(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022063522
(43)【公開日】2022-04-22
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/89 20060101AFI20220415BHJP
G01N 21/95 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
G01N21/89 Z
G01N21/95 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171829
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】廣野 方敏
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 崇寛
(72)【発明者】
【氏名】鷲谷 泰佑
(72)【発明者】
【氏名】谷尾 哲嗣
(72)【発明者】
【氏名】大野 智之
(72)【発明者】
【氏名】古水戸 順介
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA07
2G051AA14
2G051AB01
2G051AB03
2G051CA04
2G051CB01
2G051CB05
2G051CC07
2G051CC09
2G051CC11
2G051DA06
(57)【要約】
【課題】画像処理の負荷が軽減された検査装置を提供することである。
【解決手段】検査装置は、両側テレセントリックな光学系と、光学系によって試料の光学像が形成される撮像素子と、光学系の光軸の周囲に内向きに配置された複数の反射面を有し、光軸に対して斜めに試料から発せられる複数の光ビームを反射する第1のミラーと、光軸の周囲に内向きに配置された複数の反射面を有し、光ビームを反射して光軸に対して斜めに撮像素子に導く第2のミラーとを備える。第1のミラーの反射面と第2のミラーの反射面は、試料の検査対象面から発せられる主光線と撮像素子に入射する主光線とが対称的である相関的な配置関係で配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を全周囲から斜めに撮像した画像に基づいて試料を検査する検査装置であって、
両側テレセントリック光学系と、
前記両側テレセントリック光学系によって前記試料の光学像が形成される撮像素子と、
前記両側テレセントリック光学系の光軸の周囲に内向きに配置された複数の反射面を有し、前記光軸に対して斜めに前記試料から発せられる複数の光ビームを反射する第1のミラーと、
前記光軸の周囲に内向きに配置された複数の反射面を有し、前記光ビームを反射して前記光軸に対して斜めに前記撮像素子に導く、前記試料の検査対象面から発せられる主光線と前記撮像素子に入射する主光線とが対称的である相関的な配置関係で前記反射面が前記第1のミラーの前記反射面に対して配置された第2のミラーと、
を備える検査装置。
【請求項2】
前記第1のミラーの前記反射面と前記第2のミラーの前記反射面は、前記検査対象面から発せられた主光線が、前記主光線の射出角の余角に等しい入射角で前記撮像素子に入射するように配置されている、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記第1のミラーによって反射された光ビームを前記光軸に平行に反射して前記両側テレセントリック光学系に導く、前記光軸の周囲に外向きに配置された複数の反射面を有する第3のミラーと、
前記両側テレセントリック光学系を通過した光ビームを反射して前記第2のミラーに導く、前記光軸の周囲に内向きに配置された複数の反射面を有する第4のミラーとをさらに備える、請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記第1のミラーは、内周面に前記反射面を有する正多角筒型ミラーを備え、
前記第2のミラーは、内周面に前記反射面を有する正多角筒型ミラーを備える、請求項1から3までのいずれかひとつに記載の検査装置。
【請求項5】
前記第1のミラーは、内周面に前記反射面を有する正八角筒型ミラーを備え、
前記第2のミラーは、内周面に前記反射面を有する正八角筒型ミラーを備える、請求項4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記両側テレセントリック光学系は、
