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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022057968
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】配線基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20220404BHJP
   H05K 3/40 20060101ALI20220404BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220404BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
H05K1/02 F
H05K3/40 H
H05K3/40 K
H05K7/20 C
H01L23/12 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166502
(22)【出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 典史
(72)【発明者】
【氏名】勝又 雅昭
【テーマコード(参考)】
5E317
5E322
5E338
【Fターム(参考)】
5E317AA01
5E317AA30
5E317BB02
5E317BB03
5E317BB04
5E317BB11
5E317BB12
5E317BB15
5E317BB16
5E317CC60
5E317CD32
5E317CD34
5E317GG03
5E322AA01
5E322AA02
5E322AB02
5E322AB06
5E322AB09
5E322FA04
5E338AA02
5E338AA16
5E338AA18
5E338BB03
5E338BB14
5E338CC08
5E338EE02
5E338EE26
(57)【要約】
【課題】放熱材と基板との間の接続をより強固にさせる配線基板を提供する。
【解決手段】配線基板100は、基材10と基材10に形成される配線層とを備え、基材10の厚み方向に貫通され段差21Aを介して貫通穴30を有する配線板と、貫通穴30に配置される放熱材50と、段差21Aに配置され金属粒子とバインダ樹脂を含有するペースト61と、を備える。配線基板の製造方法は、基材と、基材に形成される配線層と、を備え、基材の厚み方向に貫通され、段差を介して貫通穴を有する配線板を準備する工程と、放熱材を貫通穴に配置する工程と、段差に金属粒子及びバインダ樹脂を含有するペーストを充填する工程と、を含む。
【選択図】図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材に形成される配線層と、を備え、前記基材の厚み方向に貫通され、段差を介して貫通穴を有する配線板と、
前記貫通穴に配置される放熱材と、
前記段差に配置され、金属粒子とバインダ樹脂を含有するペーストと、
を備える配線基板。
【請求項2】
前記貫通穴の開口形状は、前記貫通穴の開口形状の面積を広げる方向に凸状に形成される凸状部を有する請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記ペーストが前記配線層から露出している最表面は、前記配線層の最表面と同一平面になるように形成されている請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記段差は、前記貫通穴の一方の開口に設けられ、他方の開口において前記放熱材が前記基材から突出し、前記放熱材の端面が、前記配線層の表面と同一平面に位置する請求項1から3のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記段差は、前記貫通穴の一方の開口に設けられ、他方の開口において前記放熱材の端面が前記基材の最表面よりも奥に位置する請求項1から3のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項6】
前記基材は、前記貫通穴の内壁に凹部または凸部を有する請求項1から5のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項7】
前記ペーストの質量に対する前記バインダ樹脂の質量の割合は、5%以上8%以下である請求項1から6のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項8】
基材と、前記基材に形成される配線層と、を備え、前記基材の厚み方向に貫通され、段差を介して貫通穴を有する配線板を準備する工程と、
放熱材を前記貫通穴に配置する工程と、
前記段差に金属粒子及びバインダ樹脂を含有するペーストを充填する工程と、
を含む配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記配線板を準備する工程は、前記段差の一部に前記基材が前記配線層から露出されている請求項8に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記配線板を準備する工程は、平面視において、前記配線層から前記基材の上面または下面が露出する段差が前記配線板に形成されている請求項8または9に記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記貫通穴の内壁に凹部または凸部を形成し、前記凹部または凸部が前記放熱材の端面と対面するよう前記放熱材を配置させる請求項8から10のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発熱量の大きい半導体素子を基板に実装する場合、放熱対策が重要となる。発熱量の大きい半導体素子の例として、車載用ヘッドライトに使用される発光ダイオードがある。例えば特許文献1には、発光ダイオードを放熱材に実装し、その放熱材を配線基板の貫通孔に配置することによって、発光ダイオードの温度上昇を抑制する技術が記載されている。
【0003】
しかし、放熱材を圧入した基板は、温度変化によって歪みや変形が生じる場合があり、放熱材と基板との接続が弱くなり、配線基板の接合信頼性が低下する懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-287020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の一態様は、放熱材と基板との間の接続をより強固にさせる配線基板及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の態様は、基材と、前記基材に形成される配線層と、を備え、前記基材の厚み方向に貫通され、段差を介して貫通穴を有する配線板と、前記貫通穴に配置される放熱材と、前記段差に配置され、金属粒子とバインダ樹脂を含有するペーストと、を備える配線基板である。
