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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061650
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】車輌用内装材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20220412BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20220412BHJP
   B29C 65/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
B60R13/02 Z
B32B5/18
B29C65/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169706
(22)【出願日】2020-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000550
【氏名又は名称】オカモト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 一
(72)【発明者】
【氏名】中山 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】根岸 正一郎
(72)【発明者】
【氏名】加茂 泰基
(72)【発明者】
【氏名】井上 史彦
【テーマコード(参考)】
3D023
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
3D023BB01
3D023BC01
3D023BE02
3D023BE06
3D023BE12
3D023BE31
4F100AK03B
4F100AK03C
4F100AK07A
4F100AT00B
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA41C
4F100DC21
4F100DD04
4F100DJ01A
4F100EH46
4F100EJ64C
4F100GB33
4F100HB00B
4F100HB00C
4F100HB31
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100JL10B
4F100JL10C
4F100YY00B
4F100YY00C
4F211AD17
4F211AP06
4F211AR07
4F211TA13
4F211TC02
4F211TD11
4F211TH16
4F211TH22
4F211TJ29
4F211TJ30
4F211TQ01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】第一シート層と第二シート層の表面境界部を直線状にしながら第一シート層と第二シート層を確実に貼り合わせる。
【解決手段】第一シート層2の第一裏面2bと対向する発泡表面1aを有する発泡シート層1と、発泡表面に沿って接合される第一シート層と、第一シート層の第一表面2aの一部に接合される第二シート層3と、を備え、第一シート層の第一表面は、第二シート層の幅寸法と略同じで且つ直線状に形成される接合部位21と、接合部位を除いて形成される表面処理層22と、を有し、接合部位に沿って第二シート層が接合され、第二シートの第二表面3a及び発泡シート層の発泡裏面1bを受圧面とした押圧力で貼り合わされることを特徴とする車輌用内装材A。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡シート層の表面側に色合いが異なる第一シート層と第二シート層が積層され、積層方向への押圧力により貼り合わされる車輌用内装材であって、
前記第一シート層の第一裏面と対向する発泡表面を有する前記発泡シート層と、
前記発泡表面に沿って接合される前記第一シート層と、
前記第一シート層の第一表面の一部に接合される前記第二シート層と、を備え、
前記第一シート層の前記第一表面は、前記第二シート層の幅寸法と略同じで且つ直線状に形成される接合部位と、前記接合部位を除いて形成される表面処理層と、を有し、前記接合部位に沿って前記第二シート層が接合され、前記第二シートの第二表面及び前記発泡シート層の発泡裏面を受圧面とした前記押圧力で貼り合わされることを特徴とする車輌用内装材。
【請求項2】
前記第二シート層として、複数種の色違い第二シート層が並んで配置されることを特徴とする請求項1記載の車輌用内装材。