対物レンズと、
前記対物レンズと同軸に配置され、前記対物レンズと焦点が一致するように配置される結像レンズと、
前記対物レンズ及び前記結像レンズと同軸に配置され、前記対物レンズと前記結像レンズの焦点の位置に配置される開口絞りと、
を備える、請求項1から5までのいずれかひとつに記載の検査装置。
【請求項7】
前記試料を全周囲から照明するリング型照明器をさらに備える、請求項1から6までのいずれかひとつに記載の検査装置。
【請求項8】
前記撮像素子によって生成された画像から前記試料の前記検査対象面の領域の画像を切り出す画像処理部と、
前記検査対象面の領域の画像について欠陥の有無を判定する判定部と、
前記判定部による判定結果を表示する表示部とをさらに備える、請求項1から7までのいずれかひとつに記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
量産される製品の多くは、出荷前に外観検査が行われる。特にネジの頭部やボトルの飲み口などの小型で円形な試料は、検査装置を単純化・小型化するためにも試料の上方から検査することが好ましい。
【0003】
そのような検査装置は、試料を全周囲から斜めに撮像して取得した画像から、検査対象面の領域を切り出し、画像処理によって欠陥等の検査をおこなう。このようにしておこなわれる検査では、画像処理の負荷を軽減し、検査を高速化することが重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Petr Zavyalov, "3D Hole Inspection Using Lens with High Field Curvature", Measurement Science Review. Vol.15, No.1 (2015).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、画像処理の負荷が軽減された検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の検査装置は、両側テレセントリック光学系と、両側テレセントリック光学系によって試料の光学像が形成される撮像素子と、両側テレセントリック光学系の光軸の周囲に内向きに配置された複数の反射面を有し、光軸に対して斜めに試料から発せられる複数の光ビームを反射する第1のミラーと、光軸の周囲に内向きに配置された複数の反射面を有し、光ビームを反射して光軸に対して斜めに撮像素子に導く第2のミラーとを備える。第1のミラーの反射面と第2のミラーの反射面は、試料の検査対象面から発せられる主光線と撮像素子に入射する主光線とが対称的である相関的な配置関係で配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る検査装置を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る検査装置における検査光学系を示す図である。
【
図3】
図3は、比較例に係る検査装置における検査光学系を示す図である。
【
図4】
図4は、両側テレセントリック光学系の概念図である。
【
図5】
図5は、正八角筒型ミラーの構成例を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、正八角錐型ミラーの構成例を模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図7は、試料の位置ずれに対する主光線の移動を示す図である。
【
図8】
図8は、主光線の移動に対する撮像素子の受光面上における入射位置の移動を示す図である。
【
図9】
図9は、光軸上に中心が位置する試料に対して、
図2に示された実施形態に係る検査光学系によって取得される画像を示す図である。
【
図10】
図10は、光軸から中心がずれている試料に対して、
図2に示された実施形態に係る検査光学系によって取得される画像を示す図である。
【
図11】
図11は、
図10において、二点鎖線で描かれた画像が、試料の光軸からのずれに合わせて移動された図である。
【
図12】
図12は、光軸上に中心が位置する試料に対して、
図3に示された比較例に係る検査光学系によって取得される画像を示す図である。
【
図13】
図13は、光軸から中心がずれている試料に対して、