【0007】
第二の態様は、基材と、前記基材に形成される配線層と、を備え、前記基材の厚み方向に貫通され、段差を介して貫通穴を有する配線板を準備する工程と、放熱材を前記貫通穴に配置する工程と、前記段差に金属粒子及びバインダ樹脂を含有するペーストを充填する工程と、を含む配線基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、放熱材と基板との間の接続をより強固にさせる配線基板及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】第1実施形態に係る配線基板を示す平面図である。
図1B】第1実施形態に係る配線基板を示す底面図である。
図1C図1AのIC-IC線における配線基板を示す端面図である。
図1D】第1実施形態に係る配線基板に半導体素子を実装した例を示す斜視図である。
図2A】第2実施形態に係る配線基板を示す平面図である。
図2B図2AのIIB-IIB線における配線基板を示す端面図である。
図3A】第3実施形態に係る配線基板を示す平面図である。
図3B図3AのIIIB-IIIB線における配線基板を示す端面図である。
図4A】第1変形例に係る配線基板の一部を示す平面図である。
図4B】第2変形例に係る配線基板の一部を示す平面図である。
図4C】第3変形例に係る配線基板の一部を示す平面図である。
図5A】第4変形例に係る配線基板を示す端面図である。
図5B】第4変形例に係る配線基板の一部の部材を取り除いた底面図である。
図5C】第5変形例に係る配線基板を示す端面図である。
図5D】第6変形例に係る配線基板を示す端面図である。
図6】第1乃至第3実施形態及び変形例に係る配線基板の製造方法を示すフローチャートである。
図7A】第1実施形態に係る配線基板の製造方法において基材に配線層を形成した状態を示す端面図である。
図7B】第1実施形態に係る配線基板の製造方法において基材に貫通穴を形成した状態を示す端面図である。
図7C】第1実施形態に係る配線基板の製造方法において基材の貫通穴に放熱材を設けた状態を示す端面図である。
図7D】第1実施形態に係る配線基板の製造方法において放熱材の周縁にペーストを配置した状態を示す端面図である。
図7E】第1実施形態に係る配線基板の製造方法において配置したペーストを平坦にした状態を示す端面図である。
図7F図7Bの配線板を示す底面図である。
図8A】第2実施形態に係る配線基板の製造方法において基材に配線層及び貫通穴を形成した状態を示す端面図である。
図8B】第2実施形態に係る配線基板の製造方法において基材の貫通穴に放熱材を設けた状態を示す端面図である。
図9A】第3実施形態に係る配線基板の製造方法において基材に配線層を形成した状態を示す端面図である。
図9B】第3実施形態に係る配線基板の製造方法において基材に貫通穴を形成した状態を示す端面図である。
図9C】第3実施形態に係る配線基板の製造方法において基材の貫通穴に放熱材を設けた状態を示す端面図である。
図9D】第3実施形態に係る配線基板の製造方法において放熱材の周縁にペーストを配置した状態を示す端面図である。
図9E】第3実施形態に係る配線基板の製造方法において配置したペーストを平坦にした状態を示す端面図である。
図10A】第4変形例に係る配線基板の製造方法において基材を示す端面図である。
図10B】第4変形例に係る配線基板の製造方法において基材に配線層を形成した状態を示す端面図である。
図10C】第4変形例に係る配線基板の製造方法において基材に貫通穴を形成した状態を示す端面図である。
図11A】第5変形例に係る配線基板の製造方法において基材を示す端面図である。
図11B】第5変形例に係る配線基板の製造方法において基材に配線層を形成した状態を示す端面図である。
図11C】第5変形例に係る配線基板の製造方法において基材に貫通穴を形成した状態を示す端面図である。
図12A】第6変形例に係る配線基板の製造方法において基材を示す端面図である。
図12B】第6変形例に係る配線基板の製造方法において基材に配線層を形成した状態を示す端面図である。
図12C】第6変形例に係る配線基板の製造方法において基材に貫通穴を形成した状態を示す端面図である。
図13A】第7変形例に係る配線基板を示す端面図である。
図13B】第7変形例に係る配線基板の一部の部材を取り除いた底面図である。
図13C】第8変形例に係る配線基板を示す端面図である。
図13D】第9変形例に係る配線基板を示す端面図である。
図14A】実施例に係る配線基板を示す平面図である。
図14B】実施例に係る配線基板を示す底面図である。
図14C図14AのXIVC-XIVC線における配線基板を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本開示に係る技術的思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、発明を以下のものに限定しない。一つの実施形態において説明する内容は、他の実施形態及び変形例にも適用可能である。また、図面は実施形態を概略的に示すものであり、説明を明確にするため、各部材のスケールや間隔、位置関係等を誇張し、あるいは、部材の一部の図示を省略している場合がある。各図において示す方向は、構成要素間の相対的な位置を示し、絶対的な位置を示すことを意図したものではない。なお、同一の名称、符号については、原則として、同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
【0011】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る配線基板100を、図1Aから図1D及び図7Bを参照しながら説明する。
図1Cに示されるように、配線基板100は、基材10と、配線層41、42と、基材10を厚み方向に貫通し、段差21Aを介して貫通穴30を有する配線板81A(図7Bに示される)と、貫通穴30に配置される放熱材50と、段差21Aに配置され、金属粒子とバインダ樹脂を含有するペースト61と、を備えている。
以下、配線基板100の各構成について説明する。
【0012】
(基材)
基材10は、配線層41、42が設けられると共に、板厚方向に貫通する貫通穴30に後記する放熱材50が配置される部材である。基材10は、絶縁性材料を用いることが好ましく、かつ、半導体素子D1から出射される光や外光などを透過しにくい材料を用いることが好ましい。
基材10の材料は、例えば、エポキシ、ガラスエポキシ、ビスマレイミドトリアジン若しくはポリイミド等の樹脂、又はセラミックス若しくはガラスなどの絶縁性部材を用いることができる。
【0013】
(貫通穴)
