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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062999
(43)【公開日】2022-04-21
(54)【発明の名称】防振装置用内筒、および防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/14 20060101AFI20220414BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
F16F13/14 Z
F16F15/08 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171260
(22)【出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】服部 優三
(72)【発明者】
【氏名】小島 宏
(72)【発明者】
【氏名】古郡 猛
【テーマコード(参考)】
3J047
3J048
【Fターム(参考)】
3J047AA05
3J047AA11
3J047AB01
3J047DA10
3J047FA02
3J047FA04
3J048AA02
3J048BA24
3J048EA15
(57)【要約】
【課題】弾性体を射出成形したときに、芯金部における軸方向の開口端縁に、弾性体を形成するゴム材料の一部が接着するのを防ぐ。
【解決手段】振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内筒11、および他方に連結されるとともに、内筒を囲繞する外筒と、内筒の外周面に接着され、内筒と外筒とを弾性的に連結する弾性体と、を備える防振装置用内筒2であって、内筒は、筒状の芯金部21と、芯金部の外周面に固着された樹脂部22と、を備え、芯金部における中心軸線Oに沿う軸方向の開口端縁21aを覆う保護キャップ23を備え、保護キャップは、樹脂部に破断可能な弱化部24を介して連結されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内筒、および他方に連結されるとともに、前記内筒を囲繞する外筒と、
前記内筒の外周面に接着され、前記内筒と前記外筒とを弾性的に連結する弾性体と、を備える防振装置用内筒であって、
前記内筒は、筒状の芯金部と、前記芯金部の外周面に固着された樹脂部と、を備え、
前記芯金部における中心軸線に沿う軸方向の開口端縁を覆う保護キャップを備え、
前記保護キャップは、前記樹脂部に破断可能な弱化部を介して連結されている、防振装置用内筒。
【請求項2】
前記芯金部の少なくとも軸方向の端部、および前記保護キャップの各外周面は、軸方向から見て非円形状を呈し、
前記保護キャップのうち、軸方向の内側を向く内面は、前記芯金部における軸方向の開口端縁と、同一平面上に位置し、
前記弱化部は、周方向に間隔をあけて複数設けられている、請求項1に記載の防振装置用内筒。
【請求項3】
前記樹脂部は、前記芯金部の外周面のうち、軸方向の端部より軸方向の内側に位置する部分に設けられ、
前記弱化部の周方向の大きさ、若しくは径方向の大きさは、軸方向に沿って内側から外側に向かうに従い、大きくなっている、請求項2に記載の防振装置用内筒。
【請求項4】
前記芯金部における軸方向の端部の外周面は、軸方向から見て円形状を呈し、
前記芯金部における軸方向の開口端縁は、前記保護キャップのうち、軸方向の内側を向く内面にめり込み、
前記弱化部は、前記保護キャップと前記樹脂部とを、周方向の全長にわたって連続して連結している、請求項1に記載の防振装置用内筒。
【請求項5】
振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内筒、および他方に連結されるとともに、前記内筒を囲繞する外筒と、
前記内筒の外周面に接着され、前記内筒と前記外筒とを弾性的に連結する弾性体と、を備える防振装置であって、
前記内筒は、請求項1から4のいずれか1項に記載の防振装置用内筒において、前記弱化部が破断されて前記保護キャップが除去され、前記芯金部における軸方向の開口端縁が露呈している、防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置用内筒、および防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内筒、および他方に連結されるとともに、内筒を囲繞する外筒と、内筒の外周面に接着され、内筒と外筒とを弾性的に連結する弾性体と、を備える防振装置が知られている。この種の防振装置として、内筒が、筒状の芯金部と、芯金部の外周面に固着された樹脂部と、を備えることで、コストおよび重量を抑えながら、チューニングを容易に行うことを可能にする構成が知られている。
