(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055098
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】吊上電磁石用制御装置及びそれを備えた吊上電磁石装置
(51)【国際特許分類】
B66C 1/08 20060101AFI20220331BHJP
B66C 1/06 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B66C1/08 C
B66C1/06 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020162479
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】田村 佳嗣
(72)【発明者】
【氏名】浅田 尭志
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004HA07
3F004HB02
3F004JA10
(57)【要約】
【課題】運転員の技量に影響を受けることなく、吊上電磁石によって吊り上げられた鋼板の落下を精度良く検出可能な吊上電磁石用制御装置を提供する。
【解決手段】吊上電磁石用制御装置1は、電磁力によって鋼板を吊り上げる吊上電磁石2を駆動させる電気回路4を制御する。吊上電磁石用制御装置1は、吊上電磁石2によって吊り上げられている鋼板を落下させる際に、吊上電磁石2に流れる励磁電流を低下させるように電気回路4に流れる電流を制御する電流制御部10と、電流制御部10によって電気回路4に流れる電流を制御している際に、吊上電磁石2に流れる励磁電流を検出する励磁電流検出部20と、励磁電流検出部20によって検出された前記励磁電流に基づいて、吊上電磁石2によって吊り上げられている鋼板の落下を検出する鋼板落下検出部30と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁力によって鋼板を吊り上げる吊上電磁石を駆動させる電気回路を制御する吊上電磁石用制御装置であって、
前記吊上電磁石によって吊り上げられている鋼板を落下させる際に、前記吊上電磁石に流れる励磁電流を低下させるように前記電気回路に流れる電流を制御する電流制御部と、
前記電流制御部によって前記電気回路に流れる電流を制御している際に、前記吊上電磁石に流れる励磁電流を検出する励磁電流検出部と、
前記励磁電流検出部によって検出された前記励磁電流に基づいて、前記吊上電磁石によって吊り上げられている前記鋼板の落下を検出する鋼板落下検出部と、
を有する、
吊上電磁石用制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吊上電磁石用制御装置において、
前記鋼板落下検出部は、前記励磁電流の単位時間あたりの変化量の極性が変化したとき、または、前記励磁電流のピーク値を検出したときに、前記吊上電磁石によって吊り上げられている前記鋼板の落下を検出する、
吊上電磁石用制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吊上電磁石用制御装置において、
前記電流制御部は、前記吊上電磁石によって吊り上げられている前記鋼板を落下させる際に、前記電気回路に、前記吊上電磁石の励磁電流を低下させるような放電回路を形成する、
吊上電磁石用制御装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の吊上電磁石用制御装置において、
前記電流制御部は、前記吊上電磁石によって吊り上げられている前記鋼板を落下させる際に、前記吊上電磁石の励磁電流を低下させるように、前記電気回路に供給する電流を調整する、
吊上電磁石用制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の吊上電磁石用制御装置において、
前記励磁電流検出部は、電源に対して前記電気回路を介して電気的に並列に接続された複数の吊上電磁石のうち一つの吊上電磁石に流れる励磁電流を検出し、
前記鋼板落下検出部は、前記励磁電流検出部によって検出された前記励磁電流に基づいて、前記一つの吊上電磁石によって吊り上げられている鋼板の落下を検出する、
吊上電磁石用制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の吊上電磁石用制御装置と、
前記吊上電磁石と、
前記電気回路と、
を備える、
吊上電磁石装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁力によって鋼板を吊り上げる吊上電磁石を駆動させる電気回路を制御する吊上電磁石用制御装置及びそれを備えた吊上電磁石装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁力によって鋼板を吊り上げる吊上電磁石を駆動させる電気回路を制御する吊上電磁石用制御装置が知られている。このような吊上電磁石用制御装置として、例えば特許文献1には、吊上電磁石及び該吊上電磁石によって吊り上げられた鋼板に形成される磁気回路中の磁束を検出する磁束検出器の検出出力を用いて、前記鋼板の吸着、離脱を検出する吊上電磁石の鋼板吸着離脱検出装置が知られている。
【0003】
