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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006746
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】石膏分離機
(51)【国際特許分類】
   B01D 33/58 20060101AFI20220105BHJP
   B01D 33/04 20060101ALI20220105BHJP
   C01F 11/46 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B01D33/34
B01D33/04 B
C01F11/46 102F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020109182
(22)【出願日】2020-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】北村 智昭
【テーマコード(参考)】
4D116
4G076
【Fターム(参考)】
4D116BB11
4D116BC62
4D116BC66
4D116BC67
4D116DD01
4D116FF13B
4D116KK06
4D116QA12C
4D116QA12F
4D116QC20
4D116QC50
4D116RR01
4D116RR27
4D116UU20
4D116VV30
4G076AA14
4G076AB26
4G076AC10
4G076BA33
4G076BA43
4G076BC02
4G076BC07
4G076BE11
4G076CA02
4G076GA01
(57)【要約】
【課題】ウェアベルトが破断し難く、長期にわたって安全に使用することが可能な石膏分離機を提供する。
【解決手段】石膏分離機1は、水平方向へ略均等に配置され、保持具4及び保持具66によってそれぞれ回動可能に保持された第1のローラ2、2本の固定ローラ58及び第2のローラ3と、これらのローラの上面に載置される図示しない濾布と、保持具4を長手方向に沿って案内するガイド溝5が設けられた横材65bと、保持具4に先端が連結されたロッド6aと、門型部材65aの上面に設置されてロッド6aをガイド溝5の長手方向と平行に進退させる電動シリンダ6bと、横材65bに設置されてウェアベルト61の弛み量を監視する監視手段7を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台に取り付けられた保持具によって両端が回動可能に保持されるとともに、回動軸が水平かつ互いに平行をなすように設置された第1のローラ及び第2のローラと、
前記第1のローラと前記第2のローラの間隔を狭め、又は広げる方向に、前記第1のローラを保持する前記保持具及び前記第2のローラを保持する前記保持具の少なくともいずれか一方を案内するガイド手段と、
前記回動軸に平行な方向に所望の間隔をあけて互いに平行をなすように前記第1のローラ及び前記第2のローラにそれぞれ巻回された無端状の一対のベルトと、
一対の前記ベルトの間において前記第1のローラ及び前記第2のローラの上面に載置された無端状の濾布と、
前記第1のローラ及び前記第2のローラの下方に配置された脱水手段と、
前記ベルトの弛み量を監視して前記弛み量が予め定められた値よりも小さくなった場合に検知信号を発する監視手段と、
前記検知信号に従って、前記弛み量が大きくなるように前記第1のローラと前記第2のローラの間隔を狭めることにより前記ベルトの張力を調整するベルト張力調整手段と、
を備えており、
前記第1のローラ及び前記第2のローラは、双方に接し、かつ、双方の前記回動軸よりも上方に位置する平面が水平になるように配置されていることを特徴とする石膏分離機。
【請求項2】
前記監視手段は、
投光部と、
この投光部の発する光によって形成される光路の遮断に伴う光量変化を検知する受光部と、
この受光部の検知結果に基づいて前記検知信号を発する信号処理部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の石膏分離機。
【請求項3】
前記監視手段は、
反射板と、
この反射板との間に形成される光路の遮断に伴う光量変化を検知する投受光一体型のセンサと、
このセンサの検知結果に基づいて前記検知信号を発する信号処理部と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の石膏分離機。
【請求項4】
前記ガイド手段は、
