(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006532
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】蓋材、包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 77/20 20060101AFI20220105BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220105BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B65D77/20 L
B65D65/40 D
B32B15/08 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020108812
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】池内 昌尋
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AA11
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3E067BA07A
3E067BB14A
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3E086BB05
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3E086CA35
4F100AB01A
4F100AB10A
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4F100JL14D
4F100YY00D
(57)【要約】 (修正有)
【課題】芳香剤や脱臭剤等の内容物を収容する容器を熱封緘して包装体を作製するために用いる、相互に剥離可能なガスバリア性外部層とガス透過性内部層とよりなる蓋材であって、容器から剥離させたときに内部層が開口周縁部を覆うように残存させられて内蓋を形成し、この内蓋を介して、容器に収容された内容物に由来する芳香成分の透過や大気中の臭い成分などの吸収が、経時的かつ安定して行われるように設計された蓋材を提供する。
【解決手段】ガスバリア性外部層を金属箔よりなるバリア層と、合成樹脂よりなる基材層と、合成樹脂よりなる接着剤層とで構成するとともに、ガス透過性内部層をシーラント層で構成し、かつ基材層、接着剤層及びシーラント層を連続させるとともに、基材層と接着剤層を同種の合成樹脂で構成し、かつ接着剤層とシーラント層を異種の合成樹脂で構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス放出性及び/又はガス吸収性の内容物を収容する容器の開口を覆うようにして開口周縁部に熱融着させられる蓋材であって、
ガスバリア性の外部層と、外部層の内側に剥離可能に積層させられているガス透過性の内部層とを備えており、
外部層は、外側から順に、金属箔よりなるバリア層と、合成樹脂よりなる基材層と、合成樹脂よりなる接着剤層とを有しており、
内部層は、合成樹脂よりなるシーラント層を有しており、
基材層と、接着剤層と、シーラント層とが相互に隣接して積層させられているとともに、基材層と接着剤層が同種の合成樹脂でかつ接着剤層とシーラント層が異種の合成樹脂で構成されることによって、接着剤層とシーラント層との間で外部層と内部層が剥離可能とさせられており、
熱融着後に外部層が内部層より剥離させられると、内部層が容器の開口を被覆するように残存させられて、ガス透過性の内蓋を形成することが可能とさせられている、
蓋材。
【請求項2】
基材層がポリエステルフィルムよりなるとともに、接着剤層がポリエステルポリウレタン系接着剤よりなる、請求項1の蓋材。
【請求項3】
基材層がポリアミド系フィルムよりなるとともに、接着剤層がユリア系接着剤よりなる、請求項1の蓋材。
【請求項4】
シーラント層がポリオレフィンフィルムよりなる、請求項2又は3の蓋材。
【請求項5】
内部層の平均密度が0.90~0.95g/cm3である、請求項1~4のいずれかの蓋材。
【請求項6】
バリア層の上面に保護層が積層されている、請求項1~5のいずれかの蓋材。
【請求項7】
ガス放出性及び/又はガス吸収性の内容物を収容する容器と、容器の開口を覆うようにして開口周縁部に熱融着させられた蓋材とを備える包装体であって、
蓋材が請求項1~6のいずれかの蓋材よりなるとともに、熱融着後に蓋材が容器より剥離させられると、蓋材の内部層が容器の開口を被覆するように残存させられて、ガス透過性の内蓋を形成することが可能とさせられている、
包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香り成分や臭い成分、水分等の気体(以下、それら成分を「ガス」と略称することがある。)を経時的に放出及び/又は吸収する、芳香剤や消臭剤、脱臭剤、吸湿剤のような製品(以下、「内容物」と総称することがある。)を収容する容器を熱封緘するための蓋材、並びに該内容物を収容した容器を本発明の蓋材で熱封緘してなる包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
