(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055264
(43)【公開日】2022-04-07
(54)【発明の名称】椅子及び当該椅子の滑り制御構造
(51)【国際特許分類】
A47C 7/00 20060101AFI20220331BHJP
【FI】
A47C7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020172840
(22)【出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】520399578
【氏名又は名称】吉田 直弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直弘
【テーマコード(参考)】
3B084
【Fターム(参考)】
3B084AA00
(57)【要約】
【課題】椅子をスライドさせた際の床面の傷付き防止効果を維持可能な椅子及び当該椅子の滑り制御構造を提供する。
【解決手段】椅子の脚部底面に設けられる滑り制御構造は、椅子の脚部底面Cbに固定される第1面12Aと、第1面12Aと平行に設けられた第2面12Bと、第2面12Bから第1面12Aに向けて一部が陥没した少なくとも1つの凹部13と、を有する基部11と、凹部13に嵌入され、凹部13の表面の一部と接触して回動可能な円球状の球体部17とを備える。基部11及び球体部17は、それぞれ異なる弾性の樹脂材料から構成され、基部11の弾性率は球体部17の弾性率よりも小さい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子の脚部底面に設けられる滑り制御構造であって、
前記椅子の脚部底面に固定される第1面と、前記第1面と平行に設けられた第2面と、前記第2面から前記第1面に向けて一部が陥没した少なくとも1つの凹部と、を有する基部と、
前記凹部に嵌入され、前記凹部の表面の一部と接触して回動可能な円球状の球体部と、を備え、
前記基部及び前記球体部は、それぞれ異なる弾性の樹脂材料から構成され、前記基部の弾性率は前記球体部の弾性率よりも小さい、椅子の滑り制御構造。
【請求項2】
請求項1に記載の椅子の滑り制御構造であって、
前記凹部が形成する空間は、
前記球体部と略同じ形状であって、前記球体部よりも大きく形成され、
前記第2面に開口を有する、椅子の滑り制御構造。
【請求項3】
請求項1に記載の椅子の滑り制御構造であって、
前記凹部が形成する空間は、前記球体部を収納可能な大きさの円筒形状を有し、
前記凹部の表面は、前記凹部が形成する円筒空間の前記第1面側の底面及び周面に、先端部が前記球体部と接触する凹凸を有する、椅子の滑り制御構造。
【請求項4】
請求項3に記載の椅子の滑り制御構造であって、
前記円筒空間の前記底面には、前記凹部を前記第2面側から見て、環状に前記凹凸が形成された、椅子の滑り制御構造。
【請求項5】
請求項4に記載の椅子の滑り制御構造であって、
前記円筒空間の前記周面には、前記周面に沿った環状の前記凹凸が前記円筒空間の軸方向に形成された、椅子の滑り制御構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の椅子の滑り制御構造であって、
前記基部及び前記球体部を構成する前記樹脂材料は、ポリアセタール、ポリアミド、フッ素樹脂及びポリエチレンのうちのいずれか二つである、椅子の滑り制御構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の滑り制御構造を各脚部の底面側に備えた、椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子の脚部底面に設けられる滑り制御構造、及び当該滑り制御構造を有する椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子には様々な種類があり、どういった種類の椅子が設置されるかは、その設置場所によって異なる。例えば、一般家庭のダイニングルーム又はダイニングスペース(以下、単に「ダイニング」という。)には、座り心地や風合い等を重視して選ばれた椅子が設置される。個人の趣味や目的にも依るが、一般家庭のダイニングには、木材を加工して製造された椅子が設置される場合が多い。
