(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022058263
(43)【公開日】2022-04-11
(54)【発明の名称】異方導電性接続材および異方導電性接続材を用いた電子部品の実装方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20220404BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220404BHJP
C08F 283/00 20060101ALI20220404BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20220404BHJP
H05K 3/32 20060101ALI20220404BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20220404BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20220404BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C08L101/00
C08F283/00
C08K3/08
H05K3/32 B
H01B1/22 D
H01B5/16
H01R11/01 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159266
(22)【出願日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2020166066
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】大渕 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ブンキ
(72)【発明者】
【氏名】東海 裕之
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
4J026
5E319
5G301
5G307
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002BN171
4J002DA076
4J002DA116
4J002DE227
4J002DK007
4J002EQ017
4J002EQ027
4J002FD116
4J002FD327
4J002GQ02
4J011AA05
4J011BA04
4J011PA04
4J011PA88
4J011PB27
4J011PC02
4J011PC08
4J026AB07
4J026AC00
4J026BA29
4J026DB06
4J026DB15
4J026DB30
4J026FA05
4J026GA06
5E319BB16
5E319CC33
5E319GG05
5G301DA03
5G301DA06
5G301DA13
5G301DA42
5G301DD03
5G301DE01
5G307HA02
5G307HB01
5G307HB03
5G307HC01
(57)【要約】
【課題】隣接する電極がファインピッチの配線基板にも、電気的接続信頼性と絶縁信頼性に優れた素子実装が可能な、異方導電性接続材を提供する。
【解決手段】(A)バインダー成分と、前記(A)バインダー成分に分散した(B)はんだ粒子と、を含む異方導電性接続材であって、前記(A)バインダー成分は、(A1)熱可塑性樹脂と、(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物と、(A3)重合開始剤と、(A4)大気圧下において加熱した際に気体を発生し得る化合物と、を含んでなる、異方導電性接続材とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダー成分と、前記(A)バインダー成分に分散した(B)はんだ粒子と、を含む異方導電性接続材であって、
前記(A)バインダー成分は、(A1)熱可塑性樹脂と、(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物と、(A3)重合開始剤と、(A4)大気圧下において加熱した際に気体を発生し得る化合物と、を含んでなる、異方導電性接続材。
【請求項2】
前記(A2)化合物の重合性官能基が、(メタ)アクリロイル基である、請求項1に記載の異方導電性接続材。
【請求項3】
前記(A4)化合物が、前記(B)はんだ粒子の融点以上の温度に加熱した際に気体を発生し得る化合物である、請求項1または2に記載の異方導電性接続材。
【請求項4】
前記(B)はんだ粒子の融点が、260℃以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の異方導電性接続材。
【請求項5】
前記(B)はんだ粒子は、平均粒子径1~100μmを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の異方導電性接続材。
【請求項6】
前記(A4)化合物から発生する気体が、二酸化炭素、酸素、水素、および窒素からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか一項に記載の異方導電性接続材。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の異方導電性接続材を用いた、電子部品の実装方法であって、
所定間隔を有して複数の電極が配置された回路基板上に、前記異方導電性接続材を塗布し、
前記回路基板の電極と前記電子部品の電極とが対向する位置となるように、前記電子部品を、塗布された前記異方導電性接続材を介して前記回路基板上に載置し、
電子部品が載置された状態で前記回路基板を、はんだ粒子の融点以上の温度に加熱してはんだ粒子を溶融させ、はんだを両電極に濡らし、
冷却してはんだを固化させ、さらに前記(A2)化合物が重合することにより、前記回路基板上に前記電子部品が固定される、電子部品の実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性接続材および異方導電性接続材を用いた電子部品の実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエレクトロニクス機器の軽薄短小化によるプリント配線板の高密度化に伴い、電子部品の電気的接続、例えば配線板と電子素子との電気的接続や配線板間の電気的接続に用いる技術として、導電性接着剤の開発・改良が進められている。このような導電性接着剤は、電気的に接続したい部材間に塗布し、加熱圧着することによって、軽量かつ省スペースで電気的接続を可能とする。具体的には、導電性接着剤自体は絶縁性であるが、加熱圧着により導電性接着剤に含有される導電性粒子が電極間に挟まり押し付けられることで導電する経路が形成される。その結果、部材間の電気的な接続が可能となる。一方、加熱圧着後も電極間に挟まれずに圧力がかからなかった領域は、導電性粒子が分散したままであるため、絶縁性が維持される。これによって、いわゆる異方導電性の接続構造体となる(例えば、特許文献1等)。
