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  • 特開-溶接用充填材の余盛形状整形治具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067320
(43)【公開日】2022-05-06
(54)【発明の名称】溶接用充填材の余盛形状整形治具
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/18 20060101AFI20220425BHJP
【FI】
B23K9/18 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020175966
(22)【出願日】2020-10-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】599145395
【氏名又は名称】高田機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104363
【弁理士】
【氏名又は名称】端山 博孝
(72)【発明者】
【氏名】尾嵜 健人
(72)【発明者】
【氏名】永木 勇人
(72)【発明者】
【氏名】大前 暢
【テーマコード(参考)】
4E001
【Fターム(参考)】
4E001BB05
4E001CA01
4E001DC03
(57)【要約】
【課題】溶接用充填材の余盛形状を均一化し、溶接部の品質を確保することができる整形治具を提供する。
【解決手段】溶接される2つの金属板20、20間の開先21に充填された充填材22の余盛形状を整形するための治具10であって、下部辺12が2つの金属板20、20の表面に接し、かつ開先21と直交した状態で溶接線方向に沿って移動させられる板状部11を備え、下部辺11に充填材22の所要の余盛形状に即した寸法を有し、開先21を跨ぐ切欠き13が形成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接される2つの金属板間の開先に充填された充填材の余盛形状を整形するための治具であって、
下部辺が前記2つの金属板の表面に接し、かつ前記開先と直交した状態で溶接線方向に沿って移動させられる板状部を備え、
前記下部辺に前記充填材の所要の余盛形状に即した寸法を有し、前記開先を跨ぐ切欠きが形成されていることを特徴とする溶接用充填材の余盛形状整形治具。
【請求項2】
前記板状部の前記下部辺を挟む両側部には、該板状部の移動方向前方に張り出す充填材の散乱抑止部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の溶接用充填材の余盛形状整形治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、溶接用充填材の余盛形状整形治具に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼製橋梁の部材加工・施工において、鋼板同士の接合方法として溶接が用いられることが多い。その溶接方法の1つであるサブマージアーク溶接法では、細裁断した細径鋼素線や鉄粉などの鋼製の充填材を、2つの鋼板間に形成した溝である開先に充填することで溶着量を増加させ、作業効率・品質を向上させることがある。
【0003】
一般的には、充填材は人力作業で簡易な整形ができるように、鋼板表面と同一となるようにされている。具体的には、充填材を開先に充填した後、平板をその一辺が鋼板表面に接した状態で溶接線方向に沿って移動させて、余剰充填材を回収し、充填材の充填高さが鋼板表面と同一となるように整形している。
【0004】
ところで、近年では、より品質・作業効率を向上させるために、充填材を鋼板表面よりも高く盛り上げて、すなわち余盛りをして整形するサブマージアーク溶接法が普及している。
【0005】
しかしながら、充填材の整形作業は一般的に人力作業となるため、余盛形状を溶接線方向に均一に整形することが困難であり、余盛形状にばらつきが生じる。図8及び図9は、余盛形状のばらつきを示し、図8は平面図、図9図8のイ)、ロ)、ハ)線による断面図である。ロ)線による断面で示される部分は余盛が適性であるが、イ)、ハ)線による断面で示される各部分は、それぞれ余盛過剰及び余盛不足となっている。なお、図8及び図9において、符号20は溶接される2つの鋼板、21は開先、22は充填材を示す。
【0006】
上記のような、余盛形状のばらつきは、溶接後の外観不良や内部欠陥の発生といった溶接部の品質低下の要因となる。また、図8及び図9に符号22aで示すように、粉末性状である余剰充填材が整形範囲外に散乱するため、回収の作業範囲が大きくなり、作業時間の増加をもたらす。
【0007】
この発明の先行技術文献として特許文献1を挙げることができる。しかしながら、同文献に記載の余盛整形治具は、溶接作業で用いる裏当金に相当するもので、本件発明のものとは相違する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6-106391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の主たる目的は、溶接用充填材の余盛形状を均一化し、溶接部の品質を確保することができる整形治具を提供することにある。
