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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061800
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】穿孔ドリル
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/00 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
B23B51/00 K
B23B51/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169960
(22)【出願日】2020-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000205052
【氏名又は名称】大見工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大見 満宏
(72)【発明者】
【氏名】峯園 数浩
(72)【発明者】
【氏名】中川 雅博
(72)【発明者】
【氏名】深津 貴裕
【テーマコード(参考)】
3C037
【Fターム(参考)】
3C037AA02
3C037DD01
3C037DD03
(57)【要約】
【課題】穿孔ドリルでワークを切削するときの騒音を低減できる穿孔ドリルを提供すること。
【解決手段】穿孔ドリル10は、第1端11に第1刃21及び第2刃22と、第1刃21及び第2刃22それぞれから第2端12に向けて延びる螺旋状の第1あたり部41及び第2あたり部42と、回転方向Cで隣り合う第1あたり部41と第2あたり部42の間に設けられ、且つ第1あたり部41及び第2あたり部42に沿って延びる螺旋状の第1ねじれ溝31及び第2ねじれ溝32とを備えている。第1あたり部41は、第1ねじれ角で延び、第2あたり部42は、中間ねじれ角β及び基端ねじれ角で延びる部分を少なくとも有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心として回転する穿孔ドリルであって、
軸線方向の第1端に設けられる複数の刃と、
前記複数の刃それぞれから前記軸線方向の第2端に向けて延びる螺旋状の複数のあたり部と、
前記軸線を中心とする回転方向で隣り合う前記あたり部の間に設けられ、且つ前記あたり部に沿って延びる螺旋状のねじれ溝とを備え、
複数の前記あたり部は、
第1ねじれ角で延びる前記あたり部である第1あたり部と、
前記第1ねじれ角と異なるねじれ角である第2ねじれ角で延びる部分を少なくとも有する前記あたり部である第2あたり部とを含むことを特徴とする穿孔ドリル。
【請求項2】
前記第2あたり部は、
前記第1ねじれ角で前記刃から延びる先端側螺旋部と、
前記第1ねじれ角よりも大きい前記第2ねじれ角である中間ねじれ角で前記先端側螺旋部から延びる中間螺旋部と、
前記中間ねじれ角よりも小さい前記第2ねじれ角である基端ねじれ角で前記中間螺旋部から延びる基端側螺旋部とを有していることを特徴とする請求項1に記載の穿孔ドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿孔ドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるような穿孔ドリルが知られている。
上記の穿孔ドリルは、複数の刃と、複数の刃それぞれから延びる螺旋状の複数のあたり部と、複数のあたり部の間に設けられるとともにあたり部に沿って延びる螺旋状の複数のねじれ溝とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4484716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、穿孔ドリルでワークを切削するときに騒音が発生する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する穿孔ドリルは、軸線を中心として回転する穿孔ドリルであって、