【0003】
また、液状の樹脂中では、はんだ粒子が溶融するとはんだ粒子が電極に集まる性質を利用し、流動状態にある硬化性樹脂中に分散したはんだ粒子が溶融して電極に自己集合し、接続しようとする電極間にのみはんだを配置でき、隣接する電極間では絶縁性が確保できるような異方導電性接着剤も開発されている(例えば、特許文献2等)。このようなタイプの異方導電性接着剤は、COG実装やFOG実装といった複数の電極を一括して電気的接続を行う用途に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-003529号公報
【特許文献2】特開2016-127010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年においては、LEDチップの小型化が進み、例えば、外形寸法が数十ミクロン程度のLEDチップを1mm以下の隣接間隔で配線基板に実装したLEDアレイ基板も実用化されており、LEDチップを実装するための回路基板の電極間も益々狭くなってきている。このような電極間が非常に狭い配線基板に、特許文献2に記載されているようなタイプの異方導電性接着剤を適用すると、隣接する電極の間にはんだ粒子が残存し、隣接する電極間での絶縁信頼性が確保できない場合があった。
【0006】
本発明はこのような課題のもとになされたものであり、その目的は、隣接する電極がファインピッチの配線基板にも、電気的接続信頼性と絶縁信頼性に優れた素子実装が可能な、異方導電性接続材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した特許文献2等の異方導電性接続材は、溶融したはんだ粒子が電極表面に濡れることで電極に自己集合し、配線基板の電極と電子素子の電極とが電気的に接続されるものである。本発明者らは、異方導電性接続材を加熱した際の、異方導電性接続材中に分散したはんだ粒子の溶融挙動を観察したところ、溶融したはんだ粒子が、隣接する電極間の中央あたりに、比較的小さい球状塊となって溶融したはんだが残存してしまう場合があることがわかった。
【0008】
本発明者らの知見によると、加熱溶融時に隣接電極間に残存してしまうはんだの球状塊が隣接する電極間での絶縁信頼性を悪化させている原因であり、はんだが溶融して球状塊を形成しだす際に、隣接する電極の間に残存してしまう比較的小さい球状塊をなくすことで、対向する電極間での接続信頼性と隣接する電極間での絶縁信頼性とを両立できると考えられる。そして、本発明者らは、はんだ粒子の分散媒(樹脂成分)を撹拌できるような手段が存在すれば、隣接する電極間の中央付近に存在するはんだの球状塊を移動させて電極に濡らすことができ、隣接電極間に残存してしまうはんだを低減できるとの考えに至った。
【0009】
さらに本発明者らが検討を続けたところ、異方導電性接続材を加熱した際に気泡を発生させ、この気泡が移動する力を使えば、組成物中に分散している溶融はんだ塊を動かすことができるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づくものである。即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] (A)バインダー成分と、前記(A)バインダー成分に分散した(B)はんだ粒子と、を含む異方導電性接続材であって、
前記(A)バインダー成分は、(A1)熱可塑性樹脂と、(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物と、(A3)重合開始剤と、(A4)大気圧下において加熱した際に気体を発生し得る化合物と、を含んでなる、異方導電性接続材。
[2] 前記(A2)化合物の重合性官能基が、(メタ)アクリロイル基である、[1]に記載の異方導電性接続材。
[3] 前記(A4)化合物が、前記(B)はんだ粒子の融点以上の温度に加熱した際に気体を発生し得る化合物である、[1]または[2]に記載の異方導電性接続材。
[4] 前記(B)はんだ粒子の融点が、260℃以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の異方導電性接続材。
[5] 前記(B)はんだ粒子は、平均粒子径1~100μmを有する、[1]~[4]のいずれかに記載の異方導電性接続材。
[6] 前記(A4)化合物から発生する気体が、二酸化炭素、酸素、水素、および窒素からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[5]のいずれに記載の異方導電性接続材。
[7] [1]~[6]のいずれか一項に記載の異方導電性接続材を用いた、電子部品の実装方法であって、
所定間隔を有して複数の電極が配置された回路基板上に、前記異方導電性接続材を塗布し、
前記回路基板の電極と前記電子部品の電極とが対向する位置となるように、前記電子部品を、塗布された前記異方導電性接続材を介して前記回路基板上に載置し、
電子部品が載置された状態で前記回路基板を、はんだ粒子の融点以上の温度に加熱してはんだ粒子を溶融させ、はんだを両電極に濡らし、
冷却してはんだを固化させ、さらに前記(A2)化合物が重合することにより、前記回路基板上に前記電子部品が固定される、電子部品の実装方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の異方導電性接続材によれば、大気圧下において加熱した際に気体を発生し得る化合物を含むことにより、隣接する電極の間に残存してしまう比較的小さい球状塊の数を低減することができる。その結果、本発明の異方導電性接続材によれば、隣接する電極がファインピッチの配線基板にも、電気的接続信頼性と絶縁信頼性に優れた素子実装が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の異方導電性接続材は、(A)バインダー成分と、前記(A)バインダー成分に分散した(B)はんだ粒子とを含むものであり、異方導電性接続材自体は絶縁性であるが、対向する電極間に異方導電性接続材を適用すると、対向電極間は電気的な接続が行われ、隣接する電極間は絶縁性が維持される性質を有するものである。以下、本発明の異方導電性接続材を構成する各成分について詳細に説明する。
【0012】
<(A)バインダー成分>
