(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022055791
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】現金処理装置及び現金処理方法
(51)【国際特許分類】
G07D 11/235 20190101AFI20220401BHJP
G07D 11/20 20190101ALI20220401BHJP
G07D 11/00 20190101ALI20220401BHJP
【FI】
G07D11/235
G07D11/20 102
G07D11/00 151
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163417
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】東城 直人
(72)【発明者】
【氏名】高根 義博
【テーマコード(参考)】
3E001
3E040
3E141
【Fターム(参考)】
3E001AA04
3E001BA01
3E001BA02
3E001DA07
3E001EA01
3E001EC02
3E040AA01
3E040AA08
3E040BA06
3E040CA02
3E040DA08
3E040FF05
3E040FG11
3E040FJ10
3E141AA01
3E141AA08
3E141BA06
3E141CA02
3E141DA08
3E141FF05
3E141FG11
3E141FJ11
3E141GA04
3E141JA07
3E141KA01
3E141KC02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一部の機能に異常があった場合でも利便性の低下を抑制できる現金処理装置および現金処理方法を提供する。
【解決手段】現金の入出金を可能とする現金処理装置1であって、現金処理装置1の現金の繰り出し状態、振分状態、及び稼働期間を含む機能状態を監視する監視部13と、現金処理装置1の各機能状態が予め定められた異常状態になった場合に現金処理装置1の機能の一部の稼働を低機能化して継続運用し、異常状態となった機能を稼働継続させる制御部12とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現金の入出金を可能とする現金処理装置であって、
前記現金処理装置の機能状態を監視する監視部と、
前記現金処理装置の機能状態が予め定められた異常状態になった場合に前記現金処理装置の機能の一部について、低機能化または低能力化して、異常状態となった機能を稼働継続させる制御部とを有する、
ことを特徴とする現金処理装置。
【請求項2】
前記監視部は、現金の繰り出しを行う繰り出し部位における繰り出し状態を監視し、
前記制御部は、前記現金の繰り出し状態が予め定められた異常繰り出し状態になった場合に前記繰り出し部位の現金の限度基準量を低下させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の現金処理装置。
【請求項3】
さらに、現金を搬送するとともに現金の振り分けを行う振分搬送部を有し、
前記監視部は、現金の振分を行う振分部における振分状態を監視し、
前記制御部は、前記現金の振分状態が予め定められた異常振分状態になった場合に前記振分搬送部における現金の搬送速度を低下させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の現金処理装置。
【請求項4】
前記監視部は、前記現金処理装置の稼働期間を監視し、
前記制御部は、前記現金処理装置の稼働期間が予め定められ期間を超えた場合に前記収納部に収納させる収納現金の収納現金限度基準量、及び、現金を搬送させる前記振分搬送部の入出金における搬送速度の内の少なくとも一方を低下させる、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の現金処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記現金処理装置の機能の一部について低機能化して継続運用し、他の機能の稼働を継続させた場合に、現金の入出金における取引限度枚数を予め定められた制限時枚数に減少させて入出金の機能を継続させる、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の現金処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記現金処理装置の状態が予め定められた異常状態になった場合に、その状態に関する情報を報知させる報知部を有する、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項記載の現金処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記現金処理装置の機能の一部について、当該機能を低機能化させずに維持運用させるか、当該機能を停止させずに低機能化させる継続運用とするかを選択させる、
ことを特徴とする請求項6に記載の現金処理装置。
【請求項8】
現金の入出金を可能とする現金処理装置の方法であって、
監視部が前記現金処理装置の機能状態を監視するステップと、
制御部が、前記現金処理装置の機能状態が予め定められた異常状態になった場合に前記現金処理装置の機能の一部の稼働を低機能化して継続運用し、異常状態となった機能を稼働継続させるステップとを有する、
ことを特徴とする現金処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金の入出金処理を行う現金処理装置及び現金処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関や商業施設などの店舗で利用されている現金処理装置は、いつ何時、障害が発生することがあり、また、製品寿命があるために、保守を行ったり、入れ換えを行ったりしている。障害が発生すると、一般的に、装置の稼働は停止される。その場合には、店舗先での業務が停滞したりする。この装置の稼働停止による業務停滞を少しでも改善するために、障害が発生した現金処理装置の機能・機構・部位の使用を停止させ、障害のない機能・機構・部位だけで処理できる業務を遂行させる、いわゆる縮退という機能を持った現金処理装置、自動取引装置が従来知られている(以下の特許文献1参照)。特許文献1に開示されている自動取引装置は、装置に障害が発生した場合にその障害が発生した部位の機能だけを切り離して縮退運用を行う手段を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の装置が備えている縮退機能は、装置が本来有している複数の機能の内の一部の機能に障害があった場合にその機能だけを停止して、残りの機能を継続させるというものである。したがって、継続させた残りの機能の範囲内で業務がなされため、その機能を利用するかぎりにおいては、顧客の利便性は損なわれないが、停止された機能を利用しようとしていた顧客にとっては、その利用ができず、その利便性は損なわれていた。
【0005】