防振装置は、例えば次のようにして形成される。
まず、芯金部をインサート品として樹脂部を射出成形することで、内筒を形成した後に、樹脂部の外周面に、接着剤を塗布する等の下地処理を施し、その後、内筒をインサート品として弾性体を射出成形することで、内筒の外周面に弾性体が接着された本体ゴムを形成し、この本体ゴムを外筒内に嵌合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-86101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の防振装置では、芯金部における中心軸線に沿う軸方向の開口端縁に、接着剤が付着することで、弾性体を射出成形したときに、弾性体を形成するゴム材料の一部が、芯金部における軸方向の開口端縁に接着するおそれがあった。この場合、芯金部における軸方向の開口端縁に当接する締結部材が、ゴム材料によって例えば軸方向に対して傾斜させられることで、緩みやすくなる等の問題がある。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、弾性体を射出成形したときに、芯金部における軸方向の開口端縁に、弾性体を形成するゴム材料の一部が接着するのを防ぐことができる防振装置用内筒、および防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の防振装置用内筒は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内筒、および他方に連結されるとともに、前記内筒を囲繞する外筒と、前記内筒の外周面に接着され、前記内筒と前記外筒とを弾性的に連結する弾性体と、を備える防振装置用内筒であって、前記内筒は、筒状の芯金部と、前記芯金部の外周面に固着された樹脂部と、を備え、前記芯金部における中心軸線に沿う軸方向の開口端縁を覆う保護キャップを備え、前記保護キャップは、前記樹脂部に破断可能な弱化部を介して連結されている。
【0007】
この発明によれば、芯金部における軸方向の開口端縁を覆い、かつ樹脂部に破断可能な弱化部を介して連結された保護キャップを備えているので、樹脂部の外周面に、接着剤を塗布する等の下地処理を施した後に、弱化部を破断して保護キャップを除去することにより、接着剤が、芯金部における軸方向の開口端縁に付着するのを防ぐことができる。これにより、弾性体を射出成形したときに、弾性体を形成するゴム材料の一部が、芯金部における軸方向の開口端縁に接着するのを防ぐことが可能になり、芯金部における軸方向の開口端縁に当接する締結部材が、ゴム材料によって、例えば軸方向に対して傾斜させられるのを防ぐことができる。
【0008】
前記芯金部の少なくとも軸方向の端部、および前記保護キャップの各外周面は、軸方向から見て非円形状を呈し、前記保護キャップのうち、軸方向の内側を向く内面は、前記芯金部における軸方向の開口端縁と、同一平面上に位置し、前記弱化部は、周方向に間隔をあけて複数設けられてもよい。
【0009】
この場合、保護キャップの外周面が、軸方向から見て非円形状を呈するので、例えば、芯金部および保護キャップを相対的に周方向に回転し、弱化部を破断する際に、保護キャップの外周面を容易に保持することができる。
保護キャップのうち、軸方向の内側を向く内面が、芯金部における軸方向の開口端縁と、同一平面上に位置しているので、芯金部における軸方向の端部の外周面が、軸方向から見て非円形状を呈していても、弱化部を破断する際に、芯金部および保護キャップを相対的に周方向に回転させることが可能になり、少ない力で弱化部を破断して保護キャップを除去することができる。
【0010】
前記樹脂部は、前記芯金部の外周面のうち、軸方向の端部より軸方向の内側に位置する部分に設けられ、前記弱化部の周方向の大きさ、若しくは径方向の大きさは、軸方向に沿って内側から外側に向かうに従い、大きくなってもよい。
【0011】
