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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056046
(43)【公開日】2022-04-08
(54)【発明の名称】騒音性能の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20220401BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020163824
(22)【出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】山本 尚岐
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC44
3D131LA22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タイヤに起因する騒音の寄与率を正確に評価するための方法を提供する。
【解決手段】トレッド部に溝が形成されていないスムースタイヤと、トレッド部に溝が形成された溝付タイヤとを準備する第1工程と、スムースタイヤを装着した車両7で、路面粗さに起因するスムースタイヤへの入力を排除したスムース路面SRを走行したときの音圧レベルである第1音圧P1を測定する第2工程と、スムースタイヤを装着した車両7で、騒音測定用の試験路面TRを走行したときの音圧レベルである第2音圧P2を測定する第3工程と、溝付タイヤを装着した車両7で、試験路面TRを走行したときの音圧レベルである第3音圧P3を測定する第4工程と、第1音圧P1、第2音圧P2及び第3音圧P3に基づき、評価タイヤに起因する騒音の寄与率Rを求める第5工程とを含んでいる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの騒音性能を評価するための方法であって、
評価対象である評価タイヤと同一の構造を有しかつトレッド部に溝が形成されていないスムースタイヤと、前記評価タイヤと同一の構造を有しかつ前記トレッド部に溝が形成された溝付タイヤとを準備する第1工程と、
前記スムースタイヤを装着した車両で、路面粗さに起因する前記スムースタイヤへの入力を排除したスムース路面を走行したときの音圧レベルである第1音圧P1を測定する第2工程と、
前記スムースタイヤを装着した前記車両で、騒音測定用の試験路面を走行したときの音圧レベルである第2音圧P2を測定する第3工程と、
前記溝付タイヤを装着した前記車両で、前記試験路面を走行したときの音圧レベルである第3音圧P3を測定する第4工程と、
前記第1音圧P1、前記第2音圧P2及び前記第3音圧P3に基づき、前記評価タイヤに起因する騒音の寄与率を求める第5工程とを含む、
騒音性能の評価方法。
【請求項2】
前記第5工程は、前記評価タイヤの溝以外の構造に起因する騒音の寄与率である構造寄与率と、前記評価タイヤの溝に起因する騒音の寄与率である溝寄与率とを求める、請求項1に記載の騒音性能の評価方法。
【請求項3】
前記溝付タイヤは、前記トレッド部にタイヤ周方向に延びる縦溝のみが形成された縦溝タイヤと、前記トレッド部にタイヤ軸方向に延びる横溝のみが形成された横溝タイヤとを含み、
前記第4工程は、前記縦溝タイヤを装着した前記車両で、前記試験路面を走行したときの音圧レベルである第3縦溝音圧P3Aを測定する縦溝測定工程と、前記横溝タイヤを装着した前記車両で、前記試験路面を走行したときの音圧レベルである第3横溝音圧P3Bを測定する横溝測定工程とを含み、
前記第5工程は、前記評価タイヤの溝以外の構造に起因する騒音の寄与率である構造寄与率と、前記評価タイヤの縦溝に起因する騒音の寄与率である縦溝寄与率と、前記評価タイヤの横溝に起因する騒音の寄与率である横溝寄与率とを求める、請求項1に記載の騒音性能の評価方法。