【0003】
木材を加工して製造された椅子は、主に、4本の脚部、座面部及び背もたれ部から構成される。椅子がダイニングに設置された状態では、4本の脚部の各底面がダイニングの床面と接する。椅子の座面部が机の天板下部の空間に置かれた状態のとき、この椅子を利用しようとする者は、背もたれ部等をつかんで椅子全体をスライドさせて、座面部に腰かける。このように、床に対してスライドさせて椅子を動かす場合、床面には、椅子の脚部底面と擦れて傷がつく。
【0004】
特許文献1には、椅子・テーブルの脚下端に取り付け、フローリングやPタイル,クッションフロアー等の傷付きを防止する接床材が開示されている。当該接床材の床に接する接合部材は、フエルト等の繊維シート状布帛又は樹脂製シート状物によって形成される。
【0005】
上記接床材では、床に接する接合部材が、フエルト等の繊維シート状布帛又は樹脂製シート状物によって形成されるため、床面の傷付きを防止できる。さらに、当該接合部材は容易に取り替え可能であるため、摩耗した接合部材を固定部材より外して新しい接合部材を取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記説明した特許文献1に記載の接床材において、床面の傷付き防止効果を一定以上に保つには、接合部材を取り替える必要がある。しかし、摩耗した接合部材を取り替えるためには、椅子を上下さかさまにする必要があるため、その取り替え作業が煩わしい。また、接合部材の摩耗程度を知るためであっても、当該接床材が装着された椅子を上下さかさまにする必要がある。こういった煩わしさのために、摩耗した接合部材がそのまま利用され続けると、床面の傷付きを防止できない。
【0008】
本発明の目的は、椅子をスライドさせた際の床面の傷付き防止効果を維持可能な、椅子の滑り制御構造、及び当該滑り制御構造を有する椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る椅子の滑り制御構造は、
椅子の脚部底面に設けられる滑り制御構造であって、
前記椅子の脚部底面(例えば、後述の実施形態での脚部底面Cb)に固定される第1面(例えば、後述の実施形態での第1面12A)と、前記第1面と平行に設けられた第2面(例えば、後述の実施形態での第2面12B)と、前記第2面から前記第1面に向けて一部が陥没した少なくとも1つの凹部(例えば、後述の実施形態での凹部13,23)と、を有する基部(例えば、後述の実施形態での基部11,21)と、
前記凹部に嵌入され、前記凹部の表面の一部と接触して回動可能な円球状の球体部(例えば、後述の実施形態での球体部17)と、を備え、
前記基部及び前記球体部は、それぞれ異なる弾性の樹脂材料から構成され、前記基部の弾性率は前記球体部の弾性率よりも小さい。
【0010】
上記椅子の滑り制御構造において、
前記凹部が形成する空間(例えば、後述の実施形態での空間14)は、
前記球体部と略同じ形状であって、前記球体部よりも大きく形成され、
前記第2面に開口を有しても良い。
【0011】
上記椅子の滑り制御構造において、
前記凹部が形成する空間は、前記球体部を収納可能な大きさの円筒形状を有し、
前記凹部の表面は、前記凹部が形成する円筒空間の前記第1面側の底面及び周面に、先端部が前記球体部と接触する凹凸(例えば、後述の実施形態での底面凹凸部23A及び周面凹凸部23B)を有しても良い。
【0012】
上記椅子の滑り制御構造において、
前記円筒空間の前記底面には、前記凹部を前記第2面側から見て、環状に前記凹凸(例えば、後述の実施形態での底面凹凸部23A)が形成されても良い。
【0013】
上記椅子の滑り制御構造において、
前記円筒空間の前記周面には、前記周面に沿った環状の前記凹凸(例えば、後述の実施形態での周面凹凸部23B)が前記円筒空間の軸方向に形成されても良い。
【0014】
上記椅子の滑り制御構造において、
前記基部及び前記球体部を構成する前記樹脂材料は、ポリアセタール、ポリアミド、フッ素樹脂及びポリエチレンのうちのいずれか二つであっても良い。
【0015】