前記架台及び前記保持具のいずれか一方に、長手方向が水平に設けられたガイド溝と、
前記架台及び前記保持具の他方に設けられて前記長手方向に沿って摺動可能に前記ガイド溝内に配置されるガイド部と、を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の石膏分離機。
【請求項5】
前記ベルト張力調整手段は、
前記ガイド溝又は前記ガイド部が設けられた前記保持具を水平方向に移動させる移動機構を備えていることを特徴とする請求項4に記載の石膏分離機。
【請求項6】
前記ベルト張力調整手段の前記移動機構は、
前記ガイド溝又は前記ガイド部が設けられている前記保持具に先端が連結されたロッドと、
このロッドを前記ガイド溝の前記長手方向に沿って伸縮させるシリンダと、
前記検知信号に従って前記シリンダの動作を制御し、前記ロッドを伸縮させる制御部と、を備えていることを特徴とする請求項5に記載の石膏分離機。
【請求項7】
前記ベルト張力調整手段の前記移動機構は、
外周面に雄ネジが形成されるとともに、中心軸が前記ガイド溝の前記長手方向と平行をなすネジ軸と、
このネジ軸を回動させるモータと、
前記雄ネジに螺合する雌ネジが内周面に形成され、前記ネジ軸が螺挿されるとともに前記ガイド溝又は前記ガイド部が設けられている前記保持具に先端が連結された筒状体と、
前記検知信号に従って前記モータの動作を制御し、前記ネジ軸を回動させることにより前記筒状体を前記ガイド溝の前記長手方向に沿って移動させる制御部と、を備えていることを特徴とする請求項5に記載の石膏分離機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスに含まれる亜硫酸ガスを除去するために石膏の状態にして分離する石膏分離機に係り、特に、ベルト式真空脱水機からなる石膏分離機に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラーや焼却炉等において発生した排ガスには亜硫酸ガスなどの有害成分が含まれている。そのため、従来、排ガス中の亜硫酸ガスを主成分とする硫黄酸化物に石灰石を溶解又は懸濁させた水溶液に接触させて中和するとともに酸化させることにより石膏として除去していた。
【0003】
図6(a)は湿式の排煙脱硫装置の構成図であり、図6(b)は図6(a)に示した石膏分離機の拡大図である。なお、図6(a)及び図6(b)では、石膏分離機の要部のみを示している。
図6(a)に示すように、排煙脱硫装置51は、石灰石を溶解又は懸濁させた水溶液からなる吸収液が貯留されるとともに、入口ダクト52a及び出口ダクト52bを有する反応槽52と、この反応槽52の底部に設けられた排出管52cから抜出された石膏スラリーが送られるとともに、他の排水処理設備(図示せず)から抜出された後、消石灰等によって中和された排水スラリーが移送管53を介して送られる混合槽54と、この混合槽54から石膏スラリーと排水スラリーの混合スラリーが供給管55を介して送られてくる供給槽56と、この供給槽56の下方に設置される石膏分離機57を備えている。
【0004】
入口ダクト52aから反応槽52に供給された排ガスは吸収液によって亜硫酸ガスが吸収された後、出口ダクト52bから反応槽52の外部に排出される。一方、亜硫酸ガスの酸化及び中和によって吸収液中に生成された石膏は、結晶の成長に伴って粒子が粗大化し、石膏スラリーとなる。この石膏スラリーは排出管52cを通して反応槽52の底部から排出された後、上述の排水スラリーとともに混合層54に送られる。さらに、混合槽54から供給槽56に送られた石膏スラリーと排水スラリーは、石膏分離機57に供給される。
なお、石膏分離機57によって分離された石膏は、石膏ボードの原料やセメント混合剤として再利用される。
【0005】
図6(b)に示すように、石膏分離機57はベルト式真空脱水機であり、軸体58aの中心線(以下、回動軸という。)が水平面と平行をなすように配置された4本の固定ローラ58及びガイドローラ59a,59b並びに駆動ローラ60と、通気性を有する無端状のウェアベルト61と、4本のガイドローラ59aに巻回された無端状の濾布62と、内部が真空に保持された状態で固定ローラ58の下方に設置された脱水室63を備えている。
【0006】
図7(a)は図6(b)において固定ローラ58及びガイドローラ59b並びに駆動ローラ60にウェアベルト61が巻回された状態を拡大して示している。また、図7(b)は図7(a)の固定ローラ58及びガイドローラ59b並びに駆動ローラ60が基台64に設置された状態を示している。
