(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022065803
(43)【公開日】2022-04-28
(54)【発明の名称】理美容椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 1/06 20060101AFI20220421BHJP
【FI】
A47C1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020174518
(22)【出願日】2020-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】000149789
【氏名又は名称】株式会社大廣製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】廣田 能久
(72)【発明者】
【氏名】松本 新之介
【テーマコード(参考)】
3B099
【Fターム(参考)】
3B099EA06
3B099EA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新な動きによってシャンプーボールに対する間隔の調整を容易に行える理美容椅子の提供。
【解決手段】座シート2の後ろ側に接続され起倒回動する背もたれ1を備える。座シートは床への固定部11に対して上昇且つ後退する。背もたれは、座シートの上昇及び後退に伴い倒れる。背もたれが座シートに対して所定の設定傾斜角度に達すると、座シートを上昇させても、背もたれは設定傾斜角度以下に倒れないようにする傾斜規制部を備える。設定傾斜角度に背もたれが達した座シートの位置をさらに上昇させると、座シートが前方へスライドすることにより、背もたれの設定傾斜角度は変わらず座シートが後退することなく上昇する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床に設置される固定部と、前記固定部に対して上下動及び前後動を行う座シートと、前記座シートの後ろ側に接続され起倒回動する背もたれとを備え、
前記座シートは、前記固定部に対して上昇且つ後退し、前記固定部に対して下降且つ前進し、
前記背もたれは、前記座シートの上昇及び後退に伴い倒れ、前記座シートの下降及び前進に伴い起き上がるように構成された理美容椅子において、
前記背もたれが前記座シートに対して所定の設定傾斜角度に達すると、前記座シートを上昇させても、前記背もたれが前記設定傾斜角度以下に倒れないようにする傾斜規制部を備え、
前記設定傾斜角度に前記背もたれが達した前記座シートの位置をさらに上昇させると、前記座シートを前方へスライドさせることにより、前記背もたれの前記設定傾斜角度は変わらず、前記座シートが後退することなく上昇するように構成したことを特徴とする理美容椅子。
【請求項2】
床に設置される固定部と、前記固定部に対して上下動及び前後動を行う座シートと、前記座シートの後ろ側に接続され起倒回動する背もたれとを備え、
前記座シートは、平行リンク機構によって、前記固定部に対して上昇且つ後退し、前記固定部に対して下降且つ前進し、
前記背もたれは、前記平行リンク機構に連動する背もたれリンク機構によって、前記座シートの上昇及び後退に伴い倒れ、前記座シートの下降及び前進に伴い起き上がるように構成された理美容椅子において、
前記背もたれが前記座シートに対して所定の設定傾斜角度に達すると、前記座シートを上昇させても、前記背もたれが前記設定傾斜角度以下に倒れないようにする傾斜規制部を備え、
前記座シートは、前記平行リンク機構に対して前後方向にスライド可能に接続され、
前記背もたれが前記座シートに対して所定の設定傾斜角度に達した位置よりも前記座シートを前記平行リンク機構によって上昇させると、前記座シートが前記平行リンク機構に対して前方へスライドするように構成されたことを特徴とする理美容椅子。
【請求項3】
前記平行リンク機構は、基部フレームと上部フレームと、前記基部フレームと前記上部フレームとの間に渡された、第1リンクと第2リンクとを備え、
前記座シートは、前記上部フレームに対して、前後方向にスライド可能に接続され、且つ付勢手段よって後方へ付勢されていることを特徴とする請求項2記載の理美容椅子。
【請求項4】
前記背もたれリンク機構は、クローズドループ構造のリンク機構であり、前記座シートが前記上部フレームに対して前後方向にスライドすることによって、前記背もたれリンク機構を構成する一つのリンクの長さが小さくなるように構成されたことを特徴とする請求項3記載の理美容椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理美容椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
