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特開2022-59762シャトルコック用人工羽根およびバトミントン用シャトルコック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022059762
(43)【公開日】2022-04-14
(54)【発明の名称】シャトルコック用人工羽根およびバトミントン用シャトルコック
(51)【国際特許分類】
   A63B 67/187 20160101AFI20220407BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20220407BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
A63B67/187
B29C45/00
B29C44/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167562
(22)【出願日】2020-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】郷司 翔
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 建彦
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一喜
【テーマコード(参考)】
4F206
4F214
【Fターム(参考)】
4F206AB02
4F206AG20
4F206AH59
4F206JA04
4F206JF04
4F214AB02
4F214AG20
4F214AH59
4F214UA08
4F214UB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軽量で剛性の高い羽軸を有するシャトルコック用人工羽根、および、これを備えるバトミントン用シャトルコックを提供する。
【解決手段】本発明のシャトルコック用人工羽根は、羽部3と前記羽部3に固着された羽軸部5とを有し、前記羽軸部5は、多数の細孔を有する芯部領域と、前記芯部領域を被覆する中実構造の外層領域とを有することを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽部と前記羽部に固着された羽軸部とを有し、
前記羽軸部は、多数の細孔を有する芯部領域と、前記芯部領域を被覆する中実構造の外層領域とを有することを特徴とするシャトルコック用人工羽根。
【請求項2】
羽軸の軸方向の全域にわたって、前記芯部領域と、前記芯部領域を被覆する外層領域とを有する請求項1に記載のシャトルコック用人工羽根。
【請求項3】
前記羽軸部は、羽部に固着される羽固着部、シャトルコックに挿入される根元部と、前記羽固着部と根元部との間に位置する中間部とを有し、前記羽固着部の密度D1が、根元部の密度D2よりも小さい請求項1または2に記載のシャトルコック用人工羽根。
【請求項4】
前記羽軸部の先端の上下方向の高さH1は、羽軸部の末端の上下方向の高さH2よりも低い請求項1~3のいずれか一項に記載のシャトルコック用人工羽根。
【請求項5】
前記外層領域の曲げ弾性率は、1.5GPa~12GPaである請求項1~4のいずれか一項に記載のシャトルコック用人工羽根。
【請求項6】
前記外層領域の厚みは、0.05mm~0.60mmである請求項1~5のいずれか一項に記載のシャトルコック用人工羽根。
【請求項7】
前記羽軸部全体の密度が、0.52g/cm~1.00g/cmである請求項1~6のいずれか一項に記載のシャトルコック用人工羽根。
【請求項8】
羽軸部を構成する羽軸用樹脂組成物の発泡成形体の曲げ弾性率(GPa)と厚み(mm)の積が、4.0以上である請求項1~7のいずれか一項に記載のシャトルコック用人工羽根。
【請求項9】
前記発泡成形体の密度が、0.52g/cm~1.00g/cmである請求項8に記載のシャトルコック用人工羽根。
【請求項10】
半球状のベース部と、前記ベース部に設けられた請求項1~9のいずれか一項に記載のシャトルコック用人工羽根とを有することを特徴とするバトミントン用シャトルコック。
【請求項11】
羽軸用樹脂組成物を溶融混錬する工程、
溶融した羽軸用樹脂組成物に超臨界流体からなる発泡剤を導入して、溶融混錬物を作製する工程、
前記溶融混錬物を金型内に射出する工程、
前記発泡剤の圧力および温度の少なくとも一方を、前記発泡剤の臨界点を下回るまで下げて前記樹脂組成物を発泡させて、羽軸部を作製する工程と、
前記羽軸部と羽部とを固着させる工程を含むことを特徴とするシャトルコック用人工羽根の製造方法。
【請求項12】
コアバック法により、前記発泡剤の臨界点を下回るまで下げる請求項11に記載のシャトルコック用人工羽根の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法により羽軸用樹脂組成物から発泡成形体を成形したときに、前記発泡成形体の曲げ弾性率(GPa)と厚み(mm)の積が4.0以上であって、密度が1.00g/cm以下となるコアバック成形条件と同一条件により羽軸部を作製する請求項12に記載のシャトルコック用人工羽根の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャトルコック用人工羽根およびこれを用いたバトミントン用シャトルコックに関するものであり、より詳しくは、バドミントン用シャトルコックの羽軸部を改良する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バドミントンシャトルは、一般に水鳥等から採った天然の羽根16枚を、表面にゴム製のカバーが貼られたコルクやウレタン製の台に挿し込んで接着剤で固定し、羽根同士を糸で連結したものが主流となっている。天然羽根は、比重が小さく、極めて軽量である。また、天然羽根の羽軸は、剛性が高く、高反発である。このため、天然羽根を使用したバドミントンシャトルは、独特の飛行性能と心地よい打球感が得られる。