(B)はんだ粒子を分散させる(A)バインダー成分は、(A1)熱可塑性樹脂と、(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物と、(A3)重合開始剤と、(A4)大気圧下において加熱した際に気体を発生し得る化合物とを必須成分として含む。
上記特許文献2に記載されているような、はんだ粒子が電極に自己集合するようなタイプの異方性導電材料は、導電材料(はんだ粒子等)と、そのバインダーとしてエポキシ等の熱硬化性樹脂とを含むものであった。これは、塗布性を考慮すると異方性導電材料が常温では液体状ないしペースト状である必要があり、導電材料が溶融する温度まで加熱した際には、バインダーが、溶融した導電材料がバインダー中で移動できる程度の粘度を有し、かつ冷却した際にはバインダーが固化しなければならず、その機能を有するバインダー材料としてエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が好適であるからである。そして、溶融した導電材料は、界面エネルギーが極小となるように球状塊となってバインダー中で自己集合し、電極を濡らすものと考えられている。
そのため、対向電極間距離に比べて隣接電極間距離が十分に大きい場合は、隣接電極間に溶融したはんだの球状塊がたとえ残存していても、隣接電極間で直ちに短絡(ショート)が発生することは生じない。しかしながら、隣接電極間距離が小さくなればなるほど、残存するはんだの球状塊が原因で短絡(ショート)が発生し易くなると考えられる。
そこで、本発明においては、(A)バインダー成分中に、(A4)大気圧下において加熱した際に気体を発生し得る化合物を添加しておき、(B)はんだ粒子が溶融する際に異方導電性接続材中に気泡を発生させ、その気泡が異方導電性接続材中を移動する力を利用して、(A)バインダー成分を撹拌し、はんだの球状塊が対向電極間に留まらないようにしたものである。その結果、隣接する電極間の中央付近に残存していた溶融はんだの球状塊を気泡により電極付近まで移動させることができ、隣接電極間に残存してしまうはんだを低減できる。以下、(A)バインダー成分を構成する成分について詳述する。
【0013】
[(A1)熱可塑性樹脂]
本発明の異方導電性接続材は、(A)バインダー成分として(A1)熱可塑性樹脂を含む。(A1)熱可塑性樹脂は、(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物に溶解し得るものであれば特に限定されることはなく従来公知の種々の樹脂を使用することができる。(A1)熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリル酸共重合体が挙げられる。これらの(A1)熱可塑性樹脂は、飽和物であってもよく、不飽和物であってもよい。また、これらの(A1)熱可塑性樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0014】
これらの(A1)熱可塑性樹脂の中でも、得られる異方導電性接続材の接着強度の観点から、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。一方、得られる異方導電性接続材における耐湿性(特に、耐湿熱試験後の接着強度)の観点からは、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体の水添物が好ましい。
【0015】
また、(A1)熱可塑性樹脂は、室温(25℃)、大気圧において固形のものを用いるのが好ましい。
【0016】
(A1)熱可塑性樹脂は、異方導電性接続材の接着強度の観点から、重量平均分子量が5,000以上であることが好ましく5,000~60,000であることがより好ましい。分子量が高すぎると、後記する(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物と相溶しにくくなり、異方導電性接続材の流動性が悪くなる傾向にある。なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)の値は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法(GPC)法(ポリスチレン標準)により測定された値を意味する。
【0017】
<(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物>
(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物は、異方導電性接続材を調製する際に上記した(A1)熱可塑性樹脂を溶解させる溶媒として機能するとともに、重合反応後は固化することで、異方導電性接続材の接着強度を向上させる機能を有する。(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物は重合しても架橋構造を形成しないため、多官能基を有する化合物を重合したときのように溶融粘度が急激に上昇してしまうことがない。すなわち、異方導電性接続材を加熱しても液体状態が維持され、室温まで冷却した際に異方導電性接続材を固化させることができる。そのため、異方導電性接続材を加熱して気泡を発生させた際にも、異方導電性接続材は液体状態が維持されており、気泡や溶融したはんだが(A)バインダー成分中を自由に移動することができる。
【0018】
また、本発明の異方導電性接続材は使用後(即ち、加熱により(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物が重合した後)、樹脂成分が上記した(A1)熱可塑性樹脂および(A2)当該化合物の重合物とから構成されるため、再度の加熱によって樹脂成分を軟化させることが可能となる。そのため、本発明の異方導電性接続材を使用してファインピッチの配線基板に素子実装した際に、仮に素子実装回路基板に不良箇所があったとしても、再度加熱することで、不良箇所の素子を基板から容易に除去することができる。また、素子を除去した後、回路基板に残存する異方導電性接続材を溶剤で容易に除去することができる。なお、本明細書において、不良箇所とは、素子自体の欠陥によって正常に機能しない箇所のみならず、素子自体は正常に機能するが、回路基板の電極と接続不良を生じている箇所や、素子および回路基板の電極との接続も正常であるが、位置がずれている等の素子の配置が良好でない箇所も含む。
【0019】