理美容椅子は、シャンプーや毛染めの施術のために、後方にシャンプーボールを配置した状態で用いられる。この種の理美容椅子にあっては、座シートが後方にスライドしながら背もたれが寝ていく。そのため、一定の高さに座シートが位置すると、後方にあるシャンプーボールと椅子との前後の位置が一定の位置にしか設定できず、お客様のリラックス出来る位置への微調整が出来ないという課題がある。
現状のこの機構は、初高置が低く最高置が高くまで上昇ように構成されていることを特徴とする。又、背もたれが比較的起きた状態では、椅子とシャンプーボールとの間に施術者が入れるスペースができ、被施術者に後方からマッサージを施すことができるというメリットもある。ところが、座シートを上昇させて背もたれが十分に倒れてシャンプーボールに接近した状態になった場合、もう少し座シートを上昇させようとするとこの上昇に伴い背もたれは更に倒れてしまい、背もたれがシャンプーボールに干渉する状態になってしまうことがある。反対にもう少し座シートを下げようとするとこの下降に伴い背もたれが起きてしまいシャンプーボールから遠くなってしまう。このように被施術者の体格に応じて、被施術者が最もリラックスできる位置に微調整することが困難であった。
この種の理美容椅子に関する先行技術文献としては、特許文献1~3を挙げることができる。
特許文献1は、後方にあるシャンプーボールに所定位置まで近接して停止し、かつ、近接して停止した後方の所定位置において、背凭れのみをさらに起伏可能としたことを特徴とする理美容椅子を開示している。
特許文献2は、背もたれ支持部が座シート支持部に対して起きる動きを行なう際に座シート支持部を接地部材に対して前進させ、反対に、背もたれ支持部が座シート支持部に対して倒れる動きを行なう際に座シート支持部を接地部材に対して後進する動きを行なうようにした理美容椅子を開示する。
特許文献3は、平行リンクを備えた昇降部に座シートの後退を抑制する前後動抑制手段を備え、座シートが後方のシャンプーボールに向かって上昇及び後退の動きを行っている途中に前後動抑制手段を作動するように設けることにより、座シートが上昇及び後退を行う区間と後退を抑制しながら上昇を行う区間とを設けることができ、座シートとシャンプーボールの前後方向の位置関係を設定した後に、上下方向の位置関係を調整することができるため、理美容椅子をシャンプーボールに向かって上昇及び後退させる際に、シャンプーボールと理美容椅子との間隔、特に上下方向の間隔の調整を容易に行える理美容椅子を開示するものである。
ところが、背もたれがシャンプーに適する所定の設定傾斜角度に達した状態で、座シートの位置をさらに上昇させても、座シートに対する背もたれの設定傾斜角度は変わらず座シートを上昇させるようにした理美容椅子の開示はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4753354号公報
【特許文献2】特許第5451526号公報
【特許文献3】特許第5451527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、新な動きによってシャンプーボールに対する間隔などの調整を容易に行える理美容椅子の提供を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、床に設置される固定部と、前記固定部に対して上下動及び前後動を行う座シートと、前記座シートの後ろ側に接続され起倒回動する背もたれとを備え、前記座シートは、前記固定部に対して上昇且つ後退し、前記固定部に対して下降且つ前進し、前記背もたれは、前記座シートの上昇及び後退に伴い倒れ、前記座シートの下降及び前進に伴い起き上がるように構成された理美容椅子を改良するものである。
本発明の理美容椅子では、前記背もたれが前記座シートに対して所定の設定傾斜角度に達すると、前記座シートを上昇させても、前記背もたれは前記設定傾斜角度以下に倒れないようにする傾斜規制部を備える。
前記設定傾斜角度に前記背もたれが達した前記座シートの位置をさらに上昇させると、前記座シートを前方へスライドさせることにより、前記背もたれの前記設定傾斜角度は変わらず前記座シートが後退することなく上昇するように構成されたものである。