【0003】
しかし、天然羽根は、高価で供給源が不安定であり、性能にばらつきもある。よって、天然羽根に近い特性を持たせた人工羽根の開発が進められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、羽弁部と、熱膨張性マイクロカプセルを1~10%の重量割合で混合した樹脂ペレットが射出成形されてなる羽軸部とから構成され、該羽軸部が、発泡構造をなす芯部と、該芯部の側表面を覆う表層部とからなる人工羽根が開示されている。また、前記熱膨張性マイクロカプセルは、脂肪族炭化水素類等からなる膨張剤が、膜厚2~15μm程度の熱可塑性高分子樹脂からなる外殻で包まれたものであることが開示されている。
【0005】
特許文献2には、羽軸と羽弁を備えるバドミントンシャトル用人工羽根であって、前記羽軸が芯部と被覆層とからなる構造であり、前記被覆層がポリプロピレンから形成され、前記芯部がポリウレタン発泡材料から形成されるバドミントンシャトル用人工羽根が開示されている。また、前記羽軸の作製方法として、まず、ポリプロピレンから直径1.5mm未満、壁厚約0.2mmの中空細管(被覆層)を作製し、続いてこの細管の内腔にポリウレタン材料を注入し発泡させ、芯部を作製することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-073782号公報
【特許文献2】中国特許出願公開公報101491730
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、軽量で剛性の高い羽軸を有するシャトルコック用人工羽根、および、これを備えるバトミントン用シャトルコックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決することができた本発明のシャトルコック用人工羽根は、羽部と前記羽部に固着された羽軸部とを有し、前記羽軸部は、多数の細孔を有する芯部領域と、前記芯部領域を被覆する中実構造の外層領域とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明のシャトルコック用人工羽根の羽軸部は、多数の細孔を有する芯部領域と、前記芯部領域を被覆する中実構造の外層領域とを有することを特徴とする。外層領域が中実構造であり、外層領域に被覆された細孔を有する芯部領域を有することで、天然羽根の羽軸に近い構造となり、軽量で剛性が高いシャトルコック用人工羽根が得られる。
【0010】
本発明には、シャトルコック用人工羽根の製造方法も含まれる。本発明のシャトルコック用人工羽根の製造方法は、羽軸用樹脂組成物を溶融混錬する工程、溶融した羽軸用樹脂組成物に超臨界流体からなる発泡剤を導入して、溶融混錬物を作製する工程、前記溶融混錬物を金型内に射出する工程、前記発泡剤の圧力および温度の少なくとも一方を、前記発泡剤の臨界点を下回るまで下げて前記樹脂組成物を発泡させて、羽軸部を作製する工程と、前記羽軸部と羽部とを固着させる工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軽量で剛性の高い羽軸を有するシャトルコック用人工羽根、および、これを用いたバトミントン用シャトルコックが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のバドミントン用シャトルコック用人工羽根の一例の斜視図である。
図2】本発明のバドミントン用シャトルコック用人工羽根の一例の説明図である。
図3】本発明の人工羽根の羽軸部の一例の断面図である。
図4】本発明の人工羽根の羽軸部の一例を説明する説明図である。
図5】本発明の人工羽根の羽軸部の一例を説明する説明図である。
図6】本発明のバドミントン用シャトルコックの一例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のシャトルコック用人工羽根は、羽部と前記羽部に固着された羽軸部とを有し、前記羽軸部は、多数の細孔を有する芯部領域と、前記芯部領域を被覆する中実構造の外層領域とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明のシャトルコック用人工羽根において、羽部は平面状であり、天然羽根の羽弁の形状を模した形状を有する。本発明のシャトルコック用人工羽根において、羽部の平面に対する法線方向を上下方向とし、前記上下方向と羽軸方向とに直交する方向は、幅方向とする。なお、羽軸部の上下方向は、羽部の平面を基準とした表裏方向と称する場合がある。
【0015】
前記羽軸部は、先端と末端とを有する。羽軸部の先端側は、羽部に固着される。羽軸部の末端側は、シャトルコックのベース部に埋め込まれる。前記羽軸部は、羽部に固着される羽固着部と、シャトルコックのベース部に埋め込まれる根元部と、羽固着部と根元部との間に位置する中間部とを有する。
【0016】
前記羽軸部の軸方向に垂直な断面の形状は、特に限定されないが、円形状、略円形状、楕円形状、略楕円形状、多角形状などが挙げられる。これらの中でも、多角形状であることが好ましく、矩形であることがより好ましい。
【0017】