本発明において重合性官能基とは、(A3)重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性官能基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。これらのなかでも、本発明においては、反応性の観点からは(メタ)アクリロイル基、エポキシ基が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとはアクリルおよびメタクリルの両方を総称する用語として使用するものとする。また、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイルおよびメタクリロイルの両方を総称する用語として使用するものとする。さらに、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびその混合物を総称する用語として使用するものとする。
【0020】
一分子内に(メタ)アクリロイル基を一つ有する化合物としては、置換または非置換の脂肪族アクリレート、脂環族アクリレート、芳香族アクリレートおよびこれらのエチレンオキサイド変性アクリレート等のモノマーや、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、アルキッドアクリレート、メラミンアクリレート、シリコーンアクリレート、ポリブタジエンアクリレート等のオリゴマー、並びにこれらに対応するメタクリレート類などを用いることができる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-(メタ)アクリロキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、イソボルニル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、脂肪族エポキシ変性(メタ)アクリレート等変性(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、γ-(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
また、一分子内にエポキシ基を一つ有する化合物としては、プロピレンオキサイド、2,3-ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシデカン、1,3-ブタジエンモノオキサイド、1,2-エポキシテトラデカン、グリシジルメチルエーテル、1,2-エポキシオクタデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、エチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、tert-ブチルグリシジルエーテル、1,2-エポキシエイコサン、2-(クロロメチル)-1,2-エポキシプロパン、グリシドール、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、ブチルグリシジルエーテル、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシ-9-デカン、2-(クロロメチル)-1,2-エポキシブタン、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-1H,1H,2H,2H,3H,3H-トリフルオロブタン、アリルグリシジルエーテル、テトラシアノエチレンオキサイド、グリシジルブチレート、1,2-エポキシシクロオクタン、1,2-エポキシシクロドデカン、1-メチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロペンタデカン、1,2-エポキシシクロペンタン、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-1H,1H,2H,2H,3H,3H-ヘプタデカフルオロブタン、3,4-エポキシテトラヒドロフラン、グリシジルステアレート、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシコハク酸、グリシジルフェニルエーテル、イソホロンオキサイド、α-ピネンオキサイド、2,3-エポキシノルボルネン、ベンジルグリシジルエーテル、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、3-[2-(パーフルオロヘキシル)エトキシ]-1,2-エポキシプロパン、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-(3-グリシジルオキシプロピル)トリシロキサン、9,10-エポキシ-1,5-シクロドデカジエン、4-tert-ブチル安息香酸グリシジル、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、2-tert-ブチル-2-[2-(4-クロロフェニル)]エチルオキシラン、スチレンオキサイド、グリシジルトリチルエーテル、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-フェニルプリピレンオキサイド、コレステロール-5α,6α-エポキシド、スチルベンオキサイド、p-トルエンスルホン酸グリシジル、3-メチル-3-フェニルグリシド酸エチル、N-プロピル-N-(2,3-エポキシプロピル)ペルフルオロ-n-オクチルスルホンアミド、(2S,3S)-1,2-エポキシ-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-4-フェニルブタン、3-ニトロベンゼンスルホン酸(R)-グリシジル、3-ニトロベンゼンスルホン酸-グリシジル、パルテノリド、N-グリシジルフタルイミド、エンドリン、デイルドリン、4-グリシジルオキシカルバゾール、7,7-ジメチルオクタン酸[オキシラニルメチル]、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
上記した以外の一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物として、以下の化合物も用いることができる。
(1)2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを、2,4-トリレンジイソシアネートを介して液状ポリブタジエンのヒドロキシル基とウレタン付加反応させることにより得られる液状ポリブタジエンウレタン(メタ)アクリレート、
(2)無水マレイン酸を付加したマレイン化ポリブタジエンに、2-ヒドロキシアクリレートをエステル化反応させて得られる液状ポリブタジエンアクリレート、
(3)ポリブタジエンのカルボキシル基と、(メタ)アクリル酸グリシジルとのエポキシエステル化反応により得られる液状ポリブタジエン(メタ)アクリレート、
