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特開2022-67912側鎖型液晶ポリマーおよびその製造方法、ならびに該ポリマーを含有するゴム組成物および空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022067912
(43)【公開日】2022-05-09
(54)【発明の名称】側鎖型液晶ポリマーおよびその製造方法、ならびに該ポリマーを含有するゴム組成物および空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/32 20060101AFI20220426BHJP
   C08G 18/81 20060101ALI20220426BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20220426BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20220426BHJP
   B60C 1/00 20060101ALN20220426BHJP
【FI】
C08G18/32 015
C08G18/81 016
C08L9/00
C08L75/04
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020176777
(22)【出願日】2020-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早見 純平
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131BA05
3D131BA07
3D131BA18
3D131BA20
3D131BC01
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC15
3D131BC19
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002BG072
4J002CK021
4J002CK051
4J002FD010
4J002FD140
4J002FD150
4J002GN01
4J034BA02
4J034BA06
4J034BA08
4J034CA04
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC08
4J034CC12
4J034CC62
4J034CC67
4J034HA04
4J034HA18
4J034HC03
4J034JA01
4J034JA32
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD03
4J034KD11
4J034KD12
4J034KE02
4J034QA05
4J034QB03
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】平均粒子径が小さく、かつゴム組成物に配合した場合に、tanδ(0℃)とtanδ(60℃)とのバランスを改良することが可能な液晶ポリマーおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】側鎖にメソゲン基を有する側鎖型液晶ポリマーであって、側鎖が、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物とイソシアネート化合物とが反応することにより形成された部位を少なくとも含むものである側鎖型液晶ポリマー。イソシアネート化合物が、(メタ)アクリロイル基およびイソシアネート基を有する化合物であることが好ましい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖にメソゲン基を有する側鎖型液晶ポリマーであって、
前記側鎖が、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物とイソシアネート化合物とが反応することにより形成された部位を少なくとも含むものである側鎖型液晶ポリマー。
【請求項2】
前記イソシアネート化合物が、(メタ)アクリロイル基およびイソシアネート基を有する化合物である請求項1に記載の側鎖型液晶ポリマー。
【請求項3】
前記側鎖の重量平均分子量が600~3000である請求項1または2に記載の側鎖型液晶ポリマー。
【請求項4】
前記液晶ポリマーが、液晶相から等方相への転移温度(Ti)が20℃以下のものである請求項1~3のいずれかに記載の側鎖型液晶ポリマー。
【請求項5】
請求項1~4いずれかに記載の側鎖型液晶ポリマーおよびジエン系ゴムを含有するゴム組成物。
【請求項6】
前記ジエン系ゴムの全量を100質量部としたとき、前記側鎖型液晶ポリマーの配合量が1~50質量部である請求項5に記載のゴム組成物。
【請求項7】
請求項5または6に記載のゴム組成物を原料として得られた加硫ゴムを備える空気入りタイヤ。
【請求項8】
側鎖にメソゲン基を有する側鎖型液晶ポリマーの製造方法であって、