図3に示された比較例に係る検査光学系によって取得される画像を示す図である。
【
図14】
図14は、
図13において、二点鎖線で描かれた画像が、試料の光軸からのずれに合わせて移動された図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態に係る検査装置について説明する。図面において、同一の構成要素は同一の参照符号を付して示し、重ねての説明は省略する。図面は、模式的または概念的なものである。
【0009】
図1は、実施形態に係る検査装置10を示す図である。検査装置10は、試料Sを検査するものである。たとえば、検査装置10は、試料Sの欠陥を検査する。検査装置10は、試料Sの検査対象面の欠陥を検査する。試料Sの検査対象面は、試料Sの側面Saである。欠陥は、傷、欠け、汚れ、変色、異物の付着等を含む。
【0010】
検査装置10は、検査光学系20と、画像処理部60と、判定部70と、表示部80と、コンベア90とを備えている。
【0011】
コンベア90は、たとえば、無端ベルト92と、無端ベルト92を周回させる一対の駆動ローラ94とを有する。コンベア90は、無端ベルト92上に配置される試料Sを搬送する。
【0012】
検査光学系20は、コンベア90の上方に配置されている。検査光学系20は、コンベア90上の所定の撮像領域を全周囲から斜めに撮像して画像を取得する。検査光学系20は、下方のコンベア90上に試料Sが位置するとき、試料Sを全周囲から斜めに撮像した画像を取得する。
【0013】
画像処理部60は、検査光学系20によって取得された試料Sが撮像された画像から、試料Sの検査対象面の領域の画像を切り出す。画像処理部60はまた、切り出した画像を判定部70に供給する。
【0014】
判定部70は、画像処理部60から供給される検査対象面の領域の画像について、欠陥の有無を判定する。たとえば、判定部70は、AIを利用した画像処理技術を使用して、欠陥の有無を判定する。判定部70はまた、判定結果を表示部80に供給する。
【0015】
表示部80は、判定部70から供給される判定結果に従って、試料Sの検査対象面の欠陥の有無を表示する。
【0016】
次に、
図2を参照して、検査装置10における検査光学系20について詳しく説明する。
図2は、検査光学系20を示す図である。
【0017】
検査光学系20は、照明器22と、第1のミラーユニットMU1と、両側テレセントリック光学系TOSと、第2のミラーユニットMU2と、撮像素子38とを備えている。
【0018】
照明器22は、試料Sを搬送する無端ベルト92の近くに配置されている。第1のミラーユニットMU1は、無端ベルト92と両側テレセントリック光学系TOSの間に配置されている。撮像素子38は、両側テレセントリック光学系TOSの光軸A上に配置されている。第2のミラーユニットMU2は、両側テレセントリック光学系TOSと撮像素子38の間に配置されている。
【0019】
照明器22は、無端ベルト92上において、両側テレセントリック光学系TOSの光軸Aの周囲に広がる撮像領域を照明する。撮像領域内に試料Sが位置するとき、照明器22は試料Sを照明する。たとえば、照明器22は、リング型照明器を備える。リング型照明器は、光軸A上に位置する試料Sを全周囲からたとえば均等に照明する。試料Sに照射された照明光は、試料Sによって反射または散乱される。
【0020】
両側テレセントリック光学系TOSは、撮像領域内に存在する物体の光学像を形成する。撮像領域内に試料Sが位置するとき、両側テレセントリック光学系TOSは、試料Sの光学像を形成する。
【0021】
撮像素子38は、光を受ける受光面38aを有する。受光面38aには、両側テレセントリック光学系TOSによって光学像が形成される。撮像素子38は、撮像領域内に存在する物体の光学像を、これに対応する画像の電気信号に変換して、画像を生成する。撮像領域内に試料Sが位置するとき、撮像素子38は、試料Sの画像を生成する。
【0022】
第1のミラーユニットMU1は、入射する光ビームを、反射作用によって両側テレセントリック光学系TOSの光軸Aに平行にして、両側テレセントリック光学系TOSに導く。第2のミラーユニットMU2は、両側テレセントリック光学系TOSを通過した光ビームを、反射作用によって両側テレセントリック光学系TOSの光軸Aに対して斜めにして、撮像素子38に導く。
【0023】