この場合、弱化部の周方向の大きさ、若しくは径方向の大きさが、軸方向に沿って内側から外側に向かうに従い、大きくなっているので、前述のように弱化部を破断したときに、弱化部を、樹脂部から分離させ、保護キャップに連結させたままにすることができる。また、樹脂部が、芯金部の外周面のうち、軸方向の端部より軸方向の内側に位置する部分に設けられているので、弱化部における軸方向の内端部を、芯金部における軸方向の開口端縁から軸方向の内側に離すことができる。
以上より、破断した弱化部の、樹脂部側の破断痕が、芯金部における軸方向の開口端縁より軸方向の外側に位置するのを防ぐことが可能になり、芯金部における軸方向の開口端縁に当接する締結部材が、軸方向に対して傾斜させられるのを確実に防ぐことができる。
【0012】
前記芯金部における軸方向の端部の外周面は、軸方向から見て円形状を呈し、前記芯金部における軸方向の開口端縁は、前記保護キャップのうち、軸方向の内側を向く内面にめり込み、前記弱化部は、前記保護キャップと前記樹脂部とを、周方向の全長にわたって連続して連結してもよい。
【0013】
この場合、弱化部が、保護キャップと樹脂部とを、周方向の全長にわたって連続して連結しているので、芯金部の外周面を全域にわたって、樹脂部、保護キャップ、および弱化部により覆うことができる。また、芯金部における軸方向の開口端縁が、保護キャップのうち、軸方向の内側を向く内面にめり込んでいるので、芯金部における軸方向の開口端縁が空気に触れるのを確実に抑制することができる。
以上より、防振装置用内筒を長期間保管しても、芯金部の外周面、および芯金部における軸方向の開口端縁に錆が発生するのを防ぐことができる。
芯金部の外周面が、軸方向から見て円形状を呈するので、芯金部における軸方向の開口端縁が、保護キャップの内面にめり込んでいても、弱化部を破断する際に、芯金部および保護キャップを相対的に周方向に回転させることが可能になり、少ない力で弱化部を破断して保護キャップを除去することができる。
芯金部における軸方向の開口端縁が、保護キャップの内面にめり込んでいることから、弱化部における軸方向の外端部を、芯金部における軸方向の開口端縁から軸方向の内側に離すことが可能になり、弱化部が、保護キャップと樹脂部とを、周方向の全長にわたって連続して連結していても、破断した弱化部の、樹脂部側の破断痕が、芯金部における軸方向の開口端縁より軸方向の外側に位置するのを抑制することができる。これにより、芯金部における軸方向の開口端縁に当接する締結部材が、軸方向に対して傾斜させられるのを確実に防ぐことができる。
【0014】
本発明の防振装置は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内筒、および他方に連結されるとともに、前記内筒を囲繞する外筒と、前記内筒の外周面に接着され、前記内筒と前記外筒とを弾性的に連結する弾性体と、を備える防振装置であって、前記内筒は、本発明の防振装置用内筒において、前記弱化部が破断されて前記保護キャップが除去され、前記芯金部における軸方向の開口端縁が露呈している。
【0015】
この発明によれば、弾性体を射出成形したときに、弾性体を形成するゴム材料の一部が、芯金部における軸方向の開口端縁に接着するのを防ぐことが可能になり、芯金部における軸方向の開口端縁に当接する締結部材が、ゴム材料によって、例えば軸方向に対して傾斜させられるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る防振装置用内筒、および防振装置によれば、弾性体を射出成形したときに、芯金部における軸方向の開口端縁に、弾性体を形成するゴム材料の一部が接着するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る一実施形態として示した防振装置の軸方向の中央部における横断面図である。
図2図1に示す防振装置のII-II線矢視断面図である。
図3】本発明に係る第1実施形態として示した防振装置用内筒の斜視図である。
図4】本発明に係る第2実施形態として示した防振装置用内筒の要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る防振装置の一実施形態を、図1および図2を参照しながら説明する。
本実施形態の防振装置1は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される内筒11、および他方に連結されるとともに、内筒11を囲繞する外筒12と、内筒11の外周面に接着され、内筒11と外筒12とを弾性的に連結する弾性体13と、を備えている。