前記鋼板吸着離脱検出装置は、前記磁束検出器の検出出力を微分して得られるパルス信号をその極性別に計数することにより、前記鋼板の吸着数または離脱数を判別する、吸着離脱判別回路を備えている。
【0004】
これにより、従来、吸着枚数の選択制御または各吊上電磁石間の吊不全修正制御等を運転員の勘に頼っていたのに比べ、容易かつ正確な制御を行うことが可能となり、安全性および作業能率の向上が望める。また、鋼板の吸着、離脱を、運転員が目視により確認することなく自動的に検出できるため、吸着している鋼板の枚数の変化状態を確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、吊上電磁石に吸着されている鋼板が落下する場合、該鋼板が前記吊上電磁石に対して剥離し始めた時点で、前記吊上電磁石によって形成される磁気回路の磁束が変化する。そのため、前記磁気回路における磁束の変化は、前記鋼板の落下よりも前のタイミングで生じる。また、前記鋼板が前記吊上電磁石に対して剥離する際に生じる前記磁束の変化は緩やかであり、前記磁束の変化を精度良く検出することは難しい。そのため、前記特許文献1の鋼板吸着離脱検出装置では、吊上電磁石に対する鋼板の落下を、前記鋼板が落下するタイミングで精度良く検出することが難しい。
【0007】
ここで、吊上電磁石が複数枚の鋼板を吊り上げていて、前記吊上電磁石に対して最下層の鋼板のみを落下させる場合、前記吊上電磁石に流れる励磁電流を低下させて前記最下層の鋼板を落下させた後に、前記吊上電磁石に所定の励磁電流を流して磁束を生じさせることにより、他の鋼板を前記吊上電磁石に再度吸着させる必要がある。そのため、前記吊上電磁石から鋼板が落下するタイミングを予測して、前記吊上電磁石に励磁電流を流す必要があり、吊上電磁石装置を操作する運転員の技量が必要であった。
【0008】
これに対し、運転員の技量に影響を受けることなく、吊上電磁石が吊り上げている鋼板の枚数を精度良くコントロールできるように、鋼板の落下を精度良く検出可能な装置が望まれている。
【0009】
本発明の目的は、運転員の技量に影響を受けることなく、吊上電磁石によって吊り上げられた鋼板の落下を精度良く検出可能な吊上電磁石用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る吊上電磁石用制御装置は、電磁力によって鋼板を吊り上げる吊上電磁石を駆動させる電気回路を制御する吊上電磁石用制御装置である。この吊上電磁石用制御装置は、前記吊上電磁石によって吊り上げられている鋼板を落下させる際に、前記吊上電磁石に流れる励磁電流を低下させるように前記電気回路に流れる電流を制御する電流制御部と、前記電流制御部によって前記電気回路に流れる電流を制御している際に、前記吊上電磁石に流れる励磁電流を検出する励磁電流検出部と、前記励磁電流検出部によって検出された前記励磁電流に基づいて、前記吊上電磁石によって吊り上げられている前記鋼板の落下を検出する鋼板落下検出部と、を有する(第1の構成)。
【0011】
吊上電磁石によって吊り上げられている鋼板を落下させる際には、電流制御部によって、前記吊上電磁石に流れる励磁電流を低下させる。前記鋼板が前記吊上電磁石に対して落下するときには、磁束の変化に伴って誘導電流が前記吊上電磁石に流れるため、前記吊上電磁石に流れる励磁電流が一時的に増加する。このような励磁電流の変化は、前記鋼板の落下時に生じるとともに、前記鋼板の落下によって生じる磁束の変化に比べて大きい。
【0012】
よって、上述のような励磁電流の変化を励磁電流検出部によって検出し、該検出された励磁電流に基づいて、鋼板落下検出部が鋼板の落下を検出することにより、前記吊上電磁石に対する前記鋼板の落下を精度良く検出することができる。
【0013】
しかも、前記吊上電磁石に流れる励磁電流の変化を検出することにより、前記吊上電磁石に対する前記鋼板の落下を検出できるため、吊上電磁石装置を操作する運転員の技量に影響を受けることなく、前記鋼板の落下を検出することができる。
【0014】
したがって、上述の構成により、運転員の技量に影響を受けることなく、吊上電磁石によって吊り上げられた鋼板の落下を精度良く検出することができる。
【0015】
前記第1の構成において、前記鋼板落下検出部は、前記励磁電流の単位時間あたりの変化量の極性が変化したとき、または、前記励磁電流のピーク値を検出したときに、前記吊上電磁石によって吊り上げられている鋼板の落下を検出する(第2の構成)。
【0016】
これにより、前記吊上電磁石に流れる励磁電流の変化を精度良く検出することができる。よって、前記吊上電磁石に対する鋼板の落下を、前記吊上電磁石に流れる励磁電流を用いて精度良く検出することができる。
【0017】
前記第1または第2の構成において、前記電流制御部は、前記吊上電磁石によって吊り上げられている鋼板を落下させる際に、前記電気回路に、前記吊上電磁石の励磁電流を低下させるような放電回路を形成する(第3の構成)。
【0018】
これにより、前記吊上電磁石によって吊り上げられている鋼板を落下させる際に、前記吊上電磁石の励磁電流を放電回路によって低下させることができる。よって、前記吊上電磁石の励磁電流を低下させる構成を、簡単な構成によって実現できる。
【0019】
前記第1または第2の構成において、前記電流制御部は、前記吊上電磁石によって吊り上げられている鋼板を落下させる際に、前記吊上電磁石の励磁電流を低下させるように、前記電気回路に供給する電流を調整する(第4の構成)。
