孔および下部通過孔における液体の循環の説明図である。
図11図11は、第二実施形態に係る仕切り板の模式図である。
図12図12は、第三実施形態に係る仕切り板の模式図である。
図13図13は、第四実施形態に係るインバータ装置をYZ平面で切断した構造詳細を示す断面図である。
図14図14は、第五実施形態に係るインバータ装置をXY平面で切断した断面図である。
図15図15は、第六実施形態に係るインバータ装置をYZ平面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る液体循環構造、インバータ装置および車両について説明する。以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。以下の説明では、インバータ装置が水平な路面上に位置する車両(移動体)に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直上下方向(重力方向)を規定して説明する。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX方向、水平面内においてX方向と直交する方向をY方向、X方向及びY方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直上下方向)をZ方向とする。X方向は、インバータ装置が搭載される車両の前後方向に相当する。Y方向は、車両の幅方向(左右方向)に相当する。Z方向は、車両の上下方向(鉛直上下方向)に相当する。
【0010】
<第一実施形態>
<インバータ装置>
図1に示すように、インバータ装置1は、液体循環構造2と、電子ユニット3と、冷却ユニット4と、を備える。例えば、インバータ装置1は、車両5のモータユニット6に搭載されている。例えば、車両5は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等である。モータユニット6は、車両5の動力源であるモータ(不図示)を備える。
【0011】
モータは、不図示のコイル線等を介してインバータ装置1に接続されている。インバータ装置1は、導電体7A,7B等(図4参照)を介して不図示の外部低電圧電源装置に接続されている。例えば、導電体7A,7Bは、導電性の板材から形成されたバスバーまたはハーネスである。さらに、インバータ装置1は、導電体7A,7Bとは別の高圧用バスバー(不図示)を介して不図示の外部高電圧電源装置に接続されている。
例えば、外部低電圧電源装置及び外部高電圧電源装置は、車両5に搭載された二次電池である。インバータ装置1は、外部低電圧電源装置から供給された直流電流でインバータ制御用の信号を生成する。インバータ装置1は、外部高電圧電源装置から供給された直流電流を交流電流に変換してモータに供給する。
【0012】
<液体循環構造>
液体循環構造2は、液体8を充填可能な内部空間9を有する筐体10と、内部空間9を仕切る仕切り部20A,20Bと、を備える。内部空間9における筐体10と仕切り部20A,20Bとの間および仕切り部20A,20Bのそれぞれには、液体8が通過可能な通路30が設けられている。
【0013】
液体8は、絶縁性を有するオイル(絶縁油)である。液体8は、内部空間9の一部に充填されている。以下、インバータ装置1が車両5に搭載されている状態を「車両搭載状態」、車両5が静止している状態を「車両静止状態」、車両5が移動している状態を「車両移動状態」ともいう。図3に示すように、車両搭載状態かつ車両静止状態において、内部空間9における筐体10と液体8の上面(液面)との間には、空気が介在している。
【0014】
<筐体>
筐体10は、Y方向に長手を有する直方体箱状をなしている。図4に示すように、筐体10は、第一部材11と、第一部材11に接続される第二部材12と、第一部材11と第二部材12との接続部位に設けられ内部空間9を封止する弾性部材13と、を備える。内部空間9は、第一部材11、第二部材12および弾性部材13に囲まれた空間である。
【0015】
第一部材11は、車両搭載状態において筐体10の最上部に配置される上壁15と、上壁15の外周に連結された周壁16と、を備える。
上壁15は、矩形板状をなしている。上壁15は、フィルター18を取り付けるための取付け孔15aと、第二導電体7Bを接続するための接続孔15bと、を有する。
周壁16は、矩形筒状をなしている。図2に示すように、周壁16は、車両搭載状態において筐体10の最前部に配置される前壁16aと、筐体10の最後部に配置される後壁16bと、筐体10の最左側部に配置される左壁16cと、筐体10の最右側部に配置される右壁16dと、を備える。前壁16a、後壁16b、左壁16c及び右壁16dのいずれかは、高圧用バスバー(不図示)を接続するための接続孔(不図示)を有する。
【0016】
図4に示すように、第二部材12は、車両搭載状態において筐体10の最下部に配置される。第二部材12の外形は、上下方向から見て第一部材11の外形よりも大きい。第二部材12は、第一部材11よりも外方に張り出す張出し部17を備える。第二部材12の張出し部17は、ボルト等の締結部材19によってモータユニット6の設置面6aに固定されている。第二部材12の張出し部17は、弾性部材13の第二凸部13cを収容可能な凹部17aを有する。凹部17aは、周壁16とボルトとの間に配置されている。