貫通穴30は、板厚方向に形成され、段差21Aを有している。この貫通穴30は、後記する放熱材50を配置するために基材10に設けられる。
貫通穴30は、放熱材50の端面である第1面51および第2面52側から見た平面視における最外周形状に合わせた形状とすることができる。このとき、貫通穴30の大きさは、放熱材50の最外周形状が例えば長方形状の場合には、長方形の各辺の長さよりもそれぞれ0.05~0.1mm程度大きくするのが好ましく、例えば円形状の場合には、円の直径よりも0.05~0.1mm程度大きくするのが好ましい。貫通穴30の大きさを放熱材50よりもやや大きめにすることによって、急激な温度変化に伴って基材10に生じる変形や歪みを低減することができる。
【0014】
貫通穴30は、一方の基材の主面側から他方の基材の主面側まで同一の貫通穴形状で形成されてもよく、一方の基材の主面側と他方の基材の主面側とで、形成された開口の形状や大きさが異なるように形成されてもよい。図1Cに示すように、貫通穴30は、一例として、内壁に凸部33を設けた構成としている。この凸部33は、ここでは、貫通穴30の穴径を変えることで形成されている。凸部33によって基材開口32は狭くなり、放熱材50の一方の端面である第2面52を凸部33に対面させることができる。なお、基材開口とは、段差を含めない貫通穴の開口である。配線基板100では、図1Aに示すように、凸部33は、基材開口32の全周に連続する形状としているが、基材開口32の周の一部に設けてもよい。なお、貫通穴30の内壁に凹部を設けることによって、同様の形状とすることもできる。
【0015】
(配線層)
配線層41、42は、電流及び熱の経路となる部材である。配線基板100では、配線層42は、例えば図1Dに示すように半導体素子D1とワイヤを介して接続され、主として半導体素子D1に電力を供給するために設けられる。基材10に対して配線層42とは反対側の面に設けられた配線層41は、主として放熱のために設けられる。このため、配線層41は、できるだけ広い面積とするのが好ましく、図1Bに示すように、後記する段差21Aを除く基材10の全面にわたって配線層41を設けるのが好ましい。
配線層41、42は、銅、鉄、ニッケル、タングステン、クロム、アルミニウム、チタン、パラジウム、ロジウム、銀、白金、金などの金属又はこれらの合金で形成することができる。また、配線層41、42は、これらの金属又は合金の単層でも多層でも形成することができる。例えば銅とする場合、配線層41、42の厚みは、放熱性の観点から少なくとも35μmは必要であり、70μm以上とするのが好ましい。
【0016】
(段差)
段差21Aは、配線基板100の最も外側の面よりも凹んだ領域である。また、段差21Aにより凹んだ領域には、後記するペースト61が充填される。配線基板100では、段差21Aは、貫通穴30の一方の基材開口31にのみ設けられている。配線基板100では、段差21Aは、一例として、配線層41が存在する領域と存在しない領域との高低差によって形成される。すなわち、段差21Aは、配線層41の厚みにより形成されている。段差21Aを含めた貫通穴30の開口形状は、配線層41の開口41Aの形状である。
【0017】
段差21Aを含めた貫通穴30の開口形状は、貫通穴30の基材開口31の形状と異なっている。段差21Aを含めた貫通穴30の開口形状は、貫通穴30の基材開口31を一定の幅で囲む外縁周縁部25と、段差21Aを含めた貫通穴30の開口形状の面積を広げる方向となる開口中心から放射状に凸状に形成される8個の凸状部26と、を備えている。各凸状部26は、一例として円の外縁に矩形状に形成されている。外縁周縁部25によって、後記するペースト61と基材10とが接する面積を確保して、一定の接合信頼性を実現することができる。そして、凸状部26によって、後記するペースト61と基材10及び配線層41とが接する面積を大きくして接合信頼性を高め、放熱性を向上させることができる。段差21Aによって、放熱材50の一方の端面51と配線層41の表面41Dとが同一平面上にある場合でも、放熱材50の側面53の一部を露出させて配置することができる。放熱材50は、側面53が露出することによって、放熱性を高めることができる。
【0018】
後記するペースト61によって放熱材50と配線層41とを電気的に接続する場合、貫通穴30の基材開口31からの外縁周縁部25の幅は、接合信頼性を高め、放熱性を向上させるために、放熱材50の周長との積が、10mm以上150mm以下であることが好ましい。なお、図1Bにおいて、放熱材50の一方の端面51の周縁からの外縁周縁部25の幅は、放熱材50が先細りとなっているために、貫通穴30の基材開口31からの外縁周縁部25の幅よりも大きくなっている。
【0019】
(放熱材)
放熱材50は、配線基板100に設けられる発光ダイオード等の半導体素子に対面して配置され、半導体素子の発する熱を逃がし易くするための部材である。放熱材50は、一方の端面である第1面51と、他方の端面である第2面52と、第1面51及び第2面52に連続する側面53とを備えている。この放熱材50は、第1面51及び第2面52を貫通穴30から露出するようにして基材10の貫通穴30に配置される。放熱材50は、第1面51及び第2面52を露出することで、例えば第2面52に実装される半導体素子の発する熱を第1面51からも効率的に放熱することができる。
第1面51は、基材10から突出し、配線層41の表面41Dと同一平面上にある。第1面51と配線層41の表面41Dとが同一平面上にあることで、例えば配線基板100の外部に設置されるヒートシンク等の放熱部材に、配線基板100を面で接触させることができ、熱を効率よく伝えることができる。第2面52は、基材10の最表面よりも奥に位置している。第2面52が基材10の最表面よりも奥に位置することで、配線基板100と実装する半導体素子とを合わせた全体での薄型化が可能となる。第2面52は、ここでは基材10の最表面から、実装する半導体素子の厚み分よりも奥に位置することが好ましい。
【0020】
放熱材50の材料は、例えば導電性が高い銅、銀、アルミニウム等の金属とすることや結晶構造を特定の方向に配向させたグラファイト、セラミックスなどとすることができ、コストと放熱性とのバランスから銅を材料とすることが好ましい。放熱材50は、導電性を有することで、配線層41と電気的に接続することができ、第1面51よりも広い面積で効率的に放熱することができる。
第1面51及び第2面52は平面視において円形状である。円形状であることによって、熱による膨張又は収縮が等方的となり、基材10に応力が集中する箇所を生じにくい。また、円形状であることによって、熱の移動が等方的となり、より効率よく放熱することができる。放熱材50は、第1面51に向かってテーパ状に先細りの形状とすることができる。これにより、放熱材50と後記するペースト61との接触面積を大きくすることができる。
【0021】
