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  • 特開-製品シートの製造方法 図1
  • 特開-製品シートの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006493
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】製品シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B26D 5/00 20060101AFI20220105BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20220105BHJP
   B26D 3/08 20060101ALI20220105BHJP
   B26D 3/02 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B26D5/00 F
B26D3/00 601A
B26D3/08 Z
B26D3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020108733
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】592086190
【氏名又は名称】株式会社レザック
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳本 忠二
(72)【発明者】
【氏名】川口 佳洋
【テーマコード(参考)】
3C024
【Fターム(参考)】
3C024AA07
(57)【要約】
【課題】製造効率が良く、且つ高精度な加工を実現できる製品シートの製造方法を提供する。
【解決手段】製品シートの製造方法は、原シート材20の製品裏面側20bに第1加工ツール31を垂直に挿入し、この第1加工ツールを製品表面部20aにまで届かない深さで製品外周部の形状に沿って移動させて垂直切込み部21を形成する工程と、原シート材20の製品裏面側20bの垂直切込み部21の外側から第2加工ツール32を斜めに挿入し、この第2加工ツールを垂直切込み部に交差させて製品表面部にまで達する深さで製品外周部の形状に沿って移動させて傾斜切込み部22を形成する工程と、製品表面の外周角部に傾斜切込み部に対応する傾斜面26を有し、製品外周部に垂直切込み部に対応する垂直面27を有する製品シート25を原シート材20から取り出す工程とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原シート材の製品裏面側に第1加工ツールを垂直に挿入し、この第1加工ツールを製品表面部にまで届かない深さで製品外周部の形状に沿って移動させて垂直切込み部を形成する工程と、
前記原シート材の製品裏面側の前記垂直切込み部の外側から第2加工ツールを斜めに挿入し、この第2加工ツールを前記垂直切込み部に交差させて製品表面部にまで達する深さで製品外周部の形状に沿って移動させて傾斜切込み部を形成する工程と、
製品表面の外周角部に前記傾斜切込み部に対応する傾斜面を有し、製品外周部に前記垂直切込み部に対応する垂直面を有する製品シートを前記原シート材から取り出す工程とを備える、製品シートの製造方法。
【請求項2】
前記傾斜切込み部の形成工程に先立ち、前記原シート材の製品裏面側から製品裏面部に第3加工ツールを用いて装飾加工を行う工程を備える、請求項1に記載の製品シートの製造方法。
【請求項3】
前記装飾加工工程後に前記垂直切込み部形成工程を行う、請求項2に記載の製品シートの製造方法。
【請求項4】
前記第1加工ツールは垂直刃であり、
前記第2加工ツールは傾斜刃である、請求項1~3のいずれかに記載の製品シートの製造方法。
【請求項5】
前記原シート材は、軟質合成樹脂からなる、請求項1~4のいずれかに記載の製品シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、テーブルマットや装飾用のアクリル看板等のように表面側の平坦性が求められる製品シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品シートは、通常、透明や半透明な軟質合成樹脂製の原シート材を加工して製造されるものであり、装飾等が求められる場合には、製品シートの表または裏面に装飾図形等を印刷することもあるし、製品シートの裏面に切削加工等を行って模様や装飾図形等を付与することもある。製品シートの裏面に滑り止め加工等を行うこともある。