なお、図7(a)では濾布62を破線で示しており、図7(a)及び図7(b)では脱水室63の図示を省略している。また、図7(b)ではガイドローラ59bと駆動ローラ60の保持具の図示を省略している。
【0007】
図7(a)に示すように、4本の固定ローラ58は、それぞれの回動軸を含む平面が水平面と平行をなしており、各固定ローラ58は段付き構造となっており、両端の小径部には、2本のウェアベルト61がそれぞれ巻回されている。また、ウェアベルト61には、駆動ローラ60と2本のガイドローラ59bが巻回されており、駆動ローラ60は、図示しないモータの駆動軸に連結されている。
このように、ウェアベルト61は、駆動ローラ60の回動を固定ローラ58に伝達する機能を有しており、2本のガイドローラ59bは、固定ローラ58よりも下方に配置されている駆動ローラ60にウェアベルト61を巻回するために、ウェアベルト61の軌道を変える機能を有している。
さらに、濾布62は、その一部が4本の固定ローラ58の大径部の上面に載置されており、固定ローラ58の回動に伴って、矢印Xで示すように略水平方向へ走行する構造となっている。
【0008】
図7(b)に示すように、石膏分離機57では、一対の門型部材65a,65aと、長手方向が水平となるように設置されて門型部材65a,65aを互いに連結する横材65b,65bからなる架台65が基台64の上面に設置されている。また、横材65bの上面には、ラジアル軸受を備えた4つの保持具66が所定の間隔をあけた状態で取り付けられており、固定ローラ58の両端の軸体58aは、2本の横材65bに対向配置された一対の保持具66,66によってそれぞれ回動自在に保持されている。
【0009】
このような構造によれば、駆動ローラ60を駆動させると、その回動がウェアベルト61を介して固定ローラ58に伝達されるため、固定ローラ58の上面に載置された濾布62が水平に移動する。そこで、供給槽56から石膏スラリーと排水スラリーの混合スラリーを濾布62上に流下させると、混合スラリーに含まれる水分は、濾布62を通して脱水室63に吸引される。
これにより、混合スラリーから水分と石膏が分離され、濾布62上に残った石膏は、石膏分離機57の下流に設置された図示しない他のベルトコンベア等によって回収される。
【0010】
上記構造の石膏分離機57では、稼働中にウェアベルト61が破断することがある。ウェアベルト61が破断すると、その都度、石膏分離機57を停止して、ウェアベルト61を交換しなければならないため、修理費用が嵩んでいた。また、ウェアベルト61が破断する時期を予測することができないため、破断の時期によっては、早期の対応が困難になる場合もあった。
【0011】
石膏分離機に関するものとしては、例えば、特許文献1に「排煙脱硫装置および石膏スラリーの処理方法」という名称で、排ガス中の亜硫酸ガスを石膏として除去するための装置とそれを用いて生成された石膏スラリーの処理方法に関する発明が開示されている。
【0012】
特許文献1に開示された石膏分離機は、ドラム間に張設された通気性を有するベルト上によって無端状のろ布が走行自在に支持されるとともに、ろ布上に供給された混合スラリーをベルトの下方に設けられて負圧に保持された脱水室によって吸引するベルト式真空脱水機と、ろ布の上方に設置され、搬送される石膏スラリーと排水スラリーからなるケーキの少なくとも上部微粒子層内に挿入されて、搬送に伴ってケーキの上部微粒子層に溝部を形成する微粒子層破壊機構を備えた構造となっている。
このような構造によれば、上記溝部によって混合スラリーにおいて通気性が確保されるため、ろ過面積を増大させなくともろ過性能が高まる。したがって、石膏の含水率を所望の値まで低減化させることができる。
【0013】
特許文献2には、「排煙脱硫装置および石膏スラリーの処理方法」という名称で、排ガス中の亜硫酸ガスを石膏として除去するための排煙脱硫装置および排煙脱硫装置において生成された石膏スラリーと系内で生成された排水スラリーから石膏を分離するための方法に関する発明が開示されている。
【0014】
特許文献2に開示された石膏分離機は、ドラム間に張設された通気性を有するベルト上によって支持された無端状のろ布上に供給された石膏スラリーと排水スラリーをベルトの下方に設置された脱水室によって吸引するベルト式真空脱水機において、ろ布の上方に、その走行方向に向けて、順次石膏スラリーと排水スラリーからなる混合スラリーをろ布上に供給する混合スラリー供給槽と、排水スラリーのみを供給する排水スラリー供給槽が配設された構造となっている。