【0020】
これにより、前記吊上電磁石によって吊り上げられている鋼板を落下させる際に、電気回路に供給する電流を調整することによって、前記吊上電磁石の励磁電流を容易に低下させることができる。
【0021】
前記第1から第4の構成のうちいずれか一つの構成において、前記励磁電流検出部は、電源に対して前記電気回路を介して電気的に並列に接続された複数の吊上電磁石のうち一つの吊上電磁石に流れる励磁電流を検出する。前記鋼板落下検出部は、前記励磁電流検出部によって検出された前記励磁電流に基づいて、前記一つの吊上電磁石によって吊り上げられている鋼板の落下を検出する(第5の構成)。
【0022】
このように電源に対して複数の吊上電磁石が電気的に並列に接続されている場合、前記複数の吊上電磁石における温度のばらつきなどにより、前記複数の吊上電磁石の電気抵抗にばらつきが生じて、前記複数の吊上電磁石に流れる励磁電流にばらつきが生じる。そうすると、前記複数の吊上電磁石によって生じる磁束も吊上電磁石毎に変わるため、前記複数の吊上電磁石による鋼板の吸着力にもばらつきが生じる。
【0023】
このような場合において、上述の構成では、前記複数の吊上電磁石のうち一つの吊上電磁石に流れる励磁電流を検出し、該検出した励磁電流に基づいて、前記一つの吊上電磁石によって吊り上げられている鋼板の落下を検出する。これにより、前記複数の吊上電磁石において、各吊上電磁石の電気抵抗のばらつきに応じて、鋼板の落下を精度良く検出することができる。
【0024】
本発明の一実施形態に係る吊上電磁石装置は、上述の第1から第5の構成のうちいずれか一つの構成を有する吊上電磁石用制御装置と、前記吊上電磁石と、前記電気回路と、を備える(第6の構成)。
【0025】
これにより、吊上電磁石に対する鋼板の落下を精度良く検出可能な吊上電磁石装置が得られる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一実施形態に係る吊上電磁石用制御装置は、吊上電磁石によって吊り上げられている鋼板を落下させる際に、前記吊上電磁石に流れる励磁電流を低下させるように電気回路に流れる電流を制御する電流制御部と、前記電流制御部によって前記電気回路に流れる電流を制御している際に、前記吊上電磁石に流れる励磁電流を検出する励磁電流検出部と、前記励磁電流検出部によって検出された前記励磁電流に基づいて、前記吊上電磁石によって吊り上げられている前記鋼板の落下を検出する鋼板落下検出部と、を有する。
【0027】
これにより、前記吊上電磁石に対して前記鋼板が落下する際に生じる励磁電流の変化を、前記励磁電流検出部によって検出し、該励磁電流検出部によって検出された励磁電流に基づいて、前記鋼板落下検出部が前記鋼板の落下を検出することができる。したがって、運転員の技量に影響を受けることなく、前記吊上電磁石に対する前記鋼板の落下を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る吊上電磁石用制御装置を備えた吊上電磁石装置の概略構成を示す制御回路図である。
【
図2】
図2は、吊上電磁石に吸引されている鋼板が落下した際に、前記吊上電磁石に流れる励磁電流の変化及び磁束の変化を示す図である。
【
図3】
図3は、鋼板が吊上電磁石から落下する際の励磁電流及び磁束の変化と、前記鋼板の挙動との関係を示す図である。
【
図4】
図4は、吊上電磁石用制御装置の鋼板落下の検出動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態2に係る吊上電磁石用制御装置を備えた吊上電磁石装置の概略構成を示す制御回路図である。
【
図6】
図6は、実施形態3に係る吊上電磁石用制御装置を備えた吊上電磁石装置の概略構成を示す制御回路図である。
【
図7】
図7は、実施形態3の変形例に係る吊上電磁石用制御装置が電源から吊上電磁石に電力を供給している際の電流の流れを示す制御回路図である。
【
図8】
図8は、実施形態3の変形例に係る吊上電磁石用制御装置が吊上電磁石の放電を行っている際の電流の流れを示す制御回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0030】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る吊上電磁石用制御装置1を備えた吊上電磁石装置X1の概略構成を示す制御回路図である。この吊上電磁石装置X1は、吊上電磁石2によって生じる磁束により、吊上電磁石2に鋼板M等(
図4参照)を吸引するための装置である。
【0031】
図1に示すように、吊上電磁石装置Xでは、吊上電磁石用制御装置1によって電気回路4の駆動を制御することにより、電源3から吊上電磁石2に電力が供給される。吊上電磁石装置X1では、吊上電磁石2に供給する電力を制御することにより、吊上電磁石2に生じる磁束が制御される。よって、吊上電磁石用制御装置1によって電気回路4の駆動を制御することにより、吊上電磁石2の磁気吸引力が制御される。
【0032】
本実施形態の吊上電磁石装置X1は、吊上電磁石2と、吊上電磁石2に対する電力供給を制御する電気回路4と、電気回路4の駆動を制御する吊上電磁石用制御装置1とを有する。
【0033】