本開示の一態様に係る椅子は、各脚部の底面側に上記滑り制御構造を備える。
【発明の効果】
【0016】
本開示に係る椅子及び当該椅子の滑り制御構造によれば、脚部底面に当該滑り制御構造が設けられた椅子を床に対してスライドさせると、球体部は、凹部が形成する空間内で、凹部の表面の一部と接触しながら回動するため、床面の傷付きを防止できる。また、基部及び球体部は弾性を有する樹脂材料から構成されているため、フエルト等の繊維と比較して、使用による摩耗の程度は非常に低い。このため、当該滑り制御構造又は球体部を交換しなくても、床面の傷付き防止効果を永年に亘って維持できる。
【0017】
また、この椅子に人が座ると、当該滑り制御構造には、椅子の自重による負荷に加えて、椅子に座った人の体重による負荷が第1面からかかる。その結果、基部は人が座る前よりも大きくつぶれ、これに伴い、凹部が形成する空間も上下につぶれ、左右に拡がった形状となる。さらに、球体部も、弾性を有する樹脂材料から構成されているため、上下につぶれ、左右に拡がって、楕円球となる。
【0018】
このように、球体部が凹部の表面と接触する面積が拡がるため、球体部が凹部の表面と接触して生じる摩擦力が増加し、球体部は回動できない。その結果、椅子に人が座った状態で椅子を床に対してスライドさせようとしても、球体部は回動しない。さらに、球体部が楕円球となって床との接触面積が拡がり、かつ、球体部に対する第1面側からの負荷も大きいため、床に対する球体部の摩擦力増加のため、椅子は床に対して動かない。このため、安定して椅子に座ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態の滑り制御構造を有するパッドが脚部底面に設けられた椅子の斜視図である。
【
図2】第1実施形態のパッドを底面側から見た平面図である。
【
図3】
図2に示すパッドのII-II線断面図である。
【
図4】椅子の脚部底面に設けられた状態の第1実施形態のパッドを示す、
図3と同様の断面図である。
【
図5】人が椅子に腰かけた状態の第1実施形態のパッドを示す、
図3と同様の断面図である。
【
図6】椅子の脚部底面に設けられた状態の第2実施形態の椅子の滑り制御構造を有するパッドを示す、
図4と同様の断面図である。
【
図7】第2実施形態のパッドの凹部を底面側から見た平面図である。
【
図8】人が椅子に腰かけた状態の第1実施形態のパッドを示す、
図6と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示に係る椅子及び当該椅子の滑り制御構造の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の滑り制御構造を有するパッドが脚部底面に設けられた椅子の斜視図である。
図2は、第1実施形態のパッドを底面側から見た平面図である。
図3は、
図2に示すパッドのII-II線断面図である。
図1~
図3に示すパッド1は、基部11の第1面12Aを椅子の脚部底面に接着することで、椅子の脚部底面に固定される。
図1に示すように、脚部が4本ある椅子には、4本の脚部全ての底面にパッド1が取り付けられる。
【0022】
図2及び
図3に示すように、パッド1は、椅子の脚部底面に取り付けられる有底円筒形状の基部11と、基部11の内部に一部が設けられる球体部17とを備える。基部11及び球体部17は、それぞれ異なる弾性の樹脂材料から構成され、基部11の弾性率は、球体部17の弾性率よりも小さい。基部11を構成する樹脂材料及び球体部17を構成する樹脂材料は、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、フッ素樹脂(PTFE等)及びポリエチレン(PE)のうちのいずれか二つである。
【0023】
基部11は、円筒の上側底面を構成する第1面12Aと、円筒の下側底面を構成し、第1面12Aと平行に設けられた第2面12Bと、第2面12B側に設けられた3つの凹部13とを有する。3つの凹部13は、パッド1を第2面12B側から見て、第2面12Bに納まる正三角形の頂点上に位置する。
【0024】
凹部13は、第2面12Bから第1面12Aに向けて陥没した形状に構成される。凹部13が形成する空間14は、球体部17と略同じ形状であって、球体部17よりも大きく形成されている。また、凹部13が形成する空間14は、第2面12Bに開口を有する。
