(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022056705
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】成膜方法、成膜装置及び樹脂層形成装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/28 20060101AFI20220404BHJP
C23C 14/20 20060101ALI20220404BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20220404BHJP
H01L 23/00 20060101ALI20220404BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
H01L23/28 F
C23C14/20 A
H05K9/00 Q
H01L23/28 C
H01L23/00 C
H01L21/56 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020164590
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】西垣 寿
【テーマコード(参考)】
4K029
4M109
5E321
5F061
【Fターム(参考)】
4K029BA01
4K029BA03
4K029BA04
4K029BA06
4K029BA07
4K029BA09
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4K029BA13
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5E321AA17
5E321AA22
5E321BB53
5E321BB60
5E321GG05
5F061AA01
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5F061CA05
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5F061CB02
5F061CB12
(57)【要約】
【課題】側面が厚い電磁波シールド膜を成膜できる成膜方法、成膜装置及び樹脂層の樹脂層形成装置を提供する。
【解決手段】本実施形態の成膜方法は、回路基板100上の電子部品120を樹脂層130で封止する樹脂封止工程と、樹脂層130の表面に電磁波シールド膜140を形成する成膜工程とを有する。樹脂封止工程では、グランド配線110上に領域境界210が掛かり、電磁波シールド膜140で覆う電子部品120を包含するシールド予定領域200に限って、樹脂層130の樹脂を回路基板100上に供給して硬化させる。成膜工程では、プラズマにより、ターゲット361をスパッタリングして、樹脂層130の側面及び天面132を含む全表面に電磁波シールド膜140を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の電子部品とグランド配線を有する回路基板に対して、1以上の電子部品を覆う電磁波シールド膜を形成する成膜方法であって、
前記電磁波シールド膜で覆う電子部品を樹脂層で封止する樹脂封止工程と、
前記樹脂層の表面に前記電磁波シールド膜を形成する成膜工程と、
を有し、
前記樹脂封止工程では、前記電磁波シールド膜で覆われ、且つ前記グランド配線上に領域境界が掛かるシールド予定領域内に限って、前記樹脂層の樹脂を供給して当該樹脂を硬化させ、
前記成膜工程では、プラズマにより、前記電磁波シールド膜の材料源であるターゲットをスパッタリングして、前記樹脂封止工程で形成された前記樹脂層の側面及び天面を含む表面に前記電磁波シールド膜を形成する、
成膜方法。
【請求項2】
前記樹脂封止工程では、
前記シールド予定領域の領域境界に沿い、且つ前記グランド配線上を通る土手部の樹脂を供給し、当該土手部を硬化させる土手形成工程と、
前記土手部が囲む内部領域に樹脂を供給し硬化させる充填工程と、
を有する請求項1記載の成膜方法。
【請求項3】
前記シールド予定領域の領域境界に供給した前記樹脂と前記回路基板との接触角は90度未満である、
請求項1又は2記載の成膜方法。
【請求項4】
前記樹脂封止工程では、前記樹脂層の天面に平坦面を押し付けながら、当該樹脂層を硬化させる、
請求項1乃至3の何れかに記載の成膜方法。
【請求項5】
前記樹脂封止工程では、光硬化性の前記樹脂を供給し、光エネルギーを照射する、
請求項1乃至4の何れかに記載の成膜方法。
【請求項6】