このような構造によれば、ろ布上に供給された石膏純度が高く、ろ過速度の速い混合スラリーの脱水が進行した後に、排水スラリーのみが供給されるため、ろ過面積を増大させなくとも全体として高いろ過性能を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平10-128056号公報
【特許文献2】特開平10-128057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
出願人は、破断したウェアベルトの状態から、搬送物(混合スラリー)及び雰囲気の温度や湿度の影響によってウェアベルトが収縮した結果、その張力が許容値を超えたことが破断の原因であることを突き止めた。これに対し、特許文献1及び特許文献2には、ウェアベルトの破断に関し、何ら記載がないため、これらの文献に開示された石膏分離機では、ウェアベルトの破断を防ぐことができないと考えられる。
【0017】
本発明は、上述の課題に対処してなされたものであり、ウェアベルトが破断し難く、長期にわたって安全に使用することが可能な石膏分離機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、石膏分離機に係る第1の発明は、架台に取り付けられた保持具によって両端が回動可能に保持されるとともに、回動軸が水平かつ互いに平行をなすように設置された第1のローラ及び第2のローラと、第1のローラと第2のローラの間隔を狭め、又は広げる方向に、第1のローラを保持する保持具及び第2のローラを保持する保持具の少なくともいずれか一方を案内するガイド手段と、回動軸に平行な方向に所望の間隔をあけて互いに平行をなすように第1のローラ及び第2のローラにそれぞれ巻回された無端状の一対のベルトと、一対のベルトの間において第1のローラ及び第2のローラの上面に載置された無端状の濾布と、第1のローラ及び第2のローラの下方に配置された脱水手段と、ベルトの弛み量を監視して弛み量が予め定められた値よりも小さくなった場合に検知信号を発する監視手段と、検知信号に従って、弛み量が大きくなるように第1のローラと第2のローラの間隔を狭めることによりベルトの張力を調整するベルト張力調整手段と、を備えており、第1のローラ及び第2のローラは、双方に接し、かつ、双方の回動軸よりも上方に位置する平面が水平にになるように配置されていることを特徴とするものである。
【0019】
上記構造の石膏分離機においては、ベルトの収縮によって弛み量が予め定められた値よりも小さくなったことを検知した監視手段が検知信号を発すると、この検知信号に従って、ベルト張力調整手段が第1のローラと第2のローラの間隔を狭めることで、再び弛み量が大きくなるという作用を有する。
【0020】
第2の発明は、第1の発明において、監視手段は、投光部と、この投光部の発する光によって形成される光路の遮断に伴う光量変化を検知する受光部と、この受光部の検知結果に基づいて検知信号を発する信号処理部と、を備えていることを特徴とするものである。
このような構造の石膏分離機においては、第1の発明の作用に加え、ベルトの弛み量の監視が非接触の状態で行われ、ベルトが損傷するおそれがないため、故障し難いという作用を有する。
【0021】
第3の発明は、第1の発明において、監視手段は、反射板と、この反射板との間に形成される光路の遮断に伴う光量変化を検知する投受光一体型のセンサと、このセンサの検知結果に基づいて検知信号を発する信号処理部と、を備えていることを特徴とするものである。
このような構造の石膏分離機においては、第1の発明の作用に加え、反射板は投光部や受光部に比べて小型化が可能であるため、反射板の設置される箇所に対して制約が少ないという作用を有する。
【0022】
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明において、ガイド手段は、架台及び保持具のいずれか一方に、長手方向が水平に設けられたガイド溝と、架台及び保持具の他方に設けられて長手方向に沿って摺動可能にガイド溝内に配置されるガイド部と、を備えていることを特徴とするものである。
このような構造の石膏分離機においては、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の作用に加え、ガイド手段が設けられた保持具によって第1のローラ又は第2のローラが水平方向へ移動可能に保持されるという作用を有する。
【0023】
第5の発明は、第4の発明において、ベルト張力調整手段は、ガイド溝又はガイド部が設けられた保持具を水平方向に移動させる移動機構を備えていることを特徴とするものである。
このような構造の石膏分離機においては、第4の発明の作用に加え、ガイド溝又はガイド部が設けられた保持具を移動機構が移動させると、第1のローラ又は第2のローラが水平方向に移動するという作用を有する。