【0003】
特開2007-69387号公報(特許文献1)は、シートの裏面に切削加工によって装飾部を形成した装飾用透明シートを開示している。図2は、この特許文献1の図1を引用掲載したものである。
【0004】
図2を参照して、特許文献1に記載の発明を簡単に説明する。透明シート1は所定の厚みを有する四角形の形態であり、透明シート本体2の外周縁の上端角部で手や物が引っ掛からないようにするために、図2(B)に示すように外周端面5の全周の表面2a側の上半部分に上方に行くほど内側に傾斜するテーパ面7を形成している。テーパ面7の下部は垂直面8であり、テーパ面7は垂直面8に対して35~55度の範囲の傾斜角度θ1に設定されている。
【0005】
図2(A)に示すように、透明シート本体2の裏面2bには、その四隅部に、裏面2bから切削加工されたV溝により、図形、記号、文字、あるいはそれらの組合せからなる装飾部9を形成している。
【0006】
特許第5941671号公報(特許文献2)は、軟質合成樹脂からなるデスクマットやテーブルマットなどの製造に用いられる軟質樹脂シートの端縁加工方法を開示している。具体的には、軟質樹脂シートの外周端面が、図2に示したようなテーパ面7および垂直面8を持つように加工するための方法を記載している。
【0007】
特許文献2に記載の軟質樹脂シートの端縁加工方法は、下記の工程を備える。
【0008】
(a)支持台に保持された原シート材の表面に対し斜め刃を挿入して、製品シートの外形状に沿うように移動させることにより、製品シートを囲むように傾斜切れ目を形成する第一カッティング工程。
【0009】
(b)支持台に保持された原シート材の表面に対し縦刃を裏面まで届くように挿入して、製品シートの外形状に沿うように移動させることにより、傾斜切れ目と繋がる縦切れ目が製品シートを囲むように形成するとともに、原シート材から製品シートを分離する第二カッティング工程。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007-69387号公報
【特許文献2】特許第5941671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2に記載の端縁加工方法は、原シート材の製品シート表面側からまず斜め刃を挿入し、その後で製品シートの表面側から縦刃を挿入して行うものである。特許文献1に記載の装飾部の加工方法は、製品シート裏面側から切削加工を行うものである。デスクマットやアクリル看板などの一部製品では、表面側に対しては平坦かつ無地(印刷などを除く)を要求する場合が多く、模様や滑り止めなどの加工を製品シートの裏面に行うのが一般的である。
【0012】
すでに加工を終えて加工テーブルから取り外された製品シートに対して追加工を行う場合、加工テーブル上に製品シートを再度設置しなければならないが、その際に製品シートを加工テーブル上に正確に位置決めする必要がある。製品シートの正確な位置決めができなかった場合には、加工ズレ等が生じてしまう。追加工が装飾等の形成加工であれば、装飾部を所望の位置に形成できないという不具合が生じる。
【0013】
原シート材に対して特許文献2に記載の製品シート端縁加工方法を行い、さらに特許文献1に記載の製品シート裏面への装飾加工を行う場合、まず、原シート材の製品表面側から端縁加工を行って製品シートを原シート材から分離して取り出し、その後、製品シートを裏返して加工テーブル上に正確に位置決めを行い、製品シートの裏面に装飾加工を行うことになる。
【0014】
上記のように製品シートの表面側から端縁加工を行い、その後に製品シートを裏返して加工テーブル上に置き、製品シートの裏面側から装飾部形成などの追加工を行うことは、以下に記載の問題点がある。
【0015】
まず、製品シートを裏返して加工テーブル上に置くという工程が必要になるので、作業工程が増加するとともに、製品シートの再設置時の位置決め不良に起因して模様等が所定位置からずれた不良品が発生するおそれがある。製品シートは、材質によっては比較的大きな重量になるものもある。比較的大きな重量の製品シートを裏返す際に製品シートが大きく撓むこともあるので、製品シートを裏返して再度加工テーブル上に正確に位置決めして設置するという作業は、作業者に大きな負担であるほか効率も低下する。
【0016】