前記樹脂封止工程では、熱硬化性の前記樹脂を供給し加熱する、
請求項1乃至4の何れかに記載の成膜方法。
【請求項7】
前記樹脂封止工程では、前記シールド予定領域に充填された前記樹脂層の側面のうち、少なくとも、前記グランド配線と接する裾野部分が傾斜している、
請求項1乃至6の何れかに記載の成膜方法。
【請求項8】
1以上の電子部品とグランド配線を有する回路基板に対して、1以上の電子部品を覆う電磁波シールド膜を形成する成膜装置であって、
前記電磁波シールド膜で覆う電子部品を封止する樹脂を供給する樹脂層形成部と、
前記樹脂の表面に前記電磁波シールド膜を形成する成膜部と、
を有し、
前記樹脂層形成部は、前記電磁波シールド膜で覆われ、且つ前記グランド配線上に領域境界が掛かるシールド予定領域内に限って、前記樹脂を吐出する吐出部を有し、
前記成膜部は、前記電磁波シールド膜の材料源であるターゲットを含み、前記ターゲットと前記回路基板との間に導入されたスパッタガスをプラズマ化するスパッタ源を有し、前記樹脂により成る樹脂層の側面及び天面を含む表面に前記電磁波シールド膜を形成する、
成膜装置。
【請求項9】
前記吐出部は、
前記シールド予定領域の領域境界に沿い、且つ前記グランド配線上を通る土手部の樹脂を吐出する土手形成用吐出部と、
前記土手部が囲む内部領域に樹脂を吐出する充填用吐出部と、
を有する請求項8記載の成膜装置。
【請求項10】
前記樹脂層形成部は、
前記樹脂層の天面に押し付けられる平坦面と、
前記樹脂層の天面に前記平坦面が押し付けられている最中、前記樹脂層を硬化させる硬化処理部と、
を含む請求項8又は9記載の成膜装置。
【請求項11】
スパッタリングにより電磁波シールド膜が成膜される樹脂層の樹脂を供給する樹脂層形成装置であって、
1以上の電子部品とグランド配線を有する回路基板に対して、前記電磁波シールド膜で覆われ、且つ前記グランド配線上に領域境界が掛かるシールド予定領域内に限って、前記樹脂層の樹脂を供給する吐出部を備える、
樹脂層形成装置。
【請求項12】
前記吐出部は、
前記シールド予定領域の領域境界に沿い、且つ前記グランド配線上を通る土手部の樹脂を吐出する土手形成用吐出部と、
前記土手部が囲む内周領域に前記樹脂層の内部の樹脂を吐出する充填用吐出部と、
を有する請求項11記載の樹脂層形成装置。
【請求項13】
前記樹脂層の天面に押し付けられる平坦面と、
前記平坦面が押し付けられている最中、前記樹脂層を硬化させる硬化処理部と、
を含む請求項11又は12記載の樹脂層形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法、成膜装置及び樹脂層形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンや医療機器等の電子機器が備える回路基板には、電磁波の影響を受けやすい電子部品が実装されている。これら電子部品を電磁波から保護するために、回路基板上のグランド配線と接続したアルミニウム製又はステンレス製の金属缶で、これら電子部品を覆っている。1枚の金属缶で少なくとも1以上、一般的には複数の電子部品が覆われている。この金属缶は板金加工により作製されており薄厚化に限界がある。そのため、板金加工による金属缶は、電子機器のよりいっそうの小型化や薄型化を阻害している。
【0003】
そこで、金属缶による電子部品の被覆に代替する方法として、めっき法やスパッタリング法が提案されている。めっき法は、多数の湿式工程を必要とすることから、回路基板の製造コストの上昇が避けられない。そのため、特にスパッタリング法が注目されている。
【0004】
スパッタリング法では、前段階として、まず一枚のウエーハ上に多数の回路基板が並べて形成される。各回路基板には、ウエーハから切り離されること無く、電子部品が実装されていく。各回路基板に電子部品を実装した後は、樹脂層がウエーハ上に形成される。この樹脂層は、各回路基板のシールド予定領域を包含し、一繋がりになるように形成される(例えば、特許文献1参照)。シールド予定領域は、電磁波シールド膜で覆う回路基板上の領域である。そして、ダイシングにより、各シールド予定領域の樹脂層を分断する。
【0005】
このダイシングの後、電磁波シールド膜の材料源となるターゲットを成膜室に配置し、成膜室に不活性ガスを導入し、直流電圧を印加する。プラズマ化した不活性ガスのイオンがターゲットに衝突すると、ターゲットを構成する材料が原子状、分子状あるいはクラスタ状の粒子として叩き出される。ターゲットには、ダイシングされた樹脂層が対向しており、叩き出された粒子は、この樹脂層に堆積していき、電磁波シールド膜が樹脂層の表面に成膜される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