【0017】
弾性部材13は、第一部材11の外周に沿う矩形枠状をなしている。例えば、弾性部材13は、ゴム製のOリングである。第一部材11および第二部材12は、弾性部材13が押しつぶされた状態で互いに接続されている。第一部材11および第二部材12は、弾性部材13を介して互いに隙間なく接続されている。
【0018】
弾性部材13は、周壁16と第二部材12との間に配置される弾性部本体13aと、弾性部本体13aの上面から上方に張り出す第一凸部13bと、弾性部本体13aの下面から下方に張り出す第二凸部13cと、を備える。
弾性部本体13aは、周壁16と第二部材12とによって上下方向に押しつぶされている。
第一凸部13bは、周壁16の外面に外方から密着している。
第二凸部13cは、第二部材12の凹部17aに入り込んでいる。
【0019】
筐体10は、内部空間9と外部空間との間で気体は通過させかつ液体は通過させないフィルター18を備える。フィルター18は、上壁15の取付け孔15aに設けられている。例えば、フィルター18は、ベントフィルター(防水通気フィルター)である。例えば、フィルター18は、多孔質の防水透湿性素材により形成されている。例えば、多孔質の防水透湿性素材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を延伸加工したフィルムと、ポリウレタンポリマーとを複合化したものが挙げられる。
【0020】
<仕切り部>
仕切り部20A,20Bは、鉛直上下方向に延びる板状をなしている。仕切り部20A,20Bは、Y方向に厚みを有する。図5に示すように、仕切り部20A,20Bは、液体8が通過可能な上部通過孔21および下部通過孔22を有する。上部通過孔21および下部通過孔22は、仕切り部自体に設けられた通路である。仕切り部20A,20Bの板厚方向から見て、上部通過孔21および下部通過孔22はそれぞれX方向に長手を有する矩形状をなしている。内部空間9における仕切り部20A,20Bと周壁16との間には、液体8が通過可能な隙間23(通路30)が設けられている。
【0021】
上部通過孔21は、仕切り部20A,20Bの上部を板厚方向(Y方向)に開口している。言い換えると、上部通過孔21は、仕切り部20A,20Bの上端中央から下方に窪む凹部である。仕切り部20A,20Bの上端(上部通過孔21以外の部分)は、第一部材11の上壁15に固定されている。上部通過孔21は、鉛直上下方向において最も上側に配置された最上位通路である。
【0022】
下部通過孔22は、仕切り部20A,20Bの下部を板厚方向に開口している。言い換えると、上部通過孔21は、仕切り部20A,20Bの下端中央から上方に窪む凹部である。仕切り部20A,20Bの下端(下部通過孔22以外の部分)は、第二部材12に固定されている。
【0023】
図3に示すように、仕切り部20A,20Bは、複数(本実施形態では2つ)設けられている。以下、2つの仕切り部20A,20Bのうち、筐体10の左壁16c寄りに設けられたものを「第一仕切り部20A」とし、筐体10の右壁16d寄りに設けられたものを「第二仕切り部20B」とする。第一仕切り部20Aおよび第二仕切り部20Bは、互いに同じ形状を有する。以下、内部空間9における第一仕切り部20Aと第二仕切り部20Bとの間の空間を「中間空間25」とする。
【0024】
通路30は、内部空間9における筐体10と第一仕切り部20Aとの間および第一仕切り部20Aのそれぞれに設けられた第一通路31と、内部空間9における筐体10と第二仕切り部20Bとの間および第二仕切り部20Bのそれぞれに設けられた第二通路32と、を含む。
第一通路31は、第一仕切り部20Aの上部通過孔21および下部通過孔22を含む(図5参照)。第一通路31は、内部空間9における第一仕切り部20Aの周りの空間に相当する。
第二通路32は、第二仕切り部20Bの上部通過孔21および下部通過孔22を含む(図5参照)。第二通路32は、内部空間9における第二仕切り部20Bの周りの空間に相当する。
【0025】
<電子ユニット>
図4に示すように、電子ユニット3は、内部空間9における中間空間25に設けられた複数の電子部品40~43を含む。複数の電子部品40~43は、パワーモジュールユニット40、コンデンサ41、第一制御基板42及び第二制御基板43を含む。電子ユニット3全体(複数の電子部品40~43のすべて)は、車両搭載状態かつ車両静止状態において液体8に浸っている。
【0026】
パワーモジュールユニット40は、パワースイッチング素子をU相、V相、W相毎に2個(上アームのパワースイッチング素子と下アームのパワースイッチング素子)、計6個のパワースイッチング素子を接続してなるブリッジ回路(電力変換回路)を有している。
なお、パワースイッチング素子としては、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、バイポーラジャンクショントランジスタ(Bipolar junction transistor)等が挙げられ、そのパワースイッチング素子は半導体化合物であるシリコン(Si)、ヒ化ガリウム(GaAs)、窒化ガリウム (GaN)、炭化珪素 (SiC)等を含む。本実施形態では、パワーモジュールユニット40は、第二部材12に取り付けられている。パワーモジュールユニット40を複数の電子部品40~43のうち最も発熱する最発熱部品と想定して以下説明する。パワーモジュールユニット40の発熱温度は、車両搭載状態かつ車両移動状態において複数の電子部品40~43の中で最も高い。パワーモジュールユニット40の下面以外の部分の少なくとも一部、好ましくは全部が車両搭載状態かつ車両静止状態において液体8に浸っている。