活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と(メタ)アクリロイル基およびイソシアネート基を有する化合物とを反応させることにより側鎖部分を形成する第1工程と、
前記(メタ)アクリロイル基を重合させることにより主鎖部分を形成する第2工程と、を有する側鎖型液晶ポリマーの製造方法。
【請求項9】
前記第2工程において、前記(メタ)アクリロイル基の重合方法が乳化重合法または懸濁重合法である請求項8に記載の側鎖型液晶ポリマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側鎖型液晶ポリマーおよびその製造方法、ならびに該ポリマーを含有するゴム組成物および空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤは様々な走行環境で使用され、例えば雨の中、湿潤路面でのグリップ性能であるウェットグリップ性能(以下、単に「WET性能」とも言う)を改良することが求められる。しかしながら、かかるWET性能の向上を目的としてゴム組成物の配合設計を行った場合、得られる加硫ゴムの低燃費性が悪化する場合があるため、これらをバランス良く向上させる技術が求められていた。
【0003】
下記特許文献1では、ゴム成分としてtanδの温度分散曲線がバイモーダルとなる少なくとも2種のジエン系ゴムを含むゴム組成物を原料として使用することで、空気入りタイヤのWET性能および低燃費性の向上を図る技術が記載されている。
【0004】
また、下記特許文献2では、軟化点が140℃以上である芳香族ビニル化合物の単独重合体樹脂および共重合体樹脂から選択される少なくとも1種を所定量配合したゴム組成物を原料として使用することで、タイヤの初期グリップ性能および走行安定性の向上を図る技術が記載されている。
【0005】
さらに、下記特許文献3では、芳香族ビニル化合物と共役ジエン含有化合物とを単量体単位として含有し、重量平均分子量(Mw)が1,000~50,000である液状共重合体を含むゴム組成物を原料として使用することで、空気入りタイヤのWET性能および低燃費性の向上を図る技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08-27313号公報
【特許文献2】特開2008-169295号公報
【特許文献3】特開2016-117880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
空気入りタイヤのWET性能および低燃費性の両立を図る場合、原料となるゴム組成物の損失正接(tanδ)の最適化を図ることが重要となる。一般に、WET性能は原料となるゴム組成物の0℃でのtanδ(以下、「tanδ(0℃)」とも言う)に大きく依存し、tanδ(0℃)が大きい方が空気入りタイヤのWET性能に優れる。一方、低燃費性は原料となるゴム組成物の60℃でのtanδ(以下、「tanδ(60℃)」とも言う)に大きく依存し、tanδ(60℃)が小さい方が空気入りタイヤの低燃費性に優れる。
【0008】
しかしながら、前記特許文献に記載の技術では、ゴム組成物のtanδ(0℃)を大きくし、かつtanδ(60℃)を小さくすることが難しく、最終製品である空気入りタイヤのWET性能および低燃費性をバランス良く向上することが困難であることが判明した。
【0009】
ところで、ゴム組成物に固形の配合剤を配合する場合、その平均粒子径は、特に分散性向上の観点からできるだけ小さいことが好ましい。したがって、平均粒子径ができるだけ小さく、かつゴム組成物のtanδ(0℃)とtanδ(60℃)とのバランスを改良することが可能な新規な配合剤の開発が望まれていた。本発明は上記実情に鑑みて完成されたものであり、平均粒子径が小さく、かつゴム組成物に配合した場合に、tanδ(0℃)とtanδ(60℃)とのバランスを改良することが可能な側鎖型液晶ポリマーおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
さらに本発明は、側鎖型液晶ポリマーを含有するゴム組成物および空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち本発明は、側鎖にメソゲン基を有する側鎖型液晶ポリマーであって、前記側鎖が、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物とイソシアネート化合物とが反応することにより形成された部位を少なくとも含むものである側鎖型液晶ポリマーに関する。
【0012】
上記側鎖型液晶ポリマーにおいて、前記イソシアネート化合物が、(メタ)アクリロイル基およびイソシアネート基を有する化合物であることが好ましい。
【0013】
上記側鎖型液晶ポリマーにおいて、前記側鎖の重量平均分子量が600~3000であることが好ましい。
【0014】
上記側鎖型液晶ポリマーにおいて、前記液晶ポリマーが、液晶相から等方相への転移温度(Ti)が20℃以下のものであることが好ましい。
【0015】
また、本発明はいずれかに記載の側鎖型液晶ポリマーおよびジエン系ゴムを含有するゴム組成物に関する。
【0016】