(ペースト)
ペースト61は、放熱性に優れ、放熱材50と基材10と配線層41とを接着することができる部材である。また、ペースト61は、放熱材50と配線層41とを電気的に接続することができる部材である。
図1Cに示すように、配線基板100では、ペースト61は、放熱材50の側面53と基材10と配線層41の開口41Aの端面41Cとを接着している。このペースト61は、放熱材50の第1面51及び配線層41の表面41Dを覆わないように、配線層41と放熱材50との間に形成される。配線基板100は、第1面51及び配線層41の表面41Dを露出させることによって、放熱性を高めている。配線層41から露出しているペースト61の最表面は、配線層41の表面41Dと同一平面になるように形成されているのが好ましい。配線基板100は、外部の放熱部材に対面して配置されることがある。配線基板100は、ペースト61と第1面51と配線層41とが同一平面をなすようにすることで、外部の放熱部材との接触面積を大きくし、外部の放熱部材に効率よく熱を伝えることができる。
なお、ペースト61の外縁形状は、段差21Aを含めた貫通穴30の開口形状と同じである。図1Bに示すように、ペースト61の外縁形状は、放熱材50の第1面51の外縁形状と異なっている。
【0022】
ペースト61は、金属粒子とバインダ樹脂とを含有し、導電性を有する。金属粒子は、例えば銀、金、銅、プラチナ、アルミニウム、パラジウム等である。バインダ樹脂は、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂である。なお、ペースト61は、金属粒子に替えて、又は金属粒子と共に、カーボン、金属酸化物の粒子を含有してもよい。また、ペースト61として、例えば放熱性フィラーを充填した樹脂を使用してもよい。
ペースト61は、一般にはバインダ樹脂の含有率を大きくすると接続抵抗値が大きくなる傾向にあり、放熱性の向上を見込めない。しかし、バインダ樹脂の含有率を小さくしすぎると、接合信頼性を確保することができない場合がある。そこで、ペースト61の質量に対するバインダ樹脂の質量の割合は、5%以上8%以下の範囲に調整されているのが好ましい。
なお、ペースト61として、放熱材50と配線層41との電気的な接続を目的としないものを使用してもよい。このような場合でも、一定の放熱効果を得ることができる。また、放熱材50のテーパ状の形状について、第1面51の面積を狭くすることや、第1面51から離れた位置からのテーパ状とすることによって、ペースト61と放熱材50及び基材10との接触面積をより大きくして、放熱材50と基材10との接着性をより高めることができる。
【0023】
以上説明したように、配線基板100は、段差21Aに配置されるペースト61が、外縁周縁部25及び凸状部26の形状に沿って設けられることで、放熱材50と基材10及び配線層41との接合信頼性を高め、放熱性を向上させることができる。また、放熱材50と配線層41とを電気的に接続することで、放熱性をより向上させることができる。そして、放熱材50の第1面51とペースト61と配線層41とが同一平面をなすようにすることで、放熱性をさらに向上させることができる。
【0024】
[製造方法(第1実施形態)]
次に、配線基板100の製造方法を図6図7Aから図7Fを参照して説明する。
配線基板100の製造方法は、基材10と、基材10に形成される配線層41、42と、を備え、基材10の厚み方向に貫通され、段差21Aを介して貫通穴30を有する配線板81Aを準備する工程S11Aと、放熱材50を貫通穴30に配置する工程S21Aと、段差21Aに金属粒子及びバインダ樹脂を含有するペースト61を充填する工程S31Aと、を含む。
配線基板100の製造方法の各工程について説明する。
【0025】
(配線板を準備する工程)
配線板を準備するS11Aは、放熱材50及びペースト61を配置する前の配線板81Aを準備する工程である。
図7Aに示すように、はじめに、絶縁性の基材10に配線層41、42を形成する。配線層42は、基材10の一方の面に形成し、完成後の配線基板100に実装される半導体素子に電力を供給するパターンである。配線層41は、基材10の他方の面(配線層42の反対面)に、できるだけ大きい面積で、可能であれば全面にわたって形成し、開口41Aを設ける。配線層41、42のパターンは、例えばエッチングによって形成することができる。
図7Bに示すように、貫通穴30は、段差21Aを介して、基材10を厚み方向に貫通して形成される。また、ここでは、貫通穴30の内壁に凸部33を形成している。後記する放熱材を貫通穴に配置する工程において、凸部33を放熱材50の端面に対面させることによって、放熱材50を貫通穴30に挿入する際に、放熱材50の位置決めを正確に行うことができる。貫通穴30及び凸部33は、例えばドリル加工やレーザ加工によって形成することができる。なお、貫通穴30の内壁に凹部を形成することによって、同様の形状としてもよい。
【0026】
配線基板100では、配線層41の開口41Aによって段差21Aを形成している。すなわち、段差21Aは配線層41の厚みにより形成する。また、段差21Aの一部に基材10が配線層41から露出されている。開口41Aは、図7Fに示すように、貫通穴30の基材開口31を一定の幅L1で囲む外縁周縁部25と、段差21Aを含めた貫通穴30の開口形状の面積を開口中心から放射方向に広げる方向に凸状に形成される8個の矩形の凸状部26とを備えるように形成している。
放熱材50と配線板81Aとの間の接続をより強固にし、放熱性を高めるために、放熱材50の周長と幅L1との積が10mm以上150mm以下とすることが好ましい。開口41Aの形状は、段差21Aを含めた貫通穴30の開口形状である。
なお、配線板を準備する工程S11Aは、基材10に配線層41、42が形成され、基材10の厚み方向に貫通され、段差21Aを介して貫通穴30が形成され、貫通穴30の内壁に凸部33を設けた配線板81Aを購入して準備してもよい。
【0027】
(放熱材を貫通穴に配置する工程)
放熱材を貫通穴に配置する工程S21Aは、放熱材50を貫通穴30に配置する工程である。
図7Cに示すように、放熱材50は、一方の端面である第1面51と他方の端面である第2面52とを貫通穴30から露出させて配置される。ここでは、第1面51は配線層41側に、第2面52は配線層42側に露出させる。放熱材50は、段差21A側の貫通穴30の基材開口31から、第2面52側を先にして貫通穴30に挿入する。そして、第2面52を凸部33に対面させることによって、第2面52が基材10の最表面よりも奥に位置するように貫通穴30に配置される。放熱材50の厚みは、第2面52と対面する凸部33の面から配線層41の表面41Dまでの長さL2と同じになるように決めることができる。放熱材50の第1面51側は基材10から突出しており、第1面51が配線層41の表面41Dと同じ面に位置している。