【0027】
図4は、筐体10の長手方向が水平方向(Y方向)に沿うようにインバータ装置1を配置した姿勢を示す。図6は、筐体10の長手方向が鉛直上下方向に沿うようインバータ装置1を起立させた姿勢を示す。パワーモジュールユニット40の少なくとも一部、好ましくは全部が、図4および図6のいずれの姿勢であっても液体8に浸っている。すなわち、パワーモジュールユニット40下面以外の部分の少なくとも一部、好ましくは全部が、常に液体8に浸っている。
【0028】
図4に示すように、コンデンサ41は、第二部材12に取り付けられている。コンデンサ41は、Y方向においてパワーモジュールユニット40と第二仕切り部20Bとの間に設けられている。コンデンサ41の上下高さ(コンデンサ41の上面)は、パワーモジュールユニット40の上下高さ(パワーモジュールユニット40の上面)よりも高い。コンデンサ41は、複数の電子部品40~43のうちパワーモジュールユニット40の次に発熱する部品である。コンデンサ41の少なくとも一部、好ましくは全部が、車両搭載状態かつ車両静止状態において液体8に浸っている。コンデンサ41の少なくとも一部、好ましくは全部が、パワーモジュールユニット40と同様、常に液体8に浸っている。
【0029】
第一制御基板42は、パワーモジュールユニット40へ駆動信号を出力し、パワースイッチング素子のオン/オフを切り替える回路基板である。第一制御基板42は、Y方向に延びる板状をなしている。第一制御基板42は、パワーモジュールユニット40の上方に設けられている。第一制御基板42の上面は、コンデンサ41の上面よりも低い。第一制御基板42の少なくとも一部、好ましくは全部が、車両搭載状態かつ車両静止状態において液体8に浸っている。
【0030】
第二制御基板43は、第一制御基板42に制御信号を出力する回路基板である。第二制御基板43は、Y方向に延びる板状をなしている。第二制御基板43は、コンデンサ41の上方に設けられている。第二制御基板43は、第一制御基板42よりも上方に設けられている。第二制御基板43の上面は、図5に示す仕切り部20A,20Bの上部通過孔21(最上位通路)よりも下方に配置されている。
【0031】
なお、図4中において、符号7Aは第一制御基板42と第二制御基板43とを接続する第一導電体、符号7Bは第二制御基板43と不図示の外部低電圧電源装置とを接続する第二導電体をそれぞれ示す。第二導電体7Bは、上壁15の接続孔15bを通じて不図示の配線を介して外部低電圧電源装置に接続される。
【0032】
<インバータ装置の作用>
インバータ装置1は、車両搭載状態かつ車両移動状態において、車両5の移動による揺れ及び重力の作用によって液体8が通路30を通過することにより液体8が内部空間9を循環するように構成されている。一方、車両搭載状態かつ車両静止状態においては、車両5の移動以外の揺れ等が作用しない限り、液体8は内部空間9を循環しない。
【0033】
図5に示すように、液体8の上面は、車両搭載状態かつ車両静止状態において仕切り部20A,20Bの上部通過孔21(最上位通路)よりも下方に配置される。すなわち、車両搭載状態かつ車両静止状態においては、液体8は上部通過孔21を通過しない。一方、車両搭載状態かつ車両移動状態においては、液体8は上部通過孔21を通過するように構成されている。
【0034】
例えば、車両5が左右方向の一方に揺れると、図8に示すように液面が傾く。すると、前記一方への揺れおよび重力の作用によって、液体8が第一仕切り部20Aの上部通過孔21および第二仕切り部20Bの下部通過孔22を通過する。このとき、液体8は、第一仕切り部20Aの上部通過孔21を矢印W1方向に流れ、第二仕切り部20Bの下部通過孔22を矢印W2方向に流れる。
【0035】
例えば、車両5が左右方向の他方に揺れると、図9に示すように液面が傾く。すると、前記他方への揺れおよび重力の作用によって、液体8が第一仕切り部20Aの下部通過孔22および第二仕切り部20Bの上部通過孔21を通過する。このとき、液体8は、第一仕切り部20Aの下部通過孔22を矢印W3方向に流れ、第二仕切り部20Bの上部通過孔21を矢印W4方向に流れる。
【0036】
例えば、車両5が左右方向の両方に揺れると、図8および図9に示すように液面が交互に傾く。すると、図7に示すように、前記両方への揺れ及び重力の作用によって液体8が第一通路31および第二通路32を通過する。すなわち、液体8は、第一仕切り部20Aの周囲を矢印W1,W3方向(図10の矢印方向)に循環するとともに、第二仕切り部20Bの周囲を矢印W2,W4方向に循環する。これにより、液体8は、第一仕切り部20Aと第二仕切り部20Bとの間の中間空間25を流動する。図7中において、傾斜した液面を二点鎖線で示す。
そして、中間空間25を流動する液体8は、電子ユニット3を構成する複数の電子部品40~43(図8参照)のそれぞれの隙間を通過する。中間空間25を流動する液体8は、複数の電子部品40~43の冷却に寄与する。