電気回路4は、電源3と吊上電磁石2とを電気的に接続する。電気回路4は、一対の開閉器41,42と、放電回路43と、電流検出器44とを有する。電源3は、所定の電圧の直流電力を出力する。
【0034】
一対の開閉器41,42は、それぞれ、例えば電磁開閉器または電磁接触器である。一対の開閉器41,42のうち一方の開閉器41は、電源3の正極側の電源ラインPと吊上電磁石2とを電気的に接続または切断し、他方の開閉器42は、電源3の負極側の電源ラインNと吊上電磁石2とを電気的に接続または切断する。一対の開閉器41,42は、吊上電磁石用制御装置1から出力される駆動信号に応じて同時に開閉動作を行う。
【0035】
一対の開閉器41,42が閉じた状態では、電源3から電気回路4を介して吊上電磁石2に直流電力が供給される。一対の開閉器41,42が開いた状態では、電源3から吊上電磁石2に直流電力は供給されない。よって、一対の開閉器41,42は、電源3から吊上電磁石2への直流電力の供給を制御する。
【0036】
放電回路43は、一対の開閉器41,42と吊上電磁石2との間で電源ラインP,N同士を電気的に接続するように設けられている。放電回路43は、電源3及び吊上電磁石2に対して電気的に並列に接続されている。
【0037】
放電回路43は、放電回路用開閉器45と、抵抗器46とを有する。放電回路43は、一対の開閉器41,42が開状態で且つ放電回路用開閉器45が閉状態のときに、吊上電磁石2と閉回路を構成し、抵抗器46によって、吊上電磁石2に貯えられた電力を消費する。すなわち、放電回路43は、吊上電磁石2の放電を行う。
【0038】
放電回路用開閉器45は、例えば電磁開閉器または電磁接触器である。放電回路用開閉器45は、吊上電磁石用制御装置1によって、開閉状態を制御される。放電回路用開閉器45は、一対の開閉器41,42が開状態で且つ吊上電磁石2の放電を行うときに、閉状態である。
【0039】
抵抗器46は、吊上電磁石2の抵抗値の10倍以内の抵抗値を有する。これにより、吊上電磁石2に流れる励磁電流を、すぐに低下させるのではなく、比較的ゆっくりと低下させることができる。よって、吊上電磁石2によって複数枚の鋼板を吸引している場合に、吊上電磁石2に流れる励磁電流が急激に低下して前記複数枚の鋼板が一度に落下するのを防止できる。
【0040】
電流検出器44は、吊上電磁石2に流れる電流を検出する。具体的には、電流検出器44は、吊上電磁石2に吸引されている鋼板が吊上電磁石2から落下した際に、吊上電磁石2に生じる電磁誘導に起因した電流変化を検出する。電流検出器44の出力は、吊上電磁石用制御装置1に入力される。
【0041】
なお、電流検出器44の出力は、吊上電磁石2に対する電源3からの電力供給を制御する際に用いられてもよい。
【0042】
吊上電磁石用制御装置1は、電気回路4の駆動を制御することにより、吊上電磁石2の駆動を制御する。吊上電磁石用制御装置1は、電気回路4における一対の開閉器41,42、放電回路用開閉器45の駆動をそれぞれ制御する。
【0043】
具体的には、吊上電磁石用制御装置1は、一対の開閉器41,42の駆動を制御することにより、電源3から吊上電磁石2への電力供給を制御する。また、吊上電磁石用制御装置1は、放電回路用開閉器45の駆動を制御することにより、吊上電磁石2の放電を制御する。さらに、吊上電磁石用制御装置1は、放電回路43による吊上電磁石2の放電中に電流検出器44によって検出された吊上電磁石2の励磁電流に基づいて、吊上電磁石2によって吸引されている鋼板の落下を検出する。
【0044】
詳しくは、吊上電磁石用制御装置1は、電流制御部10と、励磁電流検出部20と、鋼板落下検出部30とを有する。
【0045】
電流制御部10は、一対の開閉器41,42及び放電回路用開閉器45の駆動を制御する。電流制御部10は、一対の開閉器41,42及び放電回路用開閉器45に対して、駆動信号を生成して出力する。電流制御部10は、一対の開閉器41,42の開閉を制御することにより、電源3から吊上電磁石2への電力供給を制御する。電流制御部10は、一対の開閉器41,42が開状態のときに、放電回路用開閉器45を閉状態にすることにより、放電回路43によって吊上電磁石2の放電を行う。すなわち、電流制御部10は、放電回路43によって、吊上電磁石2に流れる励磁電流を低下させるように電気回路4に流れる電流を制御する。
【0046】
励磁電流検出部20は、電流制御部10によって吊上電磁石2に流れる励磁電流を制御している際に、電流検出器44によって検出された励磁電流の値を取得する。また、励磁電流検出部20は、電流検出器44から取得した励磁電流の値を用いて、励磁電流の単位時間当たりの変化量(励磁電流の微分値)を求める。
【0047】
鋼板落下検出部30は、励磁電流検出部20が取得した励磁電流の値に基づいて、吊上電磁石2に吸引されている鋼板Mの落下を検出する。具体的には、鋼板落下検出部30は、励磁電流検出部20によって求められた励磁電流の微分値の極性が正から負に変化した場合に、吊上電磁石2に吸引されている鋼板Mが落下していると検出する。なお、鋼板落下検出部30は、励磁電流の微分値の極性が負から正に変化した場合に、吊上電磁石2に吸引されている鋼板Mが落下していると検出してもよい。
【0048】
上述のように鋼板落下検出部30によって鋼板Mが吊上電磁石2から落下したことが検出された場合には、作業員等に報知するために吊上電磁石用制御装置1の外部に信号が出力されてもよい。吊上電磁石用制御装置1は、前記出力された信号に基づいて、画面表示等を行ってもよい。
