(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062581
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20220413BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20220413BHJP
【FI】
A63B53/04 E
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170694
(22)【出願日】2020-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】阿部 浩史
(72)【発明者】
【氏名】松永 聖史
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA03
2C002CH01
2C002CH02
2C002CH03
2C002MM04
(57)【要約】
【課題】 フェース部材とヘッド本体との接合強度を維持しつつ、フェース反発性を向上する。
【解決手段】 フェース中心FCを含む、ボールを打撃するためのフェース2を備えたゴルフクラブヘッド1であって、ヘッド本体100と、フェース部材200とを含む。ヘッド本体100は、ヘッド前方の側に、フェース部材200を固着するためのフェース支持部110を備える。フェース部材200は、前板部201と、前板部201からヘッド後方に延びる第1返し部202と、第1返し部202からフェース中心FCの側に延びる第2返し部203とを含む。前板部201の前面201aは、フェース2の少なくとも一部を形成する。第2返し部203の後面203dが、ヘッド本体のフェース支持部110に固着されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェース中心を含む、ボールを打撃するためのフェースを備えたゴルフクラブヘッドであって、
ヘッド本体と、フェース部材とを含み、
前記ヘッド本体は、ヘッド前方の側に、前記フェース部材を固着するためのフェース支持部を備えており、
前記フェース部材は、前板部と、前記前板部からヘッド後方に延びる第1返し部と、前記第1返し部から前記フェース中心の側に延びる第2返し部とを含み、
前記前板部の前面は、前記フェースの少なくとも一部を形成しており、
前記第2返し部の後面が、前記ヘッド本体の前記フェース支持部に固着されている、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記フェース部材の前記第1返し部の外周面は、前記ヘッド本体に固着されていない、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記第1返し部は、0.5~4.0mmの厚さを有する、請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記第1返し部は、2.0mm以下の厚さを有する、請求項3に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記第2返し部は、前記フェース支持部よりも、前記フェース中心側に突出している、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記ヘッド本体は、前記第2返し部からヘッド後方に距離を隔てた位置で、前記フェース中心側に突出する周辺ウエイト部を備える、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記周辺ウエイト部は、前記第2返し部よりも、前記フェース中心側に突出している、請求項6に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記第1返し部及び前記第2返し部は、前記フェース部材の上部、下部、トウ側部及びヒール側部の少なくとも一つに設けられている、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記第2返し部の後面には、ヘッド後方に突出する突起が設けられており、
前記フェース支持部には、前記突起を嵌め込むための凹部が形成されている、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記フェース部材が、チタン又はチタン合金であり、前記ヘッド本体がステンレス鋼である、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
前記フェース部材と前記ヘッド本体とが、ロウ付けにより接合されている、請求項1ないし10のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
アイアン型ゴルフクラブヘッドである、請求項1ないし11のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、フェース部材とフェース受け部とを接合して構成されたアイアン型ゴルフクラブヘッドが記載されている。フェース部材及びフェース受け部とは、互いに異なる金属材料で構成されている。
