(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067199
(43)【公開日】2022-05-06
(54)【発明の名称】車両の制動制御装置
(51)【国際特許分類】
B60T 7/12 20060101AFI20220425BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
B60T7/12 F
B60T13/74 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175779
(22)【出願日】2020-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】大野 真央
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩充
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB25
3D048CC54
3D048HH18
3D048HH58
3D048QQ04
3D048RR17
3D246BA02
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3D246JB10
3D246JB11
3D246JB12
3D246JB43
3D246LA16Z
3D246LA72Z
(57)【要約】
【課題】ACCの自動ブレーキ機能による車両の減速度が長時間に亘って所定の制限値を超えるおそれを低減可能な車両の制動制御装置を提供する。
【解決手段】車両の制動制御装置は、自車両と先行車両との目標車間距離に基づいて設定される指示制動トルク(T_req_in)に基づいて目標制動トルク(T_out)を設定する目標制動トルク設定部(91,101)と、目標制動トルク(T_out)に基づいて車両の制動力を制御する制御部(93,103)と、を備え、目標制動トルク設定部(91,101)は、自車両の減速度(Ax)が所定の制限値(Ax_lim)を超えたときに、指示制動トルク(T_req_in)よりも小さい値の制限制動トルク(T_lim)を目標制動トルク(T_out)に設定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両と先行車両との目標車間距離に基づいて設定される制動要求の情報(T_req_in)に基づいて目標制動トルク(T_out)を設定する目標制動トルク設定部(91,101)と、
前記目標制動トルク(T_out)に基づいて前記車両の制動力を制御する制御部(93,103)と、を備え、
前記目標制動トルク設定部(91,101)は、
前記自車両の減速度(Ax)が所定の制限値(Ax_lim)を超えたときに、前記制動要求の情報(T_req_in)に応じた制動トルクよりも小さい値の制限制動トルク(T_lim)を目標制動トルク(T_out)に設定することを特徴とする、車両の制動制御装置。
【請求項2】
前記制動要求の情報は、指示制動トルク(T_req_in)であり、
前記目標制動トルク設定部(91,101)は、
前記指示制動トルク(T_req_in)から一定の減少速度で減少させて前記制限制動トルク(T_lim)を算出する、請求項1に記載の車両の制動制御装置。
【請求項3】
前記目標制動トルク設定部(91,101)は、
前記減速度(Ax)が前記所定の制限値(Ax_lim)以下になった状態が所定時間(t_thr_fn)以上継続した場合に、前記制限制動トルク(T_lim)の値を保持する、請求項2に記載の車両の制動制御装置。
【請求項4】
前記目標制動トルク設定部(91,101)は、
前記減速度(Ax)が前記所定の制限値(Ax_lim)を超える状態が所定時間(t_thr_st)以上継続した場合に、前記制限制動トルク(T_lim)を前記目標制動トルク(T_out)に設定することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両の制動制御装置。
【請求項5】
前記制動要求の情報は、指示制動トルク(T_req_in)であり、
前記目標制動トルク設定部(91,101)は、
前記指示制動トルク(T_req_in)が、前記目標制動トルク(T_out)として設定される前記制限制動トルク(T_lim)以下となったときに、前記制限制動トルク(T_lim)を前記目標制動トルク(T_out)として設定することを終了することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の車両の制動制御装置。
【請求項6】
前記目標制動トルク設定部(91,101)は、
前記減速度(Ax)が、前記所定の制限値(Ax_lim)よりも小さい制御開始閾値(Ax_0)を超える場合に前記自車両の減速度(Ax)と前記所定の制限値(Ax_lim)とを比較し、前記減速度(Ax)が前記所定の制限値(Ax_lim)を超えたときに前記制限制動トルク(T_lim)を前記目標制動トルク(T_out)に設定することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の車両の制動制御装置。
【請求項7】
前記車両の制動制御装置は、ブレーキ液圧ユニット(20)の制御装置(90)であり、
前記目標制動トルク設定部(91)は、前記目標車間距離に基づいて前記制動要求の情報(T_req_in)を出力する運転支援装置(110)から送信される制動要求信号を受信して前記目標制動トルク(T_out)を設定し、
前記制御部(93)は、前記目標制動トルク(T_out)に基づいて、前記ブレーキ液圧ユニット(20)を制御することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の車両の制動制御装置。
【請求項8】
前記車両の制動制御装置は、電動式倍力装置(10)の制御装置(100)であり、
前記目標制動トルク設定部(101)は、前記目標車間距離に基づいて前記制動要求の情報(T_req_in)を出力する運転支援装置(110)から送信される制動要求信号を受信して前記目標制動トルク(T_out)を設定し、
前記制御部(103)は、前記目標制動トルク(T_out)に基づいて、前記電動式倍力装置(10)を制御することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の車両の制動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両には自動ブレーキ機能が搭載されている。自動ブレーキ機能は、ADAS(Advanced Driver-Assistance System)とも呼ばれる運転支援装置が、車両に搭載されたカメラやセンサにより検出される車両の前方の情報に基づいて制動要求の指示をブレーキ液圧制御装置に送信し、自動でブレーキ液圧を加圧する機能である。自動ブレーキ機能としては、先行車両との車間距離を目標車間距離に維持しながら車両を自動で走行させるためのACC(Adaptive Cruise Control)の自動ブレーキ機能と、障害物等との衝突を回避あるいは衝撃を軽減するための緊急ブレーキ機能とが知られている。
【0003】