また本発明は、床に設置される固定部と、前記固定部に対して上下動及び前後動を行う座シートと、前記座シートの後ろ側に接続され起倒回動する背もたれとを備え、前記座シートは、平行リンク機構によって前記固定部に対して上昇且つ後退し、前記固定部に対して下降且つ前進し、前記背もたれは、前記平行リンク機構に連動する背もたれリンク機構によって、前記座シートの上昇及び後退に伴い倒れ、前記座シートの下降及び前進に伴い起き上がるように構成された理美容椅子を改良するものである。
この本発明の理美容椅子にあっては、前記背もたれが前記座シートに対して所定の設定傾斜角度に達すると、前記座シートを上昇させても、前記背もたれは前記設定傾斜角度以下に倒れないようにする傾斜規制部を備える。前記座シートは、前記平行リンク機構に対して前後方向にスライド可能に接続される。前記背もたれが前記座シートに対して所定の設定傾斜角度に達した位置よりも前記座シートを前記平行リンク機構によって上昇させると、前記座シートが前記平行リンク機構に対して前方へスライドするように構成されたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、新な動きによってシャンプーボールに対する間隔などの調整を容易に行える理美容椅子を提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態に係る理美容椅子を側面から見た構造説明図である。
【
図2】(A)(B)(C)は、それぞれ同理美容椅子を側面から見た作動状態の説明図である。
【
図3】(A)(B)(C)は、それぞれ同理美容椅子を側面から見た作動状態の説明図であり、(A)は標準の位置にある理美容椅子の説明図であり、(B)は微調整中の理美容椅子の説明図である。
【
図4】(A)は背もたれを起こした状態の上後方からの同理美容椅子の要部斜視図であり、(B)は、傾斜規制部の要部拡大説明図であり、(C)は背もたれを倒した状態の下後方からの同理美容椅子の要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明の実施の形態理美容椅子を説明する。
この実施の形態に係る理美容椅子は、人の臀部と大腿部を支持する座シート2と、その後側(
図1の左側)に配置された背もたれ1と、その前側(
図1の右側)に配置されたケリ板3とを備え、次の構成によって、上昇及び下降するとともに、背もたれ1が座シート2に対して傾き起倒する。また、ケリ板3が座シート2に対して、上下回動する。
【0009】
(基部と平行リンク)
理美容椅子は、固定部としての基部フレーム11によって床に設置され、基部フレーム11に対して節点aと節点bとによって回動可能にそれぞれ接続された第1リンク7と第2リンク8を備える。なお以下特に説明しない限り、節点とは、回動可能な接続点を意味するものとする。第1リンク7と第2リンク8の他端は、上部フレーム9に対してそれぞれ節点cと節点dとによって接続されている。節点aと節点bとの間の長さは、節点cと節点dとの間の長さに等しく、また、節点aと節点dとの間の長さは、節点bと節点cとの間の長さに等しい。したがって、基部フレーム11、第1リンク7、第2リンク8及び上部フレーム9は、4節の平行リンク機構を構成する。
【0010】
(平行リンク機構の作動)
この平行リンク機構は、油圧シリンダーなどによって構成される座シリンダー10を駆動源として、傾斜角度を変化させる。座シリンダー10はシリンダの基端側が節点eによって基部フレーム11に接続され、ピストンロッドの先端側が節点fによって第1リンク7に接続されている。ピストンロッドが伸びると第1リンク7の傾斜角度が大きくなり、ピストンロッドが縮むと第1リンク7の傾斜角度小さくなる。この作動状態下で、上部フレーム9は基部フレーム11に対して平行移動し、座シート2をほぼ水平状態を保った状態で上下動及び前後動する。具体的には、座シリンダー10のピストンロッドが伸びるに従い、
図2(A)~(C)に示すように、第1リンク7が節点bを中心に回動して、その傾斜角度が大きくなり、上部フレーム9及び座シート2が上昇するとともに、第1リンク7の回動に伴い後方へ移動する。
【0011】
(座取付金具5のスライドと付勢)
上部フレーム9はその上部にスライドバー12を備えている。このスライドバー12に対して座取付金具5が所定範囲内に渡って前後方向にスライド可能に取り付けられ支持されている。この座取付金具5は、ガスシリンダー13などの付勢手段によって後方へ付勢されており、常時は
図2(A)~(C)及び
図3(A)に示すように、座取付金具5及びこれに固定された座シート2は、スライドバー12の後端まで後退しているが、その付勢に抗して