【0025】
球体部17は、弾性を有する樹脂材料から円球状に形成され、凹部13の各々に嵌入される。凹部13に嵌入された球体部17は、凹部13の表面の一部と接触しながら回動可能である。
【0026】
図4は、椅子の脚部底面に設けられた状態のパッド1を示す、
図3と同様の断面図である。
図5は、人が椅子に腰かけた状態のパッド1を示す、
図4と同様の断面図である。
【0027】
図4に示すように、椅子の脚部底面Cbに取り付けられたパッド1には、椅子の自重による負荷F1が第1面12A側からかかる。上述したように、基部11の弾性率は球体部17の弾性率よりも小さい、すなわち、基部11の方が球体部17よりも柔らかいため、
図4に示す状態では、基部11は上下に多少つぶれるが、球体部17の形状は変わらない。
【0028】
図4に示す状態で椅子を床Gに対してスライドさせると、球体部17は、凹部13が形成する空間14内で、凹部13の表面の一部15と接触しながら回動する。このように、椅子を床Gに対してスライドさせると球体部17が回動するため、床面の傷付きを防止できる。また、パッド1を構成する基部11及び球体部17は弾性を有する樹脂材料から構成されているため、フエルト等の繊維と比較して、使用による摩耗の程度は非常に低い。このため、パッド1又は球体部17を交換しなくても、床面の傷付き防止効果を永年に亘って維持できる。
【0029】
なお、仮に、球体部17が凹部13の表面と接触して生じる摩擦力が、球体部17が床Gと接触して生じる摩擦力よりも大きいと、球体部17は滑らかに回動しないが、球体部17は、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、フッ素樹脂(PTFE)又はポリエチレン(PE)といった摩擦係数の小さな樹脂材料から構成されているため、球体部17は床Gに対して摺動する。このため、椅子を床Gに対してスライドさせたときの球体部17の回動が滑らかでない場合であっても、床面の傷付きを防止できる。
【0030】
一方、
図5に示すように、脚部底面Cbにパッド1が取り付けられた椅子に人が座ると、パッド1には、椅子の自重による負荷F1に加えて、椅子に座った人の体重による負荷F2が第1面12A側からかかる。木材を加工して製造された4本脚の椅子の重量が約8kgである場合の負荷F1は約2kgであるのに対し、この椅子に座った人の体重が約72kgであれば、負荷F2は約18kgとなる。このため、
図5に示す状態では、
図4に示す状態と比較して、パッド1にかかる負荷は約10倍となる。その結果、基部11は人が座る前よりも大きくつぶれ、これに伴い、凹部13が形成する空間14も上下につぶれ、左右に拡がった形状となる。さらに、球体部17も、弾性を有する樹脂材料から構成されているため、上下につぶれ、左右に拡がって、楕円球となる。
【0031】
このように、
図5に示す状態では、球体部17が凹部13の表面と接触する面積が拡がるため、球体部17が凹部13の表面と接触して生じる摩擦力が増加し、球体部17は回動できない。その結果、椅子に人が座った状態で椅子を床Gに対してスライドさせようとしても、球体部17は回動しない。さらに、球体部17が楕円球となって床Gとの接触面積が拡がり、かつ、球体部17に対する第1面12A側からの負荷(F1+F2)も大きいため、床Gに対する球体部17の摩擦力増加のため、椅子は床Gに対して動かない。このため、安定して椅子に座ることができる。
【0032】
(第2実施形態)
図6は、椅子の脚部底面に設けられた状態の第2実施形態の椅子の滑り制御構造を有するパッドを示す、
図4と同様の断面図である。
図7は、第2実施形態のパッドの凹部を底面側から見た平面図である。なお、以下の説明においては、第1実施形態で説明した構成要素と共通する構成要素については同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0033】