【請求項3】
前記第二シート層は、加工用の位置制御用センサに向けて前記第一表面よりも突出するように配置される前記第二表面と、前記第二シート層の側面から前記第一表面に亘って形成される段差部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の車輌用内装材。
【請求項4】
発泡シート層の表面側に色合いが異なる第一シート層と第二シート層が積層され、積層方向への押圧力により貼り合わされる車輌用内装材の製造方法であって、
前記第一シート層の第一表面に、前記第二シート層の幅寸法と略同じで且つ直線状の接合部位を除いて表面処理層を形成する表面処理工程と、
前記第一表面の前記接合部位に沿って前記第二シート層を接合する第一積層工程と、
前記第一シート層の第一裏面に前記発泡シート層の発泡表面を接合する第二積層工程と、
前記第二シート層の第二表面及び前記発泡シート層の発泡裏面を受圧面とした前記押圧力で、前記第二シート層,前記第一シート層及び前記発泡シート層を貼り合わせる貼り合わせ工程と、を含むことを特徴とする車輌用内装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両においてエアバッグが搭載されるインストルメントパネル(ダッシュボード)や、ドアガラス周囲のピラーやルーフレールなどに用いられる車輌用内装材、及び、車輌用内装材を製造するための製造方法に関する。
詳しくは、色合いが異なる複数種のシート層からなる車輌用内装材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インストルメントパネルなどの自動車用内装材として、色合いの異なる複数種のシートを少なくとも一方の面において複数種のシートが露出するように積層され、かつ、露出するそれら複数種のシートの表面がほぼ同一平面に形成された表皮材用積層シートがある(例えば、特許文献1参照)。
表皮材用積層シートは、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)などの熱可塑性高分子材料によって形成された複数種(2種)のシートをどちらか一方の面からみて両方のシート面が見えるように積層している。2種のシートの場合には、どちらか一方のシートをカレンダー成形してロール状に巻き取った後に、他方のシートがカレンダー成形され、軟化状態のうちに両シートの端部同士を位置合わせして積層される。その後、この積層シートを、両方のシートが露出している面が硬質ロール側に位置するように硬質ロールと軟質ロールとの間を通過させて押圧し、両方のシートの表面がほぼ同一の平面となるように成形されている。平滑化された積層シートの表面には、表面処理剤の塗工などの処理を施し、エンボスロールにて表面に所望の絞模様が型押し形成される。最終的に積層シートを自動車のドアトリム等の表皮材として使用する場合は、積層シートの裏面にプラスチックフォームが接着などで積層される。
また、エアバッグ用リッド付きのインストルメントパネルの表面化粧層を形成する車両用内装材として、発泡合成樹脂製の弾性発泡シート層と、弾性発泡シート層上に積層された熱可塑性合成樹脂製の下地シート層と、下地シート層上に積層された熱可塑性合成樹脂製の上地シート層からなり、弾性発泡シート層側からのレーザ照射で、リッド破断用脆弱部をミシン目状に形成するものがある(例えば、特許文献2参照)。
レーザ照射によるリッド破断用脆弱部の形成は、インストルメントパネルの表面側に配置したセンサでレーザ光を検出して、インストルメントパネルの裏面側から表面に向け照射されるレーザ光の制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08-323899号公報
【特許文献2】特開2008-110647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、一方(下側)のシートの一部のみに他方(上側)のシートが積層された積層シートを、硬質ロールと軟質ロールによる積層方向への押圧で、下側のシートの一部に対し上側のシートが押し込まれることにより、両方のシートの表面をほぼ同一の平面となるように成形している。
しかし、積層シートがロール間を通過する時は、硬質ロールに向けて上側のシートが下側のシートよりも突出している(特許文献1の図4参照)。このため、押圧(ロール間圧力)が上側のシートのみに集中し易くなり、軟質ロールに向けて下側のシートの積層部分を押し込むだけでなく、上側のシートは積層方向へ圧縮されて、積層方向と交差する幅方向へ拡張変形させる可能性がある。