前記内容物は、例えばフランジ付の成形容器に収容した後、厚さ中間に金属箔が配置させられたバリアフィルムを加工した蓋材で熱封緘してなる包装体として、使用に供される。かかる包装体は、未使用時には蓋材で密封されているため内容物の長期保管が可能であり、使用時には蓋材の一部ないし全部を容器より分離し、内容物を露出させることによって、ガスの放出/吸収が可能となる。
【0003】
しかし、内容物が液体や粉体の場合、開封状態の包装体に不意の振動や接触が加わると、容器の開口に何らかの堰止手段を講じない限りそれらが容易に漏出し、周囲を汚染する。また、内容物を外気に暴露させると、ガスの放出/吸収を徐々に行うことができなくなり、内容物は短期間で機能を喪失したり、品質が劣化したりする。
【0004】
上記問題に鑑み、特許文献1には、基材フィルム、バリア層及び基材層よりなる外部層と、接着層及びシーラント層よりなる内部層とを備える蓋材が記載されている。この蓋材は、接着層を溶融押出ポリエチレン樹脂で構成した点に特徴があり、容器から分離させると内部層が容器側に、その開口を被覆するように残存させられて、内蓋を形成する。この内蓋は、内容物の堰止手段として作用するとともに、外部空間と容器の収容空間との間で生ずるガスの放出/吸収の媒介手段として機能する。例えば内容物が芳香剤の場合には、芳香成分が内蓋を介して外部空間に徐々に放出され、また吸湿剤の場合には、水分が収容空間へ緩やかに吸収される。
【0005】
一方、特許文献1の蓋材には、内容物が芳香剤の場合において、芳香成分が経時的に安定して内蓋を透過しない問題があった。そこで本出願人は、この蓋材と同じく、相互に剥離可能な外部層と内部層とよりなる蓋材であって、内部層全体の平均密度(JIS K 7112)を所定範囲に限定することにより、芳香成分が経時的かつ安定して透過する内蓋を形成できることを見出し、特許文献2で報告した。ただし、内部層全体の平均密度は、接着層とシーラント層の各平均密度に基づき所定の方法で算出する必要があるため、煩雑さがやや否めない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-20744号公報
【特許文献2】特開2018-203265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記先行技術と同じく相互に剥離可能な外部層と内部層とよりなる蓋材であって、容器の開口周縁部に熱融着させた後に剥離させる過程で内部層が容器側に残存させられて内蓋を形成し、この内蓋により内容物を堰止できるとともに、この内蓋を介して、内容物に由来する芳香成分や、大気中の臭い成分、水分などのガスを容器の収容空間と外部空間との間で経時的かつ安定に透過させ得る蓋材を、上記先行技術とは異なる手段で提供することを課題とする。
【0008】
本発明は更に、芳香剤や脱臭剤、吸湿剤のような内容物を含む容器を本発明の蓋材で熱封緘してなる包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記先行技術の蓋材の内部層をなす接着層を、合成樹脂よりなる接着剤で構成するとともに、この接着剤層とシーラント層との間で剥離を生じさせることによってシーラント層を容器側に残存させるようにした蓋材が、前記課題の解決手段足り得ることを見出し、本発明を完成した。即ち本発明は、以下の蓋材及び包装体に関する。
【0010】
1)ガス放出性及び/又はガス吸収性の内容物を収容する容器の開口を覆うようにして開口周縁部に熱融着させられる蓋材であって、ガスバリア性の外部層と、外部層の内側に剥離可能に積層させられているガス透過性の内部層とを備えており、外部層は、外側から順に、金属箔よりなるバリア層と、合成樹脂よりなる基材層と、合成樹脂よりなる接着剤層とを有しており、内部層は、合成樹脂よりなるシーラント層を有しており、基材層と、接着剤層と、シーラント層とが相互に隣接して積層させられているとともに、基材層と接着剤層が同種の合成樹脂でかつ接着剤層とシーラント層が異種の合成樹脂で構成されることによって、接着剤層とシーラント層との間で外部層と内部層が剥離可能とさせられており、熱融着後に外部層が内部層より剥離させられると、内部層が容器の開口を被覆するように残存させられて、ガス透過性の内蓋を形成することが可能とさせられている、蓋材。
【0011】
2)基材層がポリエステルフィルムよりなるとともに、接着剤層がポリエステルポリウレタン系接着剤よりなる、1)の蓋材。
【0012】
3)基材層がポリアミド系フィルムよりなるとともに、接着剤層がユリア系接着剤よりなる、1)の蓋材。
【0013】
4)シーラント層がポリオレフィンフィルムよりなる、2)又は3)の蓋材。
【0014】
5)内部層の平均密度が0.90~0.95g/cm3である、1)~4)のいずれかの蓋材。
【0015】
6)バリア層の上面に保護層が積層されている、1)~5)のいずれかの蓋材。
【0016】
7)ガス放出性及び/又はガス吸収性の内容物を収容する容器と、容器の開口を覆うようにして開口周縁部に熱融着させられた蓋材とを備える包装体であって、蓋材が1)~6)のいずれかの蓋材よりなるとともに、熱融着後に蓋材が容器より剥離させられると、蓋材の内部層が容器の開口を被覆するように残存させられて、ガス透過性の内蓋を形成することが可能とさせられている、包装体。