【請求項4】
前記第5工程は、
前記第1音圧P1をエネルギーに換算した第1換算値E1と、前記第2音圧P2をエネルギーに換算した第2換算値E2と、前記第3縦溝音圧P3Aをエネルギーに換算した第3縦溝換算値E3Aと、前記第3横溝音圧P3Bをエネルギーに換算した第3横溝換算値E3Bとを求める換算工程と、
前記第1換算値E1、前記第2換算値E2、前記第3縦溝換算値E3A及び前記第3横溝換算値E3Bに基づき、前記構造寄与率と、前記縦溝寄与率と、前記横溝寄与率とを求める評価工程とを含む、請求項3に記載の騒音性能の評価方法。
【請求項5】
前記評価工程は、前記構造寄与率を、前記第2換算値E2から前記第1換算値E1を差し引くことにより求める、請求項4に記載の騒音性能の評価方法。
【請求項6】
前記評価工程は、前記縦溝寄与率を、前記第3縦溝換算値E3Aから前記第1換算値E1と前記第2換算値E2とを差し引くことにより求め、前記横溝寄与率を、前記第3横溝換算値E3Bから前記第1換算値E1と前記第2換算値E2とを差し引くことにより求める、請求項4又は5に記載の騒音性能の評価方法。
【請求項7】
前記換算工程は、下記式(1)ないし(4)に基づき前記第1換算値E1、前記第2換算値E2、前記第3縦溝換算値E3A及び前記第3横溝換算値E3Bを求める、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の騒音性能の評価方法。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【請求項8】
前記第2換算値E2から前記第1換算値E1を差し引いた値(E2-E1)に基づき、前記評価タイヤの溝以外の構造に起因する騒音の音圧レベルである第4音圧P4を求める第6工程と、
前記第3縦溝換算値E3Aから前記第1換算値E1と前記第2換算値E2とを差し引いた値(E3A-E1-E2)に基づき、前記評価タイヤの縦溝に起因する騒音の音圧レベルである第5縦溝音圧P5Aを求める第7工程と、
前記第3横溝換算値E3Bから前記第1換算値E1と前記第2換算値E2とを差し引いた値(E3B-E1-E2)に基づき、前記評価タイヤの横溝に起因する騒音の音圧レベルである第5横溝音圧P5Bを求める第8工程とを含む、請求項4ないし7のいずれか1項に記載の騒音性能の評価方法。
【請求項9】
前記第6工程は、下記式(9)に基づき前記第4音圧P4を求め、
前記第7工程は、下記式(10)に基づき前記第5縦溝音圧P5Aを求め、
前記第8工程は、下記式(11)に基づき前記第5横溝音圧P5Bを求める、請求項8に記載の騒音性能の評価方法。
【数9】
【数10】
【数11】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの騒音性能を評価するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの騒音性能を評価するための種々の方法が提案されている。例えば、下記特許文献1は、採取した騒音の周波数のスペクトルを算出して、定量的にタイヤの騒音性能を評価する方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-166995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法においても、タイヤに起因する騒音の寄与率をより正確に評価することが求められていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、タイヤに起因する騒音の寄与率を正確に評価するための方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タイヤの騒音性能を評価するための方法であって、評価対象である評価タイヤと同一の構造を有しかつトレッド部に溝が形成されていないスムースタイヤと、前記評価タイヤと同一