各回路基板に対してまとめて一繋がりの樹脂層を形成した後、回路基板別に樹脂層をダイシングする方式では、各樹脂層の側面は、裾野部分から上端部分に亘って全域が、回路基板に対して切り立って垂直になっている。スパッタリング法では、プラズマによってターゲットから叩き出された粒子が樹脂層の天面側から向かって来る。粒子が向かって来る方向に対して平行に延びた樹脂層の側面には、樹脂層の天面側よりも粒子が届き難くなる。
【0008】
このため、樹脂層の表面に成膜された電磁波シールド膜は、樹脂層の側面側で膜厚が薄くなる。電磁波シールド膜は、回路基板のグランド配線と側面で接続される。このグランド配線と接続される側面の膜厚が薄いと、電磁波シールド膜とグランド配線との接触不良を起こす虞が生じる。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、側面が厚い電磁波シールド膜を成膜できる成膜方法、成膜装置及び樹脂層の樹脂層形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の成膜方法は、1以上の電子部品とグランド配線を有する回路基板に対して、1以上の電子部品を覆う電磁波シールド膜を形成する成膜方法であって、前記電磁波シールド膜で覆う電子部品を樹脂層で封止する樹脂封止工程と、前記樹脂層の表面に前記電磁波シールド膜を形成する成膜工程と、を有し、前記樹脂封止工程では、前記電磁波シールド膜で覆われ、且つ前記グランド配線上に領域境界が掛かるシールド予定領域内に限って、前記樹脂層の樹脂を供給して当該樹脂を硬化させ、前記成膜工程では、プラズマにより、前記電磁波シールド膜の材料源であるターゲットをスパッタリングして、前記樹脂封止工程で形成された前記樹脂層の側面及び天面を含む表面に前記電磁波シールド膜を形成する。
【0011】
成膜装置も本発明の一態様であり、本発明の成膜装置は、1以上の電子部品とグランド配線を有する回路基板に対して、1以上の電子部品を覆う電磁波シールド膜を形成する成膜装置であって、前記電磁波シールド膜で覆う電子部品を封止する樹脂を供給する樹脂層形成部と、前記樹脂の表面に前記電磁波シールド膜を形成する成膜部と、を有し、前記樹脂層形成部は、前記電磁波シールド膜で覆われ、且つ前記グランド配線上に領域境界が掛かるシールド予定領域内に限って、前記樹脂を供給する吐出部を有し、前記成膜部は、前記電磁波シールド膜の材料源であるターゲットを含み、前記ターゲットと前記回路基板との間に導入されたスパッタガスをプラズマ化するスパッタ源を有し、前記樹脂により成る樹脂層の側面及び天面を含む表面に前記電磁波シールド膜を形成する。
【0012】
樹脂層形成装置も本発明の一態様であり、本発明の樹脂層形成装置は、スパッタリングにより電磁波シールド膜が成膜される樹脂層の樹脂を供給する樹脂層形成装置であって、1以上の電子部品とグランド配線を有する回路基板に対して、前記電磁波シールド膜で覆われ、且つ前記グランド配線上に領域境界が掛かるシールド予定領域内に限って、前記樹脂層の樹脂を供給する吐出部を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、樹脂が回路基板に対して接触角が90度未満になるように供給でき、樹脂層の側面が傾斜面となるので、電磁波シールド膜の側面を厚くでき、グランド配線との接触不良の虞を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】成膜装置が処理した回路基板を示す模式図である。
【
図2】第1の実施形態の成膜装置の樹脂層形成部を示し、(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
【
図3】成膜装置の成膜部を示し(a)は平面図であり、(b)は斜視図である。
【
図4】第1の実施形態の樹脂封止工程のうちの土手部吐出工程を示し、(a)は土手部が形成される側面図であり、(b)は土手部が形成される平面図である。
【
図5】第1の実施形態の樹脂封止工程のうちの土手部硬化工程を示す側面図である。
【
図6】第1の実施形態の樹脂封止工程のうちの内部吐出工程を示し、(a)は内部に樹脂が充填される側面図であり、(b)は内部に樹脂が充填される平面図である。
【
図7】第1の実施形態の樹脂封止工程のうちの全体硬化工程を示す側面図である。
【
図9】第2の実施形態の樹脂層形成部を示し、(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
【