上記ゴム組成物において、前記ジエン系ゴムの全量を100質量部としたとき、前記側鎖型液晶ポリマーの配合量が1~50質量部であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は前記記載のゴム組成物を原料として得られた加硫ゴムを備える空気入りタイヤに関する。
【0018】
また、本発明は側鎖にメソゲン基を有する側鎖型液晶ポリマーの製造方法であって、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と(メタ)アクリロイル基およびイソシアネート基を有する化合物とを反応させることにより側鎖部分を形成する第1工程と、前記(メタ)アクリロイル基を重合させることにより主鎖部分を形成する第2工程と、を有する側鎖型液晶ポリマーの製造方法に関する。
【0019】
上記側鎖型液晶ポリマーの製造方法において、前記第2工程において、前記(メタ)アクリロイル基の重合方法が乳化重合法または懸濁重合法であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る側鎖型液晶ポリマーは、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物とイソシアネート化合物とが反応することにより形成された部位を側鎖として含む。かかる側鎖型液晶ポリマーは、平均粒子径を小さく制御できるため、ゴム組成物中に配合した際、分散性に優れる。さらに側鎖型液晶ポリマーは、ジエン系ゴムに比して特異的な動的粘弾性を示し、幅広い温度域で熱損失が高い。このため、側鎖型液晶ポリマーをゴム組成物中に配合した場合、ゴム組成物のtanδ(0℃)を大きくし、かつtanδ(60℃)を小さくすることができる。
【0021】
特に、側鎖型液晶ポリマーが有する側鎖が、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、(メタ)アクリロイル基およびイソシアネート基を有するイソシアネート化合物とが反応することにより形成された部位を少なくとも含む場合、側鎖の分子量が小さくなることに起因して、より平均粒子径の小さいフィラー状の側鎖型液晶ポリマーとすることができる。
【0022】
本発明に係る側鎖型液晶ポリマーの製造方法では、特に活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と(メタ)アクリロイル基およびイソシアネート基を有する化合物とを反応させることにより側鎖部分を形成する第1工程と、前記(メタ)アクリロイル基を重合させることにより主鎖部分を形成する第2工程と、を有する場合、得られる側鎖型液晶ポリマーの平均粒子径をより小さく制御できるため好ましい。
【0023】
本発明に係る側鎖型液晶ポリマーは平均粒子径が小さくなるように制御されているため、ゴム組成物中に配合した際、分散性に優れる。このため、本発明に係る側鎖型液晶ポリマーを配合したゴム組成物は、tanδ(0℃)とtanδ(60℃)とのバランスが改良されている。このため、例えばかかるゴム組成物を原料として空気入りタイヤを製造した場合、WET性能および低燃費性の両方に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る側鎖型液晶ポリマーは、側鎖にメソゲン基を有する側鎖型液晶ポリマーであって、側鎖が、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物とイソシアネート化合物とが反応することにより形成された部位を少なくとも含む。
【0025】
前記メソゲン基含有化合物としては、例えば、下記の一般式(1)で表される化合物が使用可能である。
【化1】
【0026】
上記一般式(1)において、Xは活性水素基であり、Rは隣接する結合基の一部をなす単結合、-N=N-、-CO-、-CO-O-、または-CH=N-であり、Rは隣接する結合基の一部をなす単結合、または-O-であり、Rは隣接する結合基の一部をなす単結合、または炭素数1~20のアルキレン基である。ただし、Rが-O-であり、且つRが隣接する結合基の一部をなす単結合であるものを除く。)なお、「隣接する結合基の一部をなす単結合」とは、当該単結合が隣接する結合基の一部と共有されている状態を意味する。例えば、上記一般式(1)において、Rが隣接する結合基の一部をなす単結合である場合、単結合であるRは両側のベンゼン環と共有された状態となり、当該両側のベンゼン環とともにビフェニル構造を形成する。Xとしては、例えば、OH、SH、NH、COOH、二級アミンなどが挙げられる。
【0027】