【0003】
前記フェース部材は、厚さが大きい外周部と、外周部で囲まれかつ外周部よりも厚さが小さい中央部とを含んでいる。前記フェース受け部には、前側に、フェース部材が取り付けられるフェース取付部を具えている。前記フェース取付部は、ヘッドの中心側を向く内向き面と、フェース側を向く前向き面とを含む断面略ステップ状とされている。そして、前記内向き面には、フェース部材の外周面が向き合うように配置され、前記前向き面には、フェース部材の背面が向き合うように配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されたゴルフクラブヘッドでは、ボール打撃時のフェース部材の外周部の撓みが阻害され、フェース反発性についてさらなる改善の余地があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、フェース部材とヘッド本体との接合強度を維持しつつ、フェース反発性を向上することができるゴルフクラブヘッドを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フェース中心を含む、ボールを打撃するためのフェースを備えたゴルフクラブヘッドであって、ヘッド本体と、フェース部材とを含み、前記ヘッド本体は、ヘッド前方の側に、前記フェース部材を固着するためのフェース支持部を備えており、前記フェース部材は、前板部と、前記前板部からヘッド後方に延びる第1返し部と、前記第1返し部から前記フェース中心の側に延びる第2返し部とを含み、前記前板部の前面は、前記フェースの少なくとも一部を形成しており、前記第2返し部の後面が、前記ヘッド本体の前記フェース支持部に固着されている、ゴルフクラブヘッドである。
【0008】
本発明の他の態様では、前記フェース部材の前記第1返し部の外周面は、前記ヘッド本体に固着されていなくても良い。
【0009】
本発明の他の態様では、前記第1返し部は、0.5~4.0mmの厚さを有することができる。
【0010】
本発明の他の態様では、前記第1返し部は、2.0mm以下の厚さを有することができる。
【0011】
本発明の他の態様では、前記第2返し部は、前記フェース支持部よりも、前記フェース中心側に突出していても良い。
【0012】
本発明の他の態様では、前記ヘッド本体は、前記第2返し部からヘッド後方に距離を隔てた位置で、前記フェース中心側に突出する周辺ウエイト部を備えていても良い。
【0013】
本発明の他の態様では、前記周辺ウエイト部は、前記第2返し部よりも、前記フェース中心側に突出していても良い。
【0014】
本発明の他の態様では、前記第1返し部及び前記第2返し部は、前記フェース部材の上部、下部、トウ側部及びヒール側部の少なくとも1つに設けられていても良い。
【0015】
本発明の他の態様では、前記第2返し部の後面には、ヘッド後方に突出する突起が設けられており、前記フェース支持部には、前記突起を嵌め込むための凹部が形成されていても良い。
【0016】
本発明の他の態様では、前記フェース部材が、チタン又はチタン合金であり、前記ヘッド本体がステンレス鋼であっても良い。
【0017】
本発明の他の態様では、前記フェース部材と前記ヘッド本体とが、ロウ付けにより接合されていても良い。
【0018】
本発明の他の態様では、前記ヘッドが、アイアン型ゴルフクラブヘッドであっても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明のゴルフクラブヘッドは、上記の構成を採用したことにより、フェース部材とヘッド本体との接合強度を維持しつつ、フェース反発性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態のゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図2】本実施形態のゴルフクラブヘッドのトウ側から見た側面図である。
【
図3】本実施形態のゴルフクラブヘッドの前側から見た斜視図である。
【
図4】本実施形態のゴルフクラブヘッドの分解斜視図である。
【
図5】フェース部材を後面側から見た斜視図である。
【
図8】本発明の他の実施形態を示すゴルフクラブヘッドの分解斜視図である。
【
図9】本発明のさらに他の実施形態を示すゴルフクラブヘッドの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
以下に開示される代表的な実施形態は、いかなる方法においても限定することを意図するものではない。さらに、本発明の実施形態は、単独で又は様々な組み合わせで使用することができる。さらに、本明細書を通して、同一又は共通する要素については、同一の符号が付されており、重複する説明は省略されている。
【0022】
図1~3は、それぞれ、本実施形態のゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある。)1の正面図、トウ側から見た側面図及び斜視図である。
図1~3に示されるように、本実施形態のヘッド1は、例えば、アイアン型ゴルフクラブヘッドとして、好適に実施される。他の形態では、ヘッド1は、ウッド型、パター型、ユーティリティ型として構成されても良い。