の構造を有しかつ前記トレッド部に溝が形成された溝付タイヤとを準備する第1工程と、前記スムースタイヤを装着した車両で、路面粗さに起因する前記スムースタイヤへの入力を排除したスムース路面を走行したときの音圧レベルである第1音圧P1を測定する第2工程と、前記スムースタイヤを装着した前記車両で、騒音測定用の試験路面を走行したときの音圧レベルである第2音圧P2を測定する第3工程と、前記溝付タイヤを装着した前記車両で、前記試験路面を走行したときの音圧レベルである第3音圧P3を測定する第4工程と、前記第1音圧P1、前記第2音圧P2及び前記第3音圧P3に基づき、前記評価タイヤに起因する騒音の寄与率を求める第5工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の騒音性能の評価方法において、前記第5工程は、前記評価タイヤの溝以外の構造に起因する騒音の寄与率である構造寄与率と、前記評価タイヤの溝に起因する騒音の寄与率である溝寄与率とを求めるのが望ましい。
【0008】
本発明の騒音性能の評価方法において、前記溝付タイヤは、前記トレッド部にタイヤ周方向に延びる縦溝のみが形成された縦溝タイヤと、前記トレッド部にタイヤ軸方向に延びる横溝のみが形成された横溝タイヤとを含み、前記第4工程は、前記縦溝タイヤを装着した前記車両で、前記試験路面を走行したときの音圧レベルである第3縦溝音圧P3Aを測定する縦溝測定工程と、前記横溝タイヤを装着した前記車両で、前記試験路面を走行したときの音圧レベルである第3横溝音圧P3Bを測定する横溝測定工程とを含み、前記第5工程は、前記評価タイヤの溝以外の構造に起因する騒音の寄与率である構造寄与率と、前記評価タイヤの縦溝に起因する騒音の寄与率である縦溝寄与率と、前記評価タイヤの横溝に起因する騒音の寄与率である横溝寄与率とを求めるのが望ましい。
【0009】
本発明の騒音性能の評価方法において、前記第5工程は、前記第1音圧P1をエネルギーに換算した第1換算値E1と、前記第2音圧P2をエネルギーに換算した第2換算値E2と、前記第3縦溝音圧P3Aをエネルギーに換算した第3縦溝換算値E3Aと、前記第3横溝音圧P3Bをエネルギーに換算した第3横溝換算値E3Bとを求める換算工程と、前記第1換算値E1、前記第2換算値E2、前記第3縦溝換算値E3A及び前記第3横溝換算値E3Bに基づき、前記構造寄与率と、前記縦溝寄与率と、前記横溝寄与率とを求める評価工程とを含むのが望ましい。
【0010】
本発明の騒音性能の評価方法において、前記評価工程は、前記構造寄与率を、前記第2換算値E2から前記第1換算値E1を差し引くことにより求めるのが望ましい。
【0011】
本発明の騒音性能の評価方法において、前記評価工程は、前記縦溝寄与率を、前記第3縦溝換算値E3Aから前記第1換算値E1と前記第2換算値E2とを差し引くことにより求め、前記横溝寄与率を、前記第3横溝換算値E3Bから前記第1換算値E1と前記第2換算値E2とを差し引くことにより求めるのが望ましい。
【0012】
本発明の騒音性能の評価方法において、前記換算工程は、下記式(1)ないし(4)に基づき前記第1換算値E1、前記第2換算値E2、前記第3縦溝換算値E3A及び前記第3横溝換算値E3Bを求めるのが望ましい。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【0013】
本発明の騒音性能の評価方法において、前記第2換算値E2から前記第1換算値E1を差し引いた値(E2-E1)に基づき、前記評価タイヤの溝以外の構造に起因する騒音の音圧レベルである第4音圧P4を求める第6工程と、前記第3縦溝換算値E3Aから前記第1換算値E1と前記第2換算値E2とを差し引いた値(E3A-E1-E2)に基づき、前記評価タイヤの縦溝に起因する騒音の音圧レベルである第5縦溝音圧P5Aを求める第7工程と、前記第3横溝換算値E3Bから前記第1換算値E1と前記第2換算値E2とを差し引いた値(E3B-E1-E2)に基づき、前記評価タイヤの横溝に起因する騒音の音圧レベルである第5横溝音圧P5Bを求める第8工程とを含むのが望ましい。