【0024】
第6の発明は、第5の発明において、ベルト張力調整手段の移動機構は、ガイド溝又はガイド部が設けられている保持具に先端が連結されたロッドと、このロッドをガイド溝の長手方向に沿って伸縮させるシリンダと、検知信号に従ってシリンダの動作を制御し、ロッドを伸縮させる制御部と、を備えていることを特徴とするものである。
このような構造の石膏分離機においては、第5の発明の作用に加え、ガイド溝又はガイド部が設けられた保持具を移動させる移動機構が簡単な構造によって実現されるという作用を有する。
【0025】
第7の発明は、第5の発明において、ベルト張力調整手段の移動機構は、外周面に雄ネジが形成されるとともに、中心軸がガイド溝の長手方向と平行をなすネジ軸と、このネジ軸を回動させるモータと、雄ネジに螺合する雌ネジが内周面に形成され、ネジ軸が螺挿されるとともにガイド溝又はガイド部が設けられている保持具に先端が連結された筒状体と、検知信号に従ってモータの動作を制御し、ネジ軸を回動させることにより筒状体をガイド溝の長手方向に沿って移動させる制御部と、を備えていることを特徴とするものである。
このような構造の石膏分離機においては、第6の発明と同様の作用を有する。
【発明の効果】
【0026】
第1の発明においては、ベルトの収縮に伴ってベルトの弛み量が予め定められた値よりも小さくなると、第2のローラとの間隔が狭くなる方向へ第1のローラが移動して、ベルトの弛み量が再び大きくなるため、ベルトの張力の増大を抑制することが可能である。すなわち、第1の発明によれば、ベルトが収縮した場合でもベルトの張力が許容値を超える可能性が低く、ベルトが破断し難いため、長期にわたって安全に使用することができる。
【0027】
第2の発明によれば、ベルトが故障し難いため、長期にわたって安全に使用できるという第1の発明の効果がより一層発揮される。
【0028】
第3の発明によれば、第1の発明の効果に加え、反射板の設置箇所に対する制約が少ないため、ベルトの所望の位置における弛み量を容易に検知することができるという効果を奏する。
【0029】
第4の発明によれば、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の効果に加え、ガイド手段によって案内される保持具をベルト張力調整手段によって水平方向へ移動させることにより、第1のローラと第2のローラの間隔を容易に変更することができるという効果を奏する。
【0030】
第5の発明によれば、ガイド溝又はガイド部が設けられた保持具をベルト張力調整手段の移動機構によって移動させることにより、第4の発明と同様の効果を奏する。
【0031】
第6の発明によれば、第5の発明の効果に加え、ベルト張力調整手段の移動機構が故障し難いため、長期にわたって安全に使用できるという第1の発明の効果がより一層発揮される。
【0032】
第7の発明によれば、第6の発明と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施の形態に係る石膏分離機の外観の一例を示す斜視図である。
図2】(a)及び(b)はそれぞれ図1におけるA部及びB部の拡大図である。
図3】(a)は図2(a)に示した保持具の拡大図であり、(b)は図2(a)におけるC-C線矢視断面図であり、(c)及び(d)はそれぞれ図2(b)に示した監視手段の斜視図及び構成図である。
図4】(a)乃至(d)は図1において監視手段とウェアベルトの位置関係を模式的に示した図である。
図5】ベルト張力調整手段と監視手段の構成を示すブロック図である。
図6】(a)は湿式の排煙脱硫装置の構成図であり、(b)は同図(a)に示した石膏分離機の拡大図である。
図7】(a)は図6(b)において固定ローラ及びガイドローラ並びに駆動ローラにウェアベルトが巻回された状態を拡大して示した斜視図であり、(b)は同図(a)の固定ローラ及びガイドローラ並びに駆動ローラが架台に設置された状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の石膏分離機は、ボイラーや焼却炉等において発生した排ガスに含まれる亜硫酸ガスを除去するために石膏の状態にして分離する際に用いられるものである。以下、その具体的な構造と、それに基づいて発揮される作用及び効果について、図1乃至図5を参照しながら詳細に説明する。
【実施例0035】
図1は本発明の実施の形態に係る石膏分離機の外観斜視図であり、図2(a)及び図2(b)はそれぞれ図1におけるA部及びB部の拡大図である。また、図3(a)は図2(a)に示した保持具の拡大図であり、図3(b)は図2(a)におけるC-C線矢視断面図である。さらに、図3(c)及び図3(d)はそれぞれ図2(b)に示した監視手段の斜視図及び構成図である。