軸線方向の第1端に設けられる複数の刃と、前記複数の刃それぞれから前記軸線方向の第2端に向けて延びる螺旋状の複数のあたり部と、前記軸線を中心とする回転方向で隣り合う前記あたり部の間に設けられ、且つ前記あたり部に沿って延びる螺旋状のねじれ溝とを備え、複数の前記あたり部は、第1ねじれ角で延びる前記あたり部である第1あたり部と、前記第1ねじれ角と異なるねじれ角である第2ねじれ角で延びる部分を少なくとも有する前記あたり部である第2あたり部とを含む。
【0006】
これによれば、ワークの孔の同じ深さにおいて、第1あたり部が孔の内周面に当接している部分と、第2あたり部が孔の内周面に当接している部分とを、穿孔ドリルの径方向で比較したとき、第1あたり部が孔の内周面に当接している当接点と、第2あたり部が孔の内周面に当接している当接点とが、径方向において一致せず、且つ軸線方向においてずれている箇所が存在する。複数のあたり部それぞれが第1ねじれ角で延び、孔の同じ深さにおいて、第1あたり部が孔の内周面に当接している部分と、第2あたり部が孔の内周面に当接している部分とが径方向及び軸線方向において一致している場合と異なり、音の共振を抑制できる。したがって、穿孔ドリルでワークを切削するときの騒音を低減できる。
【0007】
上記の穿孔ドリルにおいて、前記第2あたり部は、前記第1ねじれ角で前記刃から延びる先端側螺旋部と、前記第1ねじれ角よりも大きい前記第2ねじれ角である中間ねじれ角で前記先端側螺旋部から延びる中間螺旋部と、前記中間ねじれ角よりも小さい前記第2ねじれ角である基端ねじれ角で前記中間螺旋部から延びる基端側螺旋部とを有しているとよい。
【0008】
中間ねじれ角で第2あたり部が延び続けると、穿孔ドリルの設計上、第2あたり部が第1あたり部に交差してしまう。
その点、これによれば、中間螺旋部から基端ねじれ角で延びる基端側螺旋部が設けられる。そのため、第2あたり部が延びた先が第1あたり部に交わり難くなる。よって、穿孔ドリルの設計において、穿孔ドリルのドリルとしての機能を維持することができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、ワークを切削するときの騒音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】穿孔ドリルの先端側螺旋部を正面に見た概略図。
図2】穿孔ドリルの刃先を示した概略図。
図3】穿孔ドリルの先端側螺旋部と中間螺旋部との境界を正面に見た概略図。
図4】穿孔ドリルの中間螺旋部と基端側螺旋部との境界を正面に見た概略図。
図5】穿孔ドリルによるワークの切削時の状況を示した概略図。
図6】穿孔ドリルによるワークの切削時の状況を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、穿孔ドリルを具体化した一実施形態を図1図6にしたがって説明する。
図1及び図2に示すように、穿孔ドリル10は、1本の丸棒を加工することにより形成される。穿孔ドリル10の軸線をmとすると、軸線mの延びる方向を穿孔ドリル10の軸線方向Aとする。穿孔ドリル10の軸線mに直交する方向を径方向Bとする。軸線mを中心として穿孔ドリル10の回転する方向を回転方向Cとする。
【0012】
図2に示すように、穿孔ドリル10は、軸線方向Aの第1端11に設けられる第1刃21と、第1端11に設けられる第2刃22と、を有している。穿孔ドリル10の軸線mを基準として、第1刃21及び第2刃22は、径方向Bにおいて互いに対称的な位置に配置されている。第1刃21及び第2刃22は、穿孔ドリル10の軸線方向Aの第1端11において回転方向Cに所定の間隔を隔てて設けられる複数の刃である。
【0013】
図1及び図4に示すように、第1刃21及び第2刃22それぞれのすくい角θ1は互いに同じである。すくい角θ1とは、例えば、径方向Bにおいて、第1刃21の刃先21aのうち最も径方向Bの外側に位置する部分を正面から見たとき、第1刃21と軸線mとのなす角度である。また、すくい角θ1とは、例えば、径方向Bにおいて、第2刃22の刃先22aのうち最も径方向Bの外側に位置する部分を正面から見たとき、第2刃22と軸線mとのなす角度である。
【0014】
図1図3、及び図4に示すように、穿孔ドリル10は、第1ねじれ溝31と、第2ねじれ溝32とを備えている。第1ねじれ溝31及び第2ねじれ溝32は、1本の丸棒の外周面に設けられた螺旋状の溝である。
【0015】