【0014】
本発明の騒音性能の評価方法において、前記第6工程は、下記式(9)に基づき前記第4音圧P4を求め、前記第7工程は、下記式(10)に基づき前記第5縦溝音圧P5Aを求め、前記第8工程は、下記式(11)に基づき前記第5横溝音圧P5Bを求めるのが望ましい。
【数9】
【数10】
【数11】
【発明の効果】
【0015】
本発明の騒音性能の評価方法は、スムースタイヤを装着した車両で、路面粗さに起因する前記スムースタイヤへの入力を排除したスムース路面を走行したときの音圧レベルである第1音圧P1、前記スムースタイヤを装着した前記車両で、騒音測定用の試験路面を走行したときの音圧レベルである第2音圧P2、及び溝付タイヤを装着した前記車両で、前記試験路面を走行したときの音圧レベルである第3音圧P3に基づき、評価タイヤに起因する騒音の寄与率を求める工程を含んでいる。
【0016】
このような騒音性能の評価方法は、車両に起因する騒音と、タイヤの溝以外の構造に起因する騒音と、タイヤの溝に起因する騒音とを、それぞれ、個別に評価することができる。このため、本発明の騒音性能の評価方法は、タイヤに起因する騒音の寄与率を正確に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のタイヤの騒音性能の評価方法の一実施形態を示すフローチャートである。
図2】評価タイヤの一例を示す斜視図である。
図3】スムースタイヤの一例を示す斜視図である。
図4】溝付タイヤの一例を示す斜視図である。
図5】騒音性能の評価試験の一例を示す斜視図である。
図6】溝付タイヤの一例を示す斜視図である。
図7】第4工程のフローチャートである。
図8】第5工程のフローチャートである。
図9】比較例の周波数分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態のタイヤの騒音性能の評価方法を示すフローチャートである。図1に示されるように、本実施形態のタイヤの騒音性能を評価するための方法は、評価対象である評価タイヤ1と同一の構造を有するスムースタイヤ2と溝付タイヤ3とを準備する第1工程S1を含んでいる。ここで、同一の構造とは、ビードコア、カーカス、ベルト等の図示省略の内部構造が同一であり、かつ、各寸法が同一であることを意味する。
【0019】
図2は、評価タイヤ1の一例を示す斜視図である。図2に示されるように、評価タイヤ1は、例えば、トレッド部4にタイヤ周方向に延びる縦溝5と、タイヤ軸方向に延びる横溝6とが形成されたタイヤである。評価タイヤ1は、図示の態様に限定されるものではなく、種々のタイヤが適宜採用され得る。
【0020】
図3は、スムースタイヤ2の一例を示す斜視図である。図3に示されるように、本実施形態のスムースタイヤ2は、トレッド部4に溝が形成されていない、いわゆるスリックタイヤである。
【0021】
図4は、溝付タイヤ3の一例を示す斜視図である。図4に示されるように、本実施形態の溝付タイヤ3は、トレッド部4に溝が形成されている。図4では、溝として、縦溝5が形成されている。溝付タイヤ3は、例えば、全ての溝が形成された評価タイヤ1(図2に示す。)であってもよい。
【0022】
図5は、騒音性能の評価試験の一例を示す斜視図である。図1ないし図5に示されるように、本実施形態の騒音性能の評価方法は、スムースタイヤ2を装着した車両7で、スムース路面SRを走行したときの音圧レベルである第1音圧P1を測定する第2工程S2を含んでいる。
【0023】
ここで、スムース路面SRは、路面粗さに起因するスムースタイヤ2への入力を排除した路面であり、例えば、騒音測定用の試験路面TRにカーペットを敷くことで準備することができる。このような第2工程S2は、車両7に起因する騒音を把握することができる。
【0024】