具体的に、自動ブレーキ機能においては、運転支援装置が、カメラやセンサによる検出される情報に基づいてブレーキングの要否の判断や必要な制動トルクの計算を行い、ブレーキ液圧制御装置に対して制動要求及び制動トルクの情報を示す信号を送信する。ブレーキ液圧制御装置は、運転支援装置からの制動要求及び制動トルクの情報を示す信号を受信し、ACCの自動ブレーキ機能又は緊急ブレーキ機能の種類に応じて制御モードを切り換え、受信した制動トルクの情報をブレーキ液圧に変換してブレーキ液圧を調節するアクチュエータに駆動指令を送信する。これにより、ブレーキ液圧制御装置に設けられた電動モータが作動して各車輪のブレーキ液圧が上昇し、制動力が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ACCの自動ブレーキ機能では、緊急ブレーキ機能とは異なり、車両の急減速によって車体挙動が不安定になることを抑制するために、減速度ができるだけ所定の制限値を超えないように制御することが要求される。これに対して、運転支援装置により設定される制動トルクに上限を設けることが考えられるが、車両に発生する制動力は様々な要因の影響を受け得るため、運転支援装置により設定される制動トルクを制限するだけでは、減速度が長時間に亘って制限値を超えるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ACCの自動ブレーキ機能による車両の減速度が長時間に亘って所定の制限値を超えるおそれを低減可能な車両の制動制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、自車両と先行車両との目標車間距離に基づいて設定される制動要求の情報に基づいて目標制動トルクを設定する目標制動トルク設定部と、目標制動トルクに基づいて車両の制動力を制御する制御部と、を備え、目標制動トルク設定部は、自車両の減速度が所定の制限値を超えたときに、制動要求の情報に応じた制動トルクよりも小さい値の制限制動トルクを目標制動トルクに設定する車両の制動制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によれば、ACCの自動ブレーキ機能による車両の減速度が長時間に亘って所定の制限値を超えるおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る車両の制動制御装置を適用可能なブレーキシステムの構成例を示す説明図である。
【
図2】同実施形態に係る車両の制動制御装置を構成するブレーキ液圧制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】同実施形態に係る車両の制動制御装置による自動ブレーキ制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】同実施形態に係る車両の制動制御装置による目標制動トルク設定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】同実施形態に係る車両の制動制御装置の作用を示す説明図である。
【
図6】同実施形態に係る車両の制動制御装置を構成する倍力装置制御装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<<1.第1の実施の形態>>
<1-1.ブレーキシステムの構成例>
まず、
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る車両の制動制御装置を適用可能なブレーキシステムの構成例を説明する。
【0012】
図1は、車両のブレーキシステム1の構成例を示す模式図である。
図1に示した車両のブレーキシステム1は、四輪車用のブレーキシステムである。ブレーキシステム1は、二つのブレーキ系統を備え、各ブレーキ系統において1つの前輪及び1つの後輪を1組として制動力を制御するブレーキシステムとして構成されている。
【0013】
なお、ブレーキシステム1は、二つのブレーキ系統がそれぞれ左右いずれかの前輪と当該前輪と対角の位置にある後輪とを1組として制動力を制御する、いわゆるX型配管方式のブレーキシステムであってもよい。あるいは、ブレーキシステム1は、一系統が左の前後輪を制動し、他の系統が右の前後輪を制動する、いわゆるH型配管方式のブレーキシステムであってもよい。また、ブレーキシステムは、四輪車以外の車両のブレーキシステムであってもよい。
【0014】
ブレーキシステム1は、倍力装置10、マスタシリンダ14及びブレーキ液圧ユニット20を備えている。また、ブレーキシステム1は、ブレーキ液圧ユニット20を制御する液圧制御装置90及び倍力装置10を制御する倍力装置制御装置100を備えている。液圧制御装置90及び倍力装置制御装置100は、それぞれ一部又は全部が、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置を含むマイクロコンピュータ又はマイクロプロセッサユニット等で構成されている。液圧制御装置90及び倍力装置制御装置100の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されていてもよく、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0015】
液圧制御装置90及び倍力装置制御装置100は、例えば、CAN(Controller Area Network)等の通信バス120を介して互いに通信可能に構成されている。また、液圧制御装置90及び倍力装置制御装置100は、通信バス120を介して、運転支援装置110と通信可能に構成されている。運転支援装置110は、車両の前方の他車両や歩行者、自転車、障害物等、車両の前方の環境の情報を検出するためのセンサ機器111により検出された情報を取得可能に構成されている。センサ機器111は、例えばカメラ又はレーダ、RiDARのうちの少なくとも一つを含む。
【0016】
運転支援装置110は、少なくとも自車両と先行車両との車間距離を目標車間距離に維持しながら自車両を自動で走行させるACC制御を実行可能に構成されている。本実施形態において、運転支援装置110は、ACC制御と併せて、自車両が他車両や障害物等の衝突することを回避又は衝突時の衝撃を軽減させるための緊急ブレーキ制御を実行可能に構成されている。運転支援装置110は、例えばCPU又はGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置を含むマイクロコンピュータ又はマイクロプロセッサユニット等で構成されている。運転支援装置110の一部又は全部は、ファームウェア等の更新可能なもので構成されていてもよく、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0017】
ブレーキシステム1において、ブレーキペダル11に加えられた踏力は、倍力装置10により増幅されて、液圧発生源としてのマスタシリンダ14に伝達される。マスタシリンダ14の上部には、マスタシリンダ14にブレーキ液を供給するリザーバタンク60が取り付けられている。マスタシリンダ14内には、プライマリピストン43及びセカンダリピストン44により区画された二つの加圧室であるプライマリ室47及びセカンダリ室48が形成されている。運転者によるブレーキペダル11の踏み込み操作に応じてプライマリピストン43及びセカンダリピストン44が押圧され、プライマリ室47及びセカンダリ室48それぞれに貯留されたブレーキ液が加圧されて、ブレーキ液がブレーキ液圧ユニット20内へ供給される。
【0018】