図10】第2の実施形態の樹脂の供給過程のうち、(a)は土手部が形成される側面図であり、(b)は内部に樹脂が充填される側面図であり、(c)は硬化工程を示す側面図である。
【
図11】供給過程の前処理であるプラズマ洗浄を示す側面図である。
【
図12】樹脂層に押し付けられる平坦面を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
(成膜装置)
第1の実施形態について図面を参照しつつ、詳細に説明する。
図1は、成膜装置が処理した回路基板100を示す模式図である。
図1に示すように、成膜装置は、回路基板100上の1個以上の電子部品120を一塊の樹脂層130で纏めて封止し、樹脂層130の表面に電磁波シールド膜140を成膜する。
【0016】
回路基板100は、電子回路が形成されたプリント基板である。回路基板100には、1個又は複数個の電子部品120が実装されている。電子部品120は、電磁波の影響を受けやすい、又は他部品に影響を与える電磁波を漏洩させる電子部品であり、例えば、スマートフォン等の電子機器に搭載される通信モジュールやその前後回路が挙げられる。但し、電磁波の遮断を要する部品であれば、これら例示に限らず、抵抗、コンデンサ、コイル、トランジスタ、ダイオード、半導体ICやLSI等の集積回路、又はこれらがモジュール化された電子回路モジュールも電子部品120に含まれる。
【0017】
回路基板100はグランド配線110を備えている。グランド配線110は、接地電位又は固定電位が与えられている。成膜装置は、グランド配線110と電磁波シールド膜140とが接触するように、電磁波シールド膜140を成膜する。これにより、回路基板100には、捕捉した電磁波ノイズをグランド配線110に流す電磁波シールド膜140が成膜される。
【0018】
図2は、成膜装置の樹脂層形成部2を示し、
図3は、成膜装置の成膜部3を示す。この成膜装置は、樹脂層130を形成する樹脂層形成部2と、樹脂層130の表面に電磁波シールド膜140を成膜する成膜部3とを備えている。樹脂層形成部2と成膜部3との間には、回路基板100を搬送する搬送機構が介在していてもよい。搬送機構は、樹脂層形成部2から回路基板100を排出し、成膜部3に投入できればよく、ロボットアーム、コンベア、ボールネジ等で直線軌道に沿って可動な搬送テーブル等が挙げられる。
【0019】
(樹脂層形成部)
図2に示すように、樹脂層形成部2内には、回路基板100の搬送経路25が形成されている。回路基板100は、トレイ251に支持されて搬送経路25に沿って移動する。この搬送経路25は、例えばコンベアの走行面である。樹脂層形成部2は、搬送経路25に沿って、土手形成用吐出部21、局所硬化処理部22、充填用吐出部23及び広域硬化処理部24を備えている。
【0020】
土手形成用吐出部21と充填用吐出部23は、吐出口211及び吐出口231を備えており、回路基板100上に樹脂層130の基になる樹脂を吐出する。土手形成用吐出部21と充填用吐出部23が吐出する樹脂は、制御弁等を介して吐出口211及び吐出口231と連通する樹脂タンク(不図示)に貯留されており、樹脂タンクから土手形成用吐出部21と充填用吐出部23に供給される。
【0021】
土手形成用吐出部21と充填用吐出部23に供給される樹脂は、光硬化性であり、紫外線等の光エネルギーの照射によって硬化する。この樹脂は、例えば光重合反応に関与するモノマーやオリゴマーと重合開始剤を含んでおり、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系を使用できる。また、この樹脂は、回路基板100へ樹脂の粒を滴下したとき、樹脂の粒と回路基板100との接触角度が90未満となる粘度を有している。
【0022】
土手形成用吐出部21の吐出口211は、樹脂を局所的に供給するために、樹脂を点状に吐出する小口径である。充填用吐出部23の吐出口231は、樹脂を1度に大量供給可能となっている。即ち、充填用吐出部23の吐出口231は、搬送経路25と直交する方向に延在する細長形状になっており、又は搬送経路25と直交する方向に多連装で並んでいる。但し、充填用吐出部23の吐出口231には、吐出範囲を絞るシャッター等が設けられ、樹脂の吐出範囲が設定可能となっている。
【0023】
局所硬化処理部22と広域硬化処理部24は、回路基板100上に供給された樹脂を硬化させる。これら局所硬化処理部22と広域硬化処理部24は、土手形成用吐出部21と充填用吐出部23が吐出する樹脂の種類に応じ、光硬化性の樹脂に対しては、紫外線等の光エネルギーを照射する照射窓を有している。
【0024】