なお、防振装置1は、例えば自動車用のサスペンションブッシュやエンジンマウント、あるいは工場に設置される産業機械のマウント等として用いられる。
【0019】
内筒11は、筒状の芯金部21と、芯金部21の外周面に固着された樹脂部22と、を備えている。
以下、芯金部21の中心軸線Oに沿う方向を軸方向といい、軸方向から見た平面視において、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。軸方向において、防振装置1の中央部側を内側といい、防振装置1の中央部から離れる側を外側という。
【0020】
芯金部21における軸方向の両端部21dは、外筒12から軸方向の外側に各別に突出している。芯金部21のうちの少なくとも軸方向の端部21dは、軸方向から見て非円形状を呈する。芯金部21の外周面に、軸方向の全長にわたって連続して延びる平坦な第1面取り部21bが、周方向に間隔をあけて2つ形成されている。芯金部21は、軸方向の全長にわたって、軸方向から見て非円形状を呈する。第1面取り部21bは、芯金部21の外周面において、中心軸線Oを径方向に挟む両側に位置する各部分に設けられている。
以下、軸方向から見た平面視において、2つの第1面取り部21bが互いに対向する向きを一方向Xといい、一方向Xに直交する方向を他方向Yという。
芯金部21の内周面における一方向Xの中央部に、軸方向の全長にわたって連続して延びる第1キー溝21cが形成されている。
【0021】
樹脂部22は、例えばポリアミド等の合成樹脂材料で形成されている。樹脂部22は、芯金部21の外周面のうち、軸方向の端部21dより軸方向の内側に位置する部分に設けられている。樹脂部22は、芯金部21の外周面における軸方向の端部21dを除く全域にわたって設けられている。
樹脂部22の少なくとも軸方向の端部の外周面は、軸方向から見て非円形状を呈する。図示の例では、樹脂部22の外周面は、軸方向の全長にわたって、軸方向から見て非円形状を呈する。
【0022】
樹脂部22は、芯金部21の外周面における軸方向の中間部分に設けられた中部分26と、中部分26から軸方向の外側に向けて各別に延びる一対の外部分27と、を備えている。
【0023】
外部分27は、芯金部21の外周面において、軸方向の端部21dより軸方向の内側に位置する部分に設けられている。外部分27の肉厚は、全域にわたって同等になっている。軸方向から見て、外部分27の外周面は、芯金部21における軸方向の端部21dの外周面と同じ形状を呈する。
【0024】
中部分26の肉厚は、全域にわたって、外部分27の肉厚と同等以上となっている。中部分26の、径方向の外側を向く頂面は、周方向の全長にわたって、軸方向に沿う縦断面視で、軸方向に真直ぐ延びている。中部分26は、軸方向から見て、一方向Xに長い長方形状を呈する。中部分26の外周面のうち、一方向Xを向き、かつ他方向Yに延びる短辺部分26aは、軸方向から見て突の曲線状を呈する。中部分26の外周面のうち、他方向Yを向き、かつ一方向Xに延びる長辺部分26bは、軸方向から見て凹曲線状を呈する。中部分26において、短辺部分26aにおける他方向Yの中央部の肉厚が最大とされ、長辺部分26bにおける一方向Xの中央部の肉厚が最小となっている。短辺部分26aと長辺部分26bとの接続部分は、軸方向から見て突の曲線状を呈する。
【0025】
弾性体13は、ゴム材料により形成されている。弾性体13は、樹脂部22の外周面における全域にわたって加硫接着されている。図示の例では、弾性体13は、芯金部21の外周面における軸方向の両端部21dにも加硫接着されている。
弾性体13における軸方向の両端部に、径方向の外側に向けて突出し、周方向の全長にわたって連続して延びるフランジ部13aが形成されている。フランジ部13aが、外筒12内に嵌合されている。弾性体13において、フランジ部13aより軸方向の内側に位置する部分の外周面に、径方向の内側に向けて窪む窪み部が、周方向に間隔をあけて2つ形成されている。窪み部は、弾性体13の外周面において、中心軸線Oを一方向Xに挟む両側に位置する各部分に設けられている。
【0026】
弾性体13に形成された2つの窪み部を径方向の外側から囲い、2つの液室14を画成する被覆部材15が設けられている。液室14には、例えば、水、およびエチレングリコール等が充填される。
被覆部材15は、フランジ部13aにより軸方向の両側から挟まれ、かつ弾性体13の外周面のうち、フランジ部13a同士の間に位置し、かつ窪み部同士の間に位置する部分に当接した状態で、外筒12内に嵌合されている。