両側テレセントリック光学系TOSは、対物レンズ28と、結像レンズ32と、開口絞り30とを備えている。対物レンズ28と結像レンズ32と開口絞り30は同軸に配置されている。すなわち、対物レンズ28と結像レンズ32と開口絞り30はいずれも、光軸Aを中心軸とする回転体または回転対称体である。対物レンズ28と結像レンズ32と開口絞り30の中心軸は光軸Aに一致している。
【0024】
対物レンズ28と結像レンズ32は、それらの焦点が一致するように配置されている。開口絞り30は、対物レンズ28と結像レンズ32の焦点の位置に配置されている。開口絞り30は、通過する光のビーム径を調整する。
【0025】
第1のミラーユニットMU1は、1次ミラー(第1のミラー)24と、2次ミラー(第3のミラー)26とを備える。第2のミラーユニットMU2は、1次ミラー(第4のミラー)34と、2次ミラー(第2のミラー)36とを備える。
【0026】
撮像領域から両側テレセントリック光学系TOSを経て撮像素子38に至る光の経路上に関して、1次ミラー24は、撮像領域と両側テレセントリック光学系TOSの間に位置し、2次ミラー26は、1次ミラー24と両側テレセントリック光学系TOSの間に位置し、1次ミラー34は、両側テレセントリック光学系TOSと撮像素子38の間に位置し、2次ミラー36は、1次ミラー34と撮像素子38の間に位置する。
【0027】
1次ミラー24は、両側テレセントリック光学系TOSの光軸Aの周囲に内向きに配置された複数の反射面を有する。2次ミラー26は、両側テレセントリック光学系TOSの光軸Aの周囲に外向きに配置された複数の反射面を有する。1次ミラー34は、両側テレセントリック光学系TOSの光軸Aの周囲に外向きに配置された複数の反射面を有する。2次ミラー36は、両側テレセントリック光学系TOSの光軸Aの周囲に内向きに配置された複数の反射面を有する。
【0028】
1次ミラー24と2次ミラー26と1次ミラー34と2次ミラー36は、両側テレセントリック光学系TOSの光軸Aに同軸に配置されている。
【0029】
1次ミラー24の複数の反射面と2次ミラー26の複数の反射面と1次ミラー34の複数の反射面と2次ミラー36の複数の反射面は、同数であり、それぞれ、対応している。すなわち、1次ミラー24の1つの反射面によって反射された光ビームは、次に2次ミラー26の1つの対応の反射面によって反射され、次に1次ミラー34の1つの対応の反射面によって反射され、次に2次ミラー36の1つの対応の反射面によって反射される。
【0030】
たとえば、1次ミラー24は、内周面に反射面を有する正八角筒型ミラーを備え、2次ミラー26は、外周面に反射面を有する正八角錐型ミラーを備え、1次ミラー34は、外周面に反射面を有する正八角錐型ミラーを備え、2次ミラー36は、内周面に反射面を有する正八角筒型ミラーを備える。
【0031】
1次ミラー24の正八角筒型ミラーの内径は、試料Sの外径よりも大きい。2次ミラー26の正八角錐型ミラーの外径は、1次ミラー24の正八角筒型ミラーの内径よりも小さい。1次ミラー34の正八角錐型ミラーの外径は、2次ミラー36の正八角筒型ミラーの内径よりも小さい。2次ミラー36の正八角筒型ミラーの内径は、撮像素子38の外寸よりも大きい。たとえば、光軸Aに垂直な平面への投影において、2次ミラー26は1次ミラー24の内側に位置し、1次ミラー34と撮像素子38は2次ミラー36の内側に位置する。
【0032】
図5は、正八角筒型ミラーの構成例を示している。
図5に示されるように、正八角筒型ミラーは、正八角形の貫通孔を有する円筒状の外観形状を有し、1次ミラー(第1のミラー)24は、内周面に反射面24aを有し、2次ミラー(第2のミラー)36は、内周面に反射面36aを有する。
【0033】
図6は、正八角錐型ミラーの構成例を示している。
図6に示されるように、正八角錐型ミラーは、正八角錐台状の外観形状を有し、2次ミラー(第3のミラー)26は、外周面に反射面26aを有し、1次ミラー(第4のミラー)34は、外周面に反射面34aを有する。
【0034】
1次ミラー24と2次ミラー26と1次ミラー34と2次ミラー36の反射面の個数は、これに限定されない。1次ミラー24と2次ミラー26と1次ミラー34と2次ミラー36は、両側テレセントリック光学系TOSの光軸Aを取り囲む適当な個数の反射面を有していればよい。つまり、1次ミラー24と2次ミラー36は正多角筒型ミラーを備え、2次ミラー26と1次ミラー34は正多角錐型ミラーを備えてよい。