特許文献2に記載の端縁加工方法では、原シート材の表面側から端縁加工を行った後に、製品シートの外周端部の傾斜面上に切断カス部が残っている。そのため端縁加工後に製品シートを原シート材から上方に取り出そうとすると、製品シートの外周端部が切断カス部に引っ掛かるために、カス部を引きちぎる、カス部を持ち上げる等のカス部を除去するといった作業が必要となる。また、端縁加工後に、製品シートに対して追加工を行う場合、追加工に先立ち、加工機の加工テーブル面を清掃することが必要である。このような作業も作業者にとっては煩雑である。
【0017】
原シート材から、大きさが異なったり、模様や装飾デザインが異なったりする複数種類の製品シートを加工して取り出す場合、1種類の製品シート毎に上記の作業を行うことが必要になり、複数種類の製品シートの製造効率が悪くなる。
【0018】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、製造効率が良く、且つ高精度な加工を実現できる製品シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る製品シートの製造方法は、以下の工程を備える。
【0020】
(a)原シート材の製品裏面側に第1加工ツールを垂直に挿入し、この第1加工ツールを製品表面部にまで届かない深さで製品外周部の形状に沿って移動させて垂直切込み部を形成する工程。
【0021】
(b)原シート材の製品裏面側の上記垂直切込み部の外側から第2加工ツールを斜めに挿入し、この第2加工ツールを垂直切込み部に交差させて製品表面部にまで達する深さで製品外周部の形状に沿って移動させて傾斜切込み部を形成する工程。
【0022】
(c)製品表面の外周角部に上記傾斜切込み部に対応する傾斜面を有し、製品外周部に上記垂直切込み部に対応する垂直面を有する製品シートを原シート材から取り出す工程。
【0023】
本発明の一実施形態に係る製品シートの製造方法は、上記傾斜切込み部の形成工程に先立ち、原シート材の製品裏面側から製品裏面部に第3加工ツールを用いて装飾加工を行う工程を備える。この場合、好ましくは、上記装飾加工工程後に垂直切込み部形成工程を行う。
【0024】
一つの実施形態では、第1加工ツールは垂直刃であり、第2加工ツールは傾斜刃である。また、原シート材は、典型的には、軟質合成樹脂からなる。
【発明の効果】
【0025】
本願発明によれば、原シート材の製品シート裏面側から製品シートの端縁加工を行うものであるので、端縁加工後に製品シートの裏面に追加工を行う場合であっても製品シートを裏返すことなく、端縁加工に引き続いて加工テーブル上の製品シートに追加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る製品シートの製造工程を示す図である。
図2】特開2007-69387号公報(特許文献1)の図1を引用掲載した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る製品シートの製造工程を説明する。
【0028】
まず、図1(a)に示すように、例えば透明な軟質合成樹脂からなる原シート材20を加工テーブル30上に置く。原シート材20は、所定の厚みを持つ例えば四角形の形態であり、空気吸引等により加工テーブル30上に移動不能に設置される。
【0029】
なお、原シート材20は、典型的にはデスクマットや看板などの製品シート25を取り出すための原材料であるが、後述する加工ツールによって加工可能なものであれば、どのような材質のものであってもよい。また、本実施形態では、製品シート25の裏面に形成された装飾部を製品シート25の表面側から透視可能とするために、原シート材20を透明な軟質合成樹脂からなるとしたが、半透明や着色したものであっても差し支えない。さらに、原シート材20の形状は四角形に限らず、円形等の他の形状であってもよい。
【0030】
原シート材20は、製品シート25の表面となる製品表面側20aと、製品シート25の裏面となる製品裏面側20bとを有する。本発明の一実施形態では、第1加工工程として、原シート材20の裏面側20bから製品裏面部に第3加工ツール33を用いて装飾加工を行い、装飾部23を形成する。第3加工ツール33は、例えば、エンドミルやドリル等の切削工具であり、制御された動きで原シート材20の製品裏面側20bにV溝加工を施し、装飾部23を形成する。装飾部23は、図形、記号、文字またはそれらの組合せである。
【0031】
図1(a)の装飾部形成のための第1加工工程が終了すると、原シート材20を加工テーブル30上に置いたままで引き続き、図1(b)に示す垂直切込み部形成工程に進む。図1(b)に示すように、原シート材20の裏面側から第1加工ツール31を垂直に挿入し、この第1加工ツール31を製品表面部20aにまで届かない深さで製品外周部の形状に沿って移動させて垂直切込み部21を形成する。