被覆部材15の外周面と外筒12の内周面との間に、2つの液室14同士を連通するオリフィス通路16が形成されている。オリフィス通路16は、中心軸線Oを中心に二回り程度の角度範囲にわたって連続して延びている。
【0027】
被覆部材15は、周方向に沿って複数設けられ、周端縁同士が互いに突き当てられて全体で円筒状をなしている。図示の例では、被覆部材15は、半割りの筒状に形成され2つ設けられている。被覆部材15は、弾性体13の外周面のうち、フランジ部13a同士の間に位置する部分を全域にわたって覆っている。2つの被覆部材15の各周端縁は、一方向Xの中央部に位置し、軸方向から見て他方向Yに延びている。2つの被覆部材15は、同等の形状で同等の大きさに形成され、それぞれが軸方向に反転した状態で設けられている。
【0028】
そして、この防振装置1に振動が入力されたときに、弾性体13が弾性変形しつつ、2つの液室14の内容積が変動することで、液室14内の液体がオリフィス通路16を流通して液柱共振を生じさせることにより振動が減衰、吸収される。
【0029】
次に、内筒11を形成するための防振装置用内筒2について説明する。
【0030】
防振装置用内筒2は、芯金部21における軸方向の開口端縁21aを覆う保護キャップ23を備えている。保護キャップ23は、図3に示されるように、樹脂部22に破断可能な弱化部24を介して連結されている。保護キャップ23のうち、軸方向の内側を向く内面は、芯金部21における軸方向の開口端縁21aと、同一平面上に位置している。
【0031】
保護キャップ23に、軸方向に貫く貫通孔23dが周方向に間隔をあけて複数形成されている。貫通孔23dは、弱化部24が設けられている周方向の位置と同じ周方向の位置に設けられている。
保護キャップ23は、芯金部21の開口端縁21aに載置された小径部23aと、小径部23aから軸方向の外側に向けて突出した大径部23bと、を備えている。なお、保護キャップ23は、小径部23aおよび大径部23bのうちのいずれか一方のみを備えてもよく、例えば、大径部23bが、芯金部21の開口端縁21aに載置されてもよい。
【0032】
大径部23bの外周面は、周方向の全長にわたって、小径部23aの外周面より径方向の外側に位置し、かつ樹脂部22の外部分27の外周面と同じ径方向の位置に位置している。大径部23b、小径部23a、および芯金部21における軸方向の端部21dそれぞれの外周面の、軸方向から見た形状は、互いに同じになっている。これにより、大径部23bの外周面のうち、芯金部21の第1面取り部21bが位置する周方向の部分、つまり一方向Xの両端部に、第2面取り部23eが形成されている。
小径部23aの外周面は、周方向の全長にわたって、芯金部21における軸方向の端部21dの外周面と段差なく軸方向に連なっている。
【0033】
保護キャップ23の外周面は、小径部23aおよび大径部23bを含む軸方向の全長にわたって、軸方向から見て非円形状を呈する。なお、保護キャップ23のうち、大径部23bのみの外周面が、軸方向から見て非円形状を呈してもよい。
保護キャップ23の内周面に、芯金部21の内周面に形成された第1キー溝21cと軸方向に連なる第2キー溝23cが形成されている。第2キー溝23cの溝幅は、第1キー溝21cの溝幅と同じになっている。第2キー溝23c、および第1キー溝21cそれぞれの周方向の位置は互いに同じになっている。
【0034】
保護キャップ23の内周面は、軸方向の全長にわたって、軸方向から見て、芯金部21の内周面と同じ形状で同じ大きさに形成されている。保護キャップ23の内周面は、周方向の全長にわたって、芯金部21の内周面と段差なく軸方向に連なっている。
【0035】
弱化部24は、周方向に間隔をあけて複数設けられている。芯金部21における軸方向の端部21dの外周面のうち、周方向で互いに隣り合う弱化部24同士の間に位置する部分が、外部に露呈している。弱化部24の上端部は、大径部23bの下端開口縁、および小径部23aの外周面に接続され、弱化部24の下端部は、樹脂部22の外部分27における軸方向の開口端縁に接続されている。弱化部24のうち、径方向の外側を向く外面は、外部分27および大径部23bそれぞれの外周面と軸方向に段差なく連なっている。
弱化部24の周方向の大きさは、軸方向の内側から外側に向かうに従い、大きくなっている。弱化部24は、径方向の外側から見て三角形状を呈する。なお、弱化部24の径方向の大きさを、軸方向に沿って内側から外側に向かうに従い、大きくしてもよい。