倍力装置10は、入力軸16を介してブレーキペダル11に接続されている。倍力装置10により増幅された踏力は、プライマリピストン43に当接するプッシュロッド13を介してマスタシリンダ14に伝達される。プライマリピストン43の軸方向移動によりセカンダリピストン44も軸方向移動する。これにより、プライマリ室47及びセカンダリ室48内のブレーキ液が加圧される。
【0019】
本実施形態では、倍力装置10として、電動モータにより駆動される電動式の倍力装置が用いられる。電動モータは、例えば固定素子としてのステータ及び可動素子としてのロータを含むブラシレスのDCDCモータであってよい。電動モータは、倍力装置制御装置100により制御される電力(電流)供給を受けて作動する。電動モータは、電流の向きを切り替えることにより、プッシュロッド13を前進させる正回転及びプッシュロッド13を後退させる逆回転可能なモータである。倍力装置制御装置100は、運転者によりブレーキペダル11が踏み込まれると、電動モータのステータに電力(電流)を供給し、ブレーキペダル11の踏力を倍力してマスタシリンダ14に伝達させる。
【0020】
マスタシリンダ14のプライマリ室47及びセカンダリ室48からは、それぞれ各車輪RF,LR,LF,RRの液圧ブレーキ38a~38dに向けて第1の液圧回路28及び第2の液圧回路30が延びている。本実施形態に係る車両のブレーキシステム1の液圧回路はX型配管方式であり、右前輪RFの液圧ブレーキ38aのホイールシリンダ及び左後輪LRの液圧ブレーキ38bのホイールシリンダには、第1の液圧回路28を介してブレーキ液が供給される。また、左前輪LFの液圧ブレーキ38cのホイールシリンダ及び右後輪RRの液圧ブレーキ38dのホイールシリンダには、第2の液圧回路30を介してブレーキ液が供給される。これにより、それぞれの液圧ブレーキ38a~38dは、液圧により各車輪RF,LR,LF,RRに制動力を生じさせることができる。
【0021】
ブレーキ液圧ユニット20は、同一の構成を有する第1の液圧回路28及び第2の液圧回路30を含む。第1の液圧回路28及び第2の液圧回路30には、マスタシリンダ14からブレーキ液が供給される。以下、第1の液圧回路28について簡単に説明し、第2の液圧回路30の説明を省略する。
【0022】
第1の液圧回路28は、電磁弁として、常開型でリニア制御可能な回路制御弁36aと、常閉型でオンオフ制御される吸入弁34aと、常開型でリニア制御可能な増圧弁(調整弁)58aa,58baと、常閉型でオンオフ制御される減圧弁54aa,54baとを備える。また、第1の液圧回路28は、ポンプモータ96により駆動されるポンプ44aと、低圧アキュムレータ71aと、ダンパ73aとを備える。なお、ポンプ44aの数は一つに限られない。
【0023】
右前輪RFの液圧ブレーキ38aに隣接して設けられた第1の増圧弁58aa及び第1の減圧弁54aaは、右前輪RFのABS(Antilock Brake System)制御あるいはESP(Electronic Stability Program)制御に用いられる。左後輪LRの液圧ブレーキ38bに隣接して設けられた第2の増圧弁58ba及び第2の減圧弁54baは、左後輪LRのABS制御あるいはESP制御に用いられる。
【0024】
右前輪RFの第1の増圧弁58aaは、回路制御弁36aと右前輪RFの液圧ブレーキ38aとの間に設けられている。リニア制御可能な第1の増圧弁58aaは、回路制御弁36a側から右前輪RFの液圧ブレーキ38aのホイールシリンダ側へのブレーキ液の流量を連続的に調整する。第1の増圧弁58aaは、第1の増圧弁58aaが閉じた状態において、ブレーキ液を液圧ブレーキ38a側から回路制御弁36a側へ流す一方、その逆向きの流れを制限するチェックバルブを備えたバイパス流路を備える。
【0025】
右前輪RFの第1の減圧弁54aaは、弁を全開あるいは全閉の状態のみに切換可能なソレノイドバルブであり、右前輪RFの液圧ブレーキ38aのホイールシリンダと低圧アキュムレータ71aとの間に設けられている。第1の減圧弁54aaは、開弁状態で右前輪RFの液圧ブレーキ38aのホイールシリンダに供給されたブレーキ液を減圧する。第1の減圧弁54aaは、弁の開閉を断続的に繰り返すことにより、右前輪RFの液圧ブレーキ38aのホイールシリンダから低圧アキュムレータ71aに流れるブレーキ液の流量を調節することができる。
【0026】
左後輪LRの第2の増圧弁58baは、回路制御弁36aと左後輪LRの液圧ブレーキ38bとの間に設けられている。リニア制御可能な第2の増圧弁58baは、回路制御弁36a側から左後輪LRの液圧ブレーキ38bのホイールシリンダ側へのブレーキ液の流量を連続的に調整する。第2の増圧弁58baは、第2の増圧弁58baが閉じた状態において、ブレーキ液を液圧ブレーキ38b側から回路制御弁36a側へ流す一方、その逆向きの流れを制限するチェックバルブを備えたバイパス流路を備える。
【0027】
左後輪LRの第2の減圧弁54baは、弁を全開あるいは全閉の状態のみに切換可能なソレノイドバルブであり、左後輪LRの液圧ブレーキ38bのホイールシリンダと低圧アキュムレータ71aとの間に設けられている。第2の減圧弁54baは、開弁状態で左後輪LRの液圧ブレーキ38bのホイールシリンダに供給されたブレーキ液を減圧する。第2の減圧弁54baは、弁の開閉を断続的に繰り返すことにより、左後輪LRの液圧ブレーキ38bのホイールシリンダから低圧アキュムレータ71aに流れるブレーキ液の流量を調節することができる。
【0028】
回路制御弁36aは、増圧弁58aa,58baとマスタシリンダ14との間を連通又は遮断するように設けられる。吸入弁34aは、マスタシリンダ14とポンプ44aの吸引側との間を連通又は遮断するように設けられる。回路制御弁36a及び吸入弁34aとマスタシリンダ14との間の管路には、液圧センサ24が設けられている。これらは、ブレーキ液圧ユニット20の構成要素と同様のため、詳細な説明を省略する。
【0029】
第2の液圧回路30は、左前輪LFの液圧ブレーキ38c及び右後輪RRの液圧ブレーキ38dを制御する。第2の液圧回路30は、第1の液圧回路28の説明における右前輪RFの液圧ブレーキ38aのホイールシリンダを左前輪LFの液圧ブレーキ38cのホイールシリンダに置き換え、左後輪LRの液圧ブレーキ38bのホイールシリンダを右後輪RRの液圧ブレーキ38dのホイールシリンダに置き換える以外、第1の液圧回路28と同様に構成される。
【0030】
このように構成されたブレーキシステム1において、運転支援装置110は、ACCの実行中、自車両が先行車両に近づきすぎた場合に、自車両と先行車両との車間距離を所定の目標車間距離に維持させるために制動要求を示す信号(以下、「制動要求信号」ともいう)を生成する。第1の実施の形態では、ブレーキ液圧ユニット20を制御する液圧制御装置90が、運転支援装置110から送信される制動要求信号を受信し、車両の減速度が長時間に亘って所定の制限値を超えないように制動力を制御する車両の制動制御装置として機能する。
【0031】
<1-2.車両の制動制御装置(液圧制御装置)>
(1-2-1.構成例)
図2は、ブレーキシステム1の構成のうち、ACCの自動ブレーキ制御に関連する機能構成を示すブロック図である。本実施形態において、ACCの自動ブレーキ制御は、運転支援装置110及び液圧制御装置90が通信を行い、液圧制御装置90がブレーキ液圧ユニット20を制御することにより実行される。
【0032】