この発明の別の目的は、溶接用充填材の散乱を抑制し、回収が容易な整形治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、溶接される2つの金属板間の開先に充填された充填材の余盛形状を整形するための治具であって、
下部辺が前記2つの金属板の表面に接し、かつ前記開先と直交した状態で溶接線方向に沿って移動させられる板状部を備え、
前記下部辺に前記充填材の所要の余盛形状に即した寸法を有し、前記開先を跨ぐ切欠きが形成されていることを特徴とする溶接用充填材の余盛形状整形治具にある。
【0011】
上記余盛形状整形時具において、前記板状部の前記下部辺を挟む両側部には、該板状部の移動方向前方に張り出す充填材の散乱抑止部が設けられている構成を採用することもできる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、溶接用充填材の余盛形状を均一化し、溶接部の品質を確保することができる。また、溶接用充填材の散乱を抑制し、回収を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明による整形治具の実施形態を示す平面図である。
図2】同実施形態のものの立面図である。
図3】同実施形態のものの左側面図である。
図4】この発明による整形治具を用いて充填材の余盛形状を整形している状態を示す平面図である。
図5図4のA-A線による断面図である。
図6図4のB-B線による断面図である。
図7図4のC-C線による断面図である。
図8】従来手法による余盛形状を示す平面図である。
図9】従来手法による余盛形状のばらつきを示し、図8のイ)、ロ)、ハ)線による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1図3は、この発明による溶接用充填材の余盛形状整形治具の実施形態を示している。余盛形状整形治具10は矩形の板状部11を備えている。板状部11は、整形治具10の使用時に縦向きにされて、溶接される2つの金属板である鋼板20、20の表面に接した状態(図5参照)とされる下部辺12を有している。
【0015】
下部辺12には、そのほぼ中央に矩形の切欠き13が形成されている。この切欠き13は、充填材の余盛形状に即した寸法を有している。具体的には、切欠き13は鋼板20、20間に形成される開先21(図5参照)の幅寸法とほぼ等しい長さ寸法を有し、また充填材の余盛高さとほぼ等しい高さ寸法を有している。
【0016】
下部辺12を挟む板状部11の両側部には、整形治具10の移動方向(図4に矢印Eで示す)前方に張り出す充填材の散乱抑止部14、14が設けられている。この散乱抑止部14、14は板状部11に対してほぼ直角をなすように設けられている。
【0017】
整形治具10は、腐食しにくいステンレス鋼を用いて作られるが、磁気による鋼製の充填材との吸着を防ぐため、磁界が発生しない材質例えば硬質プラスチックや木を用いることもできる。
【0018】
図4及び図5は整形治具10を用いて、充填材の余盛形状を整形している状態を示している。整形作業に先立ち、充填材22は鋼板20、20間の開先21に充填され、さらにその上に所要の余盛高さ以上となるように供給されている。その後、以下のようにして、整形治具10により余盛形状が整形される。
【0019】
すなわち、整形治具10は、板状部11の下部辺12が鋼板20、20の表面に接し、かつ切欠き13が開先21を跨いだ状態で該開先21と直交するするように、鋼板20、20の上に載置される。
【0020】
そして、整形治具10を鋼板20、20の一方の端から他方の端に向けて、図4の溶接線方向Dに沿うように矢印方向Eに移動させる。これにより、整形治具10が通過した領域は、図6及び図7の断面で示すように、充填材22が切欠き13の形状に応じた余盛形状に均一に整形される。
【0021】
一方、整形治具10による整形時に余剰となった充填材22aは、板状部11によって整形治具10の移動方向前方に押しやられ、整形前充填材として回収される。このとき、余剰充填材22aは開先21の両側方に流れようとするが、散乱抑止部14、14によって遮られて散乱するのが抑止される。なお、この散乱抑止部14、14は、整形治具10の移動時に前方へ転倒するのを防止する機能も併せ持っている。
【0022】
上記実施形態は例示にすぎず、この発明は種々の態様を採りうる。例えば、上記実施形態では板状部を矩形形状としたが、板状部は鋼板に接することができる下部辺を有していればよく、矩形形状に限らない。
【符号の説明】
【0023】
10:余盛形状整形治具
11:板状部
12:下部辺
13:切欠き
14:散乱抑止部
20:鋼板
21:開先
22:充填材
22a:余剰充填材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9