ところで、上側のシート及び下側のシートは、カレンダー成形されても、それら全体の厚みを厳密に均一にすることは困難であり、部分的には厚みの異なる箇所が存在する。部分的な厚みの違いは、上側のシートと下側のシートの積層に伴って増大されてしまう。このため、部分的に肉厚な部分は、ロール間の通過時の押圧(ロール間圧力)で、部分的に肉薄な部分よりも積層方向へ圧縮される。
これにより、このようなロール間の通過時における変化要因で、上側のシートが部分的に幅方向へ拡張変形して、色合いの違う複数種のシートの表面境界部が積層方向への押圧(ロール間圧力)で部分的に曲がり易く、直線状になり難いという問題があった。
また、特許文献1では、色合いの違う複数種のシートの表面境界部に段差がなくほぼ同一平面であるため、複数種のシートの表面側に配置されたセンサで感知しても、目標(目印)となる箇所がなく、複数種のシートの表面に対する位置制御を正確に行えなかった。
つまり、色合いが違う複数種のシートからなる積層シートの表面の所望位置に、レーザ照射で積層シートの裏面からエアバッグのリッド破断用脆弱部を形成しようとしても、正確に位置決めできず、リッド破断用脆弱部が精密に加工できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために本発明に係る車輌用内装材は、発泡シート層の表面側に色合いが異なる第一シート層と第二シート層が積層され、積層方向への押圧力により貼り合わされる車輌用内装材であって、前記第一シート層の第一裏面と対向する発泡表面を有する前記発泡シート層と、前記発泡表面に沿って接合される前記第一シート層と、前記第一シート層の第一表面の一部に接合される前記第二シート層と、を備え、前記第一シート層の前記第一表面は、前記第二シート層の幅寸法と略同じで且つ直線状に形成される接合部位と、前記接合部位を除いて形成される表面処理層と、を有し、前記接合部位に沿って前記第二シート層が接合され、前記第二シートの第二表面及び前記発泡シート層の発泡裏面を受圧面とした前記押圧力で貼り合わされることを特徴とする。
また、このような課題を解決するために本発明に係る車輌用内装材の製造方法は、発泡シート層の表面側に色合いが異なる第一シート層と第二シート層が積層され、積層方向への押圧力により貼り合わされる車輌用内装材の製造方法であって、前記第一シート層の第一表面に、前記第二シート層の幅寸法と略同じで且つ直線状の接合部位を除いて表面処理層を形成する表面処理工程と、前記第一表面の前記接合部位に沿って前記第二シート層を接合する第一積層工程と、前記第一シート層の第一裏面に前記発泡シート層の発泡表面を接合する第二積層工程と、前記第二シート層の第二表面及び前記発泡シート層の発泡裏面を受圧面とした前記押圧力で、前記第二シート層,前記第一シート層及び前記発泡シート層を貼り合わせる貼り合わせ工程と、を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係る車輌用内装材の全体構成を示す説明図であり、製造中(レーザ加工過程)の部分的な縦断正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る車輌用内装材の変形例を示す説明図であり、製造中(レーザ加工過程)の部分的な縦断正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る車輌用内装材の製造方法の全体構成を示す説明図であり、(a)が表面処理工程の縦断縮小正面図であり、(b)が第一積層工程の縦断縮小正面図であり、(c)が第二積層工程及び貼り合わせ工程の縦断縮小正面図であり、(d)が基材積層工程の縦断縮小正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る車輌用内装材Aは、図1図3に示すように、自動車などの車両においてエアバッグGが搭載されるインストルメントパネル(ダッシュボード)や、ドアガラス周囲のピラーやルーフレールなどの表面化粧層Bを形成するために用いられる。
表面化粧層Bは、発泡シート層1の表面側に色合いが異なる第一シート層2と第二シート層3が積層された車輌用内装材Aと、発泡シート層1の裏面側に取り付けられる硬質合成樹脂製の基材4とで構成される。
表面化粧層Bの表面側となる第一シート層2や第二シート層3の外観は、異なる系統の二色又は三色以上、若しくは同系統の濃淡二色又は三色以上を並べた配色に形成される。
詳しく説明すると、本発明の実施形態に係る車輌用内装材Aは、発泡シート層1と、発泡シート層1の発泡表面1aに沿って接合される第一シート層2と、第一シート層2の第一表面2aに沿って接合される第二シート層3と、を主要な構成要素として備えている。