そこで、本発明は、装置の一部の機能が異常状態になった場合でも、その機能を停止することなく継続稼働できる現金処理装置および現金処理方法を提供することを目的とする。なお、上記した「異常状態」とは、装置を休止させて保守サービス等を必要とする状態である「異常休止状態(特定の異常状態を越える異常状態)」と区別する概念であって、正常ではないが、上記した「異常休止状態」ともいえず、異常傾向が出てきた(発現された)状態(異常傾向発現状態)をいう。したがって、以下では、「異常状態」という用語は「異常休止状態」と区別する概念として用いることとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の現金処理装置の一側面は、現金の入出金を可能とする現金処理装置であって、現金処理装置の機能状態を監視する監視部と、現金処理装置の機能状態が予め定められた異常状態になった場合に現金処理装置の機能の一部について、低機能化または低能力化して、異常状態となった機能を稼働継続させる制御部とを有することを特徴とする。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の現金処理方法の一側面は、現金の入出金を可能とする現金処理方法であって、監視部が現金処理装置の機能状態を監視するステップと、制御部が、現金処理装置の機能状態が予め定められた異常状態になった場合に現金処理装置の機能の一部の稼働を低機能化して継続運用し、異常状態となった機能を稼働継続させるステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本件開示によれば、現金処理装置機の機能が異常状態になったときでも、その機能を停止することなく、現金処理装置の稼働を継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る現金処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】監視対象が繰り出し間隔である場合における現金処理装置の機能制限制御の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図4】監視対象が繰り出し間隔である場合における収納量制御を説明するための一例を示した図である。
【
図5】監視対象が繰り出しモータの回転数である場合における現金処理装置の機能制限制御の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図6】監視対象が繰り出しモータの回転数である場合における収納量制御を説明するための一例を示した図である。
【
図7】監視対象が振分部を構成するソレノイド駆動の応答速度である場合における現金処理装置の機能制限制御の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図8】監視対象が振分部を構成するソレノイド駆動の応答速度である場合における搬送速度制御を説明するための一例を示した図である。
【
図9】監視対象が現金処理装置の稼働履歴である場合における現金処理装置の機能制限制御の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図10】監視対象が現金処理装置の稼働履歴である場合における収納量制御および搬送速度制御を説明するための一例を示した図である。
【
図11】監視対象が現金処理装置の稼働履歴である場合における収納量制御および搬送速度制御を説明するための他の例を示した図である。
【
図12】現金処理装置の状態が異常状態として検出された場合に自動で対応する報知態様を示した図である。
【
図13】現金処理装置の状態が異常状態として検出された場合にユーザーに対応の選択を促す報知態様を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の現金処理装置の一実施の形態について説明する。現金処理装置1は、例えば、スーパーマーケット等の店舗のバックヤードに設置され、店舗の売上金の入金処理や、店舗内に設けられた釣銭機に補充する釣銭補充金(準備金)の出金処理などを行うものである。現金処理装置1は、取引口2から入金された現金を、入金経路を介して収納部7を構成する複数の収納部7-1~7-nに入金または装填する構成と、収納部7より出金経路を介して取引口2へ現金を出金または装填回収部9で現金を回収する構成とする。現金処理装置1は、現金処理の機能の状態を監視するとともに、その機能が予め定めた状態に達したとき、その機能に関連する機能を低機能化または低能力化して、異常状態となった機能を継続的に稼働できるようにする。以下、この処理を機能継続稼働処理と称する。
現金処理装置1は、
図1に示すように、取引口2、識別部3、搬送部4、振分部5、繰り出し部6、収納部7、リジェクト部8、装填回収部9、表示部10、操作部11、制御部12、監視部13、報知部14、記憶部15、通信部16およびセンサ部17を有する。
【0011】
取引口2は、入金受付処理時に操作者によって機外から現金(紙幣、硬貨)が投入されるとともに出金処理時に現金を操作者に取出可能に出金されるための取引口である。なお、取引口は、紙幣の入出金が行われる紙幣取引口と硬貨の入出金が行われる硬貨取引口を有している。なお、取引口2は後述する繰り出し部6を有する。
【0012】
識別部3は、紙幣および硬貨の金種等を識別するとともに識別した紙幣および硬貨を金種毎に計数する。なお、識別部3は、後述する入金搬送部41内および出金搬送部42内に設けられているが、本実施の形態における各部の機能の説明をし易くするために
図1には便宜上、独立した構成で図示することとした。
【0013】
搬送部4は、振分搬送部141を有する入金搬送部41および振分搬送部142を有する出金搬送部42を有して構成される。入金搬送部41は、識別部3を有し、取引口2からの現金を識別部3において識別した上で収納部7等に搬送する。出金搬送部42は、収納部7から繰り出した現金を取引口2等に搬送する。
【0014】
振分部5は、取引口2から搬送された現金を収納部7内の各収納部7-1~7-n(ここでいう収納部は紙幣収納部と硬貨収納部を含んだ意味である)等に振り分ける。振分動作は現金を振り分けるための振分レバー51を駆動させるソレノイド52で行われる。ソレノイド52は、電気エネルギーを機械的な直線運動に変換する電磁機能部品であり、振分レバー51を駆動させる機能を有し、具体的には、銅線を巻いたコイルの中で可動式のピン(図示せず)が動く構造となっており、ソレノイド駆動の応答速度(以下、「ソレノイド応答速度」と称する)は製品ごとに仕様が定められている。収納部7は入金された現金が識別部3により正券・正貨または現金として受入可能であると識別された現金を金種別に振り分けて収納する機能を有する。
【0015】
繰り出し部6は、取引口2から入金された現金を収納部7に向けて入金搬送部41へと繰り出したり、収納部7から現金を出金するために出金経路に配置される出金搬送部42へと繰り出す機能を有し、繰り出し部位である、繰り出しモータ61、貨幣を繰り出すピックアップローラ(図示せず)および繰り出された貨幣を搬送路まで送るフィードローラ(図示せず)等を含んで構成される。なお、後述する収納部7-1~7-nおよび装填回収部9においても、繰り出し部6を有する。ここで、繰り出し部6は上記したように取引口2、収納部7-1~7-nおよび装填回収部9に設けられているが、