運転支援装置110は、ACCの実行中に、カメラやレーダ、RiDAR等のセンサ機器111により検出される情報に基づいてブレーキングの要否の判断及び必要な制動要求の指示値の計算を行い、液圧制御装置90に対して制動要求及び制動要求の指示値の情報を示す制動要求信号を送信する。制動要求の指示値は、例えば制動トルクの指示値であってもよく、ブレーキ液圧の指示値であってもよい。本実施形態では、運転支援装置110が、制動要求の指示値の情報として制動トルクの指示値(以下、「指示制動トルク」ともいう)T_req_inの計算を行い、液圧制御装置90に対して制動要求S_brk及び指示制動トルクT_req_inの情報を示す制動要求信号を送信する例を説明する。
【0033】
具体的に、運転支援装置110は、センサ機器111により検出される情報に基づいて、自車両と先行車両との車間距離D及び先行車両に対する自車両の相対速度dVを求める。運転支援装置110は、算出した車間距離D及び相対速度dVの情報に基づいてブレーキングの要否の判断を行う。例えば、運転支援装置110は、自車両と先行車両との車間距離Dが、自車両の車速Vと相対速度dVと目標車間距離D_tgtとに応じて設定されたブレーキング開始閾D_brk_thr値未満になったときに、ブレーキングが必要であると判定する。目標車間距離D_tgtは、自車両の車速Vに応じて設定される可変値であってもよい。なお、運転支援装置110によるブレーキングの要否の判定方法は、特に限定されるものではない。
【0034】
また、運転支援装置110は、自車両の車速V、相対速度dV、及び車間距離Dと目標車間距離D_tgtとの差dDに基づいて指示制動トルクT_req_inを算出する。車両に制動トルクを発生させた場合の車間距離Dの変化速度は相対速度dVによって異なり得る。また、車両を減速させるための制動トルクは、車速Vによって異なり得る。このため、運転支援装置110は、車速Vと相対速度dVと車間距離の差dDとに応じて指示制動トルクT_req_inをあらかじめ設定したマップ情報を参照して、指示制動トルクT_req_inを算出してもよい。なお、運転支援装置110による指示制動トルクT_req_inの計算方法は、特に限定されるものではない。
【0035】
液圧制御装置90は、基本的には、ブレーキ液圧ユニット20の駆動を制御することによりABS制御やESP制御を実行する。また、液圧制御装置90は、運転支援装置110からACCの制動要求信号を受信した場合に、指示制動トルクT_req_inに基づいて目標制動トルクT_outを設定するとともに、目標制動トルクT_outを目標ブレーキ液圧P_tgtに変換してブレーキ液圧ユニット20の駆動を制御する。ACCの自動ブレーキ制御では、液圧制御装置90は、少なくともブレーキ液圧ユニット20のポンプモータ96を駆動して、マスタシリンダ14から各車輪のホイールシリンダへブレーキ液を供給することで各車輪のブレーキ液圧を上昇させて、車両の制動力を発生させる。
【0036】
液圧制御装置90は、目標制動トルク設定部91及び制御部93を備えている。目標制動トルク設定部91及び制御部93は、マイクロコンピュータによるプログラムの実行により実現される機能である。この他、液圧制御装置90は、図示しない駆動回路及びRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子を備えている。
【0037】
液圧制御装置90は、運転支援装置110から送信される制動要求信号を受信可能に構成されている。また、液圧制御装置90は、車両の前後方向の加速度Gの情報を取得可能に構成されている。液圧制御装置90は、車両に設けられた車輪速センサから直接センサ信号を受信して検出値を微分することにより加速度Gの情報を取得してもよく、通信バス120を介して他の制御装置から送信される加速度Gの情報を取得してもよい。
【0038】
なお、車輪速センサの検出値に基づいて算出される車両の加速度Gは、車両が前進方向に加速している状態で正の値を示す。つまり、車両の減速度Axは、負の加速度Gを意味する。したがって、減速度Axが所定の制限値Ax_limを超えるとは、加速度Gが所定の制限値Ax_lim(正の値)の正負を反転させた値を下回ることを意味する。
【0039】
目標制動トルク設定部91は、運転支援装置110から送信される制動要求信号に含まれる指示制動トルクT_req_inの情報に基づいて目標制動トルクT_outを設定する。目標制動トルク設定部91は、車両の減速度Axが長時間に亘って所定の制限値Ax_limを超えないように目標制動トルクT_outを設定する。制限値Ax_limは、ACCの自動ブレーキ制御によって車体挙動が不安定になることを避けるために設定される減速度Axの上限の値であり、例えば4.8~5.0m/s2の範囲内の値に設定される。
【0040】
具体的に、目標制動トルク設定部91は、自車両の減速度Axが所定の制限値Ax_lim以下の場合、指示制動トルクT_req_inを目標制動トルクT_outに設定する。一方、目標制動トルク設定部91は、減速度Axが所定の制限値Ax_limを超える場合、制動トルク制限モードをオンにし、指示制動トルクT_req_inよりも小さい値の制限制動トルクT_limを算出し、当該制限制動トルクT_limを目標制動トルクT_outに設定する。つまり、運転支援装置110では、車両を減速させるための目標値として指示制動トルクT_req_in(N・m)を算出しているのに対し、目標制動トルク設定部91は、単位の異なる車両の減速度Ax(m/s2)の情報を用いて制動トルクに制限をかける。これにより、発生する制動力が車両の走行条件によってばらつく場合であっても、減速度Axが長時間に亘って制限値Ax_limを超えるおそれが低減し、車体挙動が不安定になることを抑制することができる。
【0041】
制限制動トルクT_limの計算方法は、特に限定されるものではない。例えば、目標制動トルク設定部91は、車両の減速度Axが所定の制限値Ax_limを超えた場合、指示制動トルクT_req_inから一定の減少速度で減少させて制限制動トルクT_limを算出してもよい。具体的に、目標制動トルク設定部91は、車両の減速度Axが所定の制限値Ax_limを超えた場合、指示制動トルクT_req_inの値からあらかじめ設定された一定の補正値T_xを引いて求めた制限制動トルクT_limを目標制動トルクT_outとする。また、目標制動トルク設定部91は、以降の演算サイクルごとに一つ前のサイクルの目標制動トルクT_outから当該補正値T_xを引くことによって求めた制限制動トルクT_limを目標制動トルクT_outとする。この場合の補正値T_xは、減速度Axを急激に低下させることのないように適切な値に設定される。このように制限制動トルクT_limを求めることにより、液圧制御装置90の計算負荷を大きくすることなく、容易に制動トルクに制限をかけることができる。また、車両の減速度Axを急激に低下させることがないため、先行車両との車間距離Dが小さくなりすぎることを防ぐことができる。
【0042】
ただし、制限制動トルクT_limの計算方法は、一定の補正値T_xを減算する方法に限られない。例えば補正値T_xは、車両の減速状態に応じて変動する値であってもよい。具体的に、補正値T_xは、車両の減速度Axと所定の制限値Ax_limとの差分が大きいほど大きい値となるように設定されてもよい。これにより、一定の補正値T_xを減算する場合に比べて、より早く車両の減速度Axを所定の制限値Ax_lim以下に抑えることができる。
【0043】
また、本実施形態において、目標制動トルク設定部91は、車両の減速度Axが、制限値Ax_limよりも小さい値に設定された制御開始閾値Ax_0を超える場合に減速度Axと制限値Ax_limとの比較を行い、減速度Axが制限値Ax_limを超える場合に制動トルクに制限をかけるように構成されている。これにより、制動トルクに制限をかける必要のない、減速度Axが小さい期間における液圧制御装置90の計算負荷を軽減することができる。