図3(B)に示すようにスライドバー12の前端まで前進することができる。
【0012】
(座シート2と背もたれ1の関係)
背取付金具4は節点jによって座取付金具5の後端に接続されており、この背取付金具4に背もたれ1の前端が固定されているため、背もたれ1は座シート2に対して節点jを中心に回動して、起倒するものである。背取付金具4の先端は傾動リンク6の先端に対して節点hによって接続され、傾動リンク6の基端は第1リンク7の中ほどに節点gによって接続されている。
したがって、
図2(A)~(C)及び
図3(A)に示す座取付金具5がスライドバー12の後端まで後退している間は、4つのリンクの長さが一定値に保たれた節点c、節点g、節点h及び節点jを節点とする4節のリンク機構(以下、背もたれリンク機構という)が構成されており、座シリンダー10の伸縮によって第1リンク7の傾斜角度が変化するに伴い、背取付金具4は傾動リンク6及び座取付金具5に対する角度を変化させる。その結果、背もたれ1は座シート2に対して節点jを中心に回動して起倒する。
図2(A)~(C)及び
図3(A)を参照して具体的に説明すると、座シリンダー10が最も縮んだ状態が
図2(A)であり、第1リンク7の傾斜角度は最も緩やかで、座取付金具5及び座シート2は最も低く且つ最も前方の位置にある。また
図2(A)では、背取付金具4と傾動リンク6とのなす角度は最も小さく、背取付金具4と座取付金具5とのなす角度は最も大きい。背もたれ1は背取付金具4の伸びる面に対して直角に近い角度に伸びているため、
図2(A)では、背もたれ1は座シート2に対して直角に近くまで起きた状態となっている。
そして、
図2(B)、(C)から
図3(A)へと進むと、座シリンダー10が伸びるに伴い、背取付金具4と傾動リンク6の角度は大きくなり、背取付金具4と座取付金具5の角度は小さくなって行き、背もたれ1は座シート2に対して2直角に近い位置まで回動して倒れて、略フラットな状態となる。
【0013】
(座シート2とケリ板3の関係)
座取付金具5に対して固定された座シート2の前端に、節点kによってケリ板3の基端が回動可能に取り付けられている。ケリ板3はその裏面から直角に伸びるケリ板アーム15を備えており、このケリ板アーム15の先端に対してケリ板リンク14の前端が節点iによって接続されている。ケリ板リンク14は、略前後方向に伸びて、その後端は節点hによって背取付金具4及び傾動リンク6接続されている。
したがって、
図2(A)~(C)及び
図3(A)に示す座取付金具5がスライドバー12の後端まで後退している間は、4つのリンクの長さが一定値に保たれた節点h、節点j、節点k及び節点iを節点とする4節のリンク機構(けり板リンク機構)が構成されており、座シリンダー10の伸縮によって第1リンク7の傾斜角度が変化し、傾動リンク6と背取付金具4との角度が変化するに伴い、ケリ板アーム15及びケリ板3は、座シート2及び座取付金具5に対する角度を変化させる。その結果、ケリ板3は座シート2に対して節点kを中心に上下回動する。
図2(A)~(C)及び
図3(A)を参照して具体的に説明すると、座シリンダー10が最も縮んだ状態の
図2(A)では、ケリ板3は最も下方に下がった位置(約6時の位置)にある。
そして、
図2(B)、(C)から
図3(A)へと進んで、座シリンダー10が伸びるに伴い、座シート2及び座取付金具5に対するケリ板アーム15の角度が大きくなり、ケリ板アーム15に対して略直角に伸びるケリ板3は座シート2に対する角度が大きくなって行き、
図3(A)ではケリ板3は座シート2に対して12時に近い略フラットな状態となる。
【0014】
(従来の略フラット状態での微調整)
従来の理美容椅子では
図3(A)に示すような略フラット状態で、後方に配置されたシャンプーボウル(図示せず)に理美容椅子に座った被施術者の頭部が位置するように、理美容椅子とシャンプーボールの標準の位置が設定されている。ところが、被施術者の体型などによって、標準の位置では、シャンプーボールとの高さが合わない場合があり、微調整が必要なことがある。ところが座シリンダー10をさらに伸ばして座シート2位置を高くすると、平行リンク機構の構造上座シート2は後方に進み、背もたれリンク機構の構造上背もたれ1はさらに倒れ、けり板リンク機構の構造上ケリ板3はさらに上方へ回動してしまう。その結果、シャンプーボールと被施術者の頭部との位置合わせの微調整が困難になってしまっていた。
【0015】
(傾斜規制部20について)
そこで本発明にかかるこの実施の形態では、