第1ねじれ溝31は、穿孔ドリル10の第1端11から軸線方向Aの第2端12に向けて軸線mを中心に螺旋状に延びている。第1ねじれ溝31は、回転方向Cとは反対方向に向かうほど第1端11から第2端12に向けて延びている。第1ねじれ溝31は、回転方向Cで第1刃21に隣り合う位置から第2端12に向けて螺旋状に延びている。第2ねじれ溝32は、穿孔ドリル10の第1端11から第2端12に向けて軸線mを中心に螺旋状に延びている。第2ねじれ溝32は、回転方向Cとは反対方向に向かうにつれて穿孔ドリル10の第1端11から第2端12に向けて延びている。第2ねじれ溝32は、回転方向Cで第2刃22に隣り合う位置から第2端12に向けて螺旋状に延びている。第1ねじれ溝31及び第2ねじれ溝32は、回転方向Cにおいて互いに重なり合わないように設けられている。第1ねじれ溝31及び第2ねじれ溝32は、第2端12までは延びていない。第1ねじれ溝31の内面は、すくい角θ1をなす第1刃21の面を含んでいる。第2ねじれ溝32の内面は、すくい角θ1をなす第2刃22の面を含んでいる。
【0016】
穿孔ドリル10は、第1あたり部41と、第2あたり部42とを備えている。第1あたり部41及び第2あたり部42は、第1ねじれ溝31及び第2ねじれ溝32が穿孔ドリル10に設けられることにより形成されている。
【0017】
第1あたり部41は、第1刃21と連続している。第1あたり部41は、第1刃21から穿孔ドリル10の第2端12に向けて軸線mを中心に螺旋状に延びている。第1あたり部41は、回転方向Cで隣り合う第1ねじれ溝31及び第2ねじれ溝32の間に配置されている。
【0018】
第2あたり部42は、第2刃22から穿孔ドリル10の第2端12に向けて軸線mを中心に螺旋状に延びている。第1あたり部41及び第2あたり部42それぞれは、穿孔ドリル10の第1端11から第2端12に向かうにつれて回転方向Cとは反対方向に向けて螺旋状に延びている。
【0019】
第1あたり部41及び第2あたり部42は、回転方向Cにおいて互いに重なり合わないように設けられている。第1あたり部41は、第1刃21から第2端12に向けて延びる螺旋状のあたり部である。第2あたり部42は、第2刃22から第2端12に向けて延びる螺旋状のあたり部である。なお、第1ねじれ溝31及び第2ねじれ溝32は、回転方向Cで隣り合う第1あたり部41と第2あたり部42との間に設けられ、且つ第1あたり部41及び第2あたり部42に沿って延びる螺旋状のねじれ溝である。
【0020】
このように構成された穿孔ドリル10は、第1ねじれ溝31、第2ねじれ溝32、第1あたり部41、及び第2あたり部42が設けられていない第2端12側の部位が図示しない電動工具に取り付けられる。穿孔ドリル10は、図示しない電動工具により回転方向Cに回転する。
【0021】
図5及び図6に示すように、穿孔ドリル10は、回転方向Cに回転しながら軸線方向AでワークWに当接させられる。第1刃21及び第2刃22がワークWに当接したとき、ワークWが切削され、ワークWに孔Hが形成される。穿孔ドリル10によるワークWの切削を進めると、第1あたり部41及び第2あたり部42が、ワークWの孔Hの内周面Icに当接する。第1あたり部41及び第2あたり部42は、ワークWの孔Hの内周面Icに面接触する。第1あたり部41及び第2あたり部42が孔Hの内周面Icに当接するため、穿孔ドリル10の径方向Bへの位置ずれが抑制される。また、第1あたり部41及び第2あたり部42は、回転する穿孔ドリル10の切削方向を一方向にガイドする。よって、穿孔ドリル10の切削作業が安定する。
【0022】
第1刃21及び第2刃22で切削されたワークWの切り屑は、第1ねじれ溝31及び第2ねじれ溝32に入り込む。第1ねじれ溝31及び第2ねじれ溝32に入り込んだ切り屑は、穿孔ドリル10が回転方向Cに回転しているときに第1ねじれ溝31及び第2ねじれ溝32それぞれの内面により穿孔ドリル10の第2端12に向けて誘導される。よって、穿孔ドリル10によりワークWを切削したときの切り屑は、ワークWの切削箇所に留まることなく、ワークWの外部に排出される。
【0023】
次に、第1あたり部41及び第2あたり部42の構成について詳述する。以下、第1刃21及び第2刃22それぞれのすくい角θ1と同じ大きさのねじれ角を第1ねじれ角αとして説明する。なお、ねじれ角とは、径方向Bにおいて、第1あたり部41及び第2あたり部42を正面に見たとき、第1あたり部41及び第2あたり部42が螺旋状に延びる方向に仮想的に存在する仮想線L1と、穿孔ドリル10の軸線mとがなす角度である。