(4)液状ポリブタジエンにエポキシ化剤を作用させて得られるエポキシ化ポリブタジエンと、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により得られる液状ポリブタジエン(メタ)アクリレート、
(5)ヒドロキシル基を有する液状ポリブタジエンと、(メタ)アクリル酸クロリドとの脱塩素反応によって得られる液状ポリブタジエン(メタ)アクリレート、および、
(6)分子両末端にヒドロキシル基を有する液状ポリブタジエンの二重結合を水素添加した液状水素化1,2ポリブタジエングリコールを、ウレタン(メタ)アクリレート変成した液状水素化1,2ポリブタジエン(メタ)アクリレート。
【0024】
上記したアクリレートのなかでも、特に、硬化物の基材密着性の観点からは、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-アクリロイロキシエチルフタル酸、脂肪族ウレタンアクリレートが好ましい。
【0025】
(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物は、異方導電性接続材中に、重合性官能基当量が220以上となるように配合することが好ましい。好ましくは220~1000、より好ましくは220~700、さらに好ましくは230~700、特に好ましくは230~550である。重合性官能基当量を220以上とすることで、重合反応の際に生じる体積収縮が抑えられ、密着強度をより向上することができる。また、重合性官能基当量を1000以下とすることで、十分な反応性を得ることができる。ここで、重合性官能基当量とは、グラム当量で重合性官能基数あたりの質量である。重合性官能基が(メタ)アクリロイル基である場合は一般的に(メタ)アクリル当量とも呼ばれる。例えば、重合性官能基が(メタ)アクリロイル基である場合は、(メタ)アクリロイル基1個あたりの有機成分の質量と定義される。すなわち、重合性官能基当量は、有機成分の質量合計を、異方導電性接続材中の重合性官能基の数で除することにより得ることができる。
【0026】
異方導電性接続材において、(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物の含有割合は、(A1)熱可塑性樹脂と(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物の合計量に対して、10~90質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましい。
【0027】
<(A3)重合開始剤>
(A)バインダー成分中に含まれる(A3)重合開始剤により、上記した(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物を重合させる。(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物をラジカル重合させ得る(A3)重合開始剤としては、公知の無機系過酸化物や有機系過酸化物を使用することができる。
【0028】
無機系過酸化物としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。また、有機系過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドおよびメチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドおよびt-ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;ジイソブチリルパーオキサイド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドおよびm-トルイルベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイドおよび2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキセン、ジ-t-ヘキシルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類;1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチル)シクロヘキサン、1,1-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキサンおよび2,2-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール類;t-ヘキシルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシイソブチレート、ジ-t-ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサネート、t-アミルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエートおよびジブチルペルオキシトリメチルアジペートなどのアルキルパーエステル類;1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオジカーボネート、α-クミルペルオキシネオジカーボネート、t-ブチルペルオキシネオジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルペルオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ビス(1,1-ブチルシクロヘキサオキシジカーボネート)、ジイソプロピルオキシジカーボネート、t-アミルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネートおよび1,6-ビス(t-ブチルペルオキシカルボキシ)ヘキサンなどのパーオキシカーボネート類;1,1-ビス(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサンおよび(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカルボネートなどが挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物をラジカル性の付加重合反応により重合させ得る(A3)重合開始剤の配合量は、(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物100質量部に対して、好ましくは0.1~25質量部、より好ましくは0.5~20質量部、更に好ましくは1~20質量部である。
【0030】
<(A4)大気圧下において加熱した際に気体を発生し得る化合物>