本実施形態の騒音性能の評価方法は、スムースタイヤ2を装着した車両7で、騒音測定用の試験路面TRを走行したときの音圧レベルである第2音圧P2を測定する第3工程S3を含んでいる。ここで、騒音測定用の試験路面TRは、ISO10844;2011で規定される路面である。このような第3工程S3は、タイヤの溝以外の構造に起因する騒音を把握することに役立つ。
【0025】
本実施形態の騒音性能の評価方法は、溝付タイヤ3を装着した車両7で、試験路面TRを走行したときの音圧レベルである第3音圧P3を測定する第4工程S4を含んでいる。このような第4工程S4は、タイヤの溝に起因する騒音を把握することに役立つ。
【0026】
なお、第1音圧P1、第2音圧P2及び第3音圧P3は、例えば、それぞれ、路面中心から7.5m離れた位置に設置されたマイク8により測定される車外騒音測定値である。第1音圧P1、第2音圧P2及び第3音圧P3は、実測値を予め定められた温度補正係数で補正されたものであるのが望ましい。
【0027】
第1音圧P1、第2音圧P2及び第3音圧P3は、車両7を予め定められた速度、例えば、50km/hで惰行走行させたときの音圧レベルである。車両7の走行速度は、車両7に設けられた速度センサの他、試験路面TRに設置された車速センサ9により測定されるのが望ましい。
【0028】
本実施形態の騒音性能の評価方法は、第1音圧P1、第2音圧P2及び第3音圧P3に基づき、評価タイヤ1に起因する騒音の寄与率Rを求める第5工程S5を含んでいる。このような騒音性能の評価方法は、車両7に起因する騒音と、タイヤの溝以外の構造に起因する騒音と、タイヤの溝に起因する騒音とを、それぞれ、個別に評価することができる。このため、本実施形態の騒音性能の評価方法は、タイヤに起因する騒音の寄与率Rを正確に評価することができる。
【0029】
より好ましい態様として、第5工程S5は、車両7に起因する騒音の寄与率Rである車両寄与率R1と、評価タイヤ1の溝以外の構造に起因する騒音の寄与率Rである構造寄与率R2と、評価タイヤ1の溝に起因する騒音の寄与率Rである溝寄与率R3とを求めている。
【0030】
車両寄与率R1は、例えば、第1音圧P1に基づき求められる。構造寄与率R2は、例えば、第2音圧P2から第1音圧P1を差し引いた音圧値を算出することで求めることができる。溝寄与率R3は、例えば、第3音圧P3から、第1音圧P1と第2音圧P2とを差し引いた音圧値を算出することで求めることができる。
【0031】
本実施形態の第5工程S5は、少なくとも構造寄与率R2と、評価タイヤ1の縦溝5に起因する騒音の寄与率Rである縦溝寄与率R3Aと、評価タイヤ1の横溝6に起因する騒音の寄与率Rである横溝寄与率R3Bとを求めている。すなわち、溝寄与率R3は、縦溝寄与率R3Aと横溝寄与率R3Bとを含んでいる。
【0032】
このような第5工程S5は、評価タイヤ1の縦溝5に起因する騒音と横溝6に起因する騒音とを、それぞれ、個別に評価することができる。本実施形態の第1工程S1は、上述の評価をするために、以下に示す縦溝タイヤ3Aと横溝タイヤ3Bとを準備するのが望ましい。
【0033】
図6は、溝付タイヤ3の一例を示す斜視図である。図4及び図6に示されるように、溝付タイヤ3は、例えば、トレッド部4にタイヤ周方向に延びる縦溝5のみが形成された縦溝タイヤ3Aと、トレッド部4にタイヤ軸方向に延びる横溝6のみが形成された横溝タイヤ3Bとを含んでいる。このような溝付タイヤ3は、スムースタイヤ2に任意の溝を追加することで、又は、評価タイヤ1の一部の溝を埋めることで、形成することができる。
【0034】
図7は、第4工程S4のフローチャートである。図4ないし図7に示されるように、本実施形態の第4工程S4は、縦溝タイヤ3Aを装着した車両7で、試験路面TRを走行したときの音圧レベルである第3縦溝音圧P3Aを測定する縦溝測定工程S41を含んでいる。このような縦溝測定工程S41は、評価タイヤ1の縦溝5に起因する騒音を把握することに役立つ。