【0032】
第1加工ツール31は、例えば原シート材20の裏面に垂直に切り込まれる縦刃である。垂直切込み部21は製品表面部20aにまで達していないので、製品シートとなる部分をまだ原シート材20から分離させることはできない。
【0033】
図1(b)に示す垂直切込み部形成工程が終了すると、原シート材20を加工テーブル30上に置いたままで引き続き、図1(c)に示す傾斜切込み部形成工程に進む。図1(c)に示すように、原シート材20の裏面側20bの上記垂直切込み部21の外側から第2加工ツール32を斜めに挿入し、この第2加工ツール32を垂直切込み部21に交差させて製品表面部20aにまで達する深さで製品外周部の形状に沿って移動させて傾斜切込み部22を形成する。
【0034】
第2加工ツール32は、例えば原シート材20の裏面に斜めに切り込まれる傾斜刃である。傾斜切込み部22は製品表面部20aにまで達しているので、製品シートとなる部分25を原シート材20から分離させることができる。製品シート25の裏面に対する傾斜刃32の傾斜角度は、好ましくは35~55度であり、より好ましくは45度である。
【0035】
図1(c)に示す傾斜切込み部形成工程が終了すると、図1(d)に示すように製品シート25を原シート材20から分離して取り出す。製品シート25は、製品表面20aの外周角部に傾斜切込み部22に対応する傾斜面26を有し、製品外周部に垂直切込み部21に対応する垂直面27を有する。製品シート25の表面20aと傾斜面26とがなす角度は、好ましくは125~145度であり、より好ましくは135度である。製品シート25の傾斜面26と垂直面27とがなす角度も、好ましくは125~145度であり、より好ましくは135度である。
【0036】
製品シート25を原シート材20から分離し、取り出す際に、製品シート25の外周端部に隣接して原シート材20の切断カス28が残り、また製品シート25の周りに原シート材20の残部29が残っているが、特に支障はない。すなわち、製品シート25の外周端部は、垂直面27および下方に向かって先細りの傾斜面26によって形成されているので、切断カス28および残部29をそのままの状態にしておいて製品シート25を加工テーブル30から上方に離して取り出すことができる。
【0037】
上述した本発明に係る実施形態によれば、種々の効果が得られる。まず、加工テーブル30上に原シート材20の製品裏面側を上にした状態で同一の機械本体で且つ同一の加工ステーションで装飾部形成加工と端縁加工とを同時または引き続いて行うことができるので、途中で原シート材20を裏返すというような煩雑な作業が不要となり、さらに原シート材20の再設置に伴う位置ずれ等に起因する不良品の発生を無くすことができる。
【0038】
また、原シート材20の切断カス28や残部29を除去することなく、製品シート25を原シート材20から分離取り出すことができるので、切断カスなどの廃棄物の除去や清掃に必要な作業を削減することができる。本発明によれば、共通の原シート材から複数種類の製品シートを加工して取り出す場合においても、複数の製品シートをまとめて取り出した後に、切断カス28および原シート材残部29をまとめて除去できる。さらに、各製品シート25の裏面に装飾部加工後の削りカスが残っていたとしても、それらをまとめてカス籠などの上で除去できる。その結果、加工機の加工テーブル上の清掃の手間が減るので、効率的な加工を行える。
【0039】
図1に示した製造工程は、本発明の一実施形態であり、他の実施形態であってもよい。例えば、装飾部23の形成工程(図1(a))を、垂直切込み部21の形成工程(図1(b))の後に行ってもよいし、垂直切込み部21の形成工程と同時に行ってもよい。
【0040】
製品シートの種類によっては、装飾部形成工程を省略することも可能である。あるいは、装飾部形成工程に代えて、または追加工として、製品シートの裏面に滑り止め加工や印刷加工などを行うようにしてもよい。
【0041】
以上、この発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、デスクマット、カッティングマット、装飾用看板等のシート状製品の製造方法として有利に利用され得る。
【符号の説明】
【0043】
20 原シート材、20a 製品表面側、20b 製品裏面側、21 垂直切込み部、22 傾斜切込み部、23 装飾部、25 製品シート、26 傾斜面、27 垂直面、30 加工テーブル、31 第1加工ツール、32 第2加工ツール、33 第3加工ツール。
図1
図2