本発明の異方導電性接続材は、(A)バインダー成分として、(A4)大気圧下において加熱した際に気体を発生し得る化合物を含む。上記したように、異方導電性接続材を加熱した際に、溶融したはんだが気泡によりバインダー成分中を移動できれば良く、気体を発生し得る化合物としては、従来公知の無機系発泡剤または有機系発泡剤を使用することができる。なお、加熱により化合物自体が気化(蒸発)する場合も含まれるが、本発明においては、(A4)化合物から発生する気体が、二酸化炭素、酸素、水素、および窒素からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。このような化合物としては、以下の無機系発泡剤または有機系発泡剤を例示することができる。
【0031】
無機系発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
有機系発泡剤としては、アゾ化合物、ヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、セミカルバジド化合物、ヒドラゾ化合物、テトラゾール化合物、トリアジン化合物、エステル化合物、ヒドラゾン化合物、およびジアジノン化合物から選ばれる1種以上であることが好ましい。アゾ化合物、ヒドラジド化合物およびテトラゾール化合物等が挙げられる。
【0033】
上記した発泡剤なかでも、大気圧下で100~260℃に加熱した際に気体を発生し得る化合物をより好適に使用することができる。アゾ化合物としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロジニトリル(AIBN)、アゾジカルボン酸バリウム(Ba-ADC)が挙げられる。ヒドラジド化合物としては、例えば、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、p-トルエンスルホニルヒドラジドが挙げられる。ニトロソ化合物としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)が挙げられる。セミカルバジド化合物としては、例えば、p-トルエンスルホニルセミカルバジド(TSSC)が挙げられる。ヒドラゾ化合物としては、例えば、ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)が挙げられる。テトラゾール化合物としては、例えば、ビステトラゾール・ジアンモニウム、ビステトラゾール・ピペラジン、ビステトラゾール・ジアグアニジン、5-フェニールテトラゾール、アゾビステトラゾール・ブアニジン、アゾビステトラゾールジアミノグアニジンが挙げられる。トリアジン化合物としては、例えば、トリヒドラジノトリアジン(THT)が挙げられる。エステル化合物としては、例えば、ヒドラゾカルボン酸エステル(HDC-ESTER)、アゾジカルボン酸エステル(ADC-ESTER)、クエン酸エステルが挙げられる。ヒドラゾン化合物としては、例えば、スルホニルヒドラジドが挙げられる。ジアジノン化合物としては、例えば、5-フェニル-3,6-ジヒドロ-1,3,4-オキシジアジン-2オンが挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
異方導電性接続材中の(A4)大気圧下において加熱した際に気体を発生し得る化合物の配合割合は、(A1)熱可塑性樹脂と(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物の合計量に対して、0.0001~10質量%であることが好ましく、0.0005~5質量%であることがより好ましい。
【0035】
なお、(A4)大気圧下において加熱した際に気体を発生し得る化合物を含む異方導電性接続材において、気体が発生し得るかについての確認は、例えば、表面が平坦なガラス基板上に異方導電性接続材を塗布して塗布膜を形成し、塗布膜上にスライドガラスを重ねた積層構造としておき、加熱前にスライドガラス側から塗布膜を光学顕微鏡等により観察した際に気泡がないことを確認しておき、当該積層構造としたガラス基板を260℃に加熱したホットプレートに載せ、スライドガラス側から光学顕微鏡等により塗布膜を観察することで、気泡の発生の有無を確認することができる。
【0036】
<(B)はんだ粒子>
本発明の異方導電性接続材は、(B)はんだ粒子を含む。(B)はんだ粒子を含有することにより、配線基板と電子素子等の電気的接続を行うことができる。
【0037】
(B)はんだ粒子としては、特に制限なく従来公知のはんだ粒子を使用することができるが、本発明においては、低融点はんだ粒子がより好ましく、Sn-Pb系、Sn-Bi系の低融点はんだ粒子がより好ましい。なお、低融点はんだ粒子とは、融点が200℃以下、好ましくは170℃以下、より好ましくは150℃以下のはんだ粒子を意味する。
【0038】
また、低融点はんだ粒子としては鉛を含まないはんだ粒子が好ましく、この鉛を含まないはんだ粒子とは、鉛含有率についてJIS Z 3282:2017(はんだ-化学成分および形状)で規定されている、鉛含有率0.10質量%以下のはんだ粒子を意味する。
【0039】
鉛を含まないはんだ粒子としては、錫、ビスマス、インジウム、銅、銀、アンチモンから選択される少なくとも1種類以上の金属から構成される低融点はんだ粒子が好適に用いられる。特に、コスト、取り扱い性、接合強度のバランスの観点から、錫(Sn)とビスマス(Bi)との合金が好ましく用いられる。
【0040】
このような低融点はんだ粒子中のBiの含有割合は、15~65質量%、好ましくは35~65質量%、より好ましくは55~60質量%の範囲で適宜選択される。
【0041】
Biの含有割合を15質量%以上とすることにより、その合金は約160℃で溶融を開始する。さらにBiの含有割合を増加させると溶融開始温度は低下していき、20質量%以上で溶融開始温度が139℃となり、58質量%で共晶組成となる。したがって、Biの含有割合を15~65質量%の範囲とすることにより、低融点化効果が十分に得られる結果、低温であっても十分な導通接続が得られる。
【0042】
(B)はんだ粒子は、球状であることが好ましい。ここで、球状のはんだ粒子とは、はんだ粒子の形状が確認できる倍率において、球状粉の長径と短径の比が1~1.5のものを90%以上含むものをいう。
【0043】
また、(B)はんだ粒子は、平均粒子径が1~100μmであることが好ましく、2~80μmであることがより好ましく、3~60μmであることがさらに好ましい。なお、本明細書において平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分計を用いて測定されたメディアン径(D50)をいう。
【0044】