メソゲン基含有化合物として、前記一般式(1)で表される化合物にアルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドを付加した化合物(以下、「オキシド付加化合物」ともいう)を使用してもよい。アルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドは、液晶ポリウレタンポリマーにおける液晶相の発現温度を低下させるように機能するため、メソゲン基含有化合物としてオキシド化合物を使用して生成した液晶ポリウレタンポリマーは、液晶相から等方相への転移温度(Ti)を所望の温度範囲に容易に設計可能となる。アルキレンオキシドは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはブチレンオキシドを使用することができる。上掲のアルキレンオキシドは、単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。スチレンオキシドについては、ベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンなどの置換基を有するものでもよい。アルキレンオキシドは、上掲のアルキレンオキシドと、上掲のスチレンオキシドとを混合したものを使用することも可能である。アルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドの付加量は、一般式(1)で表される化合物1モルに対して、アルキレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドが4~20モル、好ましくは6~15モル付加されるように調整される。
【0028】
メソゲン基含有化合物、特にはオキシド付加化合物の配合量は、液晶ポリマーの原材料全体の中で、20~95質量%、好ましくは30~90質量%となるように調整される。メソゲン基含有化合物、特にはオキシド付加化合物の配合量の配合量が20質量%未満の場合、生成したポリマーに液晶性が発現し難くなる。メソゲン基含有化合物、特にはオキシド付加化合物の配合量の配合量が95質量%を超える場合、メソゲン基含有化合物と結合を形成するラジカル重合性基含有化合物含有量が減少し、乳化重合(ラジカル重合)時に高分子量化が困難となる。
【0029】
イソシアネート化合物として、本発明においては特に(メタ)アクリロイル基およびイソシアネート基を有する化合物を使用した場合、側鎖の低分子量化が可能となり、得られる側鎖型液晶ポリマーの平均粒子径をより小さく制御できるため好ましい。なお、本発明において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を意味し、「(メタ)」は以下同様の意味である。
【0030】
(メタ)アクリロイル基およびイソシアネート基を有する化合物としては、例えば2-イソシアナトエチル(メタ)アクリラート、(メタ)アクリル酸2-イソシアナトエチルなどが挙げられる。
【0031】
イソシアネート化合物として、本発明においてはアリル基およびイソシアネート基を有する化合物を使用しても良い。このような化合物としては例えば、イソシアン酸アリルなどが挙げられる。
【0032】
側鎖型液晶ポリマーを構成するメソゲン基含有化合物の全量を100質量部としたとき、イソシアネート化合物の割合は5~70質量部であることが好ましく、10~50質量部であることがより好ましい。イソシアネート化合物の配合量が5質量部未満である場合、(メタ)アクリロイル基含有量が少なくなるため、ラジカル重合による高分子化が困難となる。一方、イソシアネート化合物の割合が70質量部を超える場合、側鎖型液晶ポリマーの原材料全体に占めるメソゲン基含有化合物の配合量が相対的に少なくなるため、側鎖型液晶ポリマーの液晶性が低下する。加えて、乳化重合後の試料の架橋密度が過剰となり、液晶性が低下する。
【0033】
側鎖型液晶ポリマーの側鎖部分を形成するために、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物とを反応させる場合、当業者に公知のウレタン重合触媒を使用してもよい。かかる重合触媒としては、ジブチル錫ジラウレートやオクチル酸錫などの有機錫系触媒、トリエチレンジアミンおよびその誘導体、N-メチルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)、ビス(N,N-ジメチルアミノ-2-エチル)エーテル、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテルなどの第3級アミン系触媒、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカルボン酸金属塩触媒、イミダゾール系触媒などが挙げられる。これらの中でも、トリエチレンジアミンおよびその誘導体の使用が好ましい。
【0034】
側鎖部分の製造条件としては、少なくとも活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と、イソシアネート化合物とを例えば60~150℃に加熱した状態で加熱溶融しつつ、両者を反応させる方法が挙げられる。かかる側鎖部分の製造条件は、後記の第1工程に該当する。
【0035】
側鎖型液晶ポリマーを高分子フィラーとした場合に平均粒子径を小さく制御するためには、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物とイソシアネート化合物とが反応することにより形成された側鎖の重量平均分子量は600~3000であることが好ましく、750~2000であることがより好ましい。
【0036】