羽軸部は、羽軸方向に垂直な断面において、中心部に多数の細孔を有する芯部が存在し、その上下、左右の周囲に中実構造の外層領域が設けられている。
【0018】
羽軸部と羽部との固着態様としては、例えば、羽軸部の下面と羽部の表面とを固着する態様、羽軸部の上面と羽部の裏面とを固着する態様、羽部を2枚のシートで構成し、2枚の羽部が羽固着部を挟み込む態様などを挙げることができる。本発明では、羽軸部の下面と羽部の表面とを固着することが好ましい。
【0019】
羽軸部は、羽軸部の軸方向の全域にわたって(羽軸部の先端から末端の全長にわたって)、多数の細孔を有する芯部領域と、前記芯部領域を被覆する中実構造の外層領域とを有することが好ましい。
【0020】
前記外層領域の曲げ弾性率は、1.5GPa以上であることが好ましく、3GPa以上であることがより好ましく、4.5GPa以上であることがさらに好ましく、12GPa以下であることが好ましく、11GPa以下であることがより好ましく、10GPa以下であることがさらに好ましい。外層領域の曲げ弾性率が前記範囲内であれば、羽軸部の剛性が高くなるとともに、耐久性が向上するからである。
【0021】
前記外層領域の厚みは、0.05mm以上が好ましく、0.10mm以上がより好ましく、0.15mm以上がさらに好ましく、0.60mm以下が好ましく、0.50mm以下がより好ましく、0.40mm以下がさらに好ましい。
【0022】
前記羽軸部の長さは、67mm以上が好ましく、70mm以上がより好ましく、85mm以下であることが好ましく、82mm以下がより好ましく、80mm以下がさらに好ましく、76mm以下が特に好ましい。なお、シャトルコックのベース部から人工羽根の先端までの長さは、競技規則により62mm~70mmの範囲である。
【0023】
羽軸部の根元部(ベース部に挿入する部分)の長さは、特に限定されないが、5mm以上が好ましく、6mm以上がより好ましく、15mm以下が好ましく、13mmがより好ましい。
【0024】
羽固着部の長さは、羽軸部の先端から35mm以上であることが好ましく、36mm以上であることがより好ましく、41mm以内であることが好ましく、42mm以内であることが好ましい。
【0025】
羽軸部の幅は、特に限定されないが、例えば、先端から末端まで徐々に広くなるテーパー状の態様、先端から末端まで一定である態様、あるいは、先端から羽軸の根元部まではテーパー状であり、根元部の幅が一定である態様などを挙げることができる。
【0026】
羽軸部の上下方向の高さは、特に限定されないが、例えば、先端から末端まで徐々に高くなる態様、先端から末端まで一定である態様、あるいは、先端から羽軸の根元部まで徐々に高くなり、根元部の高さが一定である態様などを挙げることができる。
【0027】
羽軸部の先端の高さH1は、1.2mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、1.8mm以上がさらに好ましく、2.8mm以下が好ましく、2.6mm以下がより好ましく、2.4mm以下がさらに好ましい。
【0028】
羽軸部の先端の幅W1は、0.6mm以上が好ましく、0.8mm以上がより好ましく、1.0mm以上がさらに好ましく、2mm以下が好ましく、1.8mm以下がより好ましく、1.5mm以下がさらに好ましい。
【0029】
羽軸部の末端の高さH2は、1.6mm以上が好ましく、1.8mm以上がより好ましく、2mm以上がさらに好ましく、3.5mm以下が好ましく、3.3mm以下がより好ましく、3mm以下がさらに好ましい。
【0030】
羽軸部の末端の幅W2は、1mm以上が好ましく、1.2mm以上がより好ましく、1.4mm以上がさらに好ましく、2.4mm以下が好ましく、2.2mm以下がより好ましく、2.0mm以下がさらに好ましい。
【0031】
羽部には、羽軸部の下面側が固着されることが好ましい。羽軸部の下面には傾斜面が設けられていることが好ましい。すなわち、羽軸部の上面と下面との距離が、先端から末端に向かって徐々に長くなるように、羽軸部の下面が、上面に対して勾配を有することが好ましい。前記傾斜面は、羽軸部の先端から末端まで設けられていてもよいし、羽軸部の先端から羽軸部の任意の地点まで設けられていてもよい。例えば、傾斜面は、羽軸部の先端から根元部まで設けられていることが好ましい。
【0032】
本発明の好ましい態様では、羽軸の先端の上下方向の高さH1は、末端の上下方向の高さH2よりも短いことが好ましい。羽軸部の空気抵抗を小さくすることができる。
【0033】
羽軸部の芯部領域は、多数の細孔を有する。多数の細孔は、独立細孔または連続細孔のいずれであってもよいが、独立細孔であることが好ましい。多数の細孔は、発泡法により形成されることが好ましい。前記細孔の細孔径は、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。
【0034】
芯部領域の厚みは、特に限定されないが、1.0mm以上が好ましく、1.2mm以上がより好ましく、1.4mm以上がさらに好ましく、2.4mm以下が好ましく、2.2mm以下がより好ましく、2.0mm以下がさらに好ましい。
【0035】
羽軸部の密度は、0.52g/cm以上であることが好ましく、0.54g/cm以上であることがより好ましく、0.56g/cm以上であることがさらに好ましく、1.00g/cm以下であることが好ましく、0.90g/cm以下であることがより好ましく、0.85g/cm以下であることがさらに好ましい。羽軸部の密度が0.52g/cm未満であると、強度が低下し、耐久性に優れるバドミントンシャトルコックが得られないおそれがある。一方、羽軸部の密度が1.00g/cmを超えると、得られる羽軸が重くなり、飛行性能および打球感に優れるバドミントンシャトルコックが得られないおそれがある。