【0035】
以下、便宜上、撮像領域内に試料Sが位置するものとして説明する。すなわち、両側テレセントリック光学系TOSの光軸A上に、試料Sが存在するものとして説明する。また、1次ミラー24と2次ミラー26と1次ミラー34と2次ミラー36によって順に反射される光線の集合すなわち光ビームを考える。つまり、試料Sからの光線の中には、1次ミラー24に入射しない光線や、途中で逸脱して撮像素子38に到達しない光線も含まれるが、そのような光線は考慮から外す。
【0036】
照明器22から試料Sに照射された照明光は、試料Sによって反射または散乱される。試料Sによって反射または散乱された光の一部は、1次ミラー24に入射する。1次ミラー24は、光軸に対して斜めに入射する光ビームを内向きに反射して、2次ミラー26に導く。2次ミラー26は、1次ミラー24によって反射された光ビームを、両側テレセントリック光学系TOSの光軸Aに平行に反射して、両側テレセントリック光学系TOSに導く。両側テレセントリック光学系TOSを通過した光ビームは、1次ミラー34に入射する。1次ミラー34は、入射する光ビームを外向きに反射して、2次ミラー36に導く。2次ミラー36は、1次ミラー34によって反射された光ビームを内向きに反射して、光軸に対して斜めに撮像素子38に導く。撮像素子38の受光面38aには、試料Sの光学像が形成される。
【0037】
ここで、
図7と
図8を参照して、1次ミラー(第1のミラー)24の反射面と2次ミラー(第2のミラー)36の反射面の相関的な配置関係について説明する。説明にあたり、試料Sから発せられ、第1のミラーユニットMU1と両側テレセントリック光学系TOSと第2のミラーユニットMU2を経て、撮像素子38に入射する光ビームのうち、試料Sの検査対象面すなわち側面Saから発せられる光ビームを考える。さらに、試料Sの側面Saから発せられる光ビームの主光線Lに注目する。
図7は、試料Sの側面Saから発せられる主光線Lを示している。
図8は、撮像素子38に入射する主光線Lを示している。
【0038】
図7に示されるように、試料Sの側面Saに立てた法線に対する主光線Lの傾き角をθとする。便宜上、傾き角θを主光線Lの射出角と称する。また、
図8に示されるように、撮像素子38の受光面38aに立てた法線に対する主光線Lの傾き角すなわち入射角をηとする。
【0039】
1次ミラー24の反射面と2次ミラー36の反射面は、次の相関的な配置関係で配置されている。
図7に示される試料Sの側面Saから発せられる主光線Lと、
図8に示される撮像素子38に入射する主光線Lが対称的である。詳しくは、
図8に示されるように、撮像素子38の受光面38aに対する主光線Lの入射角ηが、試料Sの側面Saにおける主光線Lの射出角θの余角すなわちπ/2-θに等しい。
【0040】
言い換えれば、1次ミラー24の反射面と2次ミラー36の反射面は、
図7に示されるように、試料Sの側面Saから射出角θで発せられた主光線Lが、
図8に示されるように、射出角θの余角すなわちπ/2-θに等しい入射角で撮像素子38の受光面38aに入射するように配置されている。
【0041】
先の説明では、1次ミラー24と2次ミラー36が正八角筒型ミラーで構成される例を説明した。すなわち、1次ミラー24の反射面と2次ミラー36の反射面が両側テレセントリック光学系TOSの光軸Aに対して平行である例を説明した。しかし、これに限らない。1次ミラー24の反射面と2次ミラー36の反射面は、両側テレセントリック光学系TOSの光軸Aに対して傾斜していてもよい。1次ミラー24の反射面と2次ミラー36の反射面は、上述した相関的な配置関係を満たしてさえいればよい。
【0042】
次に、
図4を参照して、両側テレセントリック光学系の基本的な特徴について説明する。
図4は、両側テレセントリック光学系の概念図である。
【0043】
両側テレセントリック光学系40は、対物レンズ42と開口絞り44と結像レンズ46とを備える。対物レンズ42の後ろ側焦点と結像レンズ46の前側焦点は一致しており、ここに開口絞り44が配置されている。対物レンズ42の前側焦点に試料Sが位置し、結像レンズ46の後ろ側焦点に撮像素子48が位置している。試料Sからの光は、対物レンズ42によって集光され、開口絞り44を通り、結像レンズ46によって撮像素子48に結像される。
【0044】