【0028】
放熱材50は、放熱材50の厚み方向に垂直な断面積が、放熱材50の端面である第1面51及び第2面52に近いほど小さくなるように、テーパ状の先細り形状であってもよい。配線基板100では、放熱材50の第1面51側のみをテーパ状としている。テーパ状とする加工は、放熱材50を貫通穴30に配置する前に、例えば旋盤で切削することによって行うことができる。なお、放熱材50は、テーパ状に加工されたものを購入してもよい。また、配線基板100では、放熱材50は円柱状であるが、角柱状等の他の形状でもよい。
【0029】
(ペーストを充填する工程)
ペーストを充填する工程S31Aは、段差21Aに金属粒子及びバインダ樹脂を含有するペースト61を充填する工程である。
図7Dに示すように、放熱材50を貫通穴30に配置した後、段差21Aにペースト61を充填する。ペースト61によって、放熱材50の側面53と基材10と開口41Aの端面41Cとを接着し、放熱材50と配線層41とを電気的に接続することができる。なお、放熱材50の側面53は、第1面51及び第2面52と連続する面である。ペースト61の充填は、例えばディスペンサのノズルからの注入によって行ってもよく、スクリーン印刷により塗布してもよく、ノズルから注入した後にスクリーン印刷をするなど、ノズル注入とスクリーン印刷との併用により行ってもよい。
ペースト61は、金属粒子及びバインダ樹脂を含有する。金属粒子として銀、銅、はんだを含むものを使用すれば、ペースト61における放熱材50及び配線層41との界面付近に合金層が形成されて、電気的接続を確実にして、接続抵抗値をより低くすることができる。ペースト61の質量に対するバインダ樹脂の質量の割合は、5%以上8%以下の範囲に調整されているのが好ましい。
充填したペースト61は、所定の硬化条件で硬化させる。ペースト61を完全に硬化させる前に、ペーストを充填する工程S31Aの一部として、ペースト61をローラで加温及び加圧する熱ロール処理工程を設けてもよい。
【0030】
(研磨工程)
図7Eに示されるように、ペーストを充填する工程S31Aの後に、配線層41から露出しているペースト61の最表面と配線層41の表面41Dと放熱材50の第1面51とが、同一平面をなすようにペースト61を充填した面を研磨する研磨工程S41を設けてもよい。この研磨は、やすりがけやロール研磨、ブラスト処理等によって行うことができる。
【0031】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る配線基板200を図2A及び図2Bを参照しながら説明する。
配線基板200は、放熱材50の厚み及び第2面52の位置が配線基板100とは異なる。また、配線基板200は、貫通穴30の内壁に凸部33も凹部も形成されていない。その他の構成は、第1実施形態に係る配線基板100と共通する。以下、第1実施形態と異なる構成について説明する。
配線基板200では、図2Bに示すように、段差21Aは、貫通穴30の一方の開口(配線層41側)に設けられ、他方の開口(配線層42側)において放熱材50が基材10から突出し、放熱材50の端面である第2面52が、配線層42の表面と同一平面に位置している。
配線基板200は、放熱材50の第2面52側が基材10から突出していることで、さらに効率よく放熱することができる。
【0032】
[製造方法(第2実施形態)]
次に、配線基板200の製造方法を図8A図8Bを参照して説明する。
配線基板200の製造方法は、配線板を準備する工程S12A及び放熱材を貫通穴に配置する工程S22Aが、配線基板100の製造方法と異なっている。また、放熱材50の厚みの決め方が異なる。以下、配線基板100の製造方法と異なる点について説明する。
(配線板を準備する工程)
配線基板200における配線板を準備する工程S12Aは、貫通穴30の内壁に凸部33も凹部も形成しない。この点以外は、配線基板100の配線板を準備する工程S11Aと同じである。
なお、配線板を準備する工程S12Aは、基材10に配線層41、42が形成され、基材10の厚み方向に貫通され、段差21Aを介して貫通穴30が形成された配線板82Aを購入して準備してもよい。
【0033】
(放熱材を貫通穴に配置する工程)
放熱材を貫通穴に配置する工程S22Aは、放熱材50の第2面52の位置が配線基板100の製造方法における放熱材を貫通穴に配置する工程S21Aと異なる。放熱材を貫通穴に配置する工程S22Aでは、図2Bに示すように、放熱材50の第2面52側が基材10から突出し、第2面52が配線層42の表面42Dと同一平面に位置するように、放熱材50を配置する。この配置は、例えば配線層42に平らな板材を押し当てて、第2面52がその板材に対面するまで放熱材50を挿入することによって行うことができる。また、放熱材50の厚みは、配線層41の表面41Dから配線層42の表面42Dまでの長さL3と同じになるように決めることができる。
なお、配線基板100の製造方法と同様に、ペーストを充填する工程S31Aの後に研磨工程S41を設けてもよい。
【0034】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る配線基板300を図3A及び図3Bを参照しながら説明する。
配線基板300は、放熱材50の厚み及び第2面52の位置が配線基板100とは異なる。また、配線基板300は、貫通穴30の内壁に凸部33も凹部も形成されていない。その他の構成は、第1実施形態に係る配線基板100と共通する。以下、第1実施形態と異なる構成について説明する。
配線基板300では、図3Bに示すように、段差21A、22Aが、貫通穴30の両方の開口(配線層41側及び配線層42側)に設けられ、両方の開口において放熱材50が基材10から突出し、放熱材50の端面である第1面51及び第2面52が、配線層41、42の表面41D、42Dと同一平面に位置している。
放熱材50は、第1面51及び第2面52の両方に向かってテーパ状に先細りの形状としている。なお、放熱材50は、第1面51側及び第2面52側の一方のみをテーパ状としてもよく、両方をテーパ状としないこともできる。
【0035】
(配線層)
配線基板300の配線層42は、実装される半導体素子に電力を供給するパターンに加えて、放熱用のパターンを有している。放熱用のパターンは、できるだけ広い面積とすることが好ましい。このため、配線基板300の配線層42は、図3Aに示すように、電力を供給するパターン421、422と、パターン421、422から絶縁されている放熱用のパターン423とを有する。
【0036】
(段差)
配線基板300では、貫通穴30の2つの基材開口31、32の両方に段差が設けられる。基材開口31側の段差21Aについては、配線基板100と同様である。基材開口32側の段差22Aは、配線層42のパターン423において、配線層42が存在する領域と存在しない領域との高低差によって形成される。すなわち、段差22Aは、配線層42の厚みにより形成されている。段差22Aを含めた貫通穴30の開口形状は、配線層42の開口42Aの形状である。なお、段差22Aは、段差21Aと同様に、配線基板300の最も外側の面よりも凹んでおり、後記するペースト62を充填することができる領域である。