なお、発泡シート層1,第一シート層2及び第二シート層3が積層される方向を以下「積層方向Y」という。積層方向Yと交差する各層に沿った方向を以下「幅方向W」という。
【0008】
発泡シート層1は、発泡ポリプロピレン(PPF)やそれに類似した発泡材料などにより、所定厚みの平板状に形成される。
第一シート層2は、熱可塑性ポリオレフィン系樹脂(TPO)やそれに類似した弾性変形可能な材料などで、平板状に形成した下地層である。
インストルメントパネルなどの表面化粧層Bに用いられる場合には、第一シート層2の厚みを約0.50mm~1.00mm程度、詳しくは0.65mm~0.75mmに設定することが好ましい。
さらに、第一シート層2の第一表面2aには、後述する第二シート層3の第二裏面3cと対向して形成される接合部位21と、接合部位21を除いて形成される表面処理層22と、を有する。
接合部位21は、後述する第二シート層3の幅寸法と略同じ幅寸法で且つ直線状に形成される。
表面処理層22は、接合部位21を除く第一表面2aの全体に亘って積層され、接合部位21との間には、段状の層壁23が形成される。
表面処理層22としては、艶消し剤や艶出し剤などを用いた艶の調整処理や、表面に保護性皮膜を作成するための処理などが挙げられる。表面処理層22の形成方法としては、表面処理剤の印刷やコーティングなどが挙げられ、グラビヤ印刷やインクジェットプリンターなどのプリント機を用いた印刷,スプレーガンによるスプレーコートなどを用いて塗工することが好ましい。
【0009】
第二シート層3は、第一シート層2と同様にTPOなどの弾性変形可能な材料などで、第一シート層2の厚みよりも薄く、且つ幅寸法が狭い帯状に形成した上地層である。
インストルメントパネルなどの表面化粧層Bに用いられる場合には、第二シート層3の厚みを約0.10mm~0.50mm程度、詳しくは0.20mm~0.30mmに設定することが好ましい。
さらに、第二シート層3は、第一シート層2の第一表面2aの一部に沿って直線状に配置され、第二シート層3の第二表面3aが、後述する加工用の位置制御用センサSに向けて第一表面2aよりも突出するように配置されている。第二シート層3の側面3bから第一表面2aや表面処理層22に亘る角部位には、段差部31が形成される。
また、第二シート層3の第二表面3aには、第一シート層2の第一表面2aと同様に艶の調整処理や保護性皮膜を作成するための表面処理層32を形成することが好ましい。第二シート層3の表面処理層32は、第一シート層2の表面処理層22と違い第二シート層3の全体に亘って形成される。
なお、図示していないが、第二シート層3の側面3bに表面処理層32を形成することも可能である。
【0010】
第一シート層2と第二シート層3は、少なくとも両者の色合いがそれぞれ異なり、第一シート層2及び第二シート層3を積層した状態で、外観が二色又は三色以上になるように設定されている。
第一シート層2において少なくとも第一表面2aの色は、例えばカーボンブラックなどの含有により黒色などのレーザ光透過性の低い(レーザ光吸収率が高い)濃色系に設定することが好ましい。
第二シート層3において少なくとも第二表面3aの色は、第一シート層2の色合いが違う例えば茶色などのレーザ光透過性の低い層や、灰色,赤色,橙色,黄色などのレーザ光透過性の高い(レーザ光吸収率が低い)淡色系に設定することが好ましい。さらに第二シート層3としては、第一シート層2だけでなく互いに色合いの違う複数種の第二シート層3′,3″を並んで配置することも可能である。
色合いの一例として図1図3(a)~(d)に示される場合には、第一シート層2及び第二シート層3の外観が二色に設定されている。図示例では、第一シート層2を黒色系の濃色、第二シート層3を淡色にしている。
色合いの他の例として図2に示される場合には、第一シート層2及び第二シート層3の外観が三色に設定されている。図示例では、第二シート層3として二種の色違い第二シート層3′,3″を並んで配置している。
なお、それ以外の色合いの変形例として図示しないが、四色以上にするなどの変更が可能である。
またこれに加えて、第一シート層2及び第二シート層3の積層状態で、外観の模様や柄などが異なるように設定することも可能である。
【0011】
ところで、車両に搭載されるエアバッグGは、表面化粧層Bの裏面側に折り畳んだ状態で収容状に配置されており、緊急時にはエアバッグ用リッド(図示しない)を破断して膨張展開する構造になっている。表面化粧層Bの裏面側には、発泡シート層1の裏面側に積層したポリプロピレンなどの硬質合成樹脂で形成される基材4側からの加工で、エアバッグGのリッド破断用脆弱部G1が形成される。