【0036】
次に、防振装置1の製造方法について説明する。
【0037】
まず、外周面に第1面取り部21bが設けられた芯金部21を形成する。次に、芯金部21のうち、少なくとも軸方向の開口端縁21aに、錆の発生を抑えるためのメッキ層を形成する。芯金部21は、例えば炭素鋼等により形成され、メッキ層は、例えば亜鉛ニッケル合金等により形成される。次に、芯金部21をインサート品として、樹脂部22、弱化部24、および保護キャップ23を射出成形することで、防振装置用内筒2を形成する。その後、樹脂部22の外周面に、ブラスト加工、および接着剤を塗布する等の下地処理を施す。
【0038】
そして、弱化部24を破断して、保護キャップ23を除去することで、内筒11を形成する。この際、芯金部21内に軸体を挿入し、軸体に設けられたキーを、第2キー溝23cを軸方向に通過させて第1キー溝21cに挿入する。これにより、軸体および芯金部21の周方向の相対的な回転移動を規制する。この状態で、保護キャップ23の大径部23bの第2面取り部23eを保持し、保護キャップ23を芯金部21に対して周方向に回転させることで、弱化部24を周方向に引張して破断する。これにより、図2に示されるような、保護キャップ23が除去されて芯金部21における軸方向の開口端縁21aが露呈した内筒11が得られる。この内筒11では、弱化部24を破断したときに、樹脂部22における軸方向の開口端縁に生じた突状の破断痕は、芯金部21における軸方向の開口端縁21aより軸方向の内側に位置している。
【0039】
次に、この内筒11をインサート品として弾性体13を射出成形し、内筒11の外周面に弾性体13が接着された本体ゴムを形成した後に、この本体ゴムを外筒12内に嵌合することで、防振装置1を形成する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態による防振装置用内筒2、および防振装置1によれば、芯金部21における軸方向の開口端縁21aを覆い、かつ樹脂部22に破断可能な弱化部24を介して連結された保護キャップ23を備えているので、樹脂部22の外周面に、接着剤を塗布する等の下地処理を施した後に、弱化部24を破断して保護キャップ23を除去することにより、接着剤が、芯金部21における軸方向の開口端縁21aに付着するのを防ぐことができる。
これにより、弾性体13を射出成形したときに、弾性体13を形成するゴム材料の一部が、芯金部21における軸方向の開口端縁21aに接着するのを防ぐことが可能になり、芯金部21における軸方向の開口端縁21aに当接する締結部材が、ゴム材料によって、例えば軸方向に対して傾斜させられるのを防ぐことができる。
【0041】
保護キャップ23を備えていることから、芯金部21における軸方向の開口端縁21aに形成したメッキ層が、下地処理のブラスト加工時に剥がれるのを防ぐことが可能になり、芯金部21における軸方向の開口端縁21aに錆が発生するのを抑制することができる。これにより、芯金部21における軸方向の開口端縁21aに当接する締結部材が、軸方向に対して傾斜させられるのを確実に防ぐことができる。
【0042】
保護キャップ23の外周面が、軸方向から見て非円形状を呈するので、芯金部21および保護キャップ23を相対的に周方向に回転し、弱化部24を破断する際に、保護キャップ23の外周面を容易に保持することができる。
保護キャップ23のうち、軸方向の内側を向く内面が、芯金部21における軸方向の開口端縁21aと、同一平面上に位置しているので、芯金部21における軸方向の端部21dの外周面が、軸方向から見て非円形状を呈していても、弱化部24を破断する際に、芯金部21および保護キャップ23を相対的に周方向に回転させることが可能になり、少ない力で弱化部24を破断して保護キャップ23を除去することができる。
【0043】
弱化部24の周方向の大きさが、軸方向に沿って内側から外側に向かうに従い、大きくなっているので、前述のように弱化部24を破断したときに、弱化部24を、樹脂部22から分離させ、保護キャップ23に連結させたままにすることができる。また、樹脂部22が、芯金部21の外周面のうち、軸方向の端部21dより軸方向の内側に位置する部分に設けられているので、弱化部24における軸方向の内端部を、芯金部21における軸方向の開口端縁21aから軸方向の内側に離すことができる。