【発明の効果】
【0017】
1)の蓋材は、包装体より分離させる過程で外部層が内部層より剥離させられ、内部層が容器側に残存させられて、内蓋を形成する。この内蓋はシーラント層よりなり、上記従来の蓋材と比較すると内部層の構成が簡素であるため、内容物由来のガスを経時的かつ安定に透過させることができる。特に内容物が芳香剤の場合には、芳香成分を外部空間に安定して持続的に放出させることができる。
【0018】
2)の蓋材は、1)の蓋材において、基材層を極性高分子であるポリエステル系フィルムで構成するとともに、接着剤層を同じく極性高分子である二液硬化型ポリエステルポリウレタン系接着剤の硬化物で構成した点に特徴があり、基材層をなす合成樹脂と接着剤層をなす合成樹脂が類似の化学構造を有することから、それら界面における凝集エネルギーが高められているため、外部層と内部層の剥離をより容易に行える。
【0019】
3)の蓋材は、1)の蓋材において、基材層を極性高分子であるポリアミド系フィルムで構成するとともに、接着剤層を同じく極性高分子であるユリア系接着剤の硬化物で構成した点に特徴があり、基材層をなす合成樹脂と接着剤層をなす合成樹脂が類似の化学構造を有することから、それら界面における凝集エネルギーが高められているため、外部層と内部層の剥離をより容易に行える。
【0020】
4)の蓋材は、2)又は3)の蓋材において、シーラント層がポリオレフィンフィルムで構成されており、ポリオレフィンは一般に非極性高分子であることから、極性高分子よりなる合成樹脂で構成された接着剤層とシーラント層との界面における凝集エネルギーが一方で低められる結果、外部層と内部層の剥離をより容易に行える。
【0021】
5)の蓋材は、1)~4)の蓋材において、内部層であるシーラント層の平均密度が所定範囲に限定されているため、例えば内容物が芳香剤である場合において、芳香成分がシーラント層(内蓋)をより経時的かつ安定して透過するようになる。
【0022】
6)の蓋材は、1)~5)の蓋材において、バリア層の上に保護層が更に積層されているため、金属箔の劣化を防止でき、また容器より剥離させるさい破れ難くなる。
【0023】
8)の包装体の主たる態様は、内容物を収容した容器を1)の蓋材で熱封緘したものであり、開封時に該蓋材の外部層が内部層より剥離させられると、内部層が容器の開口を被覆するように残存させられて、ガス透過性の内蓋を形成し、内蓋を介して内容物が所定の機能(芳香、脱臭、吸湿等)を奏するようになる。また、この内蓋はシーラント層で構成されるため、上記従来の蓋材を用いた包装体と比較すると、内容物由来のガスが経時的かつ安定に透過する。特に内容物が芳香剤の場合には、芳香成分を外部空間に安定して持続的に放出させることができる。8)の包装体のうち2)~7)のいずれかの蓋材で熱封緘したものは、各蓋材の効果に即した効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る包装体(未使用時、使用時)の垂直断面図である。
【
図2】本発明に係る包装体(未使用時)の垂直断面図(部分拡大図)である。
【
図3】本発明に係る包装体(使用時)の垂直断面図(部分拡大図)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、
図1~
図3を通じて本発明を詳細に説明するが、それら図面により本発明の範囲が限定されることはない。
【0026】
本発明の蓋材(1)は、容器(2)に内容物(C)を収容したのちこれを熱封緘するための部材であり、包装体(3)を与える。
【0027】
図1は、包装体(3)の一態様を示す。
図1(a)は未使用時の態様であり、蓋材(1)は、ガスバリア性の外部層(1a)と、ガス透過性の内部層(1b)とを備える。この内部層(1b)は、外部層(1a)の下面側に剥離可能に積層されているとともに、容器(2)の開口(21)を覆うようにして開口周縁部(22)に熱融着させられている。容器(2)は、その収容空間に内容物(C)が収容されており、蓋材(1)で熱封緘されている。一方、
図1(b)は使用時の態様であり、包装体(3)より蓋材(1)が剥離させられた後に、内部層(1b)が容器(2)の開口(21)を覆うようにして残存させられて内蓋(11b)を形成し、内蓋(11b)で封緘された包装体(31)が残る。この内蓋(11b)を介して、内容物(C)由来のガスが外部空間に拡散したり(同図中上矢印方向)、外部空間中の水分や臭い物質等が容器(2)の収容空間に吸収されたりする(同図中下矢印方向)。内蓋(11b)より分離させられた蓋材(11a)は廃棄される。
【0028】
図2は、包装体(3)の未使用時の態様を表す。
図2(a)~(c)において、蓋材(1)の外部層(1a)は、外側から順に、所定の保護樹脂層(12)、バリア層(13)、基材層(14)及び接着剤層(15)をこの順で有する複層とされる。但し保護層(12)は任意であり、省略できる。一方、内部層(1b)は、所定のシーラント層(16)よりなる単層とされる。
【0029】
本発明の蓋材(1)は、包装体(3)より分離させる過程において、外部層(1a)と内部層(1b)の間で、即ち接着剤層(15)とシーラント層(16)の間で剥離が生ずる。この機構を実現するための要件を以下に示す。