【0037】
<冷却ユニット>
図4に示すように、冷却ユニット4は、第二部材12において内部空間9とは反対側の部位に取り付けられている。冷却ユニット4は、パワーモジュールユニット40の下面を冷却するための冷却液50が流れる冷却路51を有する。例えば、冷却液50としては、冷却水にクーラント(LLC)が含まれたものが挙げられる。冷却路51は、内部空間9と例えばOリング等で仕切られ、連通していない。図中符号52は、パワーモジュールユニット40の下面に設けられたフィンを示す。フィン52は、X方向またはY方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0038】
冷却ユニット4は、複数のフィン52を収容する箱状の冷却部本体55と、冷却部本体55においてY方向の一方に設けられた第一冷却管56と、冷却部本体55においてY方向の他方に設けられた第二冷却管57と、第一冷却管56および第二冷却管57を通じて冷却路51に冷却液50を循環させる不図示のポンプと、を備える。冷却ユニット4は、ポンプの駆動により、冷却液50が冷却路51を循環するように構成されている。冷却路51を循環する冷却液50は、複数のフィン52のそれぞれの隙間を通過する。冷却路51を循環する冷却液50は、パワーモジュールユニット40の冷却に寄与する。
【0039】
<作用効果>
以上のように、本実施形態の液体循環構造2は、車両5に搭載用の液体循環構造である。液体循環構造2は、液体8を充填可能な内部空間9を有する筐体10と、内部空間9を仕切る仕切り部20A,20Bと、を備える。内部空間9の一部には、液体8が充填されている。内部空間9における筐体10と仕切り部20A,20Bとの間および仕切り部20A,20Bのそれぞれには、液体8が通過可能な通路30が設けられている。液体循環構造2を車両5に搭載した場合には、車両5の移動による揺れ及び重力の作用によって液体8が通路30を通過することにより液体8が内部空間9を循環するように構成されている。
この構成によれば、液体循環構造2を車両5に搭載した場合には液体8が筐体10の内部空間9を循環することで、ポンプ等の液体循環用装置を設ける必要がない。したがって、液体循環用装置を設けることなく筐体10内の液体8を循環することが可能な液体循環構造2を提供することができる。
【0040】
本実施形態において、最発熱部品に対して液体8が接触可能な部分の一部、好ましくは全部が、液体循環構造2が車両5に搭載されかつ車両5が静止している状態において液体8に浸っている。
この構成によれば、液体循環構造2が車両5に搭載されかつ車両5が静止している状態においても、最発熱部品から発生した熱が液体8に伝わるため、最発熱部品を放熱することができる。
【0041】
本実施形態において、通路30は、鉛直上下方向において最も上側に配置された最上位通路21を含む。車両5が静止している状態において、液体8の上面は最上位通路21よりも下方に配置される。液体循環構造2は、車両5が移動しているときに液体8が最上位通路21を通過するように構成されている。
この構成によれば、車両5が静止している状態において液体8の上面が最上位通路21以上に配置された場合と比較して、液体8の循環力を高めることができる。
【0042】
本実施形態において、仕切り部20A,20Bは、複数設けられている。
この構成によれば、仕切り部が1つのみ設けられた場合と比較して、液体8の循環力を高めることができる。
【0043】
本実施形態において、複数の仕切り部20A,20Bは、第一仕切り部20Aと、第一仕切り部20Aとは異なる位置に設けられた第二仕切り部20Bと、を含む。通路30は、内部空間9における筐体10と第一仕切り部20Aとの間および第一仕切り部20Aのそれぞれに設けられた第一通路31と、内部空間9における筐体10と第二仕切り部20Bとの間および第二仕切り部20Bのそれぞれに設けられた第二通路32と、を含む。液体循環構造2は、車両5の移動による揺れ及び重力の作用によって液体8が第一通路31及び第二通路32のそれぞれを通過することにより液体8が内部空間9における第一仕切り部20Aと第二仕切り部20Bとの間の中間空間25を流動するように構成されている。最発熱部品は、中間空間25に設けられている。
中間空間25は、内部空間9における他の空間よりも液体8の流動が活発となり、放熱効果も優れる。そのため、中間空間25に設けられた最発熱部品をより効果的に放熱することができる。
【0044】
本実施形態において、筐体10は、第一部材11と、第一部材11に接続される第二部材12と、第一部材11と第二部材12との接続部位に設けられ内部空間9を封止する弾性部材13と、を備える。
この構成によれば、筐体10の外部空間から内部空間9に水等が入ることを抑制することができる。加えて、筐体10の内部空間9から外部空間へ液体8が漏れることを抑制することができる。
【0045】
本実施形態において、筐体10は、筐体10の内部空間9と外部空間との間で気体は通過させかつ液体は通過させないフィルター18を備える。
この構成によれば、筐体10の内圧(内部空間9の圧力)と外圧(外部空間の圧力)とが互いに等しくなるため、内部空間9における結露の発生及び過度の高圧化を抑制することができる。
【0046】