【0035】
本実施形態の第4工程S4は、さらに、横溝タイヤ3Bを装着した車両7で、試験路面TRを走行したときの音圧レベルである第3横溝音圧P3Bを測定する横溝測定工程S42を含んでいる。このような横溝測定工程S42は、評価タイヤ1の横溝6に起因する騒音を把握することに役立つ。
【0036】
縦溝寄与率R3Aは、例えば、第3縦溝音圧P3Aから、第1音圧P1と第2音圧P2とを差し引いた音圧値を算出することで求めることができる。横溝寄与率R3Bは、例えば、第3横溝音圧P3Bから、第1音圧P1と第2音圧P2とを差し引いた音圧値を算出することで求めることができる。
【0037】
図8は、第5工程S5のフローチャートである。図8に示されるように、本実施形態の第5工程S5は、音圧レベルをエネルギーに換算した換算値を求める換算工程S51を含んでいる。換算工程S51は、第1音圧P1をエネルギーに換算した第1換算値E1と、第2音圧P2をエネルギーに換算した第2換算値E2とを求めるのが望ましい。
【0038】
換算工程S51は、下記式(1)及び(2)に基づき第1換算値E1及び第2換算値E2を求めるのが望ましい。ここで、第1音圧P1、第2音圧P2等の音圧レベルは、dB(A)を単位とし、第1換算値E1、第2換算値E2等のエネルギーは、Paを単位としている。
【数1】
【数2】
【0039】
換算工程S51は、例えば、第3音圧P3をエネルギーに換算した第3換算値E3をさらに求めている。本実施形態の換算工程S51は、第3縦溝音圧P3Aをエネルギーに換算した第3縦溝換算値E3Aと、第3横溝音圧P3Bをエネルギーに換算した第3横溝換算値E3Bとを求めている。
【0040】
換算工程S51は、下記式(3)及び(4)に基づき第3縦溝換算値E3A及び第3横溝換算値E3Bを求めるのが望ましい。
【数3】
【数4】
【0041】
本実施形態の第5工程S5は、第1換算値E1、第2換算値E2及び第3換算値E3に基づき、車両寄与率R1、構造寄与率R2及び溝寄与率R3を求める評価工程S52を含んでいる。本実施形態の評価工程S52は、第1換算値E1、第2換算値E2、第3縦溝換算値E3A及び第3横溝換算値E3Bに基づき、車両寄与率R1、構造寄与率R2、縦溝寄与率R3A及び横溝寄与率R3Bとを求めている。このような評価工程S52は、構造寄与率R2、縦溝寄与率R3A及び横溝寄与率R3Bを、正確に評価することができる。
【0042】
評価工程S52は、例えば、下記式(5)に基づき車両寄与率R1を求めている。
【数5】
【0043】
評価工程S52は、構造寄与率R2を、第2換算値E2から第1換算値E1を差し引くことにより求めるのが望ましい。評価工程S52は、例えば、下記式(6)に基づき構造寄与率R2を求めている。
【数6】
【0044】
評価工程S52は、縦溝寄与率R3Aを、第3縦溝換算値E3Aから第1換算値E1と第2換算値E2とを差し引くことにより求めるのが望ましい。評価工程S52は、例えば、下記式(7)に基づき縦溝寄与率R3Aを求めている。
【数7】
【0045】
評価工程S52は、横溝寄与率R3Bを、第3横溝換算値E3Bから第1換算値E1と第2換算値E2とを差し引くことにより求めるのが望ましい。評価工程S52は、例えば、下記式(8)に基づき横溝寄与率R3Bを求めている。
【数8】
【0046】
図1に示されるように、本実施形態の騒音性能の評価方法は、第2換算値E2から第1換算値E1を差し引いた値(E2-E1)に基づき、評価タイヤ1の溝以外の構造に起因する騒音の音圧レベルである第4音圧P4を求める第6工程S6を含んでいる。このような第6工程S6は、評価タイヤ1の溝以外の構造に起因する騒音を音圧レベルで評価することができる。
【0047】
第6工程S6は、例えば、下記式(9)に基づき第4音圧P4を求めている。
【数9】
【0048】