【0036】
羽軸部は、羽軸部の軸方向で密度が異なることも好ましい。密度を適宜設定することにより、羽軸部の剛性と軽量化とを最適化することができる。例えば、羽部に固着する羽固着部の密度D1は、根元部の密度D2よりも小さいことが好ましい。羽固着部を軽量化するためである。
【0037】
羽軸部を構成する羽軸用樹脂組成物の発泡成形体の曲げ弾性率は、1.0GPa以上であることが好ましく、1.2GPa以上であることがより好ましく、1.5GPa以上であることがさらに好ましい。羽軸部を構成する羽軸用樹脂組成物の発泡成形体の曲げ弾性率が1.0GPa以上であれば、強度の高い羽軸が得られるからである。
【0038】
羽軸部を構成する羽軸用樹脂組成物の発泡成形体の曲げ弾性率(GPa)と厚み(mm)の積は、4.0以上であることが好ましく、4.2以上であることがより好ましく、4.5以上であることがさらに好ましい。羽軸部を構成する羽軸用樹脂組成物の発泡成形体の曲げ弾性率(GPa)と厚み(mm)の積が4.0以上であれば、強度の高い羽軸部が得られるからである。
【0039】
羽軸部を構成する羽軸用樹脂組成物の発泡成形体の密度は、0.52g/cm以上であることが好ましく、0.54g/cm以上であることがより好ましく、0.56g/cm以上であることがさらに好ましく、1.00g/cm以下であることが好ましく、0.90g/cm以下であることがより好ましく、0.85g/cm以下であることがさらに好ましい。前記発泡成形体の密度が0.52g/cm未満であると、強度が低下し、耐久性に優れるバドミントンシャトルコックが得られないおそれがある。一方、発泡成形体の密度が1.00g/cmを超えると、得られる羽軸が重くなり、飛行性能および打球感に優れるバドミントンシャトルコックが得られないおそれがある。
【0040】
本発明のシャトルコック用人工羽根において、前記芯部領域と外層領域は、単一の樹脂組成物から形成されていることが好ましい。芯部領域と外層領域とが実質的に単一の樹脂組成物から形成されることにより、芯部領域と外層領域との界面における剥離強度が高くなる。その結果、羽軸部全体の耐久性が高くなる。
【0041】
より具体的には、羽軸部の多数の細孔を有する芯部領域は、単一の樹脂組成物を発泡させることにより形成し、外層領域は、単一の樹脂組成物を発泡させることなく形成することが好ましい。本発明のシャトルコック用人工羽根の羽軸部は、後述する超臨界発泡成形により形成されることが好ましい。
【0042】
前記羽軸部は、樹脂成分を含有する羽軸用樹脂組成物から形成される。前記樹脂成分は、特に限定されず、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミノビスマレイミド(PABM)、ポリビスアミドトリアゾール、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリアセアール、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)などが挙げられる。これらのなかでも、前記樹脂成分として、ポリアミド、ポリプロピレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、および、ポリカーボネートが好ましい。これらの樹脂成分は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612などの脂肪族系のポリアミド、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミドM5Tなどの半芳香族系のポリアミド、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミド、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミドなどの芳香族系ポリアミドが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、加工性、耐久性の観点から、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族系ポリアミドが好適である。
【0044】
本発明の人工羽根の羽軸部は、樹脂成分として、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)とポリカーボネート(PC)とを含有する羽軸用樹脂組成物から形成されることが好ましい。アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)とポリカーボネート(PC)とを含有する羽軸用樹脂組成物は、発泡剤との相溶性が高く、発泡状態が一層良好になるからである。樹脂成分中のアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)の含有率は、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。樹脂成分中のポリカーボネートの含有率は、30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0045】
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)とポリカーボネート(PC)とを含有する羽軸用樹脂組成物は、さらに改質剤を含有してもよい。前記改質剤の含有率は、15質量%以下であることが好ましい。前記改質剤としては、例えば、流動性改質剤、相溶化剤、難燃性付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを挙げることができる。