局所硬化処理部22は、光エネルギーの照射窓が局所的に絞られている。この局所硬化処理部22は、土手形成用吐出部21が吐出した樹脂に光エネルギーを照射して硬化させる。広域硬化処理部24は、照射窓が広く開けられ、光エネルギーを広域に照射する。この広域硬化処理部24は、充填用吐出部23が吐出した樹脂全体に光エネルギーを照射して硬化させる。
【0025】
これら土手形成用吐出部21、局所硬化処理部22、充填用吐出部23及び広域硬化処理部24は、搬送経路25の上流から下流に向けて、この順番で並設されている。また、土手形成用吐出部21、局所硬化処理部22、充填用吐出部23及び広域硬化処理部24は、搬送経路25を跨ぐ門型の各支持部26aに設置され、搬送経路25の上方に位置する。
【0026】
広域硬化処理部24は、照射窓が広く樹脂層130全体に光エネルギーを照射可能なため、位置不動の支持部26aに固定されている。土手形成用吐出部21、局所硬化処理部22及び充填用吐出部23の支持部26aは、搬送経路25に沿って平行移動可能となっている。例えば、これら支持部26aは、足下にモータ駆動の車輪を有し、搬送経路25に沿って延びるレールに載っている。充填用吐出部23は、この支持部26aに固定されており、搬送経路25に沿って可動になっている。
【0027】
土手形成用吐出部21及び局所硬化処理部22の支持部26aは、門型の架橋部分に支持部26bを備えている。支持部26bは、支持部26aの架橋部に沿って、搬送経路25と直交方向(Y軸方向)に移動可能となっている。例えば、支持部26bは、支持部26aの架橋部に沿って、搬送経路25と直交方向に延びるレールとボールネジ機構を含む直動機構である。土手形成用吐出部21及び局所硬化処理部22は、この支持部26bに固定されており、支持部26aと支持部26bによって搬送経路25に沿った方向(X軸方向)と搬送経路25と直交する方向(Y軸方向)に可動になっている。
【0028】
(成膜部)
図3に示すように、成膜部3はチャンバ31とロードロック室32を有している。チャンバ31は、軸方向よりも半径方向に拡径した円柱形状の真空室である。チャンバ31内は、半径方向に沿って延設された区切り部33によって複数の扇状区画に仕切られている。一部の扇状区画には、処理ポジション311及び成膜ポジション312が割り当てられている。
【0029】
区切り部33は、チャンバ31の天井面から底面に向けて延ばされているが、底面には未達である。区切り部33の無い底面側空間には、回転テーブル34が設置されている。回転テーブル34は、チャンバ31と同軸の円盤形状を有し、円周方向に回転する。ロードロック室32からチャンバ31内に投入された回路基板100は、回転テーブル34に載置され、円周の軌跡で周回移動しながら、処理ポジション311及び成膜ポジション312を巡る。
【0030】
尚、回路基板100の回転テーブル34に対する位置を維持するために、回転テーブル34には例えば溝、穴、突起、治具、ホルダ、メカチャック、又は粘着チャック等の回路基板100を保持する保持手段が設置されている。
【0031】
処理ポジション311には表面処理部35が設置されている。この表面処理部35は、アルゴンガス等のプロセスガスが導入され、高周波電圧の印加によりプロセスガスをプラズマ化し、電子、イオン及びラジカル等を発生させる。例えば、この表面処理部35は、回転テーブル34側に開口した筒形電極であり、RF電源により高周波電圧が印加される。
【0032】
成膜ポジション312には、ターゲット361を含むスパッタ源36が設置されている。スパッタ源36は、ターゲット361と回転テーブル34との間にスパッタガスが導入された状態で、ターゲット361に電力を印加する。スパッタガスは、アルゴン等の不活性化ガスであり、スパッタ源36の電力印加によりプラズマ化し、発生するイオン等はターゲット361に衝突する。ターゲット361からは粒子が叩き出され、叩き出された粒子は回転テーブル34に載置された回路基板100上の樹脂層130に堆積する。
【0033】
ターゲット361は、電磁波シールド膜140の材料源である。ターゲット361は、例えばAl、Ag、Ti、Nb、Pd、Pt、Zr等の材料で形成される。電磁波シールド膜140はNi、Fe、Cr、Co等の磁性体材料で形成されてもよい。また、電磁波シールド膜140の下地層としてSUS、Ni、Ti、V、Ta等、また最表面の保護層としてSUS、Au等が成膜されていてもよい。即ち、この成膜ポジション312は、例えば2箇所設けられていてもよい。各々の成膜ポジション312のターゲット材料は、同じ材料としてもよいし、異なる材料として、積層の電磁波シールド膜140を形成してもよい。
【0034】