要件(i):基材層(14)と、接着剤層(15)と、シーラント層(16)とが、相互に隣接して積層させられている。
要件(ii):基材層(14)と接着剤層(15)とが同種の合成樹脂で構成されている。
要件(iii):接着剤層(15)とシーラント層(16)とが異種の合成樹脂で構成されている。
【0030】
要件(i)は、換言すると、基材層(14)が、接着剤層(15)を介してシーラント層(16)に積層させられていることである。
要件(ii)は、具体的には、基材層(14)をなす合成樹脂が分子内に極性基を有する高分子よりなるとともに、接着剤層(15)をなす合成樹脂が分子内に化学構造として例えば同種の極性基や主鎖構造等を有する、同系統の高分子よりなることをいう。この組合せにおいては、前者合成樹脂と後者合成樹脂の間で極性基同士の分子間力が生じ、凝集エネルギーが高められているため、接着剤層(15)は基材層(14)に対し、相対的に大きな密着性を帯びる。極性基としては、例えば、エステル基、ウレタン基、ユリア基、アミド基、水酸基が挙げられる。
要件(iii)は、具体的には、接着剤層(15)をなす合成樹脂が分子内に極性基を有する高分子よりなる一方、シーラント層(16)をなす合成樹脂が分子内に極性基を有さない高分子(例えばポリオレフィン)よりなることをいう。この組合せにおいては、前者合成樹脂と後者合成樹脂の間の分子間力が乏しく、凝集エネルギーも低められているため、接着剤層(15)は、シーラント層(16)に対しては、相対的に小さな密着性を帯びる。
以上の要件(i)~(iii)の有機一体性により、基材層(14)と接着剤層(15)の接着力のほうが接着剤層(15)とシーラント層(16)との接着力よりも大きくさせられているため、包装体(3)より蓋材(1)を分離させる過程で基材層(14)側に接着剤層(15)が追従し、接着剤層(15)とシーラント層(16)の間で剥離が生じる結果、内部層(1b)であるシーラント層(16)が容器(2)側に残存させられて内蓋(11b)を形成する、と考えられる。
【0031】
<外部層(1a)>
保護樹脂層(12)は、蓋材(1)の強度や耐久性、耐候性、耐薬品性等を高めるための機能層であり、必要に応じてバリア層(13)の上面に積層させられる。保護樹脂層(12)は各種公知の合成樹脂で構成でき、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、延伸ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムといった合成樹脂フィルムを使用できる。合成樹脂フィルムは、同種又は異種のフィルムを二以上組み合わせた複合フィルムであってよい。また、保護樹脂層(12)は、合成樹脂フィルムに代えて、エポキシ樹脂や塩素化ポリオレフィン樹脂、硝化綿、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の熱硬化性架橋性樹脂よりなるオーバーコート剤で構成してもよい。保護樹脂層(12)の厚みは特に限定されず、通常5~50μmである。
【0032】
保護樹脂層(12)とバリア層(13)との間には、両層の密着性を向上させてデラミネーションを防止する等の目的で、接着剤層(図示略)を設けてもよい。接着剤層は、後述の接着剤層(15)を構成する接着剤と同じもので構成でき、特に二液硬化型ポリウレタン系接着剤が好ましい。接着剤層の厚みは特に限定されず、通常1~5μmである。
【0033】
バリア層(13)は、内容物(C)をガスや光等から保護するための機能層であり、各種公知の金属箔で構成する。金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、鉄箔、ステンレス鋼箔、銅箔及びニッケル箔等が挙げられ、バリア機能、成形性及びコスト等を考慮すると、アルミニウム箔が好適である。アルミニウム箔としては、軟質(O材)若しくは硬質(H18材)の純アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が挙げられ、特にJIS H4160で規定されるA1000系又はA8000系の軟質材(O材)が成形性の点で好ましく、特にA8021H-O材、A8079H-O材及びA1N30-O材が好適である。バリア層(13)の厚みは特に限定されず、通常5~80μmである。なお、金属箔の片面又は両面には、保護層(12)とバリア層(13)の密着性、及び/又は、バリア層(13)と基材層(14)の密着性を高める等の目的で下地層を形成してもよく、下地層は各種公知の化成処理液で形成できる。化成処理液としては、例えば、リン酸と、クロム系化合物と、フッ素系化合物及び/又はバインダー樹脂とを含む水-アルコール溶液が挙げられる。クロム系化合物としてはクロム酸及び/又はクロム(III)塩を、フッ素系化合物としてはフッ化物の金属塩及び/又はフッ化物の非金属塩を、バインダー樹脂としてはアクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を、夫々例示できる。化成処理液の使用量は特に限定されず、通常、金属箔片面当たりのクロム付着量が0.1~50mg/m2となる範囲である。
【0034】