貫通穴30は、段差21A及び段差22Aを有している。段差22Aを含めた貫通穴30の開口形状は、貫通穴30の基材開口32の形状と異なっている。段差22Aを含めた貫通穴30の開口形状は、貫通穴30の基材開口32を一定の幅で囲む外縁周縁部25と、段差22Aを含めた貫通穴30の開口形状の面積を開口中心から放射方向に広げる方向に凸状に形成される8個の凸状部26とを備えている。各凸状部26は、一例として円の外縁に矩形状に形成されている。
【0037】
(ペースト)
ペースト62は、放熱性に優れ、放熱材50と基材10と配線層42とを接着することができる部材である。また、ペースト62は、放熱材50と配線層42とを電気的に接続することができる部材である。
配線基板300では、図3Bに示すように、ペースト62は、放熱材50の側面53と基材10と配線層42の開口42Aの端面42Cとを接着している。このペースト62は、放熱材50の第2面52及び配線層42の表面42Dを覆わないように、配線層42と放熱材50との間に形成される。配線基板300は、放熱材50の第2面52及び配線層42の表面42Dを露出させることによって、放熱性を高めている。配線層42から露出しているペースト62の最表面は、配線層42の表面42D及び放熱材50の第2面52と同一平面になるように形成されるのが好ましい。
なお、ペースト62の外縁形状は、段差22Aを含めた貫通穴30の開口形状と同じである。そして、図3Aに示すように、ペースト62の外縁形状は、放熱材50の第2面52の外縁形状と異なっている。
ペースト62は、ペースト61と同じものを使用することができる。なお、ペースト62は、放熱材50と配線層42との電気的な接続を目的としないものを使用することもできる。この場合でも、一定の放熱効果を得ることができる。
【0038】
配線基板300は、段差21Aに配置されるペースト61及び段差22Aに配置されるペースト62が、外縁周縁部25及び凸状部26の形状に沿って設けられることで、放熱材50と基材10及び配線層41、42との接合信頼性をより高め、放熱性をより向上させることができる。また、放熱材50と配線層41、42とを電気的に接続することで、放熱性をさらに向上させることができる。
【0039】
[製造方法(第3実施形態)]
次に、配線基板300の製造方法を図9Aから図9Eを参照して説明する。
配線基板300の製造方法は、配線板を準備する工程S13A及び放熱材を貫通穴に配置する工程S23Aが、配線基板100の製造方法と異なっている。また、放熱材50の厚みの決め方が異なる。以下、配線基板100の製造方法と異なる点について説明する。
【0040】
(配線板を準備する工程)
配線基板300における配線板を準備する工程S13Aは、貫通穴30の内壁に凸部33も凹部も形成しない。
また、配線層42は、基材10の一方の面に、配線基板300に実装される半導体素子に電力を供給するパターン421、422に加えて、パターン421、422と絶縁されている放熱用のパターン423を形成する。放熱用のパターン423は、できるだけ大きい面積で形成し、開口42Aを設ける。配線層41については、配線基板100の配線板を準備する工程S11Aと同様である。
配線基板300では、配線層41、42の開口41A、42Aによって段差21A、22Aを形成する。すなわち、段差21A、22Aは、配線層41、42の厚みにより形成する。また、段差21A、22Aの一部に基材10が配線層41、42から露出されている。開口41A、42Aの形状は配線基板100と同様であり、図7Fに示すように、貫通穴30の基材開口31、32を一定の幅L1で囲む外縁周縁部25と、段差21A、22Aを含めた貫通穴30の開口形状の面積を開口中心から放射方向に広げる方向に凸状に形成される8個の矩形の凸状部26とを備える。開口41A、42Aの形状は、段差21A、22Aを含めた貫通穴30の開口形状である。
なお、配線板を準備する工程S13Aは、基材10に配線層41、42が形成され、基材10の厚み方向に貫通され、段差21A、22Aを介して貫通穴30が形成された配線板83Aを購入して準備してもよい。
【0041】
(放熱材を貫通穴に配置する工程)
放熱材を貫通穴に配置する工程S23Aは、放熱材50の第2面52の位置が、配線基板100における放熱材を貫通穴に配置する工程S21Aと異なる。放熱材を貫通穴に配置する工程S23Aでは、図9Cに示すように、放熱材50の第2面52側が基材10から突出し、第2面52が配線層42の表面42Dと同一平面に位置するように、放熱材50を配置する。この配置は、例えば配線層42に平らな板材を押し当てて、第2面52がその板材に対面するまで放熱材50を挿入することによって行うことができる。また、放熱材50の厚みは、配線層41の表面41Dから配線層42の表面42Dまでの長さL3と同じになるように決めることができる。また、ここでは、放熱材50の第1面51側及び第2面52側の両方をテーパ状としている。
【0042】
(ペーストを充填する工程)
ペーストを充填する工程S33Aは、段差21A、22Aにペースト61、62を充填する。ペースト61については、配線基板100のペーストを充填する工程S21Aと同様である。
ペースト62は、段差22Aに充填して硬化させる。ペースト62によって、放熱材50の側面53と基材10と開口42Aの端面42Cとを接着し、放熱材50と配線層42のパターン423とを電気的に接続する。ペースト62は、ペースト61と同じものを使用することができ、ペースト61と同じ方法で充填することができる。
なお、ペースト61、62を完全に硬化させる前に、ペーストを充填する工程S33Aの一部として、ペースト61、62をローラで加温及び加圧する熱ロール処理工程を設けてもよい。また、配線基板100の製造方法と同様に、ペーストを充填する工程S33Aの後に、ペースト61の表面と第1面51と配線層41の表面41Dとが同一平面をなし、ペースト62の表面と第2面52と配線層42の表面42Dとが同一平面をなすように研磨する研磨工程S43を設けてもよい。
【0043】
[段差を含めた貫通穴の開口形状の変形例]
次に、段差を含めた貫通穴の開口形状の変形例について、図4Aから図4Cを参照して説明する。なお、図4Aから図4Cは、段差付近のみを取り出して図示している。これらの段差を含めた貫通穴の開口形状の変形例は、放熱材50の第1面51側及び第2面52側のどちらにも適用することができる。