このような両側テレセントリック光学系40においては、試料Sの各点から発せられる所定の広がり角の各光ビームの主光線は、試料Sと対物レンズ42の間と、結像レンズ46と撮像素子48の間との両方において、光軸Aと平行になる。このため、試料Sや撮像素子48の位置が変化しても、両側テレセントリック光学系40の撮像倍率は変化しない。
【0045】
ここで、比較例として、
図3を参照して、検査光学系20Cについて説明する。
図3は、比較例に係る検査光学系20Cを示す図である。簡単に言えば、検査光学系20Cは、検査光学系20から第2のミラーユニットMU2を省いた構成を有している。
【0046】
以下、
図7~
図14を参照して、本実施形態に係る検査光学系20によって取得される画像と、比較例に係る検査光学系20Cによって取得される画像との相違について説明する。
【0047】
まず、
図7を参照して、試料Sの位置ずれに伴って生じる主光線Lの移動について説明する。試料Sの側面Saから射出角θで発せられる主光線Lを考える。これは、試料Sの側面Saを斜め上方から、側面Saに立てた法線に対してθの角度をもって撮像することに相当する。つまり、試料Sの側面Saの各点から発せられる主光線Lの光ビームは、両側テレセントリック光学系TOSによって、撮像素子38の受光面38a上の一点に集光される。その結果、撮像素子38の受光面38aに、側面Saの光学像が形成される。
【0048】
図7は、試料Sの位置ずれに対する主光線の移動を示す図である。
図7には、光軸A上に中心が位置する試料Sが二点鎖線で描かれている。このときの試料Sの側面Saから発せられる主光線Lが二点鎖線で描かれている。また、二点鎖線で描かれた試料Sに対して、右方向に水平にΔだけ位置ずれした試料Sが実線で描かれている。このときの試料Sの側面Saから発せられる主光線Lが実線で描かれている。
【0049】
二点鎖線で描かれた試料Sに対して、
図7の紙面に平行な水平方向にΔだけ位置ずれした試料Sにおいては、側面Saから撮像素子38までの光路長は変化するが、側面Saの光学像は、両側テレセントリック光学系TOSによって形成されるため、撮像素子38の受光面38a上の側面Saの光学像の倍率は変化しない。しかし、側面Saの各点から発せられる主光線Lの光路は、
図7から明らかなように、Δの位置ずれに対して、d=Δsinθだけ平行に移動する。
【0050】
また、
図7には図示されていないが、二点鎖線で描かれた試料Sに対して、
図7の紙面に垂直な水平方向にΔだけ位置ずれした試料Sについて考える。この試料Sにおいては、側面Saから撮像素子38までの光路長は変化せず、また、側面Saの各点から発せられる主光線Lの光路は、Δの位置ずれに対して、そのままΔだけ平行に移動することは明らかである。
【0051】
このように、試料Sの側面Saを斜め方向から撮像する場合、試料Sが同じ量だけ位置ずれしても、主光線Lの移動量は、位置ずれの方向に依存して変化する。
【0052】
図3に示される比較例に係る検査光学系20Cにおいては、このような試料Sの位置ずれの方向に依存した主光線Lの移動量の変化は、撮像素子38の受光面38aに形成される光学像に影響する。
【0053】
図12~
図14は、
図3に示された比較例に係る検査光学系20Cによって取得された画像I3,I4を示している。
図12は、光軸A上に中心が位置する試料Sに対して取得された画像I3を示している。
図13と
図14は、光軸Aから中心がずれている試料Sに対して取得された画像I4を示している。
【0054】
図12~
図14の画像I3,I4において、試料Sの像S3,S4は実線で描かれている。また、
図13と
図14の画像I4には、便宜上、
図12の画像I3における試料Sの像S3が二点鎖線で重ねて描かれている。
図13の画像I4では、
図12の画像I3における試料Sの像S3は、そのままの位置に描かれている。一方、
図14の画像I4では、
図12の画像I3における試料Sの像S3は、なるべく画像I4における試料Sの像S4と重なるように、平行移動して描かれている。
【0055】
図12~
図14の画像I3,I4は、それぞれ、8つの試料Sの像S3,S4を含んでいる。8つの試料Sの像S3,S4は、それぞれ、1次ミラー24と2次ミラー26のそれぞれの8つの反射面を経由した光ビームによって形成された光学像に対応する像である。
【0056】
図12の画像I3においては、8つの試料Sの像S3はすべて、同じ形状を有している。また、8つの試料Sの像S3は、回転対称に位置している。回転対称の中心は、画像I3の中心に位置している。