また、(B)はんだ粒子の酸素量は30~2000ppmであることが好ましく、70~1400ppmであることがより好ましく、100~1000ppmであることがさらに好ましい。
【0045】
異方導電性接続材中の(B)はんだ粒子の配合量は、固形分換算で異方導電性接続材の総量に対して5~90質量%であることが好ましく、5~80質量%であることがより好ましく、特に8~70質量%の範囲であることが好ましい。(B)はんだ粒子の配合量を5質量%以上とすることにより、十分な導通接続を確保することができる。また、導電粉末の配合量を90質量%以下とすることにより、十分な密着性を確保することができる。
【0046】
異方導電性接続材には、(B)はんだ粒子とともに、フラックスが含まれていてもよい。フラックスとしては、例えば、塩化亜鉛、塩化亜鉛と無機ハロゲン化物との混合物、塩化亜鉛と無機酸との混合物、溶融塩、リン酸、リン酸の誘導体、有機ハロゲン化物、ヒドラジン、アジピン酸等の有機酸、松脂等が挙げられる。これらフラックスは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
異方導電性接続材中のフラックスの含有量は、(B)はんだ粒子の配合量に対して1~30質量%であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましい。フラックスの含有量が上記範囲内である異方導電性接続材とすることにより、導通接続性をより一層向上させることができる。
【0048】
また、異方導電性接続材には、フラックスの活性度を調整するために、塩基性有機化合物が含まれていてもよい。塩基性有機化合物としては、塩酸アニリンおよび塩酸ヒドラジン等が挙げられる。
【0049】
さらに、異方導電性接続材には、硬化させた際の物理的強度等を上げるために、必要に応じてフィラーを配合することができる。フィラーとしては、公知の無機または有機フィラーが使用できるが、特に、硫酸バリウム、球状シリカ、ハイドロタルサイトおよびタルクが好ましく用いられる。また、難燃性を得るために金属酸化物や水酸化アルミ等の金属水酸化物を体質顔料フィラーとして使用することができる。
【0050】
また、フィラーを配合する場合は、異方導電性接続材中での分散性を高めるために、フィラーは表面処理されたものであってもよい。表面処理がされているフィラーを使用することで、凝集を抑制することができる。表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよいが、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等で無機フィラーの表面を処理することが好ましい。
【0051】
カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコアルミネート系等のカップリング剤が使用できる。これらのなかでも、シラン系カップリング剤が好ましい。かかるシラン系カップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(2-アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
<その他の成分>
本発明の異方導電性接続材は、上記成分に加えて、必要に応じて、湿潤分散剤や消泡剤、チクソトロピー性付与剤などの添加剤を配合することができる。
【0053】
湿潤分散剤としては、公知慣用のものを使用でき、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸塩、高級アルコール硫酸エステル、アルキルスルホン酸、リン酸エステル、ポリエーテル、ポリエステルカルボン酸やこれらの塩類を用いることができる。これらのなかでもリン酸エステルが好ましい。上記の湿潤分散剤は1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。湿潤分散剤が含まれることにより、導電性粒子の分散が良好となり凝集による粗粒の発生を防止することができる。
【0054】
湿潤分散剤の配合量は、導電性粒子の分散性や塗膜特性を両立させる観点から、固形分換算で異方導電性接続材の総量に対して0.01~5質量%であることが好ましく、0.05~3質量%であることがより好ましく、0.1~2質量%であることがさらに好ましい。
【0055】
消泡剤としては、公知慣用のものを使用でき、例えば、シリコン樹脂、変性シリコン樹脂、有機高分子ポリマー、有機オリゴマーなど用いることができる。これらのなかでも有機高分子ポリマーや有機オリゴマーが好ましい。上記した消泡剤は1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。消泡剤が含まれることにより、発生した気泡を消泡することができるため、(A)バインダー成分が固化した際に、ボイドとして(A)バインダー成分中に気泡が残存するのを低減することができる。
【0056】
消泡剤の配合量は、ボイド抑制や密着性の観点から、固形分換算で異方導電性接続材の総量に対して0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましく、0.5~3質量%であることがさらに好ましい。
【0057】
チクソトロピー性付与剤としては、公知慣用のものを使用でき、例えば、ベントナイト、ワックス、ステアリン酸金属塩、変性ウレアなどを用いることができる。これらチクソトロピー性付与剤は、1種または2種以上混合して使用することができる。チクソトロピー性付与剤が含まれることにより、比重の高い導電性粒子の沈降を防止することができる。
【0058】
なお、本発明の異方導電性接続材は溶剤を含んでいてもよい。異方導電性接続材に溶剤が含まれる場合は、溶剤の含有量は、異方導電性接続材中の固形分量に対して5質量%以下であることが好ましい。なお、本明細書において「溶剤」とは、上記した(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物以外のものをいい、例えば、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、酢酸エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などである。
【0059】
本発明の異方導電性接続材は、上述した各成分を所定の配合割合にて配合撹拌し、公知慣用の方法にて製造することができる。特に本発明では、真空攪拌処理を施すこともできる。真空攪拌処理によって、異方導電性接続材が減圧脱泡されるため、加熱する前の状態において異方導電性接続材中の気泡、水および低沸点の不純物を除去することができ、異方導電性接続材を塗布して形成した塗布膜表面を平滑にすることができる。
【0060】