【0049】
図2は、吊上電磁石2に吸引されている鋼板Mが落下した際に、吊上電磁石2に流れる励磁電流の変化及び磁束の変化を示す図である。なお、
図2に示す例では、吊上電磁石2に3枚の鋼板Mが吸引されていて、3枚の鋼板Mが吊上電磁石2から順に落下したときの励磁電流及び磁束の変化を示している。
【0050】
図2に示すように、鋼板Mが吊上電磁石2から落下する際に、吊上電磁石2に流れる励磁電流は一時的に増加する。鋼板Mが吊上電磁石2から落下するタイミング以外では、前記励磁電流が徐々に低下している。
【0051】
一方、吊上電磁石2に生じる磁束は、鋼板Mが吊上電磁石2から落下するタイミングよりも前に変化している(
図2のP1からP3参照)。このように、吊上電磁石2に生じる磁束が変化するタイミングは、鋼板Mが吊上電磁石2から落下するタイミングとあまり一致していない。しかも、吊上電磁石2に生じる磁束の変化は、わずかであり、吊上電磁石2に流れる励磁電流の変化に比べてもかなり判別しにくい。
【0052】
このように鋼板Mの落下を判別しにくい磁束ではなく、吊上電磁石2に流れる励磁電流を、鋼板Mの落下の判別に用いることにより、吊上電磁石2からの鋼板Mの落下を精度良く検出することができる。
【0053】
図3は、鋼板Mが吊上電磁石2から落下する際の励磁電流及び磁束の変化と、鋼板Mの挙動との関係を示す図である。電気回路4において一対の開閉器41,42が開状態で且つ放電回路用開閉器45が閉状態のときには、
図3に示すように吊上電磁石2に流れる励磁電流が低下して、放電回路43によって吊上電磁石2に貯えている電力が消費されている回生モードである。また、前記回生モードの後に、吊上電磁石2に流れる励磁電流が増加して、該励磁電流の微分値の極性が正から負に変化するまで(励磁電流のピークまで)の期間が、鋼板Mが吊上電磁石2に対して剥離している剥離モードである。鋼板Mは、前記剥離モードの後に、吊上電磁石2から落下する。
【0054】
図4は、吊上電磁石用制御装置1の鋼板落下の検出動作を示すフローチャートである。
図4に示すフローがスタートする(START)と、まずステップS1で、吊上電磁石用制御装置1は、落下指令が入力されたかどうかを判定する。ステップS1において、落下指令が入力されたと判定された場合(YESの場合)には、ステップS2に進んで、電流制御部10が一対の開閉器41,42を開状態にするとともに、放電回路用開閉器45を閉状態にする。
【0055】
一方、ステップS1において、落下指令が入力されていないと判定された場合(NOの場合)には、吊上電磁石用制御装置1に落下指令が入力されるまで、ステップS1の判定を繰り返す。
【0056】
続くステップS3では、励磁電流検出部20が、電流検出器44によって検出された励磁電流の値を取得するとともに、該取得した励磁電流の微分値を算出する。次のステップS4では、鋼板落下検出部30が、算出した励磁電流の微分値の極性が正から負に変化したかどうかを判定する。
【0057】
ステップS4において、算出した励磁電流の微分値の極性が正から負に変化したと判定された場合(YESの場合)には、続くステップS5で、鋼板落下検出部30は、吊上電磁石2から鋼板Mが落下したと判定する。その後、ステップS6で、吊上電磁石用制御装置1は、鋼板Mが落下したことを出力した後、このフローを終了する(END)。
【0058】
一方、ステップS4において、算出した励磁電流の微分値の極性が正から負に変化していないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS3に戻って、励磁電流検出部20が、電流検出器44によって検出された励磁電流の値を再度取得するとともに、該取得した励磁電流の微分値を算出する。
【0059】
本実施形態の吊上電磁石用制御装置1は、電磁力によって鋼板Mを吊り上げる吊上電磁石2を駆動させる電気回路4を制御する。吊上電磁石用制御装置1は、吊上電磁石2によって吊り上げられている鋼板Mを落下させる際に、吊上電磁石2に流れる励磁電流を低下させるように電気回路4に流れる電流を制御する電流制御部10と、電流制御部10によって電気回路4に流れる電流を制御している際に、吊上電磁石2に流れる励磁電流を検出する励磁電流検出部20と、励磁電流検出部20によって検出された前記励磁電流に基づいて、吊上電磁石2によって吊り上げられている鋼板Mの落下を検出する鋼板落下検出部30と、を有する。
【0060】
吊上電磁石2によって吊り上げられている鋼板Mを落下させる際には、電流制御部10によって、吊上電磁石2に流れる励磁電流を低下させる。鋼板Mが吊上電磁石2に対して落下するときには、磁束の変化に伴って誘導電流が吊上電磁石2に流れるため、吊上電磁石2に流れる励磁電流が一時的に増加する。このような励磁電流の変化は、鋼板Mの落下時に生じるとともに、鋼板Mの落下によって生じる磁束の変化に比べて大きい。
【0061】
よって、上述のような励磁電流の変化を励磁電流検出部20によって検出し、該検出された励磁電流に基づいて、鋼板落下検出部30が鋼板の落下を検出することにより、吊上電磁石2に対する鋼板Mの落下を精度良く検出することができる。
【0062】