【0023】
ヘッド1は、例えば、フェース2、トップ3、ソール4、トウ5、ヒール6及びホーゼル7を含む。また、
図1~3において、ヘッド1は、基準状態とされている。
【0024】
[基準状態]
本明細書において、ヘッド1の「基準状態」とは、フェース2に形成されたスコアライン8と水平面HPとが平行とされた状態で、ヘッド1が水平面HP上に置かれた状態である。この基準状態では、ヘッド1のホーゼル7のシャフト差込穴7aの中心軸線CL(クラブシャフトの軸線)が基準垂直面VP内に配されている。基準垂直面VPは、水平面HPに対して垂直な平面である。この基準状態において、スコアライン8は、水平面HPに平行であり、かつ、基準垂直面VPに平行である。特に言及されていない場合、ヘッド1は、基準状態に置かれているものとされる。
【0025】
[各方向の定義]
ヘッド1の前後方向とは、基準垂直面VPと直交する方向である。その場合、ヘッド1の前側は、ボールを打撃するフェース2の側を意味し、ヘッド1の後側は、その反対側を意味する。また、ヘッド1の上下方向とは、水平面HPと直交する方向であり、ヘッド1の「上側」及び「下側」は、それぞれ、垂直方向の「上側」及び「下側」を意味する。ヘッド1のトウ・ヒール方向は、水平面HPと平行で、かつ、ヘッド1の前後方向と直交する方向である。
【0026】
[ヘッドの基本構造]
フェース2は、ボールを打撃するための面である。本実施形態のアイアン型ヘッドの場合、フェース2は、実質的な平面である。フェース2には、ボールとの摩擦を高めるために、複数本のスコアライン8が設けられている。スコアライン8は、フェース2に形成されたトウ・ヒール方向に延びる溝である。
【0027】
フェース2は、フェース中心FCを含む。例えば、本実施形態のアイアン型のヘッド1の場合、フェース中心FCは、フェース2の幾何学的中心(面積重心)として定められる。また、ウッド型のヘッドの場合、フェース中心FCは、上下方向のフェース長さ及び左右方向のフェース長さの中間の位置として定められる。
【0028】
トップ3は、例えば、ヘッド1の上面部分を構成するように、フェース2の上縁からヘッド1の後方に延びている。トップ3は、クラウン又は上部と呼ばれる場合がある。
【0029】
ソール4は、ヘッド1の下面部分を構成するように、フェース2の下縁からヘッド1の後方に延びている。ソール4は、下部と呼ばれる場合がある。
【0030】
トウ5は、ヘッド1のトウ・ヒール方向において、ホーゼル7から離れた端部分であり、トップ3とソール4との間を滑らかに接続している。ヒール6は、ヘッド1のトウ・ヒール方向において、トウ5と反対側に位置する端部分であり、そこには、ホーゼル7が接続されている。
【0031】
ホーゼル7は、例えば、筒状に構成されており、クラブシャフト(図示省略)を受け入れるためのシャフト差込穴7aを有する。シャフト差込穴7aの中心軸線CLは、クラブシャフト(図示省略)が固着されたときに、クラブシャフトの軸中心線に本質的に一致する。
【0032】
図4は、本実施形態のヘッド1の分解斜視図である。
図1ないし4に示されるように、本実施形態のヘッド1は、例えば、ヘッド本体100と、フェース部材200とを含む。フェース部材200は、ヘッド本体100の前側に配置され、フェース2の一部を構成する。
【0033】
[ヘッド本体]
好ましい態様では、ヘッド本体100は、フェース部材200とは異なる金属材料で形成されている。ヘッド本体100には、例えば、適度な重量の付与、強度、耐食性、鋳造性等を考慮すると、ステンレス鋼が好適である。
【0034】
図4に示されるように、本実施形態のヘッド本体100は、例えば、その前側に、ヘッド後方に凹んだ凹部Oを有する。本実施形態の凹部Oは、ヘッド本体100を前後方向に貫通する開口部である。他の態様では、凹部Oは、ヘッド後部側が閉じた窪みであっても良い。
【0035】
本実施形態のヘッド本体100は、凹部Oの周囲に、トップ3、トウ5及びソール4のそれぞれの後方部分が形成されている。また、ヘッド本体100は、ヒール6を介してホーゼル7を一体に含む。以上のようなヘッド本体100は、例えば、鋳造等によって、各部が一体的に形成されるのが望ましい。
【0036】
また、ヘッド本体100は、ヘッド前方の側に、フェース部材200を固着するためのフェース支持部101を備える。フェース支持部101は、凹部Oの内周縁に沿って形成されている。本実施形態のフェース支持部101は、例えば、トップ側の支持部103、ソール側の支持部104及びトウ側の支持部105を備える。各支持部103、104及び105は、例えば、フェース2と略平行に延びる平面を形成する支持面101aを含む。
【0037】
[フェース部材]
図5は、フェース部材200を後側から見た斜視図である。
図6は、
図1のVI-VI線断面図である。
図7は、
図6のソール側の要部拡大図である。なお、理解しやすいように、
図6では、フェース2が垂直となるように描かれている。
図5ないし7に示されるように、フェース部材200は、前板部201と、前板部201からヘッド後方に延びる第1返し部202と、第1返し部202からフェース中心FC(