図1では繰り出し部6を、後述する繰り出し状態に関する説明をし易くするために便宜上、独立させたブロックで図示することとする。
【0016】
収納部7は、入金紙幣および入金硬貨を金種別に収納するn個の収納部7-1~7-nを有して構成されている。紙幣の各収納部7-1~7-nは一般的に整列状態で集積される。
【0017】
リジェクト部8は、入金受付処理時に内部に取り込んだ受入不可な受入不可現金を排出する。装填回収部9は主に営業開始前に現金処理装置1に現金を補充収納させたり、営業終了後に現金処理装置1に収納されている現金を回収する機能を有する。表示部10は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、タッチパネル等から構成され、取引(出納処理や精算処理)を行う際の管理者等が操作する操作手段、装置の状態等の各種画像を表示する。
【0018】
操作部11は、表示部10に表示された所定の選択項目を選択する際に操作される操作ボタンや入出金する現金の金額を入力する操作ボタンを含むキーボードである。なお、操作部11と表示部10とは、これらが一体であるタッチパネルとしてもよい。
【0019】
制御部12は、現金処理装置1の各種機能を司るものである。制御部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM、(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)入出力インタフェース部等を有するものである。制御部12は、例えば、CPUが記憶部15(例えばROM)に記憶される処理プログラムを実行することにより、現金処理装置1の機能を実現するものである。なお、処理プログラムは、インストールにより構築することができる。
【0020】
制御部12は、監視部13により現金処理装置1の機能の状態が異常状態であると判定されたとき、その機能に関連する機能を低機能化または低能力化して、異常状態となった機能を継続的に稼働できるようにさせる機能を有する。なお、制御部12、監視部13、報知部14は
図1では独立して図示されているが、制御部12は、後述する監視部13の処理(判定処理等)および報知部14の処理(背景色判定処理等)についても制御して監視部13および報知部14の機能を実行させている。なお、監視部13および報知部14に、制御部12とは異なる他の制御部(CPU、メモリから構成される)を別途設けその他の制御部が監視部13および報知部14の機能を実行させる、すなわち監視部13および報知部14が独立して上記した機能を実行するように構成してもよい。
【0021】
監視部13は、後述する現金処理装置1のギア機構、搬送系の状態を検知するセンサ部17に基づいて現金処理装置1の機能状態を監視し、記憶部15に記憶されている判定基準値に基づいて現金処理装置1の機能状態が、予め定められた状態(例えば、異常状態)であるか否かを判定する。監視部13は、異常状態であると判定した場合、その判定結果等を制御部12に通知する。
【0022】
報知部14は、現金処理装置1の状態が予め定められた異常状態になった場合に、その状態に関する情報を外部に報知させる機能を有する。報知の態様は、例えば、現金処理装置1の状態が予め定められた異常状態になっている旨を表示画面上において警告表示してユーザーへの注意喚起を促す。なお、警告表示については、後述する異常の状態のレベル(異常傾向レベル)に応じて、警告表示の背景色を黄色、赤色等で区別することもできる。の背景色で判定「注意」を示して、ユーザーへの注意喚起を促している。
【0023】
また、上記した警告表示がなされた場合に、その後の取りうる措置について例えば、「そのまま継続する」や「現金処理装置の一部の機能を低下させる(収納部の収納量を低下させる等)」のいずれかを選択を促す報知も行う。そして上記した選択を促されたユーザーによる操作部11を介した選択操作によっていずれかの選択が受け付けられる。報知の具体例については
図12、
図13を参照して後述する。なお、報知部14は、
図1のように独立して設ける以外に制御部12に報知機能を有するような構成としてもよい。また、上記したユーザーとは現金処理装置1の設置者・利用者を含む概念である。
【0024】
記憶部15は、現金処理装置1の制御に必要となる各種情報、例えば、後述する制御部12における異常状態か否かを判定する際の基準値等の情報を記憶する。具体的には、後述する紙幣および硬貨の繰り出し間隔(以下、「繰り出しピッチ」と称する)の基準値、繰り出しピッチの基準値以下のピッチによる繰り出しが発生する頻度(以下、「基準値外れ頻度」と称する)の基準頻度、繰り出しモータ61の累積駆動時間の基準時間、ソレノイド52の応答速度の基準速度、現金処理装置1の稼働期間および現金処理装置1の稼働時間の基準時間があらかじめ記憶されている。
【0025】
通信部16は、外部の管理サーバ等(図示せず)に監視部13からの監視情報、記憶部15からの稼働履歴等の情報を送信したり、外部からの指示を受信して制御部12に送信する機能を有する。通信部16は、例えばWi-Fi(Wireless Fidelity:商標登録)に代表される無線LAN(Local Area Network)方式又は有線LAN方式に対応した通信回路が挙げられる。
【0026】
センサ部17は、現金処理装置1のギア機構、搬送系の状態を検知する繰り出し部センサ171、繰り出しモータ部センサ172、振分部センサ173を有して構成されている。繰り出し部センサ171は、繰り出し部6により繰り出された直後の貨幣の先端を検出する。繰り出しモータ部センサ172は、繰り出し部6を構成する繰り出しモータ61の回転数(rpm)を検出する。なお、繰り出しモータ61の回転数の代わりに駆動時間(H)を検出するようにしてもよい。振分部センサ173は、振分部5のソレノイド駆動の応答速度(mm/s)を検出する。なお、ソレノイド駆動の応答速度の代わりに応答時間(ms)を検出するようにしてもよい。
【0027】
以下に、一実施形態に係る現金処理装置1の機能継続稼働処理に関する動作について、監視対象別に図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
<監視対象が繰り出し間隔のケース>
以下に、繰り出し間隔を監視対象とした場合の機能継続稼働処理を説明する。
【0029】
紙幣は、一般的に収納部7を構成する収納部7-1~7-nの中の紙幣収納部に整列状態で集積される。例えばATM(Automated Teller Machine)のように大量の紙幣を収納するものであれば、2000枚の紙幣が収納部7に収納される。その場合、最下の紙幣には、紙幣だけの重さで約2キログラムの荷重がかかることになる。その場合、収納部7から、最下の紙幣から繰り出す際には、繰り出し部6の繰り出しモータ61に、約2キログラムの荷重がかかった紙幣を繰り出すための負荷がかかる場合がある。
【0030】
硬貨は、一般的にはバラバラの状態で収納部7に積み重なっているが、これらの硬貨を受ける円盤部材や繰り出しベルトにあっては、収納する硬貨の総重量が掛かる。硬貨は軽いもので一枚約1グラム、重たいものでは一枚約7グラムであり、単純平均で一枚約4グラムとしても、200枚収納すれば、約800グラムの荷重が掛かる。約1000枚の硬貨が収納部7に収納された場合、単純平均で約4キログラムの荷重がかかる。