しかも、吊上電磁石2に流れる励磁電流の変化を検出することにより、吊上電磁石2に対する鋼板Mの落下を検出できるため、吊上電磁石装置X1を操作する運転員の技量に影響を受けることなく、鋼板Mの落下を検出することができる。
【0063】
したがって、上述の構成により、運転員の技量に影響を受けることなく、吊上電磁石2によって吊り上げられた鋼板Mの落下を精度良く検出することができる。
【0064】
本実施形態では、鋼板落下検出部30は、励磁電流の単位時間あたりの変化量(励磁電流の微分値)の極性が変化したときに、吊上電磁石2によって吊り上げられている鋼板Mの落下を検出する。
【0065】
このように吊上電磁石2に流れる励磁電流の微分値の極性の変化を検出することにより、前記励磁電流の変化を精度良く検出することができる。よって、吊上電磁石2に対する鋼板Mの落下を、吊上電磁石2に流れる励磁電流を用いて精度良く検出することができる。
【0066】
また、本実施形態では、電流制御部10は、吊上電磁石2によって吊り上げられている鋼板Mを落下させる際に、電気回路4に、吊上電磁石2の励磁電流を低下させるような放電回路43を形成する。
【0067】
これにより、吊上電磁石2によって吊り上げられている鋼板Mを落下させる際に、吊上電磁石2の励磁電流を放電回路43によって低下させることができる。よって、吊上電磁石2の励磁電流を低下させる構成を、簡単な構成によって実現できる。
【0068】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る吊上電磁石用制御装置100を備えた吊上電磁石装置X2の概略構成を示す制御回路図である。この実施形態の構成は、吊上電磁石装置X2が複数の電気回路4a,4b,4cを有する点で、実施形態1の構成と異なる。以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0069】
図5に示すように、吊上電磁石装置X2は、電気的に並列に接続された複数の電気回路4a,4b,4cと、複数の電気回路4a,4b,4cによって電源3から電力を供給される複数の吊上電磁石2a,2b,2cとを有する。
【0070】
複数の電気回路4a,4b,4cの構成は、実施形態1の電気回路4の構成と同様である。また、複数の吊上電磁石2a,2b,2cの構成も、実施形態1の吊上電磁石2の構成と同様である。よって、複数の電気回路4a,4b,4c及び複数の吊上電磁石2a,2b,2cの詳しい構成については説明を省略する。
【0071】
吊上電磁石用制御装置100は、複数の電気回路4a,4b,4cの駆動を制御することにより、複数の吊上電磁石2a,2b,2cの駆動を制御する。吊上電磁石用制御装置100は、複数の電気回路4a,4b,4cのうち少なくとも一つに対して選択的に駆動制御を行うことができるように構成されている。
【0072】
具体的には、吊上電磁石用制御装置100は、吊上電磁石選択部110を有する。吊上電磁石選択部110は、吊上電磁石用制御装置100に入力される信号に応じて、複数の電気回路4a,4b,4cのうち少なくとも一つを選択し、該選択された電気回路に対してのみ電流制御部10からの信号出力を許可する。これにより、吊上電磁石用制御装置100は、複数の電気回路4a,4b,4cのうち選択された電気回路の駆動を制御して、該電気回路によって駆動される吊上電磁石の駆動を制御することができる。
【0073】
なお、吊上電磁石用制御装置100による複数の電気回路4a,4b,4cの駆動制御は、実施形態1における吊上電磁石用制御装置1による電気回路4の駆動制御と同様である。よって、吊上電磁石用制御装置100についての詳しい説明を省略する。
【0074】
本実施形態の構成により、複数の吊上電磁石2a,2b,2cに対してそれぞれ電源を接続する必要がないため、コンパクトで且つ低コストな吊上電磁石装置X2を得ることができる。
【0075】
しかも、上述のように、吊上電磁石装置X2が複数の吊上電磁石2a,2b,2cを有する場合、各吊上電磁石の使用頻度や環境などによって、吊上電磁石の温度がそれぞれ異なる場合がある。このような場合には、複数の吊上電磁石2a,2b,2cの電気抵抗が異なるため、複数の吊上電磁石2a,2b,2cに対して同じ電圧を印加しても、吊上電磁石ごとに流れる電流が異なる。そうすると、複数の吊上電磁石2a,2b,2cに発生する磁束もばらつきが生じる。よって、複数の吊上電磁石2a,2b,2cが吸引する鋼板Mの枚数にもばらつきが生じる。
【0076】
これに対し、吊上電磁石用制御装置100が、吊上電磁石選択部110を有するとともに実施形態1の吊上電磁石用制御装置1のような構成を有することにより、複数の吊上電磁石2a,2b,2cのうち一つの吊上電磁石から鋼板Mを落下させることができるとともに、その鋼板Mの落下を精度良く検出することができる。
【0077】
具体的には、本実施形態では、励磁電流検出部20は、電源3に対して電気回路4a,4b,4cを介して電気的に並列に接続された複数の吊上電磁石2a,2b,2cのうち一つの吊上電磁石に流れる励磁電流を検出する。鋼板落下検出部30は、励磁電流検出部20によって検出された前記励磁電流に基づいて、前記一つの吊上電磁石によって吊り上げられている鋼板Mの落下を検出する。
【0078】
これにより、複数の吊上電磁石2a,2b,2cにおいて、各吊上電磁石の電気抵抗のばらつきに応じて、鋼板Mの落下を精度良く検出することができる。したがって、複数の吊上電磁石2a,2b,2cによって吸引される鋼板Mの枚数を精度良く調整することが可能になる。