バリア層(13)と基材層(14)との間には、両層の密着性を向上させてデラミネーションを防止する等の目的で、接着剤層(図示略)を設けてもよい。接着剤層は、後述の接着剤層(15)を構成する接着剤と同じもので構成でき、デラミネーション防止の点で特に二液硬化型ポリウレタン系接着剤が好ましい。接着剤層の厚みは特に限定されず、通常1~5μmである。
【0035】
基材層(14)は、支持体として蓋材(1)の強度を確保するとともに、内容物(C)より生ずるガスに因るバリア層(13)の劣化等を防止する機能層である。基材層(14)は各種公知の合成樹脂で構成でき、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムや、ポリアミドフィルム、ポリウレタンフィルム、延伸ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムといった合成樹脂フィルムを使用できる。合成樹脂フィルムは、同種又は異種のフィルムを二以上組み合わせた複合フィルムであってよい。合成樹脂フィルムの片面又は両面は、バリア層(13)及び/又は接着剤層(15)との密着性を高める目的で、コロナ処理が施されていてもよい。基材層(14)をなす合成樹脂の融点は特に限定されず、通常190~260℃である。融点は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量測定(DSC)による測定値をいう(以下、融点というときは同様。)。基材層(14)の厚みも特に限定されず、通常10~40μmである。
【0036】
接着剤層(15)は、基材層(14)と、後述の内部層(1b)たるシーラント層(16)とを接合する層であり、合成樹脂よりなる接着剤(合成樹脂系接着剤)で構成する。接着剤をなす合成樹脂は組成物であり、ベースポリマーの他、硬化剤や硬化触媒、ビヒクル等を含み得る。接着剤は、一液硬化型及び二液硬化型のいずれであってもよく、例えば、二液硬化型ポリエーテルポリウレタン系接着剤及び/又は二液硬化型ポリエステルポリウレタン系接着剤などのポリウレタン系接着剤や、ポリウレアウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤(ビニルエステル系接着剤)、ユリア系接着剤、ポリアミド系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、エラストマー系接着剤が挙げられ、これらは組合せてもよい。基材層(14)がポリエステルフィルムやポリウレタンフィルムで構成される場合には、接着剤としては、ポリウレタン系接着剤としてポリエステルポリウレタン系接着剤が好ましく、特に主剤がポリエステルポリオールでありかつ硬化剤がポリイソシアネートである二液硬化型ポリエステルポリウレタン系接着剤が好ましく、当該硬化剤としてはアダクト、ヌレート体、ビウレット体などの変性イソシアネートを例示できる。基材層(14)がポリアミドフィルムで構成される場合には、接着剤としてはポリアミド系接着剤やユリア系接着剤が好ましい。ユリア系接着剤は二液硬化型として使用することもでき、硬化剤としては塩化アンモニウムや酸が挙げられる。接着剤層(15)をなす接着剤硬化物の耐熱温度は特に限定されないが、通常190~260℃の範囲で溶融ないし分解しない程度であればよい。接着剤層(15)の厚みも特に限定されず、通常1~5μmである。
【0037】
<内部層(1b)>
内部層(1b)はシーラント層(16)で構成される。シーラント層(16)は、蓋材(1)を容器(2)の開口周縁部(22)に熱融着させるための部材であるとともに、蓋材(1)の分離後に開口周縁部(22)に残存させられて内蓋(11b)を形成する。そしてこの内蓋(11b)が内容物(C)の堰止手段として作用するとともに、外部空間と容器(2)の収容空間との間で生ずるガス交換の媒介手段として機能する。シーラント層(16)は合成樹脂で構成でき、例えば、ホモポリプロピレン、ポリ(エチレン-プロピレン)ランダム共重合体、ポリエチレン-ポリプロピレンブロック共重合体、酸変性ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリオレフィンや、ポリビニルアルコール、アイオノマー樹脂及びアクリル系共重合樹脂より選ばれる一種の熱融着性樹脂よりなる合成樹脂フィルムが挙げられる。シーラント層(16)をなす合成樹脂の融点は特に限定されず、通常100~170℃である。また、シーラント層(16)の厚みも特に限定されず、通常20~100μmである。
【0038】
シーラント層(16)は、平均密度が0.90~0.95g/cm3、好ましくは0.91~0.93g/cm3であると、ガスの透過量をコントロールしやすくなるため好ましい。平均密度は、JIS K 7112で規格されるD法(平均密度こうばい管法)で求めた値をいう。シーラント層(16)を、同種又は異種の合成樹脂フィルムを二以上組み合わせた複合フィルムで構成する場合、シーラント層(16)全体の平均密度(DOG g/cm3)は、以下の式で求める。なお、nは通常2~5程度である。また、各シーラント層の厚みの単位は(μm)である。
【0039】
DOG=(DSL1×tSL1+DSL2×tSL2+…+DSLn×tSLn)/(tSL1+tSL2+…+tSLn)