図4Aに示す第1変形例における段差を含めた貫通穴の開口形状241は、4個の矩形状の凸状部26を備えている。図4Bに示す第2変形例における段差を含めた貫通穴の開口形状242は、4個の三角形状の凸状部27を備えている。図4Cに示す第3変形例における段差を含めた貫通穴の開口形状243は、8個の三角形状の凸状部27を備えている。外縁周縁部25は、第1乃至第3変形例に共通している。
第1乃至第3変形例は、配線基板100の段差を含めた貫通穴の開口形状と同様に、外縁周縁部25によって、ペースト61、62と基材10とが接する面積を確保して、一定の接合信頼性を実現することができる。そして、凸状部26、27によって、ペースト61、62と基材10及び配線層41、42とが接する面積を大きくして、接合信頼性を高め、放熱性を向上させることができる。
【0044】
[段差形成の変形例(第4乃至第6変形例)]
上記の実施形態及び変形例では、段差は配線層の厚みにより形成されている。一方、図5Aから図5Dに示すように、段差は基材の厚みにより形成されてもよい。
図5Aに示す第4変形例に係る配線基板100Bは、第1実施形態に係る配線基板100について、配線層の厚みにより形成されている段差21Aを、基材10の厚みにより形成されている段差21Bに変更した例である。
段差21Bは、基材10が薄くなることによって、基材10上に配置される配線層41に高低差が生じて形成される。すなわち、段差21Bは、基材10の厚みによって形成されている。配線層41は、基材10の厚みが変化する段差面13及び基材10が薄くなっている底面11にも配置されている。配線層41は、例えば図5Bに示すように、基材開口31の周囲の基材10の底面11の一部を露出させるように配置してもよい。なお、図5Bは、放熱材50及びペースト61が配置されていない配線板81Bを基材開口31側から見た底面図である。段差21Bを含めた貫通穴30の開口形状は、配線層41の表面41Dと段差面41Eとの境界線によって形成されている。
【0045】
図5Cに示す第5変形例に係る配線基板200Bは、配線基板100Bと同様に、第2実施形態に係る配線基板200について、段差21Aを基材10の厚みにより形成されている段差21Bに変更した例である。また、図5Dに示す第6変形例に係る配線基板300Bは、第3実施形態に係る配線基板300について、段差21A、22Aを基材10の厚みにより形成されている段差21B、22Bに変更した例である。
【0046】
基材の厚みにより段差を形成することで、ペースト61、62と配線層41、42とが接する面積を大きくして、放熱性をより向上させることができる。また、段差21B、22Bの深さは、基材10の厚みの差によって自在に調整することができる。配線基板100B、200B、300Bは、段差21B、22Bを深くすることによって、ペースト61、62を厚くすることができ、放熱性をさらに向上させることができる。
【0047】
次に、基材の厚みにより段差を形成する配線基板の製造方法について、図5Aから図5D図10Aから図12Cを参照して説明する。
基材の厚みにより段差を形成する配線基板の製造方法は、配線層の厚みにより段差を形成する場合と比較して、配線板を準備する工程が異なる。ここでは、配線板を準備する工程についてのみ説明する。配線板を準備する工程の後の工程は、配線層の厚みにより段差を形成する場合と同様である。
【0048】
図5Aに示す第4変形例に係る配線基板100Bの製造方法における配線板を準備する工程S11Bの概要を図10Aから図10Cに示す。
配線板を準備する工程S11Bで準備する配線板81Bでは、図10Aに示すように、基材10に凹部15を形成している。凹部15に配線層41が形成されて段差21Bとなるため、段差21Bの深さ及び平面視における面積は、凹部15よりも小さくなる。凹部15は、例えばドリル加工、レーザ加工、パンチング等により形成することができる。
続いて、図10Bに示すように、配線層41、42を形成する。これら配線層41、42の形成方法としては、基材10の所望の位置に、スパッタ成膜やイオンビーム成膜、メッキ処理等などがあり、コストと電気伝導性の観点から、材料は銅が多用される。続いて図10Cに示すように、貫通穴30及び凸部33を形成する。
図5Bに示すように、平面視において、配線層41から基材10の配線層41側の面が露出する段差21Bが配線板81Bに形成されている。
【0049】
図5Cに示す第5変形例に係る配線基板200Bの製造方法における配線板を準備する工程S12Bの概要を図11Aから図11Cに示す。配線板を準備する工程S12Bで準備する配線板82Bは、凸部33が形成されていない。この点以外は配線板を準備する工程S11Bと同じである。
配線板81Bと同様に、平面視において、配線層41から基材10の配線層41側の面が露出する段差21Bが配線板82Bに形成されている。
【0050】
図5Dに示す第6変形例に係る配線基板300Bの製造方法における配線板を準備する工程S13Bの概要を図12Aから図12Cに示す。
配線板を準備する工程S13Bで準備する配線板83Bでは、両面に段差21B、22Bを形成するため、凹部15に加えて凹部16を形成している。凹部16に配線層42が形成されて段差22Bとなるため、段差22Bの深さ及び平面視における面積は、凹部16よりも小さくなる。また、配線板83Bの配線層42は、配線基板300Bに実装される半導体素子に電力を供給するパターン421、422及び放熱用のパターン423を有している。
配線板83Bには、平面視において、配線層41、42から基材10の上面または下面が露出する段差21B、22Bが形成されている。なお、配線板81B、82B、83Bは、上記のように加工されたものを購入して準備してもよい。
【0051】
[段差形成の変形例(第7乃至第9変形例)]
また、段差は、図13Aから図13Dに示すように、配線層及び基材の厚みにより形成されていてもよい。
図13Aに示す第7変形例に係る配線基板100Cは、第1実施形態に係る配線基板100について、配線層の厚みにより形成されている段差21Aを配線層41及び基材10の厚みにより形成されている段差21Cに変更した例である。
段差21Cは、基材10の厚みが薄くなると共に配線層41に開口を設けることによって形成される。すなわち、段差21Cは、配線層41及び基材10の厚みにより形成されている。図13Bは、放熱材50及びペースト61が配置されていない配線板81Cを基材開口31側から見た底面図である。段差21Cを含めた貫通穴30の開口形状は、配線層41の開口41Aの形状と一致している。また、ペースト61は、放熱材50の側面53と基材10と配線層41の開口41Aの端面41Cとを接着している。
【0052】
図13Cに示す第8変形例に係る配線基板200Cは、配線基板100Cと同様に、第2実施形態に係る配線基板200について、段差21Aを配線層41及び基材10の厚みにより形成されている段差21Cに変更した例である。また、図13Dに示す第9変形例に係る配線基板300Cは、第3実施形態に係る配線基板300について、段差21A、22Aを配線層41、42及び基材10の厚みにより形成されている段差21C、22Cに変更した例である。