以上より、破断した弱化部24の、樹脂部22における突条の破断痕が、芯金部21における軸方向の開口端縁21aより軸方向の外側に位置するのを防ぐことが可能になり、芯金部21における軸方向の開口端縁21aに当接する締結部材が、軸方向に対して傾斜させられるのを確実に防ぐことができる。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態に係る防振装置用内筒3を、図4を参照しながら説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0045】
本実施形態では、芯金部21における軸方向の端部21dの外周面が、軸方向から見て円形状を呈する。芯金部21における軸方向の開口端縁21aは、保護キャップ52のうち、軸方向の内側を向く内面にめり込んでいる。弱化部53は、薄膜状に形成され、保護キャップ52と樹脂部22とを、周方向の全長にわたって連続して連結している。保護キャップ52の外周面は、軸方向から見て非円形状を呈する。なお、保護キャップ52の外周面は、軸方向から見て、例えば円形状等を呈してもよい。
【0046】
この防振装置用内筒3においても、弱化部53を破断する際、前記実施形態と同様に、芯金部21内に軸体を挿入して、軸体および芯金部21の周方向の相対的な回転移動を規制した状態で、保護キャップ52を芯金部21に対して周方向に回転させることで、弱化部53を周方向に引張して破断する。これにより、図2に示されるような、保護キャップ52が除去されて芯金部21における軸方向の開口端縁21aが露呈した内筒11が得られる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態による防振装置用内筒3によれば、弱化部53が、保護キャップ52と樹脂部22とを、周方向の全長にわたって連続して連結しているので、芯金部21の外周面を全域にわたって、樹脂部22、保護キャップ52、および弱化部53により覆うことができる。また、芯金部21における軸方向の開口端縁21aが、保護キャップ52のうち、軸方向の内側を向く内面にめり込んでいるので、芯金部21における軸方向の開口端縁21aが空気に触れるのを確実に抑制することができる。
以上より、防振装置用内筒3を長期間保管しても、芯金部21の外周面、および芯金部21における軸方向の開口端縁21aに錆が発生するのを防ぐことができる。
【0048】
芯金部21の外周面が、軸方向から見て円形状を呈するので、芯金部21における軸方向の開口端縁21aが、保護キャップ52の内面にめり込んでいても、弱化部53を破断する際に、芯金部21および保護キャップ52を相対的に周方向に回転させることが可能になり、少ない力で弱化部53を破断して保護キャップ52を除去することができる。
【0049】
芯金部21における軸方向の開口端縁21aが、保護キャップ52の内面にめり込んでいることから、弱化部53における軸方向の外端部を、芯金部21における軸方向の開口端縁21aから軸方向の内側に離すことが可能になり、弱化部53が、保護キャップ52と樹脂部22とを、周方向の全長にわたって連続して連結していても、破断した弱化部53の、樹脂部22側の破断痕が、芯金部21における軸方向の開口端縁21aより軸方向の外側に位置するのを抑制することができる。これにより、芯金部21における軸方向の開口端縁21aに当接する締結部材が、軸方向に対して傾斜させられるのを確実に防ぐことができる。
【0050】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0051】
例えば前記実施形態では、防振装置1として、液封ブッシュを示したが、液室14を有しない構成を採用してもよい。
前記第1実施形態において、弱化部24に代えて、例えば前記第2実施形態の弱化部53のような、周方向の全長にわたって連続して延びる構成等を採用してもよい。
前記第2実施形態において、弱化部53に代えて、例えば前記第1実施形態の弱化部24のような、周方向に間隔をあけて複数設けられた構成等を採用してもよい。
保護キャップ23、52を除去するタイミングは、前述の下地処理の後であれば、例えば、前記本体ゴムを形成した後等であってもよい。
【0052】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 防振装置
2、3 防振装置用内筒
11 内筒
12 外筒
13 弾性体
21 芯金部
21a 開口端縁
22 樹脂部
23、52 保護キャップ
24、53 弱化部
O 中心軸線
図1
図2
図3
図4