【0024】
図1図3、及び図4に示すように、第1あたり部41は、穿孔ドリル10の第1端11から第2端12に向かうにつれて、第1ねじれ角αで延びるあたり部である。
第2あたり部42は、穿孔ドリル10の第1端11から第2端12に向かうと、ねじれ角が2回変化する。すなわち、径方向Bにおいて、第2あたり部42を正面から見ると、図1図3図4の順に穿孔ドリル10を回転方向Cに所定角度ずつ回転させたとき、ねじれ角が変化する。第2あたり部42は、先端側螺旋部421と、中間螺旋部422と、基端側螺旋部423とを有している。
【0025】
図1に示すように、先端側螺旋部421は、第2刃22から回転方向Cとは反対方向に向かうほど第2端12に向けて螺旋状に延びている。先端側螺旋部421は、回転方向Cとは反対方向に向けて第2刃22から第1ねじれ角αで延びている。先端側螺旋部421は、第2あたり部42のうち第2刃22から回転方向Cとは反対方向に所定角度の分だけ延びた部分である。
【0026】
図3に示すように、中間螺旋部422は、先端側螺旋部421と連続的に延びている。中間螺旋部422は、回転方向Cとは反対方向に向かうほど第2端12に向けて螺旋状に延びている。中間螺旋部422は、第2刃22から延びた先端側螺旋部421の先から中間ねじれ角βで延びている。中間ねじれ角βは、中間螺旋部422のねじれ角である。中間ねじれ角βは、第1ねじれ角αよりも大きい。中間螺旋部422は、第2あたり部42のうち先端側螺旋部421の延びた先から回転方向Cとは反対方向に所定角度の分だけ延びた部分である。先端側螺旋部421と中間螺旋部422との境界をBd1とする。径方向Bにおいて、境界Bd1を正面に見ると、境界Bd1は、穿孔ドリル10の軸線mに沿っている。
【0027】
図4に示すように、基端側螺旋部423は、中間螺旋部422と連続的に延びている。基端側螺旋部423は、回転方向Cとは反対方向に向かうほど第2端12に向けて螺旋状に延びている。基端側螺旋部423は、先端側螺旋部421から延びた中間螺旋部422の先から基端ねじれ角γで延びている。基端ねじれ角γは、基端側螺旋部423のねじれ角である。基端ねじれ角γは、第1ねじれ角αよりも小さい。基端ねじれ角γは、中間ねじれ角βよりも小さい。基端側螺旋部423は、第2あたり部42のうち中間螺旋部422の延びた先から回転方向Cとは反対方向に所定角度の分だけ延びた部分である。中間螺旋部422と基端側螺旋部423との境界をBd2とする。径方向Bにおいて、境界Bd2を正面に見ると、境界Bd2は、穿孔ドリル10の軸線mに沿っている。
【0028】
第2あたり部42は、先端側螺旋部421、中間螺旋部422、及び基端側螺旋部423が回転方向Cとは反対方向に連続的に延びることにより螺旋状をなしている。なお、中間ねじれ角β及び基端ねじれ角γは、第1ねじれ角αと異なる第2ねじれ角である。また、中間ねじれ角βは、第1ねじれ角αよりも大きい第2ねじれ角であり、基端ねじれ角γは、中間ねじれ角βよりも小さい第2ねじれ角である。
【0029】
本実施形態の作用を説明する。なお、説明の便宜上、図5及び図6の穿孔ドリル10は径方向Bから見た正面図、ワークWは断面図としている。
図5に示すように、穿孔ドリル10によりワークWを切削することによりワークWに孔Hが形成される。
【0030】
第1あたり部41は、第1刃21から第1ねじれ角αで穿孔ドリル10の第2端12に向けて延び、先端側螺旋部421は、第2刃22から第1ねじれ角αで穿孔ドリル10の第2端12に向けて延びている。そのため、孔Hの同じ深さにおいて、先端側螺旋部421が孔Hの内周面Icに当接する部分と、第1あたり部41が孔Hの内周面Icに当接する部分とは、径方向Bにおいて一致する。また、先端側螺旋部421が孔Hの内周面Icに当接する部分と、第1あたり部41が孔Hの内周面Icに当接する部分とは、軸線方向Aにおいても一致する。
【0031】