【0044】
また、目標制動トルク設定部91は、車両の減速度Axが制限値Ax_limを超える状態が所定時間t_thr_st以上継続した場合に、制動トルク制限モードを開始してもよい。これにより、ごく短時間に減速度Axが制限値Ax_limを超えるような場合に制動トルクが制限されることがなくなり、制動トルクが必要以上に制限されて、先行車両との車間距離Dが小さくなりすぎることを防ぐことができる。所定時間t_thr_stは、あらかじめシミュレーション等によって適宜の値に設定される。
【0045】
また、目標制動トルク設定部91は、車両の減速度Axが制限値Ax_limを超えた状態で制動トルク制限モードを開始した後、減速度Axが制限値Ax_lim以下になった状態が所定時間t_thr_fn以上継続した場合に、制動トルク制限モードを終了してもよい。これにより、制動トルクの制限を終了するタイミングを遅らせることができ、制限値Ax_lim以下となった減速度Axが、制動トルクの制限を終了したことによって再び減速度Axが制限値Ax_limを超えることを抑制することができる。所定時間t_thr_fnは、あらかじめシミュレーション等によって適宜の値に設定される。
【0046】
また、目標制動トルク設定部91は、制動トルク制限モードを終了した後、運転支援装置110から出力される指示制動トルクT_req_inが、制動トルク制限モード終了時点の前回の計算サイクルで設定された目標制動トルクT_out(すなわち制限制動トルクT_lim)以下となるまでの間、当該制限制動トルクT_limを保持し、この制限制動トルクT_limを目標制動トルクT_outとして保持してもよい。これにより、制動トルク制限モードを終了したときに、目標制動トルクT_outが急上昇することを防ぐことができるとともに、目標制動トルクT_outを大きく変化させることなく指示制動トルクT_req_inを目標制動トルクT_outに設定する状態へと移行することができる。
【0047】
なお、ABS制御やESP制御の実行中には、車輪速センサの検出値を微分することによって求められる車両の減速度Axが過度に大きくなる場合があり、減速度Axの値の信頼性が低下する。このため、目標制動トルク設定部91は、ABS制御やESP制御の実行時においては、減速度Axの情報を用いずに目標制動トルクT_outを設定する。例えば目標制動トルク設定部91は、運転支援装置110から出力される指示制動トルクT_req_inの値と、前回の計算サイクルで設定された目標制動トルクT_outの値とを比較して、いずれか小さい方を今回の計算サイクルの目標制動トルクT_outとして設定する。
【0048】
制御部93は、目標制動トルク設定部91により設定された目標制動トルクT_outに基づいてブレーキ液圧ユニット20の駆動を制御する。これにより、車両の制動力が制御される。本実施形態では、制御部93は、目標制動トルクT_outに基づいて各車輪に発生させる目標ブレーキ液圧P_tgtを算出し、ブレーキ液圧ユニット20のポンプモータ96の駆動を制御する。
【0049】
例えば、制御部93は、目標制動トルクT_outと目標ブレーキ液圧P_tgtとの関係をあらかじめ設定したマップ情報を参照して、目標制動トルクT_outに応じた目標ブレーキ液圧P_tgtを求めてもよい。制御部93は、算出した目標ブレーキ液圧P_tgtに基づいて、マスタシリンダ14からブレーキ液圧ユニット20に供給するブレーキ液の目標流量V_tgtを設定する。例えば、制御部93は、目標ブレーキ液圧P_tgtと目標流量V_tgtとの関係をあらかじめ設定したマップ情報を参照して、ブレーキ液の目標流量V_tgtを設定してもよい。
【0050】
なお、制御部93は、現在のブレーキ液圧P_actと目標ブレーキ液圧P_tgtとの差分dPに応じた目標流量V_tgtを設定してもよい。現在のブレーキ液圧P_actは、液圧センサ24により検出される圧力値を代替的に用いることができる。液圧センサ24とは別に、いずれかのホイールシリンダのブレーキ液圧を検出するブレーキ液圧センサが設けられている場合には、液圧センサ24の代わりに当該ブレーキ液圧センサにより検出される圧力値が用いられてもよい。
【0051】
制御部93は、設定した目標流量V_tgtにしたがって、ブレーキ液圧ユニット20のポンプモータ96の駆動回路に制御信号を出力し、ポンプ44a,44bを駆動させる。これにより、マスタシリンダ14からブレーキ液圧ユニット20内にブレーキ液が供給され、各車輪のホイールシリンダにブレーキ液が供給される。その結果、各車輪のブレーキ液圧が上昇し、車両の制動力が発生する。上述のとおり、制動トルク制限モードにおいては、車両の減速度Axが制限値Ax_limを超える場合に制動トルクに制限がかけられるため、減速度Axが長時間に亘って制限値Ax_limを超えるおそれが低減される。
【0052】
(1-2-2.動作例)
次に、本実施形態に係る車両の制動制御装置としての液圧制御装置90の具体的な動作例について説明する。
【0053】
図3及び
図4は、ACCの実行中に液圧制御装置90により実行されるブレーキ制御処理を示すフローチャートである。
図3は、ACCの実行中に液圧制御装置90により実行されるブレーキ制御処理のメインルーチンを示すフローチャートである。
図4は、目標制動トルク設定処理のルーチンを示すフローチャートである。以下に説明するブレーキ制御処理は、ACCの実行中に常時実行される。
【0054】
図3に示すように、まず、液圧制御装置90の目標制動トルク設定部91は、運転支援装置110から制動要求信号を受信したか否かを判別する(ステップS11)。制動要求信号を受信していない場合(S11/No)、目標制動トルク設定部91は、そのまま本ルーチンを終了してスタートに戻る。一方、制動要求信号を受信している場合(S11/Yes)、目標制動トルク設定部91は、制動要求信号に含まれる指示制動トルクT_req_inに基づいて目標制動トルクT_outを設定する(ステップS13)。目標制動トルクT_outを設定する処理は、
図4に示すフローチャートにしたがって行われる。
【0055】
図4に示すフローチャートにおいて、“(n)”は今回の計算サイクルで取得あるいは算出される値を示し、“(n-1)”は前回の計算サイクルで算出された値を示す。まず、目標制動トルク設定部91は、車両の減速度Ax(n)の情報を取得するとともに、減速度Ax(n)が制御開始閾値Ax_0を超えているか否かを判別する(ステップS21)。減速度Ax(n)が制御開始閾値Ax_0を超えていない場合(S21/No)、減速度Axが制限値Ax_limを超える可能性が低い状態であるため、目標制動トルク設定部91は、運転支援装置110から受信した制動要求信号に含まれる指示制動トルクT_req_in(n)をそのまま目標制動トルクT_out(n)に設定する(ステップS43)。
【0056】
一方、減速度Ax(n)が制御開始閾値Ax_0を超えている場合(S21/Yes)、目標制動トルク設定部91は、減速度Ax(n)から制限値Ax_limを引いた差分dA(n)を算出する(ステップS23)。次いで、目標制動トルク設定部91は、差分dA(n)が正の値であるか否かを判別する(ステップS25)。ステップS25では、車両の減速度Ax(n)が制限値Ax_limを超えているか否かが判別される。
【0057】