【0031】
このように繰り出される紙幣や硬貨によって大きな荷重がかかるが、現金処理装置1としてはその荷重にも対応する繰り出し機能を有している。すなわち、紙幣については、例えば、2000枚もの紙幣が集積された状態であっても、正常時には、一枚ずつ繰り出すことができる。しかしながら、経年変化などによって、繰り出しが正常にならない、例えば、一定間隔毎に紙幣を繰り出していたものが、時々、繰り出せないときがあるなど、断続的な繰り出しになったりすることがある。これは、硬貨機においても同様である。
【0032】
そこでこの例では、紙幣および硬貨の繰り出しピッチを監視し、通常と異なる繰り出しピッチによる繰り出しが所定の基準頻度を超えて発生する場合、繰り出し状態が異常状態であるとし、繰り出し機能により繰り出された紙幣および硬貨を収納部7に収納する収納機能を低機能化することで、異常状態となった繰り出し動作を継続できるようにする。具体的には、収納部7に収納される紙幣や硬貨の最大収納量を通常の場合よりも少なくする。収納部7に収納される紙幣や硬貨の量が少なくなれば、その収納部7から現金を繰り出す動作の負荷が低減されるので、異常状態となっても繰り出し動作を継続することができる。
【0033】
図3は、繰り出し間隔を監視対象とした場合の機能継続稼働処理説明するためのフローチャートである。ステップS101において、監視部13は、繰り出し部センサ171からの検出結果の入力を開始する。
【0034】
繰り出し部センサ171から検出信号が入力されると、監視部13は、ステップS102において、基準値以下のピッチによる繰り出し(基準値外れ繰り出し)が所定の基準頻度より多く発生したか否かしたと判定し、基準値外れ繰り出しが基準頻度より多く発生したと判定した場合、繰り出し状態が異常状態であると判定する。繰り出し状態が異常状態であると判定するまで監視部13はこの処理を繰り返し実行する。なお監視部13は、その処理に先立ち、繰り出しピッチの基準値および基準値外れ頻度の基準頻度を記憶部15から読み出す。
【0035】
例えば、20枚/秒の速さで紙幣が繰り出される場合、繰り出し部センサ171は、計算上、50ms間隔で検出信号を監視部13に出力し、監視部13はその間隔で検出信号を入力する。繰り出し部センサ171の検出の50msの間隔は、紙幣の繰り出しが正常である場合のピッチに相当する。監視部13は、繰り出しの動作のばらつき等を考慮して基準値を50±5msとして、繰り出し部センサ171から出力された検出信号が入力される度に、繰り出しピッチが、50±5msより外れるか否かを判定し、基準値外れ繰り出しを検出する。
【0036】
監視部13は、基準値外れ繰り出しを検出すると、基準値外れ繰り出しが所定の基準頻度より多く発生しているか否かを判定し、基準頻度より多く発生している場合は、繰り出し機能が異常状態であると判定する。この例の場合、基準頻度を1回/10000枚とし、基準値外れ発生頻度がそれを超えて発生している場合、繰り出し状態が異常状態である判定される。
【0037】
なおここでは監視部13は、繰り出しセンサ部171からの検出結果が入力されるタイミングでステップS102の判定を行うものとしたが、繰り出しセンサ部171からの検出結果が、記憶部15または監視部13に設けられた記憶部に記憶されるようにして、所定のタイミングでこの判定処理を行うようにすることもできる。後述する他の実施の形態においても同様である。
【0038】
ステップS102で、繰り出し状態が異常状態であると判定した場合、監視部13は、ステップS103において、基準値外れ発生頻度を制御部12に通知する。制御部12は、異常状態でも繰り出し動作を継続できるように、収納部7の最大収納量を低減する処理を実行する。繰り出し動作が異常状態と判定された収納部7のみに対して最大収納量を低減することもできるし、それ以外の収納部7(全部の収納部7とする場合も含む)に対して行うことができる。
【0039】
この例の場合、
図4に示すように、基準値外れ発生頻度に応じて、異常状態をレベル分けし、そのレベルに応じた処理が実行される。基準値外れ発生頻度が1回/9001枚~1回/9999枚である場合には異常傾向レベル1とみなし、収納部7の最大収納量を正常時の90%に制限される。基準値外れ発生頻度が1回/8001枚~1回/9000枚である場合には異常傾向レベル2とみなし、最大収納量は正常時の70%に制限される。基準値外れ発生頻度が1回/7001枚~8000枚の頻度である場合には異常傾向レベル3とみなし、最大収納量の制限は正常時の50%に制限される。なお、
図4では示していないが、監視部13が判定した基準値外れ繰り出しの発生頻度が、1回/7000枚以上の頻度となった場合には、現金処理装置1を休止させて保守サービス等を必要とする「異常休止状態」と判定される。
【0040】
以上のように、監視部13が、収納現金の繰り出し状態を監視し(ステップS101)、収納現金の繰り出し状態が異常状態に達したか否かを判定し(ステップS02)、収納現金の繰り出し状態が異常状態に達したと判定した場合、制御部12が収納部7に収納される最大収納量を正常時に比べ少なくなるようにした(所定の制限値に制限する)ので(ステップS103)、繰り出し動作の負荷が低減し、異常状態でも繰り出し動作を継続することができる。繰り出し機能の悪化を抑制しながら、繰り出し動作を継続することができる。すなわち機能の稼働が維持されるので、機能が停止される場合に比べ利用者の利便性が損なわれない。また繰り出し機能の回復も期待できる。なお、より詳細には、当該収納部7に収納される最大収納量を正常時に比べ少なくなるように制御するとは、繰り出し状態が異常状態に達したと判定した時点の当該収納部7の収納量が、所定の制限値以下の場合には、当該所定の制限値以上にならないように、当該収納部7への収納を制限することであり、他方、判定時点で当該収納部7の収納量が所定の制限値以上である場合には、当該収納部7の収納量が所定の制限値以下、さらには、ある所定のマージンを持たせた収納量以下になるまで、当該収納部7については出金専用の収納部7とする(入金収納はしない)ことである。
【0041】
なおステップS102で、基準値外れ繰り出しが所定の基準頻度より多く発生しているか否かを判定し、基準頻度より多く発生している場合は、繰り出し機能が「異常状態」であるとしたが、この「異常状態」には、異常に至らずとも異常傾向になる状態も含まれる。
【0042】
<監視対象が繰り出しモータの回転数のケース>
以下に、繰り出しモータの回転数を監視対象とした場合の機能継続稼働処理を説明する。
【0043】
繰り出し動作は、繰り出し部6の繰り出しモータ61を駆動源として実現されるが、繰り出しモータ61には製品寿命がある。すなわち繰り出しモータ61の累積駆動時間が製品寿命を超えると、同じ条件では誤動作する可能性が高くなる。一方、負荷を低減させて使用すれば、誤動作の可能性を低くすることができ、継続的に使用できる場合がある。
【0044】
そこでこの例では、繰り出しモータ61の累積駆動時間を監視し、繰り出しモータ61の累積駆動時間が製品寿命を超えた場合、繰り出しモータ61により実現される繰り出し状態が異常状態であるとし、
図4の例の場合と同様に、繰り出し機能により繰り出された貨幣を収納部7に収納する収納機能を低機能化することで、異常状態とした繰り出し動作が継続できるようにする。