図6に示すように、第2実施形態のパッド1が備える基部21の第2面12Bには、第1実施形態とは異なる形状の凹部23が設けられる。凹部23は、第2面12Bから第1面12Aに向けて円筒状に陥没した形状に構成される。凹部23が形成する円筒空間は、その一方の底面、すなわち第2面12Bが開口している。また、当該円筒空間の直径は、球体部17を収納可能な大きさであって、軸方向長さは球体部17の直径に略等しい。
【0034】
凹部23の表面は、凹部23が形成する円筒空間の第1面12A側の底面及び周面に、先端部が球体部17と接触する凹凸を有する。すなわち、円筒空間の第1面12A側の底面には、環状の凹凸である底面凹凸部23Aが形成されている。また、円筒空間の周面の円筒空間の開口付近には、周面に沿った環状の凹凸である周面凹凸部23Bが形成されている。
【0035】
底面凹凸部23Aには、径の異なる複数の凸部が同心円状に形成されている。底面凹凸部23Aを構成する凸部の高さは、中心から離れるほど高く形成されている。周面凹凸部23Bには、円筒空間の軸方向に平行に配列された複数の凸部が形成されている。周面凹凸部23Bを構成する凸部の高さは、開口に近いほど高く形成されている。開口に最も近い凸部の高さは、球体部17が凹部23から脱落しないよう、当該凸部によって形成された開口の直径が球体部17の直径よりも小さくなるように形成されている。
【0036】
図6に示す状態で椅子を床Gに対してスライドさせると、球体部17は、凹部23が形成する円筒空間内で、底面凹凸部23A及び周面凹凸部23Bの一部の凹凸の先端部と接触しながら回動する。本実施形態は、
図6に示す状態で回動する球体部17と凹部23の表面との接触面積が、
図4に示す第1実施形態よりも小さい。このため、球体部17は、第1実施形態よりも滑らかに回動する。
【0037】
このように、椅子を床Gに対してスライドさせると球体部17が滑らかに回動するため、床面の傷付きを防止できる。また、パッド1を構成する基部21及び球体部17は弾性を有する樹脂材料から構成されているため、フエルト等の繊維と比較して、使用による摩耗の程度は非常に低い。このため、パッド1又は球体部17を交換しなくても、床面の傷付き防止効果を永年に亘って維持できる。
【0038】
図8は、人が椅子に腰かけた状態のパッド1を示す、
図6と同様の断面図である。
図8に示すように、脚部底面Cbにパッド1が取り付けられた椅子に人が座ると、第1実施形態と同様に、パッド1には、椅子の自重による負荷F1に加えて、椅子に座った人の体重による負荷F2が第1面12A側からかかる。その結果、基部21は人が座る前よりも大きくつぶれ、これに伴い、凹部23が形成する円筒空間も上下につぶれ、左右に拡がった形状となる。このとき、底面凹凸部23Aの特に中心に近い凸部は球体部17との間で曲がり、周面凹凸部23Bの凸部も球体部17との間で曲がる。さらに、球体部17も、弾性を有する樹脂材料から構成されているため、上下につぶれ、左右に拡がって、楕円球となる。
【0039】
このように、
図8に示す状態では、球体部17が凹部23の表面と接触する面積が拡がるため、球体部17が凹部23の表面と接触して生じる摩擦力が増加し、球体部17は回動できない。その結果、椅子に人が座った状態で椅子を床Gに対してスライドさせようとしても、球体部17は回動しない。さらに、球体部17が楕円球となって床Gとの接触面積が拡がり、かつ、球体部17に対する第1面12A側からの負荷(F1+F2)も大きいため、床Gに対する球体部17の摩擦力増加のため、椅子は床Gに対して動かない。このため、安定して椅子に座ることができる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。例えば、上記実施形態では、パッド1の基部11,21の第2面12B側に3つの凹部13,23が設けられているが、第2面12Bに納まる正多角形の頂点上に、その頂点の数に等しい凹部が設けられていれば良い。また、正多角形の頂点上だけでなく、その正多角形の重心上にも凹部が設けられても良い。
【0041】
また、上記実施形態では、パッド1が椅子の脚部底面に接着されるが、ビス等の固定具によって脚部底面に固定されても良い。
【符号の説明】
【0042】
1 パッド
11,21 基部
17 球体部
12A 第1面
12B 第2面
13,23 凹部
23A 底面凹凸部
23B 周面凹凸部