図1に示す)の側に延びる第2返し部203とを含む。
【0038】
本実施形態の前板部201は、
図1及び
図4に示されるように、フェース2の上下方向において、トップ3からソール4までを形成している。また、本実施形態の前板部201は、フェース2のトウ・ヒール方向において、トウ5からフェース中心FCをヒール6側に越えて、ホーゼル7の手前の位置までを形成している。したがって、本実施形態の前板部201は、トップ3、トウ5及びソール4それぞれの前側部分を構成している。
【0039】
前板部201は、前面201aと後面201bとを含む。前面201aは、フェース2の少なくとも一部を構成している。好ましい態様では、前板部201の前面201aは、フェース2の主要部を形成しており、例えば、フェース2の面積の40%以上、好ましくは50%以上を形成する。特に好ましい態様では、
図1に示したように、前板部201の前面201aは、フェース中心FCを含み、かつ、スコアライン8が形成されている意図された打撃領域の全てを形成する。
【0040】
図4ないし6に示されるように、第1返し部202は、例えば、前板部201の外周縁201cからヘッド後方に延びている。本実施形態の第1返し部202は、例えば、トップ側の第1返し部202a、トウ側の第1返し部202b(
図4)及びソール側の第1返し部202cを含んでいる。好ましい態様として、これらの各第1返し部202a、202b及び202cは、途切れることなく連続している。
【0041】
なお、本実施形態では、第1返し部202は、前板部201のヒール側の縁には設けられていない。他の態様では、フェース部材200のヒール側の縁にも第1返し部202が設けられても良い。
【0042】
第2返し部203は、第1返し部202からフェース中心FCの側に延びる。
図6に示されるように、本実施形態の第2返し部203は、前板部201の後面201bからヘッド後方に長さLを隔てて位置している。この長さLは、第1返し部202のヘッド前後方向の長さとして定義される。また、本実施形態の第2返し部203は、
図5に示されるように、例えば、トップ側の第2返し部203a、トウ側の第2返し部203b及びソール側の第2返し部203cを含んでいる。
【0043】
好ましい態様として、各第2返し部203a、203b及び203cは、途切れることなく連続している。他の態様では、各第2返し部203a、203b及び203cは、互いに離間するように設けられても良い。
【0044】
フェース部材200には、比強度が大きい金属材料が好適であり、例えば、チタン又はチタン合金が望ましい。
【0045】
[フェース部材とヘッド本体との固着]
図6及び
図7に示されるように、本実施形態のヘッド1は、第2返し部203の後面203dが、ヘッド本体100のフェース支持部101に固着されている。
【0046】
一般に、フェース部材200とヘッド本体100との接合強度を高めるためには、両者の接合面積を大きくすることが重要である。このためには、
図6に示されるように、フェース支持部101の幅W1や第2返し部203の幅W2が必然的に大きくなる傾向があるが、このような改良は、フェース部材200の第1返し部202の剛性に影響を与えることがない。換言すると、本実施形態のヘッド1は、フェース部材200とヘッド本体100との接合強度を高めつつ、第1返し部202の薄肉化を可能とする。これにより、ボール打撃時、前板部201に大きな撓みが得られ、ひいては、フェース反発性を向上することができる。なお、フェース支持部101の幅W1は、ヘッド本体100の外周面から直交する向きに測定される。同様に、第2返し部203の幅W2は、フェース部材200の外周面から直交する向きに測定される。
【0047】
図6に示されるように、本実施形態のヘッド1は、好ましい態様として、ヘッド本体100のフェース2の周りの外周面100Eと、フェース部材200の外周面200Eとが面一となるように連続し、ヘッド1の外表面を形成してている。好ましい態様として、フェース部材200の第1返し部202の外周面(フェース部材200の外周面200E)は、ヘッド本体100に固着されていない。このような態様では、フェース部材200の外周部がヘッド本体100によって拘束されないため、ボール打撃時、フェース部材200がさらに撓みやすくなり、ひいては、フェース反発性が向上する。
【0048】
[第1返し部の厚さt1]
第1返し部202の薄肉化によってフェース反発性をさらに高めるために、
図7に示されるように、第1返し部202の厚さ(最小の厚さ)t1は、例えば、4.0mm以下とされ、好ましくは3.0mm以下とされ、さらに好ましくは2.0mm以下とされる。一方、第1返し部202の厚さt1が過度に小さくなると、フェース部材200の耐久性が損なわれるおそれがあることから、前記厚さt1は、例えば、0.5mm以上、好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは1.3mm以上とされる。本実施形態では、第1返し部202の厚さt1は、1.4mmとされている。
【0049】
[第1返し部の長さL]
第1返し部202を長く形成することは、ボール打撃時、第1返し部202の撓みを促進する。したがって、フェース反発性をさらに高めるために、