【0045】
図5は、繰り出しモータ61の回転数(rpm:rotations per minute)乃至は累積駆動時間を監視対象とした場合の機能継続稼働処理を説明するためのフローチャートである。
【0046】
ステップS201において、監視部13は、所定のタイミングで繰り出しモータ61の累積駆動時間を記憶部15から読み出す動作を開始する。繰り出しモータ部センサ172は例えば現金処理装置1の電源がオンされると、繰り出しモータ61の回転数を計測し、その計測結果を制御部12に供給する。制御部12は、繰り出しモータ部センサ172から入力された回転数に基づいて繰り出しモータ61の累積駆動時間を算出し、それを記憶部15に上書き記憶させる。あるいは、繰り出しモータ部センサ172に拘らず、繰り出しモータ61に駆動信号を与えた時間の累積時間を用いるようにしても良い。
【0047】
ステップS202において、監視部13は、記憶部15から読み出した繰り出しモータ61の累積駆動時間が製品寿命に対応する基準時間を超えているか否かを判定し、基準時間を超えていると判定した場合、繰り出しモータ61の繰り出し動作が異常状態であると判定する。この例の場合、基準時間を30000時間とし、累積駆動時間がそれを超えている場合、異常状態であると判定される。監視部13は、繰り出しモータ61の繰り出し動作が異常状態であると判定するまでこの処理を繰り返し実行する。なお監視部13は、この処理に先立ち、繰り出しモータ61の製品寿命に対応する基準時間を記憶部15から読み出している。
【0048】
ステップS202で、繰り出しモータ61の繰り出し動作が異常状態であると判定した場合、監視部13は、ステップS203において、繰り出しモータ61の累積駆動時間を制御部12に通知する。制御部12は、この状態でも繰り出し動作が継続できるように、収納部7の最大収納量(限度収納量)を制限する処理を実行する。
【0049】
この例の場合、
図6に示すように、累積駆動時間に応じて、異常状態をレベル分けし、そのレベルに応じた処理が実行される。累積駆動時間T
Aが、基準時間<T
A<基準時間×1.03である場合には繰り出しモータ61の動作状態が異常傾向レベル1とみなし収納部7の収納量が正常時の90%に制限される。
【0050】
累積駆動時間T
Aが、基準時間×1.03<T
A<基準時間×1.05である場合には繰り出しモータ61の動作状態が異常傾向レベル2とみなし収納部7の最大収納量が正常時の70%に制限される。累積駆動時間T
Aが、基準時間×1.05<T
A<基準時間×1.06である場合には繰り出しモータ61の動作状態が異常傾向レベル3とみなし収納部7の最大収納量が正常時の50%に制限される。このとき、
図4の例の場合と同様に、例えば、累積駆動時間T
Aが、基準時間×1.06≦T
Aである場合には繰り出しモータ61の動作状態が、現金処理装置1を休止させて保守サービス等、さらには部品(モータ)交換を必要とする「異常休止状態」と判定される。
【0051】
以上のように、監視部13が、繰り出しモータ61の累積駆動時間を監視し(ステップS201)、製品寿命の基準時間を超えたか否かを判定し(ステップS202)、繰り出しモータ61の累積駆動時間が基準時間を超えたと判定した場合、制御部12が収納部7に収納される最大収納量を正常時に比べ少なくなるようにしたので(ステップS203)、繰り出し動作の負荷が低減し、異常状態でも繰り出し動作を継続することができる。繰り出し機能の悪化を抑制しながら、繰り出し動作を継続することができる。すなわち機能の稼働が維持されるので、機能が停止される場合に比べ利用者の利便性が損なわれない。また繰り出し機能の回復も期待できる。
【0052】
<監視対象が搬送部を構成する振分搬送部のソレノイド応答速度のケース>
以下に、搬送部4を構成する振分搬送部141,142のソレノイド駆動応答速度を監視対象とした場合の機能継続稼働処理を説明する。
【0053】
振分部5の振り分け動作は、振分部5の振分レバー51がソレノイド52により駆動されるが、ソレノイド52の応答速度などの応答性能が落ちると、搬送部4の通常の搬送速度では正しく振り分けできない。一方、ソレノイド52の応答速度が落ちても、その応答速度に応じた振分レバー51による振分けのタイミングに同期するように、搬送部4の振分搬送部141,142の搬送速度を下げることで正常な振り分けを実現できる。
【0054】
そこでこの例では、ソレノイド52の応答速度を監視し、通常と異なるソレノイド52の応答速度が所定の基準速度より遅くなった場合、振り分け状態が異常状態であるとし、振り分け機能により振り分けられた貨幣を搬送する搬送部4の振分搬送部141,142の搬送機能を低能力化することで、異常状態とした振り分け動作が継続できるようにする。
【0055】
図7は、監視対象が振分部5のソレノイド52の応答速度である場合の機能継続稼働処理を説明するためのフローチャートである。
【0056】
ステップS301において、監視部13は、振分部センサ173からの検出結果(振分部5のソレノイド52の駆動の応答速度(mm/s))の入力を開始する。
【0057】
ステップS302において、監視部13は、記憶部15からソレノイド52の応答速度の基準応答速度を読み出し、ステップS301で入力したソレノイド52の応答速度がその基準応答速度±1%以内であるか否か判定する。監視部13は、振り分け状態が異常状態であると判定するまでこの処理を繰り返し実行する。なお監視部13は、その処理に先立ち、ソレノイド52の応答速度がその基準応答速度を記憶部15から読み出す。
【0058】
ステップS302で、振分部5の振り分け状態が異常状態であると判定した場合、監視部13はソレノイド52の応答速度を制御部12に通知する。ステップS303において、制御部12は、この状態でも振り分け動作を継続できるように、搬送部4の振分搬送部141,142の搬送速度を遅くする処理を実行する。
【0059】
この例の場合、
図8に示すように、ソレノイド52の応答速度に応じて、異常状態をレベル分けし、そのレベルに応じた処理が実行される。応答速度Tが、T<基準応答速度×0.98~0.99、又は基準応答速度×1.01~1.02<Tであると判定された場合、制御部12は、振り分け機能の状態を異常傾向レベル1であるとみなして振分搬送部141,142の搬送モータの搬送速度(m/s)を正常時に比べ10%減少させる。
【0060】
応答速度Tが、T<基準応答速度×0.97~0.98又は基準応答速度×1.02~1.03<Tである場合には異常傾向レベル2であるとみなして、制御部12は、振分搬送部141,142の搬送モータの搬送速度を正常時に比べ20%減少させる。応答速度Tが、T<基準応答速度×0.96~0.97又は基準応答速度×1.03~1.04<Tである場合には異常傾向レベル3であるとみなして振分搬送部141,142の搬送モータの搬送速度を正常時に比べ30%減少させる。なお、上記したように、一般的には、ソレノイドの応答速度は、経年変化等によって、遅くなるものであるので、基準応答速度に乗ずる比率1以上に対する比較は、不要であっても良い。
【0061】