差分dA(n)が正の値である場合(S25/Yes)、つまり、減速度Ax(n)が制限値Ax_limを超えている場合、目標制動トルク設定部91は、制動トルク制限モードをオンにする(ステップS27)。このとき、目標制動トルク設定部91は、減速度Ax(n)が制限値Ax_limを超えてから所定時間t_thr_stが経過したときに制動トルク制限モードをオンにしてもよい。制動トルク制限モードがオンになっている場合、目標制動トルク設定部91は、制限制動トルクT_lim(n)を算出する(ステップS29)。本実施形態の例では、目標制動トルク設定部91は、前回のサイクルで設定された目標制動トルクT_out(n-1)からあらかじめ設定された一定の補正値T_xを引くことにより制限制動トルクT_lim(n)を算出する。次いで、目標制動トルク設定部91は、算出された制限制動トルクT_lim(n)を目標制動トルクT_out(n)に設定する(ステップS31)。
【0058】
一方、差分dA(n)が正の値でない場合(S25/No)、目標制動トルク設定部91は、現在、制動トルク制限モードがオンになっているか否かを判別する(ステップS33)。制動トルク制限モードがオンになっていない場合(S33/No)、目標制動トルク設定部91は、運転支援装置110から受信した制動要求信号に含まれる指示制動トルクT_req_in(n)をそのまま目標制動トルクT_out(n)に設定する(ステップS43)。
【0059】
一方、制動トルク制限モードがオンになっている場合(S33/Yes)、目標制動トルク設定部91は、差分dA(n)が0以下の値となってから所定時間t_thr_fnが経過したか否かを判別する(ステップS35)。この所定時間t_thr_fnは、制限値Ax_lim以下となった減速度Axが、制動トルクの制限を終了したことによって再び減速度Axが制限値Ax_limを超えることを防ぐために、制動トルクの制限を終了するタイミングを遅らせるために設定される。
【0060】
差分dA(n)が0以下の値となってから所定時間t_thr_fnが経過していない場合(S35/No)、目標制動トルク設定部91は、前回のサイクルで設定された目標制動トルクT_out(n-1)からあらかじめ設定された一定の補正値T_xを引くことにより制限制動トルクT_lim(n)を算出する(ステップS29)。次いで、目標制動トルク設定部91は、算出された制限制動トルクT_lim(n)を目標制動トルクT_out(n)に設定する(ステップS31)。
【0061】
本実施形態における制限制動トルクT_lim(n)の計算方法では、制動トルク制限モードがオフからオンに切り替えられた初回のサイクルにおいて、前回のサイクルで設定された目標制動トルクT_out(n-1)は指示制動トルクT_req_in(n-1)であるため、指示制動トルクT_req_in(n-1)から補正値T_xを引いた値が制限制動トルクT_lim(n)となる。また、制動トルク制限モードが継続する間、前回のサイクルで設定された目標制動トルクT_out(n-1)から補正値T_xを引いた値が制限制動トルクT_lim(n)となる。このため、制動トルク制限モードがオンになっている間、制限制動トルクT_limは、指示制動トルクT_req_inを一定の減少速度で減少させることによって算出される。
【0062】
一方、差分dA(n)が0以下の値となってから所定時間t_thr_fnが経過している場合(S35/Yes)、目標制動トルク設定部91は、制動トルク制限モードをオフにする(ステップS37)。次いで、目標制動トルク設定部91は、指示制動トルクT_req_in(n)が、前回のサイクルで設定された目標制動トルクT_out(n-1)よりも大きいか否かを判別する(ステップS39)。指示制動トルクT_req_in(n)が目標制動トルクT_out(n-1)よりも大きい場合(S39/Yes)、減速度Axが制限値Ax_limを下回っているものの、制動トルクの制限を終了することによって目標制動トルクT_outが上昇し、再び減速度Axが制限値Ax_limを超えることを防ぐために、目標制動トルク設定部91は、前回のサイクルで設定された目標制動トルクT_out(n-1)を今回のサイクルの目標制動トルクT_out(n)として保持する(ステップS41)。
【0063】
一方、指示制動トルクT_req_in(n)が目標制動トルクT_out(n-1)以下の場合(S39/No)、指示制動トルクT_req_in(n)が制限制動トルクT_lim(n-1)と同等の値となっており、指示制動トルクT_req_in(n)をそのまま目標制動トルクT_out(n)としても減速度Axを抑えることができる。このため、目標制動トルク設定部91は、運転支援装置110から受信した制動要求信号に含まれる指示制動トルクT_req_in(n)を目標制動トルクT_out(n)に設定する(ステップS43)。
【0064】
図3に戻り、ステップS13において目標制動トルクT_outが設定された後、制御部93は、目標制動トルクT_outに基づいて、目標ブレーキ液圧P_tgtを算出する(ステップS15)。例えば、制御部93は、目標制動トルクT_outと目標ブレーキ液圧P_tgtとの関係をあらかじめ設定したマップ情報を参照して、目標制動トルクT_outに応じた目標ブレーキ液圧P_tgtを求める。
【0065】
次いで、制御部93は、算出した目標ブレーキ液圧P_tgtに基づいてブレーキ液圧ユニット20のアクチュエータの駆動を制御する(ステップS17)。具体的に、制御部93は、算出した目標ブレーキ液圧P_tgtに基づいて、マスタシリンダ14からブレーキ液圧ユニット20に供給するブレーキ液の目標流量V_tgtを設定し、ブレーキ液圧ユニット20のポンプモータ96の駆動を制御する。例えば、制御部93は、目標ブレーキ液圧P_tgtと目標流量V_tgtとの関係をあらかじめ設定したマップ情報を参照して、ブレーキ液の目標流量V_tgtを設定してもよい。
【0066】
これにより、各車輪のホイールシリンダのブレーキ液圧が上昇し、車両の制動力を発生させることができる。本実施形態では、減速度Axが制限値Ax_limを超えて制動トルク制限モードに設定された場合、運転支援装置110で算出される指示制動トルクT_req_inをそのまま用いるのではなく、指示制動トルクT_req_inよりも小さい値に設定される制限制動トルクT_limが目標制動トルクT_outとして設定される。したがって、車両の減速度Axが長時間に亘って制限値Ax_limを超えるおそれを低減することができる。これにより、ACCの実行中、車体挙動が不安定になることを抑制しつつ、先行車両との車間距離を所定の目標車間距離に制御することができる。
【0067】
なお、目標制動トルク設定部91は、ABS制御やESP制御の実行時においては、減速度Axの情報を用いずに目標制動トルクT_outを設定する。例えば目標制動トルク設定部91は、運転支援装置110から出力される指示制動トルクT_req_in(n)の値と、前回の計算サイクルで設定された目標制動トルクT_out(n-1)の値とを比較して、いずれか小さい方を今回の計算サイクルの目標制動トルクT_out(n)として設定する。ABS制御やESP制御の実行中には、車輪速センサの検出値を微分することによって求められる車両の減速度Axが過度に大きくなる場合があり、減速度Axの値の信頼性が低下する。したがって、ABS制御やESP制御の実行中には減速度Axの情報を用いずに目標制動トルクT_outを設定することにより、車体挙動が不安定になるおそれを低減することができる。
【0068】
(1-2-3.作用)