本実施形態において、最発熱部品に対して液体8が接触可能な部分の一部、好ましくは全部が、液体8に浸っている。液体循環構造2は、最発熱部品に対して液体8が接触していない部分の一部を冷却するための冷却液50が流れる冷却路51を更に備える。
この構成によれば、冷却路51により最発熱部品が冷却されるため、最発熱部品をより効果的に放熱することができる。
【0047】
本実施形態において、冷却路51は、内部空間9と連通していない。
この構成によれば、冷却液50が液体8と混ざることによる熱移動は生じないため、液体8による最発熱部品の冷却効果と冷却液50による最発熱部品の冷却効果とが相俟って最発熱部品をより効果的に放熱することができる。
【0048】
本実施形態において、仕切り部20A,20Bは、鉛直上下方向に延びる板状をなしている。通路30は、仕切り部20A,20Bの上部を仕切り部20A,20Bの板厚方向に開口する上部通過孔21と、仕切り部20A,20Bの下部を仕切り部20A,20Bの板厚方向に開口する下部通過孔22と、を含む。
この構成によれば、仕切り部20A,20Bの上部通過孔21及び下部通過孔22を通じて液体8が筐体10の内部空間9を循環するため、重力の作用をより効果的に活用することができる。
【0049】
本実施形態において、インバータ装置1は、上記の液体循環構造2を備える。
この構成によれば、上記の液体循環構造2を備えるため、筐体10外に液体循環用装置を設けることなく筐体10内の液体8を循環することが可能なインバータ装置1を提供することができる。
【0050】
本実施形態において、内部空間9には、パワーモジュールユニット40及びコンデンサ41を含む複数の電子部品40~43が設けられている。パワーモジュールユニット40及びコンデンサ41の一部、好ましくは全部が、液体8に常に浸っている。
この構成によれば、車両5の移動を利用した液体8の循環により複数の電子部品40~43を放熱することができるため、電子部品同士の温度差を可及的に小さくすることができる。したがって、電子部品の故障を抑制し、長寿命化を図ることができる。加えて、パワーモジュールユニット40及びコンデンサ41をそれぞれ絶縁するためのポッティング材および基板のコーティング材が不要となるため、ポッティング材およびコーティング材の材料コストを低減することができる。加えて、ポッティング材およびコーティング材を不要とした分、インバータ装置1を小型化することができる。
【0051】
本実施形態において、車両5は、上記のインバータ装置1を備える。
この構成によれば、上記のインバータ装置1を備えるため、電子部品の故障を抑制することができる。したがって、車両5自体の故障を抑制することができる。
【0052】
<第二実施形態>
上述した第一実施形態では、仕切り部20A,20Bの板厚方向から見て上部通過孔21および下部通過孔22はそれぞれX方向に長手を有する矩形状をなしている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、図11に示すように、仕切り部220の板厚方向から見て、上部通過孔221および下部通過孔222はそれぞれX方向に長手を有する楕円形状(長円形状)をなしていてもよい。第二実施形態において、上記第一実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0053】
上部通過孔221は、仕切り部220の上部における上端近傍を板厚方向に開口する貫通孔である。仕切り部220の上端には、下方に窪む凹部は設けられていない。仕切り部220の上端は、第一部材11の上壁15に固定されている。
下部通過孔222は、仕切り部220の下部における下端近傍を板厚方向に開口する貫通孔である。仕切り部220の下端には、上方に窪む凹部は設けられていない。仕切り部220の下端は、第二部材12に固定されている。
車両搭載状態かつ車両移動状態においては、液体8は上部通過孔221および下部通過孔222を矢印方向に通過することにより内部空間9を循環する。
【0054】
この構成によれば、仕切り部220の上部通過孔221及び下部通過孔222を通じて液体8が筐体10の内部空間9を循環するため、重力の作用をより効果的に活用することができる。加えて、仕切り部220の上端に凹部が設けられた場合と比較して、仕切り部220の上端を第一部材11の上壁15に強固に固定することができる。加えて、仕切り部220の下端に凹部が設けられた場合と比較して、仕切り部220の下端を第二部材12に強固に固定することができる。
【0055】
<第三実施形態>
上述した第一実施形態では、第一仕切り部20Aが上部通過孔21および下部通過孔22を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、図12に示すように、仕切り部320は、上部通過孔および下部通過孔を有しなくてもよい。仕切り部320の板厚方向から見て、仕切り部320は、X方向に長手を有する矩形板状をなしていてもよい。第三実施形態において、上記第一実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0056】