本発明の異方導電性接続材は、電子部品における部材同士の電気的接続に用いることができる。例えば、プリント配線板と電子素子との電気的接続やプリント配線板間の電気的接続に用いることができ、特にCOG実装やFOG実装といった複数の電極を一括して電気的接続を行う用途に好適に使用することができる。なかでも、隣接する電極間隔がファインピッチの配線基板に複数の素子を実装して一括して電気的接続を行う用途に好適に使用することができる。
【0061】
例えば、所定間隔を有して複数の電極が配置された回路基板上に、上記した異方導電性接続材を塗布し、
前記回路基板の電極と前記電子部品の電極とが対向する位置となるように、電子部品を、塗布された前記異方導電性接続材を介して前記回路基板上に載置し、
電子部品が載置された状態で前記回路基板を、(B)はんだ粒子の融点以上の温度に加熱して(B)はんだ粒子を溶融させ、はんだを両電極に濡らし、
冷却してはんだを固化させ、さらに(A2)化合物が重合することにより、回路基板上に前記電子部品が固定される。
【実施例0062】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0063】
[実施例1]
<異方導電性接続材の調製>
不飽和ポリエステル樹脂(バイロン337、分子量:10,000、東洋紡績株式会社製)15質量部を、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート30質量部に溶解させた溶液を調製し、当該溶液に、p、p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(以下、OBSHともいう。分解温度150~160℃、発生ガス:窒素)2.0質量部、アジピン酸8.5質量部を配合し、撹拌機にて予備混合した後、3本ロールミルを用いて室温にて混合し分散させて樹脂組成物を得た。
続いて、得られた樹脂組成物55.5質量部に対し、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド(パーヘキシルD、日油株式会社製)0.5質量部、および低融点はんだ粒子1(42Sn-58Bi組成の球状粒子、Type10-25、平均粒子径20.0μm、融点139℃、酸素量150ppm)44質量部を配合し、撹拌機(FBLh600M、東京硝子器械株式会社)を用いて400rpmで3分間混合することで異方導電性接続材1を調製した。
【0064】
[実施例2~9および比較例1~2]
下記表1に示す組成に従って配合した以外は、実施例1と同様にして異方導電性接続材2~11を得た。なお、表1中の数値は質量部を表す。また、表1に示した各成分の詳細は下記のとおりである。
・低融点はんだ粒子2(42Sn-58Bi組成の球状粒子、DS10、平均粒子径13.1μm、融点139℃、酸素量250ppm)
・低融点はんだ粒子3(42Sn-58Bi組成の球状粒子、STC-5、平均粒子径6.0μm、融点139℃、酸素量500ppm)
・低融点はんだ粒子4(42Sn-58Bi組成の球状粒子、STC-3、平均粒子径4.5μm、融点139℃、酸素量700ppm)
・炭酸水素ナトリウム(分解温度140~170℃、発生ガス:二酸化炭素)
【0065】
<評価基板1:LEDチップ小搭載基板の作製>
得られた各異方導電性接続材を、電極面積:50μm×50μm、電極間距離:40μm、電極高さ:8μm、電極表面:フラッシュAuめっき処理の電極PADを配置したリジット基板(基材:FR-4)上に、メタルマスク(マスク厚:50μm、開口:130μm×50μm)を介してスクレイパーにより厚みが40μmになるように塗布した。
続いて、塗布後の異方導電性接続材上に、チップ搭載機(ACT-1000、アクテス京三株式会社製)を用いて、LEDチップ小(チップサイズ:125μm×75μm、電極面積:30μm×50μm、電極間距離:40μm、電極高さ:3μm、順方向電圧:2.5V)をLEDチップの電極とリジット基板上の電極が重なり合うように配置した。
その後、LEDチップ小を搭載したリジット基板をホットプレート(加熱温度:180℃、デジタルホットプレートND-2A)に載せ、リジット基板側から180℃、20分間の加熱を行い、LEDチップ小搭載リジット基板(評価基板1)を作製した。この評価基板1を各異方導電性接続材1種類に対して10個ずつ作製した。
【0066】
<評価基板2:LEDチップ大搭載基板の作製>
得られた各異方導電性接続材を、電極面積:200μm×200μm、電極間距離:130μm、電極高さ:8μm、電極表面:フラッシュAuめっき処理の電極PADを配置したリジット基板(基材:FR-4)上に、メタルマスク(マスク厚:100μm、開口:400μm×200μm)を介してスクレイパーにより厚みが80μmになるように塗布した。
続いて、塗布後の異方導電性接続材上に、チップ搭載機(ACT-1000、アクテス京三株式会社製)を用いて、LEDチップ大(チップサイズ:380μm×200μm、電極面積:80μm×130μm、電極間距離:150μm、電極高さ:3μm、順方向電圧:3.0V)をLEDチップの電極とリジット基板上の電極が重なり合うように配置した。
その後、LEDチップ大を搭載したリジット基板をホットプレート(加熱温度:180℃、デジタルホットプレートND-2A)に載せ、リジット基板側から180℃、20分間の加熱を行い、LEDチップ大搭載リジット基板(評価基板2)を作製した。この評価基板2を各異方導電性接続材1種類に対して10個ずつ作製した。
【0067】
<異方導電性接続材の評価(LED点灯評価)>
異方導電性接続材(LED点灯評価)の評価を以下のような方法で行った。上記にようにして作製した各評価基板1および2の電極部分に、7011DCシグナルソース(日置電機)を用いて、順方向電圧(評価基板1=2.5V、評価基板2=3.0V)を印加し、LEDの点灯可否を確認した。LEDの点灯可否を以下の基準で評価した。
〇:評価基板10個のLEDが全て点灯
×:評価基板10個のLEDのうち、1個以上が不点灯
評価結果は下記表1に示されるとおりであった。なお、表中の「-」は、異方導電性接続材をリジッド基板上に塗布できなかったため、LED点灯評価を行っていないことを意味する。
【0068】
【0069】
表1の評価結果からも明らかなように、(A)バインダー成分として(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物および(A4)大気圧下において加熱した際に気体を発生し得る化合物の両方が含まれる異方導電性接続材(実施例1~9)は、(A2)一分子内に重合性官能基を一つ有する化合物または(A4)大気圧下において加熱した際に気体を発生し得る化合物のいずれか一方しか含まない異方導電性接続材(比較例1~2)と比べて、電気的接続信頼性と絶縁信頼性が優れているこがわかる。