次に、本実施形態に係る液圧制御装置90により実行されるブレーキ制御処理の作用を説明する。
【0069】
図5は、本実施形態に係る液圧制御装置90により実行されるブレーキ制御処理の作用を説明するための図であり、ACCの実行中に設定される目標制動トルクT_out、及び車両の減速度Axの時間変化を示している。
【0070】
自車両と先行車両との車間距離が目標車間距離を下回った状態、あるいは、下回りそうな状態になった時刻t1において、運転支援装置110から液圧制御装置90への制動要求信号の送信が開始されたとする。時刻t1以降、指示制動トルクT_req_inが上昇するとともに、当該指示制動トルクT_req_inを目標制動トルクT_outとしてブレーキ液圧ユニット20の駆動が制御されて、車両の減速度Axが増加する。
【0071】
減速度Axが制御開始閾値Ax_0を超える時刻t2において、目標制動トルク設定部91は、減速度Axから制限値Ax_limを引いた差分dAの算出を開始する。さらに減速度Axが増加し、減速度Axが制限値Ax_limを超える時刻t3において、目標制動トルク設定部91は、タイマカウントを開始させる。時刻t3からの経過時間が所定時間t_thr_stに到達する前の時刻t4において指示制動トルクT_req_inの上昇が終了し、以降、指示制動トルクT_req_inの値が一定の値に保持される。これに伴って、時刻t4において、車両の減速度Axが制限値Ax_lim以下になるため、目標制動トルク設定部91は、タイマ値をリセットする。
【0072】
その後、時刻t5において、再び減速度Axが制限値Ax_limを超えると、目標制動トルク設定部91は、タイマカウントを開始させる。減速度Axが制限値Ax_limを超えた状態で時刻t5からの経過時間が所定時間t_thr_stに到達した時刻t6において、目標制動トルク設定部91は、制動トルク制限モードをオンにし、指示制動トルクT_req_inよりも小さい値に設定される制限制動トルクT_limを目標制動トルクT_outに設定する。
図5に示した例では、制動トルク制限モードがオンにされた時刻t6における指示制動トルクT_req_inから一定の減少速度で減少させて制限制動トルクT_limとし、当該制限制動トルクT_limが目標制動トルクT_outに設定される。
【0073】
制動トルクに制限をかけたことに伴い、車両の減速度Axが低下し始め、減速度Axが制限値Ax_limになる時刻t7において、目標制動トルク設定部91は、タイマカウントを開始させる。減速度Axが制限値Ax_lim以下になった状態で時刻t7からの経過時間が所定時間t_thr_fnに到達した時刻t8において、目標制動トルク設定部91は、制動トルク制限モードをオフにするとともに、その時点の前回の計算サイクルで設定された目標制動トルクT_out(すなわち制限制動トルクT_lim)を保持し、これを目標制動トルクT_outに設定する。なお、制動トルク制限モードをオンにするために設定された所定時間t_thr_stと、制動トルク制限モードをオフにするために設定された所定時間t_thr_fnの大小関係は特に限定されるものではない。
【0074】
その後、自車両と先行車両との車間距離が目標車間距離に近づけられることに伴って、指示制動トルクT_req_inが減少し、時刻t9において、指示制動トルクT_req_inが目標制動トルクT_out(制限制動トルクT_lim)以下になることから、目標制動トルク設定部91は制限制動トルクT_limの計算を終了し、指示制動トルクT_req_inをそのまま目標制動トルクT_outとする設定に戻す。そして、時刻t10において、運転支援装置110からの制動要求信号の送信が停止され、液圧制御装置90は、ブレーキ液圧ユニット20の駆動を停止する。
【0075】
図5に破線で示したように、制動トルクに制限をかけることなく、指示制動トルクT_req_inをそのまま目標制動トルクT_outに設定してブレーキ液圧ユニット20の駆動を制御した場合、時刻t5において減速度Axが制限値Ax_limを超えた後、指示制動トルクT_req_in自体が減少してもなお減速度Ax_defが制限値Ax_limを超えた状態が維持される。このように、減速度Ax_defが制限値Ax_limを超えた状態が長時間続くと、車両の急減速により車体挙動が不安定になるおそれがある。これに対して、本実施形態では、車両の減速度Axが制限値Ax_limを超えたときに制動トルクに制限がかけられることから、減速度Axが長時間に亘って制限値Ax_limを超えるおそれが低減し、車体挙動が不安定になることを抑制することができる。
【0076】
<1-3.効果>
以上説明したように、本実施形態によれば、液圧制御装置90の目標制動トルク設定部91は、自車両の減速度Axが制限値Ax_limを超えたときに、運転支援装置110から送信される指示制動トルクT_req_inよりも小さい値の制限制動トルクT_limを目標制動トルクT_outに設定する。また、制御部93は、設定された目標制動トルクT_outにしたがってブレーキ液圧ユニット20のポンプモータ96の駆動を制御する。このため、車両の減速度Axが長時間に亘って制限値Ax_limを超えるおそれが低減され、急減速により車体挙動が不安定になることを抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、目標制動トルク設定部91は、制動トルク制限モードをオンにしたときの指示制動トルクT_req_inから一定の減少速度で減少させて制限制動トルクT_limを算出する。これにより、液圧制御装置90の計算負荷を大きくすることなく、容易に制動トルクに制限をかけることができる。また、車両の減速度Axを急激に低下させることがないため、先行車両との車間距離Dが小さくなりすぎることを防ぐことができる。
【0078】
また、本実施形態によれば、目標制動トルク設定部91は、減速度Axが制限値Ax_lim以下になった状態が所定時間t_thr_fn以上継続した場合に、制動トルク制限モードをオフにするとともに、その時点の前回の計算サイクルで設定された目標制動トルクT_out(すなわち制限制動トルクT_lim)を保持し、これを目標制動トルクT_outに設定する。これにより、制動トルクの制限を終了するタイミングを遅らせることができ、制限値Ax_lim以下となった減速度Axが、制動トルクの制限を終了したことによって再び減速度Axが制限値Ax_limを超えることを抑制することができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、目標制動トルク設定部91は、車両の減速度Axが制限値Ax_limを超える状態が所定時間t_thr_st以上継続した場合に、制動トルク制限モードをオンにし、制限制動トルクT_limを目標制動トルクT_outに設定する。これにより、ごく短時間に減速度Axが制限値Ax_limを超えるような場合に制動トルクが制限されることがなくなり、制動トルクが必要以上に制限されて、先行車両との車間距離Dが小さくなりすぎることを防ぐことができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、目標制動トルク設定部91は、制動トルク制限モードをオンにした後、指示制動トルクT_req_inが制限制動トルクT_lim以下となったときに、制限制動トルクT_limを目標制動トルクT_outとして設定することを終了する。これにより、制動トルク制限モードを終了したときに、目標制動トルクT_outが急上昇することを防ぐことができるとともに、目標制動トルクT_outを大きく変化させることなく指示制動トルクT_req_inを目標制動トルクT_outに設定する状態へと移行することができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、目標制動トルク設定部91は、減速度Axが制限値Ax_limよりも小さい制御開始閾値Ax_0を超える場合に減速度Axと制限値Ax_limとを比較し、減速度Axが制限値Ax_limを超えたときに制限制動トルクT_limを目標制動トルクT_outに設定する。これにより、制動トルクに制限をかける必要のない、減速度Axが小さい期間における液圧制御装置90の計算負荷を軽減することができる。