なお、図1では図6(b)に示した脱水室63及び図7(a)に示した濾布62並びにガイドローラ59bと駆動ローラ60の保持具の図示を省略している。また、図1図7(b)に対応している。したがって、図6及び図7を用いて既に説明した構成要素については、同一の符号を付することにより、それらの説明の一部を省略する。
【0036】
図1に示すように、本発明の石膏分離機1は、床面等に設置される基台64の上面に架台65が設置されている。架台65は、一対の門型部材65a,65aと、長手方向が水平となるように設置されて門型部材65a,65aを互いに連結する一対の横材65b,65bからなり、平面視矩形の枠状をなしている。
架台65の上方には、それぞれの回動軸が水平かつ互いに平行をなすように第1のローラ2、2本の固定ローラ58及び第2のローラ3が略均等に配置されている。また、第1のローラ2及び第2のローラ3は、双方に接し、かつ、双方の回動軸よりも上方に位置する平面(接平面)が水平になるように設置されており、2本の固定ローラ58は、当該接平面よりも上方へ突出しないように設置されている。
【0037】
2本の横材65bの上面には、ラジアル軸受を備えた一対の保持具4,4及び三対の保持具66,66がそれぞれ対向するように配置されている。そして、第1のローラ2は、両端の軸体2aが一対の保持具4,4によってそれぞれ回動可能に保持されており、第2のローラ3及び2本の固定ローラ58は両端の軸体3a,58aが三対の保持具66,66によってそれぞれ回動可能に保持されている。
【0038】
なお、第1のローラ2、第2のローラ3及び固定ローラ58は段付き構造となっており、通気性を有する無端状の一対のウェアベルト61,61が両端の小径部にそれぞれ巻回されている。また、ウェアベルト61は、駆動ローラ60と2本のガイドローラ59bに巻回されており、駆動ローラ60は、図示しないベルト駆動モータの駆動軸に連結されている。
【0039】
第1のローラ2、2本の固定ローラ58及び第2のローラ3の大径部の上面には、4本のガイドローラ59a(図6(b)参照)に巻回された無端状の濾布62(図7(a)参照)が載置されており、第1のローラ2、2本の固定ローラ58及び第2のローラ3の回動に伴って、濾布62が第1のローラ2の上面から第2のローラの上面へ向かって略水平に走行する構造となっている。また、第1のローラ2、2本の固定ローラ58及び第2のローラ3の下方には、内部が真空に保持された脱水室63(図6(b)参照)が設置されている。
【0040】
図1及び図2(a)に示すように、横材65bの上面には第1のローラ2に近い側の端部から保持具66の手前までガイド溝5が横材65bの長手方向に沿って水平に形成されている。また、第1のローラ2に近い側の門型部材65aの上面には、保持具4に先端が連結されたロッド6aをガイド溝5の長手方向に沿って伸縮させる電動シリンダ6bが設置されている。
【0041】
なお、図3(a)及び図3(b)に示すように、保持具4は第1のローラ2の軸体2aが挿通される軸受孔4aを有しており、保持具4の下部には、ガイド溝5よりも幅が狭く、かつ、水平方向へ細長いガイド部4bが下方へ突出するように設けられている。
【0042】
また、ガイド溝5の内部にガイド部4bが配置された保持具4は、ガイド溝5の長手方向に沿って移動可能な状態で横材65bに設置されている。すなわち、ガイド部4b及びガイド溝5は、第1のローラ2と第2のローラ3の間隔を狭め、又は広げる方向に保持具4を案内するガイド手段を構成している。すなわち、石膏分離機1では、ガイド手段が設けられた保持具4によって第1のローラ2が水平方向へ移動可能に保持されている。したがって、電動シリンダ6bを稼働させ、ロッド6aを介して保持具4をガイド溝5の長手方向に沿って移動させると、第1のローラ2と第2のローラ3の間隔を容易に変更することができる。その結果、ウェアベルト61の張力が変化する。
なお、石膏分離機1は、後述するように電動シリンダ6bの動作を制御する制御部を備えており、この制御部とともに電動シリンダ6b及びロッド6aは、第1のローラ2と第2のローラ3の間隔を狭めてウェアベルト61の弛み量を調整するベルト張力調整手段6(図5参照)の移動機構を構成している。
【0043】
図1及び図2(b)に示すように、横材65bには、間にウェアベルト61を挟むように配置される投光部9aと受光部9bを備え、固定ローラ58と第2のローラ3の下方において両者の間を走行するウェアベルト61の弛み量を監視する監視手段7が設置されている。