各々の成膜ポジション312のスパッタ源36に電力を印加する電源は、例えば、DC電源、DCパルス電源、RF電源等、周知のものが適用できる。また、スパッタ源36に電力を印加する電源は、スパッタ源36ごとに設けられてもよいし、共通の電源を切替器で切替えて使用してもよい。
【0035】
尚、この成膜部3は、スパッタリング法を用いて回路基板100に成膜するものであるが、成膜手法はこれに限られない。例えば、成膜部3は、蒸着、スプレーコーティング及び塗布等によって電磁波シールド膜140を回路基板100に成膜するようにしてもよい。
【0036】
(成膜方法)
図4乃至
図8は、この成膜装置を用いた成膜方法を示す模式図である。この成膜装置により、回路基板100に対する電磁波シールド膜140の形成過程は、電磁波シールド膜140で覆う電子部品120を樹脂層130で封止する樹脂封止工程と、樹脂層130の表面に電磁波シールド膜140を形成する成膜工程に分けられる。樹脂封止工程は、土手部220を形成する土手形成工程と、土手部220で囲まれる内部領域に樹脂を充填する充填工程とに分けられる。土手形成工程は、土手部吐出工程と土手部硬化工程に分けられ、充填工程は、内部吐出工程と全体硬化工程に分けられる。
【0037】
樹脂封止工程の最初は、土手部吐出工程である。
図4に示すように、回路基板100は搬送経路25に沿って、土手形成用吐出部21が配置された区域に搬送される。土手部吐出工程では、土手形成用吐出部21が回路基板100上に樹脂を吐出する。回路基板100に吐出された樹脂は、粘度調整によって90度未満の接触角で回路基板100に付着する。
【0038】
土手形成用吐出部21は、シールド予定領域200の領域境界210に沿って、樹脂を吐出しながら相対移動する。シールド予定領域200とは、回路基板100上において、電磁波シールド膜140が覆う領域と一致し、電磁波シールド膜140が覆い被さる電子部品120群を包含し、領域境界210がグランド配線110に掛かる領域である。これにより、樹脂の土手部220がシールド予定領域200の領域境界210に沿って形成される。
【0039】
土手部吐出工程が終わると土手部硬化工程に移る。
図5に示すように、回路基板100は搬送経路25に沿って、土手形成用吐出部21が配置された区域の次に、局所硬化処理部22が配置された区域に至る。土手部硬化工程では、局所硬化処理部22が、光エネルギーを照射しながら土手部220に沿って相対移動し、土手部220を硬化させていく。硬化の程度は、土手部220がシールド予定領域200を越えて垂れ拡がらず、また後続で充填される樹脂の重みによって崩れなければ良い。
【0040】
尚、土手形成用吐出部21と局所硬化処理部22とが連結されていてもよい。局所硬化処理部22は、土手形成用吐出部21の移動の後に続き、土手形成用吐出部21が土手部220を形成中に、土手部220を硬化させていく。この場合、土手部吐出工程と土手部硬化工程が並行して実施され、これら工程の後は、内部吐出工程が実施される。
【0041】
土手硬化工程が終わると内部吐出工程に移る。
図6に示すように、回路基板100は搬送経路25に沿って、局所硬化処理部22が配置された区域の次に、充填用吐出部23が配置された区域に搬送される。内部吐出工程では、充填用吐出部23が土手部220で囲まれた内部領域、即ちシールド予定領域200のうちの樹脂が未充填の残余領域を樹脂で埋めていく。
【0042】
充填用吐出部23が有する吐出口231の開口範囲は、回路基板100の搬送方向と直交する方向(Y軸方向)に延在するシールド予定領域200の辺長未満で、土手部220の内部領域の辺長と同一又は辺長以上の範囲に拡がる。そして、充填用吐出部23は、回路基板100の搬送方向に沿って移動しながら樹脂を吐出していく。これにより、シールド予定領域200のうちの樹脂が未充填の残余領域が樹脂で埋められていく。
【0043】
内部吐出工程が終わると全体硬化工程に移る。
図7に示すように、回路基板100は搬送経路25に沿って、充填用吐出部23が配置された区域の次に、広域硬化処理部24が配置された区域に搬送される。全体硬化工程では、広域硬化処理部24の直下に回路基板100のシールド予定領域200を位置させ、広域硬化処理部24を稼働させる。広域硬化処理部24は、シールド予定領域200内の樹脂層130全体に向けて光エネルギーを照射し、樹脂層130を完全に硬化させる。
【0044】
全体硬化工程が終わると、回路基板100は樹脂層形成部2を脱して、成膜部3による成膜工程に移る。成膜工程では、回路基板100が成膜部3に投入される前に、回路基板100上の樹脂層130以外はマスク部材によって遮蔽される。成膜部3では、回路基板100は、ロードロック室32から投入されて回転テーブル34に載る。回転テーブル34によって回路基板100は処理ポジション311に移送される。処理ポジション311で回路基板100の表面がプラズマ洗浄された後、