【0046】
なお、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート(PC)および改質剤の含有率は、これらの合計含有率が100質量%となるように、前記範囲内から適宜決定されればよい。
【0047】
前記羽軸用樹脂組成物は、強化繊維を含有してもよい。強化繊維を含有することにより、得られる羽軸の機械的物性が向上する。前記強化繊維としては、例えば、無機繊維、有機繊維、金属繊維、又はこれらを組み合わせたハイブリッド構成の強化繊維等が挙げられる。強化繊維は、一種でもそれ以上でもよい。
【0048】
無機繊維としては、炭素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、ガラス繊維等が挙げられる。有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、セルロース繊維、その他一般のナイロン繊維、ポリエステル繊維等が挙げられる。金属繊維としては、ステンレス、鉄等の繊維が挙げられる。また、金属繊維としては、金属繊維を炭素で被覆した炭素被覆金属繊維が挙げられる。
【0049】
本発明で使用する羽軸用樹脂組成物は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維よりなる群から選択される少なくとも1種の強化繊維を含有することが好ましい。
【0050】
羽軸用樹脂組成物の樹脂成分として、強化繊維があらかじめ樹脂に配合された繊維強化樹脂を使用することが好ましい。繊維強化樹脂としては、例えば、短繊維強化樹脂と長繊維強化樹脂が挙げられる。繊維強化樹脂を使用する場合、繊維強化樹脂中の強化繊維の含有率は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0051】
例えば、ガラス繊維強化樹脂の場合、ガラス短繊維強化樹脂は、繊維長が約5mm程度のガラスチョップドストランドと樹脂とを混錬し、ペレット化したものである。ガラス長繊維強化樹脂は、ガラス繊維のロービングを含浸ダイスに導き、フィラメントの間に溶融した熱可塑性樹脂を均一に含浸させた後、必要な長さ(通常は5~20mm)に切断してペレット化したものである。
【0052】
本発明には、シャトルコック用人工羽根の製造方法も含まれる。本発明のシャトルコック用人工羽根の製造方法は、羽軸用樹脂組成物を溶融混錬する工程、溶融した羽軸用樹脂組成物に超臨界流体からなる発泡剤を導入して、溶融混錬物を作製する工程、前記溶融混錬物を金型内に射出する工程、前記発泡剤の圧力および温度の少なくとも一方を、前記発泡剤の臨界点を下回るまで下げて前記樹脂組成物を発泡させて、羽軸部を作製する工程と、前記羽軸部と羽部とを固着させる工程を含むことを特徴とする。本発明では、超臨界発泡成形法により羽軸部を成形することが好ましい。超臨界発泡成形法を採用することにより、多数の細孔を有する芯部領域と、前記芯部領域を被覆する中実構造の外層領域とを有する羽軸部を好適に作製することができる。
【0053】
超臨界発泡成形により羽軸部を成形する方法は、羽軸用樹脂組成物を溶融混錬する工程、溶融した羽軸用樹脂組成物に超臨界流体からなる発泡剤を導入して、溶融混錬物を作製する工程、前記溶融混錬物を金型内に射出する工程、前記発泡剤の圧力および温度の少なくとも一方を、前記発泡剤の臨界点を下回るまで下げて前記樹脂組成物を発泡させる工程とを含む。
【0054】
前記超臨界発泡成形は、例えば、射出成形機、および超臨界流体を射出成形機のシリンダー内に導入するための超臨界流体導入装置を用いて行うことができる。以下、前記超臨界発泡成形の具体例について説明する。
【0055】
まず、羽軸用樹脂組成物を射出成形機のシリンダー内に投入し、シリンダー内で加熱混練することで羽軸用樹脂組成物を溶融させる。
【0056】
シリンダー内の設定温度は、羽軸用樹脂組成物を溶融させることができる温度であれば特に限定されず、羽軸用樹脂組成物の種類に応じて適宜選択すればよい。シリンダー内の設定温度は、170℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、400℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましい。
【0057】
シリンダー内での加熱混練時間は、羽軸用樹脂組成物の種類や投入量などに応じて適宜設定すればよい。シリンダー内での加熱混練時間は、2分間以上が好ましく、3分間以上がより好ましく、10分間以下が好ましく、8分間以下がより好ましい。
【0058】
続いて、超臨界流体導入装置から供給される超臨界流体からなる発泡剤を射出成形機のシリンダー内に導入して、羽軸用樹脂組成物と溶融混錬させる。
【0059】
ここで「超臨界流体」とは、特定の温度及び圧力(臨界点)以上の条件下において物質が示す、気体、液体および固体のいずれでもない物質の状態を示す用語である。特定の温度及び圧力である臨界点は、物質の種類によって定まる。超臨界流体は、溶融した樹脂への浸透力(溶解度)が気体状態または液体状態の当該物質に比べて高く、溶融樹脂に均一に分散させることができる。
【0060】
前記超臨界流体からなる発泡剤としては、例えば、二酸化炭素、窒素、ヘリウム等の不活性ガスや、空気等を用いることができる。これらの中でも、窒素(臨界点温度:-147℃、臨界点圧力:3.4MPa)は、圧力を制御するのみで超臨界流体を調整することが可能であり取り扱いが容易であることから、特に好ましい。