本実施形態の騒音性能の評価方法は、第3縦溝換算値E3Aから第1換算値E1と第2換算値E2とを差し引いた値(E3A-E1-E2)に基づき、評価タイヤ1の縦溝5に起因する騒音の音圧レベルである第5縦溝音圧P5Aを求める第7工程S7を含んでいる。このような第7工程S7は、評価タイヤ1の縦溝5に起因する騒音を音圧レベルで評価することができる。
【0049】
第7工程S7は、例えば、下記式(10)に基づき第5縦溝音圧P5Aを求めている。
【数10】
【0050】
本実施形態の騒音性能の評価方法は、第3横溝換算値E3Bから第1換算値E1と第2換算値E2とを差し引いた値(E3B-E1-E2)に基づき、評価タイヤ1の横溝6に起因する騒音の音圧レベルである第5横溝音圧P5Bを求める第8工程S8とを含んでいる。このような第8工程S8は、評価タイヤ1の横溝6に起因する騒音を音圧レベルで評価することができる。
【0051】
第8工程S8は、例えば、下記式(11)に基づき第5横溝音圧P5Bを求めている。
【数11】
【0052】
上述の実施形態では、騒音性能として車外騒音が評価されていたが、騒音性能としては、車内騒音が評価されてもよい。また、上述の実施形態では、車両7を走行させたときのタイヤの騒音が評価されていたが、台上試験によりタイヤの騒音が評価されてもよい。
【0053】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【実施例0054】
スムースタイヤ、縦溝タイヤ及び横溝タイヤが準備され、図1ないし図8に基づき、実施例の騒音性能の評価方法がテストされた。比較例として、第1音圧P1、第2音圧P2、第3縦溝音圧P3A及び第3横溝音圧P3Bの周波数分析が行われた。図9は、比較例の周波数分析結果を示すグラフである。テストの共通仕様は、以下のとおりである。
【0055】
<共通仕様>
タイヤサイズ : 265/65R18 114V
テスト車両 : 大型SUV
タイヤ装着位置 : 全輪
惰行走行速度 : 50km/h
【0056】
<評価結果>
測定された第1音圧P1、第2音圧P2、第3縦溝音圧P3A及び第3横溝音圧P3Bは、以下のとおりである。
第1音圧P1 : 60.5 dB(A)
第2音圧P2 : 62.2 dB(A)
第3縦溝音圧P3A : 65.1 dB(A)
第3横溝音圧P3B : 66.6 dB(A)
【0057】
第1音圧P1、第2音圧P2、第3縦溝音圧P3A及び第3横溝音圧P3Bから求められた第1換算値E1、第2換算値E2、第3縦溝換算値E3A及び第3横溝換算値E3Bは、以下のとおりである。
第1換算値E1 : 1,122,018 Pa
第2換算値E2 : 537,568 Pa
第3縦溝換算値E3A : 454,331 Pa
第3横溝換算値E3B : 1,789,277 Pa
【0058】
第1換算値E1、第2換算値E2、第3縦溝換算値E3A及び第3横溝換算値E3Bから求められる車両寄与率R1、構造寄与率R2、縦溝寄与率R3A及び横溝寄与率R3Bは、以下のとおりである。
車両寄与率R1 : 28.7 %
構造寄与率R2 : 13.9 %
縦溝寄与率R3A : 11.6 %
横溝寄与率R3B : 45.8 %
【0059】
第1換算値E1、第2換算値E2、第3縦溝換算値E3A及び第3横溝換算値E3Bから求められる第4音圧P4、第5縦溝音圧P5A及び第5横溝音圧P5Bは、以下のとおりである。
第4音圧P4 : 57.3 dB(A)
第5縦溝音圧P5A : 56.6 dB(A)
第5横溝音圧P5B : 62.5 dB(A)
【0060】
テストの結果、実施例は、比較例では把握が困難であったタイヤに起因する騒音の寄与率を正確に評価可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0061】
1 評価タイヤ
2 スムースタイヤ
3 溝付タイヤ
4 トレッド部
7 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9