図3(A)の略フラット状態の標準位置になると、座シリンダー10をさらに伸ばしても、座シート2と背もたれ1の角度が変化しないように
図4に示す傾斜規制部20を設けた。
この実施の形態に係る傾斜規制部20は、
図4(B)に示すように、メネジ部21と、これに対して螺合しているオネジ部22とを備えており、オネジ部22の先端には当接部23が設けられている。
メネジ部21は、プレート状の背取付金具4の左右方向のほぼ中央に固定されており、背もたれ1が座シート2に対して所定の角度まで傾斜すると、座シート2の裏面の座取付金具5に当接部23が当たることによって、それ以上傾斜しないように規制するものである。オネジ部22を回転させることで、メネジ部21からの突出長さを変化させることができ、これによって規制がなされる傾斜角度を調整することができる。
なお、
図4(B)(C)に示すように、この実施の形態にあっては、傾動リンク6、ケリ板リンク14、第1リンク7等々を左右一対設けたり、左右方向に幅のある筒状にしたりすることによって、左右方向における安定性を向上させている。また必要に応じて連結部材25などで左右の部材を連結しておくことも好ましい。
【0016】
(傾斜規制部20の作動)
傾斜規制部20によって、背もたれ1の倒れが所定の設定傾斜角度で止まることによって、背取付金具4と座取付金具5の角度が所定の設定傾斜角度に従って固定されてしまう。この固定状態で座シリンダー10を伸ばそうとしても、平行リンク機構及び背もたれリンク機構の関係上、作動しなくなるが、この実施の形態に係る理美容椅子にあっては、前述のように座取付金具5が上部フレーム9に対してスライドバー12に沿って前後にスライド可能に設けられている。したがって、座シリンダー10をさらに伸ばして第1リンク7の傾斜角度をさらに大きくしていくと、座取付金具5がガスシリンダー13の付勢に抗して前進し、節点cと節点jの距離が縮まる。このように背もたれリンク機構の節点cと節点jの間のリンクの長さが短くなることによって、背もたれリンク機構が作動することができる。
このように平行リンク機構の作動によって、上部フレーム9は
図3(A)の標準位置より上昇しかつ後退するが、背もたれリンク機構の節点cと節点jのリンクの長さが短くなって、座取付金具5に対する背取付金具4の角度(言い換えれば座シート2に対する背もたれ1の角度)が一定の状態を保ったまま、上部フレーム9に対して座取付金具5および座シート2が前進する。これによって、シャンプーボールに対する背もたれ1及び座シート2の前後の位置をほぼ一定位置に保ったまま、座シート2および背もたれ1を上昇(及び下降)させることができるものである。この調整が可能な範囲は、スライドバー12の長さ(上部フレーム9に対する座取付金具5の前後動可能な長さ)に依存するため、これを変更することによって調整が可能な範囲を変更することができる。
【0017】
(実施の形態と発明の要旨)
本発明は、上述の実施の形態に限定して理解されるべきではなく、発明の要旨を損なわない範囲で変更して実施することができる。
上記の実施の形態では、傾斜規制部20によって背もたれ1を当接させて角度を規制するように構成したが、座取付金具5に対する背取付金具4の角度を所定の角度に規制するように構成して実施することもできる。また、上記の例では、平行リンク機構と背もたれリンク機構とを、第1リンク7によって関連付けて直接的に連動させたが、両リンク機構を独立のリンク機構とした上で、平行リンク機構と背もたれリンク機構とを他の少なくとも1つの接続用リンクで接続し、駆動源である座シリンダー10の力を平行リンク機構及び接続用リンクを介して背もたれリンク機構に伝達して間接的に連動させても構わない。また、4節リンク機構の他、5節リンク機構等の他のリンク機構(オープンループ構造やクローズドループ構造のリンク機構)を採用しても構わない。なお、リンク機構を構成する各リンクは、第1リンク7のような棒状の部材であっても構わないが、これに限らず部材の名称や具体的な形状は問わないし、複数の部材で構成されるものであっても構わない。
【符号の説明】
【0018】
1 背もたれ
2 座シート
3 ケリ板
4 背取付金具
5 座取付金具
6 傾動リンク
7 第1リンク
8 第2リンク
9 上部フレーム
10 座シリンダー
11 基部フレーム
12 スライドバー
13 ガスシリンダー
14 ケリ板リンク
15 ケリ板アーム
20 傾斜規制部
21 メネジ部
22 オネジ部
23 当接部
25 連結部材
a 節点a
b 節点b
c 節点c
d 節点d
e 節点e
f 節点f
g 節点g
h 節点h
i 節点i
j 節点j
k 節点k