【0061】
前記超臨界流体からなる発泡剤の導入量は、羽軸用樹脂組成物の樹脂成分100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.3質量部以上であることがさらに好ましく、3質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることがさらに好ましい。超臨界流体からなる発泡剤の導入量が0.1質量部未満であると、樹脂組成物の発泡が十分に進行しない場合がある。一方、超臨界流体からなる発泡剤の導入量が3質量部を超えると、超臨界流体の樹脂への溶融不良に起因する外観不良が生じる場合がある。
【0062】
射出成形機のシリンダー内に導入された超臨界流体からなる発泡剤と樹脂組成物の混練時間は、超臨界流体からなる発泡剤を樹脂組成物に十分に含浸させることができる時間であればよく、通常、1分~0.15時間であることが好ましい。
【0063】
次に、前記超臨界流体からなる発泡剤と樹脂組成物との溶融混錬物を射出成形機の金型内に射出する。前記溶融混錬物の射出速度は、20mm/秒以上であることが好ましく、50mm/秒以上であることがより好ましく、80mm/秒以上であることがさらに好ましく、300mm/秒以下であることが好ましく、280mm/秒以下であることがより好ましく、250mm/秒以下であることがさらに好ましい。溶融混錬物の射出速度が20mm/秒未満であると、成型品表面にフローマークが生じる場合がある。一方、溶融混錬物の射出速度が300mm/秒を超えると、気泡のせん断破壊が生じる場合がある。
【0064】
超臨界流体からなる発泡剤と樹脂組成物との溶融混錬物を金型内に射出した後、金型内において、超臨界流体からなる発泡剤の圧力および温度の少なくとも一方を前記超臨界流体の臨界点を下回るまで下げると、羽軸用樹脂組成物に含浸されている超臨界流体からなる発泡剤は、気体に変化して体積が膨張し、羽軸用樹脂組成物の内部を発泡させる。また、溶融した羽軸用樹脂組成物は、金型(金型の設定温度が溶融した樹脂組成物の温度よりも低い)に接する表層がスキン層(実質的に発泡を含まない中実層)を形成する。そして、金型内の羽軸用樹脂組成物を冷却し固化すれば、表層部に中実構造を、芯部に発泡構造を有する発泡成形品が得られる。
【0065】
超臨界流体からなる発泡剤の圧力および温度の少なくとも一方を前記超臨界流体の臨界点を下回るまで下げる方法としては、特に限定されず、例えば、ショートショット法(金型容積よりも少ない量の樹脂を充填し、気泡の生成により充填を完了させる方法)、フルショット法(金型容積に等しい量の樹脂を充填し、成型後の熱収縮分を気泡の生成、拡大により補う方法)、コアバック法(金型の少なくとも一部を後退させて金型容積を拡張する方法)などが挙げられる。均一な発泡で大きな発泡倍率を得ることができるという観点から、コアバック法が好ましい。
【0066】
コアバック法を用いる場合は、超臨界流体からなる発泡剤と樹脂組成物の溶融混錬物を金型内に射出した後、コアバック開始までの待機時間は、0.1秒以上であることが好ましく、0.2秒以上であることがより好ましく、0.3秒以上であることがさらに好ましく、3秒以下であることが好ましく、2.5秒以下であることがより好ましく、2秒以下であることがさらに好ましい。コアバック開始までの待機時間を前記範囲とすることにより、スキン層の形成が可能となると同時に、樹脂温度を発泡に最適な温度範囲に保つことができる。
【0067】
また、コアバック時間(金型容積拡大の時間)は、0.1秒以上であることが好ましく、0.2秒以上であることがより好ましく、0.4秒以上であることがさらに好ましく、3秒以下であることが好ましく、2秒以下であることがより好ましく、1秒以下であることがさらに好ましい。コアバック時間を前記範囲とすることにより、樹脂温度を発泡に最適な温度範囲に保つことができる。
【0068】
金型内の設定温度は、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、100℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましい。金型内の設定温度をかかる範囲とすることにより、スキン層の厚みを制御することが可能となる。また、羽軸用樹脂組成物から発泡成形体を成形したときに、前記発泡成形体の曲げ弾性率(GPa)と厚み(mm)の積が4.0以上であって、密度が1.00g/cm以下となるコアバック成形条件と同一条件により羽軸部を作製することが好ましい。
【0069】
羽軸部全体の発泡倍率は、1.2倍以上であることが好ましく、1.3倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることがさらに好ましく、2.4倍以下であることが好ましく、2.2倍以下であることがより好ましく、2.0倍以下であることがさらに好ましい。羽軸部全体の発泡倍率が1.2倍未満であると、得られる羽軸が重くなり、飛行性能および打球感に優れるバドミントンシャトルコックが得られない恐れがある。一方、羽軸部全体の発泡倍率が2.4倍を超えると、得られる羽軸が強度低下となり、耐久性に優れるバドミントンシャトルコックが得られないおそれがある。
【0070】
羽軸部の発泡倍率は、羽軸部の部分に応じて発泡倍率を変えることも好ましい。羽軸部の部分に応じて発泡倍率を変えることにより、羽軸部の密度を変えることができる。
【0071】
羽軸部の先端および末端の発泡倍率は、それぞれ、1.2倍以上であることが好ましく、1.3倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることがさらに好ましく、2.4倍以下であることが好ましく、2.2倍以下であることがより好ましく、2.0倍以下であることがさらに好ましい。羽軸部の先端および末端の発泡倍率が1.2倍未満であると、得られる羽軸が重くなり、飛行性能および打球感に優れるバドミントンシャトルコックが得られない恐れがある。一方、羽軸部の先端および末端の発泡倍率が2.4倍を超えると、得られる羽軸が強度低下となり、耐久性に優れるバドミントンシャトルコックが得られないおそれがある。
【0072】
例えば、羽軸部の先端の発泡倍率は、羽軸部の末端の発泡倍率よりも大きくすることが好ましく、羽軸部の羽根固着部の発泡倍率は、羽軸部の根元部の発泡倍率より大きくすることが好ましい。このようにすることにより、羽軸部の羽固着部の密度D1が、羽軸部の根元部の密度D2よりも小さくなる。
【0073】
前記のようにして得られた羽軸部を羽部に取り付ける。羽部は、羽部用樹脂組成物を用いて射出成形して作製してもよいし、樹脂フィルムや不織布を裁断することにより作製してもよい。本発明のシャトルコック用人工羽根の羽部は、樹脂フィルムや不織布を裁断することにより作製されることが好ましい。
【0074】
前記羽軸部は、例えば、接着剤などによって羽部に固着することができる。
【0075】
以下、図面に基づいて、本発明のシャトルコック用人工羽根の態様について説明するが、本発明のシャトルコック用人工羽根は、図面に示された態様に限定されるものではない。
【0076】
図1は、シャトルコック用人工羽根の構造を説明するための斜視図である。シャトルコック用人工羽根1は、羽部3と羽部3に固着された羽軸部5とを有する。羽部3は、平面状であり、矢印Aは、羽部3の平面に対する法線方向(上下方向)を表す。矢印Bは、羽軸が伸びる羽軸方向を表す。矢印Cは、人工羽根の幅方向であり、前記法線方向(上下方向)Aと羽軸方向Bとに直交する。
【0077】
図2は、本発明のシャトルコック用人工羽根の一例を示す説明図である。図2(a)は、人口羽根のおもて面の平面図であり、図2(b)は、うら面の平面図である。ここで、おもて面は、シャトルコックに取り付けたときにシャトルコックの外方に位置する面であり、裏面は、シャトルコックの内方に位置する面である。
【0078】
羽軸部5は、羽部3の幅方向の略中央に固着されている。羽軸部5は、先端7と末端9とを有する。羽軸部5は、羽部3に固着される羽固着部5aと、シャトルコックのベースに埋め込まれる根元部5cと、羽固着部5aと、根元部5cとの間に位置する中間部5bとを有する。羽軸部5の先端7と羽部3の先端とが一致するように、羽軸部5は、羽部に固着されていることが好ましい。
【0079】
図3は、図2(a)の人工羽根のA-A断面図である。この態様では、羽軸部5の断面は矩形である。羽軸部5は、多数の細孔を有する芯部領域11と、前記芯部領域11を被覆する中実構造の外層領域13とを有する。羽軸部5の断面のほぼ中心に、多数の細孔を有する芯部11が存在し、芯部11の周囲を被覆する外層領域13が存在する。
【0080】
羽固着部5aの外層領域13が、羽部3のおもて面に固着される。外層領域13は、曲げ剛性率が高い材料から構成されているので、羽軸部5は、ラケットからの衝撃に対して破損しにくくなっている。
【0081】
図4は、本発明の人工羽根の羽軸部5の一例を説明する説明図である。図4(a)は、平面図であり、図4(b)は、図4(a)におけるB-B断面図である。図4に示された態様では、羽軸部5の幅は、先端7から末端9まで一定である。
【0082】
図4(b)において、羽軸部5は、羽軸部5の軸方向Bの全域にわたって、すなわち、先端7から末端9の全長にわたって、多数の細孔を有する芯部領域11と、前記芯部領域11を被覆する中実構造の上側外層領域13a、下側外層領域13bとを有する。外層領域13a、13bの厚みは、先端7から末端9の全長にわたってほぼ一定である。外層領域13a,13bは、曲げ剛性率が高い材料から構成されているので、羽軸部5は、ラケットからの衝撃に対して破損しにくくなっている。
【0083】
図4(b)において、羽軸部5の先端の高さH1は、羽軸部の末端の高さH2よりも小さい。羽軸部の空気抵抗を小さくすることができる。羽軸部5の上下方向の高さは、先端7から羽軸の根元部5cまで徐々に高くなり、根元部5cの高さが一定である。
【0084】
図4(b)に示すような羽軸部の構造は、例えば、超臨界発泡成形により羽軸用樹脂組成物を発泡させることにより作製される。
【0085】
羽部3には、羽固着部5aの下側外層領域13bが固着される。羽軸部5の下面には傾斜面6が設けられている。前記傾斜面6は、羽軸部の先端7から根元部5cまで設けられている。
【0086】
羽固着部5aの密度D1は、根元部5cの密度D2よりも小さいことが好ましい。羽固着部が軽量になるからである。
【0087】
図5は、本発明の人工羽根の羽軸部5の別の好ましい態様を説明する説明図である。図5(a)は、平面図であり、図5(b)は、図5(a)のC-C断面図である。
【0088】
図5(a)において、羽軸部5の末端9の幅W2が、先端7の幅W1よりも大きい。羽軸部の幅は、先端7から羽軸の根元部5cまではテーパー状に広くなり、根元部5cの幅が一定である。
【0089】
図5(b)において、羽軸部5は、羽軸部5の軸方向Bの全域にわたって、すなわち、先端7から末端9の全長にわたって、多数の細孔を有する芯部領域11と、前記芯部領域11を被覆する中実構造の上側外層領域13a、下側外層領域13bとを有する。外層領域13a、13bの厚みは、先端7から末端9の全長にわたって、ほぼ一定である。外層領域13a,13bは、曲げ剛性率が高い材料から構成されているので、羽軸部5は、ラケットからの衝撃に対して破損しにくくなっている。
【0090】
図5(b)において、羽軸部5の先端の高さH1は、羽軸部の末端の高さH2よりも小さい。羽軸部の空気抵抗が小さくすることができる。羽軸部5の上下方向の高さは、先端7から羽軸部の根元部5cまで徐々に高くなり、根元部5cの高さが一定である。
【0091】
図5(b)に示すような羽軸部の構造は、例えば、超臨界発泡成形により羽軸用樹脂組成物を発泡させることにより作製される。
【0092】
羽軸部5の上面は、平面である。羽軸部5の下面には傾斜面6が設けられている。前記傾斜面6は、羽軸部5の先端から根元部5cまで設けられている。羽部3には、羽根固着部5aの下側外層領域13bが固着される。
【0093】
羽固着部5aの密度D1は、根元部5cの密度D2よりも小さいことが好ましい。羽固着部が軽量になるからである。
【0094】
本発明には、本発明のシャトルコック用人工羽根を備えるバトミントン用シャトルコックが含まれる。すなわち、本発明のバトミントン用シャトルコックは、半球状のベース部と、前記ベース部に円環状に配置された複数の本発明のシャトルコック用人工羽根とを有することを特徴とする。
【0095】
図6は、本発明のバトミントン用シャトルコックの一例を示す説明図である。バドミントン用シャトルコック20は、ベース部21と、前記ベース部21に設けられた人工用羽根1とを有する。ベース部21の材料としては、例えば、コルクなどの天然の素材を使用することができる。
【0096】
前記ベース部は、半球状であり円形の平坦な上面を有している。ベース部の直径は、25mm~28mmで、底は丸くするように定められている。前記ベース部の上面の円周に沿って円環状に複数の人工羽根が設置されている。ベース部21は、例えば、約26mmの外径の半球部21aと26mm外径で長さ10mmの円柱部21bからなるコルクである。そして、人工羽根16本は円柱部の平面部の内径約20mmの円周に等間隔で差し込まれている。ベース部には、人口羽根の羽軸の末端から約15mm程度が差し込まれている。人口羽根16本の先端部での内径は約68mmであり、そして、このときの羽根部の末広がり角度は約24度である。
【0097】
また、バドミントン用シャトルコック20は、前記複数の人工羽根を互いに連結固定するための連結固定材23(例えば、糸、リブなど)を備えてもよい。羽軸のベース部上面から12mm及び24mmの位置に紐がそれぞれ取り付けられている。羽部は、羽軸のベース部上面からから24mmの位置から先端まで形成されている。
【0098】
シャトルコックの質量は、4.74g~5.50gに設定される。
【実施例0099】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0100】
[評価方法]
(1)発泡倍率
同じ金型を用いて作製した発泡樹脂板の厚み/無発泡の樹脂板の厚みから算出した。
【0101】
(2)密度(見掛け密度)
2mm厚の樹脂板から2cm角の試験片を打ち抜き、この試験片の密度を、「JIS K 7112・1999」の規定に準拠して測定した。
【0102】
(3)曲げ弾性率
曲げ弾性率は、JIS K7171(2016)に準拠して測定した。具体的には、元厚みが2mmの金型で、表1に示した条件(羽軸作製と同条件)で発泡樹脂板を作製し、曲げ弾性率を測定した。
【0103】
(4)曲げ剛性
曲げ剛性は、片持ち圧縮試験により測定した。具体的に、試験片を樹脂板から幅2cm、長さ10cmで打ち抜き(厚み2mm)、島津製作所製オートグラフ(AG-100kNNX Plusに)100Nのロードセルを装着)を用いて、樹脂板先端から12mmの位置をチャック部で固定した。半径5mmの圧子を用いてチャック部から55mmの位置を1mm/秒で圧縮し、10mm変位時の試験力を測定し、これを該試験片の曲げ剛性とした。なお、表1では、各試験片の曲げ剛性は、中実構造の試験片No.7の曲げ剛性を100として、相対値で示した。
【0104】
[試験片の作製]
電動式射出成形機(日本製鋼所製、JL10AD-180H)および超臨界流体製造ユニット(トレクセル社製、SCFシステムT-100J)を用いて、設定温度240~250℃のシリンダー内でABS/PC樹脂(帝人社製、マルチロンT3615-Q)を加熱溶融させ、そこに超臨界状態の窒素を導入して溶融混錬させた後、溶融混錬物を設定温度60℃の金型内に射出し、コアバック法によりABS/PC樹脂を発泡させて発泡成形体を作製した。発泡成形体は、15cm×15cm×厚み(mm)の大きさであり、ここから長さ10cm×幅2cm×厚み(mm)の試験片を作製した。発泡成形の条件および得られた試験片の物性を表1に示した。
【0105】
【表1】
【0106】
試験片No.1~6および8~11は、羽軸用樹脂組成物を発泡させることにより形成され、表層部に中実構造を、内部に発泡構造を有する。表1の結果から分かるように、これらの試験片No.1~6および8~11は、同等質量の中実構造の試験片No.7と比較して、低密度でありながら高剛性である。このような発泡成形体を羽軸とすることで、軽く耐久性が高いバドミントン用シャトルコックを得ることが期待できる。
【符号の説明】
【0107】
1:シャトルコック用人工羽根、3:羽部、5:羽軸部、7:先端、9:末端、11:芯部領域、13:外層領域、20:バトミントン用シャトルコック、21:ベース部
図1
図2
図3
図4
図5
図6