【0044】
図3(c)及び図3(d)に示すように、監視手段7は、主としてLED(発光ダイオード)からなる投光素子7aと、PSD(位置検出用フォトダイオード)などからなる受光素子7bと、投光素子7a及び受光素子7bが接続された信号処理回路を有する信号処理部7cと、光ファイバユニット8aを介して投光素子7aに接続された投光部9aと、光ファイバユニット8bを介して受光素子7bに接続された受光部9bと、投光素子7a及び受光素子7b並びに信号処理部7cからなるアンプユニット8cが内蔵された筐体9cを備えている。
【0045】
図4(a)乃至図4(d)は監視手段7とウェアベルト61の位置関係を示した模式図である。なお、図4(a)は図4(c)を固定ローラ58の回動軸方向に見た図に相当し、図4(b)は図4(d)を固定ローラ58の回動軸方向に見た図に相当する。また、図4(a)では、ウェアベルト61の弛み量が図4(b)の場合と異なることを明確にするために、ウェアベルト61の弛みを実際よりも誇張して描いている。さらに、図4(a)及び図4(b)では監視手段7を破線で示し、図4(c)及び図4(d)ではウェアベルト61を破線で示している。
【0046】
図4(a)に示すように、第2のローラ3と固定ローラ58の間を走行するウェアベルト61が弛んでいる場合、投光部9aが発した光は、図4(c)に矢印Dで示すようにウェアベルト61によって遮られることなく、受光部9bに到達する。
一方、図4(b)に示すようにウェアベルト61がほとんど弛んでいないか、図4(a)の状態よりも弛み量が少ない場合、図4(d)に矢印Eで示すように投光部9aが発した光の一部又は全部がウェアベルト61によって遮られることになり、受光部9bに到達する光の量は図4(a)の場合に比べて減少する。
このように、石膏分離機1ではウェアベルト61の弛み量の監視が非接触の状態で行われるため、ウェアベルト61は損傷するおそれがない。すなわち、石膏分離機1は、故障し難いため、長期にわたって安全に使用できるという効果を有している。
【0047】
前述したように、ウェアベルト61は、収縮すると、張力が増大し、やがて破断してしまう。石膏分離機1は、このようなウェアベルト61の破断を防ぐために、ウェアベルト61の弛み量を監視する監視手段7と、収縮に伴ってウェアベルト61の弛み量が許容値よりも小さくなったことを監視手段7が検知した場合に、弛み量が大きくなるように第1のローラ2と第2のローラ3の間隔を狭くすることによりウェアベルト61の張力を調整するベルト張力調整手段6を備えている。
【0048】
すなわち、石膏分離機1では、ウェアベルト61の張力を直接、測定する代わりに、ウェアベルト61の弛み量が予め定められた値よりも小さくなったことを監視手段7が検知した場合に、ウェアベルト61の張力が許容できないレベルであるとして、ベルト張力調整手段6がその張力を下げる構造となっているのである。そのため、監視手段7は、上記弛み量が予め定められた値よりも小さくない場合には、投光部9aと受光部9bの間に形成される光路がウェアベルト61によって遮断されず、上記弛み量が予め定められた値よりも小さい場合にのみ、上記光路がウェアベルト61によって遮断される箇所に設置されている。
【0049】
図5はベルト張力調整手段6と監視手段7の構成を示すブロック図である。図5に示すように、信号処理部7cの指示に従って投光素子7aが発光すると、その光は光ファイバユニット8aを経由して投光部9aに送られる。
ウェアベルト61の弛み量が予め定められた値以上である場合、図4(a)に示したように投光部9aと受光部9bの間に形成される光路がウェアベルト61によって遮断されないため、受光部9bに到達した光は光ファイバユニット8bを経由して、全て受光素子7bに送られ、その後、信号処理部7cに送られる。
【0050】
これに対し、ウェアベルト61の弛み量が予め定められた値より小さい場合、図4(b)に示したように投光部9aと受光部9bの間に形成される光路がウェアベルト61によって遮断され、投光部9aからの光の少なくとも一部が受光部9bに到達しなくなるため、受光素子7bを経由して信号処理部7cに送られる光の量は図4(a)に示した場合よりも少なくなる。
【0051】
投光部9aと受光部9bの間に形成される光路の遮断に伴って受光素子7bによって検知される光量が変化した場合、信号処理部7cは検知信号をベルト張力調整手段6の制御部6cに送る。上記検知信号を受信した制御部6cは指令信号を電動シリンダ6bに送り、この指令信号に従って電動シリンダ6bはロッド6aを伸長させる。これにより、保持具4,4によって両端が保持された第1のローラ2が第2のローラ3に近づく方向へ移動し、ウェアベルト61の弛み量が大きくなる。