【0079】
なお、吊上電磁石用制御装置100は、2つ以上の電気回路の駆動を制御して、2つ以上の吊上電磁石に流れる励磁電流に基づいてそれらの吊上電磁石からの鋼板Mの落下を検出するように構成されていてもよい。
【0080】
(実施形態3)
図6は、実施形態3に係る吊上電磁石用制御装置200を備えた吊上電磁石装置X3の概略構成を示す制御回路図である。この実施形態の構成は、放電回路の代わりに、電源230によって吊上電磁石2に流れる励磁電流を制御する点で、実施形態1の構成と異なる。以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0081】
図6に示すように、吊上電磁石装置X3は、吊上電磁石2と、電気回路240と、吊上電磁石用制御装置200とを備えている。電気回路240は、放電回路を有していない点以外、実施形態1の電気回路4と同じである。よって、電気回路240についての詳しい説明を省略する。
【0082】
吊上電磁石用制御装置200は、電流制御部210と、励磁電流検出部20と、鋼板落下検出部30とを有する。
【0083】
電流制御部210は、後述する電源230の正励磁用サイリスタ回路233及び逆励磁用サイリスタ回路234をそれぞれ構成するサイリスタTの駆動を制御することにより、吊上電磁石2に流れる電流を制御する。
【0084】
詳しくは、電流制御部210は、正励磁用サイリスタ回路233を構成するサイリスタTの駆動を制御することにより、吊上電磁石2に励磁電流を流して磁束を生じさせる。一方、電流制御部210は、逆励磁用サイリスタ回路234を構成するサイリスタTの駆動を制御することにより、吊上電磁石2に流れる励磁電流を低減させる。このように、電流制御部210は、逆励磁用サイリスタ回路234を構成するサイリスタTの駆動を制御することにより、吊上電磁石2の放電も制御することができる。
【0085】
電源230は、交流電源231と、遮断器232と、正励磁用サイリスタ回路233と、逆励磁用サイリスタ回路234とを有する。正励磁用サイリスタ回路233は、電気的に直列に接続された一対のサイリスタTを3対有する。正励磁用サイリスタ回路233は、3対のサイリスタTが電気的に並列に接続されているとともに、各対のサイリスタTの中点が交流電源231に電気的に接続された回路である。逆励磁用サイリスタ回路234は、電気的に直列に接続された一対のサイリスタTを2対有する。逆励磁用サイリスタ回路234は、2対のサイリスタTが電気的に並列に接続されているとともに、各対のサイリスタTの中点が交流電源231及び正励磁用サイリスタ回路233の2対のサイリスタTの各中点に電気的に接続された回路である。
【0086】
正励磁用サイリスタ回路233では、電源ラインPに対してサイリスタTのカソードが接続されている。逆励磁用サイリスタ回路234では、電源ラインNに対いてサイリスタTのカソードが接続されている。
【0087】
本実施形態のように、放電回路の代わりに、電源230によって吊上電磁石2の励磁電流を低減してもよい。すなわち、本実施形態の電流制御部210は、吊上電磁石2によって吊り上げられている鋼板Mを落下させる際に、吊上電磁石2の励磁電流を低下させるように、電気回路240に供給する電流を調整する。これにより、吊上電磁石2によって吊り上げられている鋼板Mを落下させる際に、電気回路240に供給する電流を調整することによって、吊上電磁石2の励磁電流を容易に低下させることができる。しかも、実施形態1のような放電回路が不要になるため、電気回路240をコンパクトな構成にすることができる。
【0088】
(実施形態3の変形例)
上述の実施形態では、電源230は、正励磁用サイリスタ回路233及び逆励磁用サイリスタ回路234を有する。しかしながら、電源の構成は、吊上電磁石2の励磁電流を低減可能な構成であれば、他の構成であってもよい。
【0089】
すなわち、
図7に示すように、電源330は、IGBTなどのスイッチング素子を用いた回路を有していてもよい。具体的には、電源330は、交流電源331と、第1スイッチング回路332と、第2スイッチング回路333とを有する。
【0090】
第1スイッチング回路332は、電気的に直列に接続された一対のスイッチング素子SWを3対有する。第1スイッチング回路332は、3対のスイッチング素子SWが電気的に並列に接続されているとともに、各対のスイッチング素子SWの中点が交流電源331に電気的に接続された回路である。各スイッチング素子SWには、ダイオードが逆並列に接続されている。なお、以下の説明において、各対のスイッチング素子SWにおける中点よりも一方側を上アームといい、各対のスイッチング素子SWにおける中点よりも他方側を下アームという。
【0091】
第2スイッチング回路333は、電気的に直列に接続された一対のスイッチング素子SWを3対有する。第2スイッチング回路333は、3対のスイッチング素子SWが電気的に並列に接続されているとともに、2対のスイッチング素子SWの中点が吊上電磁石2に電気的に接続された回路である。各スイッチング素子SWには、ダイオードが逆並列に接続されている。なお、以下の説明において、各対のスイッチング素子SWにおける中点よりも一方側を上アームといい、各対のスイッチング素子SWにおける中点よりも他方側を下アームという。