【0053】
配線層及び基材の厚みにより段差を形成することで、放熱材50及び基材10とペースト61、62とが接する面積を大きくして、接合信頼性をより高め、放熱性をより向上させることができる。段差21C、22Cの深さは、基材10の厚みによって自在に調整することができる。配線基板100C、200C、300Cは、段差21C、22Cを深くすることによって、ペースト61、62を厚くすることができ、放熱性をさらに向上させることができる。また、放熱材50と配線層41、42とを電気的に接続する場合には、ペースト61、62を厚くすることで、接続抵抗値をさらに低くすることができ、放熱性をさらに向上させることができる。
【0054】
配線層及び基材の厚みにより段差を形成する変形例の製造方法は、基材の厚みにより段差を形成する場合と比較して、配線板を準備する工程における、配線層に設ける開口の形状が異なる。配線板を準備する工程の後の工程は、配線層の厚みにより段差を形成する場合と同様である。
第7変形例に係る配線基板100Cの配線板を準備する工程S11Cは、凹部15の外縁の形状と同じ形状に配線層41に開口41Aを設ける点を除き、配線基板100Bの配線板を準備する工程S11Bと同様である。
第8変形例に係る配線基板200Cの配線板を準備する工程S12Cは、凹部15の外縁の形状と同じ形状に配線層41に開口41Aを設ける点を除き、配線基板200Bの配線板を準備する工程S12Bと同様である。
第9変形例に係る配線基板300Cの配線板を準備する工程S13Cは、凹部15、16の外縁の形状と同じ形状に配線層41、42に開口41A、42Aを設ける点を除き、配線基板300Bの配線板を準備する工程S13Bと同様である。
配線板81C、82Cには、平面視において、配線層41から基材10の配線層41側の面が露出する段差21Cが形成されている。配線板83Cには、平面視において、配線層41、42から基材10の上面または下面が露出する段差21C、22Cが形成されている。なお、配線板81C、82C、83Cは、上記のように加工されたものを購入して準備してもよい。
【0055】
(実施例)
次に、第1実施形態に係る配線基板100が、放熱材と配線板との間の強固な接続を実現できることを確認するために、実施例として配線基板100Aを製造した。
配線基板100Aは、図14Aから図14Cに示すように、放熱材50の形状が平面視で矩形状である点、段差を含めた貫通穴の開口形状が外縁周縁部のみであり、凸状部を備えていない点が、上述した配線基板100とは異なっている。
【0056】
配線層41、42は、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸、硬化させた基材10に、厚みが0.07mmの銅で形成した。配線層41、42のパターンは、エッチングによって形成した。配線層42の表面42Dから配線層41の表面41Dまでの長さL3は、2.4mmである。
銅の放熱材50は長方形の板状であり、長辺の長さA2は120mm、短辺の長さA1は80mm、厚みは2.0mmである。なお、放熱材50の厚みは、第2面52に対面する凸部33の面から配線層41の表面41Dまでの長さL2と同じである。放熱材50の第1面51側の端部約0.3mmに、長辺方向及び短辺方向についてそれぞれ0.3mm程度細くするテーパ加工をしている。また、貫通穴30の基材開口からの外縁周縁部25の幅L1は0.2mmであり、放熱材50の周長と幅L1との積は80mmである。
【0057】
放熱材50を貫通穴30に配置し、ペースト61を手作業で塗布した。ペースト61は、金属粒子として銀、銅、はんだを含有し、バインダ樹脂はエポキシ樹脂であるものを使用した。リフローによるペースト61の硬化後に、やすりがけによる研磨工程S41を行って、ペースト61の最表面と配線層41の表面41Dと放熱材50の第1面51とが同一平面になるようにした。
そして、半導体素子は実装せず、放熱材50と配線板との間の接続抵抗値及び接合強度について信頼性評価を行った。ペースト61の熱膨張率の影響を調べるために、ペースト61の質量に対するバインダ樹脂の質量の割合のみを変えたサンプル100A-1、100A-2、100A-3、100A-4を作成した。
【0058】
接続抵抗値は、図14Cの測定点N2(放熱材50の第2面52)と測定点N1(配線層41)との間の電気抵抗値を測定した。接合強度は、荷重試験機によって第2面52に加える荷重F1を大きくしていき、放熱材50が配線板から外れるときの荷重F1の値を測定した。そして、信頼性評価として、温度サイクル試験を行った。温度サイクル試験は、温度が-40℃及び125℃に保たれているフッ素系不活性液体中に交互に1分間ずつ置くことを2100回繰り返した。
それぞれのサンプルのバインダ樹脂量の割合(質量%)、温度サイクル試験の前後における接続抵抗値及び接合強度の値を表1に示す。表1より、温度サイクル試験前は、バインダ樹脂量の割合を減らすと接続抵抗値は低くなり、破断荷重は大きくなるという傾向がみられる。また、温度サイクル試験によって、接続抵抗値は高くなり、破断荷重は小さくなる傾向がみられる。
【0059】
【表1】
【0060】
サンプル100A-1は、温度サイクル試験後の破断荷重が20Nを下回って大きく低下しており、破断が発生したと考えられる。サンプル100A-3、100A-4は、温度サイクル試験後の接続抵抗値が50mΩを上回っており、接続抵抗値が十分に低いとはいえない。このため、上記の実施例において使用したペースト61の場合、バインダ樹脂量の割合を4.5質量%以上9.5質量%以下の範囲とすれば、放熱材と配線板と間の一定の接続を実現できる。また、接続抵抗値の低さと接合強度とのバランスから、バインダ樹脂量の割合は5質量%以上8質量%以下の範囲とするのが好ましい。なお、20N、50mΩという数値は一つの目安である。
また、接合信頼性については、基材やペーストに亀裂やはがれが生じていないかを目視で確認することも必要である。放熱性については、例えば、発光ダイオード等の半導体素子を配線基板に実装して連続動作させ、温度が規格内に収まるかどうかによって判断することができる。
実施例に係る配線基板100Aは、放熱材と配線板との間の強固な接続を実現できることが確認できた。凸状部26を設けることによって、接合信頼性がより高くなり、放熱性がより向上することが見込まれる。
【符号の説明】
【0061】
10 基材
21A 段差
25 外縁周縁部
26 凸状部
30 貫通穴
31 基材開口
33 凸部
41 配線層
41A 開口
41C 端面
41D 表面
42 配線層
50 放熱材
51 第1面
52 第2面
53 側面
61 ペースト
81A 配線板
100 配線基板
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C