(式中、DOGは内部層(Out Gassing)の平均密度を、DSL1はシーラント層1(Sealant)の密度を、tSL1はシーラント層1(Sealant)の厚さを、DSL2はシーラント層2(Sealant)の密度を、tSL2:シーラント層2の厚さを、DSLn はシーラント層n(Sealant)の密度を、tSLnはシーラント層nの厚さを、それぞれ表す。)。
【0040】
蓋材(1)は、基材層(14)をなす合成樹脂の融点と接着剤層(15)をなす合成樹脂の耐熱温度が双方とも、シーラント層(16)をなす合成樹脂の融点より少なくとも20℃高く設定されていると、熱融着時にシーラント層(16)を優先して溶融させることが可能となる結果、シーラント層(16)が接着剤層(15)や基材層(14)等の他の層と融合しにくくなる。結果、外部層(1a)と内部層(1b)の剥離がより容易となり、容器(2)より蓋材(1)を剥離させるさい、シーラント層(16)を容器(2)側に残存させやすくなる。
【0041】
蓋材(1)は、基材層(14)と接着剤層(15)の双方の合成樹脂を同系統の極性高分子で構成することにより、シーラント層(16)を容器(2)側に残存させることがより容易となる。具体的には、例えば、基材層(14)をポリエステルフィルムやポリウレタンフィルムで構成するとともに、接着剤層(15)を二液硬化型ポリエステルポリウレタン系接着剤の硬化物で構成したり、基材層(14)をポリアミド系フィルムで構成するとともに、接着剤層(15)をユリア系接着剤の硬化物やポリアミド系接着剤の硬化物で構成したりする態様が挙げられる。
【0042】
また、蓋材(1)は、上記各態様において、シーラント層(16)をなす合成樹脂を非極性高分子で構成することにより、シーラント層(16)を容器(2)側に残存させることが一層容易となる。具体的には、シーラント層(16)を前記ポリオレフィンフィルムで構成する態様が挙げられる。
【0043】
蓋材(1)をなす外部層(1a)と内部層(1b)は、前記したように相互に剥離可能なように積層されているが、易剥離性を考慮すると、剥離強度(JIS K6854-3)が通常0.4~1.5N/15mmに設定されているのがよい。
【0044】
蓋材(1)は、例えばドライラミネート法や押し出しラミネート法、ヒートラミネート法等で作製できる。
【0045】
蓋材(1)の形状は限定されず、例えば容器(2)の開口周縁部(22)と略同形又は略相似形であればよい。また、蓋材(1)には必要に応じて開封用切掛を設けてもよく、例えば、図(2)(a)で示されるように蓋材(1)の周縁にタブ(17)を設けたり、図(2)(b)で示されるようにタブ(17)の下面にノッチ(18)を設けたり、図(2)(c)で示されるようにタブ(17)の端面にスリット(19)を設けたりできる。ノッチ(18)の深さは特に限定されず、その先端が基材層(14)の上面側、その厚さ中間若しくはその下面側、又は接着剤層(15)の上面側、その厚さ中間、若しくはその下面側、又はシーラント層(16)の上面側若しくは厚さ中間に達しておればよい。スリット(19)の位置も特に限定されず、例えば、基材層(14)からシーラント層(16)に亘る厚さ中間の任意の一箇所に切れ込みを入れたり、接着剤層(15)を部分的に欠く未接着部位を設けたりすることにより、接着剤層(15)とシーラント層(16)の間で剥離が進行しやすくなる。
【0046】
図3は、包装体(3)の使用時の一態様を表す。本図において、蓋材(1)は、外部層(1a)と内部層(1b)との間で分離させられており、内部層(1b)が、開口周縁部(22)を覆うようにしたまま残存させられて、ガス透過性の内蓋(11b)を形成している。この内蓋(11b)は、内容物(C)の堰止手段として作用するとともに、外部空間と容器(2)の収容空間のガス移動(
図1及び
図3中の上下矢印)の媒介手段として機能する。
【0047】
容器(2)は、その形状は特に限定されず、
図1~
図3で示されるように、開口(21)と開口周縁部(22)を有するカップ状の容器であってよい。各図において、開口周縁部(22)は、水平状のフランジとされる。容器(2)は、単層シート又は二層以上の複合シートで作製でき、二層シートの場合には、
図2及び
図3で示すように、外部層(2a)と内部層(2b)が観念される。外部層(2a)は、例えばポリ塩化ビニル樹脂フィルム等の耐熱性材料で構成できる。内部層(2b)は、開口周縁部(22)に蓋材(1)のシーラント層(16)を熱融着させるべく、シーラント層(16)をなす合成樹脂フィルムと同一若しくは同種の合成樹脂よりなるフィルム又はシートで構成するのがよい。また、外部層(2a)と内部層(2b)との間には、容器(2)にバリア性をもたせるために、前記金属箔を介在させてもよい。複合シートは、例えばドライラミネート法や押し出しラミネート法、ヒートラミネート法等で作製でき、前記接着剤を使用できる。容器(2)の成形方法としては、深絞り成形等が挙げられる。
【0048】
内容物(C)としては、例えば芳香剤や消臭剤、脱臭剤、吸湿剤、徐放性の殺菌剤、昇華性の防虫剤のように、香り成分や臭い成分、水分、殺菌成分、防虫成分等の物質(ガス)を経時的に放出及び/又は吸収する物質が挙げられ、二種以上が組み合わさったものであってよい。内容物(C)の形状も特に限定されず、液体及び/又は固体であってよい。固体としては、粉体、ペレット、タブレット、フレーク、ビーズ、ゲル等が挙げられる。
【0049】