以上のように、監視部13がソレノイド52の応答速度を監視し(ステップS301)、振分部5の振り分け状態が異常状態に達したか否かを判定し(ステップS302)、振分部5の振り分け状態が異常状態に達したと判定した場合、振分部5からの入出金経路にある振分搬送部141,142の搬送モータの搬送速度を正常時に比べ遅くするようにしたので(ステップS303)、異常状態でも繰り分け動作を継続することができる。振り分け機能の悪化を低減させながら、振り分け動作を継続することができる。すなわち機能の稼働が維持されるので、機能が停止される場合に比べ利用者の利便性が損なわれない。また振り分け機能の回復も期待できる。このときも、
図4および
図6の例の場合と同様に、例えば、応答速度Tが、T<基準応答速度×0.96となった場合には、現金処理装置1を休止させて保守サービス等、さらには部品(ソレノイド)交換を必要とする「異常休止状態」と判定される。
【0062】
<監視対象が現金処理装置の稼働履歴のケース>
以下に、現金処理装置の稼働履歴を監視対象とした場合の機能継続稼働処理を説明する。
【0063】
現金処理装置1には製品寿命がある。すなわち稼働時間が製品寿命を超えると、同じ条件では誤動作する可能性が高くなる。一方、例えば負荷を低減させて使用すれば、誤作動の可能性を低くすることができ、継続的に使用できる場合がある。
【0064】
そこでこの例では、現金処理装置1の稼働時間を監視し、現金処理装置1の稼働時間が製品寿命を超えた場合、現金処理装置1の現金処理状態を異常状態とし、繰り出し機能により繰り出された貨幣を収納部7に収納する収納機能を低機能化し、また振り分け機能により振り分けられた貨幣を搬送する振分搬送部141,142の搬送機能を低能力化することで、異常状態とした現金処理動作が継続できるようにする。
【0065】
図9は、監視対象が現金処理装置1の稼働履歴である場合における現金処理装置1の機能制限制御の動作を説明するためのフローチャートである。
【0066】
ステップS401において、監視部13は、所定のタイミングで現金処理装置1の稼働時間を記憶部15から読み出す動作を開始する。なお、制御部12の内部にカレンダ機能を有し、現金処理装置1が最初に稼働した日時、または保守点検の日時を、その日時から現在までの期間(日数(D:Day)、月数(M:Month)、年数(Y:Year))を稼働期間として算出し、記憶部15に上書き記憶させる。
【0067】
ステップS402において、監視部13は、記憶部15から読み出された稼働期間が基準期間内であるか否かを判定する。この例の場合、基準期間は、現金処理装置1の保証稼働期間(例えば、現金処理装置1が現場において使用可能状態になった日から動作を保証する期間)とし、稼働期間がそれを超えている場合、異常状態であると判定される。監視部13は、現金処理装置1の機能が異常状態であると判定するまでこの処理を繰り返し実行する。
【0068】
ステップS402で、現金処理装置1の機能が異常状態であると判定した場合、監視部13は、ステップS403において、稼働期間を制御部12に通知する。制御部12は、この状態でも繰り出し操作、および振り分け動作を継続できるように、収納部7の最大収納量を低減させる処理、搬送部4の振分搬送部141,142の搬送速度を遅くする処理を実行する。
【0069】
この例の場合、
図10に示すように、現金処理装置1の稼働期間に応じて、異常状態をレベル分けし、そのレベルに応じた処理が実行される。稼働期間が所定の基準期間を超えて3か月未満である場合には、制御部12は異常化傾向レベル1であるとみなして収納部7の最大収納量を正常時の90%に減少制限させる。稼働期間が基準期間を超えて3か月~6か月未満場合には、制御部12は異常化傾向レベル2であるとみなして収納部7の収納量を仕様値の70%に減少させる。
【0070】
稼働期間が所定の基準期間を超えて6か月~12か月未満である場合には、制御部12は異常化傾向レベル3であるとみなして収納部7の現金収納量を正常時の50%に減少させ、かつ振分搬送部141,142の搬送モータの搬送速度(m/s)を10%減少させる。
【0071】
稼働期間が基準期間を1年以上となる場合には異常化傾向レベル4であるとみなして収納部7の最大収納量を正常時の50%に減少させ、振分搬送部141,142の搬送モータの搬送速度を20%減少させる。
【0072】
なおここでは稼働期間(日数)を監視対象としたが、稼働時間を監視対象とすることができる、その場合、ステップS402において、基準期間に替えて基準時間にて異常状態が判定される(一例として
図11参照)。
【0073】
ステップS403で、現金処理装置1の稼働期間に応じて、異常状態をレベル分けし、そのレベルに応じた処理が実行される。稼働時間が基準時間を超えて480h未満である場合には異常化傾向レベル1であるとみなされる。稼働時間が基準時間を超えて480h~960h未満である場合には異常化傾向レベル2であるとみなされる。稼働時間が基準時間を超えて960h~1920h未満である場合には異常化傾向レベル3であるとみなされる。稼働時間が基準時間を1920h以上となる場合には異常化傾向レベル4であるとみなされる。各レベルに対応する処理は上述した処理と同様とすることができる。なお、これら
図10または
図11の例では、単に、現金処理装置1を使用している稼働期間または稼働時間を判断対象としているので、先の
図4,
図6および
図8の例とは異なり、ある基準を超えたからと言って、現金処理装置1を休止させて保守サービス等、さらには部品等の交換を必要とする「異常休止状態」と判定することまでは行わないことにしたが、先の例と同様に、ある基準を超えたところで、現金処理装置1を休止させて保守サービス等、さらには部品等の交換を必要とする「異常休止状態」と判定するようにしても良い。
【0074】
以上のように、監視部13が現金処理装置1の稼働期間(時間)を監視し(ステップS401)、稼働時間が製品寿命を超えたか否かを判定し(ステップS402)、稼働時間が製品寿命を超えた場合、現金処理装置1の機能を異常状態とし、装置の一部として構成される搬送部4の搬送モータの速度を低減したり、収納部7の収納量を制限するようにしたので(ステップS403)、現金処理装置1の一部を構成するものの負荷が低減され、もって現金処理装置1の負荷も低減させることができる。したがって現金処理装置1の機能の悪化を低減させながら、現金処理装置1の動作を継続することができる。すなわち機能の稼働が維持されるので、機能が停止される場合に比べ利用者の利便性が損なわれない。また現金処理装置1の回復も期待できる。
【0075】
搬送速度においては振分搬送部141,142の搬送速度を制限する場合を例として説明したが、入金搬送部41及び出金搬送部42の搬送モータ(図示せず)の搬送速度を制限するようにしてもよい。また、上記した稼働期間(時間)は新製品投入時を始期として説明したが、例えば製品投入後にメンテナンスを受けた場合、そのメンテナンス終了時を始期として稼働期間(時間)を計算してもよい。
【0076】
また以上においては、異常状態と判定された場合、繰り出し機能により繰り出された貨幣を収納部7に収納する収納機能を低機能化し、また振り分け機能により振り分けられた貨幣を搬送する振分搬送部141、142の搬送機能を低能力化する例を説明したが、一方の低機能化、低能力化だけを実行することもできる。
【0077】
また以上においては、機能を停止させず低機能化、低能力化して稼働を継続させるものとしたが、機能の縮退と組み合わせることもできる。