そして、投光部9aと受光部9bの間に形成される光路がウェアベルト61によって遮断されなくなると、上記検知信号が信号処理部7cから発信されなくなるため、制御部6cは電動シリンダ6bに対する指令信号の送信を止め、電動シリンダ6bはロッド6aの伸長を停止させる。
【0052】
以上説明したように、石膏分離機1では、ウェアベルト61が収縮して、その弛み量が予め定められた値よりも小さくなった場合、監視手段7が検知信号を発し、この検知信号に従って、ベルト張力調整手段6が保持具4を介して第1のローラ2を第2のローラ3に近づける方向へ移動させる。そのため、収縮に伴って増大したウェアベルト61の張力が許容値を超えてしまうおそれがない。このように、石膏分離機1は、ウェアベルト61が収縮した場合でも破断し難いため、長期にわたって安全に使用することができる。
【0053】
なお、本実施例では、電動シリンダ6bを備えているが、本発明の石膏分離機は、このような構造に限定されるものではなく、例えば、電動シリンダ6bの代わりに油圧シリンダを用いることもできる。
また、ベルト張力調整手段6がロッド6aと電動シリンダ6bの代わりに、外周面に雄ネジが形成されるとともに、中心軸がガイド溝5の長手方向と平行をなすネジ軸と、このネジ軸を回動させるモータと、内周面に雌ネジが形成され、ネジ軸が螺挿されるとともに保持具4に先端が連結された筒状体を備えており、監視手段7の検知信号を受けて制御部6cがモータの動作を制御して筒状体が保持具4を押し動かす方向へネジ軸を回動させる構造とすることもできる。
【0054】
さらに、ガイド溝5が横材65bの両端に設けられるとともに、一対の保持具66,66の代わりに一対の保持具4,4によって第2のローラ3の両端の軸体3aが保持されており、第1のローラ2又は第2のローラ3を保持する保持具4の少なくともいずれか一方をベルト張力調整手段6の移動機構が水平方向に移動させる構造であっても良い。また、保持具4にガイド溝5が設けられるとともに、長手方向に沿って摺動可能に、このガイド溝5の内部に配置されるガイド部4bが横材65bに設けられた構造とすることもできる。
加えて、駆動ローラ60を備える代わりに、ウェアベルト61に駆動力を与えるためのモータの駆動軸が第1のローラ2及び第2のローラ3のいずれか一方に連結された構造とすることもできる。
以上のような構造であっても上述した石膏分離機1の作用及び効果は同様に発揮される。
【0055】
また、本発明の石膏分離機は、監視手段7が信号処理部7c、投光部9a及び受光部9bの代わりに、反射板と、この反射板との間に形成される光路の遮断に伴う光量変化を検知する投受光一体型のセンサと、このセンサの検知結果に基づいて、ウェアベルト61の弛み量が予め定められた値よりも小さいことを示す検知信号を発する信号処理部を備えた構造であっても良い。この場合、反射板を投光部9aや受光部9bに比べて薄く、かつ、サイズも小さくできるため、反射板が設置される箇所に対する制約が少ない。したがって、ウェアベルト61の所望の位置における弛み量を容易に検知することができる。
さらに、固定ローラ58やガイドローラ59bの本数及び監視手段7の個数並びにそれらの設置箇所は、本実施例に示した場合に限らず、適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の石膏分離機は、ボイラーや焼却炉等において発生した排ガスに含まれる亜硫酸ガスを石膏の状態にして除去する場合に適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…石膏分離機 2…第1のローラ 2a…軸体 3…第2のローラ 3a…軸体 4…保持具 4a…軸受孔 4b…ガイド部 5…ガイド溝 6…ベルト張力調整手段 6a…ロッド 6b…電動シリンダ 6c…制御部 7…監視手段 7a…投光素子 7b…受光素子 7c…信号処理部 8a,8b…光ファイバユニット 8c…アンプユニット 9a…投光部 9b…受光部 9c…筐体 51…排煙脱硫装置 52…反応槽 52a…入口ダクト 52b…出口ダクト 52c…排出管 53…移送管 54…混合槽 55…供給管 56…供給槽 57…石膏分離機 58…固定ローラ 58a…軸体 59a,59b…ガイドローラ 60…駆動ローラ 61…ウェアベルト 62…濾布 63…脱水室 64…基台 65…架台 65a…門型部材 65b…横材 66…保持具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7