図8に示すように、回路基板100は、成膜ポジション312に移り、ターゲット361から叩き出された粒子が樹脂層130の表面に堆積し、樹脂層130の表面に電磁波シールド膜140が成膜される。
【0045】
ここで、
図4乃至
図7に示される樹脂封止工程においては、シールド予定領域200に沿って型枠等の樹脂の形状を矯正する部材は非設置である。そして、型枠等の区切りの無いシールド予定領域200に対して、シールド予定領域200内に限って樹脂を充填している。樹脂は、回路基板100との接触角度が90度未満になるように粘度調整されている。また、樹脂封止工程で形成された樹脂層130はシールド予定領域200に収まっているので、樹脂層130がシールド予定領域200に収まるようにダイシング等の成形は行われない。
【0046】
そのため、樹脂層130の側面のうち、少なくとも、グランド配線110と接する裾野部分131は、領域境界210から樹脂層130の内側に向けて傾斜している。換言すれば、樹脂層130の側面のうち、グランド配線110と接する裾野部分131は、成膜工程においてターゲット361側に向いている。従って、成膜工程において、ターゲット361から叩き出された粒子は、グランド配線110と接する裾野部分131に到達し易くなり、電磁波シールド膜140は、樹脂層130の裾野部分131にも十分な膜厚を有する。これにより、電磁波シールド膜140とグランド配線110の接触不良が生じる虞を低減できる。
【0047】
尚、電磁波シールド膜140とグランド配線110の接触を確保するためには、樹脂層130の側面のうち、少なくともグランド配線110上に立ち上がる裾野部分が傾斜していればよく、側面全域が傾斜している必要はない。
【0048】
また、この成膜装置は、土手形成用吐出部21と充填用吐出部23とを備え、成膜方法は、土手形成工程と充填工程に分かれている。しかし、グランド配線110上に領域境界210が掛かり、電磁波シールド膜140で覆うシールド予定領域200内に限って、樹脂を吐出することができれば、土手部220を作成する必要はない。但し、先に土手部220を作成する方式では、樹脂の粘度を下げることができ、樹脂の粒と回路基板100との接触角を90度未満にし易くなる。
【0049】
(第2の実施形態)
(樹脂層形成部)
次に、第2の実施形態について図面を参照しつつ、詳細に説明する。第1の実施形態と同一構成又は同一機能については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0050】
第2の実施形態において、成膜装置の樹脂層形成部2は、熱硬化性の樹脂で樹脂層130を形成する。熱硬化性の樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。熱硬化性の樹脂には、熱エネルギーを直接照射する必要はなく、回路基板100が存在する空間の温度を上げればよい。
【0051】
そのため、この樹脂層形成部2は、
図9に示すように、搬送経路25に沿って、土手形成用吐出部21、充填用吐出部23、上方広域硬化処理部24a及び下方広域硬化処理部24bを備えている。土手形成用吐出部21、充填用吐出部23及び上方広域硬化処理部24aは、回路基板100の搬送方向上流から下流に向けてこの順番で備えている。下方広域硬化処理部24bは、土手形成用吐出部21の区域から上方広域硬化処理部24aの区域に亘って延在している。
【0052】
上方広域硬化処理部24aは、充填用吐出部23の下流位置において搬送経路25を跨ぐ支持部26aに固定されている。上方広域硬化処理部24aは、下方に移動してきた回路基板100の樹脂層130全体に熱エネルギーを照射する。下方広域硬化処理部24bは、搬送経路25の裏側に配置され、土手形成用吐出部21から上方広域硬化処理部24aの区域まで延在する。この下方広域硬化処理部24bは、土手形成用吐出部21の区域から上方広域硬化処理部24aの区域までの、回路基板100が存在する空間全体の温度を上げる。
【0053】
(成膜方法)
図10に示すように、第2の実施形態における樹脂封止工程は、
図10の(a)に示す土手部吐出工程と、
図10の(b)に示す内部充填工程と、
図10の(c)に示す全体硬化工程を有する。但し、下方広域硬化処理部24bは、回路基板100が搬入される樹脂層形成部2内を加熱し続けている。
【0054】
即ち、
図10の(a)に示すように、土手部220は、土手形成用吐出部21による吐出開始直後から下方広域硬化処理部24bにより加熱されている。また、