【0057】
一方、
図13と
図14の画像I4においては、8つの試料Sの像S4の中心は、
図13から分かるように、画像I4の中心から外れている。
図14において、8つの試料Sの像S4は、8つの試料Sの像S3と完全に重なっていない。詳しくは、上下の中央に位置する左右の最も外側の2つの像S4は像S3と完全に重なっているが、他の像S4は像S3と完全に重なっていない。このことから分かるように、8つの試料Sの像S4は、すべてが同じ形状を有しているわけではない。さらに、8つの試料Sの像S3に対する8つの試料Sの像S4の移動量も、それぞれで異なっている。これは、主光線Lの移動量が、試料Sの位置ずれの方向に依存して変化する影響である。
【0058】
図3に示された比較例に係る検査光学系20Cにおいては、1次ミラー24と2次ミラー26を経由した光ビームの主光線Lはいずれも、撮像素子38の受光面38aに垂直に入射する。前述したように、試料Sの位置ずれに起因する主光線Lの移動量は、試料Sの位置ずれの方向に依存して異なる。このため、8つの試料Sの光学像は、光軸Aから中心が外れた試料Sに対しては、すべてが同じ形状に形成されない。このため、画像I4の8つの試料Sの像S4は、すべてが同じ形状になっていない。
【0059】
画像処理部60は、検査光学系20Cによって取得された画像I3,I4から、試料Sの像S3,S4の側面S3a,S4aの領域の画像を切り出す。
図12に示されるように、8つの試料Sの像S3が、すべて同じ形状を有し、回転対称に位置している場合には、側面S3aの領域の画像の切り出しは、比較的容易である。これは、1つの側面S3aの領域の画像を切り出す処理を、たとえば切り出し領域を回転対称の中心軸の軸回りに回転させることにより、他の試料Sの像S3にも適用できるからである。
【0060】
これに対して、
図13と
図14に示されるように、8つの試料Sの像S4が、すべて同じ形状ではない場合には、側面S4aの領域の画像の切り出しは、複雑にならざるを得ない。これは、1つの側面S4aの領域の画像を切り出す処理を、他の試料Sの像S4に簡単には適用できないからである。したがって、
図13と
図14の画像I4に対する試料Sの像S4の側面S4aの領域の画像の切り出しは、多くの時間を要してしまい、画像処理部60による画像処理の負荷が大きい。
【0061】
次に、
図8を参照して、本実施形態に係る検査光学系20によって取得される画像について説明する。
図8は、試料Sの位置ずれに起因する主光線Lの移動に対する撮像素子38の受光面38a上における入射位置の移動を示す図である。
【0062】
図7を参照して説明したように、
図7の紙面に平行な水平方向の試料Sのずれ量Δの位置ずれによる主光線Lの移動量dは、d=Δsinθである。本実施形態に係る検査光学系20においては、
図8に示されるように、2次ミラー36の反射面によって反射された主光線Lは、撮像素子38の受光面38aに入射角ηで入射する。入射角ηは、θの余角であり、η=π/2-θである。このため、試料Sの位置ずれに起因する主光線Lの移動に対する撮像素子38の受光面38a上における入射位置の移動量はΔとなる。
【0063】
つまり、
図7の紙面に平行な水平方向の試料Sのずれ量Δの位置ずれに対して、撮像素子38の受光面38a上における主光線Lの入射位置は、
図8の紙面に平行な水平方向にΔだけ移動する。
【0064】
また、前述したように、
図7の紙面に垂直な水平方向の試料Sにずれ量Δの位置ずれによる主光線Lの移動量は、
図7の紙面に垂直な水平方向に、そのままΔである。このため、撮像素子38の受光面38a上における主光線Lの入射位置の移動量は、
図8の紙面に垂直な水平方向にΔである。
【0065】
このため、本実施形態に係る検査光学系20においては、撮像素子38の受光面38a上における主光線Lの入射位置の移動量は、試料Sのずれ量Δの位置ずれに対して、位置ずれの方向に関係なく、一定値Δである。これは、検査光学系20によって形成される8つの試料Sの光学像はすべて同じ形状であることを意味する。
【0066】
図9~
図11は、
図2に示された本実施形態に係る検査光学系20によって取得された画像I1,I2を示している。
図9は、光軸A上に中心が位置する試料Sに対して取得された画像I1を示している。
図10と