径方向Bにおいて中間螺旋部422と反対側に位置する第1あたり部41が孔Hの内周面Icに当接している部分のうち第1端11寄りに位置する当接点を第1当接点P1とし、第2端12寄りに位置する当接点を第2当接点P2とする。中間螺旋部422が孔Hの内周面Icに当接している部分のうち第1端11寄りに位置する当接点を第3当接点P3とし、第2端12寄りに位置する当接点を第4当接点P4とする。本実施形態では、軸線方向Aにおいて、第3当接点P3は、第1当接点P1よりも第1端11寄りに位置している。すなわち、径方向Bにおいて、中間螺旋部422の第3当接点P3に対応する位置には、第1あたり部41が位置しない。また、本実施形態では、軸線方向Aにおいて、第4当接点P4は、第2当接点P2よりも第1端11寄りに位置している。すなわち、径方向Bにおいて、第1あたり部41の第2当接点P2に対応する位置には、中間螺旋部422が位置しない。よって、孔Hの同じ深さにおいて、第1あたり部41が孔Hの内周面Icに当接している部分と、中間螺旋部422が孔Hの内周面Icに当接している部分とを、径方向Bで比較したとき、第1あたり部41が孔Hの内周面Icに当接している当接点と、中間螺旋部422が孔Hの内周面Icに当接している当接点とが、径方向Bにおいて一致せず、且つ軸線方向Aにおいてずれている箇所が存在する。
【0032】
図6に示すように、径方向Bにおいて基端側螺旋部423と反対側に位置する第1あたり部41が孔Hの内周面Icに当接している部分のうち第1端11寄りに位置する当接点を第5当接点P5とし、第2端12寄りに位置する当接点を第6当接点P6とする。基端側螺旋部423が孔Hの内周面Icに当接している部分のうち第1端11寄りに位置する当接点を第7当接点P7とし、第2端12寄りに位置する当接点を第8当接点P8とする。本実施形態では、軸線方向Aにおいて、第7当接点P7は、第5当接点P5よりも第1端11寄りに位置している。すなわち、径方向Bにおいて、基端側螺旋部423の第7当接点P7に対応する位置には、第1あたり部41が位置しない。また、本実施形態では、軸線方向Aにおいて、第6当接点P6は、第8当接点P8よりも第1端11寄りに位置している。すなわち、径方向Bにおいて、基端側螺旋部423の第8当接点P8に対応する位置には、第1あたり部41が位置しない。よって、孔Hの同じ深さにおいて、第1あたり部41が孔Hの内周面Icに当接している部分と、基端側螺旋部423が孔Hの内周面Icに当接している部分とを、径方向Bで比較したとき、第1あたり部41が孔Hの内周面Icに当接している当接点と、基端側螺旋部423が孔Hの内周面Icに当接している当接点とが、径方向Bにおいて一致せず、且つ軸線方向Aにおいてずれている箇所が存在する。
【0033】
仮に、第1あたり部41及び第2あたり部42それぞれが第1ねじれ角αで延びている場合、第1あたり部41及び第2あたり部42は、孔Hの同じ深さで内周面Icに接触する。これにより、孔Hの同じ深さで第1あたり部41及び第2あたり部42それぞれが内周面Icに当接して発生する音が共振し易い。
【0034】
その点、上述したように、孔Hの同じ深さにおいて、第1あたり部41が孔Hの内周面Icに当接している部分と、第2あたり部42が孔Hの内周面Icに当接している部分とを、径方向Bで比較したとき、第1あたり部41が孔Hの内周面Icに当接している当接点と、第2あたり部42が孔Hの内周面Icに当接している当接点とが、径方向Bにおいて一致せず、且つ軸線方向Aにおいてずれている箇所が存在する。よって、第1あたり部41及び第2あたり部42それぞれが第1ねじれ角αで延びている場合と異なり、音の共振が抑制される。
【0035】
本実施形態の効果を説明する。
(1)第1あたり部41及び第2あたり部42それぞれが第1ねじれ角αで延びている場合と異なり、音の共振を抑制できる。したがって、穿孔ドリル10でワークWを切削するときの騒音を低減できる。
【0036】
(2)中間ねじれ角βで第2あたり部42が延び続けると、穿孔ドリル10の設計上、第2あたり部42が第1あたり部41に交差してしまう。本実施形態では、中間螺旋部422から基端ねじれ角γで延びる基端側螺旋部423が設けられる。そのため、第2あたり部42が延びた先が第1あたり部41に交わり難くなる。よって、穿孔ドリル10の設計において、穿孔ドリル10のドリルとしての機能を維持できる。
【0037】
(3)第1あたり部41及び第2あたり部42が孔Hの内周面Icに面接触し、穿孔ドリル10でワークWを切削するときの音が大きくなる虞があることを鑑みても、第1あたり部41と第2あたり部42が孔Hの内周面Icに当接することによる音の共振を抑制することは、穿孔ドリル10でワークWを切削するときの騒音低減の効果を顕著にすることができる。