本発明においては、側鎖型液晶ポリマーを高分子フィラーとした場合に平均粒子径を小さく制御するために、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と(メタ)アクリロイル基およびイソシアネート基を有する化合物とが反応することにより形成された、側鎖部分に対応する化合物(以下、「側鎖対応化合物」ともいう)を、乳化重合または懸濁重合することにより、側鎖型液晶ポリマーを製造することが好ましい。特に、本発明においては、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と(メタ)アクリロイル基およびイソシアネート基を有する化合物とを反応させることにより側鎖部分を形成する第1工程と、(メタ)アクリロイル基を重合させることにより主鎖部分を形成する第2工程と、を有する側鎖型液晶ポリマーの製造方法が好ましく、第2工程において、前記(メタ)アクリロイル基の重合方法が乳化重合法または懸濁重合法であることがより好ましい。一例として、乳化重合により製造された側鎖型液晶ポリマーについて説明する。
【0037】
乳化重合側鎖型液晶ポリマーは、例えば側鎖対応化合物を、界面活性剤存在下、水中で乳化重合することにより製造することができる(第2工程)。
【0038】
界面活性剤としては、乳化重合の際に一般的に使用されるものが使用可能であり、アニオン性、非イオン性、およびカチオン性のいずれの界面活性剤でも使用可能である。乳化重合の際の界面活性剤の使用量は、製造される乳化重合側鎖型液晶ポリマーの平均粒子径を所望の範囲に調製するために任意に設計可能であるが、例えば水中の界面活性剤の量が0.01~20質量%となるように設計すれば良い。
【0039】
界面活性剤存在下、水中で側鎖対応化合物を乳化重合する際、重合開始剤を使用しても良い。重合開始剤は光重合開始剤および熱重合開始剤のいずれも使用可能である。光重合開始剤を使用する場合、生産性および光重合開始剤の均一分散の見地から、側鎖対応化合物を製造する際、光重合開始剤存在下で、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物と(メタ)アクリロイル基およびイソシアネート基を有する化合物とを反応させることにより、側鎖対応化合物を製造し、これを界面活性剤存在下、水中で波長200~600nm光を照射することにより、所望の平均粒子径である乳化重合側鎖型液晶ポリマーを製造しても良い。
【0040】
光重合開始剤は、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフォンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン/ベンゾフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル/オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モリフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、ヨードニウム,(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-ヘキサフルオロフォスフェート(1-)/プロピレンカーボネート、トリアリールスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリアリールスルフォニウムテトラキス-(ペンタフルオロフェニル)ボレート、オキシムスルホネート系光酸発生剤を使用することができる。光重合開始剤の割合は、側鎖対応化合物を構成するメソゲン基含有化合物の全量を100質量部としたとき、0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~3質量部であることがより好ましい。光重合開始剤の配合量が0.05質量部未満の場合、光照射時に均一に重合反応が進行しないため、あるいは硬化が不十分となる場合がある。光反応開始剤の配合量が10質量部を超える場合、生成したエラストマー中のメソゲン基の含有量が減少するため、液晶相が発現し難くなる場合がある。光反応開始剤は、200~600nmに吸収波長を有するものが好ましい。光反応開始剤が上記範囲の吸収波長を有していれば、側鎖型液晶ポリマーまたはその原材料の透明度(可視光の透過率)が低いものであっても、光反応開始剤が光を吸収し、確実に光架橋反応を進行させることができる。
【0041】
本発明に係る側鎖型液晶ポリマーは、特にゴム組成物中に配合した際の分散性向上の観点から、高分子フィラーとしたとき、平均粒子径が50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが特に好ましい。高分子フィラーは側鎖型液晶ポリマーのみで構成されても良く、側鎖型液晶ポリマーに加え、ゴム組成物に配合可能な各種配合剤などを混合したものをフィラー状に加工されたものであっても良い。ゴム組成物に配合可能な各種配合剤については後述する。側鎖型液晶ポリマーの平均粒子径の下限は特に限定されないが、例えば0.06μm程度が例示可能である。
【0042】
本発明では、側鎖型液晶ポリマーの平均粒子径は、ゴム組成物中に配合する前に測定した平均粒子径であって、仮に配合段階で複数の側鎖型液晶ポリマーが凝集した場合であっても、凝集前に測定した粒子径を意味するものとする。なお、側鎖型液晶ポリマーの平均粒子径の測定方法については後述する。