図11は、光軸Aから中心がずれている試料Sに対して取得された画像I2を示している。
【0067】
図9~
図11の画像I1,I2において、試料Sの像S1,S2は実線で描かれている。また、
図10と
図11の画像I2には、便宜上、
図9の画像I1における試料Sの像S1が二点鎖線で重ねて描かれている。
図10の画像I2では、
図9の画像I1における試料Sの像S1は、そのままの位置に描かれている。一方、
図9の画像I1における試料Sの像S1は、平行移動によって、
図11の画像I2における試料Sの像S2と完全に重なり得るが、図解の便宜上、
図11の画像I2では、
図9の画像I1における試料Sの像S1は、画像I2における試料Sの像S2に隣接させて描かれている。
【0068】
図9~
図11の画像I1,I2は、それぞれ、8つの試料Sの像S1,S2を含んでいる。8つの試料Sの像S1,S2は、それぞれ、1次ミラー24と2次ミラー26と1次ミラー34と2次ミラー36のそれぞれの8つの反射面を経由した光ビームによって形成された光学像に対応する像である。
【0069】
図9の画像I1においては、8つの試料Sの像S1はすべて、同じ形状を有している。また、8つの試料Sの像S1は、回転対称に位置している。回転対称の中心は、画像I1の中心に位置している。
【0070】
一方、
図10の画像I2においては、8つの試料Sの像S2の中心は、画像I2の中心から外れている。また
図11から、8つの試料Sの像S1は、平行移動によって、8つの試料Sの像S2と完全に重なり得ることが分かる。
【0071】
すなわち、8つの試料Sの像S1と8つの試料Sの像S2は、すべて同じ形状であり、ただ、それらの中心位置が異なっているだけである。これは、主光線Lの移動量が、試料Sの位置ずれの方向に依存しないからである。
【0072】
画像処理部60は、検査光学系20によって取得された画像I1,I2から、試料Sの像S1,S2の側面S1a,S2aの領域の画像を切り出す。画像I1,I2のいずれにおいても、8つの試料Sの像S1,S2は、すべて同じ形状を有し、回転対称に位置している。したがって、たとえば、1つの側面S1aの領域の画像を切り出す処理は、切り出し領域を回転対称の中心軸の軸回りに回転させることにより、他の試料Sの像S1,S2にも適用できる。これは、側面S1a,S2aの領域の画像の切り出しを容易にする。これにより、画像処理部60による画像処理の負荷が大幅に軽減される。
【0073】
すなわち、本実施形態によれば、画像処理の負荷が軽減された検査装置10が提供される。
【0074】
実施形態では、第1のミラーユニットMU1が1次ミラー24と2次ミラー26を備え、第2のミラーユニットMU2は1次ミラー34と2次ミラー36を備える構成例を示した。しかし、第1のミラーユニットMU1の構成と第2のミラーユニットMU2の構成はこれに限定されない。第1のミラーユニットMU1の構成と第2のミラーユニットMU2の構成は、1次ミラー(第1のミラー)24と2次ミラー(第2のミラー)36が前述した相関的な配置関係を満たし、かつ、第1のミラーユニットMU1と第2のミラーユニットMU2が本来の機能を果たしさえすれば、適宜変更されてもよい。
【0075】
たとえば、2次ミラー26と1次ミラー34が省かれ、1次ミラー24と2次ミラー36が前述した相関的な配置関係を満たし、かつ、1次ミラー24が光ビームを光軸Aに平行に反射し、2次ミラー36が両側テレセントリック光学系TOSを通過した光ビームを直に反射する構成であってもよい。反対に、これらのミラー24,26,34,36に加えて、他の光学要素が適当に追加されてもよい。
【0076】
また、両側テレセントリック光学系TOSが対物レンズ28と結像レンズ32と開口絞り30を備える構成例を示したが、これに限らず、これらの光学要素に加えて、他の光学要素が適当に追加されてもよい。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
10…検査装置、20…検査光学系、22…照明器、MU1…第1のミラーユニット、24…1次ミラー、26…2次ミラー、TOS…両側テレセントリック光学系、28…対物レンズ、30…開口絞り、32…結像レンズ、MU2…第2のミラーユニット、34…1次ミラー、36…2次ミラー、38…撮像素子、38a…受光面、60…画像処理部、70…判定部、80…表示部、90…コンベア、92…無端ベルト、94…駆動ローラ、S…試料、Sa…側面。