仕切り部320には、凹部および貫通孔は設けられていない。仕切り部320のX方向の一端は、第一部材11の前壁16aに固定されている。仕切り部320のX方向の他端は、第一部材11の後壁16bに固定されている。内部空間9における第一部材11の上壁15と仕切り部320の上端との間には、鉛直上下方向において最も上側に配置された最上位通路321が設けられている。内部空間9における仕切り部320の下端と第二部材12との間には鉛直上下方向において最も下側に配置された最下位通路322が設けられている。
車両搭載状態かつ車両移動状態においては、液体8は最上位通路321および最下位通路322を矢印方向に通過することにより内部空間9を循環する。
【0057】
この構成によれば、最上位通路321及び最下位通路322を通じて液体8が筐体10の内部空間9を循環するため、重力の作用をより効果的に活用することができる。加えて、仕切り部320に凹部および貫通孔が設けられた場合と比較して、仕切り部320の剛性を高めることができる。加えて、仕切り部320のX方向の両端に凹部が設けられた場合と比較して、仕切り部320の両端を第一部材11に強固に固定することができる。
【0058】
<第四実施形態>
上述した第一実施形態では、冷却路51が内部空間9と連通していない例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、図13に示すように、冷却路451は、内部空間9と連通していてもよい。液体8は、冷却液を兼ねていてもよい。液体循環構造402は、冷却ユニット4を備えていなくてもよい。さらに、冷却ユニット4に流れる冷却液50を循環させるポンプを備えていなくてもよい。第四実施形態において、上記第一実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0059】
液体循環構造402は、第二部材12において内部空間9(第一循環部)とは反対側の部位に設けられた第二循環部404を備える。第二循環部404は、パワーモジュールユニット40の下面を冷却するために液体8が流れる冷却路451を有する。第二循環部404は、複数のフィン52を収容する箱状をなしている。第二循環部404は、車両5の移動による揺れ及び重力の作用によって液体8が冷却路451を循環するように構成されている。冷却路451を循環する液体8は、複数のフィン52のそれぞれの隙間を通過する。冷却路451を循環する液体8は、パワーモジュールユニット40の冷却に寄与する。パワーモジュールユニット40は、筐体10がいかなる姿勢であっても液体8に浸っている。
【0060】
この構成によれば、内部空間9への充填用及び冷却路451への流通用として一種類の液体8を用意すれば済むため、液体8が冷却液50を兼ねない場合(異なる場合)と比較して、液体8の材料コストを低減することができる。
【0061】
この構成によれば、筐体10がいかなる姿勢であっても、最発熱部品から発生した熱が液体8に伝わるため、最発熱部品を放熱することができる。
【0062】
<第五実施形態>
上述した第一実施形態では、中間空間25を流動する液体8が複数の電子部品40~43のそれぞれの隙間を通過する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、図14に示すように、中間空間25を流動する液体8は、電子部品503の整流部560に沿って一方向に流れてもよい。電子部品503は、液体8が内部空間9を循環するときに液体8を一方向に流す整流部560を備えていてもよい。第五実施形態において、上記第一実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0063】
例えば、整流部560は、電子部品503の上面に設けられた溝である。整流部560は、Y方向に直線状に延びている。整流部560は、電子部品503のY方向の一端から他端にわたって延びている。整流部560は、X方向に間隔をあけて複数(例えば本実施形態では3つ)設けられている。複数の整流部560は、X方向にそれぞれ同じ間隔をあけて配置されている。
【0064】
この構成によれば、液体8が電子部品503の周囲を流れるときに整流部560に沿って一方向に流れるため、液体8の流れの過程で淀みが生じることを抑制することができる。
【0065】
<第六実施形態>
上述した第一実施形態では、電子部品(例えばコンデンサ41)が直方体形状を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、図15に示すように、電子部品603は、直方体の角部をカットした形状を有していてもよい。第六実施形態において、上記第一実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0066】
電子部品603は、鉛直上下方向に沿う第一面671と、第一面671に対して直交する第二面672と、第一面671および第二面672に連なるとともに鉛直上下方向に対して斜めに交差する傾斜面673と、を備えていてもよい。第一面671は、電子部品603の左側面および右側面に相当する。第二面672は、電子部品603の上面および下面に相当する。傾斜面673は、電子部品603の左側面および右側面並びに上面および下面に連なるテーパ状の面に相当する。
【0067】
この構成によれば、液体8が電子部品603の第一面671及び第二面672の一方から他方に沿って流れるときに傾斜面673を経由するため、液体8の流れの過程で淀みが生じることを抑制することができる。
【0068】