【0082】
<<2.第2の実施の形態>>
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。第2の実施の形態では、電動式倍力装置10を制御する倍力装置制御装置100が、運転支援装置110から送信される制動要求信号を受信し、車両の減速度が長時間に亘って所定の制限値を超えないように制動力を制御する車両の制動制御装置として機能する。
【0083】
本実施形態に係るブレーキシステム1は、ACCの自動ブレーキ制御を実行する車両の制動制御装置が倍力装置制御装置100であること以外、第1の実施の形態で説明したブレーキシステム1と同様の構成とすることができる。以下、主として、第1の実施の形態と異なる点を説明する。
【0084】
図6は、ブレーキシステム1の構成のうち、ACCの自動ブレーキ制御に関連する機能構成を示すブロック図である。本実施形態において、ACCの自動ブレーキ制御は、運転支援装置110及び倍力装置制御装置100が通信を行い、倍力装置制御装置100が倍力装置10を制御することにより実行される。
【0085】
運転支援装置110は、第1の実施の形態の場合と同様に、ACCの実行中に、カメラやレーダ、RiDAR等のセンサ機器111により検出される情報に基づいてブレーキングの要否の判断及び指示制動トルクT_req_inの計算を行い、倍力装置制御装置100に対して制動要求S_brk及び指示制動トルクT_req_inの情報を示す制動要求信号を送信する。
【0086】
倍力装置制御装置100は、運転支援装置110からACCの制動要求信号を受信した場合に、指示制動トルクT_req_inに基づいて目標制動トルクT_outを設定するとともに、目標制動トルクT_outを目標ブレーキ液圧P_tgtに変換して倍力装置10の駆動を制御する。具体的に、倍力装置制御装置100は、倍力装置10の電動モータを駆動してマスタシリンダ14内のブレーキ液を加圧し、マスタシリンダ14から各車輪のホイールシリンダへブレーキ液を供給することで各車輪のブレーキ液圧を上昇させて、車両の制動力を発生させる。
【0087】
倍力装置制御装置100は、目標制動トルク設定部101及び制御部103を備えている。目標制動トルク設定部101及び制御部103は、マイクロコンピュータによるプログラムの実行により実現される機能である。この他、倍力装置制御装置100は、図示しない駆動回路及びRAMやROM等の記憶素子を備えている。
【0088】
目標制動トルク設定部101は、第1の実施の形態で説明した液圧制御装置90の目標制動トルク設定部91と同様に構成される。つまり、目標制動トルク設定部101は、運転支援装置110から送信される制動要求信号に含まれる指示制動トルクT_req_inの情報と、加速度Gの情報とに基づいて、車両の減速度Axが長時間に亘って所定の制限値Ax_limを超えないように目標制動トルクT_outを設定する。目標制動トルクT_outの具体的な計算方法は、第1の実施の形態で説明した液圧制御装置90の目標制動トルク設定部91と同じであってよい。
【0089】
制御部103は、目標制動トルク設定部101により設定された目標制動トルクT_outに基づいて倍力装置10の駆動を制御する。これにより、車両の制動力が制御される。本実施形態では、制御部103は、目標制動トルクT_outに基づいて各車輪に発生させる目標ブレーキ液圧P_tgtを算出し、倍力装置10の電動モータの駆動を制御して、プッシュロッド13をマスタシリンダ14内へ前進させる。
【0090】
制御部103は、第1の実施の形態で説明した液圧制御装置90の制御部93と同様に、マップ情報を参照するなどして、目標制動トルクT_outに基づいて目標ブレーキ液圧P_tgtを求めるとともに、目標ブレーキ液圧P_tgtに基づいて、マスタシリンダ14からブレーキ液圧ユニット20に供給するブレーキ液の目標流量V_tgtを設定する。
【0091】
制御部103は、設定した目標流量V_tgtにしたがって、倍力装置10の電動モータの駆動回路に制御信号を出力し、プッシュロッド13を前進させる。これにより、プライマリ室47及びセカンダリ室48内のブレーキ液が加圧され、マスタシリンダ14からブレーキ液圧ユニット20内にブレーキ液が供給されて、各車輪のホイールシリンダにブレーキ液が供給される。その結果、各車輪のブレーキ液圧が上昇し、車両の制動力が発生する。本実施形態においても、制動トルク制限モードにおいては、車両の減速度Axが制限値Ax_limを超える場合に制動トルクに制限がかけられるため、減速度Axが長時間に亘って制限値Ax_limを超えるおそれが低減される。
【0092】
本実施形態に係る車両の制動制御装置としての倍力装置制御装置100の動作例及び作用は、駆動されるアクチュエータが、ブレーキ液圧ユニット20のポンプモータ96ではなく倍力装置10の電動モータである点以外、第1の実施の形態で説明した動作例及び作用と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0093】
以上説明したように、本実施形態によれば、倍力装置制御装置100の目標制動トルク設定部101は、自車両の減速度Axが制限値Ax_limを超えたときに、運転支援装置110から送信される指示制動トルクT_req_inよりも小さい値の制限制動トルクT_limを目標制動トルクT_outに設定する。また、制御部103は、設定された目標制動トルクT_outにしたがって倍力装置10の電動モータの駆動を制御する。本実施形態に係る倍力装置制御装置100によれば、第1の実施の形態により得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0094】
また、本実施形態によれば、倍力装置10を駆動してマスタシリンダ14からブレーキ液圧ユニット20へブレーキ液を供給し、各車輪のホイールシリンダのブレーキ液圧を上昇させる。したがって、ブレーキ液圧ユニット20のポンプモータ96を駆動してマスタシリンダ14からブレーキ液圧ユニット20へブレーキ液を供給する場合に比べて、制動力が発生するまでの応答性を向上させることができる。
【0095】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが本発明はこのような例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0096】
10…電動式倍力装置、13…プッシュロッド、14…マスタシリンダ、20…ブレーキ液圧ユニット、43…プライマリピストン、44…セカンダリピストン、47…プライマリ室、48…セカンダリ室、90…液圧制御装置、91…目標制動トルク設定部、93…制御部、100…倍力装置制御装置、101…目標制動トルク設定部、103…制御部、110…運転支援装置