【0078】
なお上記した機能の低機能化、低能力化への変更については、自動的に制御する例であるが、上記の監視、監視結果の記憶、監視結果に基づく低機能化、低能力化の判断は、使用者の操作部11を介しての選択指示によって行われるものであってもよい。また、過去の累積結果ではなく、直近の履歴の平均値などから判断するようにしてもよい。また、稼働期間については、設置から、あるいは運用開始から、例えば保証期間となる7年間とか10年間といった所定の期間に対して、当該保証期間に達したときだけにかかわらず、所定の期間前、例えば半年前、3ヶ月前、等々の期限を基準としてもよい。
【0079】
<現金処理装置の機能制限の変形例>
上述した態様にて異常状態と判定された場合、上述した低機能化、低能力化に替えて、またはそれに加えて、取引口2(紙幣取引口、硬貨取引口)における現金の入出金における取引限度枚数を予め定められた制限時枚数に減少させて入出金の機能を継続させるようにしてもよい。この場合、入出金取引の利用者が取引できる取引限度枚数を予め定められた制限時枚数にまで減少させることができるため、入出金経路上にある振分部5、繰り出し部6、収納部7等に掛かる負荷を低減させることができ、現金処理装置1全体が使用できなくなるような状況を回避できる。また、現金処理装置1の利便性の低下を抑制できる。
【0080】
以上においては、現金処理装置1に設けられているセンサを利用して繰り出しピッチ、繰り出しモータ61の累積駆動時間、振分部5のソレノイド52の応答速度、現金処理装置1の稼働時間を監視対象として機能の状態が異常状態であるか否かを判定したが、それ以外の点を監視し、その監視結果に基づいて機能の状態が異常状態であるか否かを判定することもできる。
【0081】
各種モータは、例えば、ギア機構を介して、搬送系を駆動したり、内部機構・ステージやプッシャなどの部材の移動を行ったり、さらにはリンク機構を介して、シャッタやゲート類などの開閉・切り替え等を行ったりしている。各種ソレノイドもまた、リンク機構を介して、同じくゲート類を開閉・切り替え等を行ったりしている。繰り出し、振り分けに限らずこれらの動作を監視してその結果に基づいて異常状態を判定することができる。
【0082】
また以上においては、異常状態を複数にレベル分けしたが、レベル分けを行わないようにすることができる。またより詳細にレベル分けすることができる。
【0083】
<報知例(自動/選択)>
上述したように、現金処理装置1の機能が異常状態であると判定した場合、その機能を継続するための機能制限処理を実行することを説明したが、機能制限処理を実行するとともに、機能が異常状態になったこと、またその場合の対処方法をユーザーに通知することができる。以下に、ユーザーへの報知の具体例について、自動で対応処置する第1の報知態様と、対応処置についてユーザーに選択を促す第2の報知態様について
図12及び
図13を参照して説明する。
【0084】
(第1の報知態様)
図12は、現金処理装置1の状態が異常状態として検出された場合に自動で対応する報知態様を示した図である。報知表示は判断日時、対象部位、状況、判断、対応処置の内容を報知部14からの通信/表示指示により外部の管理サーバ(図示せず)又は表示部10にポップアップ表示させるというものである。
【0085】
図12の最上段は、
図3および
図4で説明した機能継続処理における繰り出し動作において、基準値外れ発生頻度が1回/9152枚であり、異常化傾向レベル1と判断された場合の例である。この例では、「繰り出し不調の発現により、収納量を仕様値(△△枚)から10%低下(□□枚)に変更」の表示が表示部10に表示される。
【0086】
図12の中段は、
図7および
図8で説明した機能継続処理における振り分け動作において、ソレノイド52の応答速度が〇〇であり、異常化傾向レベル1と判定された場合の例である。この例の場合、「振り分け部No○○の動作不調の発現により、搬送速度を10%低下させて運用」の表示が表示部10に表示される。
【0087】
図12の下段は、
図9~
図11で説明した機能継続処理の例における現金処理装置1の稼働時間が装置の設置後○○年であって稼働時間の基準時間を経過し、異常化傾向レベル1と判定された場合の例である。この例では、「機器設置後○○年を経過につき、機器内各収納部の収納量を仕様値(△△枚)から10%低下(□□枚)に変更」の表示が表示部10に表示される。
【0088】
このように現金処理装置1の状態情報や対応処置について、表示部10を介して情報発信や情報表示がなされることで、現金処理装置1の運営側にとっては、それらの情報を保守計画や入れ換え計画の策定などに活用できる。また、必要に応じて、現金処理装置1の表示部10等に表示させることで、現金処理装置1の設置者や利用者に、装置状態を把握・理解させた上での利用に供することができる。
【0089】
なお、低機能化への変更・修正等々の制御がなされるとともに、修正後にあっては、管理側への報知(保守計画・入れ換え計画作成等)に加え、設置者・利用者への報知が含まれる。そして、例えば、保証期間に関しては、必要に応じ、または、可能な部位に応じて、低スペック化への変更・修正に応じて、保証期間の一定期間の延長表示を行うように報知させるようにしてもよい。
【0090】
(第2の報知態様)
図13は、現金処理装置1の状態が異常状態として検出された場合にユーザーに対応の選択を促す報知態様を示した図である。報知表示は判断日時、対象部位、状況、判断、対応処置情報の内容、選択の種別(Yes又はNo)、操作者情報、選択後の表示を報知部14からの通信/表示指示により外部の管理サーバ(図示せず)又は表示部10にポップアップ表示させるというものである。
【0091】
図13の例では、監視対象が繰り出し部6で直近の発生頻度が1/9152枚であり、異常化傾向レベル1と判断され対応情報表示として、「○○部:金種Bの繰り出し不調の発現により、収納量を90%に制限して運用しますが、よろしいですか」という内容が表示されるとともに、Yes/Noの選択を促す表示がされる。操作部11を介して「Yes」の選択がなされた場合は、選択後の表示として「○○部:金種Bの繰り出し不調の発現により、収納量を90%に制限して運用します」という内容とともに操作者情報(担当者コード)が表示される。操作部11を介して「No」の選択がなされた場合は、選択後の表示として「運用制限は実施しませんが、引き続き、不調が継続する場合には、再度の異常傾向表示がなされますので、改めてのご検討をお願いします。」という内容とともに操作者情報(担当者コード)及び「対応処置非対応」の旨が表示される。
【0092】
このように、現金処理装置1の状態情報や対応処置について、ユーザーに選択が促され、同意の上でそのまま継続するか、あるいは一部の機能のみ低機能化(低スペック化)のいずれかを選択できるので、現金処理装置の運営側にとっては、一部の機能を低機能化してまで長期運用を図りたいユーザーや、長期運用よりもハイスペックのまま運用したいユーザーのいずれのユーザーにも選択権を与え、運用の自由度を高めることができる。
【0093】
なお、現金処理装置1は現金を取り扱う機器であるため、機器を操作する操作者情報が、キー入力、カード入力等によって、入力されることが一般的である。この情報を利用して、いずれの担当者が同意の上で、制限しながら機器を使用したのか、同意せずに使用したのか、その結果、エラーが発生することになったのか等の履歴情報も記憶部15に記憶され、その情報は報知部14や通信部16を介して通知される。