【0043】
本発明においては、側鎖型液晶ポリマーをゴム組成物中に配合した場合、ゴム組成物のtanδ(0℃)とtanδ(60℃)とのバランスをより高いレベルで改良するために、側鎖型液晶ポリマーが、液晶相から等方相への転移温度(Ti)が20℃以下のものであることが好ましく、Tiが5℃以下であることがより好ましい。tanδは損失弾性率(E’’)と貯蔵弾性率(E’)との比率で表される(tanδ=E’’/E’)。Tiが20℃以下である側鎖型液晶ポリマーをゴム組成物中に配合した場合、相対的に0℃付近はTiと近く、60℃はTiと離れることになることから、0℃付近ではE’’に比してE’が急激に低下するため、tanδが大きく増大する。一方、60℃付近では側鎖型液晶ポリマーが等方相に存在することから、E’’およびE’がいずれも緩やかに低下するため、tanδの増大が抑制される。これらの結果、ゴム組成物のtanδ(0℃)とtanδ(60℃)とのバランスをより高いレベルで改良することができる。
【0044】
本発明に係るゴム組成物は、側鎖型液晶ポリマーおよびジエン系ゴムを含有する。ゴム組成物中、ジエン系ゴムの全量を100質量部としたとき、側鎖型液晶ポリマーの配合量が1~50質量部であることが好ましく、5~40質量部であることがより好ましい。
【0045】
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリスチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)などが挙げられる。必要に応じて、末端を変性したもの(例えば、末端変性BR、末端変性SBRなど)、あるいは所望の特性を付与すべく改質したもの(例えば、改質NR)も好適に使用可能である。また、ポリブタジエンゴム(BR)については、コバルト(Co)触媒、ネオジム(Nd)触媒、ニッケル(Ni)触媒、チタン(Ti)触媒、リチウム(Li)触媒を用いて合成したものに加えて、WO2007-129670に記載のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物を用いて合成したものも使用可能である。
【0046】
空気入りタイヤの低燃費性を考慮した場合、ポリスチレンブタジエンゴムについては、スチレン含有量10~40質量%、ブタジエン部のビニル結合量10~70質量%、およびcis分10質量%以上であるものが好ましく、スチレン含有量15~25質量%、ブタジエン部のビニル結合量10~60質量%、およびcis分20質量%以上であるものが特に好ましい。また、本発明に係るゴム組成物を空気入りタイヤのトレッドゴム部として使用する場合、油添タイプよりも非油添タイプのポリスチレンブタジエンゴムを使用することが好ましい。
【0047】
本発明に係るゴム組成物には、前記ゴム成分および高分子フィラーに加えて、カーボンブラック、シリカ、シランカップリング剤、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、ワックス、オイルなどの軟化剤、および加工助剤などの各種配合剤を配合することができる。
【0048】
カーボンブラックは、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。
【0049】
シリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカを用いることができるが、特に、含水ケイ酸を主成分とする湿式シリカを用いることが好ましい。
【0050】
シランカップリング剤としては、ジエン系ゴムに対し反応活性を有するシランカップリング剤を使用する。本発明において使用可能なシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(例えば、デグサ社製「Si69」)、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(例えば、デグサ社製「Si75」)、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシランが挙げられる。
【0051】
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン-ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0052】
加硫系配合剤以外の配合剤を混合する工程の後、さらに加硫系配合剤を混合・分散させる。加硫系配合剤を混合する工程において使用する加硫系配合剤としては、硫黄、有機過酸化物などの加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤などが挙げられる。
【0053】
硫黄系加硫剤としての硫黄は通常のゴム用硫黄であればよく、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。
【0054】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。
【0055】