エアバッグGのリッド破断用脆弱部G1は、表面化粧層Bの表面側である第二シート層3と対向して配置された位置制御用センサSによる加工機の作動制御で、四角枠状などのエアバッグ用リッドを形成することが好ましい。
リッド破断用脆弱部G1の加工方法としては、レーザ光の照射,カッターなどの刃物,高圧水などの噴射やこれに類似した手法を用いた加工機による部分的な切断が挙げられる。
加工機の一例としてレーザ照射の場合には、レーザ源Xから照射されたパルス状のレーザ光Lを加工用の位置制御用センサSで検出し、第一シート層2(第一表面2aや表面処理層22)と第二シート層3(第二表面3a)の間に生じた段差部31に基づいて、レーザ源Xからの照射位置や照射時間を調整することにより、エアバッグ用リッドが所定深さのミシン目状に穿設される。
【0012】
そして、本発明の実施形態に係る車輌用内装材Aを生産するための製造方法は、発泡シート層1,第一シート層2及び第二シート層3の貼り合わせ過程を含む。さらにエアバッグGのリッド破断用脆弱部G1を形成する場合には、加工機によるエアバッグ用リッドの加工過程が含まれる。
貼り合わせ過程は、第一シート層2に接合部位21及び表面処理層22を形成する表面処理工程と、接合部位21に沿って第二シート層3を接合する第一積層工程と、第一シート層2に発泡シート層1を接合する第二積層工程と、第二シート層3,第一表面2a及び発泡シート層1を貼り合わせる貼り合わせ工程と、を主要な工程として含んでいる。
これに加えて、発泡シート層1に基材4が積層される基材積層工程を含むことが好ましい。
【0013】
表面処理工程では、図3(a)に示されるように、先ずカレンダー(図示しない)などにより、広幅に形成された第一シート層2を繰り出す。図示例では厚みが0.70mmで黒色の第一シート層2が用いられ、プリント機(図示しない)などで、第一シート層2の第一表面2aに第二シート層3と対向する接合部位21を除いて表面処理層22が形成される。
その後の第一積層工程では、図3(b)に示されるように、スリット機(図示しない)などで、所定寸法の幅狭な帯状に裁断された第二シート層3を、第一シート層2の第一表面2aの一部である接合部位21に沿って接合させる(重ね合わせる)。図示例では厚みが0.25mmで灰色の第二シート層3が用いられ、第二シート層3の少なくとも第二表面3aに表面処理層32を形成している。
【0014】
その後の第二積層工程では、図3(c)に示されるように、第一シート層2の第一裏面2bに対して発泡シート層1の発泡表面1aを接合させる(重ね合わせる)。
これに続く貼り合わせ工程では、接合された三層構造の第二シート層3,第一シート層2及び発泡シート層1を、重ね合わせ状態のままエンボス機などにて、第二シート層3の第二表面3aと発泡シート層1の発泡裏面1bを受圧面とした積層方向Yへの押圧力Pにより貼り合わせることで、車輌用内装材Aとなる。
積層方向Yへの押圧力Pの具体例として図示例の場合には、一対の加圧ロールR1,R2の間に、三層構造の第二シート層3,第一シート層2及び発泡シート層1を通している。これにより、第二表面3aの全体及び第一シート層2の第一表面2a(表面処理層22)と、発泡裏面1bの全体が受圧面となって、略均一なロール間圧力が作用するように構成されている。
第二表面3a及び第一表面2a(表面処理層22)と対向する第一の加圧ロールR1としては、第一シート層2の第一表面2aから突出した第二シート層3と嵌り合う凹部R1aを有する硬質ロールや、軟質ロールなどが用いられる。第一の加圧ロールR1の押圧面には、第二表面3aや第一表面2a(表面処理層22)に対して、シボ模様などの所定の凹凸模様を付けるための押し型(図示しない)が形成される。
【0015】
その後の基材積層工程では、図3(d)に示されるように、コーター機(図示しない)などで、発泡シート層1の発泡裏面1bにプレコート材などの接着剤を塗工し、基材4を接着して積層することで、表面化粧層Bとなる。最終的には、一体化された表面化粧層Bをカッターなどの切断機(図示しない)で所定の形状に裁断している。
その後に、加工機によるエアバッグ用リッドの加工過程が含まれる場合には、加工用の位置制御用センサSにより、第一シート層2(第一表面2aや表面処理層22)と第二シート層3(第二表面3a)の間に生じた段差部31に基づいて、レーザ照射やカッターなどで基材4側から表面化粧層Bの裏面側に所定深さのリッド破断用脆弱部G1を穿設する。
加工機による加工過程として図1図2に示される例では、前述したレーザ照射の場合を示している。
また、その他の例として図示しないが、レーザ照射に代えてカッターなどの加工機で、基材4側から表面化粧層Bの裏面側に所定深さのリッド破断用脆弱部G1を穿設することも可能である。