図10の(b)に示すように、土手部220に囲まれる内部領域に吐出された樹脂は、充填用吐出部23により吐出された直後から下方広域硬化処理部24bにより加熱されている。そして、樹脂層130は、上方広域硬化処理部24aの直下に位置すると、下方広域硬化処理部24bに加えて、上方広域硬化処理部24aからの加熱が加わって硬化が促進される。
【0055】
この成膜装置による成膜方法によっても、シールド予定領域200に沿って型枠等の樹脂の形状を矯正する部材は非設置である。そして、型枠等の区切りの無いシールド予定領域200に対して、シールド予定領域200内に限って樹脂を充填している。樹脂は、回路基板100との接触角度が90度未満になるように粘度調整されている。また、樹脂封止工程で形成された樹脂層130はシールド予定領域200に収まっているので、樹脂層130がシールド予定領域200に収まるようにダイシング等の成形は行われない。
【0056】
そのため、樹脂層130の側面のうち、少なくとも、グランド配線110と接する裾野部分131は、領域境界210から樹脂層130の内側に向けて傾斜し、成膜工程においてターゲット361側に向いている。
【0057】
(変形例)
図11に示すように、樹脂層形成部2は、土手形成用吐出部21の区域よりも、回路基板100の搬送経路上流に、表面処理部27を備えるようにしてもよい。そして、成膜方法は、樹脂封止工程の前に回路基板100の表面を洗浄する表面処理工程を有するようにしてもよい。
【0058】
表面処理部27は、プロセスガスのプラズマ化によって生じた電子、イオン及びラジカルが、回路基板100の表面に付着する有機物や酸化皮膜やフラックス等を除去する。この表面処理部27は、回路基板100上にアルゴンガス等のプロセスガスを導入し、高周波電圧の印加によりプロセスガスをプラズマ化し、電子、イオン及びラジカル等を発生させる。例えば、この表面処理部27は、搬送経路25に向けて開口した筒形電極であり、RF電源により高周波電圧が印加される。
【0059】
表面処理部27は、回路基板100のグランド配線110にプラズマを照射することが好ましい。グランド配線110には自然酸化皮膜が生じている虞がある。グランド配線110の自然酸化皮膜を取り除くことによって、グランド配線110と電磁波シールド膜140は、電気的に良好に接続でき、接触不良をさらに低減できる。
【0060】
また、天面132の平坦性が向上すると、電磁波シールド膜140が電磁波をより良好に遮断することができる。そこで、
図12の(a)及び(b)に示すように、樹脂層形成部2は、光硬化性の樹脂に対する広域硬化処理部24と搬送経路25との間や、熱硬化性の樹脂に対する上方広域硬化処理部24aと搬送経路25との間に、ならしブロック28を配置してもよい。
【0061】
ならしブロック28は、樹脂層130の天面132に対向する平坦面281を備えている。平坦面281は、少なくともシールド予定領域200を包含する広さに拡がる。ならしブロック28は、樹脂層130の天面132に向けて可動である。ならしブロック28は、光硬化性の樹脂に対する広域硬化処理部24や熱硬化性の樹脂に対する上方広域硬化処理部24aによる硬化処理の間、樹脂層130の天面132に平坦面281を押し付ける。
【0062】
平坦面281が押し付けられた樹脂層130の天面132は平坦になる。広域硬化処理部24や上方広域硬化処理部24aは、樹脂層130の天面132が平坦面281によって平坦に均された状態で、樹脂層130を硬化させる。
【0063】
尚、ならしブロック28は、光硬化性の樹脂に対する広域硬化処理部24の下方に配置されるため、樹脂を硬化させる光エネルギーの波長帯域が透過可能な材質を有し、例えばガラスである。また、ならしブロック28を樹脂層130から剥離し易くするために、平坦面281をコーティングして剥離性を向上させておくとよい。
【0064】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
2 樹脂層形成部
21 土手形成用吐出部
211 吐出口
22 局所硬化処理部
23 充填用吐出部
231 吐出口
24 広域硬化処理部
25 搬送経路
251 トレイ
26a、26b 支持部
27 表面処理部
28 ならしブロック
281 平坦面
3 成膜部
31 チャンバ
311 処理ポジション
312 成膜ポジション
32 ロードロック室
33 区切り部
34 回転テーブル
35 表面処理部
36 スパッタ源
361 ターゲット
100 回路基板
110 グランド配線
120 電子部品
130 樹脂層
131 裾野部分
132 天面
140 電磁波シールド膜
200 シールド予定領域
210 領域境界
220 土手部
230 充填部