図6及び
図7に示されるように、第1返し部202のフェース2と直交する方向の長さLは、0.5mm以上、好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上とされる。一方、第1返し部202の長さLが過度に大きくなると、フェース部材200の耐久性が損なわれるおそれがあることから、前記長さLは、例えば、4.0mm以下とされ、好ましくは3.5mm以下とされ、さらに好ましくは3.0mm以下とされる。本実施形態では、第1返し部202の長さLは、1.7mmとされている。
【0050】
[第2返し部の厚さt2]
フェース反発性をさらに高めるために、
図6に示されるように、第2返し部203のフェース2と直交する方向の厚さ(最小厚さ)t2は、例えば、2.5mm以下とされ、好ましくは2.3mm以下とされ、さらに好ましくは2.0mm以下とされる。一方、第2返し部203の前記厚さt2が過度に小さくなると、フェース部材200の耐久性が損なわれるおそれがあることから、前記厚さt2は、例えば、0.5mm以上、好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは1.3mm以上とされる。本実施形態では、第2返し部203の厚さt2は、1.5mmとされている。
【0051】
[前板部の厚さt3]
前板部201の厚さt2が小さくすることは、ボール打撃時、前板部201の撓みを促進する。したがって、フェース反発性をさらに高めるために、前板部201の厚さ(最小の厚さ)t3は、例えば、3.5mm以下とされ、好ましくは3.3mm以下とされ、さらに好ましくは3.0mm以下とされる。一方、前板部201の厚さt3が過度に小さくなると、フェース部材200の耐久性が損なわれるおそれがあることから、前記厚さt3は、例えば、1.7mm以上、好ましくは2.0mm以上、さらに好ましくは2.2mm以上とされる。本実施形態では、前板部201の厚さt3は、2.4mmとされている。
【0052】
本実施形態では、ヘッド本体100がステンレス鋼からなり、フェース部材200がチタン合金からなる。このような金属材料の組み合わせは、溶接によって、ヘッドに要求される実用上の接合強度を得ることは困難である。この点に鑑み、本実施形態のヘッド1は、ヘッド本体100とフェース部材200とがロウ付けにより接合されている。ロウ付けは、例えば、ヘッド本体100とフェース部材200との間にロウ材を介在させ、かつ、これを溶融固化させることで両者を接合する。
【0053】
図7に示されるように、第2返し部203は、フェース支持部101よりも、フェース中心FC側に突出させても良い。このような態様によれば、ヘッド本体100とフェース部材200との間に介在するロウ材が流動化した場合に、ロウ材がフェース部材200の前板部201と第2返し部203との間に流れ込むことが抑制される。したがって、このような態様によれば、仕上がり時の外観に優れたヘッド1を提供することができる利点がある。
【0054】
特に好ましい態様では、ヘッド本体100は、第2返し部203からヘッド後方に距離を隔てた位置で、フェース中心FC側に突出する周辺ウエイト部106を備えるのが望ましい。このような態様によれば、ヘッド1の周辺部に多くの重量が配分され、ヘッド1の慣性モーメントが増大する。
【0055】
また、第2返し部203と周辺ウエイト部106との間に、溝状の凹部Gが形成されることから、ヘッド本体100とフェース部材200との間に介在するロウ材が流動化した場合に、この凹部G内に留めることができる。したがって、この態様では、ロウ材が、フェース部材200の前板部201と第2返し部203との間に流れ込むことをより確実に抑制できる。したがって、このような態様によれば、さらに仕上がり外観に優れたヘッド1を提供することができる。このような作用をさらに高めるために、周辺ウエイト部106は、第2返し部203よりも、フェース中心FC側に突出しても良い。
【0056】
また、ヘッド本体100とフェース部材200との接合強度を高めるために、例えば、第2返し部203の後面203dには、ヘッド後方に突出する突起205が設けられても良い。また、フェース支持部101には、突起205を嵌め込むための凹部110が形成されても良い。このような態様では、ヘッド本体100とフェース部材200との接合面積を増加させ、両者の接合強度を高めることができる。また、これらの突起205及び凹部110は、ヘッド本体100とフェース部材200とを接合するに際して、両部材を正確に位置決めするのに役立つ。
【0057】
本実施形態では、突起205はフェース部材200の外周縁に沿って連続してのびるリブ状とされている。他の形態では、突起205は、例えば、フェース部材200の外周縁に沿って間欠的に設けられた複数の突起から構成されても良い。同様に、ヘッド本体100のフェース支持部101に設けられた凹部110は、突起205に対応して、連続して延びる溝状である。他の態様では、凹部110は、間欠的に設けられた複数の凹部で構成されても良い。なお、フェース部材200の第2返し部203の側に凹部を、フェース支持部101の側に、突起が設けられても良い(図示省略)。