<変形例>
なお、上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
上記実施形態においては、液体循環構造は、車両に搭載されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、液体循環構造は、船舶および航空機等の車両以外の移動体に搭載されていてもよい。
【0069】
上記実施形態においては、液体が内部空間の一部に充填されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、液体は、内部空間の全部に充填されていてもよい。すなわち、液体は、内部空間の少なくとも一部に充填されていればよい。
【0070】
上記実施形態においては、内部空間に複数の電子部品が設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、内部空間に1つのみの電子部品が設けられていてもよい。例えば、電子部品の設置数は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0071】
上記実施形態においては、コンデンサはY方向においてパワーモジュールユニットと第二仕切り部との間に設けられ、第一制御基板はパワーモジュールユニットの上方に設けられ、第二制御基板はコンデンサ及び第一制御基板よりも上方に設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、下方から、パワーモジュールユニット、第一制御基板、コンデンサ、第二制御基板の順に積み上げた積層構造をなしていてもよい。例えば、パワーモジュールユニット、第一制御基板、コンデンサ及び第二制御基板の設置位置は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0072】
上記実施形態においては、最発熱部品の一部または全部は液体循環構造が車両に搭載されかつ車両が静止している状態において液体に浸っている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、最発熱部品の一部または全部は、液体循環構造が車両に搭載されていない状態において液体に浸っていてもよい。
【0073】
上記実施形態においては、車両が静止している状態において液体の上面は最上位通路よりも下方に配置される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、車両が静止している状態において液体の上面は最上位通路以上に配置されてもよい。
【0074】
上記実施形態においては、仕切り部が複数設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、仕切り部は、1つのみ設けられていてもよい。例えば、仕切り部の設置数は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0075】
上記実施形態においては、液体循環構造は、車両の移動による揺れ及び重力の作用によって液体が第一通路及び第二通路のそれぞれを通過することにより液体が内部空間における第一仕切り部と第二仕切り部との間の中間空間を流動するように構成されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、液体循環構造は、車両の移動による揺れ及び重力の作用によって液体が第一通路及び第二通路のいずれか一方を通過することにより液体が中間空間を流動するように構成されていてもよい。
【0076】
上記実施形態においては、筐体は、第一部材と、第一部材に接続される第二部材と、第一部材と第二部材との接続部位に設けられ内部空間を封止する弾性部材と、を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、筐体は、弾性部材を備えていなくてもよい。例えば、第一部材および第二部材は、互いに隙間なく連結されていてもよい。
【0077】
上記実施形態においては、筐体の車両搭載状態において、前壁は筐体の最前部に配置され、後壁は筐体の最後部に配置され、左壁は筐体の最左側部に配置され、右壁は筐体の最右側部に配置される例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、筐体の車両搭載状態において、前壁は最後部でもよく、左壁または右壁は最前部あるいは最後部に配置されていてもよい。
【0078】
上記実施形態においては、第一部材が上壁及び周壁を有し、第二部材の外形は上下方向から見て第一部材の外形よりも大きく、第二部材は張出し部を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第一部材は、周壁を有しなくてもよい。例えば、第二部材は、底壁と、底壁の周囲に連結する周壁と、を有していてもよい。また、第一部材及び第二部材は、上下方向から見て互いに同じ外形を有してもよく、互いに異なる外形を有していてもよい。例えば、第一部材及び第二部材の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0079】