本発明に係るゴム組成物は、側鎖型液晶ポリマーおよびジエン系ゴム、必要に応じてカーボンブラック、シリカ、シランカップリング剤、加硫系配合剤、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、ワックス、やオイルなどの軟化剤、加工助剤などを、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りすることにより得られる。
【0056】
また、上記各成分の配合方法は特に限定されず、硫黄系加硫剤、および加硫促進剤などの加硫系配合剤以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれでもよい。
【実施例0057】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。なお、実施例などにおける評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0058】
<転移温度(Ti)>
原料反応物1~9について、示差走査熱量分析計[DSC](品名:X-DSC 7000、日立ハイテクサイエンス社製)を使用し、転移温度(Ti)を測定した。
【0059】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
側鎖型液晶ポリマーの側鎖対応化合物の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算のMwを求めた。詳細には、測定装置として島津製作所製「LC-10A」を、カラムとしてPolymer Laboratories社製「PLgel-MIXED-C」を、検出器として示差屈折率検出器(RI)を用い、溶媒としてTHFを用い、測定温度を40℃、流量を1.0mL/分、濃度を1.0g/L、注入量を40μLとし、市販の標準ポリスチレンを用いてポリスチレン換算で算出した。
【0060】
<高分子フィラー(側鎖型液晶ポリマー)の平均粒子径>
側鎖型液晶ポリマーを含有する高分子フィラーの平均粒子径は、乳化重合後、水中で分散状態の側鎖型液晶ポリマーの平均粒子径を、動的光散乱測定器(製品名「DLS7000」、大塚電子株式会社製)を用いて、動的光散乱法により測定した。
【0061】
<動的粘弾性測定>
実施例1~12のゴム組成物、および比較例1~2のゴム組成物について、160℃で20分間加熱することで加硫を行い、所定形状に成形して測定試料とした。各測定試料について、動的粘弾性測定装置(製品名「全自動粘弾性アナライザ VR-7110」、上島製作所社製)により貯蔵弾性率(E’)及び損失弾性率(E”)を測定し、tanδ(0℃)およびtanδ(60℃)を求めた。表3は、比較例1のtanδの値を100とした指数で表示してある。測定条件は以下のとおりである。
測定試料のサイズ:長さ40mm、幅3mm、厚み2mm
測定モード :引張モード
測定温度 :0℃、60℃
周波数 :100Hz
動歪み :0.15%
【0062】
<破断強度測定>
実施例1~12のゴム組成物、および比較例1~2のゴム組成物について、160℃で20分間加熱することで加硫を行い、JIS K 6251に準拠した厚み2mmのダンベル状3号形試験片に成形して測定試料とした。得られた各測定試料について、引張試験装置(島津製作所社製、精密万能試験機 オートグラフAG-X)を使用し、温度23℃、湿度50%RHの条件下にて試験を実施した。測定条件は、クロスヘッドスピードを500mm/分とし、破断強度を測定した。測定値を表3に示す。
【0063】
(メソゲンジオールAの製造)
反応容器に、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物としてBH6(500g)、水酸化カリウム(19g)、及び溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(3000ml)を入れて混合し、さらに、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを1モルのBH6に対して8.8当量添加し、これらの混合物を、加圧条件下、120℃で2時間反応させた(付加反応)。次いで、反応容器にシュウ酸(15g)を添加して付加反応を停止させ、反応液中の不溶な塩を吸引ろ過によって除去し、さらに、反応液中のN,N-ジメチルホルムアミドを減圧蒸留法により除去することにより、メソゲンジオールAを得た。メソゲンジオールAの水酸基価は130である。メソゲンジオールAの合成スキームを式(2)に示す。なお、式(2)中に示したメソゲンジオールAは代表的なものであり、種々の構造異性体を含み得る。式(2)中のnは平均4.4である。
【0064】
【化2】
【0065】
(メソゲンジオールBの製造)