本発明の包装体(3)は、内容物(C)を容器(2)に収容させた後、開口周縁部(22)に本発明の蓋材(1)を、その開口(21)を覆うようにして、シーラント層(16)側より熱融着させることにより得られる。熱融着は各種公知の手段に依り、シール温度やシール圧、シール時間は特に限定されず、例えば、130~200℃、0.1~0.5MPa、1~5秒である。
【0050】
包装体(3)の開封は、蓋材(1)の端縁を摘んで容器(2)より剥離させることにより行う。例えば
図2(a)の態様の場合には、開封過程において、熱融着状態にある内部層(1b)たるシーラント層(16)が開口周縁部(22)付近で破断させられて、接着剤層(15)とシーラント層(16)との間で剥離が進行し、内部層(1b)であるシーラント層(16)が開口周縁部(22)に残存させられて内蓋(11b)を形成し、内蓋(11b)で封緘された包装体(31)が残る(
図1(b),
図3参照)。
【実施例0051】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を更に詳細に説明するが、それら具体例により本発明の範囲が限定されることはない。
【0052】
〈蓋材の作製〉
実施例1
JIS H4160で規定される厚さ9μmのアルミニウム箔(A1N30H-O)の片面に、市販の二液硬化型ポリエステルポリウレタン樹脂系(PU)接着剤(主剤:ポリエステルポリオール(東洋インキ(株)製 AD-76H5)、硬化剤:ポリイソシアネート(東洋インキ(株)製 CAT-60)、硬化物の融点200℃)を硬化膜厚が2μmとなるように塗工した後、厚さ12μmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(両面コロナ処理済、融点260℃)をラミネートした。
次いで、アルミニウム箔の他方の面に、前記PU接着剤を硬化膜厚が2μmとなるように塗工した後、厚さ12μmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(両面コロナ処理済、融点260℃)をラミネートさせることによって、保護層(PET)、バリア層(Al)及び基材層(PET)の三層よりなる複合材を作製した。
次いで、この複合材の一方のPETフィルムに、前記PU接着剤を、硬化膜厚が2μmとなるように塗工した後、シーラント層として、厚さ50μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(平均密度0.93g/cm3、融点130℃)をラミネートすることにより、保護層(PET)、バリア層(Al)、基材層(PET)、接着剤層(PU)及びシーラント層(LLDPE)の5層よりなる複合材を作製した。
次いで、この複合材を40℃で10日間エージングさせて、各接着剤層を硬化させた後、直径45mmの略円形にカットすることにより、蓋材Aを作製した。
【0053】
実施例2
実施例1において、シーラント層のLLDPEフィルムを厚さ50μmの低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム(平均密度0.91g/cm3、融点120℃)に変更した他は同様にして、蓋材Bを作製した。
【0054】
実施例3
実施例1において、基材層のPETフィルムを厚さ15μmの延伸6ナイロン(Ny)フィルム(融点220℃)に変更するとともに、接着剤層を市販のユリア樹脂系(UR)接着剤(尿素-ホルムアルデヒド共重合物、耐熱温度90℃)に変更した他は同様にして、蓋材Cを作製した。
【0055】
比較例1
実施例1において、PU接着剤を実施例3のUR接着剤に変更した他は同様にして、蓋材Dを作製した。
【0056】
比較例2
実施例3において、UR接着剤を、実施例1のPU接着剤に変更した他は同様にして、蓋材Eを作製した。
【0057】
参照例1
実施例1の複合材(PET/Al/PET)の一方のPETフィルムに、溶融ポリエチレン(PE)を用いて厚さ30μmのLLDPEフィルム(平均密度0.93g/cm3、融点130℃)を押出ラミネートすることにより、保護層(PET)、バリア層(Al)、基材層(PET)、接着層(PE)及びシーラント層(LLDPE)よりなる、従来構成の複合材を作製した。なお、接着層(PE)の厚みは20μmであり、平均密度は0.92g/cm3であり、融点は120℃であった。この複合材を、40℃で10日間エージングさせた後、直径45mmの略円形にカットすることにより、蓋材Fを作製した。
【0058】
参照例2
JIS H4160で規定される厚さ9μmのアルミニウム箔(A1N30H-O)の片面に、実施例1のPU接着剤を硬化膜厚が2μmとなるように塗工した後、厚さ12μmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(両面コロナ処理済、融点260℃)をラミネートした。次いで、アルミニウム箔の他方の面に、実施例1のPU接着剤を硬化膜厚が2μmとなるように塗工した後、厚さ15μmの延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(両面コロナ処理済、融点165℃)をラミネートさせることによって、保護層(PET)、バリア層(Al)及び基材層(OPP)よりなる複合材を作製した。次いで、この複合材のOPPフィルムに、溶融ポリエチレン(PE)を用いて厚さ30μmのLLDPEフィルム(平均密度0.93g/cm3、融点130℃)を押出ラミネートすることにより、保護層(PET)、バリア層(Al)、基材層(PET)、接着層(PE)及びシーラント層(LLDPE)よりなる、従来構成の複合材を作製した。なお、接着層(PE)の厚みは20μmであり、平均密度は0.92g/cm3であり、融点は120℃であった。次いで、この複合材を、40℃で10日間エージングさせた後、直径45mmの略円形にカットすることにより、蓋材Gを作製した。