上記実施形態においては、筐体の長手方向(水平方向、Y方向、冷却路の伸びる方向)を定めて説明したが、これに限らない。例えば、筐体における所定の辺がそれ以外の辺に比べて長くてもよく、筐体におけるすべての辺の長さがそれぞれ等しくてもよい。例えば、筐体の各辺の長さは、要求仕様に応じて変更することができる。
【0080】
上記実施形態においては、第二部材の張出し部がボルト等の締結部材によってモータユニットに固定されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第一部材が、ボルト等の締結部材によってモータユニットに固定されていてもよい。例えば、モータユニットに対する第一部材及び第二部材の固定態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0081】
上記実施形態においては、第二部材が車両搭載状態において筐体の最下部に配置されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第二部材は、車両搭載状態において筐体の最上部に配置されていてもよい。例えば、車両搭載状態における第二部材の配置態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0082】
上記実施形態においては、最発熱部品をパワーモジュールユニットとして説明したが、これに限らない。例えば、筐体内の電子ユニットに含まれるいかなる部品も最発熱部品になりうる。
【0083】
上記実施形態においては、パワーモジュールユニットは、パワースイッチング素子をU相、V相、W相毎に2個(上アームのパワースイッチング素子と下アームのパワースイッチング素子)、計6個のパワースイッチング素子を接続してなるブリッジ回路(電力変換回路)を有し、パワースイッチング素子のオン/オフの切り替えで直流電力を交流電力へ変換してモータを駆動するとして説明したが、これに限らない。例えば、パワーモジュールユニットは、外部高電圧電源からインバータへ供給される直流電力の電圧を降圧または昇圧するDCDCコンバータでもよい。さらに、例えば、DCDCコンバータはパワースイッチング素子を二つ有していてもよい。または、パワーモジュールユニットは直流電流を交流電流に変換するインバータ部と、直流電流の電圧を変えるコンバータ部の両方を有していてもよい。
【0084】
上記実施形態においては、筐体は、筐体の内部空間と外部空間との間で気体は通過させかつ液体は通過させないフィルターを備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、筐体は、フィルターを備えていなくてもよい。例えば、筐体の構成は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0085】
上記実施形態においては、仕切り部が鉛直上下方向に延びる板状をなしている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、仕切り部は、鉛直上下方向に対して交差する方向に延びていてもよい。例えば、仕切り部は、柱状をなしていてもよい。例えば、仕切り部の形状は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0086】
上記実施形態においては、液体循環構造を備えるインバータ装置の例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、液体循環構造は、インバータ装置以外の他の装置に適用してもよい。
例えば、車両に搭載用のバッテリに液体循環構造を適用してもよい。この構成によれば、液体循環用装置を設けることなく電解液(液体)を循環することができる。そのため、電解液中においてイオン濃度が高い層と低い層とに分離するいわゆる成層化現象が発生することを抑え、バッテリの劣化を抑制することができる。
【0087】
以上、図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。上記において実施形態又はその変形例として記載した各構成要素は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において適宜組み合わせることができるし、また、組み合わされた複数の構成要素のうち一部の構成要素を適宜用いないようにすることもできる。
【符号の説明】
【0088】
1…インバータ装置、2…液体循環構造、5…車両(移動体)、8…液体、9…内部空間、10…筐体、11…第一部材、12…第二部材、13…弾性部材、18…フィルター、20A…第一仕切り部(仕切り部)、20B…第二仕切り部(仕切り部)、21…上部通過孔(最上位通路)、22…下部通過孔、25…中間空間、30…通路、31…第一通路、32…第二通路、40…パワーモジュールユニット(電子部品)、41…コンデンサ(電子部品)、42…第一制御基板(電子部品)、43…第二制御基板(電子部品)、50…冷却液、51…冷却路、220…仕切り部、221…上部通過孔(最上位通路)、222…下部通過孔、320…仕切り部、321…最上位通路、402…液体循環構造、503…電子部品、560…整流部、603…電子部品、671…第一面、672…第二面、673…傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15