【0038】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○ 先端側螺旋部421のねじれ角は、先端側螺旋部421が第2刃22から回転方向Cとは反対方向に向けて延びるほど中間ねじれ角βとなるように徐々に増加させてもよい。すなわち、第1ねじれ角αは、定数ではなく変数であってもよい。
【0039】
○ 中間螺旋部422のねじれ角は、中間螺旋部422が先端側螺旋部421の延びた先から回転方向Cとは反対方向に向けて延びるほど基端ねじれ角γとなるように徐々に増加させてもよい。中間ねじれ角βは、定数ではなく変数であってもよい。
【0040】
○ 基端側螺旋部423の基端ねじれ角γは、中間螺旋部422の延びた先から回転方向Cとは反対方向に向けて延びるほど徐々にねじれ角が小さくなるように変更してもよい。基端ねじれ角γは、定数ではなく変数であってもよい。
【0041】
○ 上記変更例のように、先端側螺旋部421、中間螺旋部422、及び基端側螺旋部423それぞれのねじれ角を変数としてもよい。すなわち、第2あたり部42のねじれ角は、第2刃22から第2端12に向かうにつれて常に変化してもよい。すなわち、第2ねじれ角は、第1ねじれ角αと異なる変数としてもよい。
【0042】
○ 中間螺旋部422、及び基端側螺旋部423の少なくとも1つのねじれ角が第1ねじれ角αと異なる第2ねじれ角で延びているいればよい。また、第2あたり部42は、先端側螺旋部421、中間螺旋部422、及び基端側螺旋部423により構成されることに限らず、軸線方向Aの全長において常に中間ねじれ角β又は基端ねじれ角γで延びるように変更してもよいし、第1ねじれ角α、中間ねじれ角β、及び基端ねじれ角γのいずれとも異なる第2ねじれ角で常に延びるように変更してもよい。
【0043】
○ 先端側螺旋部421は、第2あたり部42のうち第2刃22から回転方向Cとは反対方向に第1所定角度の分だけ延びた部分であってもよい。また、中間螺旋部422は、第2あたり部42のうち先端側螺旋部421の延びた先から回転方向Cとは反対方向に第2所定角度の分だけ延びた部分であってもよい。さらに、基端側螺旋部423は、第2あたり部42のうち中間螺旋部422の延びた先から回転方向Cとは反対方向に第3所定角度の分だけ延びた部分であってもよい。すなわち、先端側螺旋部421、中間螺旋部422、及び基端側螺旋部423の長さを適宜変更してもよい。
【0044】
○ 第2あたり部42は、先端側螺旋部421、中間螺旋部422、及び基端側螺旋部423により構成され、穿孔ドリル10の第1端11から第2端12に向かうと、ねじれ角が2回変化していたが、これに限らない。例えば、第2あたり部42は、穿孔ドリル10の第1端11から第2端12に向かうと、ねじれ角が3回変化するように構成してもよいし、ねじれ角が4回以上変化するように構成してもよい。
【0045】
○ 第1あたり部41及び第2あたり部42は、複数のあたり部の一例であったが、第3あたり部を追加してもよい。この場合、第3あたり部は、第1あたり部41と同様の構成を有していてもよいし、第2あたり部42と同様の構成を有していてもよい。また、第3あたり部は、第1あたり部41及び第2あたり部42とは異なる構成を有していてもよい。さらに、複数のあたり部は、4つ以上あってもよい。なお、複数のあたり部の数を増やす場合、穿孔ドリル10の第1端11に第1刃21及び第2刃22に加えて新たに刃先を追加する。そして、追加した新たな刃先から追加したあたり部が第2端12に向けて螺旋状に延びるように構成する。
【0046】
○ 第1刃21及び第2刃22それぞれのすくい角を異ならせてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…穿孔ドリル、11…第1端、12…第2端、21…第1刃、22…第2刃、31…第1ねじれ溝、32…第2ねじれ溝、41…第1あたり部、42…第2あたり部、421…先端側螺旋部、422…中間螺旋部、423…基端側螺旋部、m…軸線、A…軸線方向、B…径方向、C…回転方向、θ1…すくい角、α…第1ねじれ角、β…中間ねじれ角、γ…基端ねじれ角、W…ワーク、H…孔、Ic…内周面、Bd1…境界、Bd2…境界。
図1
図2
図3
図4
図5
図6