反応容器に、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物としてBH6(500g)、水酸化カリウム(19g)、及び溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(3000ml)を入れて混合し、さらに、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを1モルのBH6に対して6.6当量添加し、これらの混合物を、加圧条件下、120℃で2時間反応させた(付加反応)。次いで、反応容器にシュウ酸(15g)を添加して付加反応を停止させ、反応液中の不溶な塩を吸引ろ過によって除去し、さらに、反応液中のN,N-ジメチルホルムアミドを減圧蒸留法により除去することにより、メソゲンジオールAを得た。メソゲンジオールAの水酸基価は140である。メソゲンジオールBの合成スキームを式(3)に示す。なお、式(3)中に示したメソゲンジオールBは代表的なものであり、種々の構造異性体を含み得る。式(3)中のnは平均3.3である。
【0066】
【化3】
【0067】
(メソゲンジオールCの製造)
反応容器に、活性水素基を有するメソゲン基含有化合物としてBH6(500g)、水酸化カリウム(19g)、及び溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(3000ml)を入れて混合し、さらに、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを1モルのBH6に対して12当量添加し、これらの混合物を、加圧条件下、120℃で2時間反応させた(付加反応)。次いで、反応容器にシュウ酸(15g)を添加して付加反応を停止させ、反応液中の不溶な塩を吸引ろ過によって除去し、さらに、反応液中のN,N-ジメチルホルムアミドを減圧蒸留法により除去することにより、メソゲンジオールAを得た。メソゲンジオールAの水酸基価は104である。メソゲンジオールAの合成スキームを式(4)に示す。なお、式(4)中に示したメソゲンジオールCは代表的なものであり、種々の構造異性体を含み得る。式(4)中のnは平均6である。
【0068】
【化4】
【0069】
(原料反応物1~9の製造)
メソゲンジオールA、メソゲンジオールB、またはメソゲンジオールC100質量部に対し、イソシアネート化合物として1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(東京化成工業株式会社製)、ラジカル重合性基含有化合物として2-ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学社製)、2-イソシアナトエチルアクリラート(東京化成工業株式会社製)、メタクリル酸2-イソシアナトエチル(東京化成工業株式会社製)、イソシアン酸アリル(富士フイルム和光純薬社製)を表1に記載の配合比で配合し、これらを撹拌しながら80℃で混合し、原料反応物1~9を製造した。表1の結果から、側鎖型液晶ポリマーである原料反応物2~9は、側鎖対応化合物の重量平均分子量(Mw)が低く制御されていることがわかる。
【0070】
【表1】
【0071】
(高分子フィラー1~9の製造)
原料反応物1~9、各界面活性剤(「ニューコール710」、「ニューコール714」、「ニューコール723」、「ニューコール2327」、「ニューコール714―SF」、いずれも日本乳化剤社製)、重合開始剤(過硫酸アンモニウム(APS))および水を表2に記載の所定の割合で配合し、窒素置換を行った後、攪拌しながら70℃にて7時間加熱を行い、乳化重合液晶ポリウレタンエラストマーを含む高分子フィラー1~9を製造した。乳化重合後、水中で分散状態の乳化重合液晶ポリウレタンエラストマーの平均粒子径を前記方法により測定後、110℃で10時間乾燥し、さらに110℃で真空乾燥したものを後述のゴム組成物に配合した。なお表2の結果から、高分子フィラー2~9では、平均粒子径が1μm以下(61~480nm)に制御されていることがわかる。
【0072】
【表2】
【0073】
(実施例1~12および比較例1~2のゴム組成物の製造)
得られた高分子フィラー1~9を、ラボミキサー(製品名:ラボプラストミル、東洋精機製作所社製)を使用してジエン系ゴム(SBR、商品名:SL563、JSR社製)に配合した。配合手順は、表3に記載の配合比率で、初めに第一段階として、SBRに対しシリカ(商品名:ニップシールAQ、東ソー・シリカ社製)、シランカップリング剤(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、商品名:Si69、エボニック・デグザ社製)、亜鉛華(商品名:亜鉛華1種、三井金属鉱業社製)、ステアリン酸(商品名:ルナックS-20、花王株式会社製)、および老化防止剤(商品名:ノクラック6C、大内新興化学工業株式会社製)を添加して160℃で混練し、次に第二段階として、混練物に高分子フィラーを添加して160℃で混練し、さらに第三段階として、混練物に、硫黄(ゴム用粉末硫黄150メッシュ、細井化学工業社製)、および加硫促進剤(商品名:ノクセラーCZ(1次加硫促進剤)、ノクセラーD(2次加硫促進剤)、いずれも大内新興化学工業社製)を添加して90℃で混練し、得られたものを実施例1~9および比較例1~2のゴム組成物とした。
【0074】
【表3】
【0075】
表3の結果から、実施例1~12に係るゴム組成物の加硫ゴムは破断強度が維持されており、かつtanδ(0℃)が大きく増大しているものの、tanδ(60℃)の増大が抑制されており、tanδ(0℃)とtanδ(60℃)とのバランスが改良されていることが分かる。