【0059】
〈蓋材の層間剥離強度の測定〉
実施例1に係る蓋材Aの端面の外部層と内部層の界面付近にカッターナイフで切り込みを入れて開封用切欠(スリット)を設けたのち、市販の剥離強度測定装置((株)島津製作所製 ストログラフAGS-5kNX)において、一方のチャックで外部層を挟み、他方のチャックで内部層であるシーラントフィルム層を挟み、外部層と内部層を上下180度方向に速度100m/分で引張り、剥離強度(JIS K6854-3(1999年))を測定したところ、1.2N/15mmであった。
【0060】
〈包装体の作製〉
容器として、
図2で示されるような、カップ状で内部層がポリエチレン樹脂よりなりかつ外部層がポリ塩化ビニル樹脂よりなるもの(フランジの外径40mm、内径35mm)を準備した。次に、この容器に市販の液状芳香剤Aを3cc充填し、蓋材Aで熱封緘することにより、包装体Aを5個作製した。熱封緘は、蓋材Aのシーラント層と容器のフランジ上面とが対向するようにして、両者を熱融着させることにより行った。熱融着手段はローレットシール装置であり、条件は加熱温度が160℃、加圧力が0.2MPa、加熱加圧時間が1秒であった。
【0061】
〈剥離試験〉
各包装体Aについて、蓋材Aを、その端縁を摘んで上方向に引っ張り、容器より分離させたときの、剥離が生じた層(剥離箇所)を確認したところ、5個全てにおいて、接着剤層とシーラント層との間(表1中、「(14)/(15)」と表記する。)で剥離が進行していたことを確認した。
【0062】
〈内蓋のガス透過性評価〉
蓋材Aを剥離させた後の包装体Aには、5個全てにおいて、シーラント層であるLLDPEフィルムが容器側に内蓋として残存させられており、この状態の5個の包装体Aを、2週間、室温下に静置させた。その後、各包装体Aにおける芳香剤Aの減少量(g)を個別に算出し、それらの平均減少量(g)と標準偏差を求め、変動係数(標準偏差を平均値で除した値)を算出した。そして、以下の基準で透過性を判定した。結果を表1に示す。
○:変動係数0.05以下
△:変動係数0.05より大きく0.10以下
×:変動係数0.10より大きい
【0063】
蓋材B~Gについても蓋材Aと同様にして上記各試験及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
実施例1に係る包装体Aは、蓋材Aが、基材層と接着剤層が同種の合成樹脂で構成されているとともに、接着剤層とシーラント層が異種の合成樹脂で構成されているため、蓋材Aの接着剤層とシーラント層との間で易剥離が進行し、シーラント層のみが内蓋として容器側に残されたと考えられる。そしてこのシーラント層は、単層であるため、芳香剤A減少量の変動係数も非常に小さく、芳香成分が当該内蓋を介して外部空間に経時的かつ安定に透過していたことが判った。以上のことは、実施例2に係る蓋材B、実施例3に係る蓋材Cについても同様であった。
【0065】
比較例1に係る包装体Dは、蓋材Dが、基材層と接着剤層が異種の合成樹脂で構成されているため、開封の際、蓋材Dの接着剤層とシーラント層の間で剥離したサンプルが3個に留まり、残り2個は接着剤層とシーラント層の間(表1中、「(15)/(16)」と表記する。)のみならず、基材層と接着剤層との間(表1中、「(14)/(16)」と表記する。)でも剥離が進行するなど、剥離位置が安定しなかった。その結果、芳香剤A減少量の変動係数が非常に大きくなり、内蓋のガス透過性は不良となった。以上のことは、比較例2に係る蓋材Eについても同様であった。なお、こうした事情より、蓋材Dと蓋材Eについては、前記剥離強度を測定しなかった。
【0066】
参照例1に係る包装体Fは、従来構成の包装体であり、5個全てにおいて蓋材Fの基材層と接着層との間(表1中、「(14)/(15)」と表記する。)で易剥離が進行し、接着層及びシーラント層よりなる内蓋が容器側に残された。ただしこの内蓋は複層であるため、芳香剤Aの減少量に係る変動係数がやや大きく、芳香成分の透過性は実施例に係る包装体よりも劣っていた。以上のことは、参照例2に係る蓋材Gについても同様であった。
【0067】
本発明の蓋材は、香り成分や臭い成分、水分等の気体を経時的に放出及び/又は吸収する、芳香剤や消臭剤、脱臭剤、吸湿剤のような製品を収容する容器の熱封緘材として特に有用である。
(1)蓋材、(1a)外部層、(1b)内部層、(11a)剥離後の蓋材、(11b)内蓋、(12)保護樹脂層、(13)バリア層、(14)基材層、(15)接着剤層、(16)シーラント層、(17)開封用タブ、(18)開封用ノッチ、(19)開封用スリット、(2)容器、(2a)内部層、(2b)外部層、(21)開口、(22)開口周縁部(フランジ)、(C)内容物、(3)包装体(未使用時)、(31)包装体(使用時)