【0058】
[他の実施形態]
上記実施形態では、フェース部材200において、第1返し部202及び第2返し部203は、フェース部材200の上部(トップ3側)、下部(ソール4側)及びトウ側部に設けられた好ましい態様を示した。ただし、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、種々変形して実施され得る。例えば、第1返し部202及び第2返し部203は、フェース部材200の上部(トップ3)、下部(ソール4)、トウ側部(トウ5側の部分)及びヒール側部(ヒール6側の部分)の少なくとも一つに設けられれば良い。また、フェース部材200の上記各部の少なくとも一つ(例えば、下部)に第1返し部202及び第2返し部203が設けられる場合、第1返し部202及び第2返し部203は、フェース部材200の下部の全部に設けられる必要はなく、下部の少なくとも一部に設けられれば良い。以下、いくつかの他の実施形態が説明される。
【0059】
図8には、本発明の他の実施形態として、ヘッド1の分解斜視図が示されている。
図8に示されるように、フェース部材200は、トウ5に至っていない態様を含む。この実施形態では、フェース部材200の前板部201は、フェース2のトウ・ヒール方向の中央部分を構成し、
図4に示したフェース部材200よりも、トウ・ヒール方向長さが小さく構成されている。
【0060】
また、この実施形態のフェース部材200において、第1返し部202及び第2返し部203は、フェース部材200の上部(トップ3)及び下部(ソール4)に設けられており、トウ側の縁及びヒール側の縁には設けられていない。このような態様においても、フェース2の上下方向の広い範囲に亘って、フェース反発性を向上させることができる。
【0061】
図9には、本発明の他の実施形態として、ヘッド1の分解斜視図が示されている。
図9に示されるヘッド1は、フェース部材200において、第1返し部202及び第2返し部203は、フェース部材200の下部(ソール4)にのみ設けられており、上部、トウ及びヒールの各縁には設けられていない点で
図8の実施形態と異なっている。この実施形態では、フェース2のより下方領域にまでフェース反発性が高い領域を広げることができる。アイアン型ゴルフクラブヘッドでは、地面に直接置かれたボールを打撃する機会が多いことから、フェース2のソール4側の反発性を高めることは大きな意義がある。
【0062】
なお、図示していないが、本発明は、フェース部材200において、第1返し部202及び第2返し部203は、フェース部材200のトウ側を上下にのびる縁にのみ設けられる態様や、ヒール側を上下にのびる縁にのみ設けられる態様を包含する。
【0063】
以上、本発明の実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な開示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、種々変更して実施することができる。
【実施例0064】
図1~
図6の基本構造を有するアイアン型のゴルフクラブヘッドが、表1の仕様に基づき試作され、それらのフェース反発性及び耐久性(フェース部材とヘッド本体との接合強度)が、テストされた。フェース部材は、チタン合金(6-4チタン)で、ヘッド本体は、ステンレス鋼(SUS630)でそれぞれ形成された。なお、比較例は、特許文献1の
図4の構成とされた。このヘッドでは、フェース部材の外周面も、ヘッド本体に指示されている。ヘッド1各部の詳細は、表1の通りである。また、テスト方法は、次の通りである。
【0065】
[フェース反発性テスト]
フェース中心及びフェース中心から上下左右に5mm離れた位置(合計5箇所の)についてCORが測定された。CORは、反発係数(Coefficient Of Restitution)を意味し、USGA(United States Golf Association:全米ゴルフ協会)で規定されている「Interim Procedure for Measuring the Coefficient of Restitution of an Iron Clubhead Relative to a Baseline Plate Revision 1.3 January 1, 2006」に基づいて測定された。評価は、上記5箇所のCORの平均値であり、実施例1の値を100とする指数である。数値が大きいほどフェース反発性に優れることを示す。
【0066】
[耐久性テスト]
各供試ヘッドに同一のFRP製のクラブシャフトを装着してアイアン型ゴルフクラブ(全長38インチ)を試作し、それらをスイングロボットに取り付け、ヘッドスピードが41m/sとなるように調節してゴルフボールを各クラブで打撃し、ヘッド本体とフェース部材との接合部に剥離が生じるまでの打球数が測定された。前記剥離は、100球打撃毎に、目視により観察された。結果は、実施例1の打球数を100とする指数であり、数値が大きいほど耐久性に優れることを示す。
【0067】
【0068】
テストの結果、実施例のヘッドは、フェース部材とヘッド本体との接合強度を維持しつつ、フェース反発性を向上することができることが確認できた。