【0094】
以上説明した実施の形態では、現金の入出金を可能とする現金処理装置(1)であって、現金処理装置(1)の機能状態を監視する監視部(13)と、現金処理装置(1)の機能状態が予め定められた異常状態になった場合に現金処理装置(1)の機能の一部について、低機能化または低能力化して、異常状態となった機能を稼働継続させる制御部(12)とを有する構成とした。したがって、上記構成によれば、現金処理装置の状態が異常状態になった場合に現金処理装置1の機能の一部の稼働を低機能化して継続運用し、その他の機能の稼働を継続させるようにしたので、現金処理装置1全体の機能を停止させることなく、異常状態になっていない他の機能の稼働を継続でき、現金処理装置1全体が使用できなくなるような状況を回避できる。また、現金処理装置(1)の利便性の低下を抑制できる。
【0095】
また、この実施形態で説明した現金処理装置1では、監視部(13)が、現金の繰り出しを行う繰り出し部位における繰り出し状態を監視し、制御部(12)は、現金の繰り出し状態が予め定められた異常繰り出し状態になった場合に繰り出し部位の現金の限度基準量を低下させる構成とした。したがって、上記構成によれば繰り出し状態が異常状態になった場合に収納部(7)に収納される紙幣や硬貨の量を少なくさせて収納部(7)から繰り出す際の繰り出し機能の負荷を低減できるので、繰り出し機能の悪化を低減させながら、繰り出し動作を継続することができる。また繰り出し機能の回復も期待できる。
【0096】
また、この実施形態で説明した現金処理装置1では、さらに、現金を搬送するとともに現金の振り分けを行う振分搬送部(141,142)を有し、監視部(13)が、収納現金の振分を行う振分部(5)における振分状態を監視し、制御部(12)が、現金の振分状態が予め定められた異常振分状態になった場合に振分搬送部(141,142)における現金の搬送速度を低下させる構成とした。したがって、上記構成によれば振分搬送部(141、142)の搬送モータの搬送速度を下げることによって振分搬送部(141、142)に接続されている振分部(5)における振り分ける際の振り分け機能の負荷が低減されるので、振り分け機能の悪化を低減させながら、振り分け動作を継続することができる。また振り分け機能の回復も期待できる。
【0097】
また、この実施形態で説明した現金処理装置1では、監視部(13)が、現金処理装置(1)の稼働期間を監視し、制御部(12)が、現金処理装置(1)の稼働期間が予め定められ期間を超えた場合に収納部(7)に収納させる収納現金の収納量、及び、現金を搬送させる振分搬送部(141、142)の入出金における搬送速度の内の少なくとも一方を低下させる構成とした。したがって、上記構成によれば、現金処理装置(1)の駆動時間が製品寿命を超えた場合に、現金処理装置(1)の機能を異常状態とし、装置の一部として構成される搬送部4の搬送モータの速度を低減したり、収納部7の収納量を制限するようにしたので、現金処理装置1の一部を構成するものの負荷が低減され、もって現金処理装置1の負荷も低減させることができる。したがって現金処理装置1の機能の悪化を低減させながら、現金処理装置1の動作を継続することができる。また現金処理装置1の回復も期待できる。
【0098】
また、この実施形態で説明した現金処理装置1では、制御部(12)が、現金処理装置(1)の機能の一部について低機能化して継続運用し、他の機能の稼働を継続させた場合に、現金の入出金における取引限度枚数を予め定められた制限時枚数に減少させて入出金の機能を継続させる構成とした。したがって、上記構成によれば入出金取引の利用者が取引できる取引限度枚数を予め定められた制限時枚数にまで減少させることができるため、入出金経路上にある振分部5、繰り出し部6、収納部7等に掛かる負荷を低減させることができ、現金処理装置1全体の機能を停止させることなく、異常状態になっていない他の機能の稼働を継続でき、現金処理装置1全体が使用できなくなるような状況を回避できる。また、現金処理装置(1)の利便性の低下を抑制できる。
【0099】
また、この実施形態で説明した現金処理装置(1)では、制御部(12)が、現金処理装置(1)の状態が予め定められた異常状態になった場合に、その状態に関する情報を報知させる報知部(14)を有する構成とした。したがって、上記構成によれば、それぞれの状態情報を外部に報知、すなわち表示部を介して情報発信や情報表示することで、現金処理装置の運営側には、保守計画・入れ換え計画の策定などに活用できる。また、必要に応じて、現金処理装置の表示部・モニター等に表示させることで、現金処理装置の設置者・利用者に、装置状態を把握・理解させた上での利用に供することができる。
【0100】
また、この実施形態で説明した現金処理装置(1)では、制御部(12)が、現金処理装置(1)の機能の一部について、当該機能を低機能化させずに維持運用させるか、当該機能を停止させずに低機能化させる継続運用とするかを選択させる構成とした。したがって、上記構成によれば、現金処理装置(1)の状態情報や対応処置について、ユーザーに選択が促され、同意の上でそのまま継続するか、あるいは一部の機能のみ低機能化(低スペック化)のいずれかを選択できるので、現金処理装置の運営側にとっては、一部の機能を低機能化してまで長期運用を図りたいユーザーや、長期運用よりもハイスペックのまま運用したいユーザーのいずれのユーザーにも選択権を与え、運用の自由度を高めることができる。
【0101】
また、この実施形態で説明した現金処理方法では、現金の入出金を可能とする現金処理装置の方法であって、監視部(13)が現金処理装置(1)の機能状態を監視するステップ(S101)と、制御部(12)が、現金処理装置(1)の機能状態が予め定められた異常状態になった場合に現金処理装置(1)の機能の一部の稼働を低機能化して継続運用し、異常状態となった機能を稼働継続させるステップ(S102,S103)とを有する構成とした。したがって、上記構成によれば、現金処理装置の状態が異常状態になった場合に現金処理装置1の機能の一部の稼働を制限し、その他の機能の稼働を継続させるようにしたので、現金処理装置1全体の機能を停止させることなく、異常状態になっていない他の機能の稼働を継続でき、現金処理装置1全体が使用できなくなるような状況を回避できる。また、現金処理装置(1)の利便性の低下を抑制できるので、現金処理装置の保守・管理における利便性を向上させることができる。
【0102】
以上にこの発明の具体的な実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0103】
1…現金処理装置
2…取引口
3…識別部
4…搬送部
41…入金搬送部
141…振分搬送部
42…出金搬送部
142…振分搬送部
5…振分部
51…振り分けレバー
52…ソレノイド
6…繰り出し部
61…繰り出しモータ
7…収納部
71-1~71-n…収納部
8…リジェクト部
9…装填回収部
10…表示部
11…操作部
12…制御部
13…監視部
14…報知部
15…記憶部
16…通信部
17…センサ部
171…繰り出し部センサ
172…繰り出しモータ部センサ
173…振り分け部センサ