【0092】
第1スイッチング回路332及び第2スイッチング回路333は、電気的に並列に接続されている。なお、第1スイッチング回路332及び第2スイッチング回路333に対して、平滑コンデンサ334が電気的に並列に接続されている。
【0093】
上述のような構成を有する第1スイッチング回路332及び第2スイッチング回路333は、吊上電磁石用制御装置300によって駆動制御される。吊上電磁石用制御装置300は、電流制御部310と、励磁電流検出部20と、鋼板落下検出部30とを有する。電流制御部310が第1スイッチング回路332及び第2スイッチング回路333のスイッチング素子SWの駆動を制御することにより、吊上電磁石2に流れる励磁電流を制御する。
【0094】
詳しくは、電流制御部310は、以下のように、第1スイッチング回路332及び第2スイッチング回路333のスイッチング素子SWの駆動を制御する。
【0095】
電流制御部310は、交流電源331から吊上電磁石2に電力を供給する場合には、第1スイッチング回路332を構成する複数のスイッチング素子SWのうち上アーム及び下アームのスイッチング素子SWを一つずつONにするとともに、第2スイッチング回路333を構成する複数のスイッチング素子SWのうち上アーム及び下アームのスイッチング素子SWを一つずつONにする。これにより、例えば
図7に太線で示すように、交流電源331から吊上電磁石2に電流が流れる。
【0096】
電流制御部310は、吊上電磁石2の放電を行う場合には、第2スイッチング回路333を構成する複数のスイッチング素子SWのうち上アームまたは下アームのいずれかのスイッチング素子SWを一つONにする。これにより、ONになったスイッチング素子SWと、他のスイッチング素子SWに逆並列に接続されたダイオードとに電流が流れて、例えば
図8に太線で示すように、吊上電磁石2に対して閉回路を形成する。よって、吊上電磁石2に流れる励磁電流を徐々に減らすことができるため、吊上電磁石2の放電を行うことができる。
【0097】
なお、電流制御部310は、実施形態1の電流制御部10と同様、吊上電磁石用制御装置300に落下指令が入力された場合に、吊上電磁石2に流れる励磁電流を減らすように、第1スイッチング回路332及び第2スイッチング回路333のスイッチング素子SWを駆動制御する。これにより、吊上電磁石2から鋼板Mを落下させることができる。
【0098】
この変形例のように、スイッチング素子SWを用いた回路によっても、吊上電磁石2に流れる励磁電流を制御して、吊上電磁石2に対する鋼板Mの落下を制御することができる。
【0099】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0100】
前記実施形態1では、放電回路43は、放電回路用開閉器45と、抵抗器46とを有する。しかしながら、放電回路は、放電回路用開閉器及び抵抗器の代わりに、ダイオードを有していてもよい。このように放電回路がダイオードを有することにより、電源から吊上電磁石に電力を供給する際に、前記放電回路に電流が流れるのを抑制しつつ、前記吊上電磁石の放電時に、放電回路を形成することができる。なお、放電回路がダイオードを有する場合には、吊上電磁石の抵抗によって、前記吊上電磁石は放電する。
【0101】
前記実施形態1では、吊上電磁石用制御装置1の鋼板落下検出部30は、吊上電磁石2に流れる励磁電流の単位時間当たりの変化量(励磁電流の微分値)の極性の変化に基づいて、鋼板Mの落下を検出する。しかしながら、鋼板落下検出部は、吊上電磁石2に流れる励磁電流のピーク値を検出することにより、鋼板Mの落下を検出してもよい。
【0102】
前記実施形態2では、吊上電磁石装置X2が、3つの吊上電磁石2a,2b,2cと、3つの電気回路4a,4b,4cとを有する。しかしながら、吊上電磁石装置は、2つの吊上電磁石と、2つの電気回路とを有していてもよい。また、吊上電磁石装置は、4つ以上の吊上電磁石と、4つ以上の電気回路とを有していてもよい。
【0103】
前記実施形態3では、吊上電磁石2に流れる電流を制御する電源の一例として、サイリスタTを用いた回路やIGBTなどのスイッチング素子SWを用いた回路について説明した。しかしながら、前記電源は、吊上電磁石に流れる電流を制御可能な構成であれば、他の構成を有する電源回路であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、電磁力によって鋼板を吊り上げる吊上電磁石を有する吊上電磁石装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0105】
X、X1、X2、X3、X4 吊上電磁石装置
1、100、200、300 吊上電磁石用制御装置
2、2a、2b、2c 吊上電磁石
3、230、330 電源
4、4a、4b、4c、240 電気回路
10、210、310 電流制御部
20 励磁電流検出部
30 鋼板落下検出部
41、42 開閉器
43 放電回路
44 電流検出器
45 放電回路用開閉器
46 抵抗器
110 吊上電磁石選択部
231、331 交流電源
232 遮断器
233 正励磁用サイリスタ回路
234 逆励磁用サイリスタ回路
332 第1スイッチング回路
333 第2スイッチング回路
P 正極側の電源ライン
N 負極側の電源ライン
T サイリスタ
SW スイッチング素子