【0016】
このような本発明の実施形態に係る車輌用内装材A及びその製造方法によると、第一シート層2の第一表面2aで表面処理層22を除いた直線状の接合部位21に沿って、第二シート層3が接合されるとともに、発泡シート層1の発泡表面1aを第一シート層2の第一裏面2bに接合して三層に積層される。この積層体を積層方向Yへの押圧力(ロール間圧力)Pで、第二表面3a及び発泡裏面1bの両側から挟み込む。
これにより、発泡シート層1が第二シート層3よりも先に積層方向Yへ圧縮変形して、第二シート層3のみに対する押圧力Pが軽減される。仮に積層方向Yへの押圧力Pで第二シート層3が積層方向Yへ圧縮されても、第二シート層3の側面3bが表面処理層22の層壁23に突き当たるため、第二シート層3の幅方向Wへの拡張変形が抑制される。
さらに第一表面2aに対する第二シート層3の貼り合わせ状態では、表面処理層22を挟み込むことなく、第二シート層3(裏面3c)と接合部位21が接着される。このため、表面処理層22の材料に影響されることなく、第一シート層2と第二シート層3の貼り合わせが可能になる。
したがって、第一シート層2と第二シート層3の表面境界部を直線状にしながら第一シート層2と第二シート層3を確実に貼り合わせることができる。
その結果、色合いの違う複数種のシートの表面境界部が積層方向への押圧(ロール間圧力)で部分的に曲がり易い従来のものに比べ、表面境界部の成形精度に優れ、インストルメントパネルなどの自動車用内装材として製品化した際の商品価値を向上できる。
【0017】
特に、第二シート層3として、複数種の色違い第二シート層3′,3″を並べて配置することが好ましい。
この場合には、第一シート層2との色違いを含めて三色以上の表皮(第一シート層2及び第二シート層3)の作成が可能になる。
したがって、多色の表皮を有する車輌用内装材Aを提供することができる。
その結果、デザインの自由度が増えて商品価値の向上が図れる。
【0018】
さらに、第二シート層3は、加工用の位置制御用センサSに向けて第一表面2aよりも突出するように配置される第二表面3aと、第二シート層3の側面3bから第一表面2aに亘って形成される段差部31を有することが好ましい。
この場合には、直線状の段差部31の位置を位置制御用センサSで感知することにより、この位置感知に基づいて発泡シート層1,第一シート層2及び第二シート層3の全体に対するレーザ照射やカッタなどの加工機の位置制御が可能になる。
したがって、発泡シート層1,第一シート層2及び第二シート層3の全体に対してリッド破断用脆弱部G1の形成位置を正確に位置合わせすることができる。
その結果、色合いの違う複数種のシートの表面境界部に段差がなくほぼ同一平面である従来のものに比べ、エアバッグGのリッド破断用脆弱部G1を正確に位置決めでき、高精度のリッド破断用脆弱部G1が作成可能となって加工性に優れる。
【0019】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限らない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適時変更してもよい。
上記実施形態では、レーザ照射やカッターなどの加工機によってエアバッグGのリッド破断用脆弱部G1を形成する手法について説明したが、本発明はこれに限らない。レーザ照射やカッター以外の手法により、基材4側から表面化粧層Bの裏面側に所定深さのリッド破断用脆弱部G1を穿設してもよい。
また、位置制御用センサSは、色の判別が可能な色検出センサを用いて段差部31を感知してもよい。この場合は、本発明の製造方法によって第一シート層2と第二シート層3の表面境界部が直線状に成形されるため、色検出センサによって精度よく段差部31を感知することが可能になり、エアバッグGのリッド破断用脆弱部G1を正確に位置決めできる。
なお、前示の実施形態では、エアバッグGが搭載されるインストルメントパネルや、ドアガラス周囲のピラーやルーフレールなどの表面化粧層Bを形成するために用いられる車輌用内装材Aについて説明したが、これに限定されず、自動車以外の車両に用いてよい。 この場合においても、前述した実施形態と同様な作用と利点が得られる。
【符号の説明】
【0020】
A 車輌用内装材 1 発泡シート層
1a 発泡表面 1b 発泡裏面
2 第一シート層 2a 第一表面
2b 第一裏面 21 接合部位
22 表面処理層 3 第二シート層
3a 第二表面 3b 側面
31 段差部 3′,3″ 色違い第二シート層
Y 積層方向 P 積層方向への押圧力(ロール間圧力